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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】物品を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20240115BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240115BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240115BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20240115BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
B29C44/00 D
C08J9/04
B29C45/00
B29C45/37
B29K23:00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021512389
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2019073324
(87)【国際公開番号】W WO2020048912
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】1814355.2
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518275431
【氏名又は名称】ボッカテック、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BOCKATECH LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、クラーク
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/134181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
C08J 9/04
B29C 45/00
B29C 45/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を形成する方法であって、
(a)第1部分と第2部分とを有する金型を準備するステップであって、前記第1部分および第2部分はそれぞれの第1キャビティ形成面および第2キャビティ形成面を有するステップと、
(b)前記金型を閉じるステップであって、これにより前記第1キャビティ形成面と前記第2キャビティ形成面との間にキャビティを画定するステップと、
(c)ポリマーと物理的発泡剤とを含む溶融プラスチック組成物を前記キャビティ内に射出するステップであって、前記物理的発泡剤は前記ポリマーに溶解したガスであり、前記溶融プラスチック組成物は射出圧力で射出されるステップと、
(d)前記射出ステップの後に、充填ステップにおいて充填圧力を前記キャビティに付与するステップであって、前記射出ステップ(c)および前記充填ステップ(d)のうちの少なくとも一方または両方において、前記第1キャビティ形成面および前記第2キャビティ形成面に接触した射出後の前記プラスチック組成物が冷却されて、それぞれが前記第1キャビティ形成面および前記第2キャビティ形成面に隣接するとともに接触する第1固体スキンおよび第2固体スキンが形成され、前記充填ステップ(d)の後、前記キャビティの少なくとも1つの第1領域において、前記第1固体スキンと前記第2固体スキンとの間の前記プラスチック組成物の少なくとも一部が溶融したままであるステップと、
(e)前記第1固体スキンと前記第2固体スキンとの間の前記溶融プラスチック組成物が前記キャビティの少なくとも1つの前記第1領域において固化する前に前記金型を開くステップであって、これにより、前記第1固体スキンと前記第2固体スキンとの間の前記溶融プラスチック組成物が発泡により膨張して膨張多孔質発泡体を形成し得るステップであって、前記型開きステップは、前記第2固体スキンが前記第2キャビティ形成面に接触した状態を維持しつつ、前記第1固体スキンが前記第1キャビティ形成面にこれ以上接触しないように、前記金型の前記第1部分を除去することを含むステップと、を備え、
前記射出ステップ(c)および前記充填ステップ(d)において、少なくとも1つの前記第2領域に実質的に気泡が形成されることがないように前記物理的発泡剤を前記ポリマーに溶解したガスとして維持すべく、前記射出圧力および前記充填圧力は、それぞれ、前記キャビティの少なくとも1つの前記第2領域における最小圧力閾値より高く維持され、前記型開きステップ(e)において、前記溶融プラスチック組成物の少なくとも一部が、前記最小圧力閾値より低い外部圧力に晒されて、前記プラスチック組成物から形成された膨張多孔質発泡体を含む少なくとも1つの第1部分が前記物品において形成され、
