(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】閉ループベークアウト制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
H05B3/00 360
(21)【出願番号】P 2021513841
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 US2019050768
(87)【国際公開番号】W WO2020056103
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-23
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キルチョフ、リンコルン
(72)【発明者】
【氏名】ゼンマイヤー、ルカス
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0312028(US,A1)
【文献】特開2017-226558(JP,A)
【文献】特開2018-004998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0216055(US,A1)
【文献】特公平04-015089(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターを作動させるための制御システムであって、
測定された前記ヒーターの性能の特徴、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定し、
前記ヒーターにて測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定し、
前記ヒーターに選択された電力レベルを適用する、ように構成されたコントローラを具備し、
前記選択された電力レベルは、前記動作電力レベルおよび前記ベークアウト電力レベルのうちより低い電力レベルである、制御システム。
【請求項2】
前記ヒーターの前記性能の特徴を測定するように構成された第1のセンサと、
前記漏電流を測定するように構成された第2のセンサとをさらに具備する請求項1の制御システム。
【請求項3】
前記第1のセンサは、前記性能の特徴として前記ヒーターの動作電流を測定するための分離された電流センサである請求項2の制御システム。
【請求項4】
前記ヒーターは、二線式ヒーターであり、
前記コントローラは、前記ヒーターの抵抗に基づいて前記性能の特徴として動作電流を計算するように構成される請求項1の制御システム。
【請求項5】
前記ヒーターに電気的に結合され、前記ヒーターに前記選択された電力レベルを適用するように構成された電力レギュレータ回路をさらに具備する請求項1の制御システム。
【請求項6】
前記電力レギュレータ回路は、前記ヒーターに調節可能な電力を供給するように前記コントローラによって作動可能な電力スイッチを含む請求項5の制御システム。
【請求項7】
前記電力制御アルゴリズムおよび前記湿気制御アルゴリズムは、PID(Proportional-Integral-Derivative Control)制御として定義される請求項1の制御システム。
【請求項8】
請求項1の前記制御システムと、
前記制御システムと電気的に結合され、ワークピースを加熱するための加熱素子と、を具備し、
前記制御システムは、前記加熱素子に
前記選択された電力レベルを適用するように構成される、熱システム。
【請求項9】
前記ヒーターは、二線式ヒーターであり、
前記制御システムの前記コントローラは、前記ヒーターの抵抗に基づいて前記性能の特徴として動作電流を測定するように構成される請求項8のシステム。
【請求項10】
前記ヒーターは、層状ヒーター、筒状ヒーター、カートリッジヒーター、ポリマーヒーター、およびフレキシブルヒーターから成るグループから選択される請求項8のシステム。
【請求項11】
ヒーターを制御するための方法であって、
前記ヒーターの性能の特徴を測定することと、
漏電流を測定することと、
前記測定された性能の特徴、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定することと、
前記測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定することと、
選択された電力レベルとして前記動作電力レベルまたは前記ベークアウト電力レベルのうちの一つを前記ヒーターに適用することと、を具備
