(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】哺乳動物細胞における組織再生の誘導及びセノリシスのための改良された方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/00 20060101AFI20240115BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240115BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240115BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
C12N5/00
C12N5/071
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2021509953
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 US2019028816
(87)【国際公開番号】W WO2019209892
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-25
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520415029
【氏名又は名称】エイジェックス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト、マイケル・ディ.
(72)【発明者】
【氏名】スターンバーグ、ハル
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/214342(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/065065(WO,A1)
【文献】米国特許第06667176(US,B1)
【文献】特開2003-111588(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111875(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/058671(WO,A1)
【文献】Cell. Mol. Life Sci.,2017年,Vol.74,pp.3553-3575
【文献】Int. J. Mol. Sci.,2016年,Vol.17,226
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出生後の哺乳動物細胞の遺伝的プロファイルを変化させる
ための組成物
の組合せであって、
a 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)、4.0~10μMの2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン(RepSox)、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン及び1.0~5μMの4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸(TTNPB)を含む第1の組成物;
b 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMのCHIR99021、4.0~10μMのRepSox、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン、1.0~5μMのTTNPB及び50nM~240nMの3-デアザネプラノシンA(DZNep)を含む第2の組成物;
c 0.1~1.0μMのN-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミド(PD0325901)及び7.0~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)を含む第3の組成物;並びに
d 哺乳動物細胞においてTERT遺伝子を発現させるための好適な発現ベクターを含む第4の組成物、
を含む組成物
の組合せ。
【請求項2】
前記第1、第2及び第3の組成物が細胞培養培地中にある、請求項1に記載の組成物
の組合せ。
【請求項3】
前記第1、第2及び第3の組成物がヒアルロン酸を含むヒドロゲル中にある、請求項1に記載の組成物
の組合せ。
【請求項4】
COX7A1、ADIRF及びTNFRSF11Bの1つ以上の発現が胚性幹細胞における発現のレベルまで減少した場合に、前記細胞の遺伝的プロファイルが変化したと考える、請求項1に記載の組成物の組合せ。
【請求項5】
COX7A1の発現が胚性幹細胞における発現のレベルまで減少した場合に、前記細胞の遺伝的プロファイルが変化したと考える、請求項1に記載の組成物の組合せ。
【請求項6】
前記組成物の組合せが、組織再生の誘導(iTR)又はセノリシスのためのものである、請求項1に記載の組成物の組合せ。
【請求項7】
出生後の哺乳動物細胞の遺伝的プロファイルを変化させる
ための組成物
の組合せであって、
a 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)、4.0~10μMの2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン(RepSox)、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン及び1.0~5μMの4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸(TTNPB)を含む第1の組成物;
b 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMのCHIR99021、4.0~10μMのRepSox、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン、1.0~5μMのTTNPB及び50nM~240nMの3-デアザネプラノシンA(DZNep)を含む第2の組成物;並びに
c 0.1~1.0μMのN-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミド(PD0325901)及び7.0~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)を含む第3の組成物、
を含む組成物
の組合せ。
【請求項8】
前記第1、第2及び第3の組成物が細胞培養培地中にある、請求項
7に記載の組成物
の組合せ。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3の組成物がヒアルロン酸含有ヒドロゲル中にある、請求項
7に記載の組成物
の組合せ。
【請求項10】
COX7A1、ADIRF及びTNFRSF11Bの1つ以上の発現が胚性幹細胞における発現のレベルまで減少した場合に、前記細胞の遺伝的プロファイルが変化したと考える、請求項7に記載の組成物の組合せ。
【請求項11】
COX7A1の発現が胚性幹細胞における発現のレベルまで減少した場合に、前記細胞の遺伝的プロファイルが変化したと考える、請求項7に記載の組成物の組合せ。
【請求項12】
前記組成物の組合せが、組織再生の誘導(iTR)又はセノリシスのためのものである、請求項7に記載の組成物の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月23日に出願された米国仮特許出願62/661,322号の優先権及び利益を主張し、この出願はその内容全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、哺乳動物細胞の胚-胎児転換及び出生前/出生後転換の状況を変化させることによって再生及びセノリシス(senolysis)を制御する分子経路の調節を介し、老化、変性疾患及び癌を含む医学的状態を処置する新規な治療製剤をスクリーニングするための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト胚性幹(hES)細胞及びヒト人工多能性幹(hiPS)細胞が含まれるがこれらに限定されるものではないヒト多能性幹(hPS)細胞のin vitroでの単離及び増殖といった幹細胞技術の進歩は、医学研究の重要な新分野である。hPS細胞は、未分化状況で増殖するか、あるいは人体においてあらゆる細胞型に分化するように誘導される潜在力が実証されている(Thomson et al., Science 282:1145-1147(1998))。全ての体細胞型へ分化するhPS細胞に特有な内因的能力は、論理的に、さまざまな変性疾患を処置するための類似の多様性を有する移植可能なhPS由来細胞を製造するためのプラットフォームを提供する。hES細胞及びhiPS細胞のこの多能性は、現在は広範囲に認識されているが、比較的未分化の胚原基を生成するためにin vitroで培養されたhPS細胞の特有の能力はそれほど認識されておらず、ほぼ研究されていない。
【0004】
胎児又は成体の対応物と区別される遺伝子発現の微妙な出生前又は胎児前のパターンを示す心筋細胞又は骨軟骨細胞といった認識された細胞にhPS細胞由来細胞が分化する可能性はほとんど研究されていない。哺乳動物の分化細胞、並びに、皮膚、心臓及び脊髄といった組織は、in vivoでの胚-胎児転換(EFT)の直前に完全な瘢痕のない再生潜在力を示し、これはEFTの後に次第に失われる。ヒト心臓などの一部の組織の場合、瘢痕のない再生の可能性は、出生前-出生後転換(PPT)期間を過ぎておよそ1週間検出可能である。再生医療及び腫瘍学の分野に関する組織再生及び組織成長を理解し、調節することの重要性を考慮すると、in vitro及びin vivoで生物学をモデル化し、調節するために改良された方法は、研究及び診療において重要で潜在的な有用性を有する。
【0005】
in vitroで3次元類器官へ自己アセンブリーするための多能性幹細胞及び派生した胚様体の潜在力は、移植するための組織を得ることと(Singh et al, Stem Cells Dev. 2015.24(23):2778-95)ヒト胚発生をモデル化することの両方の潜在的な経路として関心を集めている。本発明は、前記類器官の形成が、EFTが組織発生及び/又は再生を受ける前の細胞の内因的な潜在力を反映していることを教示する。胚細胞とは対照的に、胎児及び成体由来細胞は、in vitroでの器官形成及びin vivoでの付加形成の可能性の低下を示すことが多い。付加形成は、ときとして「整形変態(epimorphosis)」と称され、傷害部位において比較的未分化の間葉の芽体が増殖し、次いで細胞が分化して元の組織構造を回復させるある種の組織再生を指す。付加形成の潜在力の損失が発生するタイミングは正確に固定することはできず、組織のタイプによっておそらく異なり、それにもかかわらず、ヒト発生の8週目終了の頃に発生するEFT(Carnegie Stage 23; O’Rahilly,R., F. Mueller (1987) Developmental Stages in Human Embryos, Including a Revision of Streeter’s ‘Horizons’ and a Survey of the Carnegie Collection. Washington, Carnegie Institution of Washington)は、胎盤哺乳動物における皮膚再生の損失に一時的に対応すると思われている(Walmsley, G.G. et al 2015. Scarless Wound Healing: Chasing the Holy Grail Plast Reconstr Surg. 135(3):907-17)。種間の相関関係は、胚又は幼虫の状況での再生能力の増加を示す(Morgan, T.H. (1901). Regeneration (New York: The MacMillan Company);また、Sanchez Alvarado,A., and Tsonis,P.A. (2006) Bridging the regeneration gap: genetic insights from diverse animal models. Nat.Rev.Genet. 7,873-884でレビューされている)。これは、組織再生が、瘢痕とは対照的に、胎児又は成体表現型とは対照的な胚の存在を反映することを示唆するが、付加組織形成が、遺伝子発現の胚(出生前、より具体的には、胎児前)のパターンの結果であるという意見の一致は現在はない。一部の種の場合、発生のタイミングにおける変化(異時性)は、重大な再生潜在力、たとえば幼虫発生(異時性)及びメキシコサンショウウオ(Mexican salamander axolotl)(A. mexicanum)において観察される四肢再生における発生停止の場合と相関性がある(Voss,S.R.et al, Thyroid hormone responsive QTL and the evolution of paedomorphic salamanders. Heredity (2012)109,293-298)。
【0006】
これらの所見にもかかわらず、EFTマーカー、及び変性疾患又は癌の処置のためのEFTの調節における特定の分子の役割を試験するための方法は限られている。本出願人らは、哺乳動物種におけるEFTマーカーと関連する組成物及び方法、並びに組織再生及び癌診断の調節におけるその使用を以前に開示し、“Compositions and Methods for Induced Tissue Regeneration in Mammalian Species”(国際公開第2014/197421号、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載しており、かつ“Improved Methods for Detecting and Modulating the Embryonic-Fetal Transition in Mammalian Species”(国際公開第2017/214342号、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載している。前述の組成物及び方法は、hPS細胞由来胚祖細胞株のクローン増殖を可能にする方法に一部基づいており、瘢痕のない様式で組織、たとえば皮膚を再生するのに有用である遺伝子発現の出生前パターンを有する新規であり多様であり高度に精製された細胞系統を増殖させるための手段を提供している。そのような細胞型は、細胞ベースの治療薬の研究において、及び製造に関して重要な用途を有する(発明の名称が「Novel Uses of Cells With Prenatal Patterns of Gene Expression」である国際特許出願(PCT/US2006/013519号、2006年4月11日出願);発明の名称が「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」である米国特許出願(11/604,047号、2006年11月21日出願);発明の名称が「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」である米国特許出願(12/504,630号、2009年7月16日出願)を参照。これらの出願は、参照により本明細書に組み込まれる)。それにもかかわらず、変性疾患及び癌の処置のためにEFTを調節するための改良された方法及び組成物が必要とされている。本発明は、これらに限定されないが、老化及び加齢に関連した変性疾患並びに多様なタイプの悪性腫瘍を含む多様な用途のための瘢痕のない哺乳動物再生療法のためのEFTの検出及び調節と関連する組成物及び方法を教示する。
【発明の概要】
【0007】
発明者らは、瘢痕のない組織再生の可能性が、いくつかの原始種、たとえばヒドラ及びプラナリアの寿命全体にわたって存在するが、大部分の哺乳動物種において初期の発生に制限されることを教示する。発明者らは、哺乳動物における胚形成の完了後に、腫瘍抑制を提供することによって生物に利益をもたらす連続的な分子の変化が生じるが、この変化は、多くの組織においてさらに後の瘢痕のない再生及びセノリシスの可能性を抑制するという有害な作用を有する(拮抗的多面発現)ことをさらに教示する。その結果、胚形成後に再生が抑制されると、成体におけるその後の腫瘍増殖が干渉されることを教示する。一方、セノリシス(機能不全のテロメアと関連するような重大なDNA損傷を有する細胞のプログラムされたアポトーシスとして定義されている)は、組織がもはや再生できず、セノリシスを受けている細胞を置き換えることができないという単純な理由で、胚形成後に抑制されることを本明細書で教示する。その結果、再生することができる組織は老化細胞のアポトーシスに対して感受性が高い傾向があり、同時に再生することができないものは、アポトーシスを阻害する傾向がある。その結果、発明者らは、再生するか又はセノリシスを受けるための細胞の内因的な能力は、哺乳動物における正常な発生と関連する分子メカニズム、より具体的にはEFTと関連するこれらの変化によって調節されることを教示する。
【0008】
さらに、発明者らは、遺伝子発現の胚パターンを回復させるように成体哺乳動物組織においてEFTの分子調節を変化させると(本明細書では「誘導性組織再生」、又は「iTR」と称する)、身体全体にわたって瘢痕のない組織再生の増加を誘導することができ、同時にセノリシスを誘導することができることを教示する。
【0009】
さらに、発明者らは、悪性癌細胞の大部分は遺伝子発現の胚パターン(本明細書では「胚-腫瘍(embryo-onco)表現型」又は「EOP」(たとえば、COX7A1発現の抑制により特徴付けられる)と称する)に復帰するが、このEOPは不安定で、腫瘍細胞のサブセットは遺伝子発現の成体パターンへシフトすることを教示する。結果的に、腫瘍が遺伝毒性の刺激に曝露された場合、たとえば患者が化学療法剤又は放射線療法で処置された場合、アポトーシスに対して比較的感受性があるEOPを有する癌細胞の大部分は破壊されるのに対し、遺伝子発現のパターン(たとえばCOX7A1発現)において比較的に成体である残りの多く細胞は、アポトーシスに耐性を示し、さらに増殖することができ、また、化学療法剤又は放射線療法に対して抵抗性を示すことができる。その結果、驚くことに、発明者らは、「癌幹細胞」又は「CSC」として考えられることが多いものは実際は未成熟祖先ではないが、逆の場合、CSCはより成熟した成体様細胞である(たとえば、COX7A1をより発現する)という直感に反した解釈を教示する。この理解は、癌診断としての腫瘍又は血液中の胚のマーカー又は成体マーカーの存在に関するモニタリングにおける新規な診断及び治療的戦略、並びに化学療法又は放射線療法の存在下でセノリシスが再び可能になるように、癌細胞を遺伝子発現の胚パターンに戻すためのiTR因子を用いた癌を処置するコンパニオン治療戦略を提供する。
【0010】
本開示は、哺乳動物細胞及び組織における胚-胎児転換(EFT)を調節することが有用である化合物、組成物、及び方法を同定し、利用するためのスクリーニングを提供する。より具体的には、本発明は、哺乳動物細胞におけるEFTを調節する分子経路を調節できる薬剤をスクリーニングし、利用するのに有用である化合物、組成物、及び方法を同定し、利用するためのスクリーニングであって、細胞及び組織にiTRをもたらすことを目標とし、そうでなければそのような瘢痕のない再生が完全にすることができないスクリーニングを提供する。さらに、本開示は、癌幹細胞にiTRをもたらすことができる薬剤(本明細書では「癌幹細胞の誘導性セノリシス」又は「iS-CSC」と称する)を同定し、利用してCSCを遺伝子発現の胚表現型(胎児前)パターンに復帰させ、胚表現型に復帰された悪性細胞を検出し、標的にして癌を診断し、処置し、iS-CSCをもたらすことが可能な薬剤をスクリーニングするためのスクリーニングを提供する。
【0011】
最後に、本開示は、老化した哺乳動物組織、又はまとめると、哺乳動物身体全体にiTRと、老化した組織を遺伝子発現の胚パターンを有する胚(胎児前)表現型へ復帰させるためのセノリシスとをもたらして、その結果アポトーシスをもたらし、前記老化した組織から老化細胞(iTR関連セノリシス)を除去し、同時にアポトーシスを受けた前記老化細胞を置き換えるように前記組織に再生潜在力をさらに誘導することが可能な薬剤を同定し、利用するためのスクリーニングを提供する。
【0012】
本開示の1つの側面において、研究者が、iTRが可能な薬剤を同定することを可能にする方法であって、1)前記細胞の外因性薬剤への曝露を促進する形式で成体哺乳動物細胞を培養する工程、2)前記細胞と並置して外因性候補分子を添加する工程、3)前記細胞におけるEFTの分子マーカーの発現を測定して、前記薬剤がiTRをもたらすかどうかを判定する工程から構成される方法が提供される。
【0013】
本開示の別の側面において、研究者が、iTRが可能な薬剤を同定することを可能にする方法であって、1)前記細胞の外因性薬剤への曝露を促進するマルチウェルフォーマットで、in vitroで成体ヒト皮膚線維芽細胞を培養する工程、2)多様な組合せ及び期間で前記細胞と並置してiTRの外因性候補分子モジュレーターを添加する工程、3)前記細胞からRNAを調製し、前記細胞におけるCOX7A1転写のレベルを測定して、前記薬剤がiTRをもたらすかどうかを判定する工程から構成される方法が提供される。
【0014】
本開示の別の側面において、研究者が、iTRが可能な薬剤を同定することを可能にする方法であって、1)EFTをシグナル伝達するレポーター遺伝子を保有しているZERT不死化成体ヒト皮膚線維芽細胞を培養する工程、2)多様な組合せ及び期間で前記細胞と並置してiTRの外因性候補分子モジュレーターを添加する工程、3)前記細胞におけるEFTをシグナル伝達するレポーター遺伝子の発現を測定して、前記薬剤がiTRをもたらすかどうかを判定する工程から構成される方法が提供される。
【0015】
本開示の別の側面において、iTRをin vivoで生成して変性疾患を処置するための方法が提供される。前記方法は、活性因子のカクテル:0.05~5.0mM、好ましくは1.0mMの濃度のバルプロ酸;7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のCHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル;4.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のRepSoxとしても知られるTGFβR-1/ALK5の阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン;2.0~10μM、好ましくは10μMの濃度のリジン特異的脱メチル化酵素1の阻害剤パルネート(トラニルシプロミンとも称される);0.5~50μM、好ましくは50μMの濃度のアデニリルシクラーゼフォルスコリンの活性化因子;1.0nM~5μM、好ましくは5.0μMの濃度の別名4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸、又はTTNPBとして知られているレチノイド受容体アゴニストアロチノイド酸を罹患した組織に17日間適用し、;次いで0.05~0.24μM、好ましくは0.1μMの濃度の3-デアザネプラノシンA(DZNep)としても知られるEZH2阻害剤(1S,2R,5R)-5-(4-アミノイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)-3-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-3-エン-1,2-ジオールをカクテルにさらに14日間添加し;次いで最後の7日間は前述の因子を中止し、PD0325901としても知られるMEK/ERK経路の阻害剤N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミドを0.1nM~1.0μM、好ましくは1.0μMの濃度で適用し、CHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリルを7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度で適用することを含み、全ての前述の因子は、生理学的に適合するビヒクル中で製剤化する。
【0016】
本開示の別の側面において、iTRをin vivoで生成してテロメラーゼを活性化するための薬剤とともに変性疾患を処置するための方法が提供される。前記方法は、活性因子のカクテル:0.05~5.0mM、好ましくは1.0mMの濃度のバルプロ酸;7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のCHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル;4.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のRepSoxとしても知られるTGFβR-1/ALK5の阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン;2.0~10μM、好ましくは10μMの濃度のリジン特異的脱メチル化酵素1の阻害剤パルネート(トラニルシプロミンとも称される);0.5~50μM、好ましくは50μMの濃度のアデニリルシクラーゼフォルスコリンの活性化因子;1.0nM~5μM、好ましくは5.0μMの濃度の別名4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸、又はTTNPBとして知られているレチノイド受容体アゴニストアロチノイド酸を罹患した組織に17日間適用し;次いで0.05~0.24μM、好ましくは0.1μMの濃度の3-デアザネプラノシンA(DZNep)としても知られるEZH2阻害剤(1S,2R,5R)-5-(4-アミノイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)-3-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-3-エン-1,2-ジオールをカクテルにさらに14日間添加し;次いで最後の7日間は前述の因子を中止し、PD0325901としても知られるMEK/ERK経路の阻害剤N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミドを0.1nM~1.0μM、好ましくは1.0μMの濃度で適用し、CHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリルを7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度で適用することを含み、全ての前述の因子は、テロメラーゼ触媒構成成分TERTを活性化するための薬剤、たとえば、罹患した細胞又は組織においてTERTの発現するための遺伝子療法コンストラクトとともに、生理学的に適合するビヒクル中で製剤化する。
【0017】
本開示の別の側面において、iTRをin vivoで生成して癌を処置するための、より具体的には、化学療法又は放射線療法後に残存する残存癌細胞を感作させるための方法が提供される。前記方法は、活性因子のカクテル:0.05~5.0mM、好ましくは1.0mMの濃度のバルプロ酸;7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のCHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル;4.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のRepSoxとしても知られるTGFβR-1/ALK5の阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン;2.0~10μM、好ましくは10μMの濃度のパルネートと称される(トラニルシプロミンとも称される)リジン特異的脱メチル化酵素1の阻害剤;0.5~50μM、好ましくは50μMの濃度のアデニリルシクラーゼフォルスコリンの活性化因子;1.0nM~5μM、好ましくは5.0μMの濃度の別名4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸、又はTTNPBとして知られているレチノイド受容体アゴニストアロチノイド酸を罹患した組織に17日間適用し;次いで0.05~0.24μM、好ましくは0.1μMの濃度の3-デアザネプラノシンA(DZNep)としても知られるEZH2阻害剤(1S,2R,5R)-5-(4-アミノイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)-3-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-3-エン-1,2-ジオールをカクテルにさらに14日間添加し;次いで最後の7日間は前述の因子を中止し、PD0325901としても知られるMEK/ERK経路の阻害剤N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミドを0.1nM~1.0μM、好ましくは1.0μMの濃度で適用し、CHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリルを7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度で適用することを含み、全ての前述の因子は、生理学的に適合するビヒクル中で製剤化し、続いて適用可能な化学療法又は放射線療法の追加のコースを行う。
