(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】人工装具ライナー作製方法及び人工装具ライナー
(51)【国際特許分類】
A61F 2/80 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
A61F2/80
(21)【出願番号】P 2021516873
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2019073754
(87)【国際公開番号】W WO2020069817
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】102019114458.2
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018124516.5
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ベルテルス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フィンケ、ラース・ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルマン、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ベッツ、セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ビーアバウム、サラ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルバルト、ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】バウゼ、イングリッド
(72)【発明者】
【氏名】ブリュンイェス、ルーカス
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06358453(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第110074904(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067918(US,A1)
【文献】特表2018-500894(JP,A)
【文献】特許第4636770(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167312(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0057682(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0119777(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0095571(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0188251(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143519(US,A1)
【文献】Andrea Vitali et al.,Design and additive manufacturing of lower limb prosthetic socket,Proceedings of the ASME 2017 International Mechanical Engineering Congress & Exposition IMECE,2017年,IMECE2017-71494,pp.1-7,https://doi.org/10.1115/IMECE2017-71494
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
B33Y 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴下のように切断断端に装着される人工装具ライナー(2)を作製する方法であって、前記
人工装具ライナー(2)が、少なくとも部分的に付加的作製
工程を用いて少なくとも1つの作製材料(12)から作製され、前記作製材料が流動状態で支持材料の中へ挿入され、その後に硬化
されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記作製材料(12)が、前記硬化中に前記支持材料により支えられる及び/又は作業空間内にその位置で保持され
、自己硬化性材料又は温度上昇により硬化し得る材料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作製材料(12)が少なくとも2つの成分から構成され
、前記少なくとも2つの成分の混合比が、前記付加的作製
工程を実行する間に調節され得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記作製材料(12)が、前記硬化後に、その値が混合比に依存するショア硬さを有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記付加的作製
工程において少なくとも2つの異なる作製材料(12)が
、使用されることを特徴とする、請求項1から4のうちの1項に記載の方法。
【請求項6】
前記付加的作製
工程の間に前記少なくとも1つの作製材料(12)が、前記
人工装具ライナー(2)の別個に作製された部品と結合されることを特徴とする、請求項1から5のうちの1項に記載の方法。
【請求項7】
前記付加的作製
工程において前記人工
装具ライナー(2)の壁厚が連続的に又は離散的な工程で変化され得るので、少なくとも1つの膨らみ、深み、厚み、先細り及び/又は抜け止めが作製されることを特徴とする、請求項1から6のうちの1項に記載の方法。
【請求項8】
前記付加的作製
工程を用いて、少なくとも1つの中空空間を備えた人工
装具ライナー(2)が生成されることを特徴とする、請求項1から7のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの中空空間が、前記付加的作製
工程の間に、少なくとも1つの充填材料で少なくとも部分的に
、充填されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記付加的作製
工程を用いて前記少なくとも1つの作製材料(12)から、少なくとも1つの空圧要素及び/又は少なくとも1つの油圧要素
、少なくとも1つの封止リップ(16)、少なくとも1つの弁及び/又は少なくとも1つのポンプが作製され、前記
空圧要素又は前記油圧要素が
、前記人工
装具ライナー(2)の別の部品と一体的に作製されることを特徴とする、請求項1から9のうちの1項に記載の方法。
【請求項11】
計測データが
、患者から検出され、電気的及び/又は電子的な制御
システムに利用可能にされ、前記制御
システムが、少なくと
も前記計測データに基づいて前記付加的作製
工程を制御するように
構成されていることを特徴とする、請求項1から10のうちの1項に記載の方法。
【請求項12】
前記人工
装具ライナー(2)が、人工装具
ソケット(80)内で使用するための人工装具ライナー(2)であり、前記人工装具
ソケット(80)が、遠位端(88)と近位縁(82)とを備えた収容空間(84)を有し、本方法が以下の工程、
a) 前記人工装具
ソケット(80)の高さ輪郭の曲線に対応して又は切断断端の利用可能な周知の解剖学的データに基づいて、前記人工装具ライナー(2)の外側(76)に封止リップ曲線を
決定することと、
b) 少なくとも1つの
前記付加的作製
工程によって、前記
決定された封止リップ曲線に沿って前記人工装具ライナー(2)の前記外側(76)に封止リップ(16)を配置することと
を有することを特徴とする、請求項1から11のうちの1項に記載の方法。
【請求項13】
前記封止リップ(16)が、前記人工装具
ソケット(80)の前記近位縁(82)に対して遠位方向にずらして
、前記人工装具ライナー(2)に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記人工装具
ソケット(80)の高さ輪郭が光学的に検出され、デジタル3次元モデルが作成され、前記封止リップ曲線が、前記検出された高さ輪郭に応じて
決定されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工補整具、特に人工装具ライナーを作製する方法に関する。本発明はさらに、そのような方法に従って作製される又は作製可能な人工補整具に関する。
【0002】
人工補整具は、本件では特に整形器具及び人工装具並びにそれらの構成要素と解釈される。また矯正靴、靴中敷及び類似の器具も人工補整具とみなされる。
【背景技術】
【0003】
人工補整具は古くから従来技術で知られており、様々な使用事例に対して数多くの様々な形で作製され、販売されている。その際、各々の人工補整具の様々な要求概要を考慮に入れている多数の様々な材料が使用される。つまり例えば足用人工装具のために人工装具ソケットが作製され、その人工装具ソケットへ切断断端、例えば大腿断端が挿入される。人工装具ソケットは、部分的に巨大な負荷に耐えることができるように、且つ人工装具の装着者に対して確かなしっかり感と同時に可能な限り高い装着の心地よさとを保証することができるように十分な機械的安定性及び強度を有していなければならない。さらに人工装具ソケットは正味重量が可能な限り軽くなければならず、それにより心地よさがさらに向上する。今日そのような人工装具ソケットは大方、軽い正味重量で極めて高い機械的強度を有する炭素繊維複合材料から作製される。人工装具ソケットと切断断端との間のインターフェースとして、しばしば、緩衝性及び弾性材料、例えばシリコーン又はポリウレタンから作製された人工装具ライナーが使用される。この人工装具ライナーは、切断断端が人工装具ライナーとともに人工装具ソケットの中へ導入される前に、靴下のように切断断端の上に着けられる。
【0004】
今日、人工装具ソケットは一般に患者に対して個別に作製され、複数の周知の方法のうちの1つにおいて切断断端から型を取られるのに対し、人工装具ライナーは、その弾性に基づいて個別の条件に整合されるので、一般に標準寸法で作製される。
