(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】断熱生地
(51)【国際特許分類】
D06M 11/79 20060101AFI20240115BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240115BHJP
D06M 11/78 20060101ALI20240115BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20240115BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
D06M11/79
F16L59/02
D06M11/78
D06M15/643
D06M15/263
(21)【出願番号】P 2021545321
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2019077592
(87)【国際公開番号】W WO2020074700
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-16
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509304265
【氏名又は名称】マイクロサーム ナムローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MICROTHERM N.V.
【住所又は居所原語表記】INDUSTRIEPARK NOORD-1,B-9100 SINT NIKLAAS,BELGIUM
(73)【特許権者】
【識別番号】521151304
【氏名又は名称】ペー・エル・テー・セー・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】PRTC NV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブデュル-カデル,オラス
(72)【発明者】
【氏名】デメーレナーレ,ヤン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516163(JP,A)
【文献】特開2009-299893(JP,A)
【文献】国際公開第2017/220577(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/093002(WO,A2)
【文献】特開2013-199421(JP,A)
【文献】特開2011-080158(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009042526(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00-23/18
F16L 59/02
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤を10%w未満の含有量で含む不織テキスタイル生地層を含み、前記%wは、前記不織テキスタイル生地層の総重量にわたって表され、前記結合剤は、官能性シラン、テトラエチルオルトシリケート、水ガラス、シリコーン、シロキサン、コロイド状シリカおよびアクリルからなる群から選択され、
前記不織テキスタイル生地層は、15~
50%wの範囲の量で平均細孔サイズ50~200nmのヒュームドシリカ粉末を
含み、前記ヒュームドシリカ粉末の前記%wは、前記ヒュームドシリカ粉末が存在する前記不織テキスタイル生地層の重量に基づき、
前記ヒュームドシリカ粉末は、前記不織テキスタイル生地層に前記ヒュームドシリカ
粉末が充填または含浸されて、またはヒュームドシリカ粉末の層が不織テキスタイル生地層の間に挟まれて存在する、可撓性の断熱生地。
【請求項2】
前記ヒュームドシリカ
粉末の平均細孔サイズは、50~100n
mである、請求項1に記載の断熱生地。
【請求項3】
前記ヒュームドシリカ
粉末の量は
、40~50%wの範囲であ
り、前記ヒュームドシリカ粉末の前記%wは、前記ヒュームドシリカ粉末が存在する前記不織テキスタイル生地層の重量に基づく、請求項1または2に記載の断熱生地。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカ
粉末は疎水性ヒュームドシリカである
、請求項
1に記載の断熱生地。
【請求項5】
前記
不織テキスタイル生地層は、存在するヒュームドシリカ
粉末の重量に基づいて、20%wま
での量の赤外線吸収剤を含有する
、請求
項1に記載の断熱生地。
【請求項6】
前記
不織テキスタイル生地層は、5~40m
mの範囲の厚みを有する
、請求
項1に記載の断熱生地。
【請求項7】
ヒュームドシリカ
粉末を添加する前の前記
不織テキスタイル生地層は、100~180kg/m
3
