(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】膜-電極アセンブリーの触媒層およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20240115BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20240115BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
H01M4/88 K
H01M4/92
H01M4/86 M
(21)【出願番号】P 2021567945
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 US2020030234
(87)【国際公開番号】W WO2020231628
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-11
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518397733
【氏名又は名称】ニコラ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NIKOLA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】4141 East Broadway Road, Phoenix, Arizona 85040, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】スラック,ジョン
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-095826(JP,A)
【文献】特表2014-504424(JP,A)
【文献】特表2010-534562(JP,A)
【文献】特表2009-524567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0035124(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0030387(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86-4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に付着している球形の構造化単位の少なくとも1つの層を含み、該構造化単位のそれぞれが外側シェルおよび内側コアを含む電極であって、
該内側コアが第1の半径を有し、
該内側コアが、複数の炭素含有担体粒子に結合している複数の触媒粒子を含み、第1の濃度でアイオノマーを含み、
該外側シェルが、第1の半径から第1の半径より大きい第2の半径まで内側コアを包囲し、
該外側シェルが第1の濃度より高い第2の濃度でアイオノマーを含み、そして
該構造化単位のそれぞれが、0.5~2のアイオノマー対炭素の全体比を含む、
前記電極。
【請求項2】
少なくとも1つの構造化単位の第1の半径における第1のアイオノマー対炭素比が0.1~0.9であり、少なくとも1つの構造化単位の第2の半径における第2のアイオノマー対炭素比が0.9~5である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
アイオノマー相対濃度プロファイルが、構造化単位の半径におけるアイオノマー対炭素比として定義され、該アイオノマー相対濃度プロファイルが第1の半径において変曲点を有する、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
アイオノマー相対濃度プロファイルがシグモイド関数である、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
複数の触媒粒子が、白金族金属触媒または遷移金属ベースのn4-大環状金属錯体触媒のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
アイオノマーが、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)、ペルフルオロイミド酸(PFIA)、第四級ポリフェニレンオキシド(QPPO)、または炭化水素ベースのアイオノマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
内側コアが複数の酸化セリウムナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
燃料電池用の膜電極アセンブリーの形成方法であって、
基材と、基材の表面に付着している複数の球形の構造化単位とを含む触媒層を提供すること、該構造化単位のそれぞれは、外側シェルおよび内側コアを含み、
該内側コアは第1の半径を有し、
該内側コアは、複数の炭素含有担体粒子に結合している複数の触媒粒子を含み、第1の濃度でアイオノマーを含み、
該外側シェルは、第1の半径から第1の半径より大きい第2の半径まで内側コアを包囲し、