【0018】
本開示の別の側面において、セノリシスをin vivoで生成して老化と関連する医学的状態を処置するために、より具体的には、老化細胞をアポトーシスに対して感作させるための方法が提供される。前記方法は、活性因子のカクテル:0.05~5.0mM、好ましくは1.0mMの濃度のバルプロ酸;7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のCHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル;4.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のRepSoxとしても知られるTGFβR-1/ALK5の阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン;2.0~10μM、好ましくは10μMの濃度のパルネートと称される(トラニルシプロミンとも称される)リジン特異的脱メチル化酵素1の阻害剤;0.5~50μM、好ましくは50μMの濃度のアデニリルシクラーゼフォルスコリンの活性化因子;1.0nM~5μM、好ましくは5.0μMの濃度の別名4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸、又はTTNPBとして知られているレチノイド受容体アゴニストアロチノイド酸を罹患した組織に17日間適用し;次いで0.05~0.24μM、好ましくは0.1μMの濃度の3-デアザネプラノシンA(DZNep)としても知られるEZH2阻害剤(1S,2R,5R)-5-(4-アミノイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)-3-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-3-エン-1,2-ジオールをカクテルにさらに14日間添加し;次いで最後の7日間は前述の因子を中止し、PD0325901としても知られるMEK/ERK経路の阻害剤N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミドを0.1nM~1.0μM、好ましくは1.0μMの濃度で適用し、CHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリルを7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度で適用することを含み、全ての前述の因子は、生理学的に適合するビヒクル中で製剤化する。
【0019】
当技術分野の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組換え核酸(たとえば、DNA)技術、免疫学などのある特定の従来技術が、本発明の側面において使用される場合がある。これらの技術のある特定の非限定的な説明は、以下の出版物で見出される:Ausubel,F., et al.,(eds.), Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols in Immunology, Current Protocols in Protein Science, and Current Protocols in Cell Biology, all John Wiley & Sons, N.Y., editions as of 2008;Sambrook, Russell, and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 2001;Harlow,E. and Lane,D., Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 1988;Bums,R., Immunochemical Protocols (Methods in Molecular Biology) Humana Press;3rd ed., 2005, Monoclonal antibodies: a practical approach (P.Shepherd and C Dean,eds., Oxford University Press, 2000);Freshney,R.I., ”Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique”, 5th ed., John Wiley & Sons, Hoboken, N J, 2005)。全ての特許、特許出願、ウェブサイト、データベース、科学論文及び本明細書に記載する他の出版物は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、hES細胞、多様なhEP株、出生後の発生にわたるEFT中のヒト治療群線維芽細胞、iPS細胞への再プログラミング前後の成体治療群線維芽細胞、及びAGEX1547を用いたiTR誘導前後の成体治療群線維芽細胞におけるCOX7A1発現を示す。エラーバーはSt. Dev.を示す。
【
図2】
図2は、hES細胞、多様なhEP株、出生後の発生にわたるEFT中のヒト治療群線維芽細胞、iPS細胞への再プログラミング前後の成体治療群線維芽細胞、及びAGEX1547を用いたiTR誘導前後の成体治療群線維芽細胞におけるADIRF発現を示す。エラーバーはSt. Dev.を示す。
【
図3】
図3は、hES細胞、多様なhEP株、出生後の発生にわたるEFT中のヒト治療群線維芽細胞、iPS細胞への再プログラミング前後の成体治療群線維芽細胞、及びAGEX1547を用いたiTR誘導前後の成体治療群線維芽細胞におけるTNFRSF1IB発現を示す。エラーバーはSt. Dev.を示す。
【
図4】
図4は、hES細胞、多様なhEP株、出生後の発生にわたるEFT中のヒト治療群線維芽細胞、iPS細胞への再プログラミング前後の成体治療群線維芽細胞、及びAGEX1547を用いたiTR誘導前後の成体治療群線維芽細胞におけるAMH発現を示す。エラーバーはSt. Dev.を示す。
【
図5】
図5は、hES細胞、多様なhEP株、出生後の発生にわたるEFT中のヒト治療群線維芽細胞、iPS細胞への再プログラミング前後の成体治療群線維芽細胞、及びAGEX1547を用いたiTR誘導前後の成体治療群線維芽細胞におけるCOL1A1発現を示す。エラーバーはSt. Dev.を示す。
【
図6】
図6は、hES細胞、多様なhEP株、出生後の発生にわたるEFT中のヒト治療群線維芽細胞、iPS細胞への再プログラミング前後の成体治療群線維芽細胞、及びAGEX1547を用いたiTR誘導前後の成体治療群線維芽細胞におけるPOU5F1(OCT4)発現を示す。エラーバーはSt. Dev.を示す。
【
図7】
図7は、hES細胞由来クローン胚祖細胞株4D20.8及び30MV2-6を、0nM、0.037nM及び3.7nMのタプシガルギンに曝露された成体対応物MSC及びHAEC細胞と比較したTUNELアッセイの結果を示す。
【
図8A】
図8Aは、スクリーニングにおいて有用である候補低分子、iTR因子、TR阻害遺伝子、及びTR活性化因子遺伝子のリストを示す。
【
図8B】
図8Bは、スクリーニングにおいて有用である候補低分子、iTR因子、TR阻害遺伝子、及びTR活性化因子遺伝子のリストを示す。
【
図8C】
図8Cは、スクリーニングにおいて有用である候補低分子、iTR因子、TR阻害遺伝子、及びTR活性化因子遺伝子のリストを示す。
【
図8D】
図8Dは、スクリーニングにおいて有用である候補低分子、iTR因子、TR阻害遺伝子、及びTR活性化因子遺伝子のリストを示す。
【
図8E】
図8Eは、スクリーニングにおいて有用である候補低分子、iTR因子、TR阻害遺伝子、及びTR活性化因子遺伝子のリストを示す。
【
図9A】
図9Aは、例4における第1のセットのサンプルに関するCOX7A1発現を示す。
【
図9B】
図9Bは、例4における第1のセットのサンプルに関するCOX7A1発現を示す。
【
図10】
図10は、例5における第2のセットのサンプルに関するCOX7A1発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
略語
AC - 成体由来細胞
AMH - 抗ミュラー管ホルモン
ASC - 成体幹細胞
cGMP - 現行の適正製造プロセス
CM - 癌成熟
CSC - 癌幹細胞
CNS - 中枢神経系
DMEM - ダルベッコ改変イーグル培地
DMSO - ジメチルスルホキシド
DNAm - 細胞及び組織の加齢のマーカー又は「時計」を提供するDNAのメチル化における変化。
DNN - ディープニューラルネットワーク
DPBS - ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
ED細胞 - 胚由来細胞;hED細胞はヒトED細胞である
EDTA - エチレンジアミンテトラ酢酸
EFT - 胚-胎児転換
EG細胞 - 胚性生殖細胞;hEG細胞はヒトEG細胞である
EOP - 胚-腫瘍表現型
EP - 胚祖先
ES細胞 - 胚性幹細胞;hES細胞はヒトES細胞である
ESC - 胚性幹細胞
FACS - 蛍光活性化細胞ソーティング
FBS - ウシ胎仔血清
FPKM - RNAシークエンシングからの百万マップリードあたりの転写産物1キロベースあたりのフラグメント
GFER - 成長因子、肝臓再生のオーグメンター(ALR)
GFP - 緑色蛍光タンパク質
GMP - 適正製造基準
HAEC - ヒト大動脈内皮細胞
hED細胞 - ヒト胚由来細胞
hEG細胞 - 「ヒト胚性生殖細胞」は胎児組織の原始生殖細胞由来の幹細胞である。
HESC - ヒト胚性幹細胞
hiPS細胞 - 「ヒト人工多能性幹細胞」は、hES特異的転写因子、たとえばSOX2、KLF4、OCT4、MYC、又はNANOG、LIN28、OCT4、及びSOX2への曝露後に体細胞から得られたhES細胞と類似している特性を有する細胞である。
HSE - 「ヒト皮膚等価物」は、創傷修復の促進において試験目的のために又は治療用途のために製造される細胞と生物学的又は合成マトリックスとの混合物である。
iCM - 誘導性癌成熟。
iPS細胞 - 「人工多能性幹細胞」は、ES特異的転写因子、たとえばSOX2、KLF4、OCT4、MYC、若しくはNANOG、LIN28、OCT4、及びSOX2、SOX2、KLF4、OCT4、MYC、及び(LIN28A又はLIN28B)、又はOCT4、SOX2、KLF4、NANOG、ESRRB、NR5A2、CEBPA、MYC、LIN28A及びLIN28Bの他の組合せへの曝露後に体細胞から得られたhES細胞と類似している特性を有する細胞である。
iS-CSC - 「癌幹細胞の誘導性セノリシス」は、化学療法剤又は放射線療法による除去に対して難治性である悪性腫瘍における細胞の処置を指し、前記iS-CSC処置を行うと、前記難治性細胞は遺伝子発現の胎児前パターンに復帰し、化学療法剤又は放射線療法に対して感受性が高くなる。
iTM - 誘導性組織成熟
iTR - 誘導性組織再生
MEM - 最小必須培地
MSC - 間葉幹細胞
NT - 核移植
PBS - リン酸緩衝生理食塩水
PPT - 「出生前-出生後転換」は、出生時又は出生後1週間以内に胎盤哺乳動物の細胞において生じる分子変化を指す。
PS線維芽細胞 - 「瘢痕前線維芽細胞」は、妊娠初期皮膚の皮膚由来の、又はそれらが瘢痕形成することなく皮膚創傷が迅速に治癒することを促進するという点において遺伝子発現の出生前パターンを示すED細胞由来の線維芽細胞である。
RFU - 相対蛍光単位
RNA-seq - RNAシークエンシング
SFM - 無血清培地
St. Dev. - 標準偏差
TR - 組織再生
【0022】
定義
「分析的再プログラミング技術」という用語は、体細胞の遺伝子発現のパターンを、より多能性の状況のもの、たとえばiPS、ES、ED、EC又はEG細胞のものに再プログラミングするためのさまざまな方法を指し、再プログラミングは、複数の個別の工程で生じ、体細胞の卵母細胞への移植及びその卵母細胞の活性化に単に依存するものではない(米国特許出願60/332,510号(2001年11月26日出願)、同10/304,020号(2002年11月26日出願)、国際特許出願PCT/US02/37899号(2003年11月26日出願)、米国特許出願60/705625号(2005年8月3日出願)、同60/729173号(2005年8月20日出願)、同60/818813号(2006年7月5日出願)及び国際特許出願PCT/US06/30632号(2006年8月3日出願)を参照。これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0023】
「癌幹細胞の誘導性セノリシス」(iS-CSC)という用語は、化学療法剤又は放射線療法による除去に対して難治性である悪性腫瘍における細胞の処置を指し、前記iS-CSC処置を行うと、前記難治性細胞は遺伝子発現の胎児前パターンに復帰し、化学療法剤又は放射線療法に対して感受性が高くなる。
【0024】
「遺伝子Xを発現する細胞」、「遺伝子Xは細胞(又は細胞集団)において発現される」という用語又はこれらの等価物は、特定のアッセイプラットフォームを使用した細胞の分析が陽性結果を提供したことを意味する。逆もまた当てはまる(すなわち、遺伝子Xを発現しない細胞又は等価物は、特定のアッセイプラットフォームを使用した細胞の分析が、陰性結果を提供したことを意味する)。したがって、本明細書に記載する任意の遺伝子発現の結果は、示された遺伝子に関するアッセイプラットフォームで用いられる特定のプローブに関連付けられる。
【0025】
「細胞株」という用語は、in vitroで増殖及び成長が可能な細胞の生存又は不死化集団を指す。
【0026】
「クローン」という用語は、単一の細胞を、全てが元の単一の細胞に由来し、他の細胞を含まない細胞の集団へ増殖させた細胞の集団を指す。
【0027】
「分化細胞」という用語は、多能性幹細胞から本発明の方法によって作製された細胞に関連して使用される場合、親多能性幹細胞と比較したときに分化するための潜在力が低下している細胞を指す。本発明の分化細胞は、さらに分化することができない(すなわち、最終的に分化することができない)細胞を含む。
【0028】
「胚」又は「発生の胚段階」という用語は、細胞、組織又は動物の発生の出生前段階、具体的には、胎児及び成体細胞と比較した細胞の発生の胚段階を指す。ヒトの場合、胚から胎児発生への転換は、出生前発生の約8週で起こり、マウスでは交尾後16日前後で、ラットではおよそ交尾後17.5日で起こる。(http://php.med.unsw.edu.au/embryology/index.php?title=Mouse_Timeline_Detailed)。
【0029】
「胚性幹細胞」(ES細胞)という用語は、細胞株として連続的に継代され、同時に未分化状況(たとえば、TERT、OCT4及びSSEA、並びに種のES細胞に特異的なTRA抗原を発現)が維持されている、胚盤胞、卵割球又は桑実胚の内部細胞塊由来の細胞を指す。ES細胞は、精子又はDNAを有する卵細胞の受精、核移植、単為生殖から、又はMHC領域においてヘミ接合性又はホモ接合性を有するhES細胞を生成するための手段によって誘導してもよい。ES細胞は、体細胞型の全て及び生殖系列に分化することが可能な細胞として歴史的に定義されているが、着床前胚に移植された場合、ヒトを含む多くの種からの候補ES培養物は、培養物においてより平坦な外観を有し、典型的には生殖系列分化の一因とはならず、その結果「ES様細胞」と称される。ヒトES細胞は実際には「ES様」と通常考えられているが、本出願では、ESとES様細胞株の両方を指すためにES細胞という用語を使用する。
【0030】
「TRの広範囲の(global)モジュレーター」又は「iTRの広範囲のモジュレーター」という用語は、これらに限定されないが、COX7A1、ADIRF又はTNFRSF11Bを下方制御することが可能な薬剤を含む、非常に多数のiTR遺伝子又はiTM遺伝子を調節することが可能な、同時に胎児又は成体供給源由来の細胞においてAMHを上方制御し、組織損傷又は変性疾患に応答して瘢痕のない組織再生を増加させる遺伝子発現のパターンを誘導することが可能な薬剤を指す。
【0031】
「ヒト胚性幹細胞」(hES細胞)という用語は、ヒトES細胞を指す。
【0032】
「ヒト人工多能性幹細胞」という用語は、免疫減弱状態マウスに移植した場合に3つの全ての胚葉を形成するための能力を含むhES細胞と類似している特性を有し、前記iPS細胞が、脱分化因子、たとえば、hES細胞特異的転写因子の組合せ:KLF4、SOX2、MYC;OCT4又は、SOX2、OCT4、NANOG、及びLIN28;又はOCT4、SOX2、KLF4、NANOG、ESRRB、NR5A2、CEBPA、MYC、LIN28A及びLIN28Bのさまざまな組合せに曝露した後の多様な体細胞系列の細胞に由来する細胞、又はhES細胞と類似している特性を有する多能性幹細胞状況を達成するための体細胞を誘導する他の方法を指す。しかし、体細胞核移植(SCNT)による体細胞の再プログラミングは、典型的には、iPS細胞とは対照的にNT-ES細胞と称される。
【0033】
「誘導性癌成熟」という用語は、前記誘導に続いて、胚段階とは対照的に発生の胎児又は成体段階においてその細胞型で正常に発現されるマーカーを細胞が発現するように、前悪性又は悪性細胞の表現型に変化をもたらす方法を指す。
【0034】
「誘導性組織再生」という用語は、胎児又は成体の哺乳動物細胞の分子組成を変化させて、組織が損傷を受けた後に組織の機能の再生を可能にする、又は再生するための本発明の方法の使用を指し、このような再生は、その動物における通常の結果ではないであろう。機能的には、iTRは、傷害又は変性疾患に対応して新しい組織形成を生成すること、又は、CSC若しくは加齢細胞においてセノリシスを誘導することを目的とするが、実際には、iTRは、DNAmのようなマーカーを含む細胞における老化の多くの現象を逆転させているが、テロメラーゼ活性は回復させていないことを発明者らは教示する。iTRとともにテロメラーゼ活性を添加することも本発明において「iTR」として定義される。
【0035】
「iTR関連セノリシス」という用語は、これらに限定されないが、細胞老化(テロメア短縮)からのものを含む重大なDNA損傷を有する老化した組織の細胞における、前記損傷細胞の再プログラミングを介した遺伝子発現の胚パターンまでのアポトーシスの誘導を指す。
【0036】
「単離された」という用語は、(i)通常は人間の手を伴うプロセスによって、通常は自然界で認められる物質から分離された、(ii)人工的に生成された(たとえば、化学的に合成された)、及び/又は(iii)人工的な環境又は背景(すなわち、通常は自然界で認められない環境又は背景)に存在する物質を指す。
【0037】
「iS-CSC因子」という用語は、TR、及び、化学療法又は放射線療法に曝露された癌細胞のアポトーシスに対する感受性に関連する増加を引き起こす様式で、TR活性化因子及びTR阻害剤のレベルを変化させる分子を指す。
【0038】
「iTR因子」という用語は、TRが自然に生じない組織においてTRを引き起こす様式でTR活性化因子及びTR阻害剤のレベルを変化させる分子を指す。前記iTR因子は、個々の因子の組合せも指す。したがって、これに限定されるものではないが、AgeX1547と表記されるカクテルを含む本明細書に記載の因子のカクテルはこの出願の「iTR因子」とみなされる。
【0039】
「iTR遺伝子」という用語は、発現が変化した場合にそのような再生が通常はできない組織において誘導性組織再生をもたらすことができる遺伝子を指す。
【0040】
「核酸」という用語は、「ポリヌクレオチド」と区別せずに使用され、さまざまな態様において、ヌクレオシドの天然に存在するポリマー、たとえばDNA及びRNA、並びにヌクレオシド又はヌクレオシド類似体の天然に存在しないポリマーを包含する。いくつかの態様において、核酸は、標準的なヌクレオシド(略称A、G、C、T、U)を含む。他の態様において、核酸は、1つ以上の非標準的なヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、1つ以上のヌクレオシドは、天然に存在しないヌクレオシド又はヌクレオチド類似体である。核酸は、改変された塩基(たとえば、メチル化塩基)、改変された糖(2’-フルオロリボース、アラビノース、又はヘキソース)、改変されたリン酸基、又はヌクレオシド若しくはヌクレオシド類似体(たとえば、ホスホロチオエート又は5’-N-ホスホロアミダイト結合)、ロックド核酸若しくはモルホリノ間の他の結合を含む場合がある。いくつかの態様において、核酸は、DNA及びRNAと同様にホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、少なくともいくつかのヌクレオシドは、非ホスホジエステル結合によって連結されている。核酸は、一本鎖、二本鎖、又は部分的な二本鎖であってもよい。少なくとも部分的な二本鎖の核酸は、1つ以上のオーバーハング、たとえば、5’及び/又は3’オーバーハングを含んでいてもよい。研究又は治療目的のためのRNA干渉(RNAi)、アプタマー、又はアンチセンスベースの分子の文脈において有用であることが当技術分野において既知の核酸改変(たとえば、ヌクレオシド及び/又は非標準的なヌクレオシドの使用を含む骨格改変)が、本発明のさまざまな態様における使用のために考慮される。たとえば、Crooke,S T(ed.) Antisense drug technology: principles, strategies, and applications, Boca Raton: CRC Press, 2008;Kurreck,J.(ed.) Therapeutic oligonucleotides, RSC biomolecular sciences. Cambridge: Royal Society of Chemistry, 2008を参照されたい。いくつかの態様において、改変すると、同じ長さ及びストランドのRNA又はDNAと比較して、たとえば核酸のin vivoでの半減期及び/又は安定性が増加する。いくつかの態様において、改変すると、同じ長さ及びストランドのRNA又はDNAと比較して核酸の免疫原性が低下する。いくつかの態様において、核酸の一方又は両方のストランドにおけるヌクレオシドの5%~95%が改変されている。改変は、均一に又は不均一に位置していてもよく、改変の位置(たとえば、中央付近、末端付近又は末端、一つ置きなど)を、所望の特性を強化するように選択してもよい。核酸は、検出可能な標識、たとえば、蛍光染料、放射性原子などを含んでいてもよい。「オリゴヌクレオチド」は、比較的短い核酸、たとえば、典型的には約4~約60のヌクレオチド長を指す。本明細書でポリヌクレオチドに言及する場合、DNAとRNAの両者、及びそれぞれの場合における一本鎖ストランドの形態と二本鎖ストランドの形態の両者(及び各一本鎖ストランドの分子の相補体)が提供されることが理解される。本明細書で使用する「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド材料自体及び/又は特異的核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち塩基に関する略語として使用される一連の文字)を指す場合がある。本明細書で提示するポリヌクレオチド配列は、別段指示がない限り5’から3’の方向で示す。
【0041】
「オリゴクローナル」という用語は、同様の特性、たとえば形態又は同じ培養物における他の細胞のものとは異なる分化のマーカーの存在の有無を共有すると思われる細胞の小集団、典型的には2~1000個の細胞が起源である細胞の集団を指す。オリゴクローナル細胞は、これらの一般的な特性を共有しない細胞から単離され、増殖され、同様の細胞の元の集団に実質的に完全に由来する細胞の集団を生成する。
【0042】
「多能性幹細胞」という用語は、1つを超える分化細胞型に分化することが可能な動物細胞を指す。そのような細胞としては、hES細胞、卵割球/桑実胚細胞及びその派生したhED細胞、hiPS細胞、hEG細胞、hEC細胞、並びに間葉幹細胞、神経幹細胞、及び骨髄由来幹細胞を含む成体由来細胞がある。多能性幹細胞は、遺伝子改変されていても遺伝子改変されていなくてもよい。遺伝子改変された細胞としては、マーカー、たとえば卵内でその同定を促進するための蛍光タンパク質を含んでいてもよい。
【0043】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は本明細書において区別せずに使用される。ペプチドは比較的短いポリペプチド、典型的には約2~60個のアミノ酸長である。本明細書のポリペプチドは、典型的には、標準的なアミノ酸(すなわち、タンパク質において最も一般的に認められる20個のL-アミノ酸)を含む。しかし、ポリペプチドは、ある特定の態様において、1つ以上の非標準的なアミノ酸(これは、天然に存在していても存在していなくてもよい)及び/又は当技術分野において既知のアミノ酸類似体を含んでいてもよい。ポリペプチド中のアミノ酸のうちの1つ以上は、たとえば、化学物質、たとえば炭水化物基、リン酸基、脂肪酸基、コンジュゲート、機能化するためのリンカーなどを添加することによって改変してもよい。非ポリペプチド部分が共有又は非共有結合しているポリペプチドは、依然として「ポリペプチド」と考えられている。ポリペプチドは、天然原料から精製しても、組換えDNA技術を使用して生成しても、化学的手段、たとえば従来の固相ペプチド合成などを介して合成してもよい。本明細書で使用する「ポリペプチド配列」又は「アミノ酸配列」という用語は、ポリペプチド材料自体及び/又はポリペプチドを生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、アミノ酸名の略語として使用される、1文字又は3文字の一連のコード)を指す場合がある。本明細書に示すポリペプチド配列は、別段指示がない限りN末端からC末端の方向で示す。ポリペプチドは、環式であっても環式部分を含んでいてもよい。本発明は、天然に存在するポリペプチドの任意のアイソフォーム(たとえば、mRNAの代替のスプライシング若しくはエディティングの結果として、又は遺伝子の異なる対立遺伝子、たとえば、1つ以上の単一ヌクレオチド多型が異なる対立遺伝子の結果として、同じ遺伝子から生じる異なるタンパク質(典型的には、そのような対立遺伝子は、参照配列又はコンセンサス配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%以上同一であることになる))に関連する態様を包含することが理解されるであろう。ポリペプチドは、分泌のためにそれを標的とする配列、又は特定の細胞内コンパートメント(たとえば、核)を標的とする配列を含んでいてもよく、及び/又は配列は、翻訳後改変若しくは分解のためにポリペプチドを標的とする。ある特定のポリペプチドは、翻訳後切断又は他のプロセシングを受けて成熟ポリペプチドになる前駆体として合成してもよい。場合によっては、そのような切断は特定の活性化事象でのみ起こり得る。適切な場合、本発明は、前駆体ポリペプチドと関連する態様及びポリペプチドの成熟バージョンと関連する態様を提供する。
【0044】
「出生前」という用語は、胎盤哺乳動物の胚発生の段階を指し、それ以前では動物は子宮以外で生存することはできない。
【0045】
「原始幹細胞」という用語は、3つの全ての一次胚葉:内胚葉、中胚葉、及び外胚葉、並びに神経堤の細胞に分化することが可能な多能性幹細胞を総称して指す。その結果、原始幹細胞の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト又は非ヒト哺乳動物ES細胞又は細胞株、卵割球/桑実胚細胞及びその派生したED細胞、iPS、並びにEG細胞が含まれることになる。
【0046】
「精製された」という用語は、天然で結合しているか、又は最初に生成されている場合に、大部分の構成成分から分離された薬剤又は物質(たとえば、化合物)を指す。一般的に、そのような精製は、人間の手の動作を伴う。精製された薬剤又は物質は、部分的に精製されていても、実質的に精製されていても、純粋であってもよい。そのような薬剤又は物質は、たとえば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%超で純粋であってもよい。いくつかの態様において、核酸又はポリペプチドは、それが、調製物中に存在する全核酸又はポリペプチド材料の、少なくとも75%、80%、855%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上それぞれ構成するように精製される。純度は、たとえば、乾燥重量、クロマトグラフィートレーシングにおけるピークサイズ、分子存在量、ゲルにおけるバンド強度、分子存在量と相関する任意のシグナル強度、又は任意の当技術分野で許容される定量方法に基づいていてもよい。いくつかの態様において、水、緩衝液、イオン、及び/又は低分子(たとえば、前駆体、たとえばヌクレオチド又はアミノ酸)が、精製された調製物に任意に存在していてもよい。精製された分子は、他の物質(たとえば、他の細胞材料)からそれを分離することによって、又は所望の程度の純度を達成するような様式でそれを生成することによって調製してもよい。いくつかの態様において、精製された分子又は組成物は、任意の当技術分野で許容される精製方法を使用して調製された分子又は組成物を指す。いくつかの態様では、「部分的に精製された」は、細胞によって産生された分子がもはや細胞内に存在しないこと、たとえば、細胞が溶解し、細胞材料のうちの少なくともいくつか(たとえば、細胞壁、細胞膜、細胞小器官)が任意に除去されていることを意味する。