の範囲の密度を有する
、請求項
1に記載の断熱生地。
【請求項8】
前記断熱生地のヒュームドシリカ含有量は、50~80kg/m
3
の範囲である、請求項5に記載の断熱生地。
【請求項9】
前記不織テキスタイル生地層は
、耐高温性繊維を含む
、請求項
1に記載の断熱生地。
【請求項10】
前記
不織テキスタイル生地層は、片側または両側に、第1の外側テキスタイル層および/または第2の外側テキスタイル層が設けられている
、請求項
1に記載の断熱生地。
【請求項11】
断熱材としての
、請求
項1に記載の断熱生地の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、断熱生地、その提供方法および各種製品の断熱のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エアロゲルは、特に室温におけるその優れた断熱特性で知られている。
このようなエアロゲルで充填され、それによって断熱に適した布を提供する布が、例えばWO 2017/220577 A1から公知である。WO 2017/220577は、少なくとも3つの層を含む積層構造を有する断熱布を記載し、第1の外側テキスタイル層および第2の外側テキスタイルは前記布の外面を提供し、前記外側テキスタイル層は、エアロゲル粉末を含むテキスタイル生地を含む中間層に積層される。
このようなエアロゲルで作られた布は、製造中、設置中、および使用中に塵の発生を被る。また、前記外側テキスタイル層を設けることによって、布と断熱される製品、例えばパイプとの間の緊密な接触を少なくし得る。そのようなエアロゲルで作られたさらなる布は、適用性が限られており、300℃未満の温度でのみ適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
本発明の目的は、塵の発生が少なく、高温での使用が可能であり、容易に周囲に設置でき、断熱される製品との良好な接触を提供する、代替的な断熱生地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、断熱生地が提供される。断熱生地は、1~70%wの範囲の量で平均細孔サイズ50~200nmのヒュームドシリカ粉末を含むテキスタイル生地層を含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明による断熱生地においてエアロゲルの代わりにヒュームドシリカを使用することによって、外側テキスタイル層が存在しなくても、塵発生の問題が排除されるか、または少なくとも低減される。さらに、ヒュームドシリカは、エアロゲルよりもはるかに高い温度(1000℃まで)において安定しており、エアロゲルよりもはるかに低いコストで入手可能である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明を実施するための形態
本発明の前記およびその他の特徴、特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。なお、この説明は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0007】
本発明は、特定の実施形態に関して説明される。特許請求の範囲で使用される「備える(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されるものとして解釈されるべきではないことに留意されたく、それは、他の要素またはステップを排除するものではない。したがって、それは、言及されるような記載された特徴、ステップ、または構成要素の存在を特定するものとして解釈されることになるが、1つまたは複数の他の特徴、ステップ、もしくは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。したがって、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されない。これは、本発明に関して、装置の唯一の関連構成要素がAおよびBであることを意味する。
【0008】
本明細書全体を通して、「一実施形態」または「ある実施形態」への言及がなされる。そのような言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。したがって、本明細書全体を通して様々な部分における「一実施形態において」または「ある実施形態において」という表現の出現は、同じ実施形態を指す可能性はあるが、必ずしも全て同じ実施形態を指すわけではない。さらに、当業者には明らかであろうように、特定の特徴または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の好適な態様で組み合わせることができる。
【0009】
