(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】PTGER3阻害剤によりTTFields-耐性がん細胞におけるTTFieldsに対する感受性を回復させるための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/18 20060101AFI20240115BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20240115BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20240115BHJP
A61N 1/32 20060101ALI20240115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A61K31/18
A61K31/405
A61K31/616
A61N1/32
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021554764
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2020052959
(87)【国際公開番号】W WO2020201967
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-10
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・トラン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・バン・レ
(72)【発明者】
【氏名】ドンジアン・チェン
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0029419(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0008708(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0244932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0074896(US,A1)
【文献】Annals of Neurology,2018年,Vol.84 (suppl 22),p.S124, Abstract No.S297
【文献】日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.),2001年,Vol.118,pp.219-230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61N 1/32
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるTTFields耐性がん細胞の生存率を低下させる方法における使用のための、アスピリン
、L798,106、及びDG041からなる群から選択されるプロスタグランジンE受容体3(PTGER3)阻害剤と交流電場
発生装置との組み合わせ製品であって、前記方法は、前記プロスタグランジンE受容体3(PTGER3)阻害剤を対象に投与する工程と、100から500kHzの間の周波数を有す
る交流電場を対象のがん細胞に印加する工程と、を含む、製品。
【請求項2】
交流電場が、100から300kHzの間の周波数を有する、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度が、L798,106では約1から500ナノモル、アスピリンでは約0.1から2ミリモル、又はDG041では約0.5から50ナノモルである、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度が、少なくとも約3日間から5週間維持される、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
がん細胞が、神経膠芽腫、肺がん、膵臓がん、中皮腫、卵巣がん、及び乳がんの細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
対象のがん細胞に交流電場に対する耐性が生じることを妨げる方法における使用のための、アスピリン
、L798,106、及びDG041からなる群から選択されるプロスタグランジンE受容体3(PTGER3)阻害剤と交流電場
発生装置との組み合わせ製品であって、前記方法は、前記 プロスタグランジンE受容体3阻害剤を対象に投与する工程と、100から500kHzの間の周波数を有す
る交流電場を対象のがん細胞に印加する工程と、を含む、製品。
【請求項7】
交流電場が、100から300kHzの間の周波数を有する、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度が、L798,106では約1から500ナノモル、アスピリンでは約0.1から2ミリモル、又はDG041では約0.5から50ナノモルである、請求項6に記載の製品。
【請求項9】
対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度が、少なくとも約3日間から5週間維持される、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
