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特許7419386特に回転翼航空機のメインロータ用の駆動装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】特に回転翼航空機のメインロータ用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/14 20060101AFI20240115BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240115BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20240115BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B64C27/14
B64D27/24
F16H1/28
H02K7/116
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021546316
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2020052589
(87)【国際公開番号】W WO2020161061
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】00154/19
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】515234772
【氏名又は名称】コプター、グループ、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】kopter group ag
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ、マティーアス、イーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン、ベルナー、ヘッテンコファー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、デュメル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、レーベンスタイン
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04554989(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107178426(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0219779(US,A1)
【文献】国際公開第2018/193522(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0077447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/14
B64D 27/24
F16H 1/28
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動装置(1)であって、
遊星歯車機構(Pl)であって、遊星歯車機構(Pl)は、複数の遊星歯車(4)を備え、各遊星歯車(4)は、歯部を含む2つの遊星歯車(6;6')を有し、複数の遊星歯車(4)は、遊星歯車機構(Pl)の内部の中心軸(z)に対して同心円状に配置されており、
前記2つの遊星歯車(6;6')は、内側ロータ部(11)によって、回転に関して固定された状態で接続されており、前記内側ロータ部(11)は、固定ステータ部(12)とともに第1の電気的な駆動部(2)を形成し、前記複数の遊星歯車(4)の前記2つの遊星歯車(6;6')のうちの上側の遊星歯車(6')の歯部は、環状歯車(18;19)と係合し、前記複数の遊星歯車(4)の前記2つの遊星歯車(6;6')のうちの下側の遊星歯車(6)の歯部は、太陽歯車(17)と係合し、前記太陽歯車(17)は、第2の駆動部(TK)に連結され、これにより、回転可能なシャフト(15)を、前記遊星歯車(4)または前記太陽歯車(17)によって駆動することができる、駆動装置(1)。
【請求項2】
前記第1の電気的な駆動部(2)は、回転速度とトルクを電気的に制御できる電気モータである、請求項1に記載の駆動装置(1)。
【請求項3】
前記固定ステータ部(12)は、実質的に環状であり、巻線を備えており、遊星歯車キャリア(5)に強固に接続されている、請求項1又は2に記載の駆動装置(1)。
【請求項4】
前記上側の遊星歯車(6')は、それぞれの遊星歯車軸(P)を中心に回転できるように固定の位置に取り付けられており、位置的に固定された遊星歯車(6;6')は、中心軸(z)を中心に回転できる内側歯付き環状歯車(19)に囲まれており、または、内部の外側歯付き環状歯車(18)が、上側の遊星歯車(6')に囲まれており、
内側歯付き環状歯車(19)または外側歯付き環状歯車(18)は、シャフト(15)が、環状歯車(19)とシャフト(15)とに固定された環状歯車ドライバー(20)によって回転するように、または、シャフト(15)が、外側歯付き環状歯車(18)によって回転するように、回転することができる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動装置(1)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の駆動装置(1)を備えるハイブリッド駆動部であって、
前記第2の駆動部(TK)は、熱力学的エンジンとして、またはさらなる電気的な駆動部として構成されており、第2の駆動部(TK)は、遊星歯車機構(Pl)の外側に配置されている、ハイブリッド駆動部。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の駆動装置(1)を備える、回転翼航空機。
【請求項7】
前記第1の電気的な駆動部(2)は、回転翼航空機のメインロータまたはテールロータを、追加の駆動部なしで自律的に駆動できるように構成および寸法設定されている、請求項6に記載の回転翼航空機。
【請求項8】
第1の電気的な駆動部(2)は、熱力学的エンジンとして構成されている第2の駆動部(TK)に機械的に結合することができ、中央の太陽歯車(17)は、第2の駆動装置によって駆動することができ、少なくとも1つの、前記第1の電気的な駆動部(2)と、第2の駆動部(TK)とが、遊星歯車機構(Pl)によって結合されており、