し、
前記選択された電力レベルは、前記動作電力レベルおよび前記ベークアウト電力レベルのうちより低い電力レベルである、方法。
【請求項12】
前記選択された電力レベルとして前記動作電力レベルおよび
前記ベークアウト電力レベルの中からより低い電力レベルを選択することとをさらに具備する請求項11の方法。
【請求項13】
前記性能の特徴は、前記ヒーター内の電流の量である請求項11の方法。
【請求項14】
前記ヒーターは、層状ヒーター、筒状ヒーター、カートリッジヒーター、ポリマーヒーター、およびフレキシブルヒーターから成るグループから選択される請求項11の方法。
【請求項15】
前記電力制御アルゴリズムおよび前記湿気制御アルゴリズムは、PID制御(Proportional-Integral-Derivative Control)として定義される請求項11の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2018年9月14日に出願された米国特許出願第62/731,373号の優先権および利益を主張する。上記出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ヒーターのベークアウト制御のための熱システムおよび方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
このセクションの記述は、単に本開示に関連する背景情報を提供し、先行技術を構成せずともよい。
【0004】
熱システムは、様々な用途で使われ、一般にワークピースを加熱するためのヒーターと、ヒーターの性能を制御するための制御システムとを含む。ヒーターは、層状プロセス(例えば、厚膜、薄膜、溶射、ゾルゲル)によって形成された複数の加熱抵抗素子を有する層状ヒーター、金属被覆ヒーター、または他の適したヒーターであり得る。ヒーターは、約600Vまたはより下で動作する低電圧ヒーター、または約600Vから4kVで動作する中電圧ヒーターであってもよい。
【0005】
湿気の侵入は、多くのタイプのヒーターで生じ、ヒーターが室温にあるときに湿気を侵入させる吸湿性断熱素材を有するヒーターにとって特に問題がある。この湿気を減らすまたは取り除くために、ヒーターは、湿気を取り除くまたは減らすためにヒーターが電力を供給される間、「ベークアウト」処理を受ける。幾つかの用途において、ヒーターは、ベークアウト処理のために専用のヒーター要素を含んでいてもよく、他においては、ワークピースを加熱するためのヒーター要素は、ベークアウト処理を実行するように制御されてもよい。
【0006】
幾つかのベークアウト処理は、ベークアウトにとって短すぎる、または長すぎる期間になるタイムベース制御である。ベークアウト時間が短すぎる場合、湿気がヒーター内に残り、ヒーターが十分な電圧で動作できなくなる。そのため、ベークアウト処理は、繰り返されなければならない。ベークアウト時間が長すぎる場合、熱システムは、必要とされるよりも長い間、高い温度で作動し、電力を浪費することになる。ヒーターから湿気を取り除くことに関連するこれらおよび他の問題は、本開示によって解決される。
【発明の概要】
【0007】
このセクションは、本開示の一般的な要約を提供し、その全範囲またはその特徴の全ての包括的な開示ではない。
【0008】
本開示は、ヒーターの測定された性能の特徴、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定するように構成されたコントローラを具備するヒーターを作動させるための制御システムを提供する。さらに、コントローラは、ヒーターにて測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定し、ヒーターに適用されるべき電力レベルを選択する。選択された電力レベルは、動作電力レベルおよびベークアウト電力レベルの中から、より低い電力レベルである。
【0009】
ある形態において、制御システムは、ヒーターの性能の特徴を測定するように構成された第1のセンサと、漏電流を測定するように構成された第2のセンサとをさらに具備する。この形態において、第1のセンサは、性能の特徴としてヒーターの動作電流を測定するための分離された電流センサであってもよい。
【0010】
別の形態において、ヒーターは、二線式ヒーターであり、コントローラは、ヒーターの抵抗に基づいて性能の特徴として動作電流を計算するように構成される。
【0011】
