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特許7419368光伝送路の検査システム及び光伝送路の検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】光伝送路の検査システム及び光伝送路の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20240115BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20240115BHJP
【FI】
G01M11/02 J
H04B10/077 150
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021526042
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2020021989
(87)【国際公開番号】W WO2020250782
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019108603
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛市
(72)【発明者】
【氏名】菱川 善文
(72)【発明者】
【氏名】津崎 哲文
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敏行
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健一郎
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0164601(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0140739(US,A1)
【文献】特開2003-207413(JP,A)
【文献】特開平4-138332(JP,A)
【文献】特開2000-206004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
H04B 10/00 - H04B 10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバにより構成される光伝送路を検査するシステムであって、
前記光伝送路の一端側に設けられる第1の検査装置と、
前記光伝送路の他端側に設けられる第2の検査装置と、
前記複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する損失算出部と、
を備え、
前記第1及び第2の検査装置は、各々の検査装置毎に、
試験光を出力する光源部と、
前記複数本の光ファイバと着脱可能にそれぞれ接続される複数の光入出力ポートと、
前記光源部と各光入出力ポートとを選択的に結合する光スイッチと、
相手側の前記検査装置から入力され前記光スイッチを通過した前記試験光の第1の強度を検出する第1の光検出部と、
前記光源部から前記光スイッチへ向かう前記試験光の第2の強度を検出する第2の光検出部と、
前記複数本の光ファイバに代えて前記複数の光入出力ポートに一端が接続される試験用光ファイバの他端と光学的に結合され、前記光源部から前記試験用光ファイバを介して受ける前記試験光の第3の強度を検出する第3の光検出部と、
前記第3の強度と前記第2の強度との差に基づいて得られる、装置内部の光経路の損失を記録する内部損失記録部と、
を有し、
前記損失算出部は、前記第1の検査装置の前記第2の強度から、前記第2の検査装置の前記第1の強度、前記第1の検査装置の前記内部損失記録部に記録された損失、及び、前記第2の検査装置の前記内部損失記録部に記録された損失を差し引いた値に基づいて、前記複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する、光伝送路の検査システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の検査装置は、前記第1の検査装置と前記第2の検査装置との間において前記光伝送路とは独立して通信を行うための通信部を更に有する、請求項1に記載の光伝送路の検査システム。
【請求項3】
前記第2の検査装置の前記通信部は、前記第2の検査装置において検出された前記第1の強度、及び前記第2の検査装置の前記内部損失記録部に記録された損失に関するデータを、前記第1の検査装置の前記通信部に送信する、請求項2に記載の光伝送路の検査システム。
【請求項4】
前記光源部は、互いに出力波長が異なる二以上の光源を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光伝送路の検査システム。
【請求項5】
前記光伝送路は、2本以上の前記光ファイバを各々含むN本(Nは2以上の整数)の多心光ファイバ心線により構成され、
前記第1及び第2の検査装置が有する前記光入出力ポートの個数は、前記N本の多心光ファイバ心線に含まれる前記光ファイバの総数以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光伝送路の検査システム。
【請求項6】
前記損失算出部は、前記第1の検査装置の内部に設けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光伝送路の検査システム。
【請求項7】
前記損失算出部は、前記第1の検査装置の外部に設けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光伝送路の検査システム。