前記第1の電気的な駆動部(2)は、メインロータまたはテールロータの駆動に関して、前記第2の駆動部(TK)をサポートすることができ、またはその逆に、前記第2の駆動部(TK)は、メインロータまたはテールロータの駆動に関して、前記第1の電気的な駆動部(2)をサポートすることができ、その結果、ハイブリッド駆動部が形成される、請求項6または7に記載の回転翼航空機。
【請求項9】
シャフト(15)は、回転翼航空機のロータシャフトであり、ロータシャフトは、2つの部分から構成され、ベアリングマスト(13)及びアウターマスト(14)を備え、
アウターマスト(14)は、中空体として構成されるとともに、ベアリングマスト(13)を同心円状に取り囲むように、ベアリングマスト(13)に対して中心軸(Z)を中心に回転可能に取り付けられ、アウターマスト(14)は、遊星歯車機構(Pl)に作動的に接続可能であり、
ベアリングマスト(13)は、回転翼航空機において、固定の位置に、回転に関して固定された状態で取り付けられ、これにより、アウターマスト(14)は、回転に関して固定された状態でメインロータに結合され、且つ、遊星歯車機構(Pl)を用いることにより、回転するように設定される、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の回転翼航空機。
【請求項10】
シャフトは、回転に関して固定された状態で駆動ギア(24)に結合することができ、駆動ギア(24)は、少なくとも1つのラジアルベアリングによって、ベアリングマスト(13)に回転可能に取り付けられることができ、
駆動ギア(24)に面したそれぞれの遊星歯車キャリア(5)の側にある少なくとも1つの下側の遊星歯車(6)の、それぞれの遊星歯車軸(P)を中心とした回転が、回転に関して固定された状態で駆動ギア(24)に接続された中央の太陽歯車(17)によって達成可能であり、
所定の位置に固定され、少なくとも1つの下側の遊星歯車(6)に属している少なくとも1つの上側の遊星歯車(6')が、内側の歯付き環状歯車(19)によって囲まれており、内側の歯付き環状歯車(19)は、中心軸(Z)を中心に回転可能であり、
アウターマスト(14)と、回転に関して固定された状態でアウターマスト(14)に結合されているメインロータとが、駆動ギア(24)の回転運動を起点に回転するように、環状歯車(19)とアウターマスト(14)の間に、力伝達装置として機能する環状歯車ドライバー(20)が取り付けられるか、または固定されている、請求項9に記載の回転翼航空機。
【請求項11】
駆動装置(1)は、バッテリ貯蔵ユニット(BS)の形態で電気エネルギー源を備え、ハイブリッド駆動部の前記第1の電気的な駆動部(2)と、熱力学的エンジンとして構成された第2の駆動部(TK)との間で、回転に関して固定された結合状態にあり、
第2の駆動部(TK)の動作中に、第1の電気的な駆動部(2)は、バッテリ貯蔵ユニット(BS)のための追加のエネルギー回収のための発電機として機能することができる、請求項6乃至10のいずれか一項に記載の回転翼航空機。
【請求項12】
前記第1の電気的な駆動部(2)に整流器が設けられており、その結果、電気的な駆動部(2)が動作していないときに、バッテリ貯蔵ユニット(BS)が充電され得る、請求項11に記載の回転翼航空機。
【請求項13】
制御ユニット(ST)のロジックが、ロータを駆動するためのトルク生成と、バッテリ貯蔵ユニット(BS)のための追加エネルギー回収との間で、モードの自動変更を可能にする、請求項11または12に記載の回転翼航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1による、特に回転翼航空機のメインロータを駆動するための駆動装置について説明する。
【0002】
さらに、本発明では、特に回転翼航空機のメインロータを駆動するための、本発明による駆動装置を備えたハイブリッド駆動部、および、そのハイブリッド駆動部または駆動装置を備えた回転翼航空機について説明する。
【背景技術】
【0003】
駆動装置は、駆動技術やエネルギー生成の非常に広範な使用分野において、従来技術から知られている。この種の駆動装置は、多くの場合、遊星歯車機構または関連する同等の歯車機構として知られているもので構成されている。
【0004】
遊星歯車機構の定義は、いわゆる「遊星歯車機構」であり、(遊星歯車が太陽歯車の周りを回っていることから)中央に配置された太陽歯車、少なくとも1つ、多くは複数の遊星歯車、遊星歯車に属する遊星キャリア、外部の内側歯付き環状体または外部の内側歯付き環状歯車から基本的に構成されている。遊星歯車機構を使用する利点は、多様な伝達方法があることと、均等で分散された力の伝達にある。
【0005】
遊星歯車機構は、様々な技術分野の駆動装置に使用されている。例えば、風力発電機、自動車製造や自動車、海上の推進システム、航空などに使用されている。
【0006】
例えば、風力発電機に遊星歯車機構を使用することは、US 9,797,504 B2という文献から知られている。風によって引き起こされる(または風によって駆動される)風車のロータシャフトの回転中に、遊星歯車機構によって、ロータシャフトでの低い回転速度と高いトルクから、発電機での高い回転速度と低いトルクへの伝達または変換が達成される。
【0007】
回転翼航空機、特にヘリコプターの分野では、メインロータを駆動するために、遊星歯車機構やそれに関連する歯車機構として構成されたヘリコプター用歯車機構やメインロータ用歯車機構が駆動部に組み込まれていることが多い。このタイプのヘリコプタギア機構は、結果として信頼性の高い設計が可能となるため、主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US 9,797,504 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
駆動技術の分野で使用されているこのような遊星歯車機構は、そのスペースが膨大であるという欠点があり、さらに駆動装置の構造が望ましくないほど複雑になる可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、広い使用分野において、特に回転翼航空機のメインロータを駆動するための、コンパクトで簡素化された駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有する駆動装置、請求項5の特徴を有するハイブリッド駆動部、または請求項6の特徴を有する回転翼航空機によって達成される。
【0012】