【0005】
人工装具自体は断端に配置され、その断端に固定される。その固定のために様々なシステムが存在する。固定システムは、いわゆる真空ソケット技術を想定しており、押し当てられた状態において断端と人工装具ソケット内壁との間の容積空間が真空に引かれる。密閉処理及び衝撃緩和のために、その断端に人工装具ライナーが配置されてもよく、その人工装具ライナーは一般的に閉じた遠位端と近位挿入口とを有し、断端を包囲する。人工装具ライナーの外側と人工装具ソケットの内側との間には、人工装具ライナーを当てがわれた断端の導入により容積空間が形成され、その容積空間は真空に引かれ、それにより、人工装具ソケットと人工装具ライナーとの間に圧着結合が生じる。密着力を介して人工装具ライナーが人工装具ソケットに密着するので、人工装具ソケット及び人工装具ソケットに固定された構成部品は、患者の断端に固定されている。人工装具ソケットを持続的に固定するために、人工装具ライナーと人工装具ソケットとの間の容積空間を大気に対して密閉することが必要である。そのために、人工装具ソケットの近位縁の上に着けられて人工装具ライナー又は断端の外側に隣接する、いわゆるキャップ又はカバーが設けられているので、人工装具ソケットの近位縁と人工装具ライナー又は断端との間の隙間には空気が入り込むことができない。容積空間を密閉するために、カバー又はキャップの代わりに封止リップがライナーの外側に又は人工装具ソケットの内側に配置又は固定されてもよい。
【0006】
人工装具ソケットは一般に、追加の人工装具構成部品を人工装具ソケットに配置し、切断断端の軟部要素に対する支持機能を提供するのに十分な安定性及び強度を有するように、形状安定性材料から構成される。その際、人工装具ソケットの近位縁は、切断断端を確実に収容することができるように可能な限り高く引き上げられて形成されている。下腿ソケットでは、近位縁は例えば内側及び外側で膝顆骨まで突き出ており、脛骨領域及び膝窩領域で深く切り抜かれている。類似の構造が前腕ソケットで得られる。大腿ソケットでは、横方向の安定性を与えるために外側の高まりが形成されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明には根底に、多数の異なる人工補整具に対して改良された作製方法を示すという課題がある。
【0008】
本発明は、人工補整具、特に人工装具ライナーを作製する方法により、提起された課題を解決する。その方法は、人工補整具が少なくとも部分的に付加的作製工程を用いて少なくとも1つの作製材料から作製され、その作製材料が流動性の処理状態で支持材料の中へ挿入され、その後に硬化することを特徴とする。
【0009】
様々な3次元印刷方法と併せて、例えばMITにより開発され、キーワード「高速液体印刷(Rapid Liquid Printing)」で公開された3次元印刷方法も、付加的作製工程に属する。その際、作製されるべき物体は、ゲル状懸濁液で、又は作製材料とは化学的に反応せずに、この作製材料がまだ硬化されていない又は十分に架橋されていない間にもっぱら作製材料を機械的に支えるのに用いられるにすぎない別の物質で充たされている容器内に生成される。ゲル懸濁液はこの場合、支持材料である。これらの方法ではいずれも、作製材料は流動形態で、例えば液状で処理される。例えば「高速液体印刷」では、本件では両方とも流動的とみなされる液状又はゲル状形態の作製材料は、位置決め装置を用いて、例えば3次元で移動可能なノズルを用いてゲル懸濁液中へ所望の位置で挿入される。作製材料とゲル懸濁液の支持材料との間の密度比及び支持材料の高い粘性に基づいて、挿入された作製材料はそれぞれの位置に留まっている。このようにして3次元の物体が、ゲル懸濁液の中へ作製材料を所望の形で各々の所望の位置に挿入し、次にその場で架橋する、凝固させる又は硬化させることにより「印刷され」得る。以下に硬化について述べる場合、同時にまた架橋又は別の反応又は作製材料の特性の変更も含まれており、それは、形状安定性を高める、又は人工補整具若しくは部品の所望の状態を得ることをもたらす。特に柔軟性又は弾性材料では、柔軟性又は弾性は硬化後、引き続き保たれたままである。架橋は、本発明の趣旨では硬化と解釈される。従来の3次元印刷方法と比べた利点は、とりわけ、市場で入手可能な常温で架橋するシリコーンを含む数多くの可能な作製材料にある。別の利点は、ゲル懸濁液を用いたプロセスに基づいて、3次元物体を直接、プリンタの作業空間内に配置し、層状に積み上げる必要がないことが可能であることにある。さらに本方法により、作製速度を高め、それにより作製費用を低くすることができる。
【0010】
作製材料は、例えばシリコーン、ポリウレタン、さらに熱可塑性材料、注型用樹脂又は他の合成樹脂である。作製材料については単に、その作製材料が塗布可能な形で、つまり流動状で、例えば液状で又は別の方法で射出可能に処理され、硬化し得ることが重要であるにすぎない。
【0011】
このようにして例えば人工装具ライナー、義手グローブ、インソール及び他の人工補整具は従来のシリコーンから容易に、迅速に及び場合により個別に成形して作製される。熱可塑性材料が使用される場合、硬化後に現れる機械的安定性及び硬さは、この方法により、例えば人工装具ソケット、関節保護具、又は例えば人工補整具用の副木のような補強要素をこのように作製するのに十分であり得る。また人工装具外装及び人工装具装飾もこのようにして作製され得る。さらに試作人工装具、例えば試作ソケット又は試作装飾も作製され得る。
【0012】
付加的作製工程を使用することにより、例えば人工装具装飾、特に足包装、踝カバー、又は例えばソケット接続具を備えた若しくは備えていない個別に作製された膝蓋骨若しくは個別の膝キャップをとりわけ容易に作製することができる。そのような人工補整具はこのようにして、例えば防水性に及び/又はある機能性を備えて、例えば義手の手首関節領域内の蛇腹構造により高い運動性を備えて形成され得る。
【0013】
好ましい形態では、作製材料は、硬化中に支持材料により支えられる及び/又は作業空間内にその位置で保持される。作製材料は、好ましくは自己硬化性材料又は温度上昇により硬化し得る材料である。自己硬化性材料を使用する際、別の硬化手段、例えば電磁波照射又は化学添加物を用いて働きかける必要がないことは有利である。これらの利点は、温度上昇により硬化し得る材料を使用することによっても得られ、その材料は、例えば熱線を付加することにより硬化する。
【0014】
支持材料の中に流動状態で挿入される作製材料に加えて、繊維、特に連続繊維も共に挿入され得る。これらの繊維は作製材料と同時に塗布され、特にこの作製材料により包囲され得る。それらの繊維は、好ましくは作製されるべき部品を補強する炭素繊維を含む又はそれらの炭素繊維である。
【0015】
好ましくは、作製材料は少なくとも2つの成分から構成される。好ましくは、少なくとも2つの成分の混合比は互いに対して調節され得る。特に好ましくはその混合比は、付加的作製工程を実行する間に調節され得る。この形態により、例えばそれ自体でそれぞれ流動状態にある複数の成分の作製材料が塗布され得る。その際、各々の成分自体は好ましくは、硬化しない又は極めて緩やかに硬化するように構成されている。しかしながら2つの成分が相互に接触する場合、化学反応が起こり、それにより、好ましくは迅速に硬化する本来の作製材料が生じる。混合比を変化させることにより、このようにして作製された作製材料の物理的及び/又は化学的特性が左右されるので、このようにして作製された人工補整具の部分は、ほぼ無段階で異なる物理的特性を有し、対応する勾配を含み得る。
【0016】
好ましい形態では、作製材料は例えば、硬化後に、その値が混合比に依存するショア硬さを有するように形成されている。このようにして、1つの方法工程において高硬度領域と低硬度領域とが横に直接並ぶように互いに対して一体的に作製され、装置を変更する又は使用材料を変更する必要はない。少なくとも2つの成分の混合比を変更するだけで十分であり、それは付加的作製工程の間に行われ得る。
【0017】
このようにして好ましくは材料パラメータ又は作製材料の物理的特性の連続的な変化が、混合比を連続的に変化させることにより達成され得る。例えば、膝窩の領域において他の領域よりも明らかに弾性的に作製されている下腿ライナーが考えられ得る。その代わりに又はそれに加えて、従来技術の作製方法や例えばそのために必要とされる金型製作を用いて作製することができない又は多額を費やしてのみ作製することができる、壁厚に関して複雑な勾配を有する部品が作製される。
【0018】
好ましい形態では、付加的作製工程において少なくとも2つの異なる作製材料が使用される。これは好ましくは同時に行われる。2つの異なる作製材料はその際、少なくとも1つの特性の点で異なる。つまり例えば、所望の光学的効果及び美容上の印象を作り出すために、作製材料が異なる色で使用され得る。例えば着色された作製材料を使用することにより、また標識も、作製されるべき人工補整具に若しくは人工補整具内に、又は付加的作製工程を用いて少なくとも部分的に作製される人工補整具の少なくとも1つの部品に付与される。これは、例えば人工補整具が患者の身体に所定の方位で装着されることになる場合に有意である。例えば人工装具ライナーが、例えば筋電信号を切断断端から取り出すために又は切断断端の筋肉を電気信号で刺激するために又はプラズマ処理のために、組込型の電極を備えている場合、電極が各々の切断断端の正しい位置に再現可能に配置されることが重要である。これは当然、患者のまだ存在する身体の上に着けられる整形器具に配置されている電極にも当てはまる。これらの事例において標識を使用することにより、人工補整具、例えば人工装具ライナーを身体部分に正しい方位で押し当てることが患者にとって容易になり得る。これらの標識は、本発明のこの実施例による方法を用いて、付加的作製工程の作製材料を別の色に着色して、標識が配置される異なる位置に使用することにより、とりわけ容易に作製される。
【0019】
着色された2つの異なる作製材料を使用することにより、さらに摩耗標識又は破損標識が作製される。例えば無傷の人工補整具で第1の色の作製材料のみが外から見える場合、第2の色が現れることにより、例えば摩耗部分を交換しなければならない又は人工補整具が欠陥を有することについての明確な信号が与えられる。
【0020】