【0047】
「RNA干渉」(RNAi)という用語は、本明細書で使用される二本鎖ストランドのRNA(dsRNA)が、dsRNAのストランドに対する相補性を有する対応するmRNAの配列特異的分解又は翻訳抑制を誘発する現象を指すために当技術分野におけるその意味で一貫して使用する。dsRNAのストランドとmRNAとの間の相補性は、必ずしも100%である必要はないが、遺伝子発現の阻害(「サイレンシング」又は「ノックダウン」とも称される)を介在するのに十分であることだけは必要とするであろうことは理解される。たとえば、相補性の程度は、ストランドが(i)RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)におけるmRNAの切断をガイドすること;又は(ii)mRNAの翻訳抑制をもたらすことのいずれかができるようなものである。ある特定の態様において、RNAの二本鎖ストランドの部分は、約30ヌクレオチド長未満、たとえば、17~29のヌクレオチド長である。ある特定の態様において、一方のdsRNAのストランドは、標的mRNAに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は100%相補的であり、他方のdsRNAのストランドは、一方のストランドに対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%相補的である。哺乳動物細胞における、RNAiは、適切な二本鎖ストランドの核酸を細胞に導入するか、又は核酸を細胞に発現させ、次いで細胞内でプロセッシングし、その中でdsRNAを得ることによって達成してもよい。RNAiを介在することが可能な核酸は、本明細書において「RNAi薬剤」を指す。RNAiを介在することが可能な例示的な核酸は、ショートヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA前駆体である。
【0048】
これらの用語は周知であり、本明細書では当技術分野におけるその意味で一貫して使用される。siRNAは、典型的には、互いにハイブリダイズして二本鎖を形成する2つの個別の核酸ストランドを含む。これらは、たとえば、標準的な核酸合成技術を使用してin vitroで合成することができる。siRNAは、典型的には、各ストランド中に16~30、たとえば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド(nt)を有する二本鎖ストランドのオリゴヌクレオチドであり、二本鎖ストランドのオリゴヌクレオチドは、15~29のヌクレオチド長に二本鎖ストランドの部分を含み、ストランドのいずれか若しくは両方は、たとえば1~5ヌクレオチド長の3’オーバーハングを含んでいてもよいか、又は、いずれかの若しくは両方の末端はブラントであってもよい。いくつかの態様において、siRNAは、19~25のnt、たとえば、21~23のヌクレオチド長のストランドを含み、一方又は両方のストランドは、1~2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。siRNAの二本鎖ストランドの部分の一方のストランド(「ガイドストランド」又は「アンチセンスストランド」と称する)は、mRNA中の標的領域と実質的に(たとえば、少なくとも80%以上、たとえば、85%、90%、95%又は100%)相補的であり(たとえば、3、2、1又は0個のミスマッチヌクレオチドを有し)、他方の二本鎖ストランドの部分は、一方の二本鎖ストランドの部分に対して実質的に相補的である。多くの態様において、ガイドストランドは、mRNA中の標的領域に対して100%相補的であり、他のパッセンジャーストランドは、一方の二本鎖ストランドの部分に対して100%相補的である(さまざまな態様において、ガイドストランドの3’オーバーハング部分が存在する場合、ガイドストランドがmRNAにハイブリダイズしたときにmRNAに対して相補的であってもなくてもよいことを理解されたい)。いくつかの態様において、shRNA分子は、ステムループを含む核酸分子であり、二本鎖ストランドのステムは16~30ヌクレオチド長であり、ループは約1~10ヌクレオチド長である。siRNAは、さまざまな改変ヌクレオシド、ヌクレオシド類似体を含んでいてもよく、化学的に又は生物学的に改変された塩基、改変骨格などを含んでいてもよい。限定するものではないが、RNAiに有用であることが当技術分野において認識された任意の改変を使用することができる。いくつかを改変すると、安定性、細胞取り込み、潜在力などが増加する。いくつかを改変すると、免疫原性又はクリアランスが減少する。ある特定の態様において、siRNAは、約19~23(たとえば、19、20、21、22又は23)ヌクレオチド長の二本鎖、任意に、デオキシリボヌクレオチドから構成され得る1~5ヌクレオチド長の1つ又は2つの3’オーバーハングを含む。shRNAは、主に非自己相補領域によって分離された2つの相補的部分を含む単一の核酸ストランドを含む。相補的部分はハイブリダイズして二本鎖構造を形成し、非自己相補領域は、二本鎖の一方のストランドの3’末端及び他方のストランドの5’末端を連結するループを形成する。shRNAは細胞内プロセシングを受けてsiRNAを生成する。典型的には、ループは1~8、たとえば、2~6ヌクレオチド長である。
【0049】
マイクロRNA(miRNA)は、配列特異的様式で遺伝子発現を阻害する約21~25ヌクレオチドの小さい天然に存在する非コード一本鎖ストランドのRNA(哺乳動物系における)である。これらは、より大きな前駆体(pri-miRNA)から生成される不完全な相補性のうちの1つ以上の領域を含むことが多い二本鎖を含むショートヘアピン型(約70ヌクレオチド長)から構成される特徴的な二次構造を有する前駆体(プレmiRNA)から細胞内に生成される。天然に存在するmiRNAは、典型的には、その標的mRNAに対して部分的にのみ相補的であり、翻訳抑制を介して作用することが多い。内因性miRNA又はmiRNA前駆体でモデル化されたRNAi薬剤は本発明の特定の態様において有用である。たとえば、1つのストランドをハイブリダイズしてmiRNA及びその標的mRNAによって形成された二本鎖を模倣した1つ以上のミスマッチ又はバルジを有するmRNAを標的とするようにsiRNAを設計することができる。そのようなsiRNAは、miRNA模倣体又はmiRNA様分子と称してもよい。miRNA模倣体は、その構造が天然に存在するmiRNA前駆体のものを模倣する前駆体核酸によってコードされていてもよい。
【0050】
ある特定の態様において、RNAi薬剤は、siRNA(たとえば、互いにハイブリダイズすることができる2つの個別のストランドとして)、shRNA又はマイクロRNA前駆体を転写するための鋳型を含むベクター(たとえば、プラスミド又はウイルス)である。典型的には、siRNA、shRNA又はmiRNA前駆体をコードする鋳型は、当技術分野において既知の発現制御配列(たとえば、プロモーター)に操作可能に連結される。そのようなベクターは、鋳型を脊椎動物細胞、たとえば、哺乳動物細胞に導入するために使用することができ、siRNA、shRNA又はmiRNA前駆体の一過性の発現又は安定な発現をもたらす。前駆体(shRNA又はmiRNA前駆体)は、細胞内でプロセシングを受けてsiRNA又はmiRNAを生成する。
【0051】
一般的に、低分子RNAi薬剤、たとえばsiRNAは、化学的に合成することができるか、又は、その後ハイブリダイズする2つの個別のストランドとして、若しくはその後処置されてsiRNAを生成するshRNAとして、DNA鋳型からin vitro又はin vivoで転写することができる。RNAi薬剤、特に改変を含むものは、化学的に合成されることが多い。オリゴヌクレオチドのための化学的合成方法は、当技術分野において周知である。
【0052】
本明細書で使用する「低分子」という用語は、質量が約2キロダルトン(KDa)未満の有機分子である。いくつかの態様において、低分子は約1.5KDa未満又は約1KDa未満である。いくつかの態様において、低分子は、約800ダルトン(Da)、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da又は100Da未満である。低分子は少なくとも50Daの質量を有することが多い。いくつかの態様において、低分子は、複数の炭素-炭素結合を含み、1つ以上のヘテロ原子及び/又はタンパク質との構造的相互作用(たとえば、水素結合)に重要な1つ以上の官能基、たとえば、アミン、カルボニル、ヒドロキシル又はカルボキシル基、及びいくつかの態様において少なくとも2つの官能基を含む場合がある。低分子は、上記官能基のうちの1つ以上で任意に置換された、1つ以上の環式炭素若しくは複素環式構造、及び/又は、芳香族若しくはポリ芳香族構造を含むことが多い。いくつかの態様において、低分子は非高分子である。いくつかの態様において、低分子はアミノ酸ではない。いくつかの態様において、低分子はヌクレオチドではない。いくつかの態様において、低分子はサッカライドではない。
【0053】
「対象」という用語は、任意の多細胞動物とすることができる。対象は、脊椎動物、たとえば哺乳動物又は鳥類であることが多い。例示的な哺乳動物としては、たとえば、ヒト、非ヒト霊長目、齧歯動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ)、有蹄動物(たとえば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ヤギ種)、イヌ及びネコがある。対象は、たとえば、実験、診断及び/若しくは治療目的で化合物が送達されることになるか、そこからサンプルが得られるか、又は診断手順(たとえば、組織損傷を評価するために及び/又は本発明の化合物の効果を評価するために使用されることになるサンプル又は手順)が行われることが多い個体である。
【0054】
「組織損傷」という用語は、細胞、組織、器官又は他の身体構造に対する損傷又は傷害の任意のタイプを指すために本明細書で使用される。この用語は、さまざまな態様において、疾患に起因する変性、身体的外傷又は外科手術に起因する損傷、有害物質への曝露によって引き起こされる損傷、及び、細胞、組織、器官又は他の身体構造の構造及び/又は機能における他の破壊を包含する。
【0055】
「組織再生」又は「TR」という用語は、損失、損傷若しくは変性後の、組織、器官若しくは他の身体構造又はこれらの一部の、少なくとも部分的な再生、置換え、回復又は再増殖を指し、前記組織再生は、本発明に記載の方法がなければ行われない場合がある。組織再生の例としては、軟骨、骨、筋肉、腱及び靭帯の再増殖を含む切断された指又は四肢の再増殖、傷害又は疾患に起因して損失した骨、軟骨、皮膚又は筋肉の瘢痕のない再増殖があり、組織又は器官が、組織若しくは器官の正常なサイズ、又は傷害若しくは疾患より前のそのサイズに近くなるような損傷した又は罹患した器官のサイズ及び細胞数の増加を伴う。組織のタイプに応じて、組織再生は、さまざまな異なるメカニズム、たとえば、元から現存する細胞及び/もしくは組織の移植(たとえば、細胞遊走を介した)、成体体性幹細胞若しくは他の祖細胞の分裂及びその子孫のうちの少なくともいくつかの分化、並びに/又は、細胞の脱分化、分化転換及び/若しくは増殖を介して起こる場合がある。
【0056】
「TR活性化因子遺伝子」という用語は、胎児及び成体細胞において発現しないが、発生の胚段階において発現すると、TRを促進する遺伝子を指す。
【0057】
「TR阻害遺伝子」という用語は、胎児及び成体動物において発現すると、TRを阻害する遺伝子を指す。
【0058】
「処置」、「処置すること」、「治療法」、「治療的」という用語及び対象に関する類似の用語は、対象の医学的及び/又は外科的管理を提供することを指す。処置は、これらに限定されるものではないが、対象に化合物又は組成物(たとえば、医薬組成物)を投与することを含み得る。本発明による対象の処置は、典型的には、たとえば、組織損傷に罹患したか又は組織損傷に罹患することが予測される対象(たとえば、外科手術を受けることになる対象)における再生を促進する試みで行われる。処置の効果は、再生の増加、瘢痕の減少、及び/若しくは、組織損傷後の構造的もしくは機能的転帰の改善(処置非存在下で転帰と比較した)を一般的に含む場合があり、並びに/又は、変性疾患の重症度もしくは進行における改善若しくは減少を含む場合がある。
【0059】
特にポリペプチドに適用される「バリアント」という用語は、1つ以上のアミノ酸の変化、たとえば、付加、欠失及び/又は置換によってそのポリペプチド(ときとして「元のポリペプチド」と称される)とは異なるポリペプチドを指す。ときとして元のポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド(たとえば、ヒト又は非ヒト動物からのもの)又はそれと同一のポリペプチドである。バリアントは、天然に存在していても、たとえば、組換えDNA技術又は化学的合成を使用して生成してもよい。付加は、ポリペプチド内への挿入とすることができるか、又は、N若しくはC末端における付加とすることができる。いくつかの態様において、置換、欠失又は付加されるアミノ酸の数は、たとえば、約1から30、たとえば、約1から20、たとえば、約1から10、たとえば、約1から5、たとえば、1、2、3、4又は5個とすることができる。いくつかの態様において、バリアントは、その配列が少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも150アミノ酸、又はそれを超える、最大元のポリペプチドの全長にわたって元のポリペプチドの配列と相同である(しかし元のポリペプチドの配列において同一ではない)ポリペプチドを含み、たとえば、バリアントポリペプチドの配列は、少なくとも50アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも150アミノ酸以上、最大で元のポリペプチドの全長にわたって、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上元のポリペプチドの配列に対して同一である。いくつかの態様において、バリアントは、元のポリペプチドの長さの少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%にわたって、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上元のポリペプチドに対して同一のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、バリアントは、少なくとも1つの機能的又は構造的ドメイン、たとえば、Conserved Domain Database (CDD) of the National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nih.gov)において同定されたドメイン、たとえば、NCBIキュレーテッドドメインを含む。
【0060】
いくつかの態様において、バリアント又は断片の、1つ、1つを超える、又は全ての生物学的機能若しくは活性は、元の分子の対応する生物学的機能又は活性のものと実質的に類似している。いくつかの態様において、機能的バリアントは、元のポリペプチドの活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上、たとえば、ほぼ同等の活性を保持する。いくつかの態様において、バリアントの活性は、元の分子の活性の最大およそ100%、およそ125%又はおよそ150%である。他の非限定的な態様において、特定の効果をもたらすことを必要とするバリアントの量又は濃度が、その効果をもたらすために必要とする元の分子の量又は濃度の0.5から5倍の範囲内である場合、バリアント又は断片の活性は、元の分子の活性と実質的に類似していると考えられる。
【0061】
いくつかの態様において、バリアントにおけるアミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、同様の構造的及び/又は化学的特性を有する他のアミノ酸と置き換えた結果、すなわち、保守的なアミノ酸置換えである。「保守的な」アミノ酸置換は、関与する残基の種類又は特性、たとえば側鎖サイズ、極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性のいずれかにおける類似性に基づいて行ってもよい。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンがある。極性(親水性)、中性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンがある。正電荷の(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン及びヒスチジンがある。負電荷の(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸がある。特定の基内でのある特定の置換は、特定の目的、たとえば、イソロイシンによるロイシン(又は逆もまた同様)、トレオニンによるセリン(又は逆もまた同様)、又はグリシンによるアラニン(又は逆もまた同様)の置換えであってもよい。無論、非保守的置換は、同様に機能を保持することに適合することが多い。いくつかの態様において、置換又は欠失は、活性に重要なアミノ酸を変化させないか又は欠失させない。挿入又は欠失は、約1から20アミノ酸、たとえば、1から10アミノ酸のサイズ範囲であってもよい。場合によっては、より大きいドメインを、機能に実質的に影響を与えることなく除去してもよい。本発明の特定の態様において、バリアントの配列は、天然に存在する酵素の配列に対して、合計で5、10、15、又は20アミノ酸以下の付加、欠失、又は置換を作製することによって得ることができる。いくつかの態様において、ポリペプチド中のアミノ酸の1%、5%、10%、又は20%以下は、元のポリペプチドに対する、挿入、欠失、又は置換である。さまざまな種の間で保存されたアミノ酸残基は、保存されていないアミノ酸よりも活性にとって重要である可能性が高いために、目的の活性を実質的に除去することなく又は減少させることなくアミノ酸残基を置換え、付加、又は欠失させてもよいことを判定する際のガイダンスは、特定のポリペプチドの配列を相同のポリペプチドのものと(たとえば、他の生物からのもの)と比較し、高相同性の領域(保存領域)において作製されたアミノ酸配列の変化の数を最小化することによって、又はアミノ酸を相同の配列で認められるものと置き換えることによって得てもよい。
【0062】
いくつかの態様において、ポリペプチドのバリアントは、非相同のポリペプチド部分を含む。非相同部分は、元のポリペプチドに存在しないか又はそれと相同ではない配列を有することが多い。非相同部分は、たとえば、5~約5,000のアミノ酸長以上であってもよい。5~約1,000のアミノ酸長であることが多い。いくつかの態様において、非相同部分は、異なるポリペプチドにおいて認められる配列、たとえば、官能ドメインを含む。いくつかの態様において、非相同部分は、ポリペプチドを精製、発現、可溶化、及び/又は検出するのに有用である配列を含む。いくつかの態様において、非相同部分は、ポリペプチド「タグ」、たとえば、親和性タグ又はエピトープタグを含む。たとえば、タグは、親和性タグ(たとえば、HA、TAP、Myc、6xHis、Flag、GST)、蛍光又は発光タンパク質(たとえば、EGFP、ECFP、EYFP、セルリアン、DsRed、mCherry)、溶解性強化タグ(たとえば、SUMOタグ、NUSAタグ、SNUTタグ、又はバクテリオファージT7のOcrタンパク質のモノマー突然変異体)とすることができる。たとえば、Esposito D and Chatterjee D K. Curr Opin Biotechnol.; 17(4):353-8(2006) を参照されたい。いくつかの態様において、タグは、複数の機能を果たす場合がある。タグは、比較的小さく、たとえば、数個のアミノ酸から約100アミノ酸長までの範囲であることが多い。いくつかの態様において、タグは100を超えるアミノ酸長、たとえば、最大約500アミノ酸長以上である。いくつかの態様において、ポリペプチドは、たとえば、N又はC末端融合物としてN又はC末端に位置するタグを有する。ポリペプチドは、複数のタグを含んでいてもよい。いくつかの態様において、6×Hisタグ及びNUSタグが、たとえばN末端に存在する。いくつかの態様において、タグは、たとえば、プロテアーゼによってそれをポリペプチドから除去することができるように切断可能である。いくつかの態様において、これは、元のポリペプチドと相同である部分をコードする配列とタグとの間にプロテアーゼ切断部位をコードする配列を含むことによって達成される。例示的なプロテアーゼとしては、たとえば、トロンビン、TEVプロテアーゼ、因子Xa、PreScissionプロテアーゼなどがある。いくつかの態様において、「自己切断させる」タグを使用する。たとえば、国際特許出願PCT/US05/05763号を参照されたい。タグをコードする配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関しては5’又は3’(又は両方)に配置してもよい。いくつかの態様において、タグ又は他の非相同配列は、ポリペプチドリンカーによってポリペプチドの残りから分離される。たとえば、リンカーは、短いポリペプチド(たとえば、15~25アミノ酸)とすることができる。リンカーは、低分子アミノ酸残基、たとえばセリン、グリシン、及び/又はアラニンからなることが多い。非相同のドメインは、膜貫通ドメイン、分泌シグナルドメインなどを含んでいてもよい。
【0063】
本発明の特定の態様において、非相同部分を任意に排除している断片又はバリアントは、存在する場合、その3次元構造(実際の又は予測される構造のいずれか)を元のポリペプチドの構造に重ね合わせたときに、重複体積は、元のポリペプチドの構造の総体積の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%になるような元のポリペプチドと十分な構造的類似性を有する。断片又はバリアントの部分的又は完全な3次元構造は、タンパク質を結晶化することによって判定してもよく、これは、標準的な方法を使用して行うことができる。あるいは、NMR溶液構造も、標準的な方法を使用して生成してもよい。モデル化プログラム、たとえばMODELER(Sali,A. and Blundell,T L, J.Mol.Biol., 234,779-815,1993)、又はその他のモデル化プログラムを、予測される構造を生成するために使用することができる。関連するポリペプチドの構造又は予測される構造が利用可能であり、モデルはその構造に基づいていてもよい。PROSPECT-PSPPプログラム集を使用することができる(Guo,J T, et al., Nucleic Acids Res. 32 (Web Server issue): W522-5,Jul.1,2004)。本発明の態様がポリペプチドのバリアントに関連する場合、バリアントをコードするポリヌクレオチドが提供されることは理解されるであろう。
【0064】
「ベクター」という用語は、たとえば、核酸分子の細胞中への、導入、輸送などの侵入を介在することが可能な、核酸又はウイルス又はこれらの一部(たとえば、ウイルスカプシド又はゲノム)を指すために本明細書で使用する。ベクターが核酸である場合、移植されることになる核酸分子は、ベクター核酸分子へ一般的に連結、たとえば挿入される。核酸ベクターは、自律複製を指示する配列(たとえば、複製起点)を含んでいてもよいか、又は宿主細胞DNAへ核酸の一部又は全てを組み込ませることを可能にするのに十分な配列を含んでいてもよい。有用な核酸ベクターとしては、たとえば、DNA又はRNAプラスミド、コスミド、及び天然に存在する又は改変されたウイルスゲノム又はこれらの一部、又はウイルスカプシド中にパッケージングすることができる核酸(DNA又はRNA)がある。プラスミドベクターは、典型的には、複製起点及び1つ以上の選択可能なマーカーを含む。プラスミドは、ウイルスゲノム(たとえば、ウイルスプロモーター、エンハンサー、プロセシング又はパッケージングシグナルなど)の一部又は全てを含んでいてもよい。核酸分子を細胞中に導入するために使用することができるウイルス又はその一部は、ウイルスベクターと称される。有用なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、たとえばAAV8、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス及び他のポックスウイルス、ヘルペスウイルス(たとえば、単純ヘルペスウイルス)などがある。ウイルスベクターは、宿主細胞中に導入する場合、感染性ウイルスを生成するのに十分なウイルス遺伝的情報を含んでも含んでいなくてもよく、すなわち、ウイルスベクターは複製欠損であってもよく、そのような複製欠損ウイルスベクターが治療的使用に好ましい場合がある。十分な情報がない場合、必ずしも必要ではないが、宿主細胞によって又は細胞に導入された別のベクターによって供給してもよい。移植されることになる核酸は、天然に存在するか又は改変されたウイルスゲノム又はその一部へ組み込まれても、分離された核酸分子としてウイルス又はウイルスカプシド内に存在していてもよい。ウイルスカプシド中にパッケージングすることができる核酸を、転写を指示するのに十分な、並びに/又は宿主細胞ゲノムに一体化することができる核酸をもたらすのに及び/若しくは感染性ウイルスをもたらすのに十分なウイルス遺伝情報を典型的には含むウイルスゲノムの一部又は全てを含むある特定のプラスミドベクターも、ときとして当技術分野においてウイルスベクターと称するであろうことは理解される。ベクターは、ベクターで形質転換又はトランスフェクトされているか又はされていない細胞の同定及び/又は選択において使用するのに好適なマーカーをコードする1つ以上の核酸を含んでいてもよい。マーカーとしては、たとえば、抗生物質に対する抵抗性又は感受性のいずれかを増加又は減少させるタンパク質(たとえば、抗生物質、たとえばピューロマイシン、ハイグロマイシン又はブラストサイジンに対する抵抗性を与えるタンパク質をコードする抗生物質抵抗性遺伝子)又は他の化合物、その活性が当技術分野において既知のアッセイによって検出可能な酵素(たとえば、βガラクトシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、及び形質転換又はトランスフェクトされた細胞の表現型に検出可能に影響を与えるタンパク質又はRNA(たとえば、蛍光タンパク質)がある。発現ベクターは、操作可能に連結された核酸の転写を指示するのに十分な調節配列、たとえば発現制御配列、たとえばプロモーターを含むベクターである。調節配列は、エンハンサー配列又は上流の活性化因子配列も含んでいてもよい。ベクターは、5’リーダー又はシグナル配列を任意に含んでいてもよい。ベクターは、切断及び/又はポリアデニル化シグナル及び/又は3’非翻訳領域を任意に含んでいてもよい。ベクターは、制限酵素に関する1つ以上の適切に配置された部位を含むことが多く、発現されることになる核酸をベクターへ導入するのを促進する。発現ベクターは、発現に十分なシス作用エレメントを含み;発現に必要な又は有用な他のエレメントは、宿主細胞又はin vitro発現系によって供給することができる。
【0065】
さまざまな技術を、核酸分子を細胞中に導入するために用いてもよい。そのような技術としては、化合物、たとえばリン酸カルシウム、陽イオン脂質、陽イオンポリマーを使用した化学物質促進トランスフェクション、リポソーム介在性トランスフェクション、非化学的方法、たとえばエレクトロポレーション、粒子ボンバードメント、又はマイクロインジェクション、及び目的の核酸分子を含むウイルスを用いた感染(ときとして「形質導入」と称される)がある。ベクターを取り込み、核酸を典型的には発現する細胞を同定及び/又は選択するためにマーカーを使用することができる。細胞を、適切な媒体中で培養してその細胞を選択し、安定細胞株を任意に確立することができる。
【0066】
本発明をより詳細に記載する前に、本発明は、記載する特定の態様に限定されず、したがって無論、それ自体が変更される場合があることを理解するべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用する専門用語は、特定の態様を記載することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解するべきである。
【0067】
値の範囲が提供される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、下限値の単位の10分の1まで、その範囲の上限値と下限値との間のそれぞれ位置する値、及び規定された範囲におけるその他の規定された又は位置する値は、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらの小さな範囲の上限値及び下限値は、小さな範囲に独立して含まれていてもよく、また規定された範囲における任意の具体的に除外された限界値によって本発明の範囲内に包含される。規定された範囲が、限界の一方又は両方を含む場合、限界に含まれるもののいずれか又は両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0068】