本発明によれば、第1の駆動部、特に電気的な駆動部が、少なくとも1つの遊星歯車に組み込まれ、その結果、遊星歯車機構の内部に内側駆動部が形成される。
【0013】
本発明の意味では、少なくとも1つの遊星歯車自体が駆動部として構成されているか、本質的に第1の駆動部を形成している。これまで知られていた遊星歯車機構の使用(例えば、US 9,797,504 B2から)と比較した重要な違いとして、本発明によれば、遊星歯車機構は、新規の方法で、(駆動部として構成された少なくとも1つの遊星歯車のために)駆動部として機能することができ、または遊星歯車機構の内部に内部駆動部が形成されることが挙げられる。
【0014】
本発明の意味では、1つの単一の遊星歯車のみが駆動部として機能または構成されることができ、すべての遊星歯車が最適な電力分配のために駆動部として機能することが好ましい。特に好ましくは、本発明による駆動装置は、遊星歯車に組み込まれた駆動部を互いに同期させるように構成された制御ユニットを備える。さらに、遊星歯車に組み込まれたこれらの駆動部は、1つまたは複数の駆動部の故障による歯車機構の詰まりを防止するために、それぞれの場合において、適切な結合によって、機械的、電気的、または油圧的に互いに切り離すことができるように構成することができる。本発明の意味では、制御は、制御ロジックとパワーエレクトロニクスユニットLEE(「インバータ」とも呼ばれる)を備えた電気同期モータの標準的な制御として実現される。制御ロジック(モータコントローラ)は、対応する信号を生成し、それがインバータを制御し、インバータが同期モータの対応するモータコイルを励磁することで、所定の回転速度とトルクで連続回転を得る。電気同期モータの同期は、電機子の位置と回転速度を決定し、各電気同期モータごとに制御信号を算出することで可能となる。この意味で、図6は適切な概要を示している。
【0015】
本発明の好ましい発展形によれば、駆動装置は、単一の遊星歯車キャリア、すなわち、単一の一貫した構成要素として構成された遊星歯車キャリアを含んでいてもよく、遊星歯車キャリアは、遊星歯車のための少なくとも1つの、好ましくは複数の取り付け開口部を備えている。
【0016】
さらに有利な実施形態は、従属項に明記されている。
【0017】
好ましくは、遊星歯車は、それぞれの遊星歯車軸を中心に回転できるように固定の位置に取り付けられており、位置的に固定された遊星歯車は、駆動装置の中心軸を中心に回転できる内側歯付き環状歯車に囲まれており、環状歯車は、軸、特にロータ軸に固定された環状歯車ドライバーによって、軸、特にロータ軸が回転するように設定することが可能である。その結果、遊星歯車機構の関連する比較可能な形態が作成される。このような位置固定式の遊星歯車は、遊星歯車に組み込まれた駆動装置のエネルギー供給が、電気的な供給ラインによって容易になるという利点がある。
【0018】
しかし、本発明の状況では、遊星歯車が固定位置に配置されていない、すなわち太陽歯車の周りを回転しているか、太陽歯車の周りを走行している、エピサイクリック・ギア機構として構成された遊星歯車機構も基本的に考えられる。例えば、そのような好ましい実施形態によれば、遊星歯車に組み込まれた駆動部の電源は、スリップリングによって実現することができる。
【0019】
原則として、少なくとも1つの遊星歯車に組み込まれた第1の駆動部の任意の所望の構成が考えられ、第1の駆動部は、例えば、熱力学的エンジンとして構成された駆動部であってもよい。第1の駆動部は、特に好ましくは、回転速度およびトルクに関して電気的に調節可能なモータ、特に内側ロータ部を有する電気同期モータとして構成される。本発明の意味では、回転速度とトルクを電気的に制御できるモータは、代替的に、例えば非同期モータ、リラクタンスモータ、横方向の磁束モータなどを意味すると理解してよい。
【0020】
また、本発明では、電気同期モータの外側ロータ部の変形例も考えられる。電気同期モータの外側ロータ部は、回転に関して固定された状態で遊星歯車に接続されている。例えば、電気同期モータの遊星歯車と外側ロータ部が同一平面上に位置してユニットを形成するように、外側ロータ部をリングギアに、回転に関して固定された状態で接続することが考えられる。この意味で、図5a図5dは好適な概観を示している。
【0021】
好ましくは、第1の駆動装置は、電気的な駆動部または電気モータであり、少なくとも1つの遊星歯車は、固定されたステータ部と、回転可能なロータ部と、特に内側ロータ部と、ロータ部に間接的または直接的に固定された外側の歯部を有する少なくとも1つの遊星歯車とを備え、遊星歯車は、遊星歯車機構内部の遊星キャリアによって、太陽歯車および/または回転可能なシャフトと作動的に接続された状態で保持されている。
【0022】
特に好ましくは、本発明による駆動部の遊星歯車機構は、少なくとも3つの遊星歯車で構成され、より好ましくは3~6つの遊星歯車で構成される。少なくとも3つの遊星歯車を使用することで、遊星歯車機構の安定した構造を確保することができる。また、3つ以上の遊星歯車を使用することにより、モジュール構造が有利に実現され、製造技術的に少ない費用で様々なパワーステージを組み立てることができる。また、モジュール構造のため、電力量の少ない複数のステージに大電力を分配することができ、その結果、物理的にも製造技術的にも、モータや制御の電力損失による熱を逃がすことができるという利点がある(表面積が大きくなる)。さらに、複数のステージに分散して配置された電気的な駆動部は、熱力学的エンジンとして構成された第2の駆動部が故障した場合に、駆動部全体の完全な故障を防ぐことができる。
【0023】
原理的には、本発明による駆動装置は、少なくとも1つ、好ましくは複数の第1の電気的な駆動部のみで構成され、それぞれ遊星歯車に統合され、その結果、完全に電気的な駆動装置として構成されることができる。本発明のさらなる態様は、本発明による駆動装置を備えるハイブリッド駆動部に関し、第1の、特に電気的な駆動部は、熱力学的エンジンとして構成される第2の駆動部に機械的に結合することができる。
【0024】
本発明のさらなる側面は、本発明による駆動装置または本発明によるハイブリッド駆動部を備える回転翼航空機に関する。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの、好ましくは複数の第1の電気的な駆動部、特に内側ロータ部を備えた電気同期モータは、回転翼航空機、特にヘリコプターのメインロータおよび/またはテールロータが追加の駆動部なしで自律的に駆動できるように構成および寸法設定されており、その結果、完全に電気的な駆動部を備えた回転翼航空機が実現される。本発明の意味では、特に自律的な電気駆動とは、寸法に応じて所望の機械的パワーを出力できることを意味すると理解される。自律型の電気的な駆動部の機械的出力に関しては、好ましくは少なくとも150kW、好ましくは200kW~700kW、より好ましくは300kW~600kW、非常に特に好ましくは600kW程度の出力を達成することができる。一例として、600kW程度の機械的出力の電気的な駆動部に基づいて、371rpmの低回転数で、約15,500Nm以上の高トルクを実現することができる。