少なくとも2つの異なる作製材料は、好ましくはそれらの電気的導通性の点で異なる。例えば通常のシリコーン又はポリウレタンは電気的に絶縁性であるが、そのシリコーン又はポリウレタンは相応の添加物、例えば煤粒子又は金属屑を添加することにより電気的に導通性になり得る。事前公開されていない独国特許公報第102017126465号から、その基体が電気絶縁材料から構成されている、対応する人工補整具が知られている。その基体は、例えば付加的作製工程を用いて第1の作製材料から作製され得る。その第1の作製材料内には、導電性エラストマーから成る芯を有する導電線があり、その導電線は電気絶縁膜を有する。例えばパリレン膜の形態のこの電気絶縁膜は、導電性エラストマーから成る導体と基体材料との間の接着剤として用いられる。しかしながら本発明の形態では、基体材料は第1の作製材料の形態で、導電線の導電性エラストマー材料は第2の作製材料の形態で好ましくは同時に処理され得る。好ましい形態では、導電線の材料も基体材料も、つまりここに記載される両方の作製材料はそれぞれシリコーンである。このようにして、記載される実施例において基体を形成する第1の作製材料の弾性特性は、導電線により影響を受けない。2つの作製材料が同時に硬化するので、接着剤層は不必要である。このようにして、2つの作製材料は最適に結合することになる。
【0021】
本明細書で記載される方法により、従って少なくとも1つの導電線が、しかしながら好ましくは導電線のうちの2つ以上が人工補整具の作製材料内に配置され得る。
【0022】
その代わりに又はそれに加えて、使用される作製材料は、硬化後に例えばそれらの硬さ及び/又はそれらの弾性の点で異なる。それらの異なる作製材料は、人工補整具の異なる位置に投入されるので、例えば人工装具ライナーの場合、切断断端の外側に極めて近い骨が位置決めされて特に緩衝を必要とする部分が、とりわけ軟らかい緩衝性材料で被覆され得る。人工装具ライナーが、例えば下腿切断患者用の人工装具ライナーである場合、膝窩の領域は、数倍の延びによる強い機械的負荷に対応するように特に弾力性のある作製材料で作製され得る。さらに、例えば人工装具ライナーの縦剛性を高め、しかし同時に横弾性を保持するために、高弾性の作製材料内で低弾性の作製材料を使用することにより窪みを作り出すことができる。 さらに付加的作製工程により、例えば独国特許公報第102017106903号に記載され、人工装具ライナーに使用されるような、縦横膨張性の構造を作り出すことができる。縦横膨張性材料は負のポアソン比を有する。これは、ある方向への材料の伸張が、通常の材料の場合とは異なり、この方向に垂直にある第2の方向での収縮をもたらさず、この第2の方向でも伸張を結果としてもたらすことを意味する。特に2次元の縦横膨張性材料は、有利にはライナー内で使用され得る。そのために必要な構造は、本明細書に記載される作製方法によりとりわけ容易に且つ費用面で有利に、その上多くの部品点数でも作製される。
【0023】
異なる作製材料が、人工補整具の異なる領域又は付加的作製工程により作製される人工補整具の部品の異なる領域に対して使用される場合、異なる作製材料は逐次的にも使用され得る。付加的作製工程を実行するための装置はこの場合、好ましくは複数の流出口を備えており、それらの流出口は好ましくは異なる作製材料用の容器と結合されているので、異なる作製材料が直接逐次的に及び/又は同時に使用され得る。
【0024】
好ましくは、付加的作製工程の間に少なくとも1つの作製材料が、人工補整具の別個に作製された部品と結合される。そのために、例えば結合キャップ、別の材料、例えば金属から作製された結合アダプタ、電極、バッテリーホルダ又は別の要素であってもよい別個に作製された部品は、付加的作製工程がその内部で実行される装置内に及び支持材料内に配置される。「高速液体印刷」の方法では、別個に作製された各々の部品は従ってゲル懸濁液内に配置される。付加的作製工程用の作製材料は付加的作製工程の間に、それぞれ別個に作製された部品と接触するように位置決めされるので、作製材料の硬化の際に別個に作製された部品と作製材料との間での物質接合に至る。当然、作製材料はまた、その代わりに又はそれに加えて、作製材料が硬化された後に形状接合に至るようにも配置され得る。
【0025】
代わりに又は追加的に、個別に作製された部品を、既に印刷されてはいるがまだ硬化されていない作製材料の中へ挿入することができる。つまり、例えば記載される本方法に従って人工装具ライナーが作製された後に、そのライナーの壁の中にケーブル又は補強繊維等を配置することができ、次にそれらのケーブル又は補強繊維は、硬化された作製材料と物質接合で及び又は形状接合で結合される。
【0026】
人工装具ライナーは多くの場合、遠位領域にいわゆるライナーキャップを備えている。そのライナーキャップを用いて、人工装具ソケットへの機械的結合が作り出され得る。また電子部品、センサ、空圧式、油圧式又はその他の要素もライナーキャップ内に配置されてもよい。ライナーキャップは別個に作製され、別個に作製された部品として、付加的作製工程の間に作製材料と結合され得る。同じことが、電子部品、例えばセンサ、電極又は他の要素に対して当てはまる。またこれらも、別個に作製された部品とみなされ得る。
【0027】
本方法の好ましい形態では、少なくとも1つの物体がその支持材料中へ挿入され、付加的作製工程の間に作製材料がその物体に印刷される。作製材料は従って、支持材料中へ挿入された物体と接触することになるように流動状態で支持材料中へ挿入される。その際、作製材料を硬化する時に、挿入済みの物体と硬化される作製材料との間に好ましくは物質接合及び/又は形状接合が生じる。つまり例えば、人工補整具の弾性材料から作製された部分、例えば人工装具ソケットを支持材料中へ挿入し、次にパッド及び/又はクッションを付加的作製工程で印刷することができる。パッド又はクッションはその際、少なくとも部分的に、しかしながら好ましくは完全に作製材料から作製される。この作製材料は、同様に支持材料内に配置されている人工装具ソケットと接触することになるように、支持材料の中へ流動状態で挿入される。
【0028】
この方法は、特に2つの部品の間の正確な調整が必要である又は望まれる場合に有利である。つまり例えば1つの人工装具装飾、要するに本来の人工装具を取り囲む合成樹脂外装が、人工装具に直接印刷され得る。つまり例えば義手又は別の人工補整具が、支持材料の中へ挿入され得る、例えば沈められ得る。人工補整具の付加的作製工程で作製された部分は、挿入された部品に直接印刷され得る。付加的作製工程の途中で、機能性、例えば個別の緩衝特性も作り出され得る。義足及び/又は本来の義足を包囲する義足外装は、異なる緩衝特性が生じるように、例えば異なる作製材料から異なる位置に作製され得る。
【0029】
さらに特に人工装具ライナーは、これらの人工補整具ばかりではないが、多くの場合、繊維層又は他の繊維状の部品を備えている。この場合、この繊維要素も別個に作製された部品とみなされ、付加的作製工程の間に作製材料と結合され得る。
【0030】
整形器具は多くの場合、例えば関節を支える又は帯及び腱の負荷を軽減するために、所定の身体位置に圧力を加える役割をする。そのために好ましくは圧子が使用され、それらの圧子はシリコーンから作製されていることが多く、それらの圧子により整形器具が、例えば追加のベルトを締めた後に圧力が所望の位置に加わるように装着者の身体に配置される。またそのような圧子は、本明細書に記載される種類の方法により作製材料から作製され得る。その際、作製材料は、好ましくは別個に作製された部品、つまり例えば繊維から構成される整形器具の基体と結合される。
【0031】
既に説明されたように、作製材料と結合することになる部品及び要素は、作製材料が流動状態で塗布される際に既に支持材料の中へ挿入されていてもよい。しかしながらこれは、例えば繊維のような柔軟要素の場合は限定的にのみ可能である。なぜなら、これらの柔軟要素は形状安定性を有していない又は僅かにのみ有するからである。従って、ライナー又は別の人工補整具の部品を、閉じた容積空間として作製することが有利であるとわかった。容積空間の内部には支持材料がある。これらの閉じて形成されたライナー上には、閉じ込められた支持材料により引き起こされる抵抗のために、とりわけ容易に繊維層を付与することができ、型又は工具を作製する必要はない。繊維層が付与されている場合、ライナーは近位端で開かれ、含まれた支持材料が取り除かれ得る。付与される繊維層は事前に例えば貼り付けられ得る。繊維又は他の材料を付与するのに加えて又はその代わりに、所定の状況において、別の部品、例えば人工装具ソケットを、ライナー上で直接、型取りすることは有利である。またそのために、ライナーが負荷に抵抗し得ることは有利であり、それは特に上述の方法で達成され得る。
【0032】
閉じ込められた支持材料の効果を強化するために、特に水性支持材料の場合、支持材料がその内部に閉じ込められている、人工補整具の閉じて形成された部分が凍結されることにより、支持材料により引き起こされる抵抗が強化され得る。それにより支持材料は硬くなり、繊維層の付与、特に貼付の際に作用する力を受け止めることができ、好ましくは依然として閉ざされている冷却され凍結されたライナーが変形することはない。人工補整具の付加的作製工程で作製された部分の閉じて形成された異なる形態の代わりに、特に弁を備えた又は備えていない流入口及び/又は流出口が存在してもよく、それを通じて、例えば含まれた支持材料を、人工補整具のそうでない場合は閉ざされた部分から除去することができる。この部分の高い形状安定性が望まれる場合、例えば流入と関連する配管を通じて、人工補整具のそうでない場合は閉ざされた部分の中へ媒体、例えば空気を導入して、このようにして必要とされる圧力を上昇させることができる。繊維層を付与した後に、人工補整具の閉ざされた部分を開き、場合によっては含まれる支持材料を除去することができる。
【0033】
その代わりに又はそれに加えて、補強要素が、人工補整具のそうでない場合は閉ざされた部分の中へ挿入され得る。それらの補強要素は、流体を容積空間から除去若しくは排出することにより特に互いに対して接触することになるように、又はその除去若しくは排出により少なくともそれらの接触を強化するように形成されている。極めて簡易な実施例では、補強要素は粒状物質、例えば砂であり得る。この事例において例えば空気が、補強要素、つまり粒状物質で充填された容積空間から除去又は排出される場合、個別の補強要素が接触することになる、又は互いに対するこの接触を補強する。それにより、包囲された及び/又は含まれた人工補整具を支える強固な形が形成され得る。