前記型開きステップ(e)の前に、前記キャビティの少なくとも1つの前記第2領域において前記プラスチック組成物が冷却されて完全に固化することにより、実質的に均質な固相の非膨張プラスチック組成物を含む少なくとも1つの第2部分が前記物品において形成される、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記第2部分は、可視光において透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記第1部分は、可視光において半透明または不透明である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーは、ポリプロピレンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記最小圧力閾値は、75バールである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記発泡剤は、二酸化炭素である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記射出ステップ(c)において、前記射出圧力は、少なくとも150バールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記充填ステップ(d)において、前記充填圧力は、少なくとも150バールである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記型開きステップ(e)において、前記第1固体スキンは大気に晒され、前記外部圧力は大気圧である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記射出ステップ(c)と前記型開きステップ(e)との間で、前記キャビティの少なくとも1つの前記第2領域は、少なくとも1つの前記第2領域における前記プラスチック組成物を、少なくとも1つの前記第2領域における前記キャビティの厚さ全体に亘って前記プラスチック組成物の溶融温度未満に冷却する冷却ステップ(f)を受ける、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記物品は中空物品であり、前記第1部分および前記第2部分はそれぞれの第1環状キャビティ形成面および第2環状キャビティ形成面を有し、ステップ(b)において、前記キャビティは、前記第1環状キャビティ形成面と前記第2環状キャビティ形成面との間の環状キャビティである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1部分および前記第2部分は、それぞれ、前記中空物品の外側面および内側面を形成する外側部分および内側部分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記中空物品は、液体を収容するためのカップ、マグ、ボトル、鉢、ボウル、または容器または器である、請求項11または請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用のカップや容器等の発泡プラスチック物品の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
包装業界で一般的に使用されているタイプの使い捨てカップ(例えば、持ち帰り用のコーヒーカップ)は、低密度ポリエチレン(LDPE)等のプラスチック材料で内側がライニング加工された紙コップである。これらのカップは、分離しにくい、および/または分離にコストがかかり得る2つの別個の材料で作製されるため、リサイクルが難しい場合がある。更に、紙材料が接合されるカップの一側に継ぎ目があるため、カップが中の飲料物の摂取のために傾けられるとき(特に、カップが、摂取時に飲料物が通過するマウスピース付きの蓋とともに使用されるとき)、カップの縁の接合エリアから液体が漏れるおそれがある。
【0003】
使い捨てのポリプロピレン製カップを提供する取り組みが業界でなされてきた。従来の射出成形においては、カップに断熱性を持たせるために厚い壁が必要である。典型的には、多孔質構造が断熱性を提供し、発泡剤が熱可塑性ポリマーに添加されて発泡構造を作り出すことで断熱性が更に向上するとともに、発泡壁の密度が減少する。
【0004】
WO-A-2017/134181は、膨張領域および非膨張領域を有するポリプロピレン製カップである物品、および当該物品を形成する方法を開示している。膨張領域は、これらの領域で形成された多孔質発泡体により、半透明になる。非膨張領域も、これらの領域において膨張した気泡がいくらか形成されるため、半透明になることが開示されている。非膨張領域は、これらの領域に形成された多孔質発泡体が存在しないことにより、透明、すなわち視覚的にクリアになることが望ましい。しかしながら、透明な、すなわち視覚的にクリアな非膨張領域を得るようにプロセスを制御することは困難であり得る。
【0005】