がん細胞が、神経膠芽腫、肺がん、膵臓がん、中皮腫、卵巣がん、及び乳がんの細胞からなる群から選択される、請求項6に記載の製品。
【請求項11】
対象におけるTTFields耐性がん細胞の生存率を低下させる方法における使用のための、アスピリン
、L798,106、及びDG041からなる群から選択されるプロスタグランジンE受容体3(PTGER3)阻害剤と交流電場
発生装置との組み合わせ製品であって、前記方法は、前記PTGER3阻害剤を対象に処方する工程と、100から500kHzの間の周波数を有す
る交流電場をがん細胞に印加する工程と、を含む、製品。
【請求項12】
対象のがん細胞に交流電場に対する耐性が生じることを妨げる方法における使用のための、アスピリン
、L798,106、及びDG041からなる群から選択されるプロスタグランジンE受容体3(PTGER3)阻害剤と交流電場
発生装置との組み合わせ製品であって、前記方法は、前記PTGER3阻害剤を対象に処方する工程と、100から500kHzの間の周波数を有す
る交流電場をがん細胞に印加する工程と、を含む、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第62/826,078号(2019年3月29日に出願された)、及び同第62/849,535号(2019年5月17日に出願された)の利益を主張し、これらのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書において引用されるすべての特許、特許出願、及び刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療電場(Tumor Treating Fields)(TTFields)は、低強度、中間周波数(例えば、100~500kHz)の交流電場を非侵襲的に印加することによって送達される有効な抗腫瘍薬処置モダリティである。TTFieldsは、極微小管に方向性のある力を及ぼし、紡錘体の正常なアセンブリーを妨害する。微小管動態に関するこのような妨害により、異常な紡錘体形成、及びその後の有糸分裂の停止又は遅延がもたらされる。細胞は、有糸分裂停止又は細胞分裂への進行において、正常又は異常な異数体の子孫の形成をもたらす一方で、死滅する場合がある。四倍体細胞の形成は、翻訳スリップによる有糸分裂終了によって起こるか、又は不適当な細胞分裂中に起こる可能性がある。異常な娘細胞は、その後の間期において死滅するか、永続的な停止を受けるか、又はそれらがさらなるTTFieldsの攻撃を受けることになる追加の有糸分裂によって増殖する可能性がある。Giladi Mら Sci Rep. 2015;5:18046。
【0003】
in vivoの状況では、TTFields療法は、装着可能な携帯デバイス(Optune(登録商標))を使用して送達することができる。送達系は、電場発生装置、4つの接着パッチ(非侵襲性の絶縁トランスデューサーアレイ)、充電池及びキャリングケースを含む。トランスデューサーアレイを皮膚に当て、デバイス及び電池に接続する。治療は、昼夜を通して可能な限り多くの時間着用されるように設計される。
【0004】
前臨床の設定では、TTFieldsは、例えば、Inovitro(商標)TTFields実験室ベンチシステムを使用して、in vitroで印加することができる。Inovitro(商標)は、TTFields発生装置及びプレート当たり8つのセラミックディッシュを含有するベースプレートを含む。細胞を、各ディッシュの内側に配置したカバーガラス上に配置する。TTFieldsは、各ディッシュの高誘電率セラミックによって絶縁されたトランスデューサーアレイの2つの直交する対を使用して印加される。各ディッシュにおけるTTFieldsの配向は、1秒ごとに90°切り替わり、よって、細胞分裂の異なる配向軸を網羅する。
【0005】
神経膠芽腫(GBM)は、外科手術及び積極的な化学放射線療法にもかかわらず、成人において最も一般的かつ致命的な悪性脳がんである。腫瘍治療電場(TTFields)は、新たに診断されたGBMに対して、アジュバントテモゾロミド化学療法と組み合わせて承認されている。TTFieldsの印加により、全生存期間において有意な改善がもたらされた。TTFieldsは、有糸分裂の高分子アセンブリーを乱し、崩壊した染色体分離及び細胞死をもたらすと考えられる、低強度の交流電場である。しかし、多くのTTFieldsレスポンダーにおいて処置耐性が生じる。
【0006】
親細胞と比較して、TTFieldsの細胞傷害作用に対する相対的耐性を実証したいくつかのヒトGBM細胞株が開発された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Giladi Mら Sci Rep. 2015;5:18046
【文献】Ghaffariら、British Journal of Cancer、第119巻、440~449ページ(2018)
【文献】Markovicら、Structural features of subtype-selective EP receptor modulators. Drug Discovery Today、第22巻(1) - 2017年1月1日
【文献】Tijana Markovicら Drug Discovery Today、2017
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
