(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】タンパク質バイオマーカーを定量するためのLC-MS/MSの使用
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20240115BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240115BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G01N27/62 V ZNA
G01N27/62 X
G01N33/68
C12Q1/37
(21)【出願番号】P 2021504204
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 US2019045494
(87)【国際公開番号】W WO2020033537
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-05
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】スク イエン エ
(72)【発明者】
【氏名】ハイボー チウ
(72)【発明者】
【氏名】ニン リー
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/000988(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/111249(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/053983(WO,A1)
【文献】特表2021-512316(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026241(WO,A1)
【文献】特表2016-515199(JP,A)
【文献】特表2017-503503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 33/48 - G01N 33/96
C12Q 1/00 - C12Q 3/00
C12M 1/00 - C12M 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、前記生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの
ペプチドフラグメントを産生すること、ここで、前記
タンパク質C1qのペプチドフラグメントは、
以下の標的ペプチド:
IAFSATR(配列番号29)のアミノ酸配列を有する標的ペプチド;並びに
以下の標的ペプチド:
SLGFCDTTNK(配列番号26)
のアミノ酸配列を有する標的ペプチド;及び
QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)
のアミノ酸配列を有する標的ペプチド の少なくとも1つ、
を含む;そして
(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、前記
標的ペプチドの存在量
を測定すること、ここで、前記標的ペプチドの存在量は、前記生体サンプル中のC1q
タンパク質の濃度を決定する
、
を含むアッセイ。
【請求項2】
前記
タンパク質C1qのペプチドフラグメントが、
以下:
SLGFCDTTNK(配列番号26)
のアミノ酸配列を有する標的ペプチド;
IAFSATR(配列番号29)
のアミノ酸配列を有する標的ペプチド;及び
QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)
のアミノ酸配列を有する標的ペプチド、
の各々を含む、請求項
1に記載のアッセイ。
【請求項3】
ステップ(1)とステップ(2)との間で、前記生体サンプルに、
少なくとも1つの
前記標的ペプチドのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成C1qペプチドフラグメントを添加することをさらに含む、請求項1~
2のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項4】
前記
標的ペプチドの存在量を測定することが、SRM-MSによって得られた
前記標的ペプチドに対応するシグナルを標準曲線と比較することを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項5】
前記標準曲線が、
(a)既知量の精製C1qタンパク質とC1q枯渇血清とを混合することによって少なくとも2つのC1q濃度標準を調製し;
(b)前記少なくとも2つのC1q濃度標準に、
少なくとも1つの
前記標的ペプチドと同じアミノ酸配列を有する少なくとも1つの標識された合成ペプチド
を添加し;
(c)前記少なくとも2つの標識されたC1q濃度標準をタンパク質分解酵素と接触させて、
前記少なくとも1つの
前記標的ペプチドを産生し;
(d)選択反応モニタリング質量分析を実施して、
前記少なくとも1つの
前記標的ペプチドに対応するシグナルの強度、及び前記少なくとも2つの標識されたC1q濃度標準の各々において前記少なくとも1つの標識された合成ペプチド
に対応するシグナルの強度を決定し;そして
(e)前記シグナル及び前記既知量のC1qタンパク質を用いて標準曲線を決定すること、
を含む方法を用いて作成される、請求項
4に記載のアッセイ。
【請求項6】
前記生体サンプルが:
i)血液サンプル;及び/又は
ii)ヒトサンプル若しくは非ヒト霊長類サンプルである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項7】
前記選択反応モニタリング質量分析がLC-SRM-MS/MSである、請求項1~
6のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのタンパク質分解酵素が、トリプシンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のアッセイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、参照によりその内容が全体として本明細書中に組み込まれる、2018年8月8日に出願された、米国仮出願第62/715,973号に対する優先権及びその利益を主張する。
【0002】
配列表
本願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出され、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる配列表を含む。2019年7月29日に作成された当該ASCIIコピーは、「REGE-015-001WO_SeqList_ST25.txt」という名称であり、50,295バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
C1qは、自然免疫系の補体系に関与する重要で創薬可能なタンパク質である。ヒト由来の生体サンプル中のC1qの濃度を決定するためには、現在のところ、免疫ベースの方法がある。しかしながら、臨床前研究及び試験における重要なモデル生物である非ヒト霊長類由来のサンプル中のC1qの存在量をアッセイするための既存の免疫試薬は限られている。したがって、迅速で特異的かつ正確で、また高価で時間のかかる免疫試薬の開発を必要としない、ヒト、非ヒト霊長類及び他のモデル生物由来のサンプル中のC1q濃度を決定することを対象とする方法及び組成物が当該技術分野で必要とされている。本開示はこれらのニーズに取り組む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生させ;そして(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1qの濃度を決定する決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を測定することを含むアッセイを提供する。
【0005】
前述のアッセイは、ステップ(1)とステップ(2)との間で、生体サンプルに、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成C1qペプチドフラグメントを添加することをさらに含み得る。
【0006】
前述のアッセイにおいて少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量を測定することは、SRM-MSによって得られた少なくとも1つのC1qペプチドに対応するシグナルを標準曲線と比較することを含み得る。
【0007】
本開示は、(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルを生成し;そして(3)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを提供する。
【0008】
前述のアッセイは、ステップ(1)とステップ(2)との間で、生体サンプルに、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し、そしてステップ(2)とステップ(3)との間で、SRM-MSを実施して、少なくとも1つの標識された合成ペプチドに対応するシグナルを生成することをさらに含み得る。
【0009】
生体サンプルは血液サンプルであり得る。生体サンプルはヒトサンプルであり得る。生体サンプルは非ヒト霊長類サンプルであり得る。