【0026】
好ましくは、第1の、特に電気的な駆動部は、熱力学的エンジンとして構成された第2の駆動部と機械的に結合することができ、特に、中央の太陽歯車が第2の駆動装置によって駆動されることができる。好ましくは、第2の駆動装置は、熱力学的エンジンとして構成された第2の駆動部と機械的に動作可能に接続されていてもよいし、そうでなければ、さらなる電気的な駆動部として、例えば、内燃機関、タービンモータ、火花点火エンジン、ディーゼルエンジン、燃料電池駆動部などと接続されていてもよい。少なくとも1つの電気的な駆動部と第2の駆動部は、遊星歯車機構を介して結合されており、メインロータおよび/またはテールロータを駆動する際に、電気的な駆動部が第2の駆動部をサポートすることができ、またはその逆に、第2の駆動部が電気的な駆動部をサポートすることができ、その結果、ハイブリッド駆動部が構成されることになる。
【0027】
好ましくは、本発明による駆動装置のシャフトまたは駆動シャフトは、本発明による回転翼航空機のロータシャフトであり、ロータシャフトは、2つの部分からなるように構成され、ベアリングマスト及びアウターマストを備え、アウターマストは、中空体として構成されるとともに、ベアリングマストを同心円状に取り囲むように、ベアリングマストに対して中心軸を中心に回転可能に取り付けられていることを特徴とする。前記アウターマストは、遊星歯車機構として構成されたヘリコプタロータ歯車機構に作動的に接続することができ、前記ベアリングマストは、回転翼航空機において固定の位置で、回転に関して固定した状態で取り付けることができるので、前記アウターマストは、回転に関して固定した状態でメインロータに結合することができ、且つ、前記遊星歯車機構として構成されたヘリコプタロータ歯車機構を用いることにより、回転することができる。
【0028】
駆動シャフトまたはロータシャフトのこのような2つの部分からなる構成によって、メインロータの特にスムーズな駆動を実現することができる。ベアリングマストとアウターマストに分かれていることで、周囲のベアリングから圧力がかかり、それを非回転部またはベアリングマストが吸収することで、スムーズな駆動が実現される。さらに、有利なことに、メインロータの駆動中に、わずかな回転曲げが発生し、その結果、一部分の駆動シャフトやロータシャフトの場合よりも低い疲労が発生することがわかった。さらに、非常にコンパクトな構成が実現可能である。例えばベアリングマストのキャビティにケーブルを通したり、回転翼連結装置の上に配置された斜板を取り付けるための制御棒を通したり、ドライブトレイン側からロータ側へのさらなる構成要素を通したりすることができる。例えば、回転翼の氷結防止装置、回転翼内のランプ、フライ・バイ・ワイヤシステムの電気アクチュエータなど、回転システムに電力を供給するための電気供給ラインもここに配置することができる。
【0029】
本発明による回転翼航空機の代替的な好ましい構成によれば、本発明による回転翼航空機のシャフトまたはロータシャフトは、一部品であるように構成することもでき、その結果、特に、特に単純でコンパクトな設計に関連して、他の利点を提供することができる。
【0030】
好ましくは、駆動シャフトは、回転に関して固定された状態で駆動ギアに連結され、駆動ギアは、少なくとも1つのラジアルベアリングによってベアリングマストに回転可能に取り付けられ、太陽歯車に面したそれぞれの遊星歯車キャリアの側にあるそれぞれの遊星歯車軸を中心とした、少なくとも1つの遊星歯車(特に、2段ギア機構における下側の遊星歯車)の回転は、中央の太陽歯車によって達成されることである。少なくとも1つの遊星歯車(特に2段ギア機構の下側の遊星歯車に割り当てられた上側の遊星歯車)が、中心軸を中心に回転可能な内側の歯付き環状歯車によって取り囲まれている。力の伝達装置として機能する環状歯車ドライバーは、駆動ギアの回転運動を起点として、アウターマストと、アウターマストに回転固定的に結合されているメインロータとを回転させることができるように、環状歯車とアウターマストとの間に取り付け可能であるか、または取り付けられているか、または成形されている。
【0031】
好ましくは、本発明による回転翼航空機において、本発明による駆動装置は、電気エネルギー源、特にバッテリ貯蔵ユニットを備え、本発明によるハイブリッド駆動部の電気的な駆動部の形態の第1の駆動部が、電気的な駆動部と、熱力学的エンジンとして構成された第2の駆動部との間で回転的に固定された結合状態で、第2の駆動部の動作中に、少なくとも1つの、好ましくは複数の第1の電気的な駆動部が、バッテリ貯蔵ユニットのための追加のエネルギー回収のための発電機として機能することが可能である。
【0032】
好ましくは、本発明による回転翼航空機、特にヘリコプターでは、第1の電気的な駆動部に、特にブロックダイオードの形態の整流器が設けられており、その結果、電気的な駆動部が動作していないときに、バッテリ貯蔵ユニットを充電することができる。
【0033】
好ましくは、本発明による回転翼航空機では、制御ユニットのロジックが、ロータを駆動するためのトルク生成と、バッテリ貯蔵ユニットのための追加エネルギー回収との間のモードの自動変更をさらに可能にするように構成されていることである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の主題の好ましい例示的な実施形態は、添付の図面に関連して以下で説明される。
図1a】本発明による駆動装置の第1の好ましい実施形態を示す縦断面図であり、特に回転翼航空機のメインロータを駆動するためのハイブリッド変形例としての2段遊星歯車機構を備えている。
図1b図1bは、本発明による駆動装置の第1の好ましい実施形態を、付属のギア機構ハウジングとともに示す平面図である。
図1c】本発明による駆動装置の第1の好ましい実施形態の、ギア機構ハウジングのない状態を示す斜視図である。
図1d】ギア機構ハウジングを備えた本発明による駆動装置の第1の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図2a】本発明による駆動装置の第2の好ましい実施形態を示す縦断面図であり、内部に外歯の付いた環状歯車を備えたハイブリッド変形例としての2段遊星歯車機構を備えている。