プロスタグランジンE受容体3(PTGER3)阻害剤を対象に投与することを推奨し、交流電場を対象のがん細胞に印加することによって、対象におけるTTFields耐性がん細胞の生存率を低下させる方法が提供される。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有する。
【0009】
一部の例では、PTGER3阻害剤を対象に投与することを推奨し、交流電場を対象のがん細胞に印加することによって、対象のがん細胞に交流電場に対する耐性が生じることを妨げる方法が提供される。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有する。
【0010】
一部の例では、PTGER3阻害剤を対象に投与することを推奨することによって、対象のTTFields耐性がん細胞におけるTTFieldsに対する感受性を回復させる方法が提供される。この態様では、対象のTTFields耐性がん細胞におけるTTFieldsに対する感受性が、実質的に回復される。
【0011】
一部の例では、PTGER3阻害剤を対象に処方し、交流電場をがん細胞に印加することによって、対象のがん細胞に交流電場に対する耐性が生じることを妨げる方法が提供される。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有する。
【0012】
一部の例では、PTGER3阻害剤を対象に処方することによって、対象のTTFields耐性がん細胞におけるTTFieldsに対する感受性を回復させる方法。この態様では、TTFieldsに対する対象のTTFields耐性がん細胞の感受性は、PTGER3阻害剤が対象に投与された後に回復される。
【0013】
一部の例では、EP-3に制御された耐性経路における標的の阻害剤を対象に投与することを推奨し、交流電場を対象のがん細胞に印加することによって、対象におけるTTFields耐性がん細胞の生存率を低下させる方法が提供される。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】TTFieldsで処置されていない細胞とTTFieldsで処置された細胞とを比較し(左のパネル)、微小核構造を有する細胞のパーセンテージを示す(棒グラフ、右のパネル)、ヒトLN827神経膠芽腫(GBM)細胞株における微小核の生成の一例を示す図である。
【
図1B】TTFieldsにより生成された微小核が、異常な有糸分裂、染色体の不安定性、並びに炎症性サイトカイン及びI型インターフェロンの生成を引き起こすSTING経路及びピロトーシスをどのように誘導するかを示す例示的概略図である。
【
図2】細胞数の増加によって示される、TTFieldsに対する耐性の増加を有するTTFields耐性神経膠芽腫細胞の生成のための例示的手順を示す図である。
【
図3】U87 GBM耐性細胞の細胞サイズが変化しないこと、及び細胞がTTFieldsに応答して微小核を形成するが、STING経路の炎症性サイトカイン応答はもはや生じないことを実証する例示的実験の結果を示す図である。
【
図4】STING及びAIMが枯渇した場合に、TTFields耐性GBM細胞(U87R、LN428R、及びLN827R)が耐性表現型を維持することを示す図である。
【
図5】TTFieldsへの曝露後すぐの、耐性GBM細胞における、専売のAIアルゴリズムであるNETZENを使用するグローバルネットワークにおける遺伝子発現の例示的変化を示す図である。
【
図6】TTFieldsへの曝露後すぐの、耐性GBM細胞における、専売のAIアルゴリズムであるNETZENを使用するグローバルネットワークにおける遺伝子発現の例示的変化を示す図である。
【
図7A】3種のTTFields耐性GBM細胞株すべてにわたって、PTGER3が、耐性について上位の主要調節因子であることを示す図である。
【
図7B】3種のTTFields耐性GBM細胞株すべてにわたって、PTGER3が、耐性について上位の主要調節因子であることを示す図である。
【
図8】TTFields処置の24時間後の、TTFields耐性細胞におけるコアPTGER3サブネットワークの例示的2D図を示す図である。
【
図9】1週間及び5週間後のTTFields耐性細胞におけるコアPTGER3サブネットワークの例示的2Dを示す図である。
【
図10】PTGER3の上方調節が、定量的PCRを使用して、3種のGBM細胞株のTTFieldsへの最初の曝露におけるTTFieldsに誘導されるSTING及びピロトーシス活性化と相関することを示す図である。
【
図11】PTGER3の上方調節が、ラットGBMモデルにおけるTTFieldsに誘導されるSTING炎症性サイトカインと相関することを示す図である。
【
図12】PTGER3の(EP3としても公知)シグナル伝達経路の例示的概略図を示す図である。
【
図13】PTGER3阻害剤(アスピリン)が、TTFields耐性GBM細胞におけるTTFieldsに対する耐性を低下させることを示す図である。
【
図14】PTGER3阻害によってTTFieldsに対するGBM耐性細胞への感受性が回復されることを示す図である。
【
図15A】TTFields感受性GBM細胞において強化されるPTGER3発現によってTTFieldsに対する耐性が付与されることを示す図である。
【