【0010】
少なくとも1つのペプチドフラグメントは少なくとも5つのアミノ酸を含み得る。少なくとも1つのペプチドフラグメントは表2から選択されたペプチドを含み得る。
【0011】
少なくとも1つのペプチドフラグメントは、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)を含み得る。少なくとも1つのペプチドフラグメントは、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の少なくとも2つを含み得る。少なくとも1つのペプチドフラグメントは、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)及びQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の各々を含み得る。
【0012】
選択反応モニタリング質量分析はLC-SRM-MS/MSであり得る。
【0013】
少なくとも1つのタンパク質分解酵素はトリプシンであり得る。
【0014】
標準曲線は:(a)既知量の精製C1qタンパク質とC1q枯渇血清とを混合することによって少なくとも2つのC1q濃度標準を調製し;(b)少なくとも2つのC1q濃度標準に、C1q濃度標準をタンパク質分解酵素と接触させた後に産生されることが予想されるC1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントと同じアミノ酸配列を有する少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し;(c)少なくとも2つの標識されたC1q濃度標準をタンパク質分解酵素と接触させて、C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(d)選択反応モニタリング質量分析を実施して、C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントに対応するシグナルの強度及び少なくとも2つの標識されたC1q濃度標準の各々における少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントに対応するシグナルの強度を決定し;そして(e)シグナル及び既知量のC1qタンパク質を用いて標準曲線を決定することを含む方法を用いて作成することができる。
【0015】
本開示は、少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含む組成物を提供し、当該組成物は、タンパク質C1qから選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含む。
【0016】
少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含む組成物であって、当該組成物は、タンパク質C1qから選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含み、タンパク質C1qから選択されるアミノ酸配列は、C1qを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させることによって生じるC1qペプチドフラグメントの配列である。
【0017】
C1qタンパク質はヒト由来であり得る。C1qタンパク質は非ヒト霊長類由来であり得る。
【0018】
少なくとも1つの単離された合成ペプチドは少なくとも5つのアミノ酸を含み得る。
【0019】
タンパク質C1qから選択されるアミノ酸配列は、C1qを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させることによって生じるC1qペプチドフラグメントの配列であり得る。少なくとも1つのタンパク質分解酵素はトリプシンであり得る。
【0020】
少なくとも1つの単離された合成ペプチドを標識することができる。
【0021】
少なくとも1つの単離された合成ペプチドは表2から選択されるペプチドを含み得る。
【0022】
少なくとも1つの単離された合成ペプチドは、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)を含み得る。合成ペプチドSLGFCDTTNK(配列番号26)中のシステインを修飾することができる。修飾はカルバミドメチル化であり得る。
【0023】
本開示は、少なくとも1つの遷移イオン対を含む組成物を提供し、当該組成物は、タンパク質C1qの少なくとも1つの遷移イオン対を含み、少なくとも1つの遷移イオン対は、対応するm/zを有する前駆イオンと、対応するイオンm/zを有するフラグメントイオンとからなる。
【0024】
C1qタンパク質はヒト由来であり得る。C1qタンパク質は非ヒト霊長類由来であり得る。
【0025】
本開示は、少なくとも1つの遷移イオン対を含む組成物を提供し、当該組成物は、タンパク質C1qの少なくとも1つの遷移イオン対を含み、少なくとも1つの遷移イオン対は、対応するm/zを有する前駆イオンと、対応するイオンm/zを有するフラグメントイオンとからなり、遷移イオン対は、前駆体SLGFC(Cam)DTTNK(配列番号41)遷移対571.8-942.3、前駆体IAFSATR(配列番号29)遷移対383.1-581.1及び前駆体QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)遷移対487.0-350.3から選択される。上記態様のいずれも、任意の他の態様と組み合わせることができる。
【0026】
別段の定めのない限り、本明細書中で使用するすべての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書では、文脈で明らかに別段の記載がない限り、単数形は複数も含む;例として、「a」、「an」、及び「the」という語は、単数又は複数であると理解され、「又は(or)」という語は、包括的であると理解される。例として、「1つの要素(an element)」は1つ以上の要素を意味する。本明細書全体にわたり「含む(comprising)」、又は「comprises」若しくは「comprising」などの変化形は、明記された要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の排除を意味しないと理解される。約は、明記された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。文脈から明らかでない限り、本明細書中で提示するすべての数値は「約」という語によって修飾される。
【0027】
本明細書中で記載されているものと類似又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験で使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。すべての刊行物、本明細書中で言及するすべての特許出願、特許、及び他の引例は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書中で引用する引例は、請求する発明の先行技術であると認められるものではない。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示のみであり、限定的であることを意図しない。開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
上記特徴及びさらなる特徴は、添付の図面とあわせると、以下の詳細な説明からより明らかに理解されるであろう。
【0029】
【
図1】
図1は、ヒト、サル、マウス及びラット由来のC1qのAサブユニットのアミノ酸配列アラインメントである。
【
図2】
図2は、ヒト、サル、マウス及びラット由来のC1qのBサブユニットのアミノ酸配列アラインメントである。
【
図3】
図3は、ヒト、サル、マウス及びラット由来のC1qのCサブユニットのアミノ酸配列アラインメントである。
【
図4】
図4は、本開示の方法及びC1qタンパク質のAサブユニット由来のペプチドを使用して作成した較正曲線である。
【
図5】
図5は、本開示の方法及びC1qタンパク質のBサブユニット由来のペプチドを使用して作成した較正曲線である。
【
図6】
図6は、本開示の方法及びC1qタンパク質のCサブユニット由来のペプチドを使用して作成した較正曲線である。
【
図7】
図7は、ブランク消化物、ダブルブランク、ブランク、及び定量下限(LLOQ)サンプルにおけるC1qのA、B、及びCサブユニット由来の選択されたペプチドの一連のLC-SRM-MS/MSクロマトグラムである。
【
図8】
図8は、ハイライトされたピークのシグナル対ノイズ及び応答値を示す検出限界(LOD)及びLLOQサンプルにおけるC1qのA、B、及びCサブユニット由来の選択されたペプチドの一連のLC-SRM-MS/MSクロマトグラムである。
【
図9】
図9は、ULOQサンプルの分析前後でのブランク消化物サンプル中のC1qのA、B、及びCサブユニット由来の選択されたペプチドの一連のLC-SRM-MS/MSクロマトグラムである。
【
図10】
図10は、2000μg/mLの二重特異性抗体、20μg/mLの二重特異性抗体を追加又は二重特異性抗体を追加していないダブルブランク(L00)標準溶液中のC1qのA、B、及びCサブユニット由来の選択されたペプチド及びLLOQサンプルのLC-SRM-MS/MSクロマトグラムを示す。
【
図11】