独立請求項および従属請求項は、本発明の特定の好ましい特徴を説明する。従属請求項からの特徴は、独立請求項もしくは他の従属請求項の特徴、ならびに/または上記および/もしくは以下で記載される特徴を、適宜組み合わせることができる。
【0010】
本発明で使用するヒュームドシリカ粉末の細孔サイズは、平均50~200nm、例えば50~100nm、好ましくは50~70nmである。
ヒュームドシリカ内の細孔は、一般に、一次粒子の間に位置しており(粒子間細孔)、一次粒子自体の中に位置していない(粒子内細孔)。
【0011】
細孔サイズは、ガス吸着/脱着によって測定および分析することができる。ガス吸着分析は、一般に、表面積および空孔率の測定に使用される。これは、固体材料を様々な条件下で気体または蒸気に曝露し、重量取り込みまたはサンプル体積のいずれかを評価することを伴う。これらのデータの分析は、骨格密度、空孔率、総細孔容積および細孔サイズ分布を含む固体の物理的特性に関する情報を提供する。通常、窒素ガスが、ヒュームドシリカの細孔サイズ判定に使用される。細孔サイズの測定は、一般に、規格ISO15901-2に従って行われる。
【0012】
ヒュームドシリカ粉末の%wは、それが存在するテキスタイル生地層の重量に基づく。
より好ましくは、断熱生地は、15~50%wの範囲、例えば40~50%wの範囲の量でヒュームドシリカ粉末を含むテキスタイル生地層を含む。
【0013】
本発明による断熱生地のヒュームドシリカ含有量は、20kg/m3以上、より好ましくは50kg/m3以上、例えば50~80kg/m3の範囲、例えば約50kg/m3または約60kg/m3または約70kg/m3であってもよい。
【0014】
テキスタイル生地層内のヒュームドシリカは、テキスタイル生地層の表面および/または厚みにわたって均一に分布していることが好ましい。
【0015】
ヒュームドシリカは、好ましくは疎水性であり、断熱下腐食(CUI)を引き起こさない。
【0016】
本発明で使用するヒュームドシリカ粉末は、上記の範囲内の平均細孔サイズを有するいずれのヒュームドシリカであってもよい。
【0017】
好ましくは、本発明による使用のためのヒュームドシリカは、50~380m2/g、好ましくは100~300m2/g、最も好ましくは約200m2/gの範囲の表面積を有する。比表面積は、一般に、規格ISO9277に従ってBET(Brunauer, Emmett and Teller)法に基づいて決定される。
【0018】
フュームドシリカは、火炎中で生産されるため、発熱性シリカとしても知られ、非晶質シリカの微小液滴(一次粒子)が、分岐した鎖状の三次元の二次粒子に融合され(凝集体)、次いでこれが三次粒子に凝集して、綿毛状の粉末をもたらす。得られる粉末は、極めて低いかさ密度および高い表面積を有する。一次粒子サイズは、一般に5~50nmである。粒子は非多孔質であり、一般に50~600m2/gの表面積を有する。かさ密度は、一般に30~100kg/m3、好ましくは40~60kg/m3、例えば約60kg/m3である。
【0019】
ヒュームドシリカは、四塩化ケイ素の火炎熱分解から、または3000℃の電気アーク中で気化した石英サンドから作製される。主要な世界的な生産者は、Evonik(AEROSILの名称で販売されている)、Cabot Corporation, Wacker Chemie, Dow Corning, Heraeus, Tokuyama Corporation, OCI, OrisilおよびXunyuchemである。
【0020】
本発明で用いるヒュームドシリカは、疎水性のヒュームドシリカであることが好ましい。
【0021】
疎水性ヒュームドシリカは、火炎加水分解から直接得られ、粒子表面上に自由にアクセス可能なシラノール基(Si-OH)を有する親水性グレードを、疎水性特性付与剤、例えばシラン、シラザンまたはシロキサン(例えば、ハロゲンシラン、環状ジメチルシロキサン)で化学処理することによって製造される。疎水性ヒュームドシリカは、低水分吸着によって特徴付けられる。また、それらは、例えば断熱されるパイプの腐食保護に特に適している。
【0022】
疎水性ヒュームドシリカ粉末は、好ましくは、ヒュームドシリカ粉末の総重量に基づいて、1~15%w、好ましくは1~5%w、最も好ましくは1~3%wの疎水性剤含有量を有する。疎水性剤含有量は一般にシラン含有量とも称され、本明細書で使用される場合、シラン含有量は、シラン系化合物、シロキサン系化合物、およびシラザン系化合物などの、少なくとも1つの共有結合的ケイ素-炭素結合を含有するシリコーンの任意の有機誘導体の含有量を含むことを意味する。
好ましくは、シラン含有量は、燃焼性を低く保つために、低く保たれる。
【0023】
本発明によるヒュームドシリカ粉末を含有する断熱生地は、一般に、非燃焼性試験ISO1182においてユーロクラスA1性能を得るが、エアロゲルを含有する断熱生地は、一般に、エアロゲルのシラン含有量(一般に、15%w超、例えば20%wである)がはるかに高いため、A2分類を得るに過ぎない。
【0024】