【請求項8】
複数本の光ファイバにより構成される光伝送路を検査可能な検査装置であって、
試験光を出力する光源部と、
前記複数本の光ファイバを着脱可能にそれぞれ接続可能な複数の光入出力ポートと、
前記光源部と各光入出力ポートとを選択的に結合する光スイッチと、
他の検査装置から入力され前記光スイッチを通過した前記試験光の第1の強度を検出する第1の光検出部と、
前記光源部から前記光スイッチへ向かう前記試験光の第2の強度を検出する第2の光検出部と、
前記複数本の光ファイバに代えて前記複数の光入出力ポートに一端が接続される試験用光ファイバの他端と光学的に結合され、前記光源部から前記試験用光ファイバを介して受ける前記試験光の第3の強度を検出する第3の光検出部と、
前記第3の強度と前記第2の強度との差に基づいて得られる、装置内部の光経路の損失を記録する内部損失記録部と、
を備える、光伝送路の検査装置。
【請求項9】
前記他の検査装置との間において前記光伝送路とは独立して通信を行うための通信部を更に備える、請求項8に記載の光伝送路の検査装置。
【請求項10】
前記光源部は、互いに出力波長が異なる二以上の光源を有する、請求項8または請求項9に記載の光伝送路の検査装置。
【請求項11】
前記光伝送路は、2本以上の前記光ファイバを各々含むN本(Nは2以上の整数)の多心光ファイバ心線により構成され、
前記光入出力ポートの個数は、前記N本の多心光ファイバ心線に含まれる前記光ファイバの総数以上である、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の光伝送路の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光伝送路の検査システム及び光伝送路の検査装置に関する。本出願は、2019年6月11日出願の日本出願第2019-108603号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光線路損失測定システムに関する技術が記載されている。このシステムは、光線路切替手段と、記憶手段と、光線路損失算出手段とを有する。光線路切替手段は、光源からの光を、第1の光パワーメータが接続された測定対象光線路あるいは第2の光パワーメータの一方に出射させるように、光線路を切り替える。記憶手段は、光線路切替手段の光損失特性を予め記憶する。光線路損失算出手段は、記憶手段に記憶されている光線路切替手段の光損失特性と、第1の光パワーメータの測定値と、第2の光パワーメータの測定値とに基づいて、測定対象光線路の光損失量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-206004号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の光伝送路の検査システムは、複数本の光ファイバにより構成される光伝送路を検査するシステムであって、光伝送路の一端側に設けられる第1の検査装置と、光伝送路の他端側に設けられる第2の検査装置と、複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する損失算出部と、を備える。第1及び第2の検査装置は、光源部と、複数の光入出力ポートと、光スイッチと、第1の光検出部と、第2の光検出部と、第3の光検出部と、内部損失記録部と、を有する。光源部は、試験光を出力する。複数の光入出力ポートは、複数本の光ファイバと着脱可能にそれぞれ接続される。光スイッチは、光源部と各光入出力ポートとを選択的に結合する。第1の光検出部は、相手側の検査装置から入力され光スイッチを通過した試験光の第1の強度を検出する。第2の光検出部は、光源部から光スイッチへ向かう試験光の第2の強度を検出する。第3の光検出部は、複数本の光ファイバに代えて複数の光入出力ポートに一端が接続される試験用光ファイバの他端と光学的に結合され、光源部から試験用光ファイバを介して受ける試験光の第3の強度を検出する。内部損失記録部は、第3の強度と第2の強度との差に基づいて得られる、装置内部の光経路の損失を記録する。損失算出部は、第1の検査装置の第2の強度から、第2の検査装置の第1の強度、第1の検査装置の内部損失記録部に記録された損失、及び、第2の検査装置の内部損失記録部に記録された損失を差し引いた値に基づいて、複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する。
【0005】
本開示の光伝送路の検査装置は、複数本の光ファイバにより構成される光伝送路を検査可能な検査装置であって、光源部と、複数の光入出力ポートと、光スイッチと、第1の光検出部と、第2の光検出部と、第3の光検出部と、内部損失記録部と、を備える。光源部は、試験光を出力する。複数の光入出力ポートは、複数本の光ファイバを着脱可能にそれぞれ接続可能である。光スイッチは、光源部と各光入出力ポートとを選択的に結合する。第1の光検出部は、他の検査装置から入力され光スイッチを通過した試験光の第1の強度を検出する。第2の光検出部は、光源部から光スイッチへ向かう試験光の第2の強度を検出する。第3の光検出部は、複数本の光ファイバに代えて複数の光入出力ポートに一端が接続される試験用光ファイバの他端と光学的に結合され、光源部から試験用光ファイバを介して受ける試験光の第3の強度を検出する。内部損失記録部は、第3の強度と第2の強度との差に基づいて得られる、装置内部の光経路の損失を記録する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、一実施形態に係る検査システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、光入出力部を拡大して示す図である。