図15B】TTFields感受性GBM細胞において強化されるPTGER3発現によってTTFieldsに対する耐性が付与されることを示す図である。
【
図16】TTFields感受性GBM細胞におけるPTGER3阻害によってTTFieldsに対する耐性の発生が妨げられることを示す図である。
【
図17】PTGER3が、TTFieldsへの最初の曝露において、上方調節され、核内に転移するか又は存在する(DAPIによって示され、ラミンA/Cによって制限される)ことを示す図である。
【
図18A】TTFields耐性GBM細胞が、幹細胞性表現型に富む(腫瘍様塊形成及びCD44表面マーカーの増加によって実証される)ことを示す図である。
【
図18B】TTFields耐性GBM細胞が、幹細胞性表現型に富む(腫瘍様塊形成及びCD44表面マーカーの増加によって実証される)ことを示す図である。
【
図19】TTFields耐性細胞が、腫瘍成長及び死滅の増加をもたらすGBM幹細胞において豊富に存在することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
TTFieldsは、低強度、中間周波数(例えば、100~500kHz)の交流電場を非侵襲的に印加することによって送達される有効な抗腫瘍薬処置モダリティである。しかし、ある状況下では、腫瘍細胞は、TTFields処置に対する耐性を生じさせ、これらの状況下において有効性の低下をもたらす場合がある。一部の態様では、TTFieldsに対する耐性は、「幹細胞性」の増加又は幹細胞に類似する表現型と称される。幹細胞性は、CD44等の幹細胞性マーカーの発現によって、並びに3Dスフェアの無血清培地中で成長する能力、及び免疫抑制マウスの脳中に埋め込まれた場合に脳腫瘍を形成する能力によって測定されうる。
【0016】
重要なことに、細胞質内微小核の形成等のTTFieldsに誘導される染色体不安定性は、感受性カウンターパートと比較して耐性細胞において保存され、TTFieldsに対する耐性が、非生物物理学的機序によって媒介されることを示す。実際に、TTFieldsに誘導される炎症応答は、耐性細胞において著しく抑制され、TTFieldsに対する耐性が、生物物理学的侵襲によって誘導される有害作用の選択的損失によって付与されるという過程を支持する。この獲得されたTTFields耐性の表現型は、標準的なニューロスフェアアッセイによって決定されるように、幹様状態への遷移に関連した。
【0017】
最近、免疫感知分子サイクリックGMP-AMPシンターゼ(cGAS)-インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING、TMEM173によってコードされる)経路は、細胞質DNA感知の重要な構成成分として特定され、細胞内の免疫応答を媒介する際に重要な役割を果たしている。Ghaffariら、British Journal of Cancer、第119巻、440~449ページ(2018);例えば、
図3を参照されたい。STING経路の活性化は、細胞内の異常(例えば、細胞質の二本鎖DNA(dsDNA)の存在)に応答することによって免疫応答を媒介する。
【0018】
プロスタグランジンE受容体3(PTGER3)は、Gタンパク質共役受容体であり、プロスタグランジンE2の4つの受容体のうちの1つである。PTGER3は、生体系並びに炎症、がん、消化、神経系、腎機能、血圧、及び子宮収縮に関連する疾患に関係する。
【0019】
PTGER3阻害剤は、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン)cox2阻害剤(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ)、L798,106、及びDG041を含む。NSAIDは、疼痛緩和及び炎症の低減に使用される一般的な市販薬である。
【0020】
本明細書に記載の態様は、耐性細胞における「幹細胞性」の発生を理解し、耐性機序の主要調節因子を特定するために一連の革新的な計算プラットフォームによって助けられるシステムズアプローチを使用した。神経系の発達調節、炎症応答及び細胞間接着を含む3つのネットワーク(これらはすべて、GBM幹様細胞において役割を果たす)が崩壊したことが判明した。
【0021】
特有の主要調節因子のランキングシステムを使用して、プロスタグランジンE受容体3(PTGER3)を、これらの経路の頂端における、及びTTFields耐性表現型の要因である重要な主要調節因子として特定した。PTGER3は、TTFieldsに曝露された場合にGBM細胞において急速に上方調節され、処置された細胞が、TTFieldsがまた、並行して活性化する有益な炎症経路から離れるよう導く。
【0022】
PTGER3シグナル変換経路は、プロスタグランジンE2(PGE2)との相互作用によって上方調節される。TTFieldsとアスピリン又は他の伝統的なNSAID(例えば、cox2阻害剤)との組合せによって、PGE2生合成、したがって、PTGER3シグナル伝達の活性化を妨げることができる。或いは、PTGER3受容体アンタゴニスト(例えば、F798,106,106、ONO-AE3-240、及びDG-041)は、他のPTGER3アンタゴニスト及び阻害剤と一緒に又はそれらと組み合わせて使用することができる。このような組合せは、耐性を生じた細胞におけるTTFieldsに対する感受性を回復させるために使用することができる。
【0023】