本発明は、物品において、半透明な膨張多孔質発泡体領域と、透明な、すなわち視覚的にクリアな非膨張領域の両方を達成するという課題を少なくとも部分的に克服することを目的とする。
【0006】
本発明は、請求項1に記載の物品を形成する方法を提供する。
【0007】
本方法の好適な特徴は、従属請求項に定義される。
【0008】
本発明の方法は、任意の形状、形態または機能を有し得る物品を形成する。しかしながら、本発明は、液体を収容するためのカップ、または他の任意の容器や器等の中空物品の製造に特定の用途を有する。
【0009】
本発明は、以下の利点を有する。本方法により形成された物品は、容易にリサイクル可能かつ再利用可能であり、膨張領域により提供される高い剛性を有しつつ膨張領域により提供される良好な断熱性も有するとともに、物品に構造的および/または美的特性を提供し得る非膨張領域を更に組み込んでいる。
【0010】
非発泡領域は透明である、すなわち視覚的にクリアである。
【0011】
本発明は、最小閾値圧力に関する射出および充填段階における圧力の制御により、膨張領域を形成するための膨張工程において、大気圧等の減圧に物品が晒された後、物品の領域を膨張させないことを確実に保証できるという本件発明者による発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0012】
また、本件発明者は、本発明の方法によって製造した物品は、使用される材料の量が少ないにも関わらず、このような物品に必要なレベルの剛性を有していることも見出した。多孔質発泡体プラスチック組成物、典型的にはポリオレフィン等の熱可塑性ポリマー、典型的にはポリプロピレンは、その断熱性のためにゆっくりと冷えるため、プラスチック組成物の結晶化度が上昇し得ることにより、多孔質発泡体プラスチック組成物の剛性が上昇し得るということが見出された。また、第1スキンと第2スキンとの間の溶融プラスチック組成物の発泡による膨張により、物品に良好な断熱性が提供される。
【0013】
また、容器全体が、リサイクル可能な材料の単一層で作製され得る(すなわち、分離する必要がある別の材料の層が存在しない)ため、容器は、一般に使用されるプラスチックでライニング加工された紙コップよりリサイクルが容易である。
【0014】
更に、物品は、本発明の方法で射出成形されるため、物品には、収容した液体の漏れが発生し得る接合部が存在しない。
【0015】
本発明の実施形態を、添付図面を参照して例示的にのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態の方法により形成されたカップの側面図である。
図2図2は、図1のカップの第1部分のA-A線における断面図であって、本発明の方法の種々の段階におけるカップの膨張半透明領域の外観を示す図である。
図3図3は、図1のカップの第2部分のB-B線における断面図であって、本発明の方法の種々の段階におけるカップの非膨張透明領域の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、本発明の方法により形成された物品、例えばコーヒーカップ等のカップの側面図が示されている。
【0018】
カップ100は、環状の膨張発泡領域104と環状の非膨張領域106とを有する環状の側壁102を有している。本明細書において、「環状」という用語は、「全体としてリング形状」であることを意味し、幾何学的に円形の形状に限定されず、円形であり得る形状、または例えば楕円形、多角形等の円形以外であり得る形状を包含する。膨張発泡領域104は、典型的には1mm~4mm、選択的に1mm~3mmの厚さを有している。非膨張領域106は、典型的には0.25mm~0.75mm、選択的に0.25mm~0.5mmの厚さを有している。
【0019】
膨張発泡領域104は、肉眼では半透明に見える。これは、膨張多孔質発泡体が、可視光を反射する多孔質の壁を有する気泡を含むためである。しかしながら、顔料が熱可塑性ポリマーに高濃度で含まれる場合、膨張領域104は、典型的には、単色で不透明に見えることもある。
【0020】
これに対し、非膨張領域106は気泡を有さない、または気泡が存在したとしても低濃度であり、それらは典型的には0.5ミクロン未満の気泡サイズを有するため、肉眼では見えない。したがって、非膨張領域106は、肉眼では透明に見える。本実施形態ではCOガスである発泡剤が、物品の製造中に、本実施形態ではポリエチレンであるポリマー中の溶体にとどまっているため、非膨張領域106は、肉眼では透明に見える。溶融ポリマーの固化後に、発泡剤の何らかの作用の結果として気泡は形成され得ない。
【0021】
本発明は、半透明の膨張発泡領域104と透明の非膨張領域106との両方を含むこのような物品の確実な製造に関する。
【0022】
図2を参照すると、本発明の方法の種々の段階における膨張領域104の外観を示すA-A線における断面図が示されている。
【0023】
図2および図3において、説明をわかりやすくするために距離が誇張されている。
【0024】