該外側シェルは、第1の濃度より高い第2の濃度でアイオノマーを含み、そして
該構造化単位のそれぞれは、0.5~2のアイオノマー対炭素の全体比を含む;
触媒層の複数の球形の構造化単位を膜の表面に近接して位置決めすること;触媒層と膜を一緒に加熱プレスすること;および、触媒層の基材を除去すること;
を含む、前記方法。
【請求項9】
膜がプロトン交換膜を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの構造化単位の第1の半径における第1のアイオノマー対炭素比が0.1~0.9であり、少なくとも1つの構造化単位の第2の半径における第2のアイオノマー対炭素比が0.9~5である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
アイオノマー相対濃度プロファイルが、構造化単位の半径におけるアイオノマー対炭素比として定義され、該アイオノマー相対濃度プロファイルが第1の半径において変曲点を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
アイオノマー相対濃度プロファイルがシグモイド関数である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
複数の触媒粒子が、白金族金属触媒または遷移金属ベースのn4-大環状金属錯体触媒のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
アイオノマーが、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)、ペルフルオロイミド酸(PFIA)、第四級ポリフェニレンオキシド(QPPO)、または炭化水素ベースのアイオノマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
内側コアが複数の酸化セリウムナノ粒子をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記外側シェルが前記内側コアを同心で包囲する、請求項1に記載の電極。
【請求項17】
前記外側シェルが前記内側コアを同心で包囲する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は2019年5月13日に出願された「Catalyst Layers of Membrane-Electrode Assemblies and Methods of Making Same」と題する米国仮出願第62/847156号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる(主題の免責または否認を除き、かつ、本出願の開示内容と矛盾する範囲を除く。本出願の開示内容と矛盾する場合、本出願の開示内容が制する)。
[0002]本開示は一般に、燃料電池構成要素のためのシステム、方法、および装置に関し、より詳細には、燃料電池用膜-電極アセンブリーのための方法、システム、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]燃料電池(プロトン交換膜燃料電池など)に使用される膜-電極アセンブリー(MEA)における現行の最先端の触媒層は、中間基材(デカール基材など)のスロットダイコーティングまたはスプレーコーティングのいずれかを利用して形成される。これらの堆積方法は溶媒乾燥段階を必要とし、これは、蒸発によって生じる毛管力に起因する不均一な触媒層表面を引き起こす。これらの力は、直接、クラック(乾燥構造)を触媒層中に形成させる可能性がある。しかしながら、直接形成されたクラックのない触媒層においてさえ、これらの表面の最も薄い部分は、燃料電池MEAの通常動作中にクラック成長の核形成部位をもたらす。触媒層にクラックが形成されると、クラックは膜中に伝播して、ピンホールおよびMEAの破損の原因となる。
【0003】
[0004]現行の触媒層の形成方法の別の欠点は、触媒層内に適したイオン伝導率を得るためにアイオノマーを過剰に使用することである。過剰なアイオノマーが存在する場合、いくつかの有害な効果、例えば、触媒部位へのアイオノマーの結合が、観察されている。アイオノマーが触媒表面に結合すると、スルホン酸イオン被毒が起こり、酸素還元反応速度論が低下し、結合したアイオノマーが強固になり、クヌーセン支配のガス輸送効果が増大する。過剰なアイオノマーの別の負の効果は触媒層の親水性の全体的な増大であり、これは金属触媒を溶解し、劣化を加速させる。現行のアプローチのこれらおよび他の欠点に鑑みて、アイオノマーの使用量が減少し、燃料電池の動作中のクラックの形成および伝播が減少した触媒層が望ましい。
【発明の概要】
【0004】
[0005]代表的態様において、電極の形成方法は、第1の分散液を含有する第1のリザーバーを提供することを含む。第1の分散液は、第1のアイオノマー、炭素を含有する触媒粉末、および第1の溶媒を含む。この方法はさらに、基材と、第1のリザーバーと流体連通している第1の針との間に、電気的バイアスを印加し;そして、第1の分散液を第1のリザーバーから第1の針に通して基材の第1の表面に向かってポンプ輸送して、基材の表面上に複数の構造化単位を形成することを含む。