図2b】本発明による駆動装置の第2の好ましい実施形態を、ギア機構ハウジングを取り付けた状態で示す平面図である。
図2c】ギア機構ハウジングのない本発明による駆動装置の第2の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図2d】ギア機構ハウジングを備えた本発明による駆動装置の第2の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図3a】本発明による駆動装置の第3の好ましい実施形態を示す縦断面図であり、特に回転翼航空機のメインロータを駆動するための完全に電気的な駆動部の変形例として、1段式の遊星歯車機構を備えている。
図3b】本発明による駆動装置の第3の好ましい実施形態を、付属のギア機構ハウジングとともに示す平面図である。
図3c】ギア機構ハウジングのない本発明による駆動装置の第3の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図3d】ギア機構ハウジングを備えた本発明による駆動装置の第2の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図4a】本発明による駆動装置の第4の好ましい実施形態を通る縦断面図を示しており、完全に電気的な駆動部の変形例として1段の遊星歯車機構を備え、特に回転翼航空機のメインロータを駆動するために、内部に、外歯の付いた環状歯車を備えている。
図4b】本発明による駆動装置の第4の好ましい実施形態を、付属のギア機構ハウジングとともに示す平面図である。
図4c】ギア機構ハウジングのない本発明による駆動装置の第4の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図4d】ギア機構ハウジングを備えた本発明による駆動装置の第4の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図5a】本発明による駆動装置の第5の好ましい実施形態を示す縦断面図であり、完全に電気的な駆動部の変形例およびアウターロータの変形例として1段の遊星歯車機構を備えている。
図5b】本発明による駆動装置の第5の好ましい実施形態を、付属のギア機構ハウジングとともに示す平面図である。
図5c】ギア機構ハウジングのない本発明による駆動装置の第5の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図5d】ギア機構ハウジングを備えた本発明による駆動装置の第5の好ましい実施形態を示す斜視図である。
図6】本発明による駆動装置の好ましい実施形態のうち、遊星歯車に組み込まれた第1の駆動装置の駆動力制御の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1aは、例えば回転翼航空機の図示しないメインロータを駆動するための多段、ここでは2段の遊星歯車機構Plを備えた本発明による駆動装置1の第1の好ましい実施形態を通るA-A(図1b参照)に沿った長手方向の断面を示している(この点に関しては特に図3を参照)。
【0036】
ここでは2段式の遊星歯車機構Plとして構成されている本発明による駆動装置1は、中央の太陽歯車17と、ここでは図示されていない太陽歯車17の外側の歯部に突き当たる複数の遊星歯車4とを備えている。太陽歯車17は、突き当たっている複数の遊星歯車4によって取り囲まれており、複数の遊星歯車4は、遊星歯車機構Plの内部において、太陽歯車17および中心軸zと同心円状に配置されている。ここでの遊星歯車4は、下側遊星歯車6と、上側遊星歯車6'と、これらの遊星歯車6;6'を回転固定的に連結して2段の遊星歯車機構Plを形成する内側ロータ部11と、ステータ部12と、を含んでいる。
【0037】
ここに示す第1の好ましい実施形態は、シャフト15を有しており、このシャフト15は、2つの部分からなるように構成されており、ベアリングマスト13とアウターマスト14とを含んでいる。アウターマスト14またはシャフト15によって、例えば回転翼航空機のメインロータや船舶用プロペラ等を駆動することができる。シャフト15を駆動する本発明による駆動装置1は、非常に広い範囲の技術分野に適用可能である。言い換えれば、本発明による駆動装置の歯車機構または遊星歯車機構Plは、トルク伝達ギア機構30としても理解できる。
【0038】
上側遊星歯車6'の高さまたは同じ軸方向位置には、環状歯車19が中心軸zを中心に回転可能に配置されている。全ての上側遊星歯車6'を取り囲んでいる環状歯車19は、上側遊星歯車6'の回転によって駆動可能であり、したがって、中心軸zを中心に回転可能である。環状歯車19には、ここでは図示しない内側の歯部が配置されており、この内側の歯部は、上側遊星歯車6'の外側の歯部(ここでは図示せず)と係合している(図1aに示すように、2段形式で実現される場合)。
【0039】
上側遊星歯車6'と、中心軸zを中心に回転可能なアウターマスト14との間には、シャフト15のアウターマスト14を駆動するための機械的な作動接続が存在する。本発明の第1の好ましい実施形態では、この機械的な作動接続は、回転に関して固定された状態でアウターマスト14に接続されている環状歯車ドライバー20に基づいて実現されている。言い換えれば、同様に環状歯車19上に配置されている環状歯車ドライバー20は、ここでは力伝達ユニットとして機能しており、環状歯車19の回転を、回転可能なアウターマスト14に伝達することができる。
【0040】
図1aに見られるように、第1の電気的な駆動部2、ここでは特に、内側ロータ部11を備えた電気同期モータ10が、少なくとも1つの遊星歯車4に組み込まれて第1の駆動装置1を形成し、第1の駆動部2によってシャフト15を回転させることができるようになっている。同期モータ10のステータとして機能するステータ部12は、ここでは実質的に環状であり、巻線Wを備えており、ここでは遊星歯車キャリア5に収容され、遊星歯車キャリア5に強固に接続されている。同期モータ10のロータとして機能するピン状の内側ロータ部11は、上側及び下側の遊星歯車6;6'に、回転に関して固定された状態で接続されている。遊星歯車4は、遊星歯車機構Plの内部で太陽歯車17と回転シャフト15に作動的に接続され、ここでは遊星歯車キャリア5によって強固に保持されている。
【0041】
図1aに示す電気式同期モータ10では、同期モータ10の力の作用は、ステータ部12(固定子)と内側ロータ部11(回転子)との間のエアギャップまたは磁気ギャップMに生じる。
