(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】戻り路に光増幅器を備えたLIDAR装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4913 20200101AFI20240115BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240115BHJP
【FI】
G01S7/4913
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2021556888
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 US2020020664
(87)【国際公開番号】W WO2020190491
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-17
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521095112
【氏名又は名称】エヴァ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ベーザディ ベーサン
(72)【発明者】
【氏名】レズク ミナ
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-122057(JP,A)
【文献】特開2000-338243(JP,A)
【文献】特開2012-173107(JP,A)
【文献】特開2000-266850(JP,A)
【文献】特開2000-338246(JP,A)
【文献】米国特許第04846571(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209798(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
G01B 9/00 - 11/30
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光回路を備える光検出及び測距(LIDAR)装置であって、
前記光回路は、
レーザビームを放出するように構成されたレーザ源と、
前記レーザ源に作動的に結合され、前記レーザビームを局部発振器信号と標的に向かって伝搬する伝送ビームに分離するように構成されたビーム分離器と、
前記ビーム分離器に作動的に結合された第1の光増幅器であって、前記標的から反射された戻りレーザビームを戻り路で受け取り、前記戻りレーザビームを増幅して、増幅された戻りレーザビームを出力するように構成され、前記局部発振器信号の電力レベルが前記第1の光増幅器の自然放射増幅光の電力と同等である、前記第1の光増幅器と、
前記第1の光増幅器に作動的に結合され、前記増幅された戻りレーザビーム及び前記局部発振器信号に基づいて電流を出力するように構成された光学検出器と、
を備え
、
前記第1の光増幅器は、前記戻りレーザビームを前記光学検出器よりも前に且つ前記局部発振器信号と混合される前に増幅する、LIDAR装置。
【請求項2】
前記第1の光増幅器は、半導体光増幅器を備える、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項3】
前記光学検出器は、
前記第1の光増幅器の出力に作動的に結合され、局部発振器信号を受信するように構成されたビームコンバイナと、
前記ビームコンバイナに作動的に結合された光検出器と、
前記光検出器に作動的に結合され、前記電流を出力するように構成された増幅器と、
を備える、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項4】
前記ビーム分離器は、偏光ビームスプリッタを備え、前記LIDAR装置は、前記偏光ビームスプリッタの後に位置する光増幅器をさらに備える、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項5】
前記ビーム分離器は、サーキュレータを備える、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項6】
前記光回路は、前記標的に向かって伝搬する前記レーザビームの伝送経路内に第2の光増幅器を備え、前記第2の光増幅器は、前記レーザ源と前記ビーム分離器の間に作動的に結合されている、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項7】