【0005】
[0006]他の代表的態様において、電極は、基材の表面に付着している構造化単位の少なくとも1つの層を含み、該構造化単位のそれぞれは、外側シェルおよび内側コアを含む。内側コアは第1の半径を有し、内側コアは、複数の炭素含有担体粒子に結合している複数の触媒粒子を含み、第1の濃度でアイオノマーを含み、外側シェルは、第1の半径から第1の半径より大きい第2の半径まで内側コアを実質的に包囲し、外側シェルは第1の濃度より高い第2の濃度でアイオノマーを含み、構造化単位のそれぞれは、0.5~2のアイオノマー対炭素の全体比を含む。
【0006】
[0007]他の代表的態様において、燃料電池用の膜電極アセンブリーの形成方法は、基材と、基材の表面に付着している複数の構造化単位とを含む触媒層を提供することを含み、該構造化単位のそれぞれは、外側シェルおよび内側コアを含む。内側コアは第1の半径を有し、内側コアは、複数の炭素含有担体粒子に結合している複数の触媒粒子を含み、第1の濃度でアイオノマーを含み、外側シェルは、第1の半径から第1の半径より大きい第2の半径まで内側コアを実質的に包囲し、外側シェルは第1の濃度より高い第2の濃度でアイオノマーを含み、構造化単位のそれぞれは、0.5~2のアイオノマー対炭素の全体比を含む。この方法はさらに、触媒層の複数の構造化単位を膜の表面に近接して位置決めし;触媒層と膜を一緒に加熱プレスし;そして、触媒層の基材を除去することを含む。
【0007】
[0008]前述の特徴および要素は、本明細書で別段に明示的に示されていない限り、排他的ではなく、任意の組合せで組み合わせることができる。これらの特徴および要素、ならびに開示された態様の動作は、以下の説明および添付図面に照らしてより明らかになるであろう。この節の内容は、開示に対する簡略化された導入として意図しており、任意の請求項の範囲を限定するために使用されることを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[0009]本開示の非限定的で非包括的な態様を、以下の図面を参照して記載する。ここで、同様の参照番号は、特記しない限り、さまざまな図の全体を通して同様の部分をさす。本開示の利点は、以下の説明および添付図面を参照してより良く理解されるようになるであろう:
【
図1A】[0010]
図1Aは、さまざまな代表的態様に従った代表的膜-電極アセンブリーの横断面図である;
【
図1B】[0011]
図1Bは、さまざまな代表的態様に従った代表的膜-電極アセンブリーの横断面図である;
【
図2A】[0012]
図2Aは、さまざまな代表的態様に従った触媒層の代表的な構造化単位の概略図である;
【
図2B】[0013]
図2Bは、さまざまな代表的態様に従った触媒層の代表的な構造化単位の横断面図である;
【
図3】[0014]
図3は、さまざまな代表的態様に従った、外側シェルの一部が除去された状態を示す触媒層の代表的な構造化単位の斜視図である;
【
図4A】[0015]
図4Aは、さまざまな代表的態様に従った、いくつかの異なる相対アイオノマー濃度プロファイルのグラフ表示である;
【
図4B】[0016]
図4Bは、
図4Aのいくつかの異なる相対アイオノマー濃度プロファイルのグラフ表示の「A」部分のクローズアップである;
【
図5】[0017]
図5は、さまざまな代表的態様に従った、触媒層の代表的作製方法を例示する;
【
図6】[0018]
図6は、さまざまな代表的態様に従った、触媒層の別の代表的作製方法を例示する;
【
図7】[0019]
図7は、さまざまな代表的態様に従った、触媒層のさらに別の代表的作製方法を例示する;
【
図8】[0020]
図8は、さまざまな代表的態様に従った、膜-電極アセンブリーの代表的作製方法を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0021]本開示に従った原理の理解を促進するために、ここで図面に例示した態様を参照し、的確な用語を使用してそれを説明する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定は、それによって意図されないことは、理解されるであろう。本明細書中に例示する本発明の特徴の任意の変更およびさらなる修正、ならびに本明細書中に例示する開示内容の原理の任意の追加的施用は、開示内容を所有する当業者には通常想起され、本開示の範囲内であると見なされるべきである。
【0010】
[0022]本開示は本明細書中で開示される特定の構成、プロセス段階、および材料に限定されず、そのような構成、プロセス段階、および材料は変動し得ることを理解されたい。本明細書で採用される用語は、特定の態様を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図しないことも理解されたい。本開示の説明において、以下の用語は、以下に記載される定義に従って使用される。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈で別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。本明細書中で使用されるように、用語「含む」、「包含する」、「含有する」、「特徴づけられる」およびその文法的等価物は、追加的な引用されていない要素または方法段階を除外しない包括的またはオープンエンドの用語である。