更に、TTFieldsに曝露されると同時に、PTGER3阻害剤で処置したGBM細胞は、細胞に、例えば、約3週間後から5週間より後まで、TTFieldsに対する耐性が生じることを妨げることができる。
【0024】
プロスタグランジンE受容体3(PTGER3)阻害剤を対象に投与することを推奨し、交流電場を対象のがん細胞に印加することによって、対象のTTFields耐性がん細胞の生存率を低下させる方法が提供される。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有してもよい。
【0025】
用語「生存率を低下させる」は、本明細書で使用される場合、増殖を減少させること、アポトーシスを誘導すること、又はがん細胞を死滅させることを指す。用語「TTFields耐性がん細胞」は、本明細書で使用される場合、TTFields感受性がん細胞と比較して、TTFields処置に対する感受性の10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%の低下を示すがん細胞を指す。用語「感受性」は、本明細書で使用される場合、例えば、TTFieldsによる処置後の細胞数の低減によって測定されるTTFields処置に対する応答性を指す。
【0026】
用語「推奨すること」は、例えば、医師、医師助手、看護師、実地看護師等の医療従事者からの、患者等の対象への示唆又は指示を指す。
【0027】
ある例では、PTGER3阻害剤は、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン)、cox2阻害剤(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ)、L798,106、及びDG041のうちの1つ又は複数からなる群から選択される。一態様では、PTGER3阻害剤はアスピリンである。
【0028】
ある例では、対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度は、L798,106では約1から500ナノモル、アスピリンでは約0.1から2ミリモル、DG041では約0.5から50ナノモル、又はセレコキシブでは約1から500ナノモルである。用語「推奨濃度」は、対象におけるPTGER3阻害剤の間欠的レベル又は持続的レベルをもたらすのに十分な推奨される用量を指しうる。ある例では、対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度は、少なくとも約3日間から5週間維持される。ある例では、がん細胞は、神経膠芽腫、肺がん、膵臓がん、中皮腫、卵巣がん、及び乳がんの細胞から選択される。
【0029】
さらなる態様は、プロスタグランジンE受容体3阻害剤を対象に投与することを推奨し、交流電場を対象のがん細胞に印加することによって、対象のがん細胞に交流電場に対する耐性が生じることを妨げる方法を提供する。100から500kHzの間の周波数を有する交流電場。ある例では、交流電場は、100から300kHzの間の周波数を有する。
【0030】
ある例では、PTGER3阻害剤は、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン)、cox2阻害剤(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ)、L798,106、及びDG041のうちの1つ又は複数からなる群から選択される。一態様では、PTGER3阻害剤はアスピリンである。
【0031】
ある例では、対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度は、L798,106では約1から500ナノモル、アスピリンでは約0.1から2ミリモル、DG041では約0.5から50ナノモル、又はセレコキシブでは約1から500ナノモルである。用語「推奨濃度」は、対象におけるPTGER3阻害剤の間欠的レベル又は持続的レベルをもたらすのに十分な推奨される用量を指しうる。ある例では、対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度は、少なくとも約3日間から5週間維持される。ある例では、がん細胞は、神経膠芽腫、肺がん、膵臓がん、中皮腫、卵巣がん、及び乳がんの細胞から選択される。
【0032】
さらなる態様は、PTGER3阻害剤を対象に投与することを推奨することによって、対象のTTFields耐性がん細胞におけるTTFieldsに対する感受性を回復させる方法であって、TTFieldsに対する感受性が、対象のTTFields耐性がん細胞において、実質的に回復される、方法を提供する。
【0033】
用語「感受性を回復させる」は、TTFields感受性細胞の応答性に対して、TTFields耐性細胞の応答性を再度確立することを指す。この態様では、「応答性」は、TTFieldsへの曝露の前後に細胞数を計数することによって測定される。用語「実質的に回復される」は、TTFields耐性細胞の応答性を増加させることを指す。ある例では、TTFields耐性細胞の応答性は、少なくとも10%まで回復される。ある例では、TTFields耐性細胞の応答性は、少なくとも25%まで回復される。ある例では、TTFields耐性細胞の応答性は、少なくとも50%まで回復される。
【0034】