前記光回路は、前記レーザ源と前記第1の光増幅器との間に作動的に結合されたビームスプリッタを備え、前記ビームスプリッタは、入力として受信した局部発振器信号を前記光学検出器に出力するように構成されている、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項8】
前記光回路は、フォトニクスチップに含まれる、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項9】
光検出及び測距(LIDAR)装置のための光回路であって、
標的に向けてレーザビームを放出するように構成されたレーザ源と、
前記レーザ源に作動的に結合され、前記レーザビームを局部発振器信号と標的に向かって伝搬する伝送ビームに分離するビーム分離器と、
前記レーザ源に作動的に結合された第1の光増幅器であって、前記標的から反射された戻りレーザビームを戻り路で受け取り、前記戻りレーザビームを増幅して、増幅された戻りレーザビームを出力するように構成され、前記局部発振器信号の電力レベルが前記第1の光増幅器の自然放射増幅光の電力と同等である、前記第1の光増幅器と、
前記第1の光増幅器に作動的に結合され、前記増幅された戻りレーザビーム及び前記局部発振器信号に基づいて電流を出力するように構成された光学検出器と、
を備え
、
前記第1の光増幅器は、前記戻りレーザビームを前記光学検出器よりも前に且つ前記局部発振器信号と混合される前に増幅する光回路。
【請求項10】
前記第1の光増幅器は、半導体光増幅器を備える、請求項9に記載の光回路。
【請求項11】
前記光学検出器は、
前記第1の光増幅器の出力に作動的に結合され、前記局部発振器信号を受信するように構成されたビームコンバイナと、
前記ビームコンバイナに作動的に結合された光検出器と、
前記光検出器に作動的に結合され、前記電流を出力するように構成された増幅器と、
を備える、請求項9に記載の光回路。
【請求項12】
前記ビーム分離器は、偏光ビームスプリッタを備える、請求項9に記載の光回路。
【請求項13】
前記ビーム分離器は、サーキュレータを備える、請求項9に記載の光回路。
【請求項14】
前記標的に向かって伝搬する前記伝送ビームの伝送経路内に第2の光増幅器をさらに備え、前記第2の光増幅器は、前記レーザ源と前記ビーム分離器の間に作動的に結合される、請求項9に記載の光回路。
【請求項15】
前記レーザ源と第2の光増幅器との間に作動的に結合されたビームスプリッタをさらに備え、前記ビームスプリッタは、前記標的に向かって伝搬する前記レーザビームの第1の部分と、前記光学検出器で受信される前記局部発振器信号としての前記レーザビームの第2の部分を分離するように構成されている、請求項9に記載の光回路。
【請求項16】
レーザ源によって、レーザビームを放出するステップと、
ビーム分離器によって、前記レーザビームを局部発振器信号と標的に向かって伝搬する伝送ビームに分離するステップと、
光増幅器によって、標的から反射された戻りレーザビームを戻り路で受け取るステップと、
前記光増幅器によって、前記戻りレーザビームを増幅して、増幅された戻りレーザビームを出力する増幅ステップであって、前記局部発振器信号の電力レベルが前記光増幅器の自然放射増幅光の電力と同等である、前記増幅ステップと、
前記増幅された戻りレーザビームを局部発振器信号の一部と混合するステップと、
光学検出器によって、前記増幅された戻りレーザビーム及び前記局部発振器信号に基づいて電流を出力するステップと、
を含
み、
前記光増幅器は、前記戻りレーザビームを前記光学検出器よりも前に且つ前記局部発振器信号と混合される前に増幅する方法。
【請求項17】
前記光学検出器によって、前記増幅された戻りレーザビームと共に局所発振器信号を処理して前記電流を出力するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
別の光増幅器によって、前記レーザビームを増幅するステップをさらに含み、前記標的に向かって伝搬する前記レーザビームを分離することが、前記別の光増幅器によって、前記レーザビームを増幅することに応答する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記光増幅器は、半導体光増幅器を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記光増幅器は、ファイバ光増幅器を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ビーム分離器は、偏光ビームスプリッタを備える、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で2019年3月18日出願の米国特許出願番号16/356927の利益を主張するものであり、その内容全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、信号対雑音比の改善を提供する光検出及び測距(LIDAR)装置に関する。