別の形態において、制御システムは、ヒーターと電気的に結合し、ヒーターに選択された電力レベルを適用するように構成された電力レギュレータ回路をさらに具備する。この形態において、電力レギュレータ回路は、ヒーターに調節可能な電力を供給するようにコントローラによって作動可能な電力スイッチを含んでいてもよい。
【0012】
さらなる形態において、電力制御アルゴリズムおよび湿気制御アルゴリズムは、PID制御(Proportional-Integral-Derivative Control)として定義される。
【0013】
本開示は、上記で開示された特徴のいくつかまたは全てを有する制御システムを具備する熱システムをさらに提供する。熱システムは、制御システムに電気的に結合するヒーターをさらに具備し、ヒーターは、ワークピースを加熱するための加熱素子を含む。制御システムは、加熱素子に望まれた電力レベルを適用するように構成される。この形態において、ヒーターは、層状ヒーター(layered heater)、筒状ヒーター(tubular heater)、カートリッジヒーター、ポリマーヒーター、およびフレキシブルヒーターからなるグループから選択されてもよい。
【0014】
本開示は、ヒーターの制御のための方法をさらに提供する。方法は、ヒーターの性能の特徴を測定することと、漏電流を測定することと、測定された性能の特徴、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定することと、測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定することと、選択された電力レベルとして動作電力レベルまたはベークアウト電力レベルの一つをヒーターに適用することとを具備する。
【0015】
ある形態において、方法は、選択された電力レベルとして動作電力レベルおよびベークアウト電力レベルの中からより低い電力レベルを選択することを具備する。
【0016】
別の形態において、性能の特徴は、ヒーター内の電流の量である。
【0017】
さらに別の形態において、ヒーターは、層状ヒーター、筒状ヒーター、カートリッジヒーター、ポリマーヒーター、およびフレキシブルヒーターから成るグループから選択される。
【0018】
ある形態において、電力制御アルゴリズムおよび湿気制御アルゴリズムは、PID制御(Proportional-Integral-Derivative Control)として定義されてもよい。
【0019】
本開示は、ヒーター内の湿気を制御するための方法をさらに提供する。方法は、動作電力レベルがヒーターに適用される主要動作モードにおいて、ワークピースを加熱するために主要動作モードでヒーターを作動させることと、ヒーター内の湿気の指標である漏電流において、漏電流センサによってヒーター内の漏電流を測定することと、測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定することと、ここで、湿気制御アルゴリズムはPID制御(Proportional-Integral-Derivative Control)として定義され、ベークアウト電力レベルが動作電力レベルより低くなっていることに応じて、ヒーターをベークアウトモードで作動させることと、ベークアウト電力レベルが動作電力レベルより大きくなっていることに応じて、ヒーターを主要動作モードで作動させることとを具備する。
【0020】
ある形態において、主要動作モードでヒーターを作動させるステップは、ヒーターの性能の特徴を測定することと、測定された性能の特徴、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定することとをさらに含み、ここで電力制御アルゴリズムはPID制御として定義される。この形態において、性能の特徴は、ヒーターを通る動作電流であってもよい。
【0021】
他の形態において、方法は、ヒーターの抵抗に基づいて、性能の特徴として、ヒーターの動作電流を計算することと、および/または分離された電流センサによって性能の特徴としてヒーターの動作電流を測定することとをさらに含む。
【0022】
適用性のさらなる領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。説明および特定の例は、例示のみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図しないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
開示がより理解されるために、添付の図から成る参照、および例によって提供される様々な形態がここで説明される。