【0034】
付加的作製工程では、人工補整具の壁厚を連続的に又は離散的な工程で変化させることができるので、少なくとも1つの膨らみ、深み、厚み、先細り及び/又は抜け止めが作製される。
【0035】
有利には、付加的作製工程で、少なくとも1つの中空空間を有する人工補整具及び/又は部品が作製される。その場合、基本的に、作製材料を用いてゲル状懸濁液の領域を転写することにより中空空間を作製することが設定されている。しかし代わりに又は追加的に、最初に中実材としての作製材料を取り出し、次にその作製材料にまだ液体状態において、対応する中空空間を形作る補助材を投入することにより中空空間が作製される。その際、補助材は気体であっても液体であってもよく、例えばまた、使用されるゲル状懸濁液であってもよく、部品作製後にこの部品内に留まって、例えばエアクッションを作り出し得る、又は硬化済みの部品から再び取り除かれ得る。中空空間、特に上述のように作製された中空空間は様々な特性を有し、様々な課題を満たし得る。この中空空間は閉じた中空空間であってもよく、開口又は抜き打ち穴を有してもよい。つまり例えば、穴を打ち抜かれた構造体を作製することができ、その構造体は例えば蜂の巣状に形成されており、機械的強度に役立つ。
【0036】
しかしながら少なくとも1つの中空空間が、仕切られた中空空間である場合、この中空空間は例えばエアクッションとして、人工補整具の装着者の身体の特に敏感な場所への衝撃を緩和し、このようにして装着の心地よさを向上させるのに使用され得る。このようにして作製されたエアクッションは、空気をエアクッション中へ入るようにポンプで注入する又はそのエアクッションから外へ排出するために、例えば接続端子とともに形成されてもよい。従って、エアクッション内の圧力を、場合によってはエアクッションの膨張も調節して、個別の要求に整合させることができる。つまり例えば切断断端の体積の揺らぎが考慮され得る。エアクッションの身体と向き合う側に例えば電極がある場合、接触圧を用いて電極が装着者の皮膚に対して押し付けられ、その接触圧は、そのような膨らみ得るエアクッションにより調節され、最適化され得る。
【0037】
そのようなエアクッションを用いて、さらに広範囲に及び/又は領域に依存して、例えば火傷治療の際に瘢痕組織を治療するのに必要且つ有利な圧力を加えることができる。作製された中空空間は、例えば、人工補整具と接触する身体部分を冷却するための冷媒を含む経路の形で存在してもよい。また薬物輸送のためにも、付加的作製工程において作製材料から中空空間として作製されるような経路が使用され得る。
【0038】
その代わりに又はそれに加えて、少なくとも1つの中空空間は、付加的作製工程の間に少なくとも1つの充填材料で少なくとも部分的に、しかしながら好ましくは完全に充たされ得る。その際、好ましくは少なくとも2つの中空空間が異なる充填材料で充填される。特に少なくとも2つの中空空間の場合、好ましくは既に付加的作製工程の間に中空空間の中へ導入される2つの異なる充填材料は、互いに対して化学的に反応する異なる成分、例えばシリコーンから構成され得る。そのようなa-b-シリコーンは従来技術から知られており、2つの成分が互いに対して接触するとすぐに材料の硬化又は架橋又は安定化に至る。それらのシリコーンは、例えば標準寸法のライナーが使用される場合に、例えば切断断端と人工装具ライナーとの間に生じる中空空間を充たし、ライナーの内輪郭を個別に人工補整具の装着者の体形に整合させるのに使用され得る。その混合されてはいるがまだ液状の物質はその際、既に硬化された包被内に密閉されて液状の中間層として、断端と直接接触することなく断端を包み込む。その液状物質は各々の断端の幾何学形状をとり、この形で硬化する。
【0039】
そのような方法を実行するための装置は従って、異なる材料がそれを通じて出力され得る、少なくとも3つの出力ノズルを備えている。その1つの出力ノズルから作製材料が所望の形に、例えばゲル母材の中へ挿入される間、異なる充填材料が他の出力ノズルから、そのようにして生じた中空空間の中へ導入される。2つの充填材料を後に互いに対して反応させなければならない場合、単に、2つの中空空間の間にある結合壁を引き離しさえすればよい。
【0040】
その代わりに又はそれに加えて、中空空間は作製材料の硬化後にはじめて充填される。例えば事前公開されていない独国特許公報第102018111442号から、中空空間の壁がそれから構成される、各々の材料の硬化後に充填材料で充填される中空空間を有する人工補整具、特に人工装具ライナーが知られている。それにより機械的安定性がここで高められ得るので、例えば支持装置又は支持構造体が人工補整具の基体内に作製され得る。本明細書に記載される方法の対応する形態により、人工補整具の複数の部品も付加的作製工程により少なくとも1つの作製材料から作製することができる。それらの部品はそれぞれ、例えばホース又はトンネルの形の中空空間を備えており、従って相互に結合され得るので、これらの異なる中空空間は互いに対して接触し、特に流体技術的に互いに結合されている。このようにして、中空空間は一緒に、各々の構造化材料で充填される。当然、他の材料、例えば、人工装具を温める又は冷やすために、またこのようにして人工補整具の装着者に対する装着の心地よさを高めるために冷却材料又は放熱性材料も導入することができる。
【0041】
好ましい形態では、付加的作製工程において使用される作製材料は、最終的に硬化されている場合、弾性材料である。特にこの場合、しかし他の作製材料の場合でも、付加的作製工程の間に作製される中空空間を発泡材で充たすことは有利である。そのために、発泡可能な材料が、仕上げられた中空空間の中へ挿入され、その材料は次に発泡し、中空空間を好ましくは完全に充たす。そのために原理上、従来技術から周知の発泡可能な各材料が使用されており、その際、特に複数成分の材料が使用される。その際、発泡させるべき材料の少なくとも2つの成分が、中空空間の中へ挿入される。それらの成分は次に相互に反応し、発泡し始める。
【0042】
人工補整具が、例えば真空ライナー、つまり、人工装具ソケットを負圧により、つまり人工装具ライナーと人工装具ソケットとの間の中間空間を真空に引くことにより人工装具ライナーに保持するような人工装具ライナーである場合、この場合はライナー及び/又は人工装具ソケットであり得る人工補整具に、真空経路の意味での中空空間を組み込むことにより、人工装具ソケットと人工装具ライナーとの間の中間空間内に可能な限り均等に負圧を生じさせることができることは有利である。
【0043】
有利には、付加的作製工程を用いて少なくとも1つの作製材料から、少なくとも1つの空圧要素及び/又は少なくとも1つの油圧要素、好ましくは少なくとも1つの容積貯留層、少なくとも1つの封止リップ、少なくとも1つの弁及び/又は少なくとも1つのポンプが作製される。その際、油圧要素及び/又は空圧要素は、好ましくは人工補整具の別の部品と一体的に作製される。そのような部品は一連の人工補整具において使用され、このようにして容易に及び費用面で有利に並びに最適に位置決めされて仕上げられる。例えば真空ライナーにおいて、人工装具ライナーと人工装具ソケットとの間の真空に引かれるべき中間空間を外部に対して気密に密閉するのに使用される封止リップは、一般に人工装具ライナーの外側に配置される。また複数の封止リップも人工装具ライナーの外側及び/又は内側に配置され得る。その際、本明細書に記載される方法を用いて、付加的作製工程においてライナー全体を作製することができ、その際、少なくとも1つの作製材料はライナーの材料である。その材料は、例えばシリコーン又はポリウレタンであり得る。この場合、封止リップは付加的作製工程の間に残りのライナーと同時に作製され得るので、物質接合により引き起こされる、封止リップとライナーの基体との間の最適な密着が得られる。その代わりに、封止リップは、また後段でも、最終的に別個に作製されたライナーの基体に配置され得る。それは特に、標準ライナーは患者治療のために使用されるが、ライナーの外側の封止リップの最適位置が、例えば切断断端の長さに依存して、従って人工補整具の装着者に対して個別に整合されなければならない場合に有利である。個別の整合は付加的作製工程により行われ得る。
【0044】
一連の人工装具ライナーでは、例えばリード弁又は一方向弁を備えた空気管をライナー内で使用して、歩行の際に生じる、人工装具ライナーと人工装具ソケットとの間の持ち上げ運動を使用し、容積空間をポンプ排気し、真空に引く。これらの空圧要素は、本明細書に記載される方法を用いて、少なくとも1つの作製材料から作製可能なライナーの基体の中へ組み込まれ得る。米国特許公開公報第2017/0143519A1は、一方向弁と、流路を形成する流し込み済みの空気透過性材料とを備えた人工装具ライナーに関する。ポンプ室は、外ライナーと内ライナーとの間に投入され得る。
【0045】
封止リップと同様に、例えば人工補整具の2つの部品を互いに対して機械的に掛け留めるための掛留要素が、付加的作製工程により、特に高速液体印刷方法により、別個に又は同時に作製された部品に、例えばライナーの基体に付くように成形され得る。高速液体印刷方法は、例えば米国特許公開公報第2018-281295A1号に記載されている。
【0046】
好ましい形態では、本方法においてまず計測データが患者から検出され、計測データは、電気的及び/又は電子的な制御に利用可能にされる。この制御は、少なくともまたこれらの計測データに基づいて付加的作製工程を制御するように整えられている。これは、特に、患者に個別に整合される人工補整具に対して有利である。特に人工装具ソケット及び人工装具ライナーは、このように迅速に、容易に、費用面で有利に、それでもなお各々の患者に対して個別に単工程で作製され得る。計測データを検出するために、従来技術では様々な方法が知られている。つまり例えば、人工補整具と接触することになる患者の身体部分は、光学スキャナにより検出され、3次元方向に計測され得る。そのように取得された計測データは、電気的及び/又は電子的な制御に利用可能にされる。その際、計測されるべき切断断端又は身体部分は特殊な装置の中へ導入され得る、吊され得る又は挿入され得るので、人工装具又は整形器具が押し当てられる際に支配的になるとともに当然身体部分及び切断断端の幾何学形状に影響を及ぼす、圧力比が考慮され得る。
【0047】