【背景技術】
【0003】
理想的な場合、一般的に、より多くの光パワー(すなわち、より多くの光子)を送出することによって又は収集経路の開口サイズを大きくすることによって、標的から受け取る光子(光)の数が増加する。しかしながら、人間の目の安全性に起因する制約及びLIDAR装置のサイズ及びコストの選択を考慮すると、これらの方法はいずれも適応性のあるものではない。
【0004】
信号対雑音比(SNR)を大きくする別の手段は、高い利得及び高い応答性の光検出器を使用することに基づく。しかしながら、このような検出器又はセンサ(例えば、アバランシェ・フォトダイオード)は、低飽和光パワーに特徴付けられる場合があり、これは、反射物体を検出している時にLIDAR装置を盲目にするという結果を招く場合があり、従って、センサのダイナミックレンジが低下する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、非限定的に以下の実施例を含む。一部の例示的な実施構成は、レーザビームを放出するように構成されたレーザ源と、レーザ源に作動的に結合され、標的に向かって伝搬するレーザビームを分離するように構成されたビーム分離器とを含む光回路を備えた光検出及び測距(LIDAR)装置を提供する。光回路は、ビーム分離器に作動的に結合された第1の光増幅器をさらに備える。第1の光増幅器は、標的から反射された戻りレーザビームを戻り路で受け取り、戻りレーザビームを増幅して増幅された戻りレーザビームを出力するように構成される。光回路は、第1の光増幅器に作動的に結合された光学部品をさらに備え、光学部品は、増幅された戻りレーザビームに基づいて電流を出力するように構成されている。
【0006】
本開示の別の態様によれば、光検出及び測距(LIDAR)装置のための光回路は、標的に向かって伝搬するレーザビームを放出するように構成されたレーザ源と、レーザ源に作動的に結合された第1の光増幅器とを備える。第1の光増幅器は、標的から反射された戻りレーザビームを受け取り、戻りレーザビームを増幅して増幅された戻りレーザビームを出力するように構成される。光回路は、第1の光増幅器に作動的に結合された光学部品をさらに備え、光学部品は、増幅された戻りレーザビーム及び局部発振器信号に基づいて電流を出力するように構成されている。
【0007】
本開示のさらに別の態様によれば、方法は、レーザ源によって、レーザビームを放出するステップと、光増幅器によって、標的から反射された戻りレーザビームを戻り路で受け取るステップと、光増幅器によって、戻りレーザビームを増幅して、増幅された戻りレーザビームを出力するステップと、増幅された戻りレーザビームを局部発振器信号の一部と混合するステップと、光学部品によって、増幅された戻りレーザビームに基づいて電流を出力するステップと、を含む。
【0008】
本開示のこれら及び他の目的、特徴並びに利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことで明らかになるであろう。本開示は、このような特徴又は要素が明示的に組み合わされるか又は他の方法で本明細書に記載された特定の例示的な実施構成に説明されているかに関わらず、ここに記載された2,3,4,又はそれ以上の特徴又は要素の何らかの組み合わせを含む。本開示は、全体的に解釈されることが意図されているので、その何らかの態様及び例示的な実施構成における本開示の何らかの分離可能な特徴又は要素は、本開示の文脈で明確に他の方法で指示されない限り、組み合わせ可能と見なすべきである。
【0009】
従って、この概要は、本開示の一部の態様の基本的な理解を可能にするように単に一部の例示的な実施構成を要約する目的で提示されることを理解されたい。従って、上述の例示的な実施構成は、単なる例示であり、決して本開示の範囲又は精神を狭めるように解釈すべきでないことを理解されたい。他の例示的な実施構成、態様、及び利点は、例示的に一部の記載された例示的な実施構成の本質を示す添付図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の例示的な実施構成によるLIDAR装置を示す。
【
図2】本開示の実施形態による、
図1のLIDAR装置の光回路の態様を示す。
【
図3】本開示の別の実施形態による、
図1のLIDAR装置の光回路の態様を示す。
【
図4】本開示の一態様による、LIDAR装置を作動させる方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