図11は、本開示の方法を用いて測定した、二重特異性抗体と共にインキュベートしたサンプル中のC1q中の相対感度を示す一連のチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の方法を用いて異なる希釈剤中に異なる希釈因子で希釈されたサンプル中の内因性C1qについて測定された相対感度を示す一連のチャートである。
【
図13】
図13は、本開示の方法を用いて異なる希釈剤中に異なる希釈因子で希釈されたサンプル中のC1qについて測定された相対感度を示す一連のチャートである。
【
図14】
図14は、本開示の方法を用いて3回の凍結解凍サイクルに供するか又は48時間オートサンプラー中で保存したサンプル中のC1qについて測定された濃度の精度を示す一連のチャートを示す。
【
図15】
図15は、本開示の方法及びC1qのAサブユニット由来の選択されたペプチドを用いて決定された、投薬されたサルから得られた血液サンプルにおいて長時間にわたるC1q濃度を示すチャートである。
【
図16】
図16は、本開示の方法及びC1qのBサブユニット由来の選択されたペプチドを用いて決定された、投薬されたサルから得られた血液サンプルにおいて長時間にわたるC1q濃度を示すチャートである。
【
図17】
図17は、本開示の方法及びC1qのCサブユニット由来の選択されたペプチドを用いて決定された、投薬されたサルから得られた血液サンプルにおいて長時間にわたるC1q濃度を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、生体サンプルにおけるタンパク質バイオマーカーの存在量及び/又は濃度を決定するための方法及び組成物を提供する。いくつかの態様において、このタンパク質バイオマーカーはタンパク質C1qである。いくつかの態様において、本開示の方法は、液体クロマトグラフィー選択反応モニタリング質量分析(LC-SRM-MS)分析を含む。
【0031】
補体成分1q(C1q)は、自然免疫系の一部である補体系に関与するタンパク質複合体である。C1qはC1r及びC1sと一緒になって、C1複合体を形成する。C1qは、18個のポリペプチドサブユニット:6個のA-サブユニット、6個のB-サブユニット、及び6個のC-サブユニットから構成される400kDaタンパク質である。補体阻害剤は、いくつかの疾患の治療で成功裏に用いられてきた。C1q標的化モノクローナル抗体は、伝統的な補体経路を含む自己免疫疾患用療法として見込みがある。C1q標的治療法の開発には、実験室での研究及び臨床試験の間に生体サンプル中のC1qレベルの濃度を決定するための方法が必要である。現在のところ、ヒトサンプル中のC1q存在量を決定するには、ELISAなどのイムノアッセイの使用が必要となる。さらに、非ヒト霊長類サンプル中のC1qを分析するための免疫試薬は限られており、それらは臨床前研究及び試験の重要な態様である。したがって、ヒト、非ヒト霊長類及び他のモデル生物由来の生体サンプル中のC1q濃度を決定するための改善されたアッセイが必要とされる。
【0032】
LC-SRM-MS法は、標的タンパク質に対する絶対的構造特異性及び好適な内部標準が利用される場合は標的タンパク質濃度の相対若しくは絶対測定の両方を提供するので、液体クロマトグラフィー選択反応モニタリング質量分析(LC-SRM-MS)法が非常に望ましい。
【0033】
本開示の方法
本開示の様々な方法を本明細書中で詳細に記載する。
【0034】
本開示は:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;そして(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を測定することを含むアッセイを含む方法を提供する。
【0035】
いくつかの態様において、前述の方法は、ステップ(1)とステップ(2)との間で、生体サンプルに、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成C1qペプチドフラグメントを添加することをさらに含み得る。
【0036】
本開示はまた:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルを生成し;そして(3)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も提供する。
【0037】
いくつかの態様において、前述の方法は、ステップ(1)とステップ(2)との間で、生体サンプルに、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し、そしてステップ(2)とステップ(3)との間で、SRM-MSを実施して、少なくとも1つの標識された合成ペプチドに対応するシグナルを生成することをさらに含み得る。
【0038】
いくつかの態様において、生体サンプルは血液サンプルであり得る。好ましい態様では、生体サンプルは血清サンプルであり得る。いくつかの態様において、生体サンプルはヒトサンプルであり得る。あるいは、生体サンプルは非ヒト霊長類サンプルであり得る。非ヒト霊長類はMacaca fascicularis又はMacaca mulattaであり得る。
【0039】
いくつかの態様において、C1qタンパク質は、ヒトC1qタンパク質であり得る。他の態様では、C1qタンパク質は、Macaca fascicularis C1qタンパク質である。さらに別の態様では、C1qタンパク質はcan be Macaca mulatta C1qタンパク質であり得る。C1qタンパク質は表1に示す配列のいずれかを含み得る。
【0040】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0041】
前述の方法のいくつかの態様において、タンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又は少なくとも20のアミノ酸を含む。
【0042】
前述の方法のいくつかの態様において、タンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントは表2から選択されるペプチドを含む。他の態様では、少なくとも1つのペプチドフラグメントは、タンパク質C1qのトリプシンペプチドを含む。
【0043】
【0044】
前述の方法のいくつかの態様において、タンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントは、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)を含む。他の態様では、少なくとも1つのペプチドフラグメントは、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の少なくとも2つを含む。さらに別の態様において、少なくとも1つのペプチドフラグメントは、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)及びQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の各々を含む。
【0045】
したがって、本開示は:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)及びQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の各々を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)SRM-MSを実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体SLGFCDTTNK(配列番号26)遷移対571.8-942.3、前駆体IAFSATR(配列番号29)遷移対383.1-581.1、及び前駆体QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)遷移対487.0-350.3の各々を含む遷移イオン対に係るSRM-MSシグナルを生成し;そして(3)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法を包含する。
【0046】
本開示はまた:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)及びQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の各々を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)生体サンプルに、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)及びQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の各々のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し;(3)SRM-MSを実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体SLGFCDTTNK(配列番号26)遷移対571.8-942.3、前駆体IAFSATR(配列番号29)遷移対383.1-581.1、及び前駆体QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)遷移対487.0-350.3の各々を含む遷移イオン対に係るSRM-MSシグナルと、少なくとも1つの標識された合成ペプチドに対応するシグナルと、を生成し;そして(4)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も包含する。