図3図3は、検査前の段階における検査装置の接続態様を示す図である。
図4図4は、損失算出部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5図5は、コネクタ付き多心光ファイバ心線の極性の例を示す図である。
図6図6は、コネクタ付き多心光ファイバ心線の極性の例を示す図である。
図7図7は、コネクタ付き多心光ファイバ心線の極性の例を示す図である。
図8図8は、一変形例に係る検査装置の構成を概略的に示す図である。
図9図9は、比較例としての検査システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
従来より、光伝送システムにおける光ファイバケーブルなどの光伝送路の光損失量を測定するに際し、光伝送路が複数本の光ファイバを含む場合、測定対象の光ファイバを順次切り替えるために光スイッチを用いる。光伝送路の一端側に配置される検査装置の光スイッチは、光源から出力される試験光を測定対象光ファイバに選択的に入射させる。また、光伝送路の他端側に配置される検査装置の光スイッチは、測定対象光ファイバを選択してその測定対象光ファイバから試験光を出射させ、その光強度を検出する。一端側の検査装置から出力された試験光の強度と、他端側の検査装置において検出された試験光の強度との差に基づいて、測定対象光ファイバの光損失量を測定することができる。
【0008】
しかしながら、光損失は光ファイバだけでなく検査装置の内部、特に光スイッチにおいても生じる。従って、光ファイバの光損失を精度良く測定するためには、光伝送路の両側に配置される各検査装置内部の光損失分を予め差し引くように調整すなわちゼロ校正を行う必要がある。そのため、従来においては、例えば光伝送路の両側に配置される2つの検査装置を測定を行う前に一箇所に持ち寄る。そして、試験用の短い光伝送路を用いてこれらの検査装置同士を接続し、これらの検査装置の組み合わせにおいてゼロ校正を行う。しかし、測定対象である光伝送路は長く、その一端と他端とは互いに遠く離れていることが通常なので、検査装置の運搬に手間が掛かるという問題がある。
【0009】
そこで、本開示は、光伝送路の両側に配置される2つの検査装置を一箇所に持ち寄らずとも、光伝送路の光損失を精度良く測定することができる光伝送路の検査システム及び検査装置を提供することを目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示によれば、光伝送路の両側に配置される2つの検査装置を一箇所に持ち寄らずとも、光伝送路の光損失を精度良く測定することができる光伝送路の検査システム及び検査装置を提供することが可能となる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る光伝送路の検査システムは、複数本の光ファイバにより構成される光伝送路を検査するシステムであって、光伝送路の一端側に設けられる第1の検査装置と、光伝送路の他端側に設けられる第2の検査装置と、複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する損失算出部と、を備える。第1及び第2の検査装置は、光源部と、複数の光入出力ポートと、光スイッチと、第1の光検出部と、第2の光検出部と、第3の光検出部と、内部損失記録部と、を有する。光源部は、試験光を出力する。複数の光入出力ポートは、複数本の光ファイバと着脱可能にそれぞれ接続される。光スイッチは、光源部と各光入出力ポートとを選択的に結合する。第1の光検出部は、相手側の検査装置から入力され光スイッチを通過した試験光の第1の強度を検出する。第2の光検出部は、光源部から光スイッチへ向かう試験光の第2の強度を検出する。第3の光検出部は、複数本の光ファイバに代えて複数の光入出力ポートに一端が接続される試験用光ファイバの他端と光学的に結合され、光源部から試験用光ファイバを介して受ける試験光の第3の強度を検出する。内部損失記録部は、第3の強度と第2の強度との差に基づいて得られる、装置内部の光経路の損失を記録する。損失算出部は、第1の検査装置の第2の強度から、第2の検査装置の第1の強度、第1の検査装置の内部損失記録部に記録された損失、及び、第2の検査装置の内部損失記録部に記録された損失を差し引いた値に基づいて、複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する。
【0012】
一実施形態に係る光伝送路の検査装置は、複数本の光ファイバにより構成される光伝送路を検査可能な検査装置であって、光源部と、複数の光入出力ポートと、光スイッチと、第1の光検出部と、第2の光検出部と、第3の光検出部と、内部損失記録部と、を備える。光源部は、試験光を出力する。複数の光入出力ポートは、複数本の光ファイバを着脱可能にそれぞれ接続可能である。光スイッチは、光源部と各光入出力ポートとを選択的に結合する。第1の光検出部は、他の検査装置から入力され光スイッチを通過した試験光の第1の強度を検出する。第2の光検出部は、光源部から光スイッチへ向かう試験光の第2の強度を検出する。第3の光検出部は、複数本の光ファイバに代えて複数の光入出力ポートに一端が接続される試験用光ファイバの他端と光学的に結合され、光源部から試験用光ファイバを介して受ける試験光の第3の強度を検出する。内部損失記録部は、第3の強度と第2の強度との差に基づいて得られる、装置内部の光経路の損失を記録する。
【0013】