周波数変調連続波(FMCW)光検出及び測距(LIDAR)システム又は装置(コヒーレントLIDARシステムなど)は、2つの異なる遅延を有する光をコヒーレントに混合し、これは、ビート無線周波数(RF)信号をもたらす。反射率の低い標的又は物体がLIDARシステムから遠く離れている場合、LIDARシステムによって受信される標的からの反射標的信号は、LIDARシステムが標的を適切に検出するための十分なパワーをもたない可能性がある。LIDARシステムの感知性能は、信号対雑音比(SNR)が高い場合に向上する。例えば、標的から反射された捕捉光子の数が増えると、感知される信号が大きくなる。本開示は、低い雑音レベルを維持しながら光学的な標的信号をコヒーレントに増幅する能動的な方法を説明する。この方法は、堅牢で集積光学系に適合しており、大量生産に適している。本開示は、標的からの受け取った光子のコヒーレント増幅をうまく利用するコヒーレントLIDARシステムアーキテクチャを説明する。この方法は、ビートRF信号のSNRを大幅に改善し、反射率の低い物体をより遠距離で検出することを可能にする。本開示の態様は、標的に向かってより多くの光パワーを送ることなく、又は収集開口/効率を高めることなく、捕捉される光子の数を増やすことによって、LIDARシステムのSNRを改善する。さらに、この方法は、光集積回路と適合性があり、小さなフォームファクタで実装することができる。
【0012】
図1は、本開示の例示的な実施構成によるLIDAR装置100を示す。LIDAR装置100は、複数の構成要素の各々のうちの1又は2以上を含むが、
図1に示すよりも少ない又は追加の構成要素を含むことができる。LIDAR装置100は、限定されるものではないが、輸送、製造、計測、医療、及びセキュリティシステムなどの何らかのセンシング市場で実施することができる。例えば、自動車産業では、記載されるビーム送出システムは、自動運転者支援システム又は自動運転車両のために空間認識を助けることができる周波数変調連続波(FMCW)デバイスのフロントエンドとなる。図示のように、LIDAR装置100は、光回路101を含む。光回路101は、能動的光学部品と受動的光学部品の組み合わせを含むことができる。能動的光学部品は、光信号などを生成、増幅、又は検出することができる。一部の実施例では、能動的光回路は、異なる波長のレーザ、1又は2以上の光増幅器、1又は2以上の光検出器などを含む。
【0013】
受動的光回路は、光信号を伝送するための1又は2以上の光ファイバを含み、光信号を能動的光回路の適切な入力/出力ポートへ送って処理することができる。また、受動的光回路は、タップ、波長分割マルチプレクサ、スプリッタ/コンバイナ、偏光ビームスプリッタ、コリメータなどの、1又は2以上のファイバ部品を含むことができる。一部の実施形態では、以下でさらに説明するように、受動的光回路は、PBSを用いて偏光状態を転換し、受け取った偏光光を光検出器に導く構成要素を含むことができる。
【0014】
光スキャナ102は、光信号を操作して走査パターンに従って環境を走査するために、それぞれの直交軸に沿って回転可能な1又は2以上の走査ミラーを含む。例えば、走査ミラーは、1又は2以上のガルバノメータによって回転可能とすることができる。また、光スキャナ102は、環境内の何らかの物体に入射して回路101の受動的光回路部品に戻される戻りレーザビームになる光を収集する。例えば、戻りレーザビームは、偏光ビームスプリッタによって光検出器に導くことができる。ミラー及びガルバノメータに加えて、光走査システムは、1/4波長板、レンズ、反射防止被覆窓などの構成要素を含むことができる。
【0015】
光回路101及び光スキャナ102を制御し支援するために、LIDAR装置100は、LIDAR制御システム110を含む。LIDAR制御システム110は、LIDAR装置100のための処理デバイスとして機能することができる。一部の実施形態では、LIDAR制御システム110は、デジタル信号プロセッサなどの信号処理ユニット112を含むことができる。LIDAR制御システム110は、デジタル制御信号を出力して光駆動装置103を制御するように構成される。一部の実施形態では、デジタル制御信号は、信号変換ユニット106を介してアナログ信号に変換することができる。例えば、信号変換ユニット106は、デジタル-アナログ変換器を含むことができる。次に、光駆動装置103は、レーザビーム及び増幅器などの光源を駆動するために、光回路101の能動部品に駆動信号を供給することができる。一部の実施形態では、複数の光源を駆動するために複数の光駆動装置103及び信号変換ユニット106を設けることができる。
【0016】