【0047】
本開示はまた:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、SLGFCDTTNK(配列番号26)を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体SLGFC(Cam)DTTNK(配列番号41)遷移対571.8-942.3を含む遷移イオン対に係るSRM-MSシグナルを生成し;そして(3)正規化シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も包含する。
【0048】
本開示はまた:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、SLGFCDTTNK(配列番号26)を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)生体サンプルに、SLGFCDTTNK(配列番号26)のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し;(3)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体SLGFC(Cam)DTTNK(配列番号41)遷移対571.8-942.3を含む遷移イオン対に係るものである前記SRM-MSシグナルと、少なくとも1つの標識された合成ペプチドに対応するシグナルとを生成し;そして(4)正規化シグナルを標準曲線と比較することによって少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も包含する。
【0049】
本開示はまた:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、IAFSATR(配列番号29)を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体IAFSATR(配列番号29)遷移対383.1-581.1を含む遷移イオン対に係るSRM-MSシグナルを生成し;そして(3)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も包含する。
【0050】
本開示はまた:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、IAFSATR(配列番号29)を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)生体サンプルに、IAFSATR(配列番号29)のアミノ酸配列を同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し;(3)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体IAFSATR(配列番号29)遷移対383.1-581.1を含む遷移イオン対に係るSRM-MSシグナル、及び少なくとも1つの標識された合成ペプチドに対応するシグナルを産生し;そして(4)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も包含する。
【0051】
本開示はまた:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)遷移対487.0-350.3を含む遷移イオン対に係るSRM-MSシグナルを生成し;そして(3)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も包含する。
【0052】
本開示は:(1)生体サンプルを少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、生体サンプル中に存在するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントであって、QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)を含む少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(2)生体サンプルに、QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し;(3)選択反応モニタリング質量分析(SRM-MS)を実施して、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントに対応するシグナルであって、前駆体QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)遷移対487.0-350.3を含む遷移イオン対に係るSRM-MSシグナル、及び少なくとも1つの標識された合成ペプチドに対応するシグナルを生成し;そして(4)シグナルを標準曲線と比較することによって、少なくとも1つのC1qペプチドフラグメントの存在量であって、生体サンプル中のC1q濃度を決定する、を含むアッセイを含む方法も包含する少なくともC1qペプチドフラグメントの存在量を決定することを含むアッセイを含む方法も包含する。
【0053】
本開示の方法のいくつかの態様では、選択反応モニタリング質量分析はLC-SRM-MS/MSである。
【0054】
本開示の方法のいくつかの態様では、少なくとも1つのタンパク質分解酵素はトリプシンである。限定されるものではないが、Glu-Cプロテアーゼ、Lys-Nプロテアーゼ、Lys-Cプロテアーゼ、Asp-Nプロテアーゼ又はキモトリプシンを含む他の好適なタンパク質分解酵素は、当業者には公知であろう。
【0055】
本開示の方法のいくつかの態様では、標準曲線は:(a)既知量の精製C1qタンパク質とC1q枯渇血清とを混合することによって少なくとも2つのC1q濃度標準を調製し;(b)少なくとも2つのC1q濃度標準に、C1q濃度標準をタンパク質分解酵素と接触させた後に産生されることが予想されるC1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントと同じアミノ酸配列を有する少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを添加し;(c)少なくとも2つの標識されたC1q濃度標準をタンパク質分解酵素と接触させて、C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントを産生し;(d)選択反応モニタリング質量分析を実施して、C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントに対応するシグナルの強度及び少なくとも2つの標識されたC1q濃度標準の各々における少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントに対応するシグナルの強度を決定し;そして(e)シグナル及び既知量のC1qタンパク質を用いて標準曲線を決定することを含む方法を用いて産生することができる。
【0056】
いくつかの態様において、標準曲線は、少なくとも3、又は少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7、又は少なくとも8、又は少なくとも9、又は少なくとも10のC1q濃度標準を用いて作成することができる。いくつかの態様において、C1q濃度標準の調製は、精製C1qタンパク質をC1q枯渇血清中に希釈又は連続希釈することを含み得、希釈因子は、1:1、1:1.5、又は1:2、又は1:2.5、又は1:3、又は1:3.5、又は1:4、又は1:5、又は1:6、又は1:7、又は1:8、又は1:9、又は1:10、又は1:100、又は1:1000、又は1:1~1:10000の範囲内の任意の希釈因子であり得る。
【0057】
本開示の方法のいくつかの態様では、少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントは、生体サンプルをタンパク質分解酵素と接触させる前に、生体サンプルに添加することができる。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントを本開示の方法のトラブルシューティングのために使用することができる。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの標識された合成ペプチドフラグメントに相当するシグナルを使用して、標識された合成ペプチドフラグメントが相当するタンパク質C1qの少なくとも1つのペプチドフラグメントのシグナルを正規化することができる。
【0060】
本開示の方法のいくつかの態様では、C1q標準曲線を使用して生体サンプル中のC1q存在量を測定することができる。所定の標準サンプル中のC1qペプチドの存在量を規定することができ、結果を、生体サンプル中に見られる、対応するC1qペプチドからのLC-SRM-MS結果と比較した。これにより、生体サンプル中のペプチドの存在量の算出が可能になる。したがって、サンプル中のペプチドの存在量を知ることによって、それが相当するタンパク質の存在量を決定する。
【0061】
本開示の組成物
本開示の様々な組成物を本明細書中で詳細に記載する。
【0062】