図2の左側を参照すると、物品の膨張領域104は、第1環状外側部分12と第2環状内側部分14とを有する金型2を使用して形成されている。第1部分12および第2部分14は、それぞれの第1キャビティ形成面22aおよび第2キャビティ形成面24aを有している。金型の外側部分12の第1キャビティ形成面22aは、波形部25を備えている。第1キャビティ形成面22aの波形部25は、例えば正弦波の形状の山と谷とを有している。正弦波は、山と谷の形状および形態に対して種々の異なる構成を有し得る。第2キャビティ形成面24aは、好適には平滑で凹凸がない。
【0025】
金型2を閉じることにより、第1キャビティ形成面22aと第2キャビティ形成面24aとの間にキャビティ8の第1領域30が画定される。ポリマーと物理的発泡剤とを含む溶融プラスチック組成物50が、キャビティ8内に射出される。物理的発泡剤は、ポリマーに溶解したガスである。
【0026】
本発明の実施形態において、プラスチック組成物のポリマーは、ポリオレフィン、または選択的にポリエチレンもしくはポリプロピレンである複数のポリオレフィンの混合体;または、選択的にポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートであるポリエステル;または、ポリ乳酸である。好適な実施形態において、ポリマーは、ポリプロピレンを含む。10~120のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレンが特に好適である。ポリマーのメルトフローインデックスは、ASTM D1238に準拠して測定され得る。
【0027】
本発明の実施形態で使用可能な発泡剤は、溶融プラスチック組成物に溶解したガスの形態の物理的発泡剤を含む。このようなガスは、例えば二酸化炭素を含み得る。ガスは、選択的に、消費者の体験を向上させるように、膨張後にポリマー材料中に存在し続ける香料組成物(すなわち香り)を更に含み得る。
【0028】
発泡剤として二酸化炭素を使用する場合、COガスは、射出成形機の押出機内の発泡剤により生成される。その後、COガスは、(典型的には300バール~500バールの)射出段階中に、材料に加えられる比較的高い圧力のために溶体になる。この圧力は、ポリプロピレン等の溶融熱可塑性樹脂においてCOを強制的に溶体にするのに必要な(典型的には75バールを超える)圧力より大きい。
【0029】
溶融プラスチック組成物は、射出圧力Pinjectionで射出される。典型的には、射出圧力Pinjectionは、少なくとも150バールである。
【0030】
射出ステップの後、充填ステップにおいて、充填圧力Ppackingがキャビティ8に付与される。典型的には、充填圧力Ppackingは、少なくとも150バールである。
【0031】
射出ステップ(c)および充填ステップ(d)のうちの少なくとも一方または両方において、第1キャビティ形成面22aおよび第2キャビティ形成面24aに接触した射出後のプラスチック組成物50が冷却されて、それぞれが第1キャビティ形成面22aおよび第2キャビティ形成面24aに隣接するとともに接触する第1固体スキン4および第2固体スキン6が形成される。
【0032】
充填ステップ(d)の後、キャビティ8の少なくとも1つの第1領域30において、第1固体スキン4と第2固体スキン6との間のプラスチック組成物の少なくとも一部は溶融したままである。
【0033】
射出ステップ(c)および充填ステップ(d)において、射出圧力Pinjectionおよび充填圧力Ppackingは、それぞれ、キャビティ8の第1領域30において、最小圧力閾値Pthresholdより大きい。典型的には、最小圧力閾値Pthresholdは、75バールである。これにより、第1領域30において、物理的発泡剤がポリマー中の溶体から部分的に抜け出ることが防止されるため、射出ステップ(c)および充填ステップ(d)において第1領域30に気泡が形成されない。
【0034】
図2の右側を参照すると、その後、第1固体スキン4と第2固体スキン6との間の溶融プラスチック組成物がキャビティ8の少なくとも1つの第1領域30において固化する前に、金型2が開かれる。
【0035】
金型キャビティ8の当該第1領域30は厚いため、溶融ポリマー樹脂が冷えて固化するには、比較的長時間、すなわち射出ステップおよび充填ステップより長い時間が必要である。また、ポリマー樹脂を溶融液相に維持するように、当該第1領域30を外部ヒーターにより更に加熱されてもよい。
【0036】
型開きステップ(e)において、溶融プラスチック組成物の少なくとも一部が、最小圧力閾値より低い外部圧力、例えば大気圧に晒されて、プラスチック組成物から形成された膨張多孔質発泡体を含む少なくとも1つの第1部分が物品において形成される。
【0037】
このため、この型開きステップにより、第1固体スキン4と第2固体スキン6との間の溶融プラスチック組成物が発泡により膨張して、膨張多孔質発泡体20が形成され得る。型開きステップは、第2固体スキン6が第2キャビティ形成面24aに接触した状態を維持しつつ、第1固体スキン4が第1キャビティ形成面22aにこれ以上接触しないように、金型2の第1部分12を除去することを含む。図示された実施形態において、この型開きは、金型2の外側部分12を除去することにより達成される。これにより、第1スキン4は大気圧に晒されるが、第2スキン6は内側部分14に接触したままとなる。但し、金型を開く他の任意の構成が使用され得る。