また、LIDAR制御システム112は、デジタル制御信号を出力して光スキャナ102を制御するように構成される。モーション制御システム105は、LIDAR制御システム110から受信した制御信号に基づいて、光スキャナ102のガルバノメータを制御することができる。例えば、デジタル-アナログ変換器は、LIDAR制御システム110からの座標経路情報を、光スキャナ102内のガルバノメータで解釈可能な信号に変換することができる。一部の実施形態では、モーション制御システム105は、光スキャナ102の構成要素の位置又は動作に関する情報をLIDAR制御システム110に戻すこともできる。例えば、今度は、アナログ-デジタル変換器が、ガルバノメータの位置に関する情報をLIDAR制御システム110で解釈可能な信号に変換することができる。
【0017】
LIDAR制御システム110は、到来するデジタル信号を分析するようにさらに構成される。これに関して、LIDAR装置100は、光回路101が受信した1又は2以上のビームを測定するために光受信器104を含む。例えば、参照ビーム受信器は、能動的光回路からの参照ビームの振幅を測定することができ、アナログ-デジタル変換器は、参照ビーム受信器からの信号をLIDAR制御システム110で解釈可能な信号に変換する。標的受信器は、ビート周波数変調光信号の形で標的の距離及び速度に関する情報を伝送する光信号を測定する。反射ビームは、局部発振器からの第2の信号と混合することができる。光受信器104は、標的受信器からの信号をLIDAR制御システム110で解釈可能な信号に変換するために、高速アナログ-デジタル変換器を含むことができる。
【0018】
一部の用途では、LIDAR装置100は、環境の画像を取り込むように構成された1又は2以上の撮像デバイス108、システムの地理的位置を提供するように構成された全地球測位システム109、又は他のセンサ入力をさらに含むことができる。また、LIDAR装置100は、画像処理システム114を含むことができる。画像処理システム114は、画像及び地理的位置を受信し、その画像、及び位置又はそれに関連する情報をLIDAR制御システム110に、又はLIDAR装置100に接続された他のシステムに送信するように構成することができる。
【0019】
一部の実施例による動作では、LIDAR装置100は、非縮退レーザ源を用いて、2次元にわたる距離及び速度を同時に測定するように構成される。この能力により、周囲環境の距離、速度、方位角、及び仰角に関するリアルタイムの長距離測定が可能となる。一部の実施例では、このシステムは複数の変調レーザビームを同じ標的に向ける。
【0020】
一部の実施例では、走査プロセスは、光駆動装置103及びLIDAR制御システム110から始まる。LIDAR制御システム110は、1又は2以上のレーザビームを独立して変調するように光駆動装置103に命令し、これらの変調信号は、受動的光回路を介してコリメータに伝わる。コリメータは、その光を、モーション制御サブシステムによって規定された予めプログラムされたパターンで環境を走査する光走査システムに向ける。また、光回路は、光が光回路101から出る際に光の偏光を転換するための1/4波長板を含む。また、偏光した光の一部を反射して光回路101に戻すこともできる。例えば、レンズ系又はコリメート系は、自然の反射特性又は反射コーティングを有し、光の一部を反射して光回路101に戻すことができる。
【0021】
環境から反射して戻った光信号は、光回路101を通過して受信器に至る。光は偏光しているので、これは、反射されて光回路101に戻った偏光光の一部と共に偏光ビームスプリッタで反射され得る。従って、反射光は、光源と同じファイバ又は導波路に戻るのではなく別個の光受信器へ反射される。これらの信号は、互いに干渉して合成信号を生成する。標的から戻った各ビーム信号は、時間シフトした波形を作り出す。2つの波形の間の時間的位相差は、光受信器(光検出器)で測定されるビート周波数を生成する。次に、合成信号は、光受信器104へ反射することができる。ビームを偏光させて光受信器104に導くための光回路101の構成については、以下でさらに説明する。
【0022】
光送信器104からのアナログ信号は、ADCを用いてデジタル信号に変換される。次に、デジタル信号は、LIDAR制御システム110に送られる。次に、信号処理ユニット112は、デジタル信号を受信してそれらを解釈することができる。一部の実施形態では、信号処理ユニット112は、モーション制御システム105及びガルバノメータからの位置データと共に、画像処理システム114からの画像データも受信する。次に、信号処理ユニット112は、光スキャナ102が追加の点を走査する際に、環境内の点の距離及び速度に関する情報を有する3D点群又は3Dポイントクラウドを生成することができる。また、信号処理ユニット112は、3D点群データを画像データと重ね合わせて、周囲領域内の物体の速度及び距離を決定することができる。また、このシステムは、精密なグローバル位置を提供するために、衛星ベースのナビゲーション位置データを処理する。
【0023】
図2は、本開示の実施形態による、
図1のLIDAR装置の光回路の態様を示す。