個別に整合された人工補整具の記載された作製と併せて、本方法の本明細書に記載される形態により人工補整具の標準化形状及び/又は寸法が、鋳型を作製する必要がないので、従来技術よりも容易に且つ費用面で有利に作り出される。作製材料は、所望の配置及び分配で容易に支持材料内に配置され、硬化する又は硬化される。
【0048】
さらに、人工補整具の半個別の仕上げをすることができる。その際、例えば、デジタル形式で保存された標準形状が、患者から取られた個別の寸法を用いて個別に調節される。これらの仕上げは、付加的作製工程を用いて容易に且つ迅速にされ得る。つまり、例えば人工装具ライナーの外側での封止リップの位置及び/又は大きさを、患者に対して個別に合わせることができる。また義手グローブも、そうではない場合は標準寸法が使用されるのに対し、例えばそれらの長さ及び/又は幅に関して個別に仕上げることができる。
【0049】
本明細書に記載される方法の好ましい形態では、例えば、付加的作製工程により作製される人工補整具の表面又は人工補整具の部品の感触又は構造が、影響を受け、場合によっては部分的に変更され得る。つまり、例えば近位領域では、遠位領域とは別の感触又は構造を有する人工装具ライナーを作製することができる。このようにして、例えばその着付けを容易にすることができる。また、例えば付加的作製工程により作製される人工装具ライナーの内側に表面構造を少なくとも部分的に、場合によっては全体的に付与することにより、密着特性も変更することができる。人工装具ライナーへの負圧供給のための既述の真空経路により、負圧ライナーでの負圧分配も個別に整合され、患者の装着の心地よさのために最適に選択され得る。そのために人工補整具に真空経路が挿入され、それは好ましくは付加的作製工程の間に行われる。この真空経路によりその容積空間を真空に引くことができ、その際、経路の形及び設計により負圧分配が個別に調節されている。
【0050】
特に様々な作製材料を使用することにより、さらに例えば、硬化される各々の作製材料のショア硬度が選択される。つまり、例えば2つの異なる作製材料を使用することにより耐摩耗性の外層と軟らかい緩衝性の心材とを同時に作製することもできる。さらに作製材料が発泡構造体内に配置され、その発泡構造体により通気性の壁を生成することができる。
【0051】
好ましくは人工補整具は、人工装具ソケット内で使用するための人工装具ライナーであり、その人工装具ソケットは、遠位端と近位縁とを備えた収容空間を有する。その収容空間は、人工装具ライナーを当てがわれた切断断端がその収容空間の中へ導入され、その収容空間内に収容され得るように形成されている。本方法は、人工装具ソケットの高さ輪郭の曲線に対応して又は切断断端の利用可能な周知の解剖学的データに基づいて、人工装具ライナーの外側に封止リップ曲線を固定することと、少なくとも1つの付加的作製工程を用いて、固定された封止リップ曲線に沿って人工装具ライナーの外側に封止リップを配置することとを含む。これは、封止リップが一体的に成形されているライナー又はライナー基体を作製することも含む。
【0052】
高さ輪郭は、近位・遠位方向における人工装具ソケットの近位縁の曲線であり、人工装具ソケットの近位の終端構造の曲線を形成する。高さ輪郭を確定した後、封止リップ曲線は、人工装具ソケットの高さ輪郭の曲線に対応するように人工装具ライナーの外側に固定される。封止リップは、固定された封止リップ曲線に沿って人工装具ライナーの外側に配置される。これは少なくとも1つの付加的作製工程を用いて行われる。
【0053】
封止リップ曲線は、押し当てられた状態において人工装具ソケットの近位縁の高さ輪郭に追従しており、人工装具ソケットの上部の終端構造に対応するように形成されている。その際、人工装具ライナーに付する封止リップの位置は、切断断端に押し当てられた人工装具ライナーが人工装具ソケット中へ完全に導入されている場合に、封止リップが人工装具ソケットの近位縁に対して遠位に配置されているように固定されている。封止リップの曲線が人工装具ソケットの近位終端構造に対応していることにより、人工装具ライナー及び人工装具ソケットが着付けられた状態において可能な限り最も近位に走っているように封止リップを配置することができ、それにより、人工装具ライナーと人工装具ソケットとの間の真空に引かれるべき容積空間が従来技術の形態と比べて拡大される。それにより、人工装具ソケットを人工装具ライナーに保持する力が増加され、真空に引かれる容積空間内の圧力を、従来技術の形態と比べて低減させる必要はない。同時に、人工装具ソケットを人工装具ライナーに保持するのに必要な力は可能な限り広範囲に、従って均等に切断断端へ力分配されることになる。
【0054】
個別に人工装具ソケットの近位縁に整合された幾何学構造及び封止リップの対応する曲線により、インターフェースの機械的品質は最大にされ、断端、特に切断断端上への負荷が削減される。これは、利用者に対する心地よさを高め、人工装具ソケットと断端との間の確実な結合を作り出す。
【0055】
封止リップ曲線は、例えば人工装具ソケットの近位縁の存在する又は算出された、特にデジタル形式にある曲線に基づいて固定され得る。人工装具ソケットの近位縁の周知の曲線は、封止リップ曲線の参照として用いられ、その封止リップ曲線は、それに対応して固定される。同様に、封止リップ曲線の固定は、走査された断端、又は断端の形状及び/若しくは性質について他の方法で得られたデータ、又はその解剖学的なデータに基づいて行われ得る。デジタル形式にある又は算出された生体構造は、作製されるべき人工装具ライナーに対する、さらには作製されるべき人工装具ソケットに対する基準として用いられ得る。人工装具ライナーは、場合によっては人工装具ソケットも、デジタル形式でほぼ断端のモデル又はデジタル画像に形作られる。その形は断端の外輪郭にほぼ対応しており、ライナーに付する緩衝体に対する上乗せを伴う、場合によっては体積揺らぎを相殺するための負荷軽減領域又は圧縮領域のための人工装具ソケットに対する整合を伴う。人工装具ライナーは、同様に断端モデル、又は断端及び/若しくは人工装具ソケットのデジタル画像に基づいて設計され、デジタルデータ集合に変換され得る。その際、封止リップ曲線は、既存の又は算出された人工装具ソケットデータ集合を用いずに、解剖学的データに基づいて定められ得る。
【0056】
本発明の別の形態では、封止リップ曲線を固定する前に、人工装具ソケットの近位縁の高さ輪郭が検出される。高さ輪郭、つまり人工装具ソケットの近位縁の近位・遠位方向における曲線は、人工装具ソケットの上部終端構造の曲線を形成する。例えば、高さセンサがその近位縁に沿って若しくはその近位縁に対して平行に走行し、高さデータを周囲座標に割り当てるという走査方法により、又は非接触計測、例えば光学計測方法若しくはその他の走査により、既に物理的に存在する人工装具ソケットの高さ輪郭を検出するとともに、もっぱら人工装具ソケットについてのデータ、特にさらに作製されるべき人工装具ソケットのデータに基づいても、その固定が行われ得る。人工装具ソケットがそれに基づいて作製されることになる、3次元モデル又はデータ集合が既に存在する場合、これらのデータに基づいて封止リップ曲線を固定して、人工装具ライナーを作製することができる。
【0057】
人工装具ライナーが着付けられ、完全に導入された状態において封止リップが人工装具ソケットの近位縁を越えて近位方向にはみ出すことを回避するために、封止リップは、好ましくは人工装具ソケットの近位縁に対して遠位方向にずらして人工装具ライナーに配置されている。高さ輪郭を検出する際、好ましくは人工装具ソケットの近位縁の近位・遠位方向の曲線のみではなく、収容空間の遠位端から高さ輪郭までの距離も検出される。そのように検出された距離から、切断断端に付く人工装具ライナーが人工装具ソケット中へ導入された時に、人工装具ライナーの遠位端からどれくらいの距離で人工装具ソケットの近位縁が人工装具ライナーに隣接することになるのかを特定することができる。この線から始めて、封止リップは好ましくは遠位の方へずらして人工装具ライナーに配置される。人工装具ソケットの近位縁から遠ざかるような遠位方向への変位又は移動により安全領域が整えられ、その安全領域によって、例えば断端での人工装具ライナーの設定済みの方位についてのずれを相殺することができる。
【0058】
高さ輪郭の曲線の取得は近位・遠位方向において行われ、好ましくは人工装具ソケットの全長、従って人工装具ライナーの遠位端から封止リップ曲線までの距離を考慮に入れている。代わりに又は補足的に、好ましくは人工装具ソケットの近位縁の周囲輪郭は周囲に沿って取得される。従って、半径方向における封止リップの伸張、つまり半径方向外側にある封止リップの縁部から人工装具ライナーの外側までの距離を各々の患者に整合させることができる。封止リップの伸張は、好ましくは周囲に沿って一定ではなく、人工装具ソケットの内側から切断断端及びその切断断端の上に着けられたライナーの外側までの推定距離に従って変化する。
【0059】
封止リップは、好ましくは人工装具ソケットの近位縁に対して等距離に近位・遠位方向に人工装具ライナーの周囲に沿って配置されている、つまり人工装具ソケットの近位縁の高さ輪郭に対して少なくともほぼ同一に、しかしながら好ましくは完全に同一に走っている。
【0060】
封止リップは好ましくは封止リップ領域内に配置される。その封止リップ領域は、近位・遠位方向で封止リップ自体よりも幅広いものであり、既に事前に作製された人工装具ライナーの外側に封止リップが配置され、固定され得るところの組付領域である。その封止リップ領域は、製造を容易にするのに役立ち、少なくとも1つの付加的作製工程において人工装具ライナーの外側での近位・遠位方向の所定の領域内に封止リップ自体を配置するのを可能にする。封止リップ領域の近位及び遠位境界は好ましくは人工装具ソケットの近位縁の高さ輪郭に依存し、特に好ましくはその高さ輪郭に対応している。
【0061】
封止リップ領域は、封止リップから人工装具ライナーの外側への移行部分で、つまり人工装具ライナーの外側に配置された封止リップの基底で、好ましくは封止リップの2倍の幅である。
【0062】