【0024】
【
図1】
図1は、本開示によるヒーターおよび制御システムを含む熱システムのブロック図である。
【0025】
【
図2A】
図2Aは、層状プロセスによって形成された例示的な層状ヒーターの上面図である。
【0026】
【0027】
【
図3】
図3は、カートリッジヒーターの部分断面図である。
【0028】
【
図4】
図4は、本開示による漏電流のパスを説明する
図1の熱システムの回路図である。
【0029】
【0030】
【
図6】
図6は、本開示によるヒーター内の湿気除去を制御するためのヒーター制御ルーチンのフローチャートである。
【0031】
本明細書に記載の図は、説明のみを目的とし、何ら本開示の範囲を制限することを意図しない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、用途、または使用を制限することを意図しない。図面それぞれを通して、対応する参照番号は、同様または対応するパーツおよび特徴を示すことを理解されたい。
【0033】
本開示は、ベークアウト処理によるヒーター内に蓄積する湿気の制御のための制御システムを目的とする。
図1に示すように、ある形態において、熱システム100は、ヒーター102、およびヒーター102を制御するように構成された制御システム104を含む。
【0034】
ある形態において、ヒーター102は、ワークピースを加熱するために作動可能な一つ以上の加熱素子106を含む。例えば、
図2A、および2Bに示すように、ヒーター102は、誘電層202、一つ以上の加熱素子を画定する抵抗層204、および基板208上に配設された保護層206を含む層状ヒーター200であってもよい。ある形態において、抵抗層204によって形成された加熱素子は、ヒーター、および加熱素子の一つ以上の電気的特徴を検知するための温度センサとして作動可能な二線式加熱素子である。このような二線式加熱素子は、米国特許第7,196,295,号明細書において開示され、現在の用途に一般に割り当てられ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
層状ヒーター200の層の数および層の構成は、単なる例示であり、分離された基板を除いて互いに適用された層の組み合わせの変形は、本開示の教示の内であることは、理解されたい。このような変形は開示されており、例えば、米国特許第7,132,628および8,680,443号明細書において、現在の用途に一般に割り当てられ、それら全体における中身は参照により本明細書に組み込まれる。これらの層は、中でも厚膜、薄膜、溶射、またはゾルゲルに関連する処理を使用して基板または別の層に材料を適用または蓄積することを通して形成される。
【0036】
ヒーター102は層状ヒーターとして説明されているが、本開示の教示は、特に、筒状ヒーター、カートリッジヒーター、ポリマーヒーター、およびフレキシブルヒーターのような、他のタイプのヒーターに適用され得る。そのため、層状ヒーターに限定されない。例えば、
図3に示すように、ヒーター102は、非導電部304の周囲に配設された抵抗加熱素子302(例えば金属線)と、被膜306と、抵抗加熱素子302と被膜306との間に配設された誘電材料308(例えばMgO)と、二つのピン310とを含むカートリッジヒーター300であってもよい。ある形態において、ピン310は、導線(図示せず)に接続され、非導電部304を通して延び、抵抗加熱素子に電力を供給するために抵抗加熱素子302の端に接続する。
【0037】
動作中、湿気は、層状ヒーター200の誘電層202および/または保護層206などの、ヒーター102内に蓄積し始め得る。別の例、特にカートリッジヒーター300、において、湿気は、抵抗加熱素子302の端と導線との間に蓄積し始め得る。ヒーター102内の湿気は、代わりの電流パスを作り、これらの代わりのパスを通って流れる電流は、一般に漏電流として称される。いくつかの用途において、ヒーター102は、熱源からグランドへ生じる追加の電流のため、ヒーター102が乾いているときよりも、湿気があるときにより多くの合計電流を引き出す。一般に、いずれの湿気を取り除くためでも、ヒーター102は、ヒーター102内の一つ以上の加熱素子106が湿気を取り除くまたは”ベークアウトする”ために活動させられる間、ベークアウト処理を受ける。
【0038】