【0042】
図1aに見られるように、中空シャフトとして構成された太陽歯車17は、駆動ギア24に接続されており、太陽歯車17は、ここでは図示されていない外側の歯部を有している。太陽歯車17と駆動ギア24は、中心軸zを中心に回転可能にベアリングマスト13に取り付けられている。それぞれの遊星歯車軸Pを中心とした遊星歯車6'の回転は、下側の遊星歯車6を介して、太陽歯車17によって実現することができる。
【0043】
駆動ギア24は、ドライブトレインギア26によって、少なくとも1つのドライブトレイン25と作動的に接続されている。ここで、ドライブトレイン25は、好ましくは、ここでは図示されていない、熱力学的エンジンとして構成されている更なる駆動部TKと機械的に作動的に接続されており、本発明による駆動装置1を構成するハイブリッド駆動部またはハイブリッド変形例を形成している。
【0044】
以下では、回転翼航空機のメインロータを駆動するための駆動装置1の第1の好ましい実施形態によるハイブリッド変形例の使用について、例を挙げて説明する(なお、第2から第5の好ましい実施形態も、回転翼航空機のメインロータの駆動に同様に適している)。
【0045】
この場合、本発明による駆動装置1のトルク伝達ギア機構30は、ここでは遊星歯車機構Plとして構成されている回転翼航空機のメインロータギア機構またはヘリコプタロータギア機構と理解することができる。
【0046】
ここでのシャフト15またはロータシャフトは、ベアリングマスト13とアウターマスト14とを含む2分割の構成となっている。
【0047】
ヘリコプタロータギア機構は、中央キャビティを有している。この中央キャビティには、ここでは位置的に固定され、且つ回転的に固定されたベアリングマスト13が取り付けられている。中心軸zは、同時にベアリングマスト13の長手方向とアウターマスト14の回転軸を形成する。
【0048】
遊星歯車軸Pを中心に回転可能に取り付けられている固定の遊星歯車6;6'と、ベアリングマスト13及びベアリングマスト13を囲む管状のアウターマスト14を含むとともに中心軸zを中心に回転可能なシャフト15と、の間の機械的な作動接続が実現されている。機械的な作動接続は、位置的に固定された上側遊星歯車6'が、中心軸zを中心に回転可能で、内側に歯が付いている環状歯車19によって囲まれるよう、実現されている。環状歯車19は、環状歯車19及びアウターマスト14に固定された環状歯車ドライバー20によってシャフト15のアウターマスト14が回転することによって、回転できる。
【0049】
図1aに見られるように、第1の電気的な駆動部2、ここでは特に内側ロータ部11を備えた電気同期モータ10が、少なくとも1つの遊星歯車4に組み込まれて第1の駆動装置1を形成しており、第1の電気的な駆動部2によってシャフト15のアウターマスト14を回転させることができるようになっている。同期モータ10のステータとして機能するステータ部12は、ここでは遊星歯車キャリア5に収容され、遊星キャリアに強固に接続されている。同期モータ10のロータとして機能するピン状の内側ロータ部11は、上側及び下側の遊星歯車6;6'に、回転に関して固定された状態で接続されている。
【0050】
本発明による駆動装置1の第1の好ましい実施形態は、図1a図1dに示されており、回転翼航空機またはヘリコプターに適しており、特にこの使用の状況において安全上の利点がある。複数のエンジンを有するヘリコプターの駆動部の故障という形で緊急事態が発生した場合、ヘリコプターを安全な飛行体制に設定し、エンジンの故障に対応するために、ヘリコプターは、残っているエンジンからの動力に所定の期間頼ることができるべきである。
【0051】
図1aに示すドライブトレイン25の第1の好ましい実施形態は、好ましくは、ここでは図示されていない、熱力学的エンジンとして構成されたさらなる駆動部TKとも機械的に作動可能に接続されて、ハイブリッド駆動部を形成する。この場合、熱力学的エンジンとして構成された第2の駆動部TKに加えて、第1の、ここでは電気的な駆動部2および関連する電気エネルギー源によって、追加の機械的作業を行うことができる。ハイブリッド駆動部を搭載したヘリコプターは、化石燃料のみを使用する双発ヘリコプターと比較して、安全性の面で有利である。例えば、化石燃料の供給が停止した場合には、追加の電気エネルギーの供給に頼ることができる。
【0052】
第1の駆動部2により、特に、遊星歯車4の内部の電気式同期モータにより、双発のヘリコプター(例えば、異種ヘリコプターの意味で)において、極めてコンパクトなハイブリッド駆動部が実現されている。
【0053】
図1aに見られるように、ここでは、ベアリングマストは中空体として構成されており、斜板を取り付けるための制御棒および/または回転翼連結装置の上方に配置されたケーブル配線などの構成要素が、ベアリングマスト13およびアウターマスト14を中心軸zの方向に横断して配置できるようになっている。例えば、回転翼のアンチアイシング装置、回転翼内のランプ、または「フライ・バイ・ワイヤ」システムの電気アクチュエータなど、回転システムに電力を供給するための電気供給ラインもここに配置することができる。
【0054】
以下、図中の同じ参照数字は同じ構成要素を示している。
【0055】
図1bは、ギア機構ハウジングGが取り付けられた本発明による駆動装置1の第1の好ましい実施形態を示す平面図である。
【0056】
図1cは、本発明による駆動装置1の第1の好ましい実施形態の、ハウジングを備えない、またはハウジングを取り外した状態の斜視図である。一例として、図1cに示す第1の好ましい実施形態は、4つの遊星歯車4を有する。
【0057】
図1dは、ハウジングGを備えた本発明による駆動装置1の第1の好ましい実施形態の斜視図であり、この場合、駆動装置1は、遊星歯車4に組み込まれた第1の駆動部2を互いに同期させるように構成された制御ユニットSTを備えている。遊星歯車4に組み込まれた第1駆動部2のこの同期化は、図6でより正確に説明されている。
【0058】
さらに、遊星歯車に組み込まれたこれらの駆動部2は、1つ以上の駆動部の故障による歯車機構の詰まりを防ぐために、ここでは図示していない適切なカップリングを用いて、機械的、電気的、または油圧的に互いに切り離すことができるように構成されていてもよい。
【0059】
さらに、ここで図1dによれば、駆動装置1は、電気エネルギー源、特にここに示されているバッテリ貯蔵ユニットBSを備えており、ハイブリッド駆動部の、ここでは電気的な駆動部の形態である第1の駆動部2と、熱力学的エンジンとして構成されている第2の駆動部TKとの間で、回転的に固定された結合状態になっている。第2の駆動部TKの動作中、第1の電気的な駆動部2は、発電機として機能し、バッテリ貯蔵ユニットBSのための追加のエネルギー回収を行うことができる。