これらの検査システム及び検査装置の使用方法は次の通りである。まず、これらの検査システムまたは検査装置を用いて光伝送路の検査を行う前、例えば各検査装置の製造時などに、各検査装置の光入出力ポートに試験用光ファイバの一端を接続する。そして、光源部から試験光を出力させる。試験光は、光スイッチ、光入出力ポート、及び試験用光ファイバを通って第3の光検出部に達し、第3の光検出部において試験光の第3の強度が検出される。同時に、第2の光検出部において試験光の第2の強度が検出される。試験用光ファイバは測定対象である複数本の光ファイバと比較して十分に短くできるので、装置内部の光経路の損失は、第3の強度と第2の強度との差に基づいて得られる。この損失は、例えば損失算出部により算出され、内部損失記録部に記録される。試験用光ファイバは光入出力ポートから取り外される。
【0014】
これらの検査システム及び検査装置を用いて光伝送路の検査を行う際には、複数本の光ファイバの一端に第1の検査装置の複数の光入出力ポートを接続し、他端に第2の検査装置の複数の光入出力ポートを接続する。次に、第1の検査装置の光源部から試験光を出力させる。この試験光は、第1の検査装置の光スイッチによって複数本の光ファイバに順次入力される。各光ファイバを通過した試験光は、第2の検査装置の光スイッチに達する。第2の検査装置の光スイッチは、第1の検査装置の光スイッチが選択している光ファイバを選択し、試験光を入力する。この試験光は、第2の検査装置の第1の光検出部に達し、第2の光検出部において試験光の第1の強度が検出される。同時に、第1の検査装置の第2の光検出部において試験光の第2の強度が検出される。損失算出部は、第1の検査装置の第2の強度から、第2の検査装置の第1の強度、第1の検査装置の内部損失記録部に記録された損失、及び、第2の検査装置の内部損失記録部に記録された損失を差し引いた値に基づいて、複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する。
【0015】
上記の検査システム及び検査装置によれば、各検査装置の内部損失記録部に装置内部の光経路の損失が記録されているので、光伝送路の両側に配置される2つの検査装置を一箇所に持ち寄らずとも、光伝送路の光損失を精度良く測定することができる。また、各検査装置が第3の光検出部を有するので、各検査装置の機能を用いて装置内部の光経路の損失を容易に測定することができる。
【0016】
上記の検査システムにおいて、第1及び第2の検査装置は、第1の検査装置と第2の検査装置との間において光伝送路とは独立して通信を行うための通信部を更に有してもよい。同様に、上記の検査装置は、他の検査装置との間において光伝送路とは独立して通信を行うための通信部を更に備えてもよい。この場合、一方の検査装置において検出された第1の強度、及び一方の検査装置の内部損失記録部に記録された内部損失に関するデータを、他方の検査装置に容易に送信することができる。従って、光伝送路の一端側に設置された損失算出部が、複数本の光ファイバそれぞれの損失を容易に算出することができる。また、通信経路が光伝送路から独立していることにより、光伝送路に接続不良等が存在する場合であっても各光ファイバの損失を算出することができ、接続不良が生じている光ファイバを特定することが可能となる。
【0017】
上記の検査システムにおいて、第2の検査装置の通信部は、第2の検査装置において検出された第1の強度、及び第2の検査装置の内部損失記録部に記録された損失に関するデータを、第1の検査装置の通信部に送信してもよい。
【0018】
上記の検査システム及び検査装置において、光源部は、互いに出力波長が異なる二以上の光源を有してもよい。光ファイバの曲げ損失の大きさは波長により異なるので、このように互いに出力波長が異なる二以上の光源を用いることにより、光ファイバの損失が曲げによるものか否かを判断することができる。
【0019】
上記の検査システム及び検査装置において、光伝送路は、2本以上の光ファイバを各々含むN本(Nは2以上の整数)の多心光ファイバ心線により構成され、各検査装置が有する光入出力ポートの個数は、N本の多心光ファイバ心線に含まれる光ファイバの総数以上であってもよい。この場合、異なる多心光ファイバ心線間で誤って接続した場合であっても、他の多心光ファイバを確認することにより、何れの多心光ファイバ心線間で接続したかを容易に知ることができる。すなわち、或る多心光ファイバ心線に対応する光入出力部に、その多心光ファイバ心線とは異なる多心光ファイバ心線を誤って接続した場合であっても、何れの多心光ファイバ心線を接続したかを容易に知ることができる。
【0020】
上記の検査システムにおいて、損失算出部は、第1の検査装置の内部に設けられていてもよく、第1の検査装置の外部に設けられていてもよい。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光伝送路の検査システム及び検査装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本開示の一実施形態に係る検査システムの構成を概略的に示す図である。図1に示すように、この検査システム1Aは、複数本の光ファイバにより構成される光伝送路20を検査するシステムであって、光伝送路20の一端側に設けられる第1の検査装置である検査装置10Aと、光伝送路20の他端側に設けられる第2の検査装置である検査装置10Bとを備える。検査装置10A,10Bは互いに同一の内部構成を有するので、それぞれ内部構成が異なる場合と比較して、検査装置を共通化できる利点がある。更に、検査システム1Aは、複数本の光ファイバそれぞれの損失を算出する損失算出部30を備える。光伝送路20は、例えば、2本以上の光ファイバを各々含むN本(Nは2以上の整数、例えばN=10)の多心光ファイバ心線21により構成される光ケーブルであってもよい。