図1の参照を続けると、ヒーター102内の電流を監視するために、熱システム100は、動作電流センサ110(例えば、第1の電流センサ)、およびヒーター102に電気的に接続された漏電流センサ(例えば、第2の電流センサ)を含む。動作電流センサ(複数可)および漏電流センサ(複数可)の数は、使用されているヒーター102のタイプに基づいて変えてもよい。ある形態において、動作電流センサ110は、ヒーター102の動作電流と呼ばれ、ヒーター102の性能の特徴の一例であるヒーター102を通る電流フロー(すなわち、中性線に向かってヒーター102から出る電流)を測定する電流変換器である。
【0039】
例えば、
図4は、ヒーターを通る動作電流および漏電流を説明する例示的な図である。例において、加熱素子402を持つヒーター400は、制御システム404から電力を受け取り、制御システム104と同様の方法で構成される。以下で説明するように、制御システム404は、電源406から電力を受け取り、ヒーター400に適用される電力を選択された電圧に調節するように構成される。矢印AおよびBは、動作電流の通常の電流パスを説明する。湿気が蓄積し始めると、ヒーター400に漏電パスが作られる。漏電パスは、漏電流の方向を示す矢印Cと、一点鎖線によって示される。
【0040】
ある形態において、ヒーター102が二線式システムである場合、動作電流は、加熱素子106の抵抗の変化に基づいて測定される。すなわち、そのような熱システムは、ヒーターの設計と、別のパラメータを制御すること一方で一つ以上のこれらのパラメータ(すなわち、電力、抵抗、電圧、電流)を制限するカスタマイズ可能なフィードバック制御システムにおける電力、抵抗、電圧、および電流を組み込む制御をマージする。例えば、加熱素子の抵抗を計算することおよび適用される電圧を知ることによって、加熱素子を通る動作電流は、分離されたセンサを使用せずに決定される。よって、二線式システムは、動作電流センサとして作動してもよい。
【0041】
ある形態において、漏電流センサ112は、例えば接地線上のヒーター102から出る漏電流の量を測定する電流変換器である。動作電流センサ110および漏電流センサ112は、制御システム104にそれぞれの電流の測定値を示す信号を送信する。制御システム104は、返答として、ヒーター102に適用される電力の量を制御する。
【0042】
続けて
図1を参照すると、制御システム104は、ACまたはDC電源のような電源に接続され、ヒーター102に調節可能な入力電圧を適用するように構成される。制御システム104は、電子機器(例えば、中でも、マイクロプロセッサ、メモリ、通信インタフェース、電圧-電流変換器、および電圧-電流測定回路)、およびメモリに格納され、本明細書に記載の動作を実行するマイクロプロセッサによって実行可能なソフトウェアプログラム/アルゴリズムの組み合わせを含む。
【0043】
より具体的には、ある形態において、制御システム104は、主要動作中にヒーター102を制御するように構成され、その間、ヒーター102は、一つ以上のあらかじめ決められた性能パラメータに従ってワークピース108を加熱する。ある形態において、ヒーター102の主要動作は、ウォームアップ状態、準備状態、および/またはパワーダウン状態のような、異なる動作状態を含む。それぞれの動作状態は、電力セットポイントのような、与えられた状態のための異なる性能パラメータを含んでいてもよい。主要動作中、制御システム104は、漏電流センサ112からの測定された漏電流によってヒーター102内の湿気を監視し、漏電流が漏電流閾値を超えた時にベークアウト処理を実行するために主要動作を遮る。
【0044】
より具体的には、センサ110および112からの信号と、あらかじめ決められた制御アルゴリズムとに基づいて、制御システム104は、漏電流を制限するために必要とされる電力の量と、主要動作のための電力セットポイントを満たすために必要な電力の量とを決定する。二つの電力量のより低い方は、ヒーター102に適用される。より具体的には、いくつかの用途において、ヒーター102および/またはそのほかの設備にダメージを与え得るグランドへの過剰電流を妨げるため、ヒーター102に低電圧を適用することによってベークアウト処理中の漏電流は制限される。ヒーター102から湿気が取り除かれるので、湿気を有する領域に沿う抵抗は増加し(例えば、絶縁体/誘電体に沿うまたは内の)、漏電流閾値を超えないヒーター102への電圧の増加を許容する。ある形態において、制御アルゴリズムは、PID制御(Proportional-Integral-Derivative Control)である。
【0045】