【0011】
[0023]本開示の原理の施用を介して、代表的触媒層は、膜の壊滅的な破損を防止することによって燃料電池の寿命を延ばすことができる。さらに、代表的触媒層は、球形の下位構造の間に膨張および収縮するのに十分な空間をもたらし、これがさらに、通常の動作に起因するクラッキングを防ぐ。これに加えて、代表的触媒層は、触媒材料のより最適な利用を提供し、高電圧でより高い電力を提供する(すなわち、高効率)可能性があり、廃熱を低減する。
【0012】
[0024]
図1Aおよび1Bを参照して、さまざまな態様における膜-電極アセンブリー100を例示する。MEA100は、交換膜102のいずれかの側に位置決めされ、固定されている、一対の電極104aおよび104bを含む。さまざまな態様において、MEA100は、プロトン交換膜ベースの燃料電池などの燃料電池で使用される膜-電極アセンブリーである。
【0013】
[0025]さまざまな態様において、電極104aおよび/または104bは、触媒層180を含む。触媒層180は、化学的構成要素を転化させ、電気エネルギーを発生させる、1または複数の電気化学反応を触媒する。例えば、触媒層180は、MEA100で起こる電極反応への触媒的支持(catalytic support)を提供することができる。
【0014】
[0026]さまざまな態様において、電極104aはアノードとして動作可能である。燃料源の酸化のようなアノード反応が、電極104a内で起こり得る。例えば、酸化反応は、二原子水素分子からのプロトンおよび電子の電離を含むことができる。このような態様において、電極104aの触媒層180は、アノード反応への触媒的支持を提供することによって二原子水素ガスの酸化を促進する。
【0015】
[0027]さらに、さまざまな態様において、電極104bはカソードとして動作可能である。酸素の還元のようなカソード反応が、電極104b内で起こり得る。例えば、カソード104bにおける酸素の還元は、プロトン、電子、および二原子酸素の組み合わせを含み、水分子を形成することができる。このような態様において、電極104bの触媒層180は、カソード反応への触媒的支持を提供することによって水の形成を促進する。
【0016】
[0028]さまざまな態様において、触媒層180は、電極104aおよび/または104bで起こるアノードおよび/またはカソード反応を促進する電気的に活性な触媒粒子を含む。例えば、触媒粒子は、電気的に活性な白金族金属、例えば白金、非白金族金属遷移金属ベースのn4-大環状金属錯体などを含むことができる。特定の触媒粒子を参照して記載したが、MEA内のアノードまたはカソード反応を触媒することができる任意の適切な触媒粒子は、本開示の範囲内にある。
【0017】
[0029]さまざまな態様において、触媒層180はさらに、個々の触媒粒子が上部に付着していて、これを担持している、担体粒子を含む。さまざまな態様において、例えば、担体粒子は、触媒粒子の平均サイズよりも大きい平均サイズを有する、炭素ベースの粒子を含むことができる。さまざまな代表的態様において、触媒粒子は、最長寸法で1nm~10nmのサイズの範囲であることができる。さらに、担体粒子は、最長寸法で30nm~200nmのサイズの範囲であることができる。代表的一態様において、最長寸法で4nmのサイズを有する触媒粒子が、最長寸法で50nmのサイズを有する担体粒子に付着している。さらに、複数の触媒粒子が単一の担体粒子に付着していて、結果としてそれによって担持されていることができる。例えば、単一の担体粒子には、1、2、3、5、10、20、50、100、またはさらにそれより多くの触媒粒子が付着していてもよい。
【0018】
[0030]さまざまな態様において、担体粒子は、準結晶質(paracrystalline)炭素(例えば、カーボンブラック)、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、炭化タングステン、炭化ケイ素などのうちの1以上のような炭素ベースの物品または材料を含む。これに加えて、担体粒子は、二酸化チタン、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化ニオブなどのうちの1以上のような、炭素を包含しない物品または材料を含むことができる。特定の材料を参照して記載したが、触媒層180内で触媒粒子を担持することができる任意の適した担体粒子(または粒子の組み合わせ、ブレンド、もしくは混合物)は、本開示の範囲内である。
【0019】
[0031]担体粒子および電気的に活性な触媒粒子は、例えば市販の混合物中で一緒に提供されることができる。触媒インク、触媒粉末、または担体粒子と触媒粒子との他の混合物の使用は、本開示の範囲内である。別の言い方をすれば、さまざまな代表的態様に従った触媒層(1以上)180は、個々の化学成分または化学成分の混合物を使用して調製することができる。