図2に示す光回路200などの光回路は、
図1に示す光回路101の一部とすることができる。
図2の光回路200は、ビーム伝送システムの側面図として示されている。光回路200は、レーザビームを放出するように構成されたレーザ源202と、レーザ源202に作動的に結合された(例えば、光学的に結合された)ビーム分離器204(例えば、図示のようなビームスプリッタ)と、標的214に伝搬するレーザビームを分離するように構成されたビーム分離器208とを含む。光回路200は、ビーム分離器208(例えば、図示のような偏光ビームスプリッタ)に作動的に結合された第1の光増幅器216と、第1の光増幅器216に作動的に結合された光学部品224とをさらに含み、第1の光増幅器216は、標的214から反射された戻りレーザビームを戻り路で受け取り、その戻りレーザビームを増幅して増幅された戻りレーザビームを出力するように構成されている。光学部品224は、増幅された戻りレーザビームに基づいて、電流i
PDを出力するように構成される。レーザ源202は、適切には周波数変調(FM)レーザを含むことができる。レーザ源202は、異なる波長を有する1又は2以上のレーザを放出することができ、適切にはシングルモード又はマルチモードの光ファイバを含むことができる。
【0024】
引き続き
図2では、光回路200は、レーザビームの伝送又は送出経路に、ビームスプリッタ204、第2の光増幅器206、光をコリメートするレンズ210、及び偏光波長板(PWP)212をさらに含む。1つの実施形態では、偏光波長板212は、1/4波長板とすることができる。1/4波長板は、偏光を円偏光状態に転換することができる。別の実施形態では、偏光波長板212は、1/2波長板とすることができる。1/2波長板は、直線偏光光の偏光方向を変換することができる。ビームスプリッタ204は、1つの実施形態において、適切には光ファイバタップ式ビームスプリッタを含むことができる。ビーム分離器208、レンズ210、及びPWP212は、適切にはコリメーション光学系を形成することができる。第2の光増幅器206は、標的214に向かって伝搬するレーザビームの伝送経路の中にあり、レーザ源202とビーム分離器208との間に作動的に結合されている。ビームスプリッタ204は、レーザ源202と第1の光増幅器216との間に作動的に結合されており、ビームスプリッタ204は、入力として受信した局部発振器信号(LO)を光学部品224に出力するように構成されている。第1の光増幅器216は、本開示の一態様では、半導体光増幅器(SOA)とすることができる。代わりに、第1の光増幅器216は、本開示の別の態様では、ファイバ光増幅器とすることができる。ビーム分離器208は、本開示の一態様では、
図2に示すような偏光ビームスプリッタ(PBS)とすることができる。代わりに、ビーム分離器208は、本開示の別の態様では、
図3に示すようなサーキュレータとすることができる。
【0025】
引き続き
図2では、光学部品224は、第1の光増幅器216の出力に作動的に結合され、局部発振器信号(LO)を受信するように構成されたビームコンバイナ218と、ビームコンバイナ218に作動的に結合された光検出器220とを含む。光学部品224は、光検出器220に作動的に結合された増幅器222をさらに含み、この増幅器222は、電流i
PDを出力するように構成されている。ビームコンバイナ218は、適切には50/50光ファイバビームコンバイナを含むことができ、増幅器222は、1つの実施形態において、適切にはトランスインピーダンス増幅器(TIA)を含むことができる。1つの実施形態では、局部発振器の経路をレンズ系210で反射から引き出すことができるようにビームコンバイナ218を戻り路から省くことができる。
【0026】
図3は、本開示の別の実施形態による、
図1のLIDAR装置の光回路の態様を示す。
図3に示す光回路300などの光回路は、
図1に示す光回路101の一部とすることができる。光回路300は、レーザ源302、ビームスプリッタ304、光増幅器306、図示の実施形態ではサーキュレータであるビーム分離器308、レンズ310、標的314、光増幅器316、及び光学部品324を含む。光学部品324は、ビームスプリッタ318、光検出器320、及び電流i
PDを出力するための増幅器322を含む。
図3に示す実施形態は
図2に示す実施形態とは異なっており、
図3では、偏光ビームスプリッタの代わりにサーキュレータ308が使用され、標的314にレーザビームP
Sendを送出するためにレンズ310と共に偏光波長板が使用されていない。その他の点では、
図3に示す実施形態は、
図2に示す実施形態とほぼ同じである。
【0027】
引き続き