ある特定の範囲は、「約」という用語が先行する数値を用いて示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近いか又はほぼ近い数の助けとなる文字を提供するために本明細書で使用する。数が具体的に列挙される数に近いか又はほぼ近いかどうかの判定において、近いか又はほぼ近い列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙される数の実質的に同等のものを提供する数であってもよい。
【0069】
別段の定義がない限り、本明細書において使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様の又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験において用いることができるが、代表的な例示の方法及び材料を本明細書に記載する。
【0070】
本明細書に挙げられる全ての刊行物及び特許は、各個々の文献又は特許が、参照により組み込まれることが具体的にかつ個々に示され、出版物が引用されることに関連する方法及び/又は材料を開示及び説明するために参照により本明細書に組み込まれるものとする。任意の文献の引用は、出願日より前のその開示内容に関するものであり、本発明は、先行する発明の理由でそのような文献に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される発行日は、個別に確認することが必要とされる場合がある実際の発行日と異なっていてもよい。
【0071】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、いずれの任意の要素も除外するために想起されてもよいことをさらに留意されたい。したがって、本文章は、特許請求の範囲の要素の記載に関連して「単独」、「のみ」などのようなその排他的な専門用語を使用するか、又は「否定的」制限の使用するための先行詞の役割を果たすことを意図する。
【0072】
本開示を読む際に当業者であれば明らかであろうように、本明細書に記載され示される個々の態様は、本発明の範囲又は趣旨からそれぞれ逸脱することなく他のいくつかの態様のうちのいずれかの特徴から容易に分離しても組み合わせてもよい個別の構成成分及び特徴を有していてもよい。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順で又は論理的に可能なその他の順序で行うことができる。
【0073】
方法
以下に記載する方法に加えて、瘢痕のない再生潜在力に対応する遺伝子発現の胚パターンを有する細胞の生成及び使用において使用が認められる方法は、以下に見出すことができる:たとえば、発明の名称が「Novel Uses of Cells With Prenatal Patterns of Gene Expression」である国際特許出願PCT/US2006/013519号(2006年4月11日出願);発明の名称が「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」である米国特許出願11/604,047号(2006年11月21日出願);発明の名称が「Methods to Accelerate the Isolation of Novel Cell Strains from Pluripotent Stem Cells and Cells Obtained Thereby」である米国特許出願12/504,630号(2009年7月16日出願)、米国特許仮出願61/831,421号(2013年6月5日出願)、国際特許出願PCT/US2014/040601号(2014年6月3日出願)、米国特許出願14/896,664号(2015年12月7日出願)、発明の名称が「Compositions and Methods for Induced Tissue Regeneration in Mammalian Species」(国際公開第2014/197421号)、及び、発明の名称が「Improved Methods for Detecting and Modulating the Embryonic-Fetal Transition in Mammalian Species」の出願(国際公開第2017/214342号)、これらは、その内容全体が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる。
【0074】
RNAi
非限定的な例として、dsRNAを、フランキングT7プロモーターを含むPCR生成テンプレートを使用してin vitro転写反応(Promega)から調製し、フェノール抽出及びエタノール沈殿によって精製し、水中で再懸濁後にアニールする。外科手術から2時間後に第1の注入を用いて誘導性組織傷害を開始する前に、無傷の実験用動物に4×30nL dsRNAを3日間連続して注入する。
【0075】
TR調節及びiTRモジュレーター
本開示は、新規なiTRモジュレーター及びその使用方法を提供する。いくつかの側面において、本発明は、再生を強化する新規な方法であって、前記iTRモジュレーターの濃度を変更する薬剤を、それを必要とする多細胞生物に投与することを含む方法を提供する。
【0076】
出願人らは、完全なTR、たとえばアホロートルにおける切断された四肢の再生、MRL若しくはアフリカトゲマウスにおける皮膚の再生、又はプラナリアにおける身体セグメント全体の再生の可能性を示す原始動物は、個別の組織の正常な胚発生を単に繰り返すことによって行われることを教示する。さらに、出願人らは、TR耐性哺乳動物、たとえば大部分のネズミ種及びヒトにおいて損傷した組織を再生することができない原因は、ある特定の胚遺伝子転写が、これらのTR耐性動物においてEFTで変化することである点を教示する。出願人は、TR耐性動物におけるEFTで変化した遺伝子発現のこれらの胚特異的パターンのある特定の回復は、複雑な組織再生をもたらし、同時に瘢痕形成を減少させる組織化中心因子に対する応答性を含む、任意の組織において再生するための能力を誘導することができる点をさらに教示する。最後に、出願人は、哺乳動物種においてTRを誘導する新規な薬剤及び関連する方法を教示する。前記方法は、哺乳動物種において、特にホモサピエンス種においてTRをin vivoで促進する。
【0077】
胎児及び成体動物におけるその発現がTRを阻害する遺伝子は、本明細書では「TR阻害剤」と称し、胎児及び成体細胞においてその発現はないが、発生の胚段階においてその発現がTRを促進する遺伝子は、本明細書では「TR活性化因子」と称する。総称して、TR阻害剤遺伝子及びTR活性化因子遺伝子は、本明細書においてiTR遺伝子と称する。TRをもたらす様式でTR活性化因子及びTR阻害剤のレベルを変化させる分子は、本明細書では「iTR因子」と称する。iTR遺伝子及びiTR遺伝子のタンパク質生成物は、イソギンチャクから哺乳動物に至る動物において保存されていることが多い。遺伝子にコードされたタンパク質配列、及び本明細書で言及する遺伝子をコードする核酸(たとえば、mRNA)の配列は、多数の異なる非ヒト動物種からのものを含めて、当技術分野において既知であり、たとえば、公的に利用可能なデータベース、たとえばNational Center for Biotechnology Information(NCBI)(www.ncbi.nih.gov)で利用可能なものにおいて見出すことができる。
【0078】
TR阻害性遺伝子COX7A1は、正常組織における上皮細胞とは対照的に間質において最初に発現することが観察されたが、上皮培養物においても低レベルで発現した。新生物の場合、遺伝子は、多くの間質癌、たとえば骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、並びにいくつかの神経膠腫、癌腫、及び腺癌において下方制御されることが観察された。これは、ワールブルク効果として既知の癌における解糖系の増加の観察と一致するが、以前はCOX7A1発現の不存在はワールブルク効果に包含されていなかった。出願人らは、TR遺伝子が、成体における癌を阻止するために、胚から胎児発生への転換においてある程度変化することを提唱するため、間質及びいくつかのCNS及び上皮腫瘍におけるCOX7A1の抑制は、間質細胞を胚状態に復帰させ、その結果腫瘍形成を促進することになる。したがって、発現が欠如しているそのような腫瘍におけるCOX7A1の発現の外因性誘導は、p53及びHIF1α及びHIF3αの活性を変化させ、その結果細胞増殖を阻害し、癌細胞におけるアポトーシスを増加させることによってある程度は治療的効果を有するであろう。
【0079】
別の態様において、本発明は、癌細胞を検出する手段を提供する。研究者が、癌細胞型の大部分と関連する異常マーカーを同定することはまれである。本明細書に記載するように、胚をその胎児及び成体対応物と区別するマーカーは、成体の発現パターンを示す正常細胞を、胚のパターンを示す悪性細胞と区別するために使用することができる。前記検出方法は、これらに限定されないが、胎児/成体のパターンとは対照的に、胚における、COX7A1、NAALADL1、AMH、並びに、これらに限定されないがPCDHA4、PCDHB2、並びにPCDHGA12を含むα、β及びγクラスター化プロトカドヘリン遺伝子からの遺伝子の発現を含んでおり、悪性細胞(血液細胞を除く)を同定することに有用であるだけではなく、胎児/成体のパターンの発現によって特徴付けられる通常使用する化学療法剤に対して耐性を示すであろう腫瘍を同定することにおいても有用である。
【0080】
本開示は、iTR遺伝子を調節する多数の異なる方法、及びiTR遺伝子を調節するために有用であるさまざまな異なる化合物を提供する。一般的に、iTR因子は、たとえば、低分子、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、脂質、炭水化物などであってもよい。前記iTR因子は、
図8で挙げられるTR因子のうちの1つ又は組合せであってもよい。因子の濃度及び最適な組合せは、因子の組合せを、哺乳動物細胞、好ましくは胎児又は成体の発生段階に対応するヒト細胞、たとえばCOX7A1を発現するものへのその効果に対してスクリーニングすること、及びCOX7A1、ADIRF、TNFRSF11Bの明らかな減少又はAMH発現の増加をもたらすiTR製剤を判定することによって判定してもよい。
【0081】
本発明のいくつかの態様において、iTR因子は、細胞によって生成されたTR阻害剤RNAの量を減少させることによって、及び/又はTR阻害剤遺伝子の活性レベルを減少させることによって阻害する。TR阻害剤を標的とする場合、TR阻害剤遺伝子の生成物のレベルを減少させる因子を同定し、研究及び治療法において使用する。前記TR阻害剤遺伝子は、たとえば、国際公開第2017/214342号又は国際公開第2014/197421号で以前に開示されているTR阻害剤遺伝子のいずれか1つ又は組合せであってもよい。前記TR阻害剤遺伝子は、TR阻害剤遺伝子のいずれか1つ又は組合せであってもよい。TR阻害剤遺伝子RNAの量は、細胞によるTR阻害剤RNA合成の合成を阻害すること(「TR阻害剤遺伝子発現を阻害すること」とも称される)によって、たとえば、TR阻害剤遺伝子をコードするmRNAの量を減少させることによって若しくはTR阻害剤遺伝子をコードするmRNAの翻訳を減少させることによって減少させてもよい。前記因子は、非限定的な例として、TR阻害剤遺伝子内の配列を標的とするRNAiであってもよい。
【0082】
いくつかの態様において、TR阻害剤遺伝子発現は、RNA干渉(RNAi)によって阻害される。当技術分野において既知であるように、RNAiは、遺伝子に対応する配列を有する二本鎖ストランドのRNAの細胞における存在が、遺伝子発現の配列特異的阻害、典型的には、切断又は遺伝子から転写されたmRNAの翻訳抑制の結果としてもたらすプロセスである。RNAiによる発現の阻害をもたらすために有用な化合物(「RNAi薬剤」)としては、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及びmiRNA様分子がある。
【0083】
当業者であれば、RNAi薬剤、たとえば、哺乳動物TR阻害剤遺伝子、たとえば、ヒトTR阻害剤遺伝子の発現の阻害に有用であるsiRNAに関する配列は、前記TR阻害剤遺伝子が同定されていれば、容易に設計することができる。いくつかの態様において、そのような配列は、「オフターゲット」効果を最小化するために選択される。たとえば、目的の種において発現するTR阻害剤遺伝子mRNAに存在し、他のmRNAに存在しない(又は目的の種のゲノムに存在しない)配列に対して相補的な配列を使用してもよい。潜在的なオフターゲット効果を減少させるために位置特異的化学的改変を使用してもよい。いくつかの態様において、少なくとも2つの異なるRNAi薬剤、たとえば、TR阻害剤遺伝子mRNAを標的とするsiRNAを組み合わせて使用してもよい。いくつかの態様において、TR阻害剤遺伝子発現を阻害するために、マイクロRNA(これは、人工的に設計されたマイクロRNAであってもよい)が使用される。
【0084】
本発明のいくつかの態様において、TR阻害剤遺伝子発現は、TR阻害剤遺伝子をコードするmRNAに対して完全に又は実質的に相補的である一本鎖ストランドのオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス分子を使用して阻害する。オリゴヌクレオチドは、TR阻害剤遺伝子mRNAにハイブリダイズし、たとえば、RNase HによるmRNAの分解又は立体障害による翻訳のブロックをもたらす。本発明の他の態様において、TR阻害剤遺伝子発現は、リボザイム又は三本鎖核酸を使用して阻害する。
【0085】
本発明のいくつかの態様において、TR阻害剤は、TR阻害剤タンパク質の少なくとも1つの活性を阻害する。TR阻害剤活性は、TR阻害剤タンパク質を、TR阻害剤タンパク質と物理的に相互作用する化合物と接触させることによって減少させてもよい。そのような化合物は、たとえば、(たとえば、それを共有結合的に改変することによって)TR阻害剤タンパク質の構造を変化させる、及び/又はTR阻害剤タンパク質の、1つ以上の他の分子、たとえば補因子又は基質との相互作用をブロックさせる場合がある。いくつかの態様において、阻害又は減少は、参照レベル(たとえば、対照レベル)の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の減少であってもよい。制御レベルは、因子の非存在下で生じるTR阻害剤のレベルであってもよい。たとえば、TR因子は、TR阻害剤タンパク質のレベルを、試験が行われた条件下、因子非存在下で生じるレベルの95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、40%、30%、25%、20%、10%、又は5%以下まで減少させる場合がある。いくつかの態様において、TR阻害剤のレベルは、試験が行われた条件下、因子非存在下で生じるレベルの75%以下まで減少する。いくつかの態様において、TR阻害剤のレベルは、試験が行われた条件下、TR因子非存在下で生じるレベルの50%以下まで減少する。いくつかの態様において、TR阻害剤のレベルは、試験が行われた条件下、iTR因子非存在下で生じるレベルの25%以下まで減少する。いくつかの態様において、TR阻害剤のレベルは、試験が行われた条件下、iTR因子非存在下で生じるレベルの10%以下まで減少する。一部の場合において、調節(たとえば、阻害又は減少)のレベルは、対照レベルと比較して統計的に有意である。本明細書で使用する「統計的に有意」は、適切な統計的検定(たとえば、ANOVA、t検定など)を使用した、0.05未満のp値、たとえば、0.025未満のp値又は0.01未満のp値を指す。
【0086】
本発明のいくつかの態様において、化合物は、TR阻害剤タンパク質を直接的に阻害し、すなわち、化合物は、TR阻害剤とiTR因子との間の物理的相互作用(結合)を伴う機序によってTR阻害剤タンパク質を阻害する。たとえば、TR阻害剤のiTR因子への結合は、反応を触媒するTR阻害剤の能力に干渉する場合があり、及び/又はTR阻害剤活性部位を閉塞する場合がある。さまざまな化合物を、TR阻害剤を直接的に阻害するために使用することができる。TR阻害剤を直接的に阻害する例示的な化合物は、たとえば、低分子、抗体、又はアプタマーであってもよい。
【0087】
本発明のいくつかの態様において、iTR因子は、TR阻害剤に共有結合する。たとえば、化合物は、酵素活性に必要なアミノ酸残基を改変してもよい。いくつかの態様において、iTR因子は、TR阻害剤のアミノ酸側鎖と反応する、1つ以上の反応性官能基、たとえば、アルデヒド、ハロアルカン、アルケン、フルオロホスホネート(たとえば、アルキルフルオロホスホネート)、マイケルアクセプター、フェニルスルホネート、メチルケトン、たとえば、ハロゲン化メチルケトン若しくはジアゾメチルケトン、フルオロホスホネート、ビニルエステル、ビニルスルホン、又はビニルスフホンアミドを含む。いくつかの態様において、iTR因子阻害剤は、TR阻害剤と物理的に相互作用する化合物を含み、化合物は反応性官能基を含む。いくつかの態様において、TR阻害剤と物理的に相互作用する化合物の構造は、反応性官能基を組み込むように改変される。いくつかの態様において、化合物は、TR阻害剤基質類似体又は遷移状態類似体を含む。いくつかの態様において、化合物は、TR阻害剤活性部位において又はその付近でTR阻害剤と相互作用する。
【0088】
他の態様において、iTR因子は、TR阻害剤及び/又はTR阻害剤とTR阻害剤基質とを含む複合体に非共有結合する。いくつかの態様において、iTR因子は、TR阻害剤の活性部位に非共有結合する、及び/又はTR阻害剤活性部位へのアクセスに関して基質と競合する。いくつかの態様において、iTR因子は、試験が行われた条件下で、たとえば、生理学的に許容される溶液、たとえばリン酸緩衝生理食塩水中で、およそ10-3M以下、たとえば、10-4M以下、たとえば、10-5M以下、たとえば、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、又は10-9M以下のKdでTR阻害剤に結合する。結合親和性は、たとえば、当技術分野において既知の、表面プラズモン共鳴(たとえば、Biacoreシステムを用いて)、等温滴定熱量測定、又は競合的結合アッセイを使用して測定することができる。いくつかの態様において、阻害剤は、TR阻害剤基質類似体又は遷移状態類似体を含む。
【0089】
TR活性化因子の活性を増加させる場合、
図8で挙げられるTR活性化因子の組合せのうちのいずれか1つを使用してもよい。これらの遺伝子の因子又は生成物のレベルは、本明細書に記載するベクターを使用して導入してもよい。
【0090】
他の態様において、iTR因子は、十分な時間で細胞と反応させた場合、直接的に又は多能性を誘導することが可能な遺伝子発現構築物を介して、RNAを細胞中に導入する構築物であるが、短い時間の場合はiTRをもたらすことがある。好ましくは、RNAは、多能性への再プログラミングに必要なRNAの全ては含まず、代わりにLIN28A又はLIN28Bのみを、任意にテロメア長を増加させるための薬剤、たとえばテロメラーゼの触媒構成成分(TERT)に関するRNAとともに含む。最も好ましくは、iTRを誘導するための薬剤は、任意に、テロメア長を増加させる薬剤、たとえばRNA又はTERTをコードする遺伝子と組み合わせた、及び/又は本明細書に開示するiTRに重要な因子、たとえば0.05~5mMのバルプロ酸、好ましくは1.0mMのバルプロ酸、1~100ng/mLのAMH、好ましくは10ng/mLのAMH、及び2~200ng/mLのGFER、好ましくは20ng/mLと組み合わせた、LIN28A又はLIN28Bでコードされるタンパク質、たとえばGFERによって誘導される遺伝子/因子である。in vivoで投与した場合、そのような因子は、徐放性ヒドロゲルマトリックスとして、たとえば化学的に改変され、架橋されたヒアルロン酸及びコラーゲンから構成されるもの、たとえばHyStemマトリックスとして好ましくは投与される。
【0091】
iTR因子に関するレポーターベースのスクリーニングアッセイ
本発明は、(a)容易に検出可能なマーカー、たとえばその発現が、本明細書で記載するTR活性化因子遺伝子のうちの1つのプロモーターによって駆動されるGFP又はβガラクトシダーゼを含むレポーター分子、たとえばCOX7A1に関するものを使用して、iTR因子を同定するための方法を提供する。本発明は、被検化合物が、TR活性化因子遺伝子の発現に影響を与えるかどうか及び/又はTR阻害性遺伝子の発現を阻害するかどうかの判定に関与するスクリーニングアッセイを提供する。本発明は、方法を実施するのに有用なレポーター分子及び組成物をさらに提供する。一般的に、本発明の方法を使用して同定された化合物は、TR活性化因子又は阻害剤遺伝子を増加させる又は減少させる機序のうちのいずれかによってそれぞれ作用し得る。COX7A1プロモーターの場合、ヒト遺伝子のプロモーター配列フランキング5’末端は、ATG翻訳開始コドンに対して-756塩基の位置で特徴付けられている(Yu,M.,et al. Biochimica and Biophysica Acta 1574(2002)345-353)。大部分のcDNAの転写開始部位は、翻訳開始コドンの-55塩基で観察された。COX7A1の発現は組織特異的であるが、プロモーター並びに残りの遺伝子配列は、多くのハウスキーピング遺伝子のプロモーターと同様にCpGアイランドにある。CpGアイランドは、少なくとも200塩基のスパンに対して、平均的なゲノムに関して予測される含有量のものを上回るCGジヌクレオチドの存在量によって特徴付けられる。プロモーターは、いくつかの調節性結合部位配列:位置-524においてMEF2、並びに位置-58、-279及び-585においてそれぞれ3つのEボックス(E1、E2、及びE3として特徴付けられる)を含み;Eボックスは、調節性タンパク質の筋原性ファミリーのメンバーに結合するDNA結合部位(CAACTG)である。さらに、およそ-95から-68塩基の領域において、転写因子Sp1によって認識されるものと類似している複数のCGリッチセグメントが存在する。
【0092】
遺伝子自体は、GRCh38.p7プライマリアセンブリーで特徴付けられるように、ヒト染色体18上の位置36150922~36152869の1948塩基を占め、3つのイントロンが散在した4つのエクソンを含む。遺伝子配列は、プロモーター配列と共に、NCBIにおいて遺伝子座識別子AF037372でキュレートされている。
【0093】
レポーター分子、細胞及び膜
一般的に、本発明のレポーター分子において有用である検出可能な部分としては、検出可能な蛍光、化学発光又は生物発光シグナルを生成するか又は消光する発光又は光吸収化合物がある。いくつかの態様において、TR活性化因子遺伝子が活性化されるか又はTR阻害性遺伝子が阻害されると、検出可能な部分が液体培地へ放出され、培地(又はその試料)に存在する放出された検出可能な部分によって生成されるか又は消光されるシグナルが検出される。いくつかの態様において、得られたシグナルは検出可能な部分の特性に変化をもたらし、そのような変化は、たとえば、光学シグナルとして検出することができる。たとえば、シグナルは、検出可能な部分による電磁放射線(たとえば、スペクトルの赤外、可視又はUV部分の範囲内の波長を有する放射線)の放出又は吸収が変化する場合がある。いくつかの態様において、レポーター分子は、蛍光又は発光部分を含み、第2の分子は、蛍光又は発光部分を消光する消光剤としての役割を果たす。そのような変化は、当技術分野において既知の装置及び方法を使用して検出してもよい。
【0094】
本発明の多くの態様において、レポーター分子は、細胞によって発現することができる遺伝学的にコード可能な分子であり、検出可能な部分は、たとえば検出可能なポリペプチドを含む。したがっていくつかの態様において、レポーター分子は、蛍光ポリペプチド、たとえば、緑色、青色、サファイア色、黄色、赤色、オレンジ色、及びシアン蛍光タンパク質並びにこれらの誘導体(たとえば、高感度GFP);モノマー赤色蛍光タンパク質及び誘導体、たとえば「mFruits」として既知のもの、たとえば、mCherry、mStrawberry、mTomatoなど、並びに発光タンパク質、たとえばエクオリンを含むポリペプチドである(いくつかの態様において、蛍光又は発光は、1つ以上の追加の分子、たとえば、イオン、たとえばカルシウムイオン及び/又は補欠分子族、たとえばセレンテラジンの存在下で起こることは理解されるであろう)。いくつかの態様において、検出可能な部分は、基質に対して作用し、蛍光、発光、有色の、又は特に検出可能な生成物を生成する酵素を含む。検出可能な部分として役割を果たすことができる酵素の例としては、ルシフェラーゼ;βガラクトシダーゼ;ホースラディッシュペルオキシダーゼ;アルカリホスファターゼなどがある(酵素が、反応生成物を検出することによって検出されることは理解されるであろう)。いくつかの態様において、検出可能な部分は、第2の薬剤、たとえば標識された(たとえば、蛍光標識された)抗体を使用して容易に検出することができるポリペプチドタグを含む。たとえば、HA、Myc、又はさまざまな他のペプチドタグに結合する蛍光標識された抗体が利用可能である。したがって本発明は、検出可能な部分を直接検出することができる(すなわち、第2の薬剤との相互作用を必要とすることなく検出可能なシグナルを生成する)態様、並びに検出可能な部分が、第2の薬剤と相互作用し(たとえば、結合及び/又は反応し)、そのような相互作用が、たとえば、検出可能なシグナルの生成をもたらすことによって、又は第2の薬剤が直接検出可能なために検出可能な検出可能部分をもたらす態様を包含する。検出可能な部分と第2の薬剤が相互作用し、検出可能なシグナルを生成する態様において、第2の薬剤と反応することができる検出可能な部分は、第2の薬剤による作用を受け、検出可能なシグナルを生成する。多くの態様において、シグナル強度は、たとえば、評価されるサンプル中又は画像化される領域内に存在する検出可能な部分の量の指標を提供する。いくつかの態様において、検出可能な部分の量は、たとえば、シグナル強度に基づいて相対的又は絶対的基準に対して任意に定量化される。
【0095】
本発明は、本発明のレポーターポリペプチドをコードする配列を含む核酸を提供する。いくつかの態様において、核酸は、本発明のレポーターポリペプチドの前駆体ポリペプチドをコードする。いくつかの態様において、ポリペプチドをコードする配列は、ポリペプチドをコードするmRNAの転写を指示するのに適切な発現制御エレメント(たとえば、プロモーター又はプロモーター/エンハンサー配列)に操作可能に連結される。本発明は、核酸を含む発現ベクターをさらに提供する。適切な発現制御エレメントの選択は、たとえば、核酸を発現させることになる細胞型及び種に基づいていてもよい。当業者であれば、適切な発現制御エレメント及び/又は発現ベクターを容易に選択することができる。いくつかの態様において、発現制御エレメントは調節可能であり、たとえば、誘導性又は抑制性である。細菌細胞に使用するのに好適な例示的なプロモーターとしては、たとえば、Lac、Trp、Tac、araBAD(たとえば、pBADベクター中)、ファージプロモーター、たとえばT7又はT3がある。哺乳動物細胞において発現を指示するのに有用な例示的な発現制御配列としては、たとえば、SV40の初期及び後期プロモーター、アデノウイルス又はサイトメガロウイルス前初期プロモーター、又はウイルスプロモーター/エンハンサー配列、レトロウイルスLTR、哺乳動物遺伝子からのプロモーター又はプロモーター/エンハンサー、たとえば、アクチン、EF-1α、ホスホグリセリン酸キナーゼなど、調節可能な(たとえば、誘導性又は抑制性)発現系、たとえばTet-On及びTet-Off系(テトラサイクリン及び類似体、たとえばドキシサイクリンによって調節可能)、並びに低分子、たとえばホルモン受容体リガンド(たとえば、ステロイドであってもなくてもよいステロイド受容体リガンド)、金属調節系(たとえば、メタロチオネインプロモーター)などによって調節することができる他のものがある。
【0096】
本発明は、そのような核酸及び/又はベクターを含む細胞及び細胞株をさらに提供する。いくつかの態様において、細胞は、真核細胞、たとえば、真菌、植物、又は動物細胞である。いくつかの態様において、細胞は、脊椎動物細胞、たとえば、哺乳動物細胞、たとえば、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞、又は齧歯動物細胞である。細胞は、細胞株のメンバー、たとえば、培養物中で無限に増殖する能力を獲得した樹立又は不死化細胞株であることが多い(たとえば、突然変異又は遺伝子操作の結果としての、たとえばテロメラーゼの触媒構成成分の構成的発現)。多くの細胞株は当技術分野において既知であり、本発明において使用することができる。哺乳動物細胞株としては、たとえば、HEK-293(たとえば、HEK-293T)、CHO、NIH-3T3、COS、及びHeLa細胞株がある。いくつかの態様において、細胞株は腫瘍細胞株である。他の態様において、細胞は非腫瘍形成性である、及び/又は腫瘍由来ではない。いくつかの態様では、細胞は接着細胞である。いくつかの態様において、非接着細胞を使用する。いくつかの態様では、発現されるTR活性化因子遺伝子又は発現されないTR阻害剤遺伝子のサブセットを自然に有することが示された細胞型又は細胞株の細胞を使用する。細胞に1つ以上のTR活性化因子又は阻害剤遺伝子がない場合、細胞に遺伝子操作を行い、そのようなタンパク質を発現させてもよい。いくつかの態様において、本発明の細胞株は、単一の細胞に由来する。たとえば、細胞集団は、レポーターポリペプチドをコードする核酸をトランスフェクトすることができ、単一の細胞由来のコロニーを選択し、培養で増殖させることができる。いくつかの態様において、細胞は、レポーター分子をコードする発現ベクターを一過的にトランスフェクトすることができる。異なる検出可能なポリペプチドを任意に発現する制御プラスミドを細胞にコトランスフェクトしてトランスフェクション効率を(たとえば、アッセイの複数回の実行にわたって)制御してもよい。