【0020】
[0032]さまざまな態様において、触媒層180は、プロトン伝導性アイオノマーを含む。組み合わされた触媒粒子および担体粒子にプロトン伝導性アイオノマーを含浸させて、触媒層180を通って、例えばプロトン交換膜102に向かう、プロトンの輸送を容易にすることができる。適切なプロトン伝導性アイオノマーとしては、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)、スルホン化テトラフルオロエチレンベースのフルオロポリマー(例えば、The Chemours Companyから販売されているNafion(登録商標))、ペルフルオロイミド酸(PFIA)、炭化水素ベースのアイオノマーなどが挙げられる。
【0021】
[0033]他の態様において、触媒層180はアニオン伝導性ポリマーを含む。例えば、触媒層180はアニオン交換膜に利用することができ、とりわけアニオン交換膜での使用に適した、短側鎖、中側鎖および/または長側鎖第四級ポリフェニレンオキシド(QPPO)などのアイオノマーを含む。任意の適したアイオノマーの使用は、本開示の範囲内である。
【0022】
[0034]さまざまな態様において、触媒層180は、構造化単位106の1以上の層を含むことができる。触媒層180において、構造化単位106は、重なり合っている平面、例えば、概ね球形の構造化単位106の平面に、1つの平面の構造化単位106が別の平面の構造化単位106の間の空隙内に少なくとも部分的に大まかに位置決めされるように、大まかに配置されることができる。このようにして、触媒層180中の構造化単位106の密度を増大させる。他の代表的態様において、構造化単位106は、触媒層180中に概してランダムに分散していてもよい。さらに、構造化単位106は、任意の適した様式で、触媒層180中に配置および/または位置決めされることができる。
【0023】
[0035]
図1Bを一時的に参照すると、いくつかの代表的態様において、触媒層180は、第1のサイズを有する構造化単位106の少なくとも1つの層と、第2の異なるサイズを有する構造化単位106の第2の層とを含む。例えば、交換膜102に概して隣接する(および/または接近した)層に配された構造化単位106は、より小さくてもよく、その結果、より多くの数の接続されたイオンチャネルがもたらされる。さらに、微孔質層108に概して隣接する(および/または接近した)層に配された構造化単位106は、より大きくてもよく、その結果、ガスが入るためのより大きなチャネルがもたらされる。
図1Bに示した例は、より小さい構造化単位106の単一層およびより大きい構造の単一層を例示しているが、複数の下位層がそのような各層に存在してもよく、ならびに/あるいは、構造化単位106の異なるサイズおよび/または形状を有する層の繰り返しパターンおよび/または交互パターンを利用してもよいことは、理解されるであろう。
【0024】
[0036]最初に
図2Aおよび2Bを参照すると、構造化単位106は、コア・アンド・シェル型構造を含むことができる。例えば、構造化単位106は、コア212を包囲するシェル210を含むことができる。さまざまな態様において、構造化単位106は、半径r2を有するほぼ球形の形状を含む。他の態様において、構造化単位106は、r2の有効半径を有する非球形形状を含む。非球形形状の場合、有効半径r2は以下のように計算または概算することができる:
【0025】
【0026】
式中、Aは非球形形状の表面積である。
[0037]例示の目的のために、構造化単位106について、r2の半径を有する球形形状を参照してさらに説明する。しかしながら、構造化単位106は、シェル210およびコア212のような構造化単位106の1以上の個々の構成要素を含め、卵形形状、多面体、不規則形状などのような他の三次元形状も含むことができることは、理解されるであろう。
【0027】
[0038]さまざまな態様において、コア212は、r1の半径を有する球体を含む。シェル210は、コア212を包囲し、r2-r1の厚さを有する球形外側層を含む(例えば、シェル210は、r1を起点としr2にまで及ぶと考えられる球形シェルとして構成される)。さまざまな態様において、r2は、35ナノメートル~1600ナノメートルである。さまざまな態様において、r1は、25ナノメートル~1500ナノメートルである。
【0028】
[0039]コア212は、いくつかの担体粒子222を含む、包含する、および/または含有することができる。さまざまな態様において、担体粒子222は、最長寸法で60ナノメートル~200ナノメートルの平均長さで構成される。概して球形形状を有する担体粒子222の場合、担体粒子222は、30ナノメートル~100ナノメートルの半径で構成されることができる。
【0029】
[0040]1以上の触媒粒子224は、対応する担体粒子222に物理的に付着し、該担体粒子によって担持されることができる。触媒粒子224は、任意の適切な様式で、例えばファンデルワールス力を介して、担体粒子222に付着していることができる。
【0030】