本開示は、少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含む組成物を提供し、当該組成物は、タンパク質C1qから選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含む。
【0063】
合成ペプチドは、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて生成させることができる。これらの方法は、細菌における発現又は真核細胞溶解物におけるインビトロ発現などの組換え発現技術を含み得る。これらの方法は固相合成も含み得る。
【0064】
合成ペプチドをアイソトープで標識することができる。それらを標識することができるアイソトープには、13C、2H、15N及び18Oが含まれる。標識されたペプチドは、少なくとも1つの13C標識及び/又は15N標識リジン残基、又は少なくとも1つの13C標識及び/又は15N標識アルギニン残基を含み得る。ペプチドはまた、極性溶媒も含み得る。極性溶媒は、水及びエタノールと水との混合物を含み得る。
【0065】
本開示の組成物のいくつかの態様において、C1qタンパク質はヒトC1qタンパク質であり得る。他の態様では、C1qタンパク質はMacaca fascicularis C1qタンパク質である。さらに別の態様では、C1qタンパク質はMacaca mulattaであり得る。C1qタンパク質は表1に示す配列のいずれかを含み得る。
【0066】
本開示の組成物のいくつかの態様において、少なくとも1つの単離された合成ペプチドは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10又は少なくとも20個のアミノ酸を含む。
【0067】
本開示の組成物のいくつかの態様において、単離された合成ペプチドは、C1qをタンパク質分解酵素と接触させることによって生じるC1qペプチドフラグメントの配列を含む。好ましい態様では、タンパク質分解酵素はトリプシンである。したがって、好ましい態様では、単離された合成ペプチドはC1qのトリプシンペプチドである。
【0068】
本開示の組成物のいくつかの態様では、単離された合成ペプチドを標識する。単離された合成ペプチドはアイソトープで標識することができる。それらを標識することができるアイソトープには、限定されるものではないが、13C、2H、15N及び18Oが含まれ得る。ペプチドはまた、極性溶媒も含み得る。極性溶媒は、水、エタノールと水とアセトニトリルとの混合物を含み得る。
【0069】
本開示の組成物のいくつかの態様において、単離された合成ペプチドは表2から選択されるペプチドを含む。他の態様では、組成物は表2に記載する任意の2つのペプチドを含む。他の態様では、組成物は、表2で記載する、任意の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19個のペプチドを含んでいた。
【0070】
好ましい態様において、本開示の組成物は、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)を含む少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含み得る。組成物は、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の少なくとも2つを含む、少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含み得る。更に別の態様では、組成物は、SLGFCDTTNK(配列番号26)、IAFSATR(配列番号29)又はQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)の各々を含む少なくとも1つの単離された合成ペプチドを含み得る。
【0071】
本開示の組成物のいくつかの態様において、合成ペプチドSLGFCDTTNK(配列番号26)中のシステインを修飾することができる。修飾はカルバミドメチル化であり得る。
【0072】
本開示は少なくとも1つの遷移イオン対を含む組成物を提供し、当該組成物は、タンパク質C1qの少なくとも1つの遷移イオン対を含み、少なくとも1つの遷移イオン対は、対応するm/zを有する前駆イオンと、対応するイオンm/zを有するフラグメントイオンとからなる。
【0073】
本開示の組成物のいくつかの態様では、C1qタンパク質はヒトC1qタンパク質であり得る。他の態様では、C1qタンパク質は、Macaca fascicularis C1qタンパク質である。さらに別の態様では、C1qタンパク質はMacaca mulattaであり得る。C1qタンパク質は、表1に示す配列のいずれかを含み得る。
【0074】
本開示は、少なくとも1つの遷移イオン対を含む組成物を提供し、当該組成物はタンパク質C1qの少なくとも1つの遷移イオン対を含み、少なくとも1つの遷移イオン対は、対応するm/zを有する前駆イオンと、対応するイオンm/zを有するフラグメントイオンとからなり、遷移イオン対は、前駆体SLGFC(Cam)DTTNK(配列番号41)遷移対571.8-942.3、前駆体IAFSATR(配列番号29)遷移対383.1-581.1及び前駆体QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)遷移対487.0-350.3から選択される。
【0075】
定義
本明細書中で使用する場合、「m/z」は、イオンの質量対電荷比を意味する。
【0076】
本明細書中で使用する場合、「MS/MS」は、質量分析の複数の段階を含み、フラグメント化のある形態が段階間で起こる、質量分析の一種である、タンデム質量分析を表す。
【0077】
本明細書中で使用する場合、「LC-SRM-MS」は、「選択反応モニタリング」の頭字語であり、「LC-MRM-MS」又は「LC-SRM-MS/MS」と交換可能に使用することができる。
【0078】
LC-SRM-MSはタンデム質量分析の高度に選択的な方法であり、所望の検体(複数可)を除くすべての分子及び汚染物質を効果的にろ過して除去する見込みがある。これは、分析サンプルが所定の分析ウインドウ内のいくつかのアイソバリック種を含み得る複合混合物である場合、特に有益である。LC-SRM-MS法は、三連四重極質量分析計を利用することができ、これは、当該技術分野で公知のように、3つの四重極ロッドセットを含む。集団選択の第一段階は第一四重極ロッドセットにおいて実施され、選択的に伝播されたイオンは第二の四重極ロッドセットにおいてフラグメント化される。結果として得られた遷移(生成物)イオンは第三の四重極ロッドセットに搬送され、これは集団選択の第二段階を実施する。第三の四重極ロッドセットを介して伝達された生成物イオンは検出器によって測定され、これは選択的に伝達された生成物イオンの数を表すシグナルを生成する。第一及び第三の四重極に適用されるRF及びDC電位を調整して、狭い指定範囲内にあるm/z値を有する(それぞれの)前駆体及び生成物イオンを選択する。適切な遷移(前駆体及び生成物イオンのm/z値)を特定することによって、標的化タンパク質に相当するペプチドは、高度の感度及び選択性で測定することができる。LC-SRM-MSにおけるシグナル対ノイズ比は、多くの場合、特定の検体を選択的に標的化(フィルター)するのではなく、サンプルにおいてすべての検体を調査することを目的とする従来型タンデム質量分析(MS/MS)実験よりも優れている。
【0079】
LC-SRM-MS質量分析は気相イオンのフラグメント化を含み、質量分析の異なる段階の間で行われる。イオンをフラグメント化するために使用される多くの方法があり、これらにより、様々なタイプのフラグメント化と、したがって分子の構造及び組成に関する様々な情報を得ることができる。LC-SRM-MSスペクトルにおいて観察される遷移イオンがいくつかの異なる因子から得られ、これらは、限定されるものではないが、一次配列、内部エネルギーの量、エネルギーを導入する手段、及び荷電状態が挙げられる。遷移は、検出される少なくとも1つの荷電を搬送しなければならない。ペプチドの本来のN末端を含む遷移上にある場合、イオンはa、b又はcのいずれかとして分類され、一方、荷電がペプチドの本来のC末端を含む遷移上にある場合、イオンはx、y又はzのいずれかとして分類される。下付き文字は、遷移中の残基の位置(例えば、C末端からのx1の第一ペプチド残基、C末端からのy2の第二ペプチド残基、及びC末端からのz3の第三ペプチド残基など)を示す。
【0080】
-N-C(O)-C-で表される一般的なペプチド繰り返し単位において、xイオン及びカルボニル-炭素結合(すなわち、C(O)-C)の切断から得られるイオン。xイオンはアシリウムイオンであり、aイオンはイミニウムイオンである。yイオン及びbイオンは、カルボニル-窒素結合(すなわち、C(O)-N、アミド結合としても知られる)の切断により得られる。この場合、yイオンはアンモニウムイオンであり、bイオンはアシリウムイオンである。最後に、zイオン及びcイオンは、窒素-炭素(すなわち、C-N)結合の切断により得られる。zイオンはカルボカチオンであり、cイオンはアンモニウムイオンである。
【0081】
上付き文字は、バックボーンフラグメント化に加えて、ニュートラルロスを示すために使用される場合があり、例えば、アンモニアの損失の*や、水の損失の°である。プロトンに加えて、cイオン及びyイオンは、前駆体ペプチドから追加のプロトンを除去し得る。エレクトロスプレーイオン化では、トリプシンペプチドは、1より多い電荷を有し得る。
【0082】