【0097】
TR活性化因子及びTR阻害剤ポリペプチド及び核酸
TR活性化因子及びTR阻害剤遺伝子を
図8の「胚マーカー」及び「胎児/成体マーカー」の見出しの下にそれぞれ挙げる。本発明の方法において有用なTR活性化因子及びTR阻害剤ポリペプチドは、さまざまな方法によって得ることができる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、組換えDNA技術を使用して生成する。組換えタンパク質発現に関する標準的な方法を使用してもよい。TR活性化因子又はTR阻害剤をコードする核酸遺伝子は、たとえば、遺伝子を発現する細胞から(たとえば、PCR又は他の増幅方法によって又はクローニングによって)又は化学的合成又はcDNA配列ポリペプチド配列に基づいてin vitro転写によって容易に得ることができる。当業者であれば、遺伝コードの縮重に起因して、遺伝子が多くの異なる核酸配列によってコードされていてもよいことは既知であろう。任意に、配列は、選択した宿主細胞において発現するためにコドン最適化される。遺伝子は、細菌、真菌、動物、若しくは植物細胞又は生物において発現する場合がある。遺伝子は、それを自然に発現する細胞から、又はタンパク質をコードする核酸が一時的に又は安定に導入された細胞、たとえば遺伝子をコードする発現ベクターを含む細胞から単離してもよい。いくつかの態様において、遺伝子は、培養物中の細胞によって分泌され、培養培地から単離される。
【0098】
本発明のいくつかの態様において、TR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドの配列を、本発明のスクリーニング方法において使用する。天然に存在するTR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドは、そのゲノムがTR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドをコードする任意の種、たとえば、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯動物などからのものであってもよい。その配列が天然に存在するTR活性化因子又はTR阻害剤と同一なポリペプチドは、本明細書では「天然TR活性化因子/阻害剤」と称される場合がある。本発明において使用するTR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドは、分泌シグナル配列又はその一部を含んでいてもいなくてもよい。たとえば、ヒトTR活性化因子又はTR阻害剤のアミノ酸20~496(又は異なる種のTR活性化因子又はTR阻害剤の対応するアミノ酸)を含むか又はこれらからなる成熟TR活性化因子又はTR阻害剤を使用してもよい。
【0099】
いくつかの態様において、TR活性化因子又はTR阻害剤のバリアント又は断片を含むか又はこれらからなるポリペプチドを使用する。TR活性化因子又はTR阻害剤バリアントは、TR活性化因子又はTR阻害剤と比較して1つ以上のアミノ酸置換、付加、又は欠失が異なるポリペプチドを含む。いくつかの態様において、TR活性化因子又はTR阻害剤バリアントは、ヒトTR活性化因子若しくはTR阻害剤の少なくともアミノ酸20~496又はマウスTR活性化因子若しくはTR阻害剤の少なくともアミノ酸20~503のうちの少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%にわたって、TR活性化因子又はTR阻害剤(たとえば、ヒト又はマウスからのもの)の少なくともアミノ酸20~496と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、TR活性化因子又はTR阻害剤バリアントは、ヒトTR活性化因子若しくはTR阻害剤の少なくともアミノ酸20~496又はマウスTR活性化因子若しくはTR阻害剤の少なくともアミノ酸20~503と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、TR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドは、ヒトTR活性化因子若しくはTR阻害剤の少なくともアミノ酸20~496又はマウスTR活性化因子若しくはTR阻害剤の少なくともアミノ酸20~503と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のポリペプチドを含む。TR活性化因子又はTR阻害剤バリアント又は断片をコードする核酸は、たとえば部位特異的突然変異誘導を使用して、たとえば天然TR活性化因子又はTR阻害剤をコードするDNAを改変することによって、又は他の標準的な方法によって容易に生成することができ、TR活性化因子又はTR阻害剤バリアント又は断片を生成するために使用してもよい。たとえば、融合タンパク質は、TR活性化因子又はTR阻害剤をコードする配列を、非相同部分をコードする配列を提供するベクターにクローニングすることによって生成してもよい。いくつかの態様において、タグ付きTR活性化因子又はTR阻害剤を使用する。たとえば、いくつかの態様において、6×Hisタグを、たとえば、そのC末端に含むTR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドを使用する。
【0100】
被検化合物
さまざまな被検化合物を、iTR因子及びiTRの広範囲のモジュレーターを同定するための本発明の方法において使用することができる。たとえば、被検化合物は、低分子、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物、抗体、又はこれらに限定されないが、遺伝子OCT4、SOX2、KLF4、NANOG、ESRRB、NR5A2、CEBPA、MYC、LIN28A及びLIN28Bに関するmRNAを単独で及び多様な組合せで含む本明細書で記載するものであって、低分子化合物の多様な組合せ、たとえば以下の化合物の組合せのもの:これらに限定されないが、CHIR99021を含むグリコーゲンシンターゼ3(GSK3)阻害剤;これらに限定されないが、SB431542、A-83-01、及びE616452を含むTGF-βシグナル伝達阻害剤;これらに限定されないが、バルプロ酸、フェニルブチレート、及びn-ブチレートを含む、これらに限定されないが、脂肪族酸化合物を含むHDAC阻害剤;トラポキシンB及びデプシペプチドを含む環式テトラペプチド;ヒドロキサム酸、たとえばトリコスタチンA、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、パノビノスタット(LBH589)、及びベンズアミドエンチノスタット(MS-275)、CI994、モセチノスタット(MGCD0103);サーチュイン阻害剤ニコチノアミド(nicotinomide)、NAD、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン、及び2-ヒドロキシナフトアルデヒドの多様な誘導体、又はIV(HDAC11)デアセチラーゼを含む、クラスI(HDAC1、HDAC2、HDAC3、及びHDAC8)、IIA(HDAC4、HDAC5、HDAC7、及びHDAC9)、IIB(HDAC6及びHDAC10)、III(SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、又はSIRT7)を具体的に標的とするもの;これらに限定されないが、パルネートを含むH3K4/9ヒストンメチル基分解酵素LSD1阻害剤;これらに限定されないが、EPZ004777を含むDot1L阻害剤;これらに限定されないが、Bix01294を含むG9a阻害剤;これらに限定されないが、DZNepを含むEZH2阻害剤、これらに限定されないが、RG108を含むDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤;5-アザ-2’デオキシシチジン(商標名Vidaza及びAzadine);DNAメチル化を阻害し、脱メチル化の第1の工程である5hmCを増加させることができるTet1を増加させるビタミンC;これらに限定されないが、PS48を含む3’ホスホイノシチド依存性キナーゼ1の活性化因子;これらに限定されないが、ケルセチン及びフルクトース2,6-ビスホスフェート(ホスホフルクトキナーゼ1の活性化因子)を含む解糖系プロモーター;これらに限定されないが、ケルセチンを含むHIF1転写複合体の活性を促進する薬剤;これらに限定されないが、AM580、CD437、及びTTNPBを含むRARアゴニスト;これらに限定されないが、レスベラトロールを含む低酸素症を模倣する薬剤;これらに限定されないが、テロメラーゼ(TERT)の触媒構成成分の外因性発現を含むテロメラーゼ活性を増加させる薬剤、LSD1の下方制御を介したエピジェネティック改変を促進する薬剤、これらに限定されないが、リチウムを含むH3K4特異的ヒストンメチル基分解酵素;又はこれらに限定されないが、PD032590を含むMAPK/ERK経路の阻害剤を含むハイブリッド分子であってもよい。追加の化合物としては、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤MS-275、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤BIX01294、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤RG108、レチノイン酸類似体AM580又はCD437(レチノイン酸受容体アゴニスト)、及びヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤EPZ004777(DOT1Lの阻害剤、並びにテロメアサイレンシング1様の撹乱物質)、並びにDNAメチルトランスフェラーゼ及びHDAC RSC133の阻害剤がある。そのような化合物は、多様な組合せ、濃度、及び異なる期間で投与して、たとえば、COX7A1、ADIRF、TNFRSF11B、若しくは本明細書に記載するiTRの他の阻害剤の発現の減少に関してアッセイすることによって、及び/又はAMH若しくは他の活性化因子若しくは本明細書に記載するiTRの発現の増加に関してアッセイすることによって、広範囲のiTRマーカーを使用して培養された細胞に対してin vitroで、又は損傷した若しくは罹患した組織においてin vivoで、又は動物の寿命の調節においてin vivoでiTRの効果を最適化してもよい。
【0101】
遺伝子COX7A1、ADIRF、TNFRSF11B、又はAMHのiTR発現パターン並びにOCT4、及びHELLS又はTra-1-60、Tra-1-81、及びSSEA4を含む多能性の遺伝子発現又はタンパク質マーカーに関するin vitroアッセイをそれぞれ行って、標的細胞を多能性へ復帰させることなくiTR遺伝子発現の広範囲なパターンを最適化する。スクリーニングする個々の薬剤及び薬剤の組合せの例は:OCT4、SOX2、KLF4、MYC及びLIN28A;OCT4;KLF4;OCT4、KLF4;OCT4、KLF4、LIN28A;OCT4、KLF4、LIN28B;SOX2;MYC;NANOG;ESRRB;NT5A2;OCT4、SOX2、KLF4、及びLIN28A;OCT4、SOX2、KLF4、及びLIN28B;OCT4、KLF4、MYC及びLIN28Aであり;薬剤の先行する組合せは、それぞれ最初の4週間は0.25mM NaB、5μM PS48及び0.5μM A-83-01とともに、続いて0.25mM酪酸ナトリウム、5μM PS48、0.5μM A-83-01及び0.5μM PD0325901で処置し、これらはiTR遺伝子発現のさまざまな調節マーカーに関して0、1、2、4、7、10、及び14日目にそれぞれアッセイする。
【0102】
改善iTR因子のスクリーニング
胎児又は成体哺乳動物細胞におけるiTR効果の生成において有用である化合物又は化合物の組合せに関するスクリーニングは、in vitro又はin vivo(たとえば動物モデル)で行ってもよい。好ましくは、前記スクリーニングは、通常のスループット又はハイスループットでin vitroで行う。胚又は胎児/成体マーカーの増加又は減少に関するスクリーニングアッセイをそれぞれ行う。前記スクリーニングは、抗体の使用、RNA、代謝マーカー、又は、本明細書に記載する、若しくは「Compositions and Methods for Induced Tissue Regeneration in Mammalian Species」(国際公開第2014/197421号、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる)、及び「Improved Methods for Detecting and Modulating the Embryonic-Fetal Transition in Mammalian Species」(国際公開第2017/214342号、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている、他のマーカーのアッセイを用いてもよい。好ましくは、前記スクリーニングは、mRNAマーカーのレベルを、最も好ましくはiTRの指標としてCOX7A1の発現における減少をアッセイする。最も好ましくは、前記スクリーニングは、マルチウェルフォーマットで行い、発現は、ゲノムのCOX7A1遺伝子座にノックインされたeGFPのようなレポーター遺伝子を使用する。
【0103】
化合物は、天然原料から得るか又は合成的に生成することができる。化合物は、少なくとも部分的に純粋であっても、抽出物又は構成成分が少なくとも一部は未知であるか又は特徴付けられていない他の種類の混合物中に存在していてもよい。抽出物又はそのフラクションは、たとえば、植物、動物、微生物、海洋生物、発酵ブロス(たとえば、土壌、細菌又は真菌発酵ブロス)などから生成してもよい。いくつかの態様において、化合物コレクション(「ライブラリー」)を試験する。ライブラリーは、たとえば、100~500,000種類の化合物、又はそれを超えて含んでいてもよい。化合物は、マルチウェルプレート(たとえば、384ウェルプレート、1596ウェルプレートなど)中で配列されることが多い。これらは、溶媒(たとえば、DMSO)中に溶解しても、乾燥形態で、たとえば、粉末又は固体のまま提供してもよい。合成、半合成、及び/又は天然に存在する化合物のコレクションを試験してもよい。化合物ライブラリーは、構造的に関連する、構造的に多様な、又は構造的に無関係な化合物を含む場合がある。化合物は、人工(人間によって発明され、自然では認められない構造を有する)であっても天然であってもよい。いくつかの態様において、ライブラリーは、他の創薬プログラムにおいて「ヒット」又は「リード」として同定されている少なくともいくつかの化合物及び/又はその誘導体を含む。化合物ライブラリーは、天然の生成物及び/又は無向(non-directed)又は有向(directed)合成有機化学を使用して生成された化合物を含む場合がある。化合物ライブラリーは低分子ライブラリーであることが多い。目的の他のライブラリーとしては、ペプチド又はペプトイドライブラリー、cDNAライブラリー、抗体ライブラリー、及びオリゴヌクレオチドライブラリーがある。ライブラリー(たとえば、同じコア構造を有する、同じ前駆体由来の、又は共通の少なくとも1つの生化学的活性を有する化合物から主になる)に焦点を当ててもよい。
【0104】
スクリーニングのために選択される化合物は、潜在的な生物活性モチーフを提供することが既知のさまざまな化学構造を有する合成又は天然製品由来の低分子のライブラリー:0.05~5.0mM、好ましくは1.0mMの濃度のバルプロ酸;7.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のCHIR99021としても知られるGSK-3阻害剤6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル;4.0nM~10μM、好ましくは10μMの濃度のRepSoxとしても知られるTGFβR-1/ALK5の阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン;2.0~10μM、好ましくは10μMの濃度のリジン特異的脱メチル化酵素1の阻害剤パルネート(トラニルシプロミンとも称される);0.5~50μM、好ましくは50μMの濃度のアデニリルシクラーゼフォルスコリンの活性化因子;1.0nM~5μM、好ましくは5.0μMの濃度の別名4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸、又はTTNPBとして知られているレチノイド受容体アゴニストアロチノイド酸、;0.05~0.24μM、好ましくは0.1μMの濃度の3-デアザネプラノシンA(DZNep)としても知られるEZH2阻害剤(1S,2R,5R)-5-(4-アミノイミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)-3-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-3-エン-1,2-ジオール;0.1nM~1.0μM、好ましくは1.0μMの濃度で適用されるPD0325901としても知られるMEK/ERK経路の阻害剤N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミド;好ましくは10.0μMの濃度のSB431542;好ましくは1.0μMの濃度のA 83-01;好ましくは1.0μMの濃度の4-フェニル酪酸ナトリウム;好ましくは10nMの濃度のロミデプシン;好ましくは250nMの濃度のトリコスタチンA;好ましくは1.0μMの濃度のボリノスタットとしても知られるSAHA;好ましくは50nMの濃度のLAQ824;好ましくは10~100nMの濃度のパノビノスタット;好ましくは5.0μMの濃度のMS-275;好ましくは1.0μMの濃度のモセチノスタット;好ましくは40μMの濃度のCI-994;好ましくは2.0μMの濃度のBIX01294;好ましくは0.1~1.0μMの濃度のPD032590;好ましくは200nMの濃度のリチウム塩;好ましくは100nMの濃度のNVP-BEZ235;好ましくは20μMの濃度のSB216763;好ましくは0.6μMの濃度のSB203580;好ましくは0.1nM~1.0mM、好ましくは100nMの濃度のプロテインキナーゼR様ERキナーゼ(PERK)阻害剤GSK2606414;好ましくは10nMの濃度の2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド;好ましくは1.0mMの濃度のジヒドロクマリン;好ましくは7.5mMの濃度のニコチンアミド;好ましくは0.25mMの濃度の酪酸ナトリウム;好ましくは5.0μMの濃度のRG108;好ましくは50μg/mLの濃度の(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム;好ましくは1.0μMの濃度のケルセチン;好ましくは10μMの濃度のレスベラトロール;好ましくは10nMの濃度のAM580;好ましくは0.1μMの濃度のCD437;好ましくは5.0μMの濃度のPS48;好ましくは10μMの濃度のDMOG;好ましくは0.5μM~0.5mMの濃度のデフェロキサミン;好ましくは5.0μMの濃度の5-アザシチジン;好ましくは400ng/mLの濃度のシクロスポリンA;好ましくは5.0μMの濃度のEPZ004777;好ましくは10nMの濃度のSGC0946;好ましくは1.0μMの濃度のLY-364947;好ましくは5.0μMの濃度のケンパウロン;好ましくは0.5μMの濃度のダサチニブ;好ましくは10μMの濃度のPP1;好ましくは100μMの濃度のAS8351としても知られる2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン;好ましくは20~50μMの濃度の1,5イソキノリンジオール;好ましくは10ng/mLの濃度のタンパク質因子GFER(肝臓再生の成長因子オーグメンター);好ましくは20ng/mLの濃度のタンパク質因子AMH(抗ミュラー管ホルモン);好ましくは10ng/mLの濃度のタンパク質因子線維芽細胞成長因子β;好ましくは100μg/mLの濃度のB18R;好ましくは1.0μMの濃度のホルボール12-ミリステート13-アセテート;好ましくは10mMの濃度のLiC;好ましくは5.0μMの濃度のメトホルミン;好ましくは2.5nMの濃度のアンチマイシンA;好ましくは100ng/mLの濃度のタンパク質インスリン様成長因子1(IGF1);好ましくは100ng/mLの濃度のタンパク質インスリン様成長因子2(IGF2);好ましくは50μMの濃度のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA);好ましくは100ng/mLの濃度のタンパク質成長ホルモン(GH);好ましくは5.0nMの濃度のステロイド17-b-エストラジオール;好ましくは1.0μMの濃度のウォルトマニン;好ましくは1.0~100μMの濃度のPKC活性化因子(2S,5S)-(E,E)-8-(5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2,4-ペンタジエノイルアミノ)ベンゾラクタム、PKC活性化因子V;好ましくは10mMの濃度のケトン体3-ヒドロキシブチレート(3-HB);好ましくは1.0~10μMの濃度のステロイドテストステロン;好ましくは1.0mMの濃度のL-カルニチン;好ましくは10μMの濃度のRSC-133;好ましくは50μMの濃度のアルギニンN-メチルトランスフェラーゼ阻害剤-1(AMI-5);好ましくは1.0μMの濃度のヘッジホッグ経路活性化因子Hh-Ag1.5;好ましくは10μMの濃度のJNJ10198409;好ましくは10nMの濃度のLDE225;好ましくは100nM~10μMの濃度のRasGAP及びERK1SC-1の阻害剤;好ましくは50μMの濃度のオートファジーSMER28の低分子エンハンサー;好ましくは50μMの濃度のPDGFRチロシンキナーゼ阻害剤VIISU16f;好ましくは10μMの濃度の、VEGFR2、FGFR1、及びPDGFRβSU5402のチロシンキナーゼドメインの阻害剤;及び好ましくは300ng/mLの濃度の再プログラミング因子OCT4、NANOG、LIN28A、LIN28B、SOX2、MYC、KLF4、又はDNMT3Bに関するmRNAから個々に又は前述の因子と組み合わせて選択してもよい。
【0105】
化合物ライブラリーは、多数の販売会社、たとえばTocris BioScience, Nanosyn, BioFocusから、及び政府機関から入手可能である。たとえば、米国国立衛生研究所(NIH)分子ライブラリープログラムのコンポーネントであるMolecular Libraries Small Molecule Repository(MLSMR)は、たとえば、ハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイにおいて使用するための既知の及び未知の生物学的活性を有する300,000を超える化学的に多様な化合物のコレクションが同定、取得、維持、及び配布されるように設計されている(https://mli.nih.gov/mli/参照)。NIHクリニカルコレクション(NCC)は、ヒト臨床試験において使用された歴史を有するおよそ450個の低分子のプレートアレイである。これらの化合物は、既知の安全性プロファイルを有する非常に薬物らしいもの(drug-like)である。いくつかの態様において、「承認されたヒト用薬物」を含む化合物のコレクションを試験する。「承認されたヒト用薬物」は、販売前に、政府規制当局、たとえば米国食品医薬品局、欧州医薬品庁、又は少なくとも治療剤の安全性を評価することを担う同様の機関によってヒトの処置における使用に承認されている化合物である。被検化合物は、たとえば、抗腫瘍薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗寄生虫薬、抗うつ薬、抗精神病薬、麻酔薬、抗狭心症薬、降圧薬、抗不整脈薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗血栓薬、制吐薬、免疫モジュレーター薬、抗糖尿病薬、脂質又はコレステロール低下薬(たとえば、スタチン)、抗けいれん薬、抗凝固薬、抗不安薬、催眠薬(睡眠誘導薬)、ホルモン薬、又は抗ホルモン薬などであってもよい。いくつかの態様において、化合物は、少なくともいくつかの前臨床又は臨床開発が行われたものであっても、「薬物らしい」特性が判定又は予測されたものであってもよい。たとえば、被検化合物は、非ヒト動物において第1相試験又は少なくとも1つの前臨床研究が完了し、安全性及び忍容性のエビデンスを示している場合がある。
【0106】
いくつかの態様において、被検化合物は、化合物が投与され得る生物細胞に対して、及び/又は化合物が試験される場合がある細胞に対して、使用されることになる濃度で、又はいくつかの態様において、使用されることになる濃度よりも最大10倍、100倍、若しくは1,000倍高い濃度で実質的に非毒性である。たとえば、細胞生存率及び/又は増殖に対して統計的に有意な効果はなくてもよいか、又はさまざまな態様において、生存率又は増殖における減少は、1%、5%、又は10%以下であってもよい。細胞毒性及び/又は細胞増殖への効果は、さまざまなアッセイのいずれかを使用して評価してもよい。たとえば、細胞代謝アッセイ、たとえばAlamarBlue、MTT、MTS、XTT、及びCellTitre Gloアッセイ、細胞膜完全性アッセイ、細胞ATPベースの生存率アッセイ、ミトコンドリアレダクターゼ活性アッセイ、BrdU、EdU、又はH3-チミジン取り込みアッセイを使用してもよい。いくつかの態様において、被検化合物は、当技術分野において既知の又は使用される細胞培養培地、たとえば、脊椎動物、たとえば哺乳動物の細胞の培養に好適な培養培地中で認められる化合物ではないか、又は被検化合物が、当技術分野において既知の又は使用される細胞培養培地中において認められる化合物である場合、被検化合物は、本発明の方法において使用するときに異なる濃度、たとえばより高濃度で使用する。
【0107】
iTRの広範囲のモジュレーターに関するアッセイ
アッセイの実施の側面及び対照
上述のさまざまな本発明のスクリーニングアッセイは、被検化合物が活性TR阻害剤のレベルを阻害するか又は活性TR活性化因子のレベルを増加させるかどうかの判定に関与する。レポーター分子の発現に好適な細胞は上述している。本発明のアッセイを行う際に、アッセイ構成成分(たとえば、細胞、TR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチド、及び被検化合物)を、複数の容器又は他の容器へ典型的には分注する。細胞を含むことが可能な任意のタイプの容器又は物品を使用してもよい。本発明の多くの態様において、容器は、マルチウェルプレート(「マイクロウェルプレート」、「マイクロタイタープレート」などとも称する)のウェルである。説明の目的で「ウェル」という用語は、本発明のスクリーニングを行うために使用することができる任意のタイプの容器又は物品、たとえば、アッセイ構成成分を含むことができる任意の容器又は物品を指すために使用することになる。本発明はウェルを使用すること又はマルチウェルプレートを使用することに限定されないことは理解されるべきである。いくつかの態様において、複数の物理的に分離された空洞(又は他の封じ込める特徴)が基質に又はその上に存在する任意の製造品を使用することができる。たとえば、アッセイ構成成分は、流体中に封じ込めることができ、これは、表面上に任意に配列させてもよく、マイクロ流体デバイスなどのチャネル中の個別の場所に液滴を封じ込める耐水性物質によって任意に分離してもよい。
【0108】
一般的に、アッセイ構成成分は、任意の順序でウェルに添加することができる。たとえば、細胞を最初に添加し、選択された時間(たとえば、6~48時間)培養で維持してから被検化合物及び標的TR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチド又は発現構築物を有する細胞をウェルに添加してもよい。いくつかの態様において、化合物をウェルに添加してから細胞のポリペプチドを添加する。いくつかの態様において、レポーターポリペプチドの発現は、被検化合物をウェルに任意に添加した後に細胞をプレーティングした後、誘導される。いくつかの態様において、レポーター分子の発現は、レポーターポリペプチドをコードする発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクトすることによって達成される。いくつかの態様において、細胞は、レポーターポリペプチドを発現するように以前に遺伝子操作が行われている。いくつかの態様において、レポーター分子の発現は、調節可能な発現制御エレメントの制御下にあり、レポーター分子の発現の誘導は、細胞を、発現を誘導する(又は抑制解除する)薬剤と接触させることによって達成される。
【0109】