本発明に従って使用するのに好適な疎水性ヒュームドシリカには、Evonikから商品名AEROSILで市販されている以下の製品:R 972, R 974, R 104, R 106, R 202, R 208, R 805, R 812, R 812 S, R 816, NAX 50, NY 50, RX 200, RX 300, RX 50, RY 200, RY 200 L, RY 200 S, RY 300, RY 50, NX 90 G, NX 90 S, NX 130が含まれる。他の好適な疎水性ヒュームドシリカは、H13L, H15, H17, H18, H20, H2000, H20RH, H30, H30LM, H30RMなどの商品名HDKでWackerから市販されている。また、疎水性ヒュームドシリカは、OCI CompanyからKONASILの商品名で、例えばK-P15, K-P20, K-D15, K-T30およびK-T20が入手可能である。疎水性ヒュームドシリカは、Tokuyama社からもREOLOSILの商品名(例えばDM-10)で入手可能である。
特に、AEROSIL R 974およびRX 200が好ましい。AEROSIL R974は、200m2/gの比表面積を有する親水性ヒュームドシリカをベースにしてジメチルジクロロシランで後処理された150~190m2/gの比表面積を有する疎水性ヒュームドシリカである。
【0025】
疎水性ヒュームドシリカをそのようなものとしてテキスタイル生地層に添加する代わりに、ヒュームドシリカの疎水化を、ヒュームドシリカがテキスタイル生地層に添加されてから、たとえばシリコーンによるスプリンクルコーティングによって、またはEP 2622253に記載されている技術を使用して、行うことができる。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、ヒュームドシリカ粉末は、室温で30mW/m*K未満の熱伝導率を有してもよい。この熱伝導率は、ASTM C518に従って測定される。ヒュームドシリカ粉末は、22~25mW/m*Kの範囲の熱伝導率を有してもよい。
【0027】
好適な二酸化チタン、ジルコン、ルメナイト、ジルコニア、粘土、グラファイト、カーボンブラック、炭化ケイ素、酸化鉄、またはマグネタイト粉末などの赤外線吸収剤を添加することにより、特に300℃超または500℃超などの高温において、ヒュームドシリカの熱伝導率をさらに低減することが可能になる。
好ましいIR吸収剤は炭化ケイ素である。好ましくは、IR吸収剤の粒子サイズは、2~7μmの範囲である。
このIR吸収剤またはIR吸収剤の混合物は、一般に、存在するヒュームドシリカの重量に基づいて、20%wまで、好ましくは10%wまで、最も好ましくは3~7%wの範囲の量で添加される。
【0028】
テキスタイル生地層のためのさらなる添加物は、例えばAIOH、MgOH、MgCO3、3H2O、もしくは吸熱性の任意の水和鉱物(合成もしくは天然)もしくはホウ酸亜鉛などの難燃性鉱物などの難燃剤、もしくは吸音剤などの機能性鉱物添加物、またはそれらの組み合わせなどの難燃剤を含む。
【0029】
ヒュームドシリカを含有する本断熱生地のテキスタイル生地層は、一般に、繊維のネットワークからなる可撓性材料であり、好ましくは、1.5インチ(3.81cm)以下の曲げ半径を有する管状物体の周りに沿って曲げやすい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、テキスタイル生地層は、5~40mm、好ましくは5~20mm、最も好ましくは約10mmの範囲の厚みを有してもよい。厚みは、ここでは0.5kPaの圧力を使用してISO9073に従って測定される。
【0031】
テキスタイル生地は、織製、不織製、編成、または編組テキスタイル生地を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、テキスタイル生地層は、不織テキスタイル生地を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、ヒュームドシリカを添加する前のテキスタイル生地は、100~180kg/m3の範囲、好ましくは110~150kg/m3の範囲、例えば110~130kg/m3の範囲、例えば約110~120kg/m3の密度を有してもよい。ヒュームドシリカを含有するテキスタイル層の密度は、一般に、160~260kg/m3の範囲となる。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、テキスタイル生地は、1000~1800g/m2、例えば1100~1800g/m2の範囲、より好ましくは1100~1500g/m2、例えば1100~1300g/m2、例えば約1100g/m2の表面重量を有してもよい。表面重量は、本明細書ではEN 12127に従って測定される。
【0035】