【0038】
図2の右側は、第1固体スキン4、第2固体スキン6、および第1固体スキン4と第2固体スキン6との間のプラスチック組成物50を示す。プラスチック組成物10は、発泡により膨張して固体マトリックス40内に気泡18を形成した後、固化している。図2の右側において、金型の外側部分12は物品から除去されており、物品は内側部分14すなわちコアに接したままである。
【0039】
以上のように、第1固体スキン4に形成されたエリアが膨張により「膨らむ」ことで、完成した部品28の第1固体スキン4と第2固体スキン6との間の距離が、物品の円周の周囲において実質的に一定となる。発泡ガスは、ポリマー中の溶体から抜け出て膨張多孔質発泡体を形成する。
【0040】
圧力は、第1外側固体スキン4を、第2内側固体スキン6から突き出すように作用する。第1スキン4の第2スキン6からの突き出しは、高濃度の発泡剤を保持するエリアで生じる。発泡剤は、溶体から抜け出ることで膨張する。膨張した側壁は、WO-A-2017/134181に開示されたリブ構造を有し得る。
【0041】
図3を参照すると、本発明の方法における対応した段階での非膨張領域106の外観を示すB-B線における断面図が示されている。
【0042】
図2に関して、図3の左側を参照すると、物品の非膨張領域106は、第1環状外側部分12と第2環状内側部分14とを有する金型2を使用して形成されている。
【0043】
金型2を閉じることにより、第1キャビティ形成面22bと第2キャビティ形成面24bとの間にキャビティ8の第2領域32が画定される。第1キャビティ形成面22bおよび第2キャビティ形成面24bは、狭いキャビティ領域32を形成し、好適には平滑で凹凸がない。
【0044】
射出ステップ(c)および充填ステップ(d)において、第2領域32に実質的に気泡が形成されることがないように物理的発泡剤をポリマーに溶解したガスとして維持すべく、射出圧力および充填圧力は、それぞれ、キャビティ8の第2領域32における最小圧力閾値より高く維持される。
【0045】
型開きステップ(e)の前に、キャビティ8の第2領域32におけるプラスチック組成物が冷却されて完全に固化することにより、実質的に均質な固相の非膨張プラスチック組成物を含む少なくとも1つの非膨張領域106が物品において形成される。
【0046】
金型キャビティ8の当該第2領域32は薄いため、溶融ポリマー樹脂が冷えて固化するには、比較的短時間、すなわち射出ステップおよび充填ステップより短い時間しか必要ない。また、ポリマー樹脂を溶融液層から固相に転移させるように、当該第2領域32は外部クーラーにより更に冷却されてもよい。
【0047】
したがって、選択的に射出ステップ(c)と充填ステップ(d)との間で、キャビティ8の少なくとも1つの第2領域32は、少なくとも1つの第2領域32におけるプラスチック組成物を、少なくとも1つの第2領域32におけるキャビティ8の厚さ全体に亘ってプラスチック組成物の溶融温度未満に冷却する冷却ステップ(f)を受ける。
【0048】
射出ステップ(c)および充填ステップ(d)のうちの少なくとも一方または両方において、キャビティ8の第2領域32において、第1キャビティ形成面22bおよび第2キャビティ形成面24bに接触した射出後のプラスチック組成物が冷却されて、それぞれが第1キャビティ形成面22bおよび第2キャビティ形成面24bに隣接するとともに接触した第1固体スキン4および第2固体スキン6だけでなく、キャビティ8の第2領域32の幅40に亘る厚さの固体壁38も形成される。
【0049】
充填ステップ(d)の後、キャビティ8の少なくとも1つの第2領域32において、第1固体スキン4と第2固体スキン6との間のプラスチック組成物の全厚が固化する。
【0050】
図3の右側を参照すると、その後、第1固体スキン4と第2固体スキン6との間の溶融プラスチック組成物がキャビティ8の少なくとも1つの第2領域32において固化した後、金型2が開かれる。
【0051】
型開きステップの後、第1固体スキン4と第2固体スキン6との間の固体プラスチック組成物は、発泡によりそれ以上膨張することができず、膨張多孔質発泡体を形成し得ない。したがって、非膨張領域106は、肉眼では透明に見える。
【0052】
本発明の第1態様および第2態様の両方において、物品は、コーヒーカップ等のカップや容器、または電子レンジでスープを温めるのに適した容器であり得る。物品は、使い捨てであっても再利用可能であってもよく、いずれの場合でも、物品は単一のポリマー、例えばポリプロピレンで構成されているため、リサイクル可能である。
【0053】
図示の実施形態に対する種々の変形が当業者には明らかであり、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3