図5に示すように、ある形態において、制御システム104は、コントローラ500と、電力レギュレータ回路501とを含む。コントローラ500は、主要動作モジュール502、漏電流モジュール504、および電力モジュール506、および電力モジュールを含むように構成される。主要動作モジュール502は、動作電流センサ110から測定された動作電流、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定する。ある形態において、電力セットポイントは、実行されている動作状態、および/または動作状態に関連したあらかじめ定義された値のためにユーザインタフェースを使用してユーザによってセットされ得るベースラインパラメータ(すなわち、ユーザ定義のセットポイント)である。電力制御アルゴリズムは、ある形態において、ヒーター102に適用される実際の電力が電力セットポイントに近くなるようにヒーター102に適用されるべき動作電力レベルを計算するPID制御(すなわち、第1のPID制御または動作PID制御)として定義される。例えば、ある形態において、電力制御アルゴリズムは、測定された動作電流およびヒーター102に適用された入力電圧に基づいてヒーター102に供給されている実際の電力を計算する。電力制御アルゴリズムは、適用されている実際の電力と電力セットポイントとの間の差を判定し、ヒーターの実際の電力と電力セットポイントとの間の差を最小化するために必要とされる電力のレベル(すなわち、動作電力レベル)を決定する。よって、PID制御を伴う、主要動作モジュール502は、電力セットポイントを満たすようにヒーター102に適用される電力を調節する閉ループ制御として提供される。
【0046】
漏電流モジュール504は、漏電流センサ112から測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定する。漏電流閾値は、許容された漏電流のレベル(例えば、30mAまたは他の値)であるプリセット値であり、したがって、許容された湿気の量を示す。ある形態における湿気制御アルゴリズムは、漏電流閾値までまたはより低い値に漏電流を減少させるためにベークアウト電力レベルを計算するPID制御(すなわち、第2のPID制御またはベークアウトPID制御)として定義される。例えば、ある形態において、湿気制御アルゴリズムは、測定された漏電流と漏電流閾値との差を判定し、漏電流閾値以下に実際の漏電流レベルを減少するために必要とされる電力のレベル(すなわち、ベークアウト電力レベル)を計算する。よって、PID制御を伴う、漏電流モジュール504は、ヒーター102内の湿気をすばやくベークアウトする(すなわち、漏電流を減らす)ためにヒーター102に適用される電力を調節する閉ループ制御である。
【0047】
電力モジュール506は、動作電力レベルおよびベークアウト電力レベルの中から電力レベルを選択し、選択された電力レベル(すなわち、入力電圧)を適用するように電力レギュレータ回路の制御を送信する。ある形態において、電力モジュール506は、選択された電力レベルとして動作電力レベルおよびベークアウト電力レベルの中からより低い電力レベルを選択するように構成される。
【0048】
ある形態において、電力レギュレータ回路501は、電源114からの電力を選択された電力レベルに調節するように構成され、ヒーター102に調節された電力を適用する。電力レギュレータ回路501は、含むサイリスタ、電圧デバイダ、電圧コンバータ、変換器、電力スイッチ、および/または他の適した電子部品を含んでいてもよい。例えば、ある形態において、電力レギュレータ回路501は、電源からの電圧を調節するために低位相角スイッチングまたはゼロ交差スイッチングを使用するように構成される。別の例において、電源114は、動作電力レベルのための高圧電源およびベークアウト電力レベルのための低圧電源を含んでいてもよく、さらに電力レギュレータ回路501は、電力モジュール506からの制御信号に基づいて二つの電源をスイッチするように構成される。さらに別の例において、電力レギュレータ回路501は、バリアックによって、高および低電流の両方を供給するように構成される。別の例において、電力レギュレータ回路501は、整流器および降圧コンバータを含む電力コンバータとして構成される。そのような電力コンバータは、2017年6月15日に出願され、”POWER CONVERTER FOR A THERMAL SYSTEM”と題された米国特許出願第15/624,060,に記載され、本用途およびその全体における参照によって本明細書に組み込まれる中身を一般に所有される。さらに別の例における電力レギュレータ回路501は、DC電力サプライである。コントローラが電力レギュレータ回路501を作動するように構成され、異なる回路系および電力レギュレータ回路501に基づくソフトウェアアプリケーションを含んでいてもよいことは、たやすく理解されたい。