内部遷移は二重バックボーン切断から生じる。これらは、b型及びy型切断(すなわち、b及びyイオンを生じる切断)の組み合わせによって形成することができる。内部切断イオンはまた、a型及びy型切断の組み合わせによって形成することもできる。a型及びy型切断の組み合わせによって形成される単一側鎖を用いた内部遷移は、イミニウムイオン(イモニウム又はインモニウムイオンとも称する場合がある)と呼ばれる。これらのイオンは、対応するアミノ酸の一文字コードで標識される。
【0083】
低エネルギーCID(すなわち、三連四重極又はイオントラップにおける衝突によって誘発された解離)は、主にそのバックボーンに沿った正電荷を有するペプチドのフラグメント化を含み、主にa、b及びyイオンを生成する。
【0084】
1つ以上の液体クロマトグラフィー(LC)精製ステップをその後のLC-SRM-MS分析ステップ前に実施する。伝統的なLC分析はサンプル成分とカラム充填材との間の化学的相互作用に依存し、カラムを通るサンプルの層流は、関心対象の検体を試験サンプルから分離するための基盤である。当業者は、そのようなカラムにおける分離が拡散過程であることを理解するであろう。様々なカラム充填材がサンプルのクロマトグラフ分離に利用可能であり、適切な分離プロトコルの選択は、サンプル特性、関心対象の検体、存在する妨害物質及びそれらの特性などに依存する経験過程である。様々な充填化学を、ニーズ(例えば、精製される化合物の構造、極性、及び溶解度)に応じて使用することができる。様々な態様において、カラムは、極性、イオン交換(カチオン及びアニオンの両方)、疎水性相互作用、フェニル、C-2、C-8、C-18カラム、多孔質ポリマー上の極性コーティング、又は商業的に入手可能なその他のものである。クロマトグラフィーの間、材料の分離は、溶離剤(「移動相」としても知られる)の選択、勾配溶出及び勾配条件の選択、温度などの変数によって影響を受ける。ある特定の態様において、検体は、関心対象の検体がカラム充填材によって可逆的に保持される一方で、1つ以上の他の材料は保持されない条件下でサンプルをカラムにかけることによって精製することができる。これらの態様では、関心対象の検体がカラムによって保持される第一移動相条件を用いることができ、第二移動相条件をその後用い、保持されていない材料を洗い流したら、保持された材料をカラムから分離することができる。別法として、1つ以上の他の材料と比較して異なる速度で関心対象の検体が溶出する移動相条件かでサンプルをカラムにかけることによって検体を生成することができる。上述のように、そのような手順で、1つ以上の関心対象の検体の量をサンプルの1つ以上の他の成分と比較して濃縮することができる。
【0085】
以下のパラメータを使用して、特定のLC-SRM-MSシステムのもとでタンパク質のLC-SRM-MSアッセイを特定する:(1)タンパク質のトリプシンペプチド;(2)ペプチドの保持時間(RT);(3)ペプチド前駆イオンのm/z値;(4)前駆イオンをイオン化するために使用されるクラスタ分離電位;(5)ペプチド前駆イオンから生じるフラグメントイオンのm/z値;及び(6)特定のペプチドについて最適化されるペプチド前駆イオンをフラグメント化するために使用される衝突エネルギー(CE)。
【0086】
本明細書中で使用する場合、「ISP」は「内部標準ペプチド」を指す。
【0087】
本明細書中で開示する方法によるペプチド遷移の正確な定量化を促進するために、関心対象のペプチドのアイソトープで標識された合成体のセットを既知量で内部標準としての使用のためのサンプルに添加することができる。アイソトープで標識されたペプチドは対応するサロゲートペプチドと同じ物理的及び化学的性質を有するので、それらはクロマトグラフカラムから共溶出し、結果として得られるマススペクトルに関して容易に同定可能である。標識された標準の添加は、タンパク質消化の前又は後で行うことができる。アイソトープで標識されたペプチドを合成する方法は当業者には公知であろう。したがって、いくつかの態様において、実験サンプルは内部標準ペプチドを含む。他の態様は、外部標準又はペプチド定量化のための他の手段を利用することができる。
【0088】
本明細書中で使用する場合、「トリプシンペプチド」は、タンパク質のトリプシンでの処理によって形成されるペプチドを指す。
【0089】
本明細書中で使用する場合、用語「標準曲線」は、用語「較正曲線」と交換可能に使用することができる。
【0090】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈で明確に別段の記載がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0091】
具体的に明記されていないか又は文脈から明らかでない限り、本明細書中で使用する場合、用語「又は(or)」は、「又は(or)」と「及び(and)」との両方を含み、対象とすると理解される。
【0092】
具体的に明記されていないか又は文脈から明らかでない限り、本明細書中で使用する場合、用語「約」は、当該技術分野の一般公差の範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内と理解される。約は、明記された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。文脈から明らかでない限り、本明細書中で提示されるすべての数値は用語「約」で修飾される。
【0093】
別段の定めのない限り、本明細書中で使用されるすべての科学技術用語は本発明が関連する技術分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で記載するものと類似又は均等な他のプローブ、組成物、方法、及びキットを本開示の実施で使用することができるが、好ましい材料及び方法を本明細書中で記載する。本明細書中で使用する専門用語は、特定の態様を記載するためだけのものであり、限定することを意図するものではないと理解すべきである。
【実施例】
【0094】
実施例1 本開示の方法を使用したC1q濃度標準曲線の決定
C1q標準及び品質管理(QC)サンプルを含む、既知C1q濃度のC1q基準溶液のセットを使用して、較正曲線とも称する標準曲線を作製するために本開示の方法を使用した。本開示の方法の感度及び精度も試験した。
【0095】
調製したC1q標準サンプルを使用して較正曲線を作成し、以下のガイドラインを使用して適用した:
精製C1qタンパク質を実験サンプルと同じ生体マトリックス中に希釈した。
試験したC1Q基準溶液のセットは、ダブルブランク、ブランク、及び少なくとも6つの非ゼロ濃度のC1qから構成されていた。
定量下限(LLOQ)は、LLOQサンプルの測定された応答がブランクサンプルの応答と比較して少なくとも5倍であるので、精度が公称濃度の25%以内であり、変動係数が25%未満であるC1qタンパク質の濃度と定義される。
定量上限(ULOQ)は、精度が公称濃度の20%以内であり、変動係数が20%未満であるように定義される。
【0096】
較正曲線は、以下のガイドラインを使用して作成し適用したC1q QCサンプルを用いて作成した:
少なくとも3つの濃度のQCサンプルを調製し、較正のために使用した。
各QCサンプルを二連で調製した。
QCサンプルは、アッセイの低、中及び高定量範囲を対象とし、低QC(LQC)サンプルはLLOQの濃度の3倍以内であった。
QCサンプルの少なくとも67%の精度は公称濃度の20%以内であった。
各レベルでのQCサンプルの少なくとも50%の精度は公称濃度の20%以内であった。
最小数のQCサンプルは未知サンプルの数の少なくとも5%以上又は6つの総QCサンプルであった。
QCサンプルは、C1q基準溶液の調製のためにストック溶液とは別のC1qストック溶液を用いて調製した。
【0097】
材料:
精製ヒト補体タンパク質C1q(Quidel、Item#A400)
補体C1q枯渇血清、ヒト(Sigma-Aldrich、Cat#234401-1ML)
SLGFC(Cam)DTTNK(配列番号41)(New England Peptide)
IAFSATR(配列番号29)(New England Peptide)
QTHQPPAPNSLIR(配列番号36)(New England Peptide)
二重特異性モノクローナル抗体薬剤候補
再懸濁緩衝液を追加したシーケンシング等級の修飾トリプシン(Promega、Cat#.V5117)
UltraPure 1.0Mトリス-HCl pH7.5(Invitrogen、Cat#15567-027)
UltraPure 1.0Mトリス-HCl pH8.0(Invitrogen、Cat#15568-025)
UltraPure 1.0Mトリス-HCl pH8.5(Alfa Aesar、Cat#J61038)
尿素(Sigma Aldrich、Cat#U5128-100G)
TCEP HCL(Thermo Scientific;Cat#20491)
ヨードアセトアミド(Sigma-Aldrich;Cat#A3221-10VL)
ギ酸(Thermo Scientific;Cat#28905)
アセトニトリル(Fisher Chemical、Cat#A955-4)
ACQUITY UPLC BEH130 C18カラム、1.7μm、2.1mm×50mm(Waters、Part# 1860035554)
96ウェルプレート、0.5mL、ポリプロピレン(Agilent、Part#5042-1386)
25mLの使い捨て試薬容器(VistaLab、Part# 3054-1004)
TripleQuad質量分析計(Agilent、Model#6495)
1290 Infinity II LCシステム(Agilent、Model#1290)
【0098】
サンプル調製