[0041]さまざまな態様において、コア212はさらに、少なくとも1つのアイオノマー220aを含む、包含する、および/または含有する。例えば、アイオノマー220aは、担体粒子222および触媒粒子224を少なくとも部分的に包囲することができる。アイオノマー220aは、スルホン化テトラフルオロエチレンベースのフルオロポリマーなど任意の適切なプロトン伝導性アイオノマーを含むことができる。さまざまな態様において、コア212は、0.01~0.5のアイオノマー対炭素の全体比を含む。「アイオノマー対炭素比」(または「I/C比」)は触媒層の設計において一般に使用される用語であり、触媒(すなわち触媒粒子224)のための炭素担体(すなわち担体粒子222)の量と比較したアイオノマーの量の相対的尺度である。触媒担体のパーセンテージがわかっている場合、I/C比も決定することができる。I/C比は、炭素を含有しない触媒、またはPGMを含まない(C-N構造を含有する)触媒にも利用することができる。別の言い方をすれば、コア212はアイオノマー220aよりも多くの担体粒子222および触媒粒子224を含むことができる(例えば、コア212は50%~60%、またはさらに55%の担体粒子222、35%~40%、またはさらに37%の触媒粒子224、および5%のアイオノマー220aを含むことができ、その結果、約0.1のI/C比がもたらされ、前記パーセンテージは質量に関してである)。対照的な例では、約10のI/C比を有する代表的なシェル210は、8.6質量%の担体粒子222、5.7質量%の触媒粒子224、および85.7質量%のアイオノマー220aを含むことができ、40%の白金および60%の炭素を含む触媒粉末を用いて形成することができる。
【0031】
[0042]シェル210は、第2のアイオノマー220bを含むことができる。さまざまな態様において、第2のアイオノマー220bは、コア212の220aと同じアイオノマーである。他の態様において、アイオノマー220aおよび220bは、異なるアイオノマーである。さらに、例えば、アイオノマー成分全体の望ましい性能特性、コスト、または他の観点を達成するために、3以上のアイオノマーを利用することもできる。さまざまな態様において、シェル210は、0.7~5.0のアイオノマー対炭素の全体比(すなわち、存在するすべてのアイオノマーの合計)を含むことができる。
【0032】
[0043]従来、触媒層内に適した伝導率を確保するために、典型的には過剰なアイオノマーが触媒層に包含されている。具体的には、触媒粒子および担体粒子の不均一な分布により、触媒層における過剰なアイオノマーの使用が必要となり得る。しかしながら、過剰なアイオノマーは、触媒表面へのアイオノマーの結合を引き起こして、触媒部位のスルホン酸イオン被毒を引き起こす可能性がある。このような触媒の被毒は、酸素還元反応速度論を低下させることができる。触媒表面に結合したアイオノマーはまた、強固になり、クヌーセン支配のガス輸送効果を増大させることができる。さらに、過剰なアイオノマーは、触媒層の親水性の全体的な増大を引き起こす可能性がある。
【0033】
[0044]したがって、さまざまな態様において、本開示の原理を利用して(例えば、第1のI/C比よりも大きい第2のI/C比を有するシェル210によって包囲された第1のI/C比を有するコア212を提供することによって)、アイオノマーをより効果的かつ最適に利用することができる。例えば、このアプローチは、触媒表面の被毒を増大させることなく、および/またはガス輸送抵抗を増大させることなく、触媒層内の水のイオン伝導率を増大させるプロトンの「リザーバー」を作り出す(これを通して、グロッタス機構またはビヒキュラー(vehicular)機構により、プロトンはコア212内の触媒粒子224の触媒部位に輸送される)。構造化単位106は、例えば、同じ触媒含有量でより多くの電流をもたらすことによって、または同じ電流をもたらすためにより少ない触媒を必要とすることによって、触媒利用を改善することができる。これに加えて、より少量の総アイオノマーを利用して、全体的な親水性を低下させ、触媒層の耐久性を改善することができる。
【0034】
[0045]I/C比は、構造化単位106内の特定の点または半径において決定、計算、および/または測定することができる。例えば、さまざまな態様において、r1またはその付近でのコア212のI/C比は0.1~0.9である。さらに、さまざまな態様において、r2またはその付近でのシェル210のI/C比は0.9~5である。さまざまな態様において、シェル210のI/C比(例えば、構造化単位106のr1とr2との間における)は、コア212における任意の点(例えば、構造化単位106の有効中心とr1の間の任意の点)のI/C比よりも大きい。
【0035】
[0046]ここで
図3を一時的に参照すると、さまざまな代表的態様において、シェル210は、構造化単位106のどこで厚さを測定しても、概して一定の厚さ(すなわち、厚さの変動は+/-10%)を有することができる。しかしながら、プロセスの変動、材料の違い、構造化単位106の形状寸法などが、構造化単位106での厚さの測定位置に応じてシェル210の厚さが変動する構成をもたらし得ることは、理解されるであろう。そのような変動、組み合わせ、および構成はすべて、本開示の範囲内にあると考えられる。