【0049】
動作において、主要動作モジュール502は、与えられた動作状態の間にワークピースを加熱するためにヒーター102に適用される電力を制御する。主要動作の間、漏電流モジュール504は、ヒーター102内の漏電流を監視する。特に、漏電流モジュール504は、測定された漏電流が漏電流閾値より低い間、動作電力レベルのそれより大きいベークアウト電力レベルを出力する。測定された漏電流が漏電流閾値以上であれば、湿気制御アルゴリズムを有する漏電流モジュール504は、ベークアウト制御を開始するために動作電力レベルの電力レベルよりも低い電力レベルを出力する。
【0050】
動作PID制御およびベークアウトPID制御を有することによって、本開示の制御システムは、漏電流を減らす、したがってヒーターから湿気を取り除く、ために必要とされる時間だけを取ることによってベークアウト時間を減らすように作動できる。より具体的には、分離した時間周期およびセットされた電力量の代わりに、湿気制御アルゴリズムのPID制御は、漏電流が漏電流閾値より下に落ちるまで電圧を強め続けるランプアルゴリズムである。例えば、ある形態において、漏電流が検知されると、湿気を取り除くためにベークアウト動作が実行されるように、漏電流閾値は、0またはおおよそ0Aにセットされていてもよい。そのようにして、PID制御は、ヒーターを完全に乾かすために必要な時間および全体の電力を減らす。
【0051】
制御システムは、本開示の範囲内であれば、追加的な動作の特徴を含むように構成されてもよい。例えば、制御システムは、ヒーターの動作に関するデータを出力する、および/またはユーザからの入力を受け取るために一つ以上の外部デバイスと通信するように構成されてもよい。別の例において、制御システムは、熱システムがあらかじめ決められたパラメータの範囲で動作しているか否かを評価する診断ルーチンを実行してもよく、これにより、考えられる異常を検知する。
【0052】
図6に示すように、ヒーター制御ルーチン600の例は、提供される。ある形態において、ヒーター制御ルーチン600は、電力がヒーターに適用されているとき、制御システムによって実行される。602にて、制御システムは、選択されたヒーター動作に従ってヒーターを作動させ、そして604にて、動作電流センサおよび漏電流センサそれぞれから動作電流(IOP)および漏電流(ILK)を取得する。
【0053】
606にて、動作PID制御を使用し、制御システムは、動作電力レベルを計算し、そして608にて、上記のようにベークアウト電力レベルを計算する。610にて、制御システムは、動作電力レベルがベークアウト電力レベル以下であるか否かを判定する。動作電力レベルがベークアウト電力レベルより低い場合、主要動作は維持され、そして制御システムは、612にて、ヒーターに動作電力レベルを適用し、そしてヒーターを作動させるためのルーチンの最初に戻る。一方、動作電力レベルがベークアウト電力レベルより大きい場合、主要動作は、ベークアウト動作を実行するために遮られる。よって、614にて、制御システムは、ヒーターにベークアウト電力レベルを適用し、そして電流測定値を取得するために604に戻る。ルーチン600は、制御システムのメインスイッチが閉められ、ヒーターにまったく電力が適用されていないとき、熱システム内で異常な状態が検知されたとき、および/または他の適した状態で、中断されてもよい。
【0054】
本明細書に記載のルーチン/方法は、コンピュータ可読媒体内に実装されてもよい。ターム「コンピュータ可読媒体」は、単一媒体、または一元化または分散されたデータベース、および/または関連したキャッシュ、および一つ以上のインストラクションのセットを格納するサーバーのような複数のメディアを含む。ターム「コンピュータ可読媒体」は、プロセッサによる実行のためにインストラクションのセットを格納、エンコード、運ぶことが可能である、または演算システムに本明細書に記載の任意の一つ以上の方法または動作を実行させる任意の媒体を含む。
【0055】
制御システムの特定の例図が提供されたが、システムは、図において詳細でない追加のコンポーネントを含んでいてもよいことは、たやすく理解されたい。例えば、制御システムは、例えば領域制御回路の電力コンバータよりも低い電圧で作動される、主要コントローラおよび補助コントローラのような、コンポーネントを含む。よって、制御システムは、低電圧コンポーネントへの電力供給のための低電力電圧サプライ(例えば、3-5V)を含む。加えて、低電圧コンポーネントを高電圧から保護するため、制御システムは、コンポーネントに信号の交換を許容しながら、低電圧コンポーネントを高電圧コンポーネントから分離させる電子部品を含む。