図2では、レーザ源202はレーザビームを放出し、このレーザビームは、ビームスプリッタ204、第2の光増幅器206、ビーム分離器208、レンズ210、及びPWP212による処理を受けた後に、標的214などの標的に向かって進む。レーザビームは標的で反射され、
図2に示すように、戻り路(収集経路)で受け取られる。第1の光増幅器216などの光増幅器(OA)は、標的214などの標的から受け取った光子(「反射/戻りレーザビーム」)を、誘導放出によって増幅する。OAが生成した複製光子は、標的から受け取った光子と同一の位相を有する。利得への影響を定量的に調べるために、FMCW LIDARシステムの線形周波数ランプを表す数式を利用することができる。FMCW LIDARシステムによって送出される光パワーの正規化された電界は、以下で与えられる。
【数1】
【0028】
ここで、A
sendはLIDARを出る電力の電界振幅、γは周波数変調の傾き、ω
0は搬送波周波数、φ
0は一定の初期位相である。レンズ系によって収集され、OAによって増幅される標的からの反射電力は、以下で与えられる:
【数2】
【0029】
ここで、Rは物体(「標的」)の反射率、ηは集光効率(レンズ系で決定される集光効率)、GはOA利得である。
【0030】
FMCW LIDARシステムは、標的から受け取った電力を、以下の電界を有する局部発振器の電力(LO)と混合する。
【数3】
【0031】
ここで、A
LOはLO光パワーの振幅である。この場合、光検出器(PD)での混合による正規化された光電流は、以下で与えられる。
【数4】
【数5】
(式1)
ここで、Κと
はそれぞれ、PDの利得と応答性である。ここで、P
ASEは、OAの自然放射増幅光電力である。式1において、振動項
【数6】
はRF信号であり、DC項
【数7】
はショット雑音を決定する。一態様では、LIDARシステムは、最大のSNRを達成するために、ショット雑音制限領域で動作する。この場合、SNRは、時間平均化信号を用いて計算することができる。
【0032】
【数8】
【数9】
(式2)
ここで、qは素電荷、BWは検出帯域幅である。LIDARシステムでは、受信信号の電力はLO及びASEの電力よりも遥かに小さい(すなわち、P
LO及びP
ASE≫P
Send)。OAを用いたSNR利得は、近似的に以下で計算される。
【数10】
(式3)
【0033】
従って、式3に示すように、PLOがPASEと同等である場合、OAを用いたFMCW LIDARシステムのSNRを向上させることができる。例えば、PLO~PASEであり、各電力レベルが約1mWで、OA利得Gが最大20dBとすることができる商用FMCWレーザの場合、17dBのSNR利得を実現することができる。
【0034】
式2は、TIA利得(Κ)、PDの応答性
、集光効率(η)、送出光パワー(P
Send)を増加させることで、並びに検出帯域幅(BW)を減少させる(すなわち、検出平均時間を増やす)ことで、SNRを改善できることを示すことに留意されたい。それにもかかわらず、所望のダイナミックレンジ及び帯域幅を達成しながらTIA利得を高めることには限界がある。また、検出器の応答性は、本開示の一態様に従って、アバランシェ・フォトダイオード(APD)を用いて高めることもできる。集光効率は、集光開口を大きくすることで高めることができるが、LIDARシステムはコンパクトに維持することが好ましい。目の安全性要件を保証するためには、光パワーを所定の電力未満のままに維持する必要がある。一般に、検出の帯域幅は、システム遅延を増大させ、センサの応答を遅くすることになるという理由で、小さくすることができない。1つの実施形態では、
図2及び
図3に示した光回路200及び300のそれぞれは、フォトニクスチップ又は集積回路に含めることができる。
【0035】
図4は、本開示の一部の態様による、LIDAR装置を作動させるための方法400の例示的な流れ図を示す。一部の実施形態では、流れ
図400は、上記の
図1~
図3を参照して説明したシステム及び装置の1又は2以上の構成要素で実行することができる。
【0036】
図4を参照すると、方法400は、様々な実施形態で使用される例示的な機能を示す。方法400には特定の機能ブロック(「ブロック」)が開示されるが、このようなブロックは例示である。すなわち、実施形態は、様々な他のブロック又は方法400に列挙したブロックの変形例を実行するのに適している。方法400の各ブロックは、提示されたものとは異なる順序で実行することができ、方法400のブロックの全てが実行されるとは限らないことを理解されたい。流れ
図400は、ブロック402において、レーザ源によって、レーザビームを放出するステップを含む。流れ
図400は、ブロック404において、光増幅器によって、標的から反射された戻りレーザビーム(標的からの反射レーザビーム)を戻り路で受け取るステップと、ブロック406において、光増幅器によって、戻りレーザビームを増幅して、増幅された戻りレーザビームを出力するステップとをさらに含む。流れ