【0023】
検査装置10A,10Bは、光源部11、光スイッチ12、光検出部13,14,15、内部損失記録部16、制御部17、通信部18、及び光入出力部19を有する。光源部11は、例えばレーザダイオードといった半導体発光素子と、この半導体発光素子を駆動するための回路とを含んで構成されている。光源部11は、光伝送路20の検査に用いられる試験光TLを出力する。試験光TLの波長は、例えば光伝送路20を用いる光通信システムに適用される波長である。一例では、試験光TLの波長は、1260nmから1360nm(Oバンド)、1360nmから1460nm(Eバンド)、1460nmから1530nm(Sバンド)、1530nmから1565nm(Cバンド)、1565nmから1625nm(Lバンド)、及び1625nmから1675nm(Uバンド)のいずれかに含まれる。試験光TLは、連続光であってもよく、試験項目によっては、周期的に強度が変化する高周波変調された光であってもよい。
【0024】
図2は、光入出力部19付近の構造を拡大して示す図である。図2に示すように、光入出力部19は、J個(Jは2以上の整数)の光入出力ポート19aを含んで構成される。光入出力ポート19aの個数Jは、N本の多心光ファイバ心線21に含まれる光ファイバ24の総数と同数か、それ以上である。なお、各多心光ファイバ心線21がM本(Mは2以上の整数、例えばM=12)の光ファイバ24を有する場合、光ファイバ24の総数はM×N(本)である。光入出力部19は例えば光レセプタクルであり、多心光ファイバ心線21の端部に取り付けられた光コネクタ22と着脱可能に接続される。これにより、各光入出力ポート19aは、対応する光ファイバ24に対して着脱可能に接続される。
【0025】
再び図1を参照する。光スイッチ12は、1×Jの光スイッチである。すなわち、光スイッチ12の一方側には単一の光入出力端が設けられており、光スイッチ12の他方側にはJ個の光入出力端が設けられている。検査装置10Aの光スイッチ12は1入力J出力の光スイッチとして機能し、検査装置10Bの光スイッチ12はJ入力1出力の光スイッチとして機能する。一方側の単一の光入出力端は、例えば光ファイバといった光線路42を介して光源部11と光学的に結合されている。他方側の各光入出力端は、例えば光ファイバといった光線路43を介して、それぞれ対応する光入出力ポート19aと光学的に結合されている。従って、光スイッチ12は、光源部11と各光入出力ポート19aとを選択的に結合する。光スイッチ12は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式のものであってもよく、機械式のものであってもよい。
【0026】
光線路42の途中には、2×2の光カプラ44が設けられている。光カプラ44の一方側の2つの光入出力端のうち一つは光源部11と光結合されており、他の一つは光検出部13と光結合されている。光カプラ44の他方側の2つの光入出力端のうち一つは光スイッチ12と光結合されており、他の一つは光検出部14と光結合されている。
【0027】
光検出部13は、本実施形態における第1の光検出部である。検査装置10Bにおいて光スイッチ12から入力された試験光TLの一部は、光カプラ44により分岐されて光検出部13に達する。これにより、検査装置10Bの光検出部13は、相手側の検査装置10Aから入力され光スイッチ12を通過した試験光TLの光強度を検出する。この光強度は、本実施形態における第1の強度である。光検出部14は、本実施形態における第2の光検出部である。検査装置10Aにおいて光源部11から出力された試験光TLの一部は、光カプラ44により分岐されて光検出部14に達する。これにより、検査装置10Aの光検出部14は、光源部11から光スイッチ12へ向かう試験光TLの光強度を検出する。この光強度は、本実施形態における第2の強度である。光検出部13,14は、例えばフォトダイオードといった半導体受光素子と、この半導体受光素子から出力される光電流を電圧信号に変換する回路とを含んで構成される。
【0028】
ここで、光伝送路20を検査する前の段階において用いられる構成要素について説明する。図3は、検査前の段階における検査装置10A及び10Bの接続態様を示す図である。図3に示すように、検査前の段階では光伝送路20が光入出力部19から取り外され、その代わりに試験用光ファイバ41の一端が光入出力部19に接続される。試験用光ファイバ41は単一の光ファイバであってもよく、複数本の光ファイバを含む光ケーブルであってもよい。試験用光ファイバ41の他端は、光入出力ポート51に接続される。光入出力ポート51と試験用光ファイバ41とは着脱可能であってもよく、半永久的に固定されていてもよい。
【0029】
光検出部15は、本実施形態における第3の光検出部である。光検出部15は、光入出力ポート51を介して試験用光ファイバ41の他端と光結合される。光検出部15は、光源部11から試験用光ファイバ41を介して受ける試験光TLの光強度を検出する。この光強度は、本実施形態における第3の強度である。光検出部13,14と同様に、光検出部15もまた、例えばフォトダイオードといった半導体受光素子と、この半導体受光素子から出力される光電流を電圧信号に変換する回路とを含んで構成される。
【0030】