テキスタイル生地は、高温耐性繊維、すなわち200℃超、例えば500℃超、さらに800℃超のガラス転移温度を有する繊維を含むことが好ましい。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、テキスタイル生地はガラス繊維を含むことができる。
一例として、テキスタイル生地は、Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、および有機繊維、PE繊維またはPET繊維などからなる群から選択される繊維を含む。
【0037】
テキスタイル生地の繊維は、ガラス繊維のみを含んでもよい。
繊維は、5~20μmの範囲、例えば6~20μmの範囲、より好ましくは9~13μmの範囲、例えば9~11μmの範囲の直径を有してもよい。繊維は、好ましくは15mm未満、好ましくは約10mmの平均長さを有するステープル繊維であり得る。繊維は、好ましくは15mm未満、好ましくは約10mmの最大長さを有してもよい。
【0038】
好適なテキスタイル生地層は、ラトビアのJSC Valmiera Glass Fiberのガラス繊維針フェルトF01、F21およびF40に基づく。
【0039】
テキスタイル生地層は、特に不織層である場合に、結合剤を含有することが好ましく、結合剤含有量は、好ましくは10%w未満、最も好ましくは1~3%wである。この%wは、テキスタイル生地層の総重量にわたって表される。好適な結合剤の例としては、Evonikから市販されているDynasyanなどの官能性シラン、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、水ガラス、シリコーン、シロキサン、コロイド状シリカおよびアクリルが挙げられる。
結合剤を添加することの利点は、塵の形成がさらに低減され、ヒュームドシリカをテキスタイル生地層に注入することがより容易であることである。
【0040】
本発明による断熱生地は、一般に、35~50mW/m*Kの範囲の熱伝導率を有する。この熱伝導率は、ASTM C177に従って測定した300℃における熱伝導率である。
製品は、50mW/m*K未満の熱伝導率を有する場合、断熱性であると理解される。
【0041】
本発明による断熱生地は依然として可撓性であるが、設置および/または使用中に放出される塵が少ないかまたはまったくない。生地は実質的に不燃性であり、25mmまで、さらには50mmまでの厚みを有し得る。
【0042】
本発明による断熱生地のテキスタイル生地層は、好ましくは参照によりその全体が本明細書に組み込まれるEP 3023528A1に記載の技術を利用するヒュームドシリカで充填される。中空針によって、ヒュームドシリカ粉末は、溶媒、例えばヘキサン中に懸濁した状態でテキスタイル生地に注入され、その後、溶媒がテキスタイル生地から除去され、ヒュームドシリカ粉末がテキスタイル生地内に残る。
代替的に、テキスタイル生地層は、浸漬技術によって、または電荷を印加して生地層にヒュームドシリカ粉末を含浸させることによって、またはスティッチもしくは熱間圧延によって連結されるテキスタイル生地層の間におけるヒュームドシリカ粉末の層のサンドイッチ技法によって複合材が形成される層状複合法によって、ヒュームドシリカで充填されてもよい。
【0043】
本発明の断熱生地はさらに、ヒュームドシリカ含有テキスタイル生地層に積層される第1および/または第2の外側テキスタイル層を備えることができ、第1の外側テキスタイル層は、好ましくは40cc/sec*5cm2以下の通気性を有し、第2の外側テキスタイル層は、好ましくは40cc/sec*5cm2以下の通気性を有する。
【0044】
通気性は、任意の好適な装置を使用して測定され、典型的には直径25mmの円形表面を使用して、試料表面間の98パスカルの圧力降下で試料表面を通過する空気の体積を測定する。
【0045】
より好ましくは、第1および/または第2の外側テキスタイル層の通気性は、35cc/sec*5cm2以下、例えば20cc/sec*5cm2以下、またはさらに5cc/sec*5cm2以下である。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、第1および/または第2の外側テキスタイル層は、0.05~3mmの範囲の厚みを有してもよい。いくつかの実施形態によれば、第1の外側テキスタイル層は、0.05~3mmの範囲の厚みを有してもよい。いくつかの実施形態によれば、第2の外側テキスタイル層は、0.05~3mmの範囲の厚みを有してもよい。
【0047】
第1および/または第2の外側テキスタイル層は、0.1~3mmの範囲、例えば0.1~0.5mmの範囲、より好ましくは0.2~0.3mmの範囲の厚みを有してもよい。