ある例では、PTGER3阻害剤は、NSAID(例えば、アスピリン、イブプロフェン)、cox2阻害剤(例えば、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ)、F798,106、及びDG041のうちの1つ又は複数からなる群から選択される。一態様では、PTGER3阻害剤はアスピリンである。
【0035】
ある例では、対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度は、L798,106では約1から500ナノモル、アスピリンでは約0.1から2ミリモル、DG041では約0.5から50ナノモル、又はセレコキシブでは約1から500ナノモルである。用語「推奨濃度」は、対象におけるPTGER3阻害剤の間欠的レベル又は持続的レベルをもたらすのに十分な推奨される用量を指しうる。ある例では、対象におけるPTGER3阻害剤の推奨濃度は、少なくとも約3日間から5週間維持される。ある例では、がん細胞は、神経膠芽腫細胞である。
【0036】
更に別の態様は、PTGER3阻害剤を対象に処方し、交流電場をがん細胞に印加することによって、対象におけるTTFields耐性がん細胞の生存率を低下させる方法を提供する。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有してもよい。
【0037】
用語「処方する」は、本明細書で使用される場合、処方箋を書く権限を与えられた医療従事者が、薬物に関する処方箋を対象に提供すること又は薬局若しくは他の診療所に処方箋を伝達することを指す。
【0038】
さらなる態様は、PTGER3阻害剤を対象に処方し、交流電場をがん細胞に印加することによって、対象のがん細胞に交流電場に対する耐性が生じることを妨げる方法を提供する。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有してもよい。
【0039】
更に別の態様は、PTGER3阻害剤を対象に処方することによって、対象のTTFields耐性がん細胞におけるTTFieldsに対する感受性を回復させる方法であって、TTFieldsに対する対象のTTFields耐性がん細胞の感受性が、PTGER3阻害剤を対象に投与した後に回復される、方法を提供する。
【0040】
ある例では、EP3に制御された耐性経路において標的の阻害剤を対象に投与することを推奨し、交流電場を対象のがん細胞に印加することによって、対象におけるTTFields耐性がん細胞の生存率を低下させる方法が提供される。交流電場は、100から500kHzの間の周波数を有する。
【0041】
ある例では、EP3に制御された耐性経路における標的は、ZNF488及びPRDM8からなる群から選択される。PRDM8の阻害剤の例としては、以下に限定されないが、アザシチジン及びデシタビンが挙げられる。
【0042】
図1Aに示されるように、ヒトLN827神経膠芽腫細胞は、TTFieldsによって、200kHzで24時間処置され、次いで、4%のPFAで20分間固定された。DAPI(4',6-ジアミジノ-2-フェニリンドール)を使用して、1:5000の希釈率で細胞を染色し、室温で5分間インキュベートして核及び微小核を染色した。微小核は、TTFieldsで処置した細胞(下のパネル)において示すことができる(矢印)。棒グラフは、微小核構造の約15%の増加を示す。
【0043】
図1Bは、dsDNA(二本鎖DNA)による炎症性STING及びピロトーシス経路の誘導を示す。dsDNAは、異常な有糸分裂によって誘導された微小核から生成されうる。異常な有糸分裂は、例えば、TTFieldsによって誘導することができる。TTFieldsは、ラミンB1構造の崩壊によって示されるように、核エンベロープの完全性も低下させ、細胞質におけるdsDNA及び示されるようにSTING経路の誘導をもたらしうる。
【0044】
図2にまとめた実験では、TTFields耐性ヒトGBM細胞株は、LN827細胞を10,000個/mlの密度で播種することによって生成され、200kHzの周波数で、1週間サイクルで繰り返して、TTFieldsにより処置された。各サイクルでは、細胞を、2日目、4日目及び7日目に計数した。各サイクルの終わりに、細胞を0日目と同じ密度で再度播種し、さらなる解析のためのRNAseq及び凍結乾燥のために回収及び処理した。TTFields処置の少なくとも4週間後に、耐性細胞が出現した。
図2に示されるように、細胞数は、それ以前の週と比較して、第5週後にTTFieldsで処置した細胞において有意に高く、非耐性細胞におけるTTFieldsの細胞数低減効果に対して耐性の細胞の発生を実証する。
【0045】
ヒトGBM細胞株を200kHzの周波数で1週間、TTFieldsを用いて又は用いずに処理した(TTF=感受性細胞;R-TTF=耐性細胞)(
図3)。サイズ(フローサイトメトリー)、微小核構造(免疫蛍光法)、及び1型インターフェロン応答遺伝子(qPCR)について細胞を解析した。左のパネルに示されるように、U87C(感受性)及びU87R(耐性)は、細胞サイズの変化を示さなかった。しかし、右のパネル(上)は、微小核が依然として形成されることを示す(TTFとR-TTFとを比較する)。重要な1型インターフェロン応答遺伝子である、インターフェロンに刺激された遺伝子15(ISG15)は、U87R及びLN827R耐性細胞株ではもはや生成されない。
【0046】