人工装具ソケットの高さ輪郭、又は高さ輪郭及び周囲輪郭は、好ましくは光学的に検出される。検出された画像データは、例えばデジタル3次元モデル用の基礎を形成し、その3次元モデルに対して又はその3次元モデルから、データ集合が作成される。3次元モデルのデータ集合に基づいて、封止リップ曲線、若しくは封止リップ曲線及び封止リップ形状が、検出された高さ輪郭、又は検出された周囲輪郭及び高さ輪郭に応じて固定される。高さ輪郭の検出を、既存のデータ、例えばソケットの3次元モデルからも行うことができ、人工装具ソケットが物理的に存在する必要はない。例えば人工装具ソケットが付加的作製工程において又は別の作製方法において四肢断端、例えば切断断端のデータ集合に基づいて作製される場合、人工装具ソケットの内輪郭が、体積揺らぎ及び場合によっては人工装具ライナーの材料厚さを追加した断端の外輪郭にほぼ追従する。
【0063】
人工装具ソケットが、例えば断端自体又は断端の石膏モデルから取り出されるデジタルデータに基づいて作製されない場合、好ましくは既存の人工装具ソケットの内輪郭が、光学的に又は別の方法で検出され、コンピュータシステム内に保存される。断端の外輪郭と人工装具ソケットの内輪郭と、同様に3次元モデルの範囲内にある人工装具ソケットの近位縁の高さ輪郭との比較に基づいて、人工装具ライナーの外側での封止リップ曲線が固定される。これは当然、人工装具ライナーの外側での封止リップの位置も含む。加えて好ましくは、人工装具ライナー又は人工装具ライナーの基体の高さ及び形状並びに厚さが固定され、少なくとも1つの付加的作製工程において作製するためのデータ集合として処理される。少なくとも1つの付加的作製工程の範囲内で、例えば高速液体印刷方法の範囲内で、高さ輪郭及び/又は周囲輪郭に整合された封止リップ曲線及び封止リップ高さ及び/又は封止リップ厚さを有する人工装具ライナーが作製される。
【0064】
封止リップの曲線は、解剖学的データから、例えば断端の走査に基づいて直接定められ得る。ソケットの高さ輪郭及び周囲輪郭は、最初に適切なもの又は最適なものとみなされた封止リップの曲線から定められ得るので、封止リップ曲線は、人工装具ソケットの近位縁の曲線に対する参照寸法として用いられる。又はソケットの高さ輪郭及び周囲輪郭が、同様に走査の解剖学的データから取得される。結果として、封止リップの曲線は、人工装具ソケットの高さ輪郭の曲線に対応しており、封止リップ曲線が、人工装具ソケットの最初に固定された高さ輪郭に応じて作成及び固定されるのか、人工装具ソケットの高さ輪郭が、最初に定められた封止リップ曲線に応じて作成及び固定されるのか、又は、封止リップ曲線及び高さ輪郭が、互いに対して無関係に解剖学的データに基づいて、例えばデジタル3次元断端モデルに基づいて作成及び固定されるのかとは無関係である。
【0065】
封止リップの高さは、人工装具ソケット内側と、場合により人工装具ライナーの基体がその上に着けられた、導入されるべき断端の外側との間の取得された距離に応じて固定され得る。
【0066】
このようにして作製された人工装具ライナーを用いて、好ましくは人工装具ソケットと人工装具ライナーとからシステムが形成される。その際、人工装具ソケットは、人工装具ライナーを当てがわれた断端のための収容空間を有する。人工装具ソケットは遠位端と近位縁とを有する。人工装具ソケットの近位縁は高さ輪郭と周囲輪郭とを有する。人工装具ソケットに向き合う人工装具ライナーの外側には、少なくとも1つの封止リップが形成又は固定されている。その際、少なくとも1つの封止リップの封止リップ曲線は、人工装具ライナーが完全に挿入された状態において人工装具ソケットの高さ輪郭の曲線に対応する。封止リップは、人工装具ソケットの近位縁と同一平面で終止する必要はなく、むしろ封止リップが、終端輪郭に従って人工装具ソケットの近位縁から遠位の方へずらして人工装具ライナーに配置されていることが設定されている。
【0067】
人工装具ソケットは、可能な限り広範囲の界面領域を作り出すために、押し当てられる人工装具ライナーの完全に導入された状態において、少なくとも1つの封止リップに対して遠位に壁を閉ざすように形成されているので、可能な限り広い面上に負圧が生成され得る。それにより、必要とされる保持力が生成され、切断断端上へ伝達される。
【0068】
人工装具ソケットは好ましくは、ライナーを備えた断端を収容するのに十分な安定性と、追加の人工装具構成部品、例えば人工関節の配置とを提供するために、形状が安定するように形成されている。少なくとも1つの封止リップは、人工装具ライナーの基体に固定又は形成されており、人工装具ライナーの周囲に沿って不均等な高さを有し得る、つまり断端の外輪郭と人工装具ソケットの内輪郭との間の形状揺らぎ又は形状差を相殺するために、人工装具ライナーの外側から遠ざかるように様々に半径方向外側に向かって突出し得る。
【0069】
本発明の別の形態は、少なくとも1つの封止リップが、人工装具ライナーの基体に固定又は形成されており、人工装具ライナーの周囲に沿って不均等な高さ、つまり人工装具ライナーの外側から半径方向外側に向けた不均等な伸張を有することを想定している。それにより、押し当てられた状態での基体の外側と人工装具ソケットの内側との間の半径方向の距離の差が相殺され得る。それにより、ライナーを備えた断端が挿入される際に封止リップが常に人工装具ソケットの内壁に隣接することが確保される。人工装具ライナーの周囲に沿って異なる高さ、つまり異なる半径方向の膨らみは、例えば人工装具ソケットの走査された内側と断端の走査された外側又は3次元モデルとの間の比較により取得される。
【0070】
封止リップ曲線は好ましくは平面内にはなく、従って直線状ではなく、人工装具ライナー又は人工装具ソケットの遠位端に対して周囲の上方に不規則な間隔を有する空間曲線を描く。
【0071】
上記のシステム用の人工装具ライナーは、人工装具ライナーの外側に形成又は固定された少なくとも1つの封止リップを有し、その封止リップは、空間曲線の形態の封止リップ曲線を形成する。少なくとも1つの封止リップの封止リップ曲線は、断端に押し当てられた人工装具ライナーがその中へ導入されることになる、人工装具ソケットの近位縁の高さ輪郭の曲線に対応するように形成されている。
【0072】
本発明は、さらに本明細書に記載の方法により作製されている又は作製され得る人工補整具、特に人工装具ライナーにより、提起された課題を解決する。
【0073】
添付図面を用いて、以下に本発明の幾つかの実施例を詳しく説明する。
【0074】
図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】異なる構成部品を備えた人工装具ライナーの概略図である。
【
図2】異なるデザイン要素を備えた人工装具ライナーの概略図である。
【
図3】異なる表面構造を備えた人工装具ライナーの概略図である。
【
図4】異なる材料構造を備えた人工装具ライナーの概略図である。
【
図5】本発明の実施例による方法で作製されるべき構成部品についての概略的部分概要図である。
【
図7】部分的標準人工装具ライナー及び標準人工装具ライナーの概略図である。
【
図9】人工装具
ソケットとその中に配置される人工装具ライナーとから成るシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、本発明の実施例により作製された人工装具ライナー2を中央領域に示す。人工装具ライナー2は、近位領域に開口4と遠位領域にライナーキャップ6とを備えている。破線により限定されている小さな切り抜きでは、人工装具ライナー2に配置されてもよい異なる構成部品が示されている。
【0077】
左上には、別個に作製された部品が、例えば図示される実施例において人工装具ライナー2の基体及びその作製材料12により包囲されているクッション8及び電極10の形で示されている。その下にあるボックス内には、2つの供給源14を介して2つの異なる作製材料が同時に処理されるという形態が示されている。このようにして例えば、補強要素よりも高い硬さの作製材料を、例えば人工装具ライナー2の基体用のライナー材である、より軟らかい作製材料中へ挿入することができる。
【0078】
左側の最下のボックスには封止リップ16が示されており、その封止リップは例えば、付加的作製工程をもって作製材料12がそれに印刷される、別個に作製された部品として形成されてもよい。好ましくはライナー2の基体及び封止リップ16は、単一の作製工程、つまり付加的作製工程において共に作製される。それに加えて、また人工装具ライナー2の基体も、封止リップ16がそれに印刷される、別個に作製された部品としてあってもよい。位置ボックス18は単に例示として、図示された構成部品が人工装具ライナー2の異なる位置に配置され得ることを示しているにすぎない。
【0079】
図1の右側で上の領域には、作製材料12が、例えば掛留要素であり得る瘤20の形にあることが示されている。またこれは、本発明の実施例による方法により問題なく作製され得る。瘤20はその際、付加的作製
工程の間に作製材料12がそれに印刷される、別個の部品として形成されてもよい。その代わりに又はそれに加えて、瘤20がまた付加的作製
工程において作製材料12又は第2の作製材料から作製されてもよい。好ましくはライナー2の基体及び瘤20は、単一の作製工程、つまり付加的作製
工程において共に作製される。
【0080】
図1の右下には、接続要素22が作製材料12に印刷されていることが示されている。そのような接続要素22を介して、例えばケーブル24が、作製材料12の内部にある導電線26と接続され得る。この導電線は例えば、
図1には示されていない電極と接続されてもよい。
【0081】
図2は、様々な光学要素を備えた人工装具ライナー2を示し、それらの光学要素は、着色された作製材料12により付加的作製
工程で作製され得る。開口4から遠位のライナーキャップ6まで標識線28が延びており、その標識線により、人工補整具、つまり図示される実施例では人工装具ライナー2を正しい方位で押し当てることが人工補整具の装着者にとって容易になる。当然、標識線28が近位開口4から遠位ライナーキャップ6まで走っている必要はない。
【0082】
人工装具ライナー2の左の領域内には、美容上の課題を実質的に満たすデザイン要素30が示されている。つまりそのデザイン要素は例えば、人工補整具を製造者に由来するものとして特徴づけ得る意匠として形成されてもよい。
【0083】
第3の光学要素は摩耗標識32であり、その摩耗標識は同様に着色された作製材料から構成される。そのような摩耗標識32は、例えば人工装具ライナー2の基体が複数層で形成されていることにより作製され得る。これは、付加的作製工程において、少なくとも色の点でも異なる複数の作製材料を使用することを意味する。人工装具ライナー2の外層が欠損している又は摩耗している場合、各々の下層の別の色を認識することができ、その別の色は摩耗標識32として働く。