細胞、被検化合物、又はポリペプチドを含むアッセイ組成物は、被検化合物を(その活性を阻害する被検化合物の非存在下で)標的TR活性化因子又はTR阻害剤のレベル又は活性を増加させるか又は減少させ得る好適な時間を維持する。添加することになる、細胞の数、TR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドの量、及び被検化合物の量は、たとえば、要因、たとえば容器のサイズ、細胞型に依存することになり、当業者によって判定してもよい。いくつかの態様において、TR活性化因子又はTR阻害剤ポリペプチドのモル濃度対被検化合物の比は、1:10~10:1である。いくつかの態様において、細胞の数、被検化合物の量、及び組成物を維持する時間の長さは、被検化合物の非存在下で、選択された時間の後に容易に検出可能なレベルがシグナル伝達されるように選択してもよい。いくつかの態様において、細胞は、化合物の添加時に約25%~75%、たとえば、約50%のコンフルエンスである。いくつかの態様において、1,000~10,000細胞/ウェル(たとえば、約5,000細胞/ウェル)は、96ウェルプレートの1ウェル当たり約100μlの培地中に播種する。他の例示的な態様において、細胞は、384ウェルプレート中の1ウェル当たり500~2,000(たとえば、約1000)細胞で約30μl~50μlの培地中に播種する。いくつかの態様において、化合物は、複数の濃度(たとえば、2~10個の異なる濃度)で及び/又は複数回の複製(たとえば、2~10回の複製)で試験する。いくつかの又は全ての異なる濃度の複数回の複製を行ってもよい。いくつかの態様において、候補TR因子は、0.1μg/ml~100μg/ml、たとえば、1μg/ml~10μg/mlの濃度で使用する。いくつかの態様において、候補TR因子は複数の濃度で使用する。いくつかの態様において、化合物は、播種後6時間~1日(24時間)細胞に添加する。本発明の化合物をスクリーニング及び/又は特性評価する方法のいずれかのいくつかの側面において、被検化合物は、所定の濃度を達成するのに十分な量でアッセイ組成物に添加する。いくつかの態様において、濃度は最大約1nMである。いくつかの態様において、濃度は、約1nM~約100nMである。いくつかの態様において、濃度は、約100nM~約10μMである。いくつかの態様において、濃度は、少なくとも10μM、たとえば、10μM~100μMである。アッセイ組成物は、これらの最後の構成成分を添加した後、さまざまな時間維持してもよい。ある特定の態様において、アッセイ組成物は、全ての構成成分を添加した後、約10分間~約4日間、たとえば、1時間~3日間、たとえば、2時間~2日間、又は任意の介入範囲又は特定の値、たとえば約4~8時間維持する。複数の異なる時点が試験される。被検化合物の追加のアリコートを、そのような時間の範囲内でアッセイ組成物に添加してもよい。いくつかの態様において、細胞は、その種類の細胞を培養するのに適切な細胞培養培地中で維持される。いくつかの態様において、無血清培地を使用する。いくつかの態様において、アッセイ組成物は、細胞培養培地の代わりに、細胞膜の完全性及び任意に細胞生存率を維持するのに適合する生理学的に許容される液体を含む。任意の好適な液体を使用してもよいが、ただし、それが適切なオスモル濃度を有し、そうでなければアッセイを行うために少なくとも十分な時間、細胞膜の妥当な完全性及び任意に細胞生存率を維持するのに適合するものに限る。活性TR活性化因子のレベルにおける増加又はTR阻害剤における減少を示す1つ以上の測定を、インキュベート期間中又は後に行ってもよい。
【0110】
いくつかの態様において、iTRの広範囲のモジュレーターとなる潜在力に関してスクリーニングされる化合物は、体細胞型に多能性を誘導する他の条件で可能な薬剤から選択される。そのような薬剤は、以下の化合物を個々に又は組み合わせて含む:遺伝子OCT4、SOX2、KLF4、NANOG、ESRRB、NR5A2、CEBPA、MYC、LIN28A及びLIN28Bの単独、及び低分子化合物との組合せ、たとえば以下の化合物の組合せ:これらに限定されないが、CHIR99021を含むグリコーゲンシンターゼ3(GSK3)の阻害剤;これらに限定されないが、SB431542、A-83-01、及びE616452を含むTGF-βシグナル伝達の阻害剤;これらに限定されないが、バルプロ酸、フェニルブチレート、及びn-ブチレートを含む、これらに限定されないが、脂肪族酸化合物を含むHDAC阻害剤;トラポキシンB及びデプシペプチドを含む環式テトラペプチド;ヒドロキサム酸、たとえばトリコスタチンA、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824、パノビノスタット(LBH589)、及びベンズアミドエンチノスタット(MS-275)、CI994、モセチノスタット(MGCD0103);サーチュイン阻害剤ニコチノアミド、NAD、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン、及び2-ヒドロキシナフトアルデヒドの多様な誘導体、又はIV(HDAC11)デアセチラーゼを含む、クラスI(HDAC1、HDAC2、HDAC3、及びHDAC8)、IIA(HDAC4、HDAC5、HDAC7、及びHDAC9)、IIB(HDAC6及びHDAC10)、III(SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、又はSIRT7)を具体的に標的とするもの;これらに限定されないが、パルネートを含むH3K4/9ヒストンメチル基分解酵素LSD1の阻害剤;これらに限定されないが、EPZ004777を含むDot1Lの阻害剤;これらに限定されないが、Bix01294を含むG9aの阻害剤;これらに限定されないが、DZNepを含むEZH2の阻害剤、これらに限定されないが、RG108を含むDNAメチルトランスフェラーゼの阻害剤;5-アザ-2’デオキシシチジン(商標名Vidaza及びAzadine);DNAメチル化を阻害し、脱メチル化の第1の工程である5hmCを増加させることができるTet1を増加させるビタミンC、;これらに限定されないが、PS48を含む3’ホスホイノシチド依存性キナーゼ1の活性化因子;これらに限定されないが、ケルセチン及びフルクトース2,6-ビスホスフェート(ホスホフルクトキナーゼ1の活性化因子)を含む解糖系のプロモーター;これらに限定されないが、ケルセチンを含むHIF1転写複合体の活性を促進する薬剤;これらに限定されないが、AM580、CD437、及びTTNPBを含むRARアゴニスト;これらに限定されないが、レスベラトロールを含む低酸素症を模倣する薬剤;これらに限定されないが、テロメラーゼ(TERT)の触媒構成成分の外因性発現を含むテロメラーゼ活性を増加させる薬剤、LSD1の下方制御を介したエピジェネティック改変を促進する薬剤、これらに限定されないが、リチウムを含むH3K4特異的ヒストンメチル基分解酵素;又はこれらに限定されないが、PD032590を含むMAPK/ERK経路の阻害剤。そのような化合物は、多様な組合せ、濃度、及び異なる期間で投与して、たとえば、COX7A1、ADIRF、若しくはTNFRSF11B、若しくは本明細書に記載するiTRの他の阻害剤の発現の減少に関してアッセイすることによって、及び/又はAMH若しくは他の活性化因子若しくは本明細書に記載するiTRの発現の増加に関してアッセイすることによって、広範囲のiTRマーカーを使用して培養された細胞に対してin vitroで、又は損傷した若しくは罹患した組織においてin vivoで、又は動物の寿命の調節において、iTRの効果を最適化してもよい。
【0111】
いくつかの態様において、(たとえば、構造及び/又は配列が)それぞれ同一であることが典型的には既知である個々の化合物を、多数のウェルにそれぞれ添加する。いくつかの態様において、2つ以上の化合物を、1つ以上のウェルに添加してもよい。いくつかの態様において、同一であることが未知の1つ以上の化合物を試験してもよい。同一性は、当技術分野において既知の方法を使用した後に判定してもよい。
【0112】
さまざまな態様において、本発明の前述のアッセイ方法は、ハイスループットスクリーニング(HTS)の実施に適している。いくつかの態様において、本発明のスクリーニングアッセイは、ハイスループット又はウルトラハイスループットである(たとえば、Fernandes,P.B., Curr Opin Chem.Biol. 1998,2:597;Sundberg,S A, Curr Opin Biotechnol. 2000,11:47参照)。ハイスループットスクリーニング(HTS)は、多数の化合物を高効率で、たとえば、並行して試験することを伴うことが多い。たとえば、数万又は数百万の化合物を短期間、たとえば数時間から数日で常法に従ってスクリーニングすることができる。いくつかの態様において、HTSは、1日当たり1,000~100,000個の化合物の試験を指す。いくつかの態様において、ウルトラハイスループットは、1日当たり100,000個を上回る化合物、たとえば、1日当たり最大百万個以上の化合物のスクリーニングを指す。本発明のスクリーニングアッセイは、マルチウェルフォーマットで、たとえば、96ウェル、384ウェルフォーマット、1,536ウェルフォーマット、又は3,456ウェルフォーマットで行ってもよく、自動化に好適である。いくつかの態様において、マイクロウェルプレートの各ウェルを使用して、異なる被検化合物に対して個別のアッセイを行うことができ、又は濃度若しくはインキュベート時間の影響が観察された場合、複数のウェルは、単一の化合物の被検サンプルを含み、少なくともいくつかのウェルは任意に空のまま若しくは対照若しくは複製として使用してもよい。典型的には、本明細書で開示するアッセイのHTSの実施は、自動化の使用を伴う。いくつかの態様において、1つ以上のロボットを含む統合ロボットシステムは、化合物、細胞及び/又は試薬を添加、混合、インキュベート、及び読み出し又は検出するために、複数のアッセイステーション間でアッセイマイクロウェルプレートを輸送する。いくつかの側面において、本発明のHTSシステムは、多くのプレートを同時に調製、インキュベート、分析する場合がある。好適なデータプロセシング及び制御ソフトウェアを用いてもよい。ハイスループットスクリーニングの実施は当技術分野において周知である。本発明をいかなる方法でも限定することなく、ある特定の一般的な原理及び技術は、本発明のHTSの態様において適用してもよく、Macarron R & Hertzberg R P. Design and implementation of high-throughput screening assays. Methods Mol Biol., 565:1-32,2009及び/又はAn W F & Tolliday N J., Introduction: cell-based assays for high-throughput screening. Methods Mol Biol. 486:1-12,2009及び/又はこれらのいずれかの参考文献に記載されている。例示的な方法も、High Throughput Screening: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) by William P.Janzen (2002)及びHigh-Throughput Screening in Drug Discovery (Methods and Principles in Medicinal Chemistry) (2006)で開示される。追加の化合物は、たとえば、最初のヒットと比較して、1つ以上の改善された薬物動態及び/又は薬力学的特性を有していても、単に異なる構造を有していてもよい。「改善された特性」は、たとえば、化合物を、本明細書に記載する1つ以上の目的のためにより効果的に又はより好適にする場合がある。いくつかの態様において、たとえば、化合物は、目的の分子標的(たとえば、TR活性化因子又はTR阻害剤遺伝子産物)に対する高親和性、非標的分子に対する低親和性、高い溶解性(たとえば、高い水溶性)、高い安定性(たとえば、血液、血漿において、及び/又は胃腸管において)、身体における高い半減期、高いバイオアベイラビリティ、及び/又は低い副作用などを有していてもよい。最適化は、ヒット構造の実験的改変(たとえば、関連する構造を有する化合物を合成し、これらを細胞不含若しくは細胞ベースのアッセイにおいて又は非ヒト動物において試験する)及び/又はコンピューターによるアプローチの使用を介して達成してもよい。いくつかの態様において、そのような改変は、医薬品化学の確立された原理を使用して1つ以上の特性を予測可能に変化させることができる。いくつかの態様において、「ヒット」した1つ以上の化合物を同定し、体系立てられた構造変化を行って、ヒットと構造的に関連する化合物(たとえば、精製されたリード化合物)の第2のライブラリーを作製する。次いで、第2のライブラリーを、本明細書に記載する方法のうちのいずれかを使用してスクリーニングしてもよい。いくつかの態様において、iTR因子は、安定性を促進するか(たとえば、血清において)、半減期を増加させるか、毒性又は免疫原性を減少させるか、そうでなければ化合物に望ましい特性を与える部分が改変されるか又は組み込まれる。
【0113】
iTR、iTM及びICM因子の使用
医薬組成物
iTR、iTM、老化細胞除去、iS-CSC及びiCM因子は、さまざまな異なる用途を有する。そのような用途の非限定的な例をここで論じる。いくつかの態様において、iTR因子は、器官又は組織の再生を強化するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、四肢、指、軟骨、心臓、血管、骨、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、直腸、肛門、内分泌腺(たとえば、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓の内分泌部分)、皮膚、毛包、胸腺、脾臓、骨格筋、心筋の局所損傷、平滑筋、脳、脊髄、末梢神経、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精管、精嚢、前立腺、陰茎、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、腎臓、尿管、膀胱、尿道、眼(たとえば、網膜、角膜)、又は耳(たとえば、コルチ器官)の再生を強化するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、間質層、たとえば、組織の実質を支える結合組織の再生を強化するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、外科手術、たとえば、罹患したか又は損傷した、組織、器官、又は他の構造、たとえば四肢、指などの少なくとも一部の除去を伴う外科手術の後の再生を強化するために使用する。たとえば、そのような外科手術は、肝臓、肺、腎臓、胃、膵臓、腸、乳腺、卵巣、睾丸、骨、四肢、指、筋肉、皮膚などの少なくとも一部を除去する場合がある。いくつかの態様において、外科手術は腫瘍を除去するためのものである。いくつかの態様において、iTR因子は、外傷、外科手術、疾患、及び火傷の後の皮膚の瘢痕のない再生を促進するために使用する。
【0114】
強化再生は、さまざまな態様において、以下のいずれか1つを含んでいてもよい:(a)再生速度を増加させること;(b)再生の程度を増加させること;(c)再生組織又は器官又は他の身体構造において適切な構造(たとえば、形状、パターン、組織構成、組織極性)の確立を促進すること;(d)機能を保持及び/又は回復させる様式で、新しい組織の成長を促進すること。再生を強化するためのiTR因子の使用は特定の興味対象のものではあるが、本発明は、再生の検出可能な強化を必ずしも生成せずに、修復又は創傷治癒を一般的に強化するためのiTR因子の使用を包含する。したがって、本発明は、修復又は創傷治癒を強化する方法であって、本明細書に記載する方法のいずれかに従って、iTR因子を、それを必要とする対象に投与する方法を提供する。
【0115】
老化及び加齢に関連した疾患の多くの側面を、iTR療法を用いて対処できるように本発明において教示する。老化のこれらの兆候としては、末梢血管、冠状動脈、及び脳血管疾患を含む加齢に関連した血管機能不全;変形性関節症、椎間板変性症、骨折、腱及び靱帯裂傷、並びに四肢再生を含む骨格筋系障害;脳卒中及び脊髄損傷を含む神経学的障害;筋ジストロフィー、サルコペニア、心筋梗塞、及び心不全を含む筋障害;I型糖尿病、アジソン疾患、甲状腺機能低下症、及び下垂体機能不全を含む内分泌障害;膵臓外分泌機能不全を含む消化器障害;黄斑変性症、網膜色素変性症、及び神経性網膜変性障害を含む眼障害;皮膚火傷、裂傷、外科的切開、脱毛症、白髪、及び皮膚老化を含む皮膚状態;肺気腫及び肺間質線維症を含む肺障害;難聴を含む聴覚障害;及び血液障害、たとえば再生不良性貧血及び造血幹細胞移植の失敗がある。
【0116】
いくつかの態様において、本発明は、それを必要とする対象において再生を強化する方法であって、iTR因子の有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの態様において、化合物(たとえば、iTR因子)の有効量は、参照値(たとえば、好適な対照値)と比較して、損傷した組織再生の速度又は程度を増加させる量である。いくつかの態様において、参照値は、化合物の非存在下での(プラセボの投与を任意に伴う)予測される(たとえば、平均的又は典型的な)再生の速度又は程度である。いくつかの態様において、iTR因子の有効量は、化合物の非存在下で、予測される(たとえば、平均的又は典型的な)構造的又は機能的な転帰と比較して、改善された構造的及び/又は機能的な転帰をもたらす量である。いくつかの態様において、化合物、たとえば、iTR因子の有効量は、芽体形成を強化する及び/又は瘢痕を減少させる。再生の程度又は速度は、たとえば、再生される組織の寸法又は体積に基づいて評価してもよい。構造的及び/又は機能的な転帰は、たとえば、(顕微鏡又はイメージング技術、たとえばX線、CTスキャン、MRIスキャン、PETスキャンの使用を任意に含む)視覚的検査に基づいて、及び/又はそのような組織、器官、若しくは身体部分によって通常行われる1つ以上の生理学的プロセス又はタスクを行うための組織、器官、又は他の身体部分の能力を評価することによって評価してもよい。典型的には、改善された構造的転帰は、iTR因子を伴う処置の非存在下で(たとえば、平均的又は典型的な転帰が)予測されるであろう構造的転帰と比較して、正常な構造(たとえば、組織損傷より前に存在していた構造又は正常な、健常個体において存在するような構造)により類似しているものである。当業者であれば、機能に関する適切なアッセイ又は試験を選択することができる。いくつかの態様において、再生の速度又は程度における増加は、対照値と比較して統計的に有意であり(たとえば、<0.05のp値、又は<0.01のp値)及び/又は臨床的に有意である。いくつかの態様において、構造的及び/又は機能的な転帰における改善は、対照値と比較して、統計的に有意及び/又は臨床的に有意である。「臨床的に有意な改善」は、医学的又は外科的施術者の健全な判断の範囲内で、対象に有意義な利点(たとえば、処置を価値のあるものにするのに十分な利点)を与える改善を指す。多くの態様において、(たとえば、治療目的のために)特定の種の対象に投与されるiTRモジュレーター、たとえば、iTR因子は、その種の対象において発現される内因性TR遺伝子を調節する、たとえば阻害する化合物であるであろうことは理解される。たとえば、対象がヒトである場合、ヒトTR阻害剤遺伝子産物の活性を阻害し、ヒトTR活性化因子遺伝子産物の活性を活性化する化合物が典型的には投与されることになる。
【0117】
いくつかの態様において、iTR因子は、たとえば、火傷(熱的又は化学的)、擦り傷、又は皮膚損失を伴う他の状況、たとえば、感染症、たとえば壊死性筋膜炎又は電撃性紫斑病の後に皮膚再生を強化するために使用する。いくつかの態様において、火傷は2度又は3度の火傷である。いくつかの態様において、皮膚損失の領域は、少なくとも10cm2の領域を有する。1つの側面において、iTR因子は、移植された皮膚の再生を強化する。1つの側面において、iTR因子は、過度の及び/又は病理学的な創傷収縮又は瘢痕を減少させる。
【0118】
いくつかの態様において、iTR因子は、たとえば、状況、たとえば偽関節骨折、埋込体固定、歯周又は歯槽堤の増強、頭蓋顔面の外科手術、又は新規の骨の発生が適切と考えられる他の状態において、骨再生を強化するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、骨再生が望まれる位置に適用する。いくつかの態様において、iTR因子は、骨移植材料に組み込まれるか又はそれと組み合わせて使用される。骨移植材料としては、さまざまなセラミック及びタンパク性材料がある。骨移植材料としては、自家骨(たとえば、腸骨稜、腓骨、肋骨などから採取された骨)、死体からの同種異系骨、及び異種骨がある。合成骨移植材料としては、さまざまなセラミック、たとえばリン酸カルシウム(たとえばヒドロキシアパタイト及びリン酸三カルシウム)、バイオガラス、及び硫酸カルシウム、及びタンパク性材料、たとえば脱灰骨マトリックス(DBM)がある。DBMは、皮質骨組織を粉砕し(一般的に100~500μmの篩過粒子サイズ)、次いで粉砕した組織を(一般的に0.5から1N)塩酸で処置することによって調製することができる。いくつかの態様において、iTR因子は、1つ以上の骨移植材料とともに対象に投与する。iTR因子は、(iTR因子及び骨移植材料を含む組成物で、)骨移植材料と組み合わせても、たとえば、移植片の配置後に個別に投与してもよい。いくつかの態様において、本発明は、iTR因子を含む骨ペーストを提供する。骨ペーストは、これらを、骨欠損、たとえばボイド、ギャップ、キャビティ、クラックなどに導入し、使用して、そのような欠損をつなぎ合わせたり充填したりしても、現存する骨構造に適用してもよいように、好適な稠度及び組成を有する製品である。骨ペーストは、ユーザによってさまざまな形状に操作し、鋳造するのを可能にするための十分な可鍛性を典型的には有する。そのような処置の所望の転帰は、ペーストを置き換えるために骨形成が起こり、たとえば、ペーストが適用された形状を保持するであろうことである。骨ペーストは、新規の骨形成のための支持構造を提供し、骨形成を促進する物質を含んでいてもよい。骨ペーストは、上述のセラミック又はタンパク性骨移植材料(たとえば、DBM、ヒドロキシアパタイト)のうちの1つ以上に加えて、材料、たとえば、ヒアルロン酸、キトサン、デンプン構成成分、たとえばアミロペクチンに、ペースト又はパテのような稠度を与える1つ以上の構成成分を含むことが多い。いくつかの態様において、iTR因子は、未分化間葉細胞からの骨祖細胞の形成及び/又は動員を強化し、及び/又は骨祖細胞の新規の骨を形成する細胞(骨芽細胞)への分化を強化する。いくつかの態様において、iTR因子は、たとえば、対象における骨再生を強化するために、骨減少症又は骨粗鬆症を呈する対象に投与する。
【0119】
いくつかの態様において、iTR因子は、関節(たとえば、繊維性、軟骨、又は滑膜関節)の再生を強化するために使用する。いくつかの態様において、関節は椎間板である。いくつかの態様において、関節は、股、膝、肘、又は肩関節である。いくつかの態様において、iTR因子は、歯及び/又は歯周組織又は構造(たとえば、歯髄、歯周靭帯、歯、歯周骨)の再生を強化するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、CNS及びPNS損傷におけるグリア性瘢痕を減少させるために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、体内外科手術(internal surgery)において癒着及び狭窄の形成を減少させるために使用する。
【0120】
いくつかの態様において、iTR因子は、可動性を改善する腱及び靭帯修復において瘢痕を減少させるために使用する。
【0121】
いくつかの態様において、iTR因子は、眼傷害後の失明を減少させるために使用する。
【0122】
いくつかの態様において、iTR因子は、細胞と組み合わせて対象に投与する。iTR因子及び細胞は、個別に又は同じ組成物中で投与してもよい。個別に投与する場合、これらは同じ又は異なる場所に投与してもよい。細胞は、さまざまな態様において、自家、同種異系、又は異種のものであってもよい。細胞は、祖細胞又は幹細胞、たとえば、成体幹細胞を含む場合がある。本明細書で使用する幹細胞は、少なくとも以下の特性を有する細胞である:(i)自己再生、すなわち細胞分裂の多くのサイクルを経て、同時に依然として未分化状況を維持したままである能力;及び(ii)多能性又は多分化能、すなわちいくつかの異なる細胞型の子孫を生成するための能力(たとえば、特定の組織又は器官の異なる細胞型のうちの多く、大部分、又は全て)。成体幹細胞は、非胚組織が起源である幹細胞(たとえば、胎児、出生後、又は成体組織)である。本明細書で使用する「祖細胞」という用語は、多能性幹細胞よりも分化しているが、完全には分化していない多能性細胞を包含する。(胚祖細胞に起因する場合がある)そのようなより分化した細胞は、胚祖細胞と比較して自己再生のための能力が低下している。いくつかの態様において、iTR因子は、間葉祖細胞、神経前駆細胞、内皮祖細胞、毛包祖細胞、神経堤祖細胞、乳腺幹細胞、肺祖細胞(たとえば、気管支肺胞上皮(bronchioalveolar)幹細胞)、筋肉祖細胞(たとえば、衛星細胞)、脂肪由来祖細胞、上皮祖細胞(たとえば、ケラチノサイト幹細胞)、及び/又は造血祖細胞(たとえば、造血幹細胞)と組み合わせて投与する。いくつかの態様において、細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、又はiPS細胞から少なくとも部分的に分化した細胞を含む。いくつかの態様において、祖細胞は成体幹細胞を含む。いくつかの態様において、細胞のうちの少なくともいくつかは、分化細胞、たとえば、軟骨細胞、骨芽細胞、ケラチノサイト、肝細胞である。いくつかの態様において、細胞は、筋芽細胞を含む。
【0123】
いくつかの態様において、iTR因子は、対象に投与した後に、重合するか又は架橋されるか又はin situで相転移を受け、ヒドロゲルを典型的には形成する、1つ以上の化合物を含む組成物(たとえば、溶液)で投与される。組成物は、モノマー、ポリマー、開始剤、架橋剤などを含んでいてもよい。組成物は、(たとえば、注入器を使用して)再生が必要とされる領域に適用してもよく、それがin situでゲルを形成した場合に、そこからiTR因子が経時的に放出される。ゲル化は、たとえば、体液中のイオンと接触させることによって又は温度若しくはpHを変化させることによって、又は光によって、又は(たとえば、マルチバレル式注入器を使用して)反応性前駆体を組み合わせることによって誘発してもよい(たとえば、米国特許第6,129,761号;Yu L, Ding J. Injectable hydrogels as unique biomedical materials. Chem Soc Rev. 37(8):1473-81(2008) 参照)。いくつかの態様において、ヒドロゲルは、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸及びコラーゲンI含有ヒドロゲル、たとえば本明細書に記載するHyStem-Cである。いくつかの態様において、組成物は細胞をさらに含む。
【0124】
いくつかの態様において、iTR因子は、テロメラーゼの触媒構成成分を発現するベクターと組み合わせて対象に投与する。ベクターは、個別に又は同じ組成物で投与してもよい。個別に投与する場合、これらは、同じ又は異なる場所で投与してもよい。ベクターは、処置された組織と同じ種又は他の種からテロメラーゼ触媒構成成分を発現する場合がある。iTR因子のテロメラーゼ触媒構成成分との前記同時投与は、標的組織が加齢個体からのものであり、前記個体がヒトからのものである場合に特に有用である。他の発明の方法は、損傷に起因して損失した組織又は器官を修復又は置き換えるための、生存している機能組織、器官、又は細胞含有組成物のex vivo生成におけるiTR因子の使用を含む。たとえば、個体から除去された細胞又は組織(将来のレシピエント、同じ種の個体、又は異なる種の個体)は、任意にマトリックス、足場(たとえば、3次元足場)又はモールド(たとえば、生体適合性、生分解性材料、たとえばポリマー、たとえばHyStem-Cを任意に含む)と共に、in vitroで培養してもよく、これらの機能組織又は器官への発生は、iTR因子と接触させることによって促進することができる。足場、マトリックス、又はモールドは、天然に存在するタンパク質、たとえばコラーゲン、ヒアルロン酸、若しくはアルギネート(又はこれらのいずれかの化学的に改変された誘導体)、又は乳酸、カプロラクトン、グリコール酸などの合成ポリマー若しくはコポリマー、又は自己組織化ペプチド、又は組織、たとえば心臓弁、腸粘膜、血管、及び気管由来の脱細胞化マトリックスから少なくとも一部はなる場合がある。いくつかの態様において、足場は、ヒドロゲルを含む。足場は、ある特定の態様において、足場から経時的に拡散され得るiTR因子で被覆又は含浸されていてもよい。ex vivoで生成後、組織又は器官を、対象に又はその上に移植する。たとえば、組織又は器官は、移植しても、ある特定の組織、たとえば皮膚の場合は身体表面に配置してもよい。組織又は器官は、in vivoで発達が継続される場合がある。いくつかの態様において、少なくとも一部はex vivoで生成される組織又は器官は、膀胱、血管、骨、筋膜、肝臓、筋肉、皮膚パッチなどである。好適な足場は、たとえば、細胞外マトリックス(ECM)を模倣していてもよい。任意に、iTR因子は、ex vivoで生成された組織又は器官の移植前、移植中、及び/又は移植後に対象に投与する。いくつかの側面において、生体適合性材料は、使用される濃度でin vitroで細胞に対して実質的に非毒性であるか、又は生存対象に投与される材料の場合、使用される量で及び位置において対象の細胞に対して実質的に非毒性である材料であり、対象に有意な有害な又は不都合な効果、たとえば、免疫学的又は炎症性反応、許容できない瘢痕組織形成などを誘導しないか若しくはもたらすことはない。ある特定の生体適合性材料は、対象のうちのわずかな百分率、典型的には、約5%、1%、0.5%、又は0.1%未満でそのような有害反応を誘導する場合があることは理解されるであろう。