【0056】
本明細書で使用された、フレーズA、B、およびCの少なくとも1つは、非排他論理ORを使用した、論理(A OR B OR C)を意味するように構成され、”少なくとも1つのA、少なくとも1つのB、および少なくとも1つのC”の意味するように構成されない。
【0057】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であり、そのため、本開示の中身から乖離しない変形は、本開示の範囲内であることを意図される。そのような変形は、本開示の精神および範囲からの乖離として見なされるべきではない。
[1]
ヒーターを作動させるための制御システムであって、
測定された前記ヒーターの性能の特徴、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定し、
前記ヒーターにて測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定し、
前記ヒーターに選択された電力レベルを適用する、ように構成されたコントローラを具備し、
前記選択された電力レベルは、前記動作電力レベルおよび前記ベークアウト電力レベルのうちより低い電力レベルである、制御システム。
[2]
前記ヒーターの前記性能の特徴を測定するように構成された第1のセンサと、
前記漏電流を測定するように構成された第2のセンサとをさらに具備する[1]の制御システム。
[3]
前記第1のセンサは、前記性能の特徴として前記ヒーターの動作電流を測定するための分離された電流センサである[2]の制御システム。
[4]
前記ヒーターは、二線式ヒーターであり、
前記コントローラは、前記ヒーターの抵抗に基づいて前記性能の特徴として動作電流を計算するように構成される[1]の制御システム。
[5]
前記ヒーターに電気的に結合され、前記ヒーターに前記選択された電力レベルを適用するように構成された電力レギュレータ回路をさらに具備する[1]の制御システム。
[6]
前記電力レギュレータ回路は、前記ヒーターに調節可能な電力を供給するように前記コントローラによって作動可能な電力スイッチを含む[5]の制御システム。
[7]
前記電力制御アルゴリズムおよび前記湿気制御アルゴリズムは、PID(Proportional-Integral-Derivative Control)制御として定義される[1]の制御システム。
[8]
[1]の前記制御システムと、
前記制御システムと電気的に結合され、ワークピースを加熱するための加熱素子と、を具備し、
前記制御システムは、前記加熱素子に望まれた前記電力レベルを適用するように構成される、熱システム。
[9]
前記ヒーターは、二線式ヒーターであり、
前記制御システムの前記コントローラは、前記ヒーターの抵抗に基づいて前記性能の特徴として動作電流を測定するように構成される[8]のシステム。
[10]
前記ヒーターは、層状ヒーター、筒状ヒーター、カートリッジヒーター、ポリマーヒーター、およびフレキシブルヒーターから成るグループから選択される[8]のシステム。
[11]
ヒーターを制御するための方法であって、
前記ヒーターの性能の特徴を測定することと、
漏電流を測定することと、
前記測定された性能の特徴、電力セットポイント、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定することと、
前記測定された漏電流、漏電流閾値、および湿気制御アルゴリズムに基づいてベークアウト電力レベルを決定することと、
選択された電力レベルとして前記動作電力レベルまたは前記ベークアウト電力レベルのうちの一つを前記ヒーターに適用することと、を具備する方法。
[12]
前記選択された電力レベルとして前記動作電力レベルおよびベークアウト電力レベルの中からより低い電力レベルを選択することとをさらに具備する[11]の方法。
[13]
前記性能の特徴は、前記ヒーター内の電流の量である[11]の方法。
[14]
前記ヒーターは、層状ヒーター、筒状ヒーター、カートリッジヒーター、ポリマーヒーター、およびフレキシブルヒーターから成るグループから選択される[11]の方法。
[15]
前記電力制御アルゴリズムおよび前記湿気制御アルゴリズムは、PID制御(Proportional-Integral-Derivative Control)として定義される[11]の方法。