任意選択的に、第1の外側テキスタイル層および第2の外側テキスタイル層の厚みは同一である。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、第1および/または第2の外側テキスタイル層は、3~1300kg/m3の範囲の密度を有してもよい。いくつかの実施形態では、第1の外側テキスタイル層は、3~1300kg/m3の範囲の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、第2の外側テキスタイル層は、3~1300kg/m3の範囲の密度を有する。任意選択的に、第1の外側テキスタイル層および第2の外側テキスタイル層の密度は同一である。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、第1および/または第2の外側テキスタイル層は、10~30g/m2の表面重量を有してもよい。いくつかの実施形態によれば、第1の外側テキスタイル層は、10~30g/m2の表面重量を有してもよい。いくつかの実施形態によれば、第2の外側テキスタイル層は、10~30g/m2の表面重量を有してもよい。
【0050】
第1および/または第2の外側テキスタイル層は、15~25g/m2、より好ましくは17~21g/m2の表面重量を有してもよい。任意選択的に、第1の外側テキスタイル層および第2の外側テキスタイル層の表面重量は同一である。
【0051】
第1および第2の外側層は、テキスタイル層であり、すなわち、1.5インチ(3.81cm)以下の曲げ半径を有する管状物体の周りに沿って曲げやすくあるべきである。
【0052】
第1および第2の外側層の繊維は、Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、および有機繊維、好ましくはPE繊維またはPET繊維からなる群から選択され得る。
【0053】
第1および第2の層に使用される繊維は、5~20μmの範囲、例えば6~20μmの範囲、より好ましくは9~13μmの範囲、例えば9~11μmの範囲の直径を有してもよい。繊維は、好ましくは15mm未満、好ましくは約10mmの平均長さを有するステープル繊維であり得る。繊維は、好ましくは15mm未満、好ましくは約10mmの最大長さを有してもよい。
【0054】
第1および第2の層は、高温耐性繊維、すなわち、200℃超、例えば500℃超、さらに800℃超のガラス転移温度を有する繊維を含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、第1および/または第2の外側テキスタイル層は、ガラス繊維を含んでもよい。
【0056】
第1および/または第2の外側テキスタイル層の繊維は、ガラス繊維のみを含んでもよい。
【0057】
任意選択で、第1および第2の外側テキスタイル層および/またはヒュームドシリカ含有テキスタイル生地層の繊維は、Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、シリカ繊維またはセラミック繊維のいずれかなどの同一の材料から提供される。
【0058】
第1および/または第2の外側層は、特に不織層である場合、ある結合剤含有量を有することが好ましく、結合剤含有量は、好ましくは15%w未満、最も好ましくは12%w未満、典型的には10~11%wである。この%wは、外側層の総重量にわたって表される。好ましい結合剤はポリビニルアルコール(PVA)結合剤である。
【0059】
第1および/または第2の外側層は、ISO1924/2に従って測定して、機械方向(MD)および交差方向(CD)に20~100N/5cmの範囲の引張強さを有することが好ましい。
【0060】
第1および/または第2の外側テキスタイル層は、一般に、それらの層をテキスタイル生地層に積層することができるように接着剤を備える。好ましい接着剤はホットメルト接着剤である。好ましい接着剤は、ポリアミド、ポリプロピレンまたは熱硬化性ポリウレタン系接着剤である。接着剤は、コーティングとして第1の層および/または第2の層に塗布されてもよい。代替として、ホットメルト接着剤などの接着剤の膜を、第1および/または第2の外側層とテキスタイル生地層との間に適用してもよい。接着剤は、選択肢的にコーティングとして、4~20g/m2の量で適用されるのが好ましく、より好ましくは4~10g/m2の量、例えば約8g/m2の量で塗布される。好ましくは、この接着剤は、第1および第2の層の片側のみに塗布される。接着剤が設けられた側は、テキスタイル生地マトリックスと接触するよう使用される。
【0061】
第1および第2の層およびテキスタイル生地層は、熱または溶媒積層によって互いに積層されてもよい。最も好ましくは、これらの層は、熱的または熱積層を使用して、例えばカレンダ加工で互いに積層される。
第1の外側テキスタイル層は、織製、不織製、編成、または編組テキスタイル生地を含むことができる。
第2の外側テキスタイル層は、織製、不織製、編成、(縦編み生地もしくは横編み生地の両方)、または編組生地を含むことができる。