内部損失記録部16は、その内部損失記録部16を備える検査装置10Aまたは10Bの内部の光経路の損失に関するデータを記録する部分である。内部損失記録部16は、例えばROMまたはハードディスクといった不揮発性の記憶デバイスによって構成され得る。なお、装置内部の光経路の損失は、光検出部15において検出される試験光TLの光強度(第3の強度)と、光検出部14において検出される、光源部11から光スイッチ12へ向かう試験光TLの光強度(第2の強度)との差に基づいて算出される。この計算は、制御部17において行われてもよく、損失算出部30において行われてもよい。
【0031】
通信部18は、検査装置10Aと検査装置10Bとの間において光伝送路20とは独立して通信を行うための部分である。通信部18は、例えばメディアコンバータを含んで構成され、電気信号を光信号に変換して相手側の検査装置に送信するとともに、相手側の検査装置から受信した光信号を電気信号に変換する。そのため、検査装置10A,10Bは、光伝送路20とは別の光伝送路52によって互いに接続されてもよい。光伝送路52は、例えば単心の光ファイバケーブルである。通信部18は、有線又は無線を介して損失算出部30と接続される。通信部18は、光検出部13,14,15において検出された光強度に関するデータを損失算出部30へ送信する。更に、通信部18は、検査装置10Aの光スイッチ12と検査装置10Bの光スイッチ12とを連携して動作させるために用いられる。なお、通信部18は、メディアコンバータに限られず、例えばLAN等の電気的な通信手段であってもよい。
【0032】
制御部17は、例えば配線基板上に実装されたCPU、RAM及びROMを有するコンピュータによって構成され得る。制御部17は、光源部11及び光スイッチ12と電気的に接続されており、これらの動作を制御する。制御部17は、光検出部13,14,15及び通信部18と電気的に接続されている。制御部17は、光検出部13,14,15において検出された光強度に関するデータを通信部18へ提供する。制御部17は、内部損失記録部16と電気的に接続されており、自ら演算した、或いは通信部18を通じて損失算出部30から受けた装置内部の光経路の損失に関するデータを、内部損失記録部16に記録させる。
【0033】
損失算出部30は、検査装置10Aの一部として検査装置10Aの内部に設けられてもよく、検査装置10Aとは別体として検査装置10Aの外部に設けられてもよい。図1は、損失算出部30が検査装置10Aの外部に設けられた場合を示している。この場合、損失算出部30は、有線または無線を介して検査装置10Aと接続され、検査装置10Aの通信部18と通信を行う。損失算出部30は、光伝送路20に含まれる複数本の光ファイバ24それぞれの損失を算出する。具体的には、損失算出部30は、下記の数式に基づいて、複数本の光ファイバ24それぞれの損失を算出する。
〔光ファイバの損失〕=Pa-Pb-La-Lb ・・・(1)
【0034】
上記の数式(1)において、Paは、検査装置10Aの光源部11から光スイッチ12へ向かう試験光TLの光強度(第2の強度)である。Paは、検査装置10Aの光検出部14にて検出される。Pbは、検査装置10Bの光スイッチ12から入力された試験光TLの光強度(第1の強度)である。Pbは、光伝送路20を検査装置10A及び10Bに接続した状態で、検査装置10Bの光検出部13にて検出される。Laは、検査装置10A内部の光経路の損失である。Laは、試験用光ファイバ41を検査装置10Aの光入出力ポート19aと光入出力ポート51との間に接続した状態で、検査装置10Aの光検出部15にて検出される。Laは、検査装置10Aの内部損失記録部16に記録される。Lbは、検査装置10B内部の光経路の損失である。Lbは、試験用光ファイバ41を検査装置10Bの光入出力ポート19aと光入出力ポート51との間に接続した状態で、検査装置10Bの光検出部15にて検出される。Lbは、検査装置10Bの内部損失記録部16に記録される。このように、本実施形態の損失算出部30は、PaからPb、La、及びLbを差し引いた値に基づいて、複数本の光ファイバ24それぞれの損失を算出する。
【0035】
図4は、損失算出部30のハードウェア構成例を示すブロック図である。図4に示すように、損失算出部30は、CPU31、RAM32、ROM33、入力装置34、通信モジュール35、補助記憶装置36、及び出力装置37等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。損失算出部30は、これらの構成要素がプログラム等により動作することによって、上述した機能を実現する。
【0036】
ここで、検査システム1Aの使用方法及び動作について説明する。まず、この検査システム1Aを用いて光伝送路20の検査を行う前、例えば検査装置10A,10Bの製造時などに、各検査装置10A,10Bの光入出力ポート19aに試験用光ファイバ41の一端を接続する。そして、光源部11から試験光TLを出力させる。試験光TLは、光スイッチ12、光入出力ポート19a、及び試験用光ファイバ41を通って光検出部15に達し、光検出部15において試験光TLの光強度が検出される。同時に、光検出部14において試験光TLの光強度が検出される。試験用光ファイバ41は測定対象である光伝送路20と比較して十分に短くできるので、装置内部の光経路の損失La,Lbは、これらの光強度の差に基づいて得られる。損失La,Lbは、例えば損失算出部30または制御部17により算出され、内部損失記録部16に記録される。その後、試験用光ファイバ41は光入出力ポート19aから取り外される。
【0037】