【0084】
図3は、単に例示として異なる要素の位置を表し得る3つの概略的な位置ボックス18を有する人工装具ライナー2を示す。
【0085】
右側には様々な構造が示されている。最上のボックス内には、感触の異なる領域34、36を有する人工装具ライナー2の外側が示されている。中央領域34が滑らかな表面を有するのに対し、縁領域36の人工装具ライナー2の表面は構造化されて形成されている。
【0086】
その下のボックスでは、付加的作製工程の間に人工装具ライナー2の側壁の中へ細溝状に挿入された真空経路38が示されている。これらの真空経路により、人工装具ライナー2の押し当てられた状態において、人工装具ライナーと図示されていない人工装具ソケットとの間に生じる負圧は真空に引かれる。
【0087】
図3の最下の領域には、繊維層40が示されている。付加的作製
工程の間に流出ノズル42を用いて作製材料12がその繊維層上へ塗布される。
【0088】
それとは異なり、
図4は、人工装具ライナー2を異なる材料構造の概略図とともに示す。
図4の左上の領域には、様々な機能性を有し得る異なる種類の中空空間が示されている。左側には、緩衝クッションとして働く仕切られた容積空間44が示されている。それとは異な
る中央領域には、流入口48と流出口50とを備えている容積貯留層46が示されている。流入口48には、一方向弁として働くリード弁52がある。流入口48と流出口50とを備えた容積貯留層46は、例えば油圧又は空圧システムの一部であってもよい。容積貯留層46も、流入口48、流出口50及び一方向弁52も、付加的作製
工程の間に作成材料12から作製され得る。右領域には、例えば冷却目的に使用され得る経路54がある。
【0089】
その下の領域では、全て作製材料12から作製されてもよい人工装具ライナー2の異なる領域が異なるショア硬度を有し得ることを概略的に示している。最下の領域では、人工装具ライナー2の側壁が断面で示されている。ライナーが異なる位置で有し得る異なる厚さがわかる。異なる厚さは、付加的作製工程をもって連続的に又は離散的な工程で生成され得る。
【0090】
図4の右側の上部領域には、作製材料12が例えば発泡体、例えばシリコーン発泡体の形態で作製され得ることが概略的に示されている。その下の領域には、異なる作製材料12から構成されている、いわゆるハイブリッド材料が示される。その際、それは左部分でのように、個別の作製材料12間の形状接合であってよく、一方、右部分では異なる作製材料の複数の層が使用され、それらの層は、物質接合で互いに対して結合されている。本発明の実施例による方法を用いて、単一の作製工程、つまり付加的作製
工程において、そのようなハイブリッド材料を作製することができる。
【0091】
図5は中央に、付加的作製
工程を概略的に示す。その際、図示される実施例ではMITにより開発された高速液体印刷方法を取り扱う。矢印56が示すように全3次元方向に自由に移動する流出ノズル42により、作製材料12が吐出され、支持材料の中へ所望の位置に挿入される。
図5内の中央領域の周辺に示される製品により、このように作製され得る多様で可能な人工補整具が示される。例えばインソール58、人工装具ライナー2、人工装具
ソケット60、及び例えば義手を包装するのに使用される義手グローブ62である。
【0092】
図6は、近位開口4と遠位ライナーキャップ6とを備える個別に成形された人工装具ライナー2が作製され得ることを概略的に示す。これは一方では、例えば巻き尺64又は別の従来の計測方法を用いて切断断端66を計測することにより行われ得る。その代わりに又はそれに加えて、
図6の上部のように、切断断端66はスキャナ68を用いて無接触で計測され得る。使用される計測方法とは無関係に、取得された計測データは、電気的及び/又は電子的制御に利用可能にされ、それらのデータは、付加的作製
工程に使用される作製装置を制御する。
【0093】
図7は右領域に、標準寸法及び標準形状を有する既知の人工装具ライナー2を示す。左部分には同様に、しかしながら封止リップ16が配置された、人工装具ライナー2が示されている。破線で示される封止リップ16により、この封止リップが、個別に様々に異なる位置で基体人工装具ライナー2に配置され得ることが概略的に示される。
【0094】
図8は、近位縁70と遠位端領域72とを備えた人工装具ライナー2を単一表示で示す。遠位端領域72は閉ざされて形成されており、近位縁70は、挿入口を周囲で包囲する。人工装具ライナー2は、外側76と内側78とを備えた基体74を有する。基体74は柔軟に、好ましくは弾性的に少なくとも周囲方向に形成されている。基体74の内側78は好ましくは接着性ポリマー、例えばシリコーンから構成される。代わりに、内側78は接着性薄膜で完全に又は部分的に被覆されてもよい。その薄膜は、例えばシリコーン又は皮膚に接着する別のポリマーから形成されてもよい。基体74の外側76は同様にエラストマーから構成されてもよく、少なくとも部分的にエラストマーで被覆されていてもよい。同様に、人工装具ライナー2と図示されていない人工装具
ソケットとの間の中間空間内の圧力を均等にするために、外側76に繊維が付与されていることもあり得る。代わりに又は補足的に、長手伸張全体にわたる、つまり遠位から近位への及び周囲のまわりの流体技術的な結合を可能にするために外側76に隆起又は溝が配置されてもよく、例えば、形成又は挿入若しくは付与されてもよい。
【0095】
基体74には封止リップ16が配置されており、その封止リップは、図示されていない人工装具ソケット中へ導入された状態において、人工装具ライナー2の近位領域と遠位領域との間に密閉を作り出す。封止リップ16は空気不透過性材料から作製されてもよく、対応して被覆されてもよく、封止リップ16での空気の通り抜けは生じない。封止リップ16は例えば、シリコーン又はポリマーから構成されてもよく、そのような材料で被覆されてもよい。封止リップ16は好ましくは、少なくとも1つの付加的作製工程の範囲内で、例えば高速液体印刷方法を用いて基体74と一体的に作製される。基体74の外側76での封止リップ16の遠位領域は、互いに離間した領域への圧力分配を可能にする構造化表面を備えていてもよい。構造化は、例えば接着され得る若しくは積層され得る繊維材として、又は外側76で溝及び/若しくは隆起を介して行われ得る。
【0096】
封止リップ16は基体74から径方向に突き出ており、好ましくは弾性的に形成されているので、封止リップ16は、基体74から遠ざかる方に向くその外側が人工装具ソケットに隣接しており、その人工装具ソケットに押し付けられる。図示される実施例では封止リップ16は基体74の外側76から垂直方向に突き出るようには形成されておらず、傾いて形成されている又は配置されている。基体74に向き合っている封止リップ16の内側は、それらの間に鋭角を成す。基本的に、反対に向けられた方位を設定する又は封止リップ16を垂直に突出させることもできる。人工装具ライナー2を人工装具ソケット中へ導入する際、封止リップ16は通常折り返されるので、封止リップ16の遠位方向に向く側が人工装具ソケットの内側に隣接するような方位が生じる。封止リップ16により密閉された、人工装具ソケットと封止リップ16に対して遠位にある領域との間の容積空間内での大気圧に対する負圧の場合、封止リップ16は人工装具ソケットの内壁に押し付けられるので、自己補強的な封止効果が生じる。
【0097】
図8から、人工装具ライナー2の近位縁70が直線状に、又は1つの平面内に配置されるように形成され、その平面が人工装具ライナー2の長手方向の伸張に対してほぼ垂直に走っていることを読み取ることができる。封止リップ16は、その長手方向の伸張から逸れて、共通の平面内ではなく、特に人工装具ライナー2の近位縁70に対して平行な平面又は傾いた平面内ではなく、人工装具
ソケットの高さ輪郭の曲線に対応してその近位縁に走っている空間曲線に沿って走っている。
図8の図示される実施例では、下腿用の人工装具ライナー2が示されている。脛骨頭部は破線で示されている。封止リップ16は、正面領域において脛骨頭部の上方すれすれに走っており、内側及び外側では近位端70への方向に延びている。封止リップ16は、人工装具ライナーの後方部において再び遠位方向に下降するように走っていることもあり得る。そのような曲線は、正面の脛骨領域及び膝窩領域において内側・外側よりも深く、つまりさら遠位方向に走っている下腿
ソケットの近位縁の曲線に対応している。横方向の安定性を高め、断端への下腿
ソケットの押し当てを向上させるために、人工装具
ソケット領域は、膝関節の内側及び外側で再び近位方向に走るように配置されてもよい。
【0098】
図9では、着付けられた状態の
図8による人工装具ライナー2が概略図で示されている。人工装具ライナー2は、図示されていない断端に押し当てられており、人工装具
ソケット80の中へ導入されている。人工装具
ソケット80は、平坦な平面内にはなく空間曲線を描く近位縁82を有する。人工装具
ソケット80は、内側及び外側で高く引き上げられた領域を有し、それらの領域は、前面に及び膝窩の領域内に配置されている領域よりも近位方向に延びている。前面には、膝蓋骨の移動を可能にする切り抜きが認められ得る。膝窩の後方領域では、足の屈曲を可能にするための対応する切り抜き又は対応する下降が形成されており、人工装具
ソケットはその背面領域で後方の大腿とふくらはぎ領域との間に挟み込まれることはない。
【0099】
人工装具ライナー2は人工装具ソケット80の収容空間84中へ完全に導入されている、即ち人工装具ライナー2の遠位端72が、人工装具ソケット80の遠位端88の領域内にあり、場合によりその遠位端の上にある、又はその遠位端に対して例えば緩衝体を介して軽く離れてその遠位端の上に配置されている。封止リップ16は、人工装具ソケット80の内壁に隣接しており、人工装具ソケット80の内壁と人工装具ライナー2の外壁76との間の容積空間86を封止リップ16に対して遠位に密閉している。容積空間86は、例えば排出弁による歩行時のポンプ運動により又はモータ駆動のポンプにより真空に引かれる、つまり大気圧以下にある圧力レベルにされる。
【0100】
図9から、封止リップ曲線が人工装具
ソケット80の近位縁82の曲線に対応している又はこの曲線に従っており、単に遠位方向へずらして基体74の外側にある又は配置されていることを読み取ることができる。理想では封止リップ16は、人工装具