【0060】
第1の、特に電気的な駆動部2、特に内側ロータ部11を備えた電気同期モータには、好ましくは、特にブロックダイオードの形態の整流器が設けられており、その結果、電気的な駆動部が動作していないときに、バッテリ貯蔵ユニットBSを充電することができる。
【0061】
さらに、制御ユニットSTは、メインロータを駆動するためのトルク生成と、バッテリストレージユニットBSのための追加エネルギー回収との間でモードを自動的に変更することを可能にするロジックをさらに備えることができる。
【0062】
図1a図1dに示す第1の好ましい実施形態は、言い換えれば、本発明による駆動装置1を構成するハイブリッドの変形例を示している。2段の遊星歯車機構Plとして設計されているため、最適な高伝達を設定することができ、同時に、ハイブリッド駆動部の利点(例えば、回転翼航空機で使用する場合の安全性の利点)が達成される。
【0063】
本発明の好ましい発展形によれば、遊星歯車機構を2段以上、例えば3段などに構成することも可能である。
【0064】
図2aは、内部の外側歯付き環状歯車18を備えたハイブリッドの変形例としての、2段遊星歯車機構Plを備えた本発明による駆動装置1の第2の好ましい実施形態を通るA-A(図2b参照)に沿った長手方向の断面を示している。
【0065】
ここでは2段式の遊星歯車機構Plとして構成されている本発明による駆動装置1は、中央の太陽歯車17と、太陽歯車17を取り囲む複数の遊星歯車4であって、ここでは図示していない太陽歯車17の外側の歯部に突き当たる複数の遊星歯車4とを備えており、複数の遊星歯車4は、太陽歯車17および遊星歯車機構Plの内部の中心軸zに対して同心円状に配置されている。
【0066】
図2aに示すように、回転に関して固定された状態でアウターマスト14に接続されている、内部の外側歯付き環状歯車18は、ここでは上側遊星歯車6'に取り囲まれており、同様に上側遊星歯車6'の回転によって駆動することができ、従って、中心軸zを中心に回転させることができ、アウターマスト14と共に回転するように設定することができる。環状歯車18には、ここでは図示していない外側の歯部が配置されており、この歯部は、上側遊星歯車6'の外側の歯部(ここでは図示せず)と係合している。
【0067】
図2bは、本発明による駆動装置1の第2の好ましい実施形態を、ギア機構ハウジングGを取り付けた状態で示す平面図である。
【0068】
図2cは、ギア機構ハウジングのない、本発明による駆動装置の第2の好ましい実施形態の斜視図である。
【0069】
図2dは、ギア機構ハウジングGを備えた本発明による駆動装置の第2の好ましい実施形態の斜視図である。
【0070】
図3aは、例えば回転翼航空機の図示しないメインロータを駆動するための、一段の遊星歯車機構Plを備えた本発明による駆動装置1の第3の好ましい実施形態を通る、A-Aに沿った縦断面(図3b参照)を示している。
【0071】
図3aに見られるように、ここに示された第3の好ましい実施形態では、(図4a~4dに示された第4の好ましい実施形態や図5a~5dに示された第5の好ましい実施形態でもそうであるように)太陽歯車を不要にすることが可能であり、したがって、遊星歯車機構Plに関連する歯車機構に対応することになる。このように太陽歯車を不要にすることで、軽量化と複雑さの軽減という利点が得られる。
【0072】
このような1段式の遊星歯車機構Plを使用すると、ここに示す第3の好ましい実施形態では、2段にわたって延びる外部の歯車機構ハウジングGを取り付ける必要がなく、その結果、遊星歯車4に組み込まれた第1の駆動部2(ここでは、内側ロータ部11を有する電気同期モータ10として構成されている)をよりよく冷却することができるという利点がある。特に、ある電力値までは、熱損失が液体冷却回路を回避できるほど小さくなり、その結果、液体冷却は必要なく、すなわち、遊星歯車4の周囲の周囲空気による利用可能な空冷が、満足のいく冷却をもたらすことになる。さらに、電気出力の低い複数のステージにわたる電気的な駆動部のモジュール構造の場合、所要の液体冷却を伴わない場合の電力値が、単一の電気的な駆動部の場合よりも高いことが示されている。
【0073】
図3bは、本発明による駆動装置の第3の好ましい実施形態を、ギア機構ハウジングGを取り付けた状態で示す平面図である。
【0074】
図3cは、本発明による駆動装置1の第3の好ましい実施形態の、ハウジングを備えないまたはハウジングを取り外した状態の斜視図である。ここに示す第3の好ましい実施形態は、一例として6つの遊星歯車4を有している。
【0075】
図3dは、ギア機構ハウジングGを備えた本発明による駆動装置1の第3の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【0076】
一段式遊星歯車機構Plを備えた第3の好ましい実施形態に関する図3a~3dは、本発明による駆動装置1の完全な電動式の変形例を示しているが、一段式遊星歯車機構Plとして構成された駆動装置1からなるハイブリッドバリアントも同様に可能である。一段式遊星歯車機構Plとは、遊星歯車4が1つの上側遊星歯車6'のみで構成され、したがって1段のみを有することを意味すると理解される。
【0077】
基本的には、本発明による駆動装置のさらに単純な実施形態も考えられ、ここでは、内側に歯が付いた環状歯車19の代わりに、外側に歯が付いた環状歯車18によってトルクを伝達することができる(図2a~2dまたは図4a~4d参照)。
【0078】
図4aは、特に回転翼航空機のメインロータを駆動するために、完全に電気的な駆動部の変形例として構成された1段の遊星歯車機構を備え、内部に外側歯の付いた環状歯車を有する本発明による駆動装置1の第4の好ましい実施形態を通る縦断面図を示す。
【0079】
図4aに示すように、回転に関して固定された状態でアウターマスト14に連結されている、内部の外側歯付き環状歯車18は、ここでは上側遊星歯車6'によって取り囲まれており、同様に上側遊星歯車6'の回転によって駆動され、中心軸zを中心にアウターマスト14と共に駆動することができる。
【0080】
図4bは、本発明による駆動装置の第4の好ましい実施形態を、ギア機構ハウジングGを取り付けた状態で示す平面図である。
【0081】
図4cは、ギア機構ハウジングのない、本発明による駆動装置の第4の好ましい実施形態の斜視図である。
【0082】