【0125】
いくつかの態様において、iTR因子又はiTR遺伝子発現の広範囲のパターンをもたらすことが可能なものを含む因子の組合せで、被覆又は含浸されるマトリックス又は足場が、再生を必要とする対象に任意に細胞と組み合わせて移植される。マトリックス又は足場は、再生が望まれる組織又は器官の形状であってもよい。細胞は、そのような組織又は器官をもたらす1つ以上のタイプの及び/又はそのような組織又は器官において認められる1つ以上のタイプの幹細胞であってもよい。
【0126】
いくつかの態様において、iTR因子又は因子の組合せは、組織損傷の位置に直接的に又はその付近に投与する。「組織損傷の位置に直接的に」は、組織損傷の位置に化合物若しくは組成物を注入するか、又は化合物若しくは組成物を組織損傷の位置に広げる、注ぐ、そうでなければ直接的に接触させることを包含する。いくつかの態様において、投与が、組織損傷の位置の目に見えるかそうでなければ明白な端部から最大約10cmの範囲内で、又は損傷した組織若しくは器官内の少なくとも一部に位置する血管(たとえば、動脈)に行われる場合、投与は「組織損傷の位置の付近に」とみなされる。「組織損傷の位置の付近に」投与することは、ときとして損傷器官内であるが、損傷が明白ではない位置に投与することである。いくつかの態様において、組織、器官、又は他の構造が損傷したか又は損失した後に、iTR因子を、組織、器官、又は他の構造の残りの部分に適用する。いくつかの態様において、iTR因子は、身体に付着したままの切断された指又は四肢の末端に適用して、損失した部分の再生を強化する。いくつかの態様において、切断された部分は外科的に再付着され、iTR因子を、創傷の片面又は両面に適用される。いくつかの態様において、iTR因子は、移植された器官又はこれらの一部の生着又は治癒又は再生を強化するために投与する。いくつかの態様において、iTR因子は、神経再生を強化するために使用する。たとえば、iTR因子は、切断された神経、たとえば、近位及び/又は遠位断端付近に注入してもよい。いくつかの態様において、iTR因子は、神経末端及び介在する間隙が封入されている生物学的又は合成材料から構成される管である人工神経導管内に配置する。因子は、その制御放出を経時的に促進するマトリックス中に製剤化してもよい。前記マトリックスは、生体適合性、任意に生分解性材料、たとえば、ポリマー、たとえば、架橋ヒアルロン酸若しくはPEGDAで架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートを含むヒアルロン酸、又はPEGDAによって架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートとカルボキシメチル改変ゼラチン(HyStem-C)との混合物から構成されるものを含んでいてもよい。いくつかの態様において、iTR因子は、本明細書に記載するAgeX1547であり、iTRを誘導するために、PEGDAによって架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートとカルボキシメチル改変ゼラチン(HyStem-C)中に局在化及び遅延放出のために製剤化されていてもされていなくてもよい。iTM及びiCM因子、たとえば胎児又は成体細胞由来のエクソソームは、iTM又はiCMを誘導するために、生理学的溶液、たとえば生理食塩水で投与しても、PEGDAによって架橋されたカルボキシメチルヒアルロネートとカルボキシメチル改変ゼラチン(HyStem-C)で遅延放出してもよい。
【0127】
いくつかの態様において、iTR因子又は因子の組合せを、毛包の生成及び/又は毛髪の成長促進のために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、通常は毛髪を形成しない上皮細胞から毛包の再生を誘発する。いくつかの態様において、iTR因子は、男性又は女性における、抜け毛、薄毛、部分的又は完全な脱毛症を処置するために使用する。いくつかの態様において、脱毛症は、毛髪がないか若しくは実質的にないか、又は毛髪が不足しており、たとえば、頭の頂部、後部、及び/又は側部上で成長することが多い状況である。いくつかの態様において、薄毛は、正常又は平均よりも毛髪が少ないか、又はいくつかの態様において、過去の個体よりも毛髪が少ないか、又はいくつかの態様において、個体が望ましいと考えるものよりも毛髪が少ない状況である。いくつかの態様において、iTR因子は、眉毛又は睫毛の成長を促進するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、(男性及び女性に影響を与える場合がある)アンドロゲン性脱毛症又は「男性型脱毛症」を処置するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、頭皮上にパッチ状の抜け毛を伴う円形脱毛症、全ての頭髪の損失を伴う全頭脱毛症、頭部及び身体からの全ての毛髪の損失を伴う全身性脱毛症を処置するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子は、毛髪の成長が望まれる位置、たとえば、頭皮又は眉毛の領域に適用する。いくつかの態様において、iTR因子は、睫毛の成長を促進するために瞼の端部に又はその付近に適用する。いくつかの態様において、iTR因子は、液体製剤で適用する。いくつかの態様において、iTR因子は、クリーム、軟膏、ペースト、又はゲルで適用する。いくつかの態様において、iTR因子は、火傷、外科手術、化学療法、又は毛髪若しくは有毛部皮膚の損失をもたらす他の事象後の、毛髪の成長を強化するために使用する。いくつかの態様において、iTR因子又は因子の組合せを、若々しい機能を再生するために、加齢に関連した変性変化に罹患している組織に投与する。前記加齢に関連した変性変化としては、非限定的な例として、加齢黄斑変性症、冠動脈疾患、骨粗鬆症、骨壊死、心不全、肺気腫、末梢動脈疾患、声帯萎縮、難聴、アルツハイマー疾患、パーキンソン疾患、皮膚潰瘍、及び他の加齢に関連した変性疾患がある。いくつかの態様において、前記iTR因子は、細胞寿命を延長するために、テロメラーゼの触媒構成成分を発現するベクターと同時投与する。
【0128】
いくつかの態様において、iTR因子は、傷害、たとえば化学療法、放射線、又は毒素に起因して損失又は損傷した細胞の置換えを強化するために投与する。いくつかの態様において、そのような細胞は、固形器官及び組織の間質細胞である。本発明の処置方法は、再生を強化することが対象にとって利点であろう疾患又は状態に罹患したか又はリスクがある対象を同定するか又は提供する工程を含んでいてもよい。いくつかの態様において、対象は、組織又は器官に損傷(たとえば、身体的外傷)又は傷害を経験している。いくつかの態様において、損傷は、四肢又は指に対するものである。いくつかの態様において、対象は、循環器系、消化器系、内分泌系、骨格筋系、胃腸系、肝臓系、外皮系、神経系、呼吸器系、又は泌尿器系に影響を与える疾患を患う。いくつかの態様において、組織損傷は、組織、器官、又は構造、たとえば軟骨、骨、心臓、血管、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、直腸、肛門、内分泌腺、皮膚、毛包、歯、歯茎、唇、鼻、口、胸腺、脾臓、骨格筋、平滑筋、関節、脳、脊髄、末梢神経、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、精管、精嚢、前立腺、陰茎、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、腎臓、尿管、膀胱、尿道、眼(たとえば、網膜、角膜)、又は耳(たとえば、コルチ器官)に対するものである。
【0129】
いくつかの態様において、化合物又は組成物は、対象が組織損傷(たとえば、傷害又は急性疾患関連事象、たとえば心筋梗塞又は脳卒中)に罹患した後およそ2、4、8、12、24、48、72又は96時間以内に少なくとも1回、任意にその後少なくとも1回対象に投与する。いくつかの態様において、化合物又は組成物は、対象が組織損傷に罹患した後、およそ1~2週、2~6週又は6~12週以内に少なくとも1回、任意にその後少なくとも1回対象に投与する。
【0130】
本発明のいくつかの態様において、たとえば、再生又はデノボ発生が望まれる位置で皮膚を除去すること、少なくともいくつかの組織を除去すること、再生又はデノボ発生が望まれる関節又は骨表面を研磨すること、及び/又は他のタイプの創傷を対象に与えることによって、欠損している又は形成不全の組織、器官、又は構造の再生又はデノボ発生を刺激するか又は促進するのに有用な場合がある。再生の場合、組織損傷後に、少なくともいくつかの損傷した組織を(たとえば、外科的切除又は創面切除によって)除去することが望ましい場合がある。いくつかの態様において、iTR因子は、そのような除去若しくは研磨した位置に又はその付近に投与する。
【0131】
いくつかの態様において、iTR因子は、先天性の障害、たとえば、遺伝的疾患の結果として、そのような組織又は器官が少なくとも部分的に欠如している対象における組織又は器官の生成を強化するために使用する。多くの先天性の奇形は、形成不全、又はさまざまな組織、器官、若しくは身体構造、たとえば四肢又は指の欠如をもたらす。他の場合において、組織、器官、又は他の身体構造の形成不全をもたらす発生障害は、出生後に明白になる。いくつかの態様において、iTR因子は、そのような組織、器官、又は他の身体構造の成長又は発生を刺激するために、形成不全に罹患したか、又は組織、器官、若しくは他の身体構造が欠如した対象に投与する。いくつかの側面において、本発明は、形成不全又はそのような組織、器官、若しくは他の身体構造の先天的な欠如に罹患した対象における、組織、器官、又は他の身体構造の生成を強化する方法であって、iTR因子を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの態様において、iTR因子は、出生前、すなわち子宮内で対象に投与する。再生に関して、本発明のさまざまな側面及び態様は、組織、器官又は他の身体構造のそのようなデノボ生成に適用可能であり、本発明の範囲内に包含される。
【0132】
いくつかの側面において、iTR因子は、そのような組織が以前には存在しなかった場所において新規の組織成長が有用であるさまざまな状況のいずれかにおいて組織の生成を強化するために使用する。たとえば、関節間での骨組織の生成は、脊髄の又は他の関節の融合の文脈において有用なことが多い。
【0133】
iTR因子は、再生のさまざまな動物モデルにおいて試験を行ってもよい。1つの側面において、iTRのモジュレーターは、ネズミ種において試験を行う。(たとえば、切開、切断、横断又は組織断片の除去により)たとえばマウスを負傷させてもよい。iTR因子を、創傷の位置及び/又は除去した組織断片に適用し、その再生に対する効果を評価する。脊椎動物TRのモジュレーターの効果は、組織又は器官再生のためのさまざまな脊椎動物モデルで試験を行ってもよい。たとえば、ヒレの再生は、たとえば、Mathew L K, Unraveling tissue regeneration pathways using chemical genetics. J Biol Chem. 282(48):35202-10(2007) に記載されているようにゼブラフィッシュで評価してもよく、四肢再生のためのモデルの役割を果たすことができる。齧歯動物、イヌ、ウマ、ヤギ、魚類、両生類、並びに組織及び器官、たとえば心臓、肺、四肢、骨格筋、骨などの再生に対する処置の効果の試験を行うために有用である他の動物モデルが広範囲に利用可能である。たとえば、骨格筋系再生のためのさまざまな動物モデルが、Tissue Eng Part B Rev. 16(1)(2010)において論じられている。肝臓再生の研究に関して通常使用される動物モデルは、齧歯動物の肝臓の大部分の外科的除去を伴う。肝臓再生のための他のモデルは、毒素、たとえば四塩化炭素によって引き起こされる急性又は慢性の肝臓傷害又は肝不全を含む。いくつかの態様において、毛髪再生又は皮膚創傷の治癒のためのモデルは、たとえば、マウスからの皮膚のパッチを切除することを伴う。毛包の再生、毛髪の成長、再上皮化、腺形成などを評価してもよい。
【0134】
本明細書に開示並びに/又は記載する方法並びに/又はアッセイシステムを使用して同定された化合物及び組成物は、任意の好適な手段、たとえば経口、経鼻腔、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、非経口、腹腔内、髄腔内、気管支内、眼内、舌下、経膣、経直腸、経皮によって、又は吸入によって、たとえばエアロゾルとして投与してもよい。選択される特定の様式は、無論、選択される特定の化合物、処置される特定の状態及び治療的効能に必要な投薬量に依存することになる。本発明の方法は、一般的に言えば、医学的に又は獣医学的に許容される、投与の任意の様式を使用して行ってもよく、臨床的に許容できない(たとえば、医学的に又は獣医学的に許容できない)有害効果をもたらすことなく効能の許容されるレベルを生み出す任意の様式を意味する。1つ以上の化合物の好適な調製物、たとえば実質的に純粋な調製物は、対象に投与するのに好適な、適切な医薬組成物を製造するために、1つ以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤などと組み合わせてもよい。そのような薬学的に許容される組成物は本発明の側面である。「薬学的に許容される担体又は賦形剤」という用語は、担体(この用語は、担体、媒体、希釈剤、溶媒、ビヒクルなどを包含する)、又は組成物の活性成分の生物学的活性若しくは有効性に顕著に干渉せず、使用若しくは投与される濃度で宿主に対して過剰な毒性を示さない賦形剤を指す。他の薬学的に許容される成分も同様に組成物に存在していてもよい。好適な物質及び薬学的に活性な化合物を製剤化するためのその使用は、当技術分野において周知である(薬学的に許容される物質及び様々な医薬組成物を製造する方法を議論するため、たとえば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”, E.W.Martin, 19th Ed., 1995, Mack Publishing Co.: Easton, Pa.及びそのより最新の版、たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. 21st Edition. Philadelphia, Pa. Lippincott Williams & Wilkins, 2005を参照)。さらに、本発明の化合物及び組成物は、目的の特定の疾患又は状態を処置するための、当技術分野において使用する任意の化合物又は組成物と組み合わせて使用してもよい。医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように典型的には製剤化される。たとえば、非経口投与用の調製物としては、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及びエマルションがある。水性担体としては、生理食塩水及び緩衝媒体、たとえば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲルを含む、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液がある。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、たとえばオリーブ油、及び注入可能な有機エステル、たとえばオレイン酸エチル、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;防腐剤、たとえば、抗菌剤、たとえばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、たとえばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸;緩衝液、たとえば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩、並びに張度を調整するための薬剤、たとえば塩化ナトリウム又はデキストロースである。pHは、酸又は塩基、たとえば塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて調整してもよい。そのような非経口調製物は、アンプル、使い捨て注入器又はガラス若しくはプラスチック製の複数回投薬バイアルに封入してもよい。
【0135】
経口投与に関しては、化合物は、活性化合物を当技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体は、本発明の化合物を、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。経口投薬形態に好適な賦形剤は、たとえばフィラー、たとえば、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖;セルロース調製物、たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0136】
吸入による投与に関しては、本発明の組成物は、エアロゾル噴霧剤の形態で、好適な噴射剤、たとえば、ガス、たとえば二酸化炭素、フルオロカーボンを含む加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーから送達してもよい。液体又は乾燥エアロゾル(たとえば、乾燥粉末、大きな多孔質粒子など)を使用してもよい。本発明は、鼻腔用スプレー又は経鼻投与の他の形態を使用した組成物の送達も検討する。局所適用に関しては、医薬組成物は、そのような組成物において使用するのに好適な1つ以上の薬学的に許容される担体中に懸濁又は溶解された活性構成成分を含む、好適な軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、又はクリーム剤で製剤化してもよい。眼への局所送達に関しては、薬学的に許容される組成物は、たとえば点眼剤若しくは軟膏剤で使用するための、又はたとえば注入によって眼内投与するための等張なpH調整された滅菌生理食塩水中の溶液又は微粉化懸濁液として製剤化してもよい。医薬組成物は、経粘膜又は経皮送達のために製剤化してもよい。経粘膜又は経皮投与に関しては、浸透されることになるバリアに適切な浸透剤を製剤中に使用してもよい。そのような浸透剤は、当技術分野において一般的に既知である。本発明の医薬組成物は、坐剤として(たとえば、従来の坐剤基剤、たとえばココアバター及び他のグリセリドを用いて)又は直腸送達のための停留浣腸として製剤化してもよい。
【0137】
いくつかの態様において、組成物は、身体からの急速な消失に対して活性薬剤を保護することを意図する、1つ以上の薬剤、たとえば制御放出製剤、埋込体、マイクロカプセル化送達システムなどを含む。組成物は、(たとえば、胃腸管又は血流において)安定性を改善するために、及び/又は吸収を強化するために、薬剤を組み込んでいてもよい。化合物は、粒子、たとえば、マイクロ粒子又はナノ粒子中に、カプセル化されていても組み込まれていてもよい。生分解性、生体適合性ポリマー、たとえばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、PLGA、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリエーテル、及びポリ乳酸を使用してもよい。そのような製剤を調製するための方法は、当業者であれば明白であろう。たとえば、限定するものではないが、siRNAの送達のための、多数の粒子、脂質、及び/又はポリマーベースの送達システムが、当技術分野において既知である。本発明は、そのような組成物の使用を検討する。リポソーム又は他の脂質ベースの粒子も、薬学的に許容される担体として使用してもよい。
【0138】
そのような組成物において使用するための医薬組成物及び化合物は、規制当局によって規定された、標準、基準、又はガイドラインを満たす条件下で製造してもよい。たとえば、そのような組成物及び化合物は、適正製造基準(GMP)に従って製造してもよく、及び/又はヒトに投与されることになる医薬品に適切な品質コントロール手順を受けてもよく、医薬、外科手術、又は他の治療上有用な製品の規制を担う政府規制当局によって承認されたラベルで提供してもよい。
【0139】
本発明の医薬組成物は、処置目的で対象に投与する場合、それらが投与される疾患又は状態を処置するのに十分な時間にわたってかつ量で好ましくは投与する。活性薬剤の治療的効能及び毒性は、細胞培養物又は実験用動物において、標準的な医薬手順によって評価することができる。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒト又は他の対象に使用するのに好適なさまざまな投薬量の製剤化において使用することができる。ヒト投与に関する異なる用量を、当技術分野において既知のように、ヒトにおける臨床試験でさらに試験してもよい。使用される用量は、最大耐量以下の用量であってもよい。医薬組成物中の活性薬剤の治療有効用量は、約0.001mg/kgから約100mg/kg体重、約0.01から約25mg/kg体重、約0.1から約20mg/kg体重、約1から約10mg/kgの範囲内であってもよい。他の例示的な用量としては、たとえば、約1μg/kgから約500mg/kg、約100μg/kgから約5mg/kgがある。いくつかの態様において単回用量が投与され、同時に他の態様において複数回用量が投与される。当業者であれば、任意の特定の状況における適切な用量は、利用する薬剤の効力に依存し、任意に特にレシピエントに合わせて調整してもよいことを理解するであろう。対象に関する特定の用量レベルは、用いる特定の薬剤の活性、特定の疾患又は状態及びその重症度、年齢、体重、対象の全般的な健康などを含むさまざまな因子に依存する場合がある。医薬組成物、特に経口又は非経口組成物用のものを、投与を容易にし、投薬量を均一にするために単位投薬量形態で製剤化することが望ましい場合がある。単位投薬量形態は、この用語を本明細書で使用する場合、処置されることになる対象の単位投薬量として適した物理的に個別の単位を指し;各単位は、適切な薬学的に許容される担体と関連して所望の治療的効果を生成するように計算された所定の量の活性薬剤を含む。治療レジメンは、数日、数週、数ヵ月、又は数年に及ぶ場合がある期間にわたる複数回用量、たとえば単位投薬量形態の投与を含む場合があることは理解されるであろう。対象は、処置期間内に、1日1回以上の投薬を受けても、1日おき以下の頻度で投薬を受けてもよい。たとえば、投与は、隔週、毎週などであってもよい。投与は、たとえば、組織又は器官の適切な構造及び/若しくは機能が少なくとも部分的に回復するまで、並びに/又は化合物の継続投与が更なる再生若しくは改善を促進すると思われなくなるまで継続してもよい。いくつかの態様において、対象は、本発明の組成物の1回以上の用量を自身で投与する。
【0140】
いくつかの態様において、2つ以上の化合物又は組成物を、たとえば再生を強化する目的で組み合わせて投与する。組み合わせて投与する化合物又は組成物は、同じ組成物で一緒に又は個別に投与してもよい。いくつかの態様において、「組み合わせて」投与するは、第1及び第2の化合物又は組成物の投与に関しては、(i)第2の化合物の用量は、第1の薬剤の最後に投与された用量の90%以上が不活性形態に代謝されるか又は身体から排泄される前に投与されるか;又は(ii)第1及び第2の化合物の用量が48、72、96、120、又は168時間以内に互いに投与されるか、又は(iii)薬剤が、(たとえば、連続的な又は間欠的な注入によって)重複する時間の間に投与されるか;又は(iv)前述のように行われた投与の任意の組合せのように行われる投与を意味する。いくつかの態様において、2つ以上のiTR因子か、又はテロメラーゼの触媒構成成分及びiTR因子を発現するベクターを投与する。いくつかの態様において、iTR因子は、1つ以上の成長因子、成長因子受容体リガンド(たとえば、アゴニスト)、ホルモン(たとえば、ステロイド又はペプチドホルモン)、又は、再生及び極性を促進するのに有用であるシグナル伝達分子と組み合わせて投与する。特に有用なものは、再生コンピテント細胞、たとえば本発明の方法を使用して生成されたものを組織化するのに有用である組織化中心分子である。いくつかの態様において、成長因子は、表皮成長因子ファミリーメンバー(たとえば、EGF、ニューレグリン)、線維芽細胞成長因子(たとえば、FGF1~FGF23のいずれか)、肝細胞成長因子(HGF)、神経成長因子、骨形成タンパク質(たとえば、BMP1~BMP7のいずれか)、血管内皮成長因子(VEGF)、wntリガンド、wntアンタゴニスト、レチノイン酸、NOTUMM、フォリスタチン、ソニックヘッジホッグ、又は他の組織化中心因子である。
【0141】
iTM及びiCM因子の供給源
iTM及びiCM因子は、EFTマーカーを欠く胚細胞(たとえば、非限定的な例として、COX7A1を発現しない間質細胞)をさまざまな薬剤に曝露し、前記マーカー、たとえばCOX7A1又はレポーター構築物、たとえばCOX7A1遺伝子プロモーターを使用して発現したGFPの誘導に関してアッセイすることによって同定してもよい。エクソソームは、細胞を再プログラミングして新規の成長、遊走及び分化特性を与えることが可能な強力なタンパク質及びRNA因子を保有しているため、これらが、すなわちiTM及びiCMが細胞の発生状況を再プログラミングが可能かどうかを調査した。したがって、胚細胞における成体遺伝子の誘導に関して、成体細胞からのエクソソームを試験した。一連の15hESC派生クローン胚祖細胞株のイルミナマイクロアレイ分析を使用して全RNA発現プロファイルを評価し、これらをさまざまな解剖学的位置から得られた18個の初代内皮の細胞株(新生児から成体)と比較した(図示していない)。EFTを経た細胞からのエクソソームは、以前はそのような発現が欠如していた胚細胞においてCOX7A1の発現を誘導し、本明細書に記載する他のマーカーを使用した細胞を成熟させることが可能なことを判定した。
【0142】
当業者であれば、本明細書に記載する本発明の具体的な態様の多くの等価物を、以下の所定の実験を使用して、認識するか、又は確認できるであろう。本発明の範囲は、その中の説明又は詳細な記載に限定されることを意図するものではない。冠詞、たとえば「a」、「an」及び「the」は、反対の指示がない限り、そうでなければ文脈から明白ではない限り、1又は1以上を意味する場合がある。ある特定の本発明の方法は、たとえばin vitro又はin vivoで細胞集団を使用して実行することが多い。したがって、「細胞」への言及は、細胞が、細胞集団、たとえば、遺伝学的に実質的に同一な細胞を含むか又はこれらからなる集団のメンバーである態様を含むとして理解するべきである。しかし、本発明は、本発明の方法が個々の細胞に適用される態様を包含する。したがって、「細胞」への言及は、細胞集団内の個々の細胞に適用可能な態様及び個々の単離された細胞に適用可能な態様を含むとして理解するべきである。
【0143】
群の1つ以上のメンバー間に「又は」を含む特許請求の範囲又は明細書は、反対の指示がない限りそうでなければ文脈から明白ではない限り、群メンバーのうちの1つ、1超、又は全てが、所与の製品又は方法に存在するか、用いられるか、そうでなければ関連する場合に満たすと考えられる。本発明は、正確には群の1つのメンバーが、所与の製品又は方法に存在するか、用いられるか、そうでなければ関連する態様を含む。群のメンバーのうちの1超、又は全てが、所与の製品又は方法に存在するか、用いられるか、そうでなければ関連する態様も含む。本明細書に記載する全ての態様は、本発明の異なる全ての側面に適用可能であると考えられる。態様のうちのいずれかは、適切な場合はいつでも、1つ以上の他のそのような態様と自由に組み合わせることができることも検討される。さらに、本発明は、(元の請求項であるか、それに追加の請求項かどうかにかかわらず、)請求項のうちの1つ以上からの、1つ以上の、限定、要素、項、説明用語などが、(元々であるか又はその後加えられたかにかかわらず、)別の請求項に導入された全ての変形形態、組合せ、及び順序を包含することを理解されたい。たとえば、他の請求項に従属する任意の請求項は、同じ従属先の請求項に従属するその他の請求項で認められる1つ以上の要素又は限定を含むように改良してもよく、異なる請求項に存在するエレメントに言及する任意の請求項は、そのような請求項と同じ従属先の請求項に従属するその他の請求項において認められる1つ以上の要素又は限定を含むように改良してもよい。さらに、特許請求の範囲が組成物を挙げる場合、本発明は、たとえば本明細書で開示される方法に従って組成物を作製する方法、及びたとえば本明細書で開示される目的のために組成物を使用する方法を提供する。請求項が方法を挙げる場合、本発明は、方法を行うのに好適な組成物、及び組成物を作製する方法を提供する。また、請求項が組成物を作製する方法を挙げる場合、本発明は、別段指示がない限り又は当業者が矛盾又は不一致が生じることを認識することにならない限り、本発明の方法及び組成物を使用する方法に従って作製された組成物を提供する。