ソケット80の近位縁82まで最小限の距離で走っている。特に高所曲線又は高さ輪郭、つまり近位・遠位方向における基体74の周囲のまわりの封止リップ16の曲線は、人工装具
ソケットの近位縁82の高所曲線に対応している。少量の逸脱があってもよく、特に封止リップ曲線は、人工装具
ソケット80の近位縁82の高さ輪郭の曲線に対してほぼ平行に対応する領域内に固定され得る。その際、領域の近位及び遠位境界は、近位縁82の高さ輪郭曲線に対応するように形成されている。
【0101】
また周囲方向の輪郭、つまり封止リップ16の押し当て領域内の人工装具ソケット80の内周の輪郭も取得され得る。封止リップ16の外周の輪郭は、外側の封止リップ縁を人工装具ソケット80の内側に押し当てる領域内の周囲輪郭の曲線に対応して、上乗せを伴って形成されてもよく、そのため封止リップ16は、人工装具ライナー2を人工装具ソケット80内に導入した後の変形時の復元力に基づいた軽い与圧で、人工装具ソケット80の内側に隣接し得る。
【0102】
内側及び外側の側に高まりを有する下腿ソケットとしての人工装具ソケット80の形態の代わりに、例えば大腿ソケットとしての形態は、ほぼ股関節の回転軸まで達する片側だけの高まりを外側に含む。大腿の内側では、それに応じて、遠位方向にずらした切り抜きが形成されているので、大腿ライナーでは、対応する封止リップ曲線が調節される。
【0103】
そのようなライナー2を作製するためにまず、一般に個別に作製される人工装具ソケット80の高さ輪郭が検出される。そのために、人工装具ソケット80の高さ、つまり近位縁82から、断端の周囲に沿っての人工装具ソケット80の内側の遠位端88までの距離も検出される。形状及び寸法は、好ましくは光学的に、例えば画像取得及び画像評価により検出され得る。計測値取得を伴う走査又は追跡走行のような代わりの検出データが同様に行われ得る。
【0104】
近位縁82の高さ輪郭の検出された曲線に基づいて、封止リップ16が人工装具ソケットの内側で隣接することになる場所、従って封止リップが人工装具ライナー2の基体74の外側76で配置されるべき場所が固定される。検出されたデータは、3次元データモデルを作成するために使用される。人工装具ソケット80のデータモデルに基づいて、ライナー2が、例えば標準基体74と人工装具ソケット80の近位縁82の曲線の方に向けられている封止リップ16の個別の封止リップ曲線とを用いて構築される。整合された封止リップ曲線を有する人工装具ライナー2の形は、同様に3次元データモデルとして算出される。3次元データモデルに基づいて、作製データが生成される。その作製データに基づいて、少なくとも1つの付加的作製工程を用いて、封止リップ曲線を有する人工装具ライナー2は、人工装具ソケットの近位縁82の曲線に対応するように作製される。
【0105】
図10では、人工装具ライナー2を作製する方法の可能な進行が示されている。切断断端66、本明細書では下腿断端から、光学検出機器90を介して切断断端66の外輪郭が取得される、例えば走査される。切断断端66から3次元モデルが作成され、図示されていないコンピュータ内に整理される。3次元モデルに基づいて、後の人工装具ライナー2の形を少なくとも実質的に表すデータ集合92が算出される。データ集合92は、封止リップ曲線とともに人工装具ライナー2の外輪郭も固定し、特に人工装具ライナー2の遠位端領域72及び材料厚さも固定する。データ集合92を用いて、補強、材料弱化、及び作製方法中に使用される又は組み入れられる異なる材料の使用を定めることができる。データ集合92に基づいて、実際の人工装具ライナー2が作製され得る。近位縁70又は空間内の実際の人工装具ライナー2の近位縁70の曲線は、本実施例では、データ集合92内に固定されたものとしてまだ描き込まれていない。人工装具ライナー2の残りの輪郭が破線により示されている。データ集合92又は走査の基礎データに基づいて人工装具
ソケット80用のデータ集合を作成することができ、そのデータ集合は、例えば付加的作製
工程において、人工装具
ソケットを作製するための基礎を形成する。その空間内の封止リップ曲線は、輪郭線として定義されており、人工装具
ソケット80の近位縁82の輪郭の曲線に対する参照として用いられ得る。つまりまず、まだ作製されるべき人工装具ライナー2の外側での封止リップ16の封止リップ曲線が定められ得る。次に人工装具
ソケット80が形作られる。それとは逆に、仮想の又は既存の人工装具
ソケット80の近位縁82の既に固定された輪郭に封止リップ曲線を整合させることもあり得る。
【0106】
データ集合92に基づいて、付加的作製工程を用いて人工装具ライナー2が作製される。図示される実施例では、いわゆる高速液体印刷方法による作製が行われ、その際、支持材料94がタンク又は貯蔵容器内に配置される。空間内で3次元方向に移動可能な流出ノズル42を介して、人工装具ライナー2の材料が支持材料94の中へ挿入され、人工装具ライナー2が付加的に作製される。破線は、人工装具ライナー2の近位端輪郭を示し、その近位端輪郭は、図示される実施例では直線状である。人工装具ライナー2の近位端輪郭又は近位縁70は、封止リップ16の曲線に対応して又は人工装具ソケット80の近位縁82に対応して走っていることもあり得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 人工補整具、特に人工装具ライナー(2)を作製する方法であって、前記人工補整具が、少なくとも部分的に付加的作製工程を用いて少なくとも1つの作製材料(12)から作製され、前記作製材料が流動状態で支持材料の中へ挿入され、その後に硬化することを特徴とする方法。
[2] 作製材料(12)が、前記硬化中に前記支持材料により支えられる及び/又は作業空間内にその位置で保持され、好ましくは自己硬化性材料又は温度上昇により硬化し得る材料であることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 前記作製材料(12)が少なくとも2つの成分から構成され、好ましくは前記少なくとも2つの成分の混合比が、前記付加的作製工程を実行する間に調節され得ることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記作製材料(12)が、前記硬化後に、その値が混合比に依存するショア硬さを有することを特徴とする、[3]に記載の方法。
[5] 前記付加的作製工程において少なくとも2つの異なる作製材料(12)が、好ましくは同時に使用されることを特徴とする、[1]から[4]のうちの1項に記載の方法。
[6] 前記付加的作製工程の間に前記少なくとも1つの作製材料(12)が、前記人工補整具の別個に作製された部品と結合されることを特徴とする、[1]から[5]のうちの1項に記載の方法。
[7] 前記付加的作製工程において前記人工補整具の壁厚が連続的に又は離散的な工程で変化され得るので、少なくとも1つの膨らみ、深み、厚み、先細り及び/又は抜け止めが作製されることを特徴とする、[1]から[6]のうちの1項に記載の方法。
[8] 前記付加的作製工程を用いて、少なくとも1つの中空空間を備えた人工補整具が生成されることを特徴とする、[1]から[7]のうちの1項に記載の方法。
[9] 前記少なくとも1つの中空空間が、前記付加的作製工程の間に、少なくとも1つの充填材料で少なくとも部分的に、好ましくは完全に充たされ、好ましくは少なくとも2つの中空空間が異なる充填材料で充填されることを特徴とする、[8]に記載の方法。
[10] 前記付加的作製工程を用いて前記少なくとも1つの作製材料(12)から、少なくとも1つの空圧要素及び/又は少なくとも1つの油圧要素、好ましくは少なくとも1つの容積貯留層(46)、少なくとも1つの封止リップ(16)、少なくとも1つの弁及び/又は少なくとも1つのポンプが作製され、前記要素が、好ましくは前記人工補整具の別の部品と一体的に作製されることを特徴とする、[1]から[9]のうちの1項に記載の方法。
[11] 計測データが患者から検出され、電気的及び/又は電子的な制御に利用可能にされ、前記制御が、少なくともまた前記計測データに基づいて前記付加的作製工程を制御するように整えられていることを特徴とする、[1]から[10]のうちの1項に記載の方法。
[12] 前記人工補整具が、人工装具ソケット(80)内で使用するための人工装具ライナー(2)であり、前記人工装具ソケット(80)が、遠位端(88)と近位縁(82)とを備えた収容空間(84)を有し、本方法が以下の工程、
a) 前記人工装具ソケット(80)の高さ輪郭の曲線に対応して又は切断断端の利用可能な周知の解剖学的データに基づいて、前記人工装具ライナー(2)の外側(76)に封止リップ曲線を固定することと、
b) 前記少なくとも1つの付加的作製工程を用いて、前記固定された封止リップ曲線に沿って前記人工装具ライナー(2)の前記外側(76)に封止リップ(16)を配置することと
を有することを特徴とする、[1]から[11]のうちの1項に記載の方法。
[13] 前記封止リップ(16)が、前記人工装具ソケット(80)の前記近位縁(82)に対して遠位方向にずらして、特に等距離に前記人工装具ライナー(2)に配置されていることを特徴とする、[12]に記載の方法。
[14] 前記人工装具ソケット(80)の高さ輪郭が光学的に検出され、デジタル3次元モデルが作成され、前記封止リップ曲線が、前記検出された高さ輪郭に応じて固定されることを特徴とする、[12]又は[13]に記載の方法。
[15] [1]から[14]のうちの1項に記載の方法に従って作製された又は作製可能な人工補整具。
【符号の説明】
【0107】
2 人工装具ライナー
4 開口
6 ライナーキャップ
8 クッション
10 電極
12 作製材料
14 供給源
16 封止リップ
18 位置ボックス
20 瘤
22 接続要素
24 ケーブル
26 導電線
28 標識線
30 デザイン要素
32 摩耗標識
34 中央領域
36 縁領域
38 真空経路
40 繊維層
42 流出ノズル
44 仕切られた容積空間
46 容積貯留層
48 流入口
50 流出口
52 リード弁
54 経路
56 矢印
58 インソール
60 人工装具ソケット
62 義手グローブ
64 巻き尺
66 切断断端
68 スキャナ
70 近位縁
72 遠位端領域
74 基体
76 外側
78 内側
80 人工装具ソケット
82 近位縁
84 収容空間
86 容積空間
88 遠位端
90 光学検出機器
92 データ集合
94 支持材料