図4dは、ギア機構ハウジングGを備えた本発明による駆動装置の第4の好ましい実施形態の斜視図である。
【0083】
図5aは、完全に電気的な駆動部の変形例として、また外側ロータの変形例として、一段の遊星歯車機構Plを有する本発明による駆動装置1の第5の好ましい実施形態を通るA-Aに沿った縦断面(図5b参照)を示している。
【0084】
図5aに示すように、第1の、ここでは電気的な駆動部2、ここでは特に外側ロータ部16を備えた電気同期モータ10が、少なくとも1つの遊星歯車4に組み込まれて、第1の駆動装置1を形成している。
【0085】
同期モータ10のステータとして機能する固定ステータ部12は、ここでは実質的に環状であり、巻線Wを備えており、ここではピン状要素Sに収容され、ピン状要素Sに強固に接続されており、一方、同期モータ10のロータとして機能する同期モータの外側ロータ部16は、ここでは遊星歯車6に、回転に関して固定された状態で接続されている。遊星歯車6と電気式同期モータ10の外側ロータ部16は、ここでは同一平面上または同一軸方向位置にあり、実質的に1つの装置を形成している。
【0086】
図5aに見られるように、ここでは、一方で、遊星歯車4の位置に関して固定された遊星歯車6'が、中心軸zを中心に回転可能な内歯付き環状歯車19によって取り囲まれ、他方で、内部の外側歯付き環状歯車18が遊星歯車6'によって取り囲まれており、ここでは図示されていないアウターマスト14が、内側歯付き環状歯車19によって回転するように設定することができる(図5b参照)。また、ここでは図示していないが、さらに中央の駆動軸が、内部の外側歯付き環状歯車18(図5b参照)によって回転するように設定することができる。言い換えれば、第5の好ましい実施形態に基づいて、2つのシャフトを異なるトランスミッションで回転させることができる。さらに、図5aには、ここでも同様に可能なハイブリッドの変形例の構成の場合には、外側歯付き環状歯車18が太陽歯車17として機能することができることが示されている。
【0087】
図5bは、ギア機構ハウジングGが取り付けられ、アウターマスト14または中央駆動シャフト27と動作可能に接続された、本発明による駆動装置1の第5の好ましい実施形態の平面図である。図5bに見られるように、内部の歯付き環状歯車19は、複数の接続要素Vを介してアウターマスト14またはシャフト15と作動可能に接続されていてもよい。代替的または追加的に、外側の歯付き環状歯車18または太陽歯車17は、特にハイブリッドの変形例の構成として、複数の接続要素Vを介して中央駆動シャフト27と動作可能に接続されていてもよい。
【0088】
さらに、図5bに示されているように、さらなる好ましい発展の意味での非ハイブリッドの変形例または完全に電気的な駆動部の変形例としての構成の場合には、内部の外側歯付き環状歯車18は、アウターマストと作動的に接続されていてもよい。
【0089】
図5cは、ギア機構ハウジング、中央駆動シャフトおよびアウターマストのない、本発明による駆動装置1の第5の好ましい実施形態の斜視図である。図5cに見られるように、遊星歯車キャリア5は、ここでは、キャリアアーム9を介して、ベアリングマスト13として機能するベース要素Bに、回転に関して固定され、および位置に関して固定されるよう接続されている。さらに、ベアリングマスト13は、ここでは、環状歯車18上に固定されている更なるシャフトのために、中心軸zと同軸に配置されているチューブエレメントRを含んでいる。
【0090】
さらに、図5cに示すように、ここでは、遊星歯車キャリア5は、単一の一貫した、実質的に環状の構成要素として構成されており、その中に遊星歯車4が位置的に固定された状態で保持されている。
【0091】
図5dは、ギア機構ハウジングGを備えるが、中央駆動シャフトがなく、アウターマストがない、本発明による駆動装置1の第5の好ましい実施形態の斜視図である。図5dに見られるように、キャリアアーム9は、同時に、ギア機構ハウジングGを固定するために使用される。
【0092】
図5a図5dに示す本発明による駆動装置1の第5の好ましい実施形態は、特にコンパクトな設計であり、取り付け可能な回転アウターマスト14は、外側歯付き環状歯車18または内側歯付き環状歯車19上に短く構成することができ、遊星歯車4と基本的に同じ軸方向位置に取り付けることができるようになっている。回転翼航空機への使用の場合、駆動装置1は、基本的にロータ平面に直接的に取り付け可能である。
【0093】
図6は、遊星歯車Pに内蔵された第1の駆動部2の駆動力制御の機能ブロック図である。
【0094】
図1d図2d図3d図4d図5dに例示されているように、駆動装置1は、遊星歯車4に組み込まれた第1の駆動部2を作動させ、互いに同期させるように構成された制御ユニットSTを備えている。
【0095】
本発明の意味では、制御は、制御ロジックとパワーエレクトロニクスユニットLEE(ここでは「インバータ」とも呼ばれる)とを備えた電気同期モータ10の標準的な制御として実現される。制御ロジック(ここでは「モータコントローラ」とも呼ばれる)は、定義された回転速度およびトルクを有する連続回転を得るために、インバータを制御する対応する信号を生成し、インバータは、電気同期モータ10の対応するモータコイルを励起する。電気同期モータ10の同期は、電機子の位置と回転速度を決定し、各電気同期モータ10について個別に制御信号を計算することで可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 駆動装置
2 第1の駆動部
4 遊星歯車
5 遊星歯車キャリア
6; 6' 下側/上側遊星歯車
7 電気供給ライン
9 キャリアアーム(遊星歯車キャリア5をギア機構のハウジングGに固定するためのもの)
10 電気式同期モータ
11 内側ロータ部(電気式同期モータの場合)
12 ステータ部
13 ベアリングマスト
14 アウターマスト
15 シャフト
16 外側ロータ部(電気式同期モータの場合)
17 太陽歯車
18 (内部の外側歯の)環状歯車
19 (外部の内側歯の)環状歯車
20 環状歯車ドライバー
24 中央の駆動ギア
25 ドライブトレイン
26 ドライブトレインギア
27 中央の駆動シャフト
30 トルク伝達ギア機構
B ベース要素
BS バッテリ貯蔵ユニット
G ギア機構ハウジング
M 磁気ギャップ
P 遊星歯車軸
Pl 遊星歯車機構
R チューブエレメント
S ピン状要素
ST 制御ユニット
TK 熱力学的エンジンとして構成された第2の駆動部
V 接続要素
W (ステータ部の)巻線
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図6