200μg/mLのC1qストック溶液を、C1q枯渇ヒト血清及び、20μg/mLの二重特異性モノクローナル抗体薬剤候補を含むアッセイ希釈緩衝液(ADB)中で調製した。C1qストック溶液を1~3、6回連続希釈して、6つのC1q標準溶液(L6~L1)を調製した。LLOQ(定量下限)、低QC、中QC、高QC、及びULOQ(定量上限)サンプルをC1qストック溶液から独立してADB中で調製した。ADBのアリコートをL0(ブランク)サンプルとして保存した。C1q標準及びQC溶液の濃度を表3に記載する。
【0099】
【0100】
以下のアイソトープ標識内部標準ペプチド(ISP)を、0.1%ギ酸中30%アセトニトリル中で6~12mMに再構成して、アイソトープ標識ISP溶液:SLGFC(Cam)DTTNK(配列番号41)、IAFSATR(配列番号29)、及びQTHQPPAPNSLIR(配列番号36)を作製した。
【0101】
各C1qサンプルを100mMトリス-HCl、pH7.5及び20μg/mLの二重特異性抗体中で50倍に希釈した。各々5μLの希釈されたC1qサンプルを次いで変性させ、20μLの8M尿素及び10mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)中、56℃で振盪しながら30分間還元した。5μLの50mMヨードアセトアミドを次いで各サンプルに添加し、サンプルを次いで暗所にて25℃で振盪しながら30分間インキュベートした。10μLの適切なアイソトープ標識ISP溶液を次いで各サンプルに添加した。ISPの添加後、100μLの0.01μg/μLトリプシンも各サンプルに添加した。サンプルを次いで37℃にて暗所で振盪しながら4時間インキュベートした。5μLの20%のギ酸をサンプルに添加して、トリプシン消化反応をクエンチした。サンプルを混合し、4680rpmで5分間遠心分離した後、LC-SRM-MS/MSによって分析した。
【0102】
LC-SRM-MS分析
LC-SRM-MS分析を、1290 Infinity II LCシステム(Agilent、Model#1290)を備えたTripleQuad質量分析計(Agilent、Model#6495)で実施した。使用したLC勾配を表4に記載し、ここで、緩衝液Aは0.1%水中ギ酸からなり、緩衝液Bは0.1%アセトニトリル中ギ酸から構成されていた。
【0103】
【0104】
SRM-MS分析はサンプル中の天然のC1qペプチドフラグメントとアイソトープ標識ペプチドとを同時にモニタリングした。2つの遷移(天然及び重標識(heavy label))のピーク面積を集め、天然アイソトープ標識C1qペプチドの両方について報告した。各C1q標準及びQCサンプルについて、LC-SRM-MSによって分析されたC1qタンパク質のデータ出力は、下記表5に記載する3つの選択されたペプチドの各々からの2つの遷移測定(天然及び重標識)からなる6つの測定値を得た。
【0105】
【0106】
表5中の3つのペプチドの各々は、C1qの異なるサブユニットから得られる。サブユニットB由来のペプチドフラグメントを定量ペプチド(本明細書中ではサブユニットBペプチドと称する)として使用し、サブユニットA(本明細書中ではサブユニットAペプチドと称する)及びC(本明細書中ではサブユニットCペプチドと称する)由来のペプチドフラグメントを確認ペプチドとして使用した。アイソトープ標識ISPは、3つの選択されたペプチドの各々と同じであり、本明細書中でアイソトープ標識サブユニットA対照ペプチド、アイソトープ標識サブユニットB対照ペプチド、及びアイソトープ標識サブユニットC対照ペプチドと称するアミノ酸配列を有する。
【0107】
表5に記載する3つのペプチドを、これらのペプチドがLC-SRM-MS/MSアッセイ中のC1q濃度を定量するための最良のペプチドであることを示す先の結果に基づいた。これらのペプチドの選択は、ヒトとサル(Macaca fascicularis)との間のペプチド配列の保存に一部基づいていた。
図1は、 サブユニットAペプチドをハイライトしたヒト、サル(Macaca fascicularis)、マウス及びラットC1qのサブユニットAの配列アラインメントを示す。
図2は、サブユニットBペプチドをハイライトするヒト、サル(Macaca fascicularis)及びマウス及びラットC1qのサブユニットBの配列アラインメントを示す。
図3は、サブユニットCペプチドをハイライトするヒト、サル(Macaca fascicularis)、マウス及びラットC1qのサブユニットCの配列アラインメントを示す。C1qのA、B及びCサブユニットの各々から得られる複数のトリプシンペプチドをまず試験した。試験したペプチドを表2に示す。
【0108】
結果
各C1q標準サンプル及び各C1q QCサンプルを、LC-SRM-MS/MSを使用して分析した。各サンプルについて、6つのシグナル:天然のサブユニットAペプチドに対応するシグナル、天然のサブユニットBペプチドに対応するシグナル、天然のサブユニットCペプチドに対応するシグナル、アイソトープ標識サブユニットA対照ペプチドに対応するシグナル、アイソトープ標識サブユニットB対照ペプチドに対応するシグナル及びアイソトープ標識サブユニットC対照ペプチドに対応するシグナルが記録された。アイソトープ標識ペプチドのデータを、アッセイ性能トラブルシューティングのための内部標準として使用した。
【0109】
3つの選択されたペプチド(サブユニットAペプチド、サブユニットBペプチド、及びサブユニットCペプチド)の各々について、C1q標準サンプルから記録された正規化LC-SRM-MSシグナルをそれらのサンプルの対応する公称濃度に対してプロットすることによって較正曲線を作成した。
図4は、サブユニットAペプチドに相当するシグナルを用いて作成された較正曲線を示す。
図5は、サブユニットBペプチドに相当するシグナルを用いて作成された較正曲線を示す。
図6は、サブユニットCペプチドに相当するシグナルを用いて作成された較正曲線を示す。
図4~6について、黒色の点は濃度L1~L6のC1q標準サンプルを表す。青色の三角は、LLOQ、LQC、MQC、HQC、及びULOQ 濃度のC1q QCサンプルを表す。
【0110】
較正曲線を作成した後、較正曲線に相当するQCサンプル中の3つの標的ペプチドの各々のLC-SRM-MS/MSシグナルを比較することによって、QCサンプルの濃度を決定した。アッセイの精度は、決定された濃度をQCサンプルの公称濃度と比較することによって評価した。比較結果を表6~8に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
これらの結果は、アッセイが正確かつ高精度であることを示す。これらはまた、LC-SRM-MS/MSにより高い応答が記録され、シグナルはバックグラウンド干渉がないので、C1qのサブユニットB由来のペプチドIAFSATR(配列番号29)の使用で最良の結果が得られたことも示している。
【0115】
LLOQ及び検出限界(LOD)
図7の左及び中央のカラムに示すように、サブユニットAペプチド及びサブユニットBペプチドについてLLOQ濃度(0.27μg/mL)で記録されたマスクロマトグラムは、ブランク及びダブルブランクサンプルにおけるペプチドピークと同じ捕捉時間に位置するバックグラウンドピークを殆ど乃至全く示さなかった。しかしながら、
図7の右パネルに示すように、サブユニットCペプチドについて記録されたマスクロマトグラムはブランク及びダブルブランクサンプルにおいてバックグラウンドピークを示した。ブランクサンプルにおいてバックグラウンドピークの曲線の下の面積は、サンプルピークの曲線の下の面積の約5%であった。全体として、
図8に示すように、LLOQ濃度でのサブユニットAペプチド、サブユニットBペプチド及びサブユニットCペプチドのシグナル対ノイズ比は、それぞれ、51、36、94であり、検出限界(LOD)濃度では、それぞれ、7、9及び6であった。
【0116】
実施例2 本開示の方法の試験器具キャリーオーバー
本開示の方法は同じ器具に対して連続実験を実施するために使用する場合があるので、最後のサンプルからのキャリーオーバーが次のサンプルのアッセイを妨害しないことを確実にすることが重要である。本開示の方法を実施する間の器具キャリーオーバーを測定した。
【0117】
LC-SRM-MSクロマトグラムをまずブランク消化物サンプルについて記録した。直後、ULOQ濃度(66.7μg/mL)のC1q QCサンプルのマスクロマトグラムを同じ器具で記録した。最後に、第二ブランク消化物サンプルをULOQサンプルの分析後に同じ器具で分析した。
図9に示すように、サブユニットA、サブユニットB又はサブユニットCペプチドのULOQサンプルの分析前後でブランク消化物クロマトグラムにおいて有意な変化はなかった。これらの結果は、本開示の方法の器具キャリーオーバーが最小であることを示す。
【0118】
実施例3 本開示の方法の薬剤耐性の試験
抗体薬剤の存在が本開示の方法を妨害するか否かを調べるために、様々な濃度(0、20μg/mL、又は2000μg/mL)の二重特異性抗体をダブルブランク(ブランクマトリックスのみ、内部標準なし;L00)濃度のC1q基準サンプルに添加した。
図10に示すように、二重特異性抗体の添加は、記録されたマスクロマトグラムにおいて有意な変化をもたらさなかった。
【0119】
LQC、MQC及びHQC濃度(それぞれ、0.8μg/mL、6.3μg/mL及び50.0μg/mL)のC1q基準サンプルを二重特異性抗体の非存在下又は0μg/mL、20μg/mL、40μg/mL、若しくは2000μg/mLの二重特異性抗体のいずれかと共にインキュベートし、LC-SRM-MS/MSを用いて分析した。C1qアッセイにおいてこれらの濃度の二重特異性抗体は、ニートな血清中1mg/mL、2mg/mL、又は100mg/mLの二重特異性抗体に相当していた。これらの濃度を薬物動態でとらえると、50mg/kgの投薬量で投与した場合、二重特異性抗体6のピーク血清濃度(C