図400は、ブロック408において、増幅された戻りレーザビームを局部発振器信号の一部と混合するステップをさらに含み、ブロック410において、光学部品は増幅された戻りレーザビームに基づいて電流を出力する。実施形態において、流れ
図400は、光学部品によって、増幅された戻りレーザビームと共に局所発振器信号を処理して電流を出力するステップと、標的に向かって伝搬するレーザビームを分離する前に、別の光増幅器によって、レーザビームを増幅するステップとをさらに含むことができる。
【0037】
上記の説明は、本開示のいくつかの実施形態の良好な理解を可能にするために、具体的なシステム、構成要素、方法ほかの実施例などの多くの具体的な詳細を説明する。しかしながら、当業者であれば本開示の少なくとも一部の実施形態がこれらの具体的な詳細なしで実施できることを理解できる。場合によっては、本開示が不明瞭になるのを避けるために、周知の構成要素又は方法は、詳細に説明されないか又は単純なブロック図で提示される。従って、記載される特定の詳細は、単なる例示に過ぎない。特定の実施形態は、これらの例示的な詳細とは異なる場合があるが、依然として本開示の範囲に入ることが想定される。
【0038】
本明細書を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な箇所での「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」というフレーズの出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指している訳ではない。さらに、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく包括的な「又は」を意味することが意図されている。
【0039】
本明細書では方法の動作が特定の順序で図示されて説明されるが、各方法の動作の順序は、特定の動作を逆の順序で実行できるように又は特定の動作を少なくとも部分的に他の動作と同時に実行できるように変更することができる。別の実施形態では、別個の動作の命令又はサブ動作は、間欠的又は交互的な様式で行うことができる。
【0040】
要約に記載されるものを含む、本発明を示す実施構成に関する上記の説明は、網羅的であること又は本発明を開示された正確な形態に限定することが意図されていない。本明細書には、説明を目的として本発明の具体的な実施態様及び実施例が記載されるが、当業者であれば理解できるように、本発明の範囲内で様々な等価な変更が可能である。本明細書では、用語「実施例」又は「例示的な」は、実施例、事例、又は実例としての役割を果たすことを意味するために使用される。本明細書で「実施例」又は「例示的な」として記載される何らかの態様又はデザインは、必ずしも他の態様又はデザインよりも好ましいか又は好都合であると解釈するべきではない。むしろ、用語「実施例」又は「例示的な」の使用は、概念を具体的に提示することが意図されている。本出願で使用する場合、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、特に指定がない限り又は文脈から明らかでない限り、「XはA又はBを含む」は、自然な包括的順序のいずれかを意味することが意図されている。つまり、XがAを含む、XがBを含む、又はXがAとBの両方を含む場合、「XはA又はBを含む」は、前述のいずれの例も満たす。加えて、本出願及び添付の請求項で使用する冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、一般に、特に指定がない限り又は文脈から単数形に向けられていることが明らかでない限り、「1又は2以上」を意味するように解釈すべきである。さらに、全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」又は「1つの実施例」又は「一実施例」という用語の使用は、そのように説明されない限り、同じ実施形態又は実施例を意味することが意図されていない。さらに、本明細書で使用する「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」などの用語は、異なる要素を区別するための表記を意味し、必ずしもその数値指定による順序的な意味をもたない。
【符号の説明】
【0041】
200 光回路
202 レーザ源
204 ビームスプリッタ
206 光増幅器
208 偏光ビームスプリッタ(PBS)
210 レンズ
212 偏光波長板(PWP)
214 標的
216 光増幅器
218 ビームコンバイナ
220 光検出器(PD)
222 トランスインピーダンス増幅器(TIA)
224 光学部品