織製の第1および/または第2の外側層は、平織テキスタイル生地、斜文織製テキスタイル生地、サテン織製テキスタイル生地、アトラスまたはバスケット織製テキスタイル生地等であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、第1の外側テキスタイル層および第2の外側テキスタイル層は同一であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、第1の外側テキスタイル層は、不織テキスタイル生地を含んでもよい。
いくつかの実施形態によれば、第1の外側テキスタイル層は、3~300kg/m3の範囲の密度を有してもよい。いくつかの実施形態によれば、第1の外側テキスタイル層は、10~30g/m2の表面重量を有してもよい。
【0064】
任意選択的に、第2の外側テキスタイル層は不織テキスタイル生地を含む。
任意選択で、第1の外側テキスタイル層および第2の外側テキスタイル層の不織テキスタイル生地は同一である。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、第2の外側テキスタイル層は織製テキスタイル層であってもよい。いくつかの実施形態によれば、第2の外側テキスタイル層は300~1300kg/m3の範囲の密度を有してもよい。いくつかの実施形態によれば、第2の外側テキスタイル層は、100~300g/m2の表面重量を有してもよい。
【0066】
ベールとも称される好適な第1の外側テキスタイル層および第2の外側テキスタイル層は、ベルギーのADLEY NVから入手可能なフリースAD-スティックE20166.4として提供される層である。他の好適なベールは、10g/m2、17g/m2、22g/m2、30g/m2、または34g/m2の面積重量を有する、20103A Eガラス ベールなどの、英国のTechnical Fibre Products LtdのOptiveil(商標出願済み)シリーズのベールである。
【0067】
本発明の第2の態様によれば、断熱生地は断熱材として使用される。
生地は、パイプおよび建築用途などの様々な用途のために製品を断熱するために使用され得る。パイプは、温度適用が200~800℃以内であるオイルセクタに使用することができる。本発明による生地は、10℃未満の温度制限を有する極低温用途に使用することができる。生地は、建築分野において、例えば、ミネラルウール、ポリスチレン(PS)、またはポリウレタン(PU)が断熱特性において不足する屋根、天井、および床用途のために、使用され得る。
【0068】
例えば管状チューブ、例えば直径1mのチューブの外面の周りで生地を曲げることにより、当該管状パイプを覆うために使用される場合、塵はほとんどまたは全く放出されない。テキスタイル層は損傷されずに残り、亀裂を示さない。
【実施例】
【0069】
実施例1
本発明による断熱生地は、以下のように調製される。7kgの疎水性ヒュームドシリカ(アエロジルR974)と185lのヘキサンおよびSiC(ヒュームドシリカに対して6重量%)との混合物を、厚み10mmおよび密度110kg/m3の好適なテキスタイル生地マトリックスKobemat EGL(Kobe 110密度)に注入する。最適な結果を達成するために、テキスタイル生地マトリックス内の混合物の均一な分布が得られるように、注入をモニタリングした。注入および混合技術は、例えば、US2018/0099478に開示されている。
【0070】
密度が変動する様々な種類のテキスタイル生地を試験し、以下の表(表1)は、マトリックス密度の変化、および同量の混合物(約1kg)を注入された断熱生地の最終特性に対するそれらの効果について収集されたデータを示す。
【0071】
【0072】
実施例2:
断熱生地を実施例1に従って作製した。様々な量のSiCをヒュームドシリカとヘキサンとの混合物に添加した。最終生成物に対するIR吸収剤の効果およびその量を以下の表2に示す。
【0073】
【0074】
実施例3:
断熱生地を実施例1に従って作製した。以下の表に提示される結果の別の組は、最終製品に対する、テキスタイル生地マトリックスに注入される混合量の効果に関する。
【0075】
【0076】
実施例4:
断熱生地を実施例1に従って作製した。
以下の表は、ヒュームドシリカの使用を、同量の混合注入および同じテキスタイル生地マトリックスを用いるエアロゲル(AEROVA(商標出願済み)エアロゲル、Jios Corporationから入手可能)注入と比較する際に集められる結果のいくつかを強調している。
これらの結果は、より高い温度、エアロゲルの代わりにヒュームドシリカを使用すると、断熱特性が改善された断熱生地が得られることを示している。さらに、ヒュームドシリカの場合、塵発生が低減する。
【0077】
【0078】
好ましい実施形態および/または材料が、本発明による実施形態を提供するために論じられたが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な修正または変更が行われ得ることを理解されたい。