図4は、TTFieldsによって誘導された炎症促進経路及び耐性経路が独立していることを示す。STING/AIM2経路は、shRNA(短鎖ヘアピンRNA)を使用する「ノックダウン」(KD)TTFields耐性細胞株(U87R、LN428R、LN827R)において枯渇した。細胞を示したように3日間処置し、細胞数を細胞カウンター(Bio-Rad TC10)によって決定した。
図4に示されるように、TTFieldsに対する耐性は、STING/AIM2経路がshRNAによって阻害される場合でさえ維持される(例えば、TTFieldsのバーを二重KD+TTFieldsと比較する)。
【0047】
図5は、対照細胞における耐性細胞の全般的遺伝子発現変化、並びに耐性細胞(LN428、LN827、及びU87)におけるTTFields曝露の1週間及び5週間後の例示的変化を示す。
【0048】
図6は、アルゴリズムを使用する耐性GBM細胞における全般的遺伝子ネットワークの変化並びに特定された遺伝子の、幹細胞性(例えば、ERG、FOXF1、NFKBIZ、LIF、BCL3、EHF、ZNF488、SLC2A4RG、ETV4、PTGER3)及び免疫応答(例えば、CEBPD、RCOR2、TRIM22、SLC1A3、PLSCR1、FLIl)に関連する表現型との関連を示す。
【0049】
図7Aは、3種の異なるGBM細胞株において、4つの異なる時点(0時間、6時間、24時間、1週間、5週間)にわたってNETZEN(
図7A)を使用して特定したTTFieldsに対する耐性の上位の主要調節因子に関するnSCOREランクを示す。
図7Bは、RNAseq及びウエスタンブロッティングによって決定したPTGER3の発現が、PTGER3 nSCOREランクと相関することを示す。293T細胞株におけるEP3の過剰発現は陽性対照として、B-アクチンはローディング対照としての役割を果たす。
【0050】
図8は、TTFieldsへの曝露の24時間後に、PTGER3によって制御される遺伝子サブネットワークの二次元の図を提供する。
図9は、PTGER3によって制御される遺伝子サブネットワークが、耐性細胞が細胞培養物を上回るにつれて、どのように優勢となるかを示す(1週目+5週目)。
【0051】
図10は、PTGER3による上方調節が、3つの中で、TTFieldsへの曝露後に、TTFieldsに誘導されるSTING及びピロトーシス活性化と相関することを示す。定量的RT-PCRを利用して、PTGER3、IL6及びISG15(STING及びピロトーシス活性化に対するマーカー)の転写レベルを検出した。
【0052】
図11は、PTGER3の上方調節が、ラットGBMモデル(Novocure社によって確立された)において、in vivoで、TTFieldsに誘導されたSTING炎症性サイトカインと相関することを示す。TTFields処置は、注射の1週間後に、F98ラット同所性GBMモデル(Novocure社)において開始され、1週間続いた。次いで、動物を安楽死させ、RNAのために腫瘍を採取した。定量的RT-PCRを実施して、PTGER3、IL6及びISG15の転写レベルを検出した。
【0053】
図12は、Markovicら、Structural features of subtype-selective EP receptor modulators. Drug Discovery Today、第22巻(1) - 2017年1月1日からの例証に基づいて、アスピリン及びPTGER3阻害剤(L798,106及びDG041)によって影響を受けたシグナル経路の部分を含むPTGER3経路を例示する。
【0054】
アスピリンは、TTFields耐性細胞におけるTTFieldsに対する耐性を有意に低下させる。
図13は、アスピリンが、TTFields耐性GBM細胞(U87R、L428R、及びLN827R)におけるTTFieldに対する耐性を低下させる(ビヒクル+TTFieldsをアスピリン+TTFieldsと比較する)ことを示す。
図13にまとめた実験では、耐性ヒトGBM細胞をTTFieldsを用いて又は用いないでビヒクル対照又はアスピリンのいずれかで、3日間処置した。薬物は、毎日補充した。生細胞数を、終了点で細胞カウンターを使用して定量した。
【0055】
したがって、TTFields処置に対する耐性が生じている患者(例えば、長期使用の経過にわたって)は、アスピリンを摂取する(例えば、毎日)ことによって、TTFieldsに対する耐性を低下させ、TTFields処置をより長期間より有効にすることが可能になる。理論に拘束されないが、このアプローチは、耐性を生じる患者におけるTTFieldsの有効性を改善することができると考えられる。
【0056】
例えば、U87R耐性細胞では、TTFieldsは、生細胞数を150k/ディッシュから125k/ディッシュまで低下させた。アスピリンが細胞に与えられた場合、生細胞数は、150k/ディッシュから100k/ディッシュまで低下した。LN428R耐性細胞では、TTFieldsは、生細胞数を85k/ディッシュから70k/ディッシュまで低下させた。アスピリンが細胞に与えられた場合、生細胞数は、85k/ディッシュから40k/ディッシュまで低下した。LN827R細胞では、TTFieldsは、生細胞数を若干増加させた。アスピリンが細胞に与えられた場合、生細胞数は、125k/ディッシュから90k/ディッシュまで低下した。
【0057】
PTGER3阻害剤は、TTFieldsに対する感受性を回復させることができる。耐性ヒトGBM細胞を、200kHzで3日間TTFieldsを用いて又は用いないで、ビヒクル対照又はEP3(PTGER3)阻害剤(L798,106(左のパネル)又はDG041(右のパネル))のいずれかで別々に処置した(