max)は1.25~1.5mg/mLである。
図11に示すように、二重特異性抗体を添加することによって、サブユニットA、サブユニットB及びサブユニットCペプチドのシグナル回復が実際に改善される。
図11において、各群におけるピンク色又は一番目の棒グラフは二重特異性抗体の非存在下でインキュベートされたサンプルに相当し;各群における黄色又は二番目の棒グラフは20μg/mLの二重特異性抗体と共にインキュベートされたサンプルに相当し;各群における緑色又は三番目の棒グラフは40μg/mLの二重特異性抗体と共にインキュベートされたサンプルに相当し;各群における青色又は四番目の棒グラフは2000μg/mLの二重特異性抗体と共にインキュベートされたサンプルに相当する。
【0120】
実施例4 本開示の方法の希釈回復及び希釈直線性の試験
本開示の方法における内因性C1qシグナルの回復も、様々な希釈剤中、様々な希釈因子で希釈されたサンプルにおいて試験した。試験した希釈剤は、20μg/mLの二重特異性抗体、2%枯渇ヒト血清、0.1%BSA及びトリス-HCl溶液と共にインキュベートした2%枯渇ヒト血清を含んでいた。これらのサンプルを20倍、50倍及び100倍に希釈し、LC-SRM-MS/MSを使用して希釈物を分析した。
図12に示すように、二重特異性抗体の添加によって、さらに高い希釈因子でも、サブユニットA、サブユニットB及びサブユニットCペプチドシグナルの回復が改善される。0.1%BSA及びトリス-HClで希釈されたサンプルでのシグナルの回復はより低かった。
図12において、各群における青色または一番目の棒グラフは、20μg/mLの二重特異性抗体とともにインキュベートした2%枯渇ヒト血清で希釈されたサンプルに相当し;各群におけるオレンジ色又は二番目の棒グラフは2%枯渇ヒト血清で希釈されたサンプルに相当し;各群における緑色又は三番目の棒グラフは0.1%BSAで希釈されたサンプルに相当し;各群における紫色又は四番目の棒グラフはトリス-HClで希釈されたサンプルに相当する。
【0121】
異なる希釈剤を使用したC1q参考基準からのシグナルの回復も試験した。LQC、MQC及びHQC濃度(それぞれ、0.8μg/mL、6.3μg/mL及び50.0μg/mL)のC1q基準サンプルを、20μg/mLの二重特異性抗体と共にインキュベートした2%枯渇ヒト血清、2%枯渇ヒト血清又は0.1%BSAのいずれかで希釈した。
図13に示すように、二重特異性抗体は、サブユニットA、サブユニットB及びサブユニットCペプチドシグナルの回復を改善した。
図13において、各群中の青色又は一番目の棒グラフは、20μg/mLの二重特異性抗体と共にインキュベートした2%枯渇ヒト血清で希釈したサンプルに相当し;各群中のオレンジ色又は二番目の棒グラフは、2%枯渇ヒト血清で希釈したサンプルに相当し;各群中の緑色又は三番目の棒グラフは、0.1%BSAで希釈したサンプルに相当する。
【0122】
本開示の方法の希釈直線性を試験するために、プールしたヒト血清、オスサル、及びメスサルサンプルを20倍、50倍、及び100倍に希釈した。これらの希釈したサンプル中の内因性C1q濃度を、本開示の方法を用いて決定した。この試験の結果を下記表9に示す。
【0123】
【0124】
実施例5 本開示の方法におけるサンプル調製再現性及びサンプル安定性
本開示の方法のサンプル調製再現性は、LLOQ、LQC、MQC、HQC、及びULOQ濃度にてC1q QCサンプルを用いて試験した。注射再現性のために、同じQCサンプルのアリコートを、同じ日(intra-day)又は異なる日(inter-day)のいずれかにアッセイ器具に注入した。サンプル調製再現性のために、サンプルを同日(intra-day)又は異なる日(inter-day)のいずれかでQC溶液から調製した。各状態に対して3個のサンプルを試験し、各状態に対する3個のサンプルの相対的標準偏差を下記表10に示す。
【0125】
【0126】
サンプル安定性に関して、LLOQ、LQC、MQC、HQC、及びULOQ濃度(それぞれ、0.3μg/mL、0.8μg/mL、6.3μg/mL、50.0μg/mL、及び66.7μg/mL)のC1q QCサンプルを、3回の凍結解凍サイクルに供するか、又は48時間オートサンプラー中で保存した後、それらのC1q濃度をC1qアッセイによって決定した。
図14に示すように、本開示の方法の精度は、3回の凍結解凍サイクルによって、又はオートサンプラー中で48時間保存することによって、大きく影響を受けなかった。
図14のチャートの最上列で、各群における一番目の棒グラフは、凍結前に新たに分析したサンプルに相当する;各群における二番目の棒グラフは、3回の凍結解凍サイクルに供したサンプルに相当する。
図14のチャートの最下列で、各群における一番目の棒グラフは、新たに分析したサンプルに相当する;各群における二番目の棒グラフは、オートサンプラー中で48時間貯蔵した後に分析したサンプルに相当する。
【0127】
別の実験で、72時間貯蔵も試験し、サンプル劣化又は損失は観察されなかった。
【0128】
実施例6 本開示の方法における内部標準ペプチドに関連するアッセイ変形
内部標準ペプチド(ISP)と呼ばれる重アイソトープ標識ペプチドは、サブユニットA、サブユニットB及びサブユニットCペプチドと同じアミノ酸配列を有する。LLOQ、LQC、MQC、HQC、及びULOQ濃度(それぞれ、0.3μg/mL、0.8μg/mL、6.3μg/mL、50.0μg/mL及び66.7μg/mL)のC1q QCサンプルを各ISPの存在下及び非存在下で分析した。この分析の結果を表11に示す。ISPを含むことは分析を妨害しなかった。したがって、アイソトープ標識ペプチドを保持時間確認、器具性能較正、及びトラブルシューティングのために使用した。
【0129】
【0130】
実施例6 本開示の方法を使用して処置したサル由来の血液サンプル中のC1qの定量
本開示の方法を使用して、二重特異性抗体で処置したサルの血液サンプル中に存在するC1qタンパク質の濃度を定量した。サル群指定及び服用レベルを表12に示す。
【0131】
【0132】
1群には、2mL/kgの服用量で緩徐ボーラス静脈内注射(slow bolus intravenous injection)によりアイソタイプ対照抗体を希釈投与した。2、3、及び4群には、2mL/kgの用量で緩徐ボーラス静脈内注射により希釈された二重特異性抗体を投与した。0.5mLの血液サンプルを以下のスケジュールにしたがって集めた:投薬前サンプル及び投薬後約5分のサンプルを第1日に集めた;その後のサンプルは、投薬後24時間、72時間及び168時間で集めた;サンプルはまた、投薬後第14日、投薬後第42日及び投薬後第56日の各々で1回集めた。血液サンプルを収集後1時間遠心分離し、収集した血清サンプルを、50μLずつ、4つのアリコートに分割した。
【0133】
各サル血清サンプルを、100mMトリス-HCl、pH7.5及び20μg/mLの二重特異性抗体中で50倍に希釈した。5μLの各々の希釈されたサル血清サンプルを次いで変性させ、20μLの8M尿素及び10mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)中、56℃にて振盪しながら30分還元させた。5μLの50mMヨードアセトアミドを次に各サンプルに添加し、サンプルを次いで暗所にて25℃で振盪しながら30分間インキュベートした。10μLの適切なアイソトープ標識内部標準ペプチド溶液(実施例1を参照)を添加した後、100μLの0.01μg/μLトリプシンを各サンプルに添加した。サンプルを次いで37℃にて暗所で振盪しながら4時間インキュベートした。5μLの20%のギ酸をサンプルに添加して、トリプシン消化反応をクエンチした。サンプルを混合し、4680rpmで5分間混合した後、それらをLC-SRM-MS/MSにより分析した。
【0134】
各サル血清サンプルについて、LC-SRM-MS/MSを使用して、サブユニットAペプチド、サブユニットBペプチド及びサブユニットCペプチドに対応するシグナル、並びにアイソトープ標識内部標準ペプチドに対応するシグナルを記録した。
【0135】
投薬されたサルの血清サンプルの各々におけるC1q濃度は、サブユニットA、サブユニットB及びサブユニットCペプチドのシグナルを較正曲線(実施例1で記載するように作成)と比較することによって決定した。サブユニットAペプチド、サブユニットBペプチド及びサブユニットCペプチドによって決定されるC1qの濃度を、表13~15に示す。サル血液中のC1q濃度の投薬後の時間経過を
図15~17に示す。
図15は、サブユニットAペプチドを使用して定量した投薬サルサンプル中のC1q濃度を示す。
図16は、サブユニットBペプチドを使用して定量した投薬サルサンプル中のC1q濃度を示す。
図17は、サブユニットCペプチドを使用して定量した投薬サルサンプル中のC1q濃度を示す。
図15~17において、青色の線は1群のサルに相当し、赤色の線は2群のサルに相当し、緑色の線は3群のサルに相当し、紫色の線は4群のサルに相当する。
【0136】
【0137】
*推定C1q濃度。LLOQ(0.27μg/mL)より低いがLOD(0.027μg/mL)より高い濃度。
【0138】
【0139】
*推定C1q濃度。LLOQ(0.27μg/mL)より低いがLOD(0.027μg/mL)より高い濃度。
【0140】
【0141】
*推定C1q濃度。LLOQ(0.27μg/mL)より低いがLOD(0.027μg/mL)より高い濃度。
【配列表】