検査システム1Aを用いて光伝送路20の検査を行う際には、光伝送路20を構成する複数本の光ファイバ24の一端に検査装置10Aの複数の光入出力ポート19aを接続し、他端に検査装置10Bの複数の光入出力ポート19aを接続する。次に、検査装置10Aの光源部11から試験光TLを出力させる。この試験光TLは、検査装置10Aの光スイッチ12を介して一の光ファイバ24に入力される。この光ファイバ24を通過した試験光TLは、検査装置10Bの光スイッチ12に達する。検査装置10Bの光スイッチ12は、検査装置10Aの光スイッチ12が選択している光ファイバ24を選択し、試験光TLを光ファイバ24から出射させる。この試験光TLは、検査装置10Bの光検出部13に達し、光検出部13においてこの試験光TLの光強度Pbが検出される。同時に、検査装置10Aの光検出部14において試験光TLの光強度Paが検出される。この後、検査装置10A,10Bの光スイッチ12が別の光ファイバ24を選択し、同様の動作が行われる。以降、光伝送路20を構成する複数本の光ファイバ24の全てに対して同様の動作が行われる。損失算出部30は、上記の数式(1)に基づいて、複数本の光ファイバ24それぞれの損失を算出する。
【0038】
以上に説明した検査システム1A及び検査装置10A,10Bによって得られる効果について説明する。図9は、比較例としての検査システム100の構成を概略的に示す図である。図9に示すように、この検査システム100は、光伝送路20を検査するシステムであって、光伝送路20の一端側に設けられる検査装置110Aと、光伝送路20の他端側に設けられる検査装置110Bとを備える。更に、検査システム100は、複数本の光ファイバ24それぞれの損失を算出する図示しない損失算出部を備える。検査装置110A,110Bは、光源部11、光スイッチ12、光検出部13,14、制御部17、及び光入出力部19を有する。これらの各要素の詳細は、本実施形態の検査装置10A,10Bと同様である。
【0039】
この検査システム100の損失算出部は、下記の数式に基づいて、複数本の光ファイバ24それぞれの損失を算出する。
〔光ファイバの損失〕=Pa-Pb ・・・(2)
Paは、検査装置110Aの光源部11から光スイッチ12へ向かう試験光TLの光強度であって、検査装置110Aの光検出部14にて検出される。Pbは、検査装置110Bの光スイッチ12から入力された試験光TLの光強度であって、検査装置110Bの光検出部13にて検出される。
【0040】
しかしながら、光損失は光ファイバ24だけでなく検査装置110A,110Bの内部、特に光スイッチ12においても生じる。従って、光ファイバ24の光損失を精度良く測定するためには、光伝送路20の両側に配置される各検査装置110A,110B内部の光損失分を予め差し引くように調整すなわちゼロ校正を行う必要がある。そのため、従来においては、例えば光伝送路20の両側に配置される2つの検査装置110A,110Bを測定を行う前に一箇所に持ち寄る。そして、試験用の短い光伝送路を用いてこれらの検査装置110A,110B同士を接続し、これらの検査装置110A,110Bの組み合わせにおいてゼロ校正を行う。しかし、測定対象である光伝送路20は長く、その一端と他端とは互いに遠く離れていることが通常なので、検査装置110A,110Bの運搬に手間が掛かるという課題がある。また、検査装置110A,110Bの組み合わせが、ゼロ校正を行った組み合わせに限定され、他の検査装置を使用できないという課題もある。
【0041】
これらの課題に対し、本実施形態の検査システム1Aによれば、各検査装置10A,10Bの内部損失記録部16に装置内部の光経路の損失が記録されているので、光伝送路20の両側に配置される2つの検査装置10A,10Bを一箇所に持ち寄らずとも、光伝送路20の光損失を精度良く測定することができる。また、各検査装置10A,10Bが光検出部15を有するので、各検査装置10A,10Bの機能を用いて装置内部の光経路の損失を容易に測定することができる。更に、各検査装置が自身の損失を保持しているので、検査装置の組み合わせが限定されず、例えば検査装置が故障した場合に他の検査装置によって代替できる等、利便性を向上できる。また、検査装置の組み合わせを管理する手間を省くことができる。
【0042】
また、一般的にコネクタ付きの多心光ファイバ心線21には極性が存在する。図5図6及び図7は、コネクタ付きの多心光ファイバ心線21の極性の例をそれぞれ示している。これらの図において、多心光ファイバ心線21の両端に取り付けられた光コネクタの12個の端子に、1から12までの番号が付されている。図5はTIA568.3のType-A(Straight)の極性を示す。図6はTIA568.3のType-B(Reversed)の極性を示す。図7はTIA568.3のType-C(Pairs Flipped)の極性を示す。上述した比較例に係る検査システム100の場合、検査対象であるコネクタ付き多心光ファイバ心線21の極性に合わせて試験用の多心光ファイバ心線の極性を選択し、ゼロ校正を行う。故に、他の極性の多心光ファイバ心線21を検査することができず、汎用性を欠くという問題がある。これに対し、本実施形態では各検査装置10A,10Bにおいて光ファイバ24毎に独立して内部損失La,Lbを記録する。したがって、多心光ファイバ心線21の極性に合わせて内部損失La,Lbの組み合わせを選択することにより、検査装置10A,10Bとして任意の検査装置を組み合わせつつ、様々な極性の多心光ファイバ心線21を容易に検査することができる。
【0043】