図14)。DG041は、US Biological社から入手し、L798,106は、Tocris社から入手した。
図14にまとめた実験では、薬物は毎日補充した。生細胞数をエンドポイントで細胞カウンターを使用して定量した。
図14に示されるように、PTGER3阻害剤は、TTFieldsに対する感受性を回復させる(TTFieldsのバーをL798,106+TTFields及びDG041+TTFieldsと比較する)。
【0058】
図14に示されるように(左のパネル)、TTFieldsは、U87 GBM耐性細胞に関して、およそ200k/ディッシュから125k/ディッシュまで生細胞数を低減させた。PTGER3阻害剤L798,106(0.5μM)を細胞に与えた場合、生細胞数は、およそ200k/ディッシュから25k/ディッシュまで低減した。
図14に示されるように(右パネル)、TTFieldsは、U87 GBM耐性細胞に関して、およそ160k/ディッシュから100k/ディッシュまで生細胞数を低減させた。PTGER3阻害剤DG041(50nM)が細胞に与えられた場合、生細胞数は、およそ160k/ディッシュからおよそ40k/ディッシュまで低減した。このデータは、TTFieldsに対する耐性が生じた後でさえ、PTGER3阻害剤がTTFieldsに対する感受性を回復させることができることを実証する。
【0059】
TTFields感受性GBM細胞における強化されたPTGER3の発現によって、TTFieldsに対する耐性が与えられる。
図15Aに示されるように、ヒトGBM細胞をエンプティベクター対照(EV)又はPTGER3を発現するレンチウイルスに形質導入し、次に、200kHzで3日間、TTFieldsで処置した。生細胞数は、細胞カウンターを使用して定量した。EP3過剰発現の有効性をウエスタンブロットによって決定した(
図15B)。耐性は、EP3(U87及びLN428)を過剰発現した細胞においてのみ与えられ、EP3を過剰発現できなかった細胞には与えられなかった。
【0060】
図2からの元のヒトGBM細胞株を使用する耐性細胞株生成実験をPTGER3阻害剤(L798,106及びL798,106+TTFields)を含んだ2つを超える群で繰り返した(
図16)。L798,106 PTGER3阻害剤は、TTFieldsに対する耐性の発生を妨げた。細胞を播種して、同一の細胞密度及び時点で計数した。各サイクルは、全部で5サイクル以内で、7日間続く。
【0061】
図17に示した結果は、TTFieldに対する曝露の際に、核におけるEP3の存在を実証する。これらの結果は、7回膜貫通型細胞表面受容体であるEP3の核への存在又は転移を示し、ここで、EP3は、数百の遺伝子との直接的相互作用を有するTTFieldsに対する耐性の主要調節因子として作用する。大多数の主要調節因子は、核に位置する転写因子である。
【0062】
理論に拘束されないが、EP3は上方調節され、TTFieldsへの曝露の際に核に存在するか又は核に転移して、EP3が、神経幹因子ZNF488等の他の転写因子によって直接的又は間接的に他の遺伝子を調節することができる機序を提供すると考えられる。したがって、EP3は、それらの遅いリサイクリング速度並びに他の生存及び抗アポトーシス経路によって、多くの処置モダリティ(例えば、TTFields)に対して耐性であるGBM幹細胞の発生及び濃縮を促進することによって、TTFieldsに対する耐性を調節すると考えられる。
【0063】
図18A~18Bに示されるように、TTFields耐性GBM細胞は、「幹細胞性」表現型(例えば、腫瘍様塊形成及びCD44表面マーカー)に富む。
図18Aは、TTFieldsで1週間処置された耐性細胞における腫瘍様塊形成を示し、一方、TTFieldsで1週間処置されたTTFields感受性細胞は腫瘍様塊形成を示さなかった。
【0064】
図18Bは、TTFields感受性細胞と比較して、TTFields耐性細胞におけるCD44表面マーカーの増加を示す。ヒトGBM細胞株を示したように処置し、次いで、FBS遊離幹細胞培養培地中100個の細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート中に播種し、4週間培養し、Calcein AM染料で室温で30分間染色した。各ウェルの画像をex/em=456/541nmの波長でプレートリーダー(SpectraMax(登録商標) i3x)において撮影した。CD44の発現は、FACSによって測定した。
【0065】
図19に示されるように、TTFields耐性細胞は、腫瘍成長及び死滅の増加をもたらすGBM幹細胞に富む。TTFields耐性細胞及びTTFields感受性細胞をマウスの脳に埋め込んだ。各処置条件下の等しい数の細胞をNSGマウスの脳に同所的に埋め込み、腫瘍成長のプロキシとして、生存率を測定した。
【0066】
本発明は、特定の実施形態を参照して開示されているが、記載された実施形態への多数の修正、変更及び変化が、添付の特許請求の範囲に定義されているように、本発明の領域及び範囲を逸脱することなく可能である。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されるべきではないが、以下の請求項の文言、及びその均等物によって定義される完全な範囲を有することが意図される。