【0144】
要素がリストとして、たとえば、マーカッシュ群の形式で示される場合、各エレメントのサブ群も開示され、任意の要素は、群から除いてもよい。簡潔にするために、これらの態様のいくつかが本明細書に具体的に挙げられているにすぎないが、本発明は全てのそのような態様を含む。一般的に、本発明、又は本発明の側面が、特定の要素、特徴などを含むとして言及される場合、本発明の特定の態様又は本発明の側面は、そのような要素、特徴などからなるか、又はこれらから実質的になることも理解するべきである。
【0145】
数値範囲が本明細書で言及される場合、本発明は、両端が含まれる態様、両端が除外される態様、及び一方の端が含まれ、もう一方が除外される態様を含む。特に指示がない限り、両端が含まれると考えるべきである。さらに、別段指示がない限り、そうでなければ文脈及び当業者の理解から明白ではない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる態様において規定された範囲内で、文脈上明らかに別段の指示がない限り、範囲の下限値の単位10分の1まで任意の特定の値又は部分範囲とみなしてもよい。語句、たとえば「X未満」、「X超の」、又は「少なくともX」が使用されている場合(Xは数又は百分率)、任意の妥当な値を範囲の下限又は上限として選択してもよいことを理解するべきである。数値のリストが(「少なくとも」で始まるかどうかにかかわらず)本明細書で規定される場合、本発明は、リストにおける任意の2つの値によって定義される任意の位置する値又は範囲に関連する態様を含み、下限値を最小としてみなしてもよく、最大値を、最大としてみなしてもよいことも理解されたい。さらに、数のリスト、たとえば百分率が「少なくとも」で始まる場合、用語はリストにおける各数字に適用される。数値の前に「約」又は「およそ」が付いている本発明の任意の態様に関しては、本発明は、正確な値が列挙されている態様を含む。数値の前に「約」又は「およそ」が付かない本発明の任意の態様に関しては、本発明は、値の前に「約」又は「およそ」が付いている態様を含む。「およそ」又は「約」は、特に記載がない限り、そうでなければ文脈から明白ではない限り(たとえば、そのような数が可能な値の100%を許容されないほど超えることになる場合)、いずれかの方向で数の1%、又はいくつかの態様において5%、又はいくつかの態様において10%の範囲内に入る(その数超の又は未満の)数を一般的に含む。本明細書で使用する「組成物」は、別段指示がない限り、1つ以上の構成成分を含んでいてもよい。たとえば、「活性化因子又はTR活性化因子を含む組成物」は、TR活性化因子の活性化因子からなっていても、実質的になっていてもよく、又は1つ以上の追加の構成成分を含んでいてもよい。別段指示がない限り、本発明の任意の態様における阻害剤又はTR阻害剤(又は本明細書で言及する他の化合物)は、TR活性化因子の活性化因子の存在を含む1つ以上の追加の構成成分を含む組成物で使用しても投与してもよいことを理解するべきである。
【実施例】
【0146】
実施例1
iTRマーカーとしてのCOX7A1発現の減少をアッセイするためのPCRを使用したiTR因子に関する成体ヒト皮膚線維芽細胞のスクリーニング
【0147】
最初のアッセイとして、本明細書に記載された候補iTR因子のおよそ200個の組合せを、COX7A1発現をアッセイするqPCRでスクリーニングした。イルミナビーズアレイ又はRNAシークエンシングベースのトランスクリプトーム分析用のRNAを調製するために、COX7A1発現が著しく減少する条件を用いた。COX7A1のレベルを最も減少させ、同時に生存可能な細胞を維持する最適な条件は、最初の17日間、0.5mMのバルプロ酸、10μMのCHIR99021、10μMのRepSox、10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、50μMのフォルスコリン及び5μMのTTNPBで処理し、次いで、100nMの3-デアザネプラノシンA(DZNep)を前述のカクテルに添加して14日間処理し、次いで、最後の7日間は、1.0μMのPD0325901及び10μMのCHIR99021のみで処理するものであった。全ての因子は、細胞成長培地(10%ウシ胎仔血清(FBS)を含む高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))に添加した。
【0148】
RNAを、AgeX1547と称されるこのiTR条件の細胞から調製し、イルミナビーズアレイ分析を行った。100未満のRFU値は発現なしとみなした。
図1に示すように、イルミナビーズアレイ分析では、hES細胞又はその派生hEP細胞株においてCOX7A1の発現は示されなかった。しかし、継代初期の皮膚線維芽細胞培養物において、試験された最も早いin vivo日付(妊娠8週)でCOX7A1発現が徐々に増加し、それはPPT後から成体期まで続いた。COX7A1のレベルは、iPS細胞の再プログラミング後に、hES細胞レベル(発現しない)に実質的に戻り、上述のiTRカクテルAgeX1547は、COX7A1レベルをおよそ8週(胎児前)の発生レベルに戻す再プログラミングにつながった。
図2に示すように、ADIRFはPPTのマーカーを提供し、AgeX1547は、59歳の成体皮膚線維芽細胞をADIRF遺伝子発現の胎児前パターンに戻した。
図3に示すように、TNFRSF11BもPPTのマーカーを提供し、AgeX1547は、59歳の成体皮膚線維芽細胞をTNFRSF11B遺伝子発現の胎児前パターンまで戻した。TNFRSF11B発現は骨形成の阻止に関与しているので、TNFRSF11B発現の回復は、新規の骨を形成することが可能な細胞における骨形成能の回復と一致する。
【0149】
図4に示すように、胚マーカーAMHはhEP細胞で発現しているが、胎児又は成体皮膚線維芽細胞では発現していない。しかし、上記AgeX1547による処理後、AMH発現は胚の発現パターンまで戻る。
【0150】
iTRの目標は、細胞の分化の状態を変化させずに再生老化細胞除去表現型を誘導することであるため、多能性を回復することは望ましくないところ、iTR因子AgeX1547によって再プログラムされた59歳の皮膚線維芽細胞が、この望ましくない多能性を回復したかどうかを判定するために、COL1A1発現を調査した。
図5に示すように、hES細胞は、胎児及び成体皮膚線維芽細胞と比較してCOL1A1発現が著しく低く、また、59歳の皮膚線維芽細胞は、対応するiPSCに再プログラムした場合、COL1A1発現を抑制してhES細胞レベルに戻したが、AgeX1547で処理された59歳の皮膚線維芽細胞は、COL1A1をhES細胞レベルまで抑制しなかった。代わりに、細胞は毒性の明らかな兆候を伴わない線維芽細胞の形態を保持し、COL1A1レベルは、in vitroで培養された正常な皮膚線維芽細胞と同等であった。
【0151】
図6に示すように、iPS細胞の再プログラミングによってOCT4発現はhES細胞レベルに戻ったが、AgeX1547は、多能性マーカーOCT4又は多能性細胞に特有の他のマーカーを誘導しなかった(図示していない)。したがって、AgeX1547は、処理期間中、ヒト細胞にとって忍容性であると思われ、成体由来細胞を分化状態を変化(iTR)させることなく、遺伝子発現の出生前のパターン、実際には胎児前パターンに戻すことが可能と思われる。
【0152】
実施例2
加齢細胞又はCSCにおいてセノリシスを誘導することが可能なiTR因子に関するスクリーニング
遺伝子発現が胎児前パターンの細胞により予測されるアポトーシスの増加を識別するために、最適化された条件を同定した。胚及び成体由来間葉細胞(それぞれ4D20.8及びMSC)、並びに胚及び成体由来血管内皮細胞(それぞれ30MV2-6及びHAEC)を、カンプトセシン(CPT)、H
2O
2、及びタプシガルギン(TG)の各2つの濃度で、並びにビヒクル対照を含む多様な刺激で処理し、アポトーシスを誘導した。分析の24時間前に化合物で処理した。処理後、アポトーシスを、製造業者の取扱説明書に従ってin situ細胞死検出キット(Roche、カタログ番号12156792910)を使用してTUNEL染色により観察した。
図7に示すように、3.7nMのタプシガルギンは、内皮細胞のみならず、胚間葉細胞のアポトーシスにおいて、その成体対応物と比較して、強力で統計的に有意な増加をもたらした。したがって、このアッセイは、加齢細胞及びCSCでのセノリシスの誘導におけるiTR因子の有効性判定に有用である。
【0153】
実施例3
ハイスループットiTRスクリーニングにおいて使用するCOX7A1発現のためのEGFPレポーターを調製する方法
TERT不死化ヒト包皮線維芽細胞におけるCOX7A1遺伝子座の下流に、IRES-EGFPを挿入した。これを達成するために、COX7A1遺伝子座を標的とする2つのガイドRNA(gRNA)候補を設計し、クローン化した。gRNA介在CRISPR/Cas9改変は、標的となる二本鎖切断(DSB)をもたらした。IRES-EGFPカセットを有するドナープラスミドを、DNA修復鋳型として機能するように、活性gRNAの位置に基づいて構築した。gRNA及びドナープラスミドのTERT不死化ヒト包皮線維芽細胞へのコトランスフェクションは、相同組換え修復(HDR)により、COX7A1の標的領域におけるIRES-EGFPのノックインを可能にした(
図7)。
【0154】
実施例4
サンプルの最初のセットでは、5~8継代のヒト皮膚線維芽細胞(MDW1)を、6ウェルコーニング組織培養プレートを用い、1ウェル当たり約50,000細胞で、成長培地DMEM+10%FBS中に播種した。
【0155】
翌日、細胞を、さまざまな期間(27~42日)、以下に示すさまざまなカクテルで処理した。
カクテルを以下に説明する(10%KSR、10%FBS、2mM グルタマックス、1%NEAA、0.055mM 2-メルカプトエタノール、10,000U/mlペニシリン-ストレプトマイシンが添加されたノックアウトDMEM培地中に含まれる)。
1.MDW-1 P8 D41 10μM CHIR99021+RepSox(10μM)+10μMトラニルシプロミン(パルネート)+50μMフォルスコリン+5μM TTNPB+100nM DZNep+1μM PD0325901+50ng/ml FGF2+5μM EPZ004777+5μM SGC0946+10μM RSC133+1μM CI994
2.MDW-1 P5 D39 10μM CHIR99021+RepSox(10μM)+10μMトラニルシプロミン(パルネート)+50μMフォルスコリン+5μM TTNPB+100nM DZNep+1μM PD0325901+50ng/ml FGF2+1μM OAC3+5μM EPZ004777+5μM SGC0946+10μM RSC133+1μM CI994+20μM SB216763+1μM SAHA+250ng/ml OCT4+50nM AM580
3.MDW-1 P5 D39 10μM CHIR99021+RepSox(10μM)+10μMトラニルシプロミン(パルネート)+50μMフォルスコリン+5μM TTNPB+100nM DZNep+1μM PD0325901+50ng/ml FGF2+1μM OAC3+5μM EPZ004777+5μM SGC0946+10μM RSC133+1μM CI994+20μM SB216763+1μM SAHA+250ng/ml OCT4+50nM AM580+10μM PP1
4.MDW-1 P5 D42 10μM CHIR99021+RepSox(10μM)+10μMトラニルシプロミン(パルネート)+50μMフォルスコリン+5μM TTNPB+100nM DZNep+1μM PD0325901+50ng/ml FGF2+5μM EPZ004777+5μM SGC0946+10μM RSC133+1μM CI994+20μM SB216763+1μM SAHA+50nM AM580+10μM PP1
5.MDW-1 P8 D42 1μM MS-275+10μM CHIR99021+RepSox(10μM)+10μMトラニルシプロミン(パルネート)+50μMフォルスコリン+5μM TTNPB+100nM DZNep+1μM PD0325901+50ng/ml FGF2+1μM OAC3+5μM EPZ004777+5μM SGC0946+10μM RSC133+1μM CI994
6.MDW-1 P8 D27 1μM MS-275+10μM CHIR99021+RepSox(10μM)+10μMトラニルシプロミン(パルネート)+50μMフォルスコリン+5μM TTNPB+100nM DZNep+1μM PD0325901+50ng/ml FGF+1μM OAC3+5μM EPZ004777。
【0156】
2つの対照(カクテルを含有しない)として、0.5%FBSを含むDMEMである「飢餓培地」を使用した。播種した細胞をコンフルエンスになるまで増殖させ、次いで飢餓培地を3日間供給し、さらに2日間飢餓培地を再供給し、次いでRNAを溶解した。
【0157】
サンプルの第2のセットでは、6~7継代のヒト皮膚線維芽細胞(MDW1)を、6ウェルコーニング組織培養プレートを用い、1ウェル当たり約50,000細胞で、成長培地DMEM+10%FBS中に播種した。
【0158】
翌日、細胞を、2mMのBIX01294を含むカクテルで処理し、7日後、10μMのRepsox、0.5μMのダサチニブ及び5μMのケンパウロンを合計14日間成長培地中に添加した。
【0159】
また、0.5%FBSを含むDMEMである「飢餓培地」を使用して、対照(カクテル不含)で行った。播種した細胞をコンフルエンスになるまで増殖させ、次いで飢餓培地を3日間供給し、さらに2日間飢餓培地を再供給し、次いでRNAを溶解した。
【0160】
次いで、サンプルの第1のセット及び第2のセットの両者で、細胞をRLT(Qiagen、Valencia CAカタログ番号79216)で溶解し、全RNAを、製造業者の取扱説明書に従ってQiagen RNeasyミニキット(Qiagen、カタログ番号74104)を使用して抽出する。cDNAは、製造業者の取扱説明書に従って、ランダムヘキサマーを含むSuperScript IIIファーストストランドキット(Invitrogen, Carlsbad CA、カタログ番号18080-051)を使用して調製する。ヌクレオチド、プライマー、塩及びポリメラーゼを除去するためのcDNAの洗浄は、製造業者の取扱説明書に従ってQIAquickPCR精製キット(Qiagen, Valencia CA、カタログ番号28104)を使用して行う。
【0161】
標準的な光学96ウェル反応プレート(Applied Biosystems Carlsbad, CA, PN4306737)中で、cDNAに相当する30ngのRNA、0.8μM per遺伝子特異的カスタムオリゴヌクレオチドプライマーセット(Invitrogen)、超純粋蒸留水(Invitrogenカタログ番号10977015)を、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼが組み込まれた12.5μlのPower SYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems, Carlsbad, CA、カタログ番号4367659)を用いて1:1に希釈して総反応体積を25μlとし、試験用のサンプル(鋳型)を調製する。リアルタイムqPCRは、SDSv2.3ソフトウェアを用いたApplied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステムを使用して行った。増幅条件を、50℃で2分間(段階1)、95℃で10分間(段階2)、95℃で15秒間を40サイクル、次いで、60℃で1分間(段階3)、解離段階(段階4)では、95℃で15秒間、60℃で1分間、及び95℃で15秒間とした。アンプリコンのCt値をGAPDHの平均Ct値に対して正規化した。
【0162】
サンプルの第1のセットに関する結果を
図9に、サンプルの第2のセットに関する結果を
図10に示す。
図9及び10に示されたiTR因子の全ての組合せは、COX7A1及びEFTの他のマーカーを著しく減少した。最適な組合せは上記の5番であった。
【0163】
実施例5
カクテル処理後の組織再生及び細胞増殖のスクラッチアッセイ
8継代のBJ-TERT線維芽細胞を、6ウェルプレートのDMEM10%FBS中に50,000細胞/ウェルで播種した。翌日、細胞を、以下に示すさまざまなカクテルで2週間処理した。
対照:成長培地のみ
A:4μg/ml LIN28A-11R(LD Biopharma HTF 0046)
B:0.5mMバルプロ酸(Cayman 13033)
C:4μg/ml LIN28A-11R+0.5mMバルプロ酸
D:1μM MS-275(Cayman 13284)+10μM CHIR99021(Cayman 13122)+10μM RepSox(Sigma R0158)+10μMトラニルシプロミン(パルネート)(Sigma 616431)+50μMフォルスコリン(Cayman 11018)+5μM TTNPB(Cayman 16144)+100nM DZNep(Cayman 13128)+1μM PD0325901(Cayman 13034)+50ng/ml FGF2(Peprotech AF-100-18B)+1μM OAC3(Cayman 14104)+5μM EPZ004777(Cayman 16173)+5μM SGC0946(Cayman 13967)+10μM RSC133(Cayman 90018139)
E:4μg/ml LIN28A+0.5mM VPA、10μM CHIR99021、10μM RepSox、10μMパルネート、50μMフォルスコリン、5μM TTNPB、+100nM DZNep+1μM PD0325901、hES媒体(DMEM/F12 10%KSR、10%FBS、1%グルタマックス、1%NEAA、0.055mM 2-メルカプトエタノール、50ng/ml bFGF)。
【0164】
処理後、コンフルエンス時に800μMスクラッチを作製し、充填(filling)の割合(%)を16時間後に評価した。処理された細胞のスクラッチの充填を対照のものと比較した。データを以下に示す。
【0165】
【0166】
この研究は、本明細書に含まれる再プログラミング因子が細胞遊走に役立ち、損傷の治癒において、又は損傷した哺乳動物組織の関連する細胞増殖の再生及び誘導において有用であり得ることを示す。特に、条件C、D及びEは、対照と比べて50%以上の充填を示した。
【0167】
実施例6
再プログラミング薬剤で処理された線維芽細胞は、後期継代細胞に対して老化細胞除去活性を示し、細胞数を減少させる
Xgene線維芽細胞(ヒト包皮、Xgene, Sausilito CAから入手)を、継代初期(P9)及び後期(P33)で、20,000細胞/ウェル(0.1%ゼラチン被覆24ウェルプレート)の成長培地(DMEM+10%FBS)中に播種した。翌日、以下に示す添加物を含む培地を1週間再供給し、1日おきに供給し、次いで計数した。
対照 添加物不含、
A.4μg/ml LIN28A-11R(LD Biopharma HTF 0046)、
B.0.5mMバルプロ酸(Cayman 13033)、
C.4μg/ml LIN28A+0.5mMバルプロ酸
D.4μg/ml LIN28A+0.5mM VPA、10μM CHIR99021(Cayman 13122)、10μM Repsox(Sigma R0158)、10μMパルネート(Sigma 616431)、50μMフォルスコリン(Cayman 11018)、5μM TTNPB(Cayman 16144)、100nM DZNep(Cayman 13128)及び1μM PD0325901(Cayman 13034)。
【0168】
データを以下に示す。
【0169】
【0170】
予測されるように、成長培地単独では、継代初期線維芽細胞(P9)の集団倍加時間は、継代後期(P33)のものよりもほぼ4倍速い。対照(成長培地単独)と比較して、継代後期の細胞は、条件A(LIN28A)及び条件C(LIN28A+VPA)の因子に曝露した場合、1週間で細胞数の減少を示した。継代後期の細胞をLIN28Aに曝露したときのこの減少は、バルプロ酸の有無にかかわらず、少なくとも一部は老化特異的細胞死(セノリシス)に起因する。対照的に、これらの薬剤の継代初期への曝露は、細胞数の増加につながる。薬剤のより包括的なカクテルからなる条件Dで細胞を処理すると、細胞数が大幅に減少し、これは、セノリシスに一部起因して継代後期で増加した。本明細書では、継代初期細胞の細胞数は播種した数の2.8倍に増加し、継代後期の細胞は播種した数の1.1倍に増加したことを示す。
【0171】
再プログラミング添加物であるバルプロ酸及びLIN28A-11Rの、単独での使用と併用では、その老化細胞除去の挙動に起因して継代後期の細胞に対する効果が異なり、同様に、4μg/ml LIN28A+0.5mM VPA、10μM CHIR99021、10μM Repsox、10μMパルネート、50μMフォルスコリン、TTNPB、100nM DZNep、及び1μM PD0325901を含む包含的再プログラミングカクテルでの処理は、これらの老化細胞除去の特性に起因して、細胞が継代後期に劇的に減少した。
【0172】
実施例7
iTRのための1mMでのバルプロ酸の使用
成体由来の皮膚線維芽細胞を、6ウェルプレートのウェル中のDMEM10%FBS中で培養し、0.5mM及び1mMのバルプロ酸で28日間処理した。28日目に培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、次いでβ-メルカプトエタノールを含むRLT(Qiagenカタログ番号79216)を使用して溶解した。全RNAを、製造業者の取扱説明書に従ってQiagen RNeasyミニキット(Qiagenカタログ番号74106)を使用して抽出した。次いで、cDNAをThermoFisher III(カタログ番号18080044)を使用して調製した。qPCRを、SDSv2.3ソフトウェアを用いたApplied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステムで行い、(成体表現型の決定的な指標である)GAPDHに対するCOX7A1の発現を評価した。
【0173】
予想外に、0.5mMのバルプロ酸濃度は、対照(未処置)と比較して、(GAPDHに対して正規化された)COX7A1発現に対してほぼ影響を与えなかったが、1mMの濃度で発現がほぼゼロ(0.001)まで劇的に減少した。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 出生後の哺乳動物細胞の遺伝的プロファイルを変化させるのに好適な組成物であって、
a 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)、4.0~10μMの2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン(RepSox)、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン及び1.0~5μMの4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸(TTNPB)を含む第1の組成物;
b 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMのCHIR99021、4.0~10μMのRepSox、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン、1.0~5μMのTTNPB及び50nM~240nMの3-デアザネプラノシンA(DZNep)を含む第2の組成物;
c 0.1~1.0μMのN-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミド(PD0325901)及び7.0~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)を含む第3の組成物;並びに
d.哺乳動物細胞においてTERT遺伝子を発現させるための好適な発現ベクターを含む第4の組成物、
を含む組成物。
[2] 前記第1、第2及び第3の組成物が細胞培養培地中にある、[1]に記載の組成物。
[3] 前記第1、第2及び第3の組成物がヒアルロン酸を含むヒドロゲル中にある、[1]に記載の組成物。
[4] 出生後の哺乳動物細胞の遺伝的プロファイルを変化させるのに好適な組成物であって、
a 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)、4.0~10μMの2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン(RepSox)、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン及び1.0~5μMの4-[(E)-2-(5,5,8,8-テトラメチル-6,7-ジヒドロナフタレン-2-イル)プロパ-1-エニル]安息香酸(TTNPB)を含む第1の組成物;
b 0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMのCHIR99021、4.0~10μMのRepSox、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン、1.0~5μMのTTNPB及び50nM~240nMの3-デアザネプラノシンA(DZNep)を含む第2の組成物;並びに
c 0.1~1.0μMのN-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)ベンズアミド(PD0325901)及び7.0~10μMの6-[[2-[[4(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021)を含む第3の組成物、
を含む組成物。
[5] 前記第1、第2及び第3の組成物が細胞培養培地中にある、[4]に記載の組成物。
[6] 前記第1、第2及び第3の組成物がヒアルロン酸含有ヒドロゲル中にある、[5]に記載の組成物。
[7] 組織再生の誘導(iTR)が可能な薬剤を同定する方法であって、1)出生後の哺乳動物細胞を、組織再生の誘導が疑われる1つ以上の外因性薬剤への前記細胞の曝露を促進する形式で培養すること、2)前記細胞を前記1つ以上の外因性薬剤と接触させること、3)前記細胞における胚-胎児転換(EFT)遺伝的マーカーの発現を測定することを含み、前記発現の変化が、iTRをもたらす薬剤の能力を示す、方法。
[8] 胚-胎児転換(EFT)遺伝的マーカーが、COX7A1、ADIRFのうちの1つ以上から選択される、[7]に記載の方法。
[9] 前記遺伝的マーカーがCOX7A1である、[7]に記載の方法。
[10] 前記出生後の哺乳動物細胞が、前記EFTをシグナル伝達するレポーター遺伝子を保有しているZERT不死化成体ヒト皮膚線維芽細胞である、[7]に記載の方法。
[11] 組織再生の誘導(iTR)が可能な薬剤を同定する方法であって、1)出生後の哺乳動物細胞を、組織再生の誘導が疑われる1つ以上の外因性薬剤への前記細胞の曝露を促進する形式で培養すること、2)前記細胞を前記1つ以上の外因性薬剤と接触させること、3)前記細胞からRNAを調製し、前記細胞における胚-胎児転換(EFT)転写物のレベルを測定して、前記1つ以上の薬剤がiTRをもたらすかどうかを判定することを含む方法。
[12] 胚-胎児転換(EFT)遺伝的マーカーが、COX7A1、ADIRFのうちの1つ以上から選択される、[11]に記載の方法。
[13] 前記遺伝子マーカーがCOX7A1である、[11]に記載の方法。
[14] 前記出生後の哺乳動物細胞が、EFTをシグナル伝達するレポーター遺伝子を保有しているTERT不死化成体ヒト皮膚線維芽細胞である、[11]に記載の方法。
[15] 出生後の細胞の遺伝的プロファイルを変化させる方法であって、前記方法が、
a 1つ以上の出生後の哺乳動物細胞を、0.5~5.0mMのバルプロ酸、7~10μMのCHIR99021、4~10μMのRepSox、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン、1.0~5μMのTTNPBを含む第1の組成物とおよそ17日間接触させること;
b 工程(a)の1つ以上の細胞を、0.5~5.0mMのバルプロ酸、7.0~10μMのCHIR99021、4~10μMのRepSox、2.0~10μMのトラニルシプロミン(パルネート)、0.5~50μMのフォルスコリン、1.0~5μMのTTNPB及び50~240nMの3-デアザネプラノシンA(DZNep)を含む第2の組成物と14日間接触させること;並びに
c 工程(b)の前記1つ以上の細胞を、0.1~1.0μMのPD0325901及び7.0~10μMのCHIR99021を含む第3の組成物とおよそ7日間接触させること
を含む方法。
[16] COX7A1、ADIRF及びTNFRSF11Bの1つ以上の発現が胚性幹細胞と関連する発現レベルまで減少した場合に、前記1つ以上の細胞が変化した遺伝的プロファイルを有すると考えられる、[15]に記載の方法。
[17] COX7A1の発現が胚性幹細胞と関連する発現レベルまで減少した場合に、前記1つ以上の細胞が変化した遺伝的プロファイルを有すると考えられる、[15]に記載の方法。
[18] 前記第1、第2及び第3の組成物が細胞培養培地中にある、[15]に記載の方法。
[19] 前記第1、第2及び第3の組成物がヒアルロン酸含有ヒドロゲル中にある、[15]に記載の方法。