本実施形態のように、検査装置10A,10Bは、検査装置10Aと検査装置10Bとの間において光伝送路20とは独立して通信を行うための通信部18を更に有してもよい。これにより、検査装置10Bの光検出部13において検出された光強度Pbに関する情報、及び検査装置10Bの内部損失記録部16に記録された内部損失Lbに関するデータを、検査装置10Aに容易に送信することができる。従って、光伝送路20の一端側に設置された損失算出部30が、複数本の光ファイバ24それぞれの損失を容易に算出することができる。また、通信経路が光伝送路20から独立しているので、光伝送路20に接続不良等が存在する場合、或いは、極性の判断ミス等で接続されるべき光ファイバ24の組み合わせが間違っている場合、例えばタイプAで施工すべきところをタイプBで施工した場合等であっても、他の光ファイバ24の損失を算出することができ、且つ接続不良が生じている光ファイバ24を特定することも可能となる。更に、制御部17が光スイッチ12を制御して通光する経路を探ることにより、何れの光ファイバ24の組み合わせで接続されているかを容易に判断することができ、接続ミスの解析を容易に行うことができる。
【0044】
本実施形態のように、光伝送路20は、2本以上の光ファイバ24を各々含むN本の多心光ファイバ心線21により構成され、検査装置10A,10Bが有する光入出力ポート19aの個数は、N本の多心光ファイバ心線21に含まれる光ファイバ24の総数以上であってもよい。この場合、異なる多心光ファイバ心線21間で誤って接続した場合であっても、他の多心光ファイバを確認することにより、何れの多心光ファイバ心線21間で接続したかを容易に知ることができる。すなわち、或る多心光ファイバ心線21に対応する光入出力部19に、その多心光ファイバ心線21とは異なる多心光ファイバ心線21を誤って接続した場合であっても、何れの多心光ファイバ心線21によって接続したかを容易に知ることができる。
【0045】
この場合、検査装置10A及び10Bにおける光スイッチ12の各ポートと各光ファイバ心線21とが互いにどのように接続されるかという接続パターン情報(例えば、ポート番号と心線番号との対応情報)、並びに、各多心光ファイバ心線21の組分け情報を、記録して保持しておく。そして、各接続パターンにおける各光ファイバ心線21の光損失の予測値と測定結果とを照合することにより、例えば、多心光ファイバ心線21を別の多心光ファイバ心線21に対応する光入出力部19に入れ間違えて接続してしまったような場合でも、このような誤った状況にあることを検出することが可能となる。なお、前記「予測値」及び「測定結果」には、具体的な損失値だけでなく、通光の有無も含まれる。
【0046】
さらには、接続されるべきパターン別にこれらの情報を保持しておくことにより、少なくとも2つの多心光ファイバ心線21の極性が互いに異なるような場合、或いは少なくとも2つの多心光ファイバ心線21の心線数が互いに異なる場合でも、接続異常や接続間違いを容易に検出可能になる。
【0047】
(変形例)
図8は、上記実施形態の一変形例に係る検査装置10Cの構成を概略的に示す図である。検査装置10Cは、上記実施形態の光源部11に代えて、光源部61を有する。光源部61は、互いに出力波長が異なる二以上(図示例では3個)の光源61a,61b,61cを有する。光源61a,61b,61cは、3入力1出力の光カプラ46を介して光線路42と結合されている。また、光源61a,61b,61cは制御部17と電気的に接続されており、制御部17からの指示に応じて試験光TLa,TLb,TLcを順に出力する。
【0048】
本変形例のように、光源部61は、互いに出力波長が異なる二以上の光源61a,61b,61cを有してもよい。例えば、ITU-T G.625のシングルモード光ファイバにおいては、曲げ半径が15mmの場合、波長が1.31μmのときには曲げ損失が2.33×10-2dB/m程度、波長が1.55μmのときには曲げ損失が1.45dB/m程度、波長が1.65μmのときには曲げ損失が4.77dB/m程度となる。このように、光ファイバ24の曲げ損失の大きさは波長により異なるので、各波長での損失差から曲げ半径を類推することができる。故に、互いに出力波長が異なる二以上の光源61a,61b,61cを用いることにより、光ファイバ24の損失が曲げによるものか否かを判断することができる。
【0049】
本発明による光伝送路の検査システムは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、複数の多心光ファイバ心線21から構成される光伝送路20を検査対象として例示したが、光伝送路20は単一または複数の多心光ファイバテープ心線から構成されてもよく、複数本の単一の光ファイバ24が多心光ファイバ心線21を構成していてもよい。或いは、これらが組み合わされて多心光ファイバ心線21を構成していてもよい。また、上記実施形態では検査装置10A、10Bが通信部18を有する場合を例示したが、検査装置10Bの光検出部13において検出される光強度に関する情報、及び内部損失記録部16に記録されたデータを、他の手段、例えば光ファイバ24を用いた光通信を介して損失算出部30に提供できる場合等には、通信部18を不要にすることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1A…検査システム
10A,10B,10C…検査装置
11…光源部
12…光スイッチ
13,14,15…光検出部
16…内部損失記録部
17…制御部
18…通信部
19…光入出力部
19a…光入出力ポート
20…光伝送路
21…多心光ファイバ心線
22…光コネクタ
24…光ファイバ
30…損失算出部
34…入力装置
35…通信モジュール
36…補助記憶装置
37…出力装置
41…試験用光ファイバ
42,43…光線路
44,46…光カプラ
51…光入出力ポート
61…光源部
61a,61b,61c…光源
TL,TLa,TLb,TLc…試験光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9