【0036】
[0047]最初に
図4Aおよび4Bを参照して、代表的な構造化単位106のさまざまなI/Cプロファイルをグラフで表す。さまざまな態様において、コア212内のI/C比は、構造化単位106の有効中心またはその付近の第1の値から増大し、r1またはその付近の第2のより大きな値に増大する。シェル210内のI/C比は、r1またはその付近の第3の値から、r2またはその付近の第4のより大きな値に増大することができる。例えば、グラフで表すと、構造化単位106の有効中心からr2またはその付近の半径までのI/C比は、シグモイド関数を含む(またはそれによって表されることができる)。さまざまな態様において、r1は、I/C比を表す関数の変曲点が生じる構造化単位106内の点である。変曲点は、関数が凸から凹に(またはその逆に)変化する所定の関数(シグモイド関数など)における点であり;変曲点において、関数の第3次導関数はゼロである。別の言い方をすれば、さまざまな代表的態様では、I/C比を表す関数の変曲点においてコア212は終了し、シェル210は始まる。
【0037】
[0048]例えば、I/C比プロファイル490は、最小値499a(例えば、構造化単位106の中心)で始まり、r2で最大値497aに近づく(または到達する)シグモイド関数を含む(またはそれによって表される)ことができる。さまざまな態様において、最小値499aはゼロより大きく、0.01~0.5、好ましくは0.1~0.4であることができる。さらに、最大値497aは、0.7~5.0、好ましくは1~2であることができる。
【0038】
[0049]I/C比プロファイル490はさらに、例えば、接線495aを有するr1における変曲点を含むことができる。さまざまな態様において、接線495aは、横軸493に対して1.0より大きい勾配を有する。
【0039】
[0050]別のI/C比プロファイル492は、最小値499aで始まり、r2で最大値497aに近づくシグモイド関数を含む(またはそれによって表される)ことができる。さまざまな態様において、最小値499aはゼロより大きく、0.01~0.5、好ましくは0.1~0.4であることができる。さらに、最大値497aは、0.7~5、好ましくは1.0~2.0であることができる。I/C比プロファイル492はさらに、例えば、接線495bを有するr1における変曲点を含む。さまざまな態様において、接線495bの勾配は、横軸493に対して1.0よりも大きいが、I/C比プロファイル490の接線495aの勾配よりも小さい。
【0040】
[0051]さらに別のI/C比プロファイル494は、ステップ関数に近似するシグモイド関数を含む(またはそれによって表される)ことができる。さまざまな態様において、I/C比プロファイル494は、最小値499aで始まり、r2において最大値497aで終了し、r1において、縦軸491に対し0.1~ゼロの勾配を有する変曲点を有する。そのような態様において、I/C比は、構造化単位106の有効中心からr1まで最小値499aまたはその付近でほぼ一定(すなわち、10%以内)であり、次いで、r1で最小値499aから最大値497aまで(すなわち、497aの10%以内)増大する。別の言い方をすれば、コア212は一定の(および/または10%未満で変動する)第1のI/C比を含み、シェル210は、一定の(および/または10%未満で変動する)、より大きい第2のI/C比を含む。
【0041】
[0052]さらに別の代表的なI/C比496は、最小値499bで始まり、r2で最大値497bに近づく(または到達する)シグモイド関数を含む(またはそれによって表される)ことができる。さまざまな態様において、最小値499bはゼロより大きく、0.01~0.5、好ましくは0.1~0.4であることができる。さらに、最大値497aは、0.7~5.0、好ましくは1.0~2.0であることができる。
【0042】
[0053]I/C比プロファイル496はさらに、例えば、接線495dを有するr1における変曲点を含むことができる。さまざまな態様において、接線495aの勾配は、横軸493に対して1.0より大きいが、I/C比プロファイル490および492それぞれの接線495aおよび/または接線495bのそのような勾配よりも小さい。
【0043】
[0054]代表的なI/Cプロファイル490、492、494、および496は、対応するコア212およびシェル210のI/Cプロファイルを含む、構造化単位106のさまざまな構成を例示する。さまざまな最小値、最大値、変曲点接線勾配値、最小値と変曲点の間のプロファイル特性、および変曲点と最大値の間のプロファイル特性を含む、I/Cプロファイルの任意の適切な組み合わせは、本開示の範囲内である。
【0044】
[0055]さまざまな態様において、構造化単位106を含む触媒層180は、従来の触媒層よりも多数(および/または高濃度)の一次細孔を含むか、またはそれを有するように構成されることができる。より少量のアイオノマーが構造化単位106に用いられるので、より多くの一次細孔が触媒層180内の改善された輸送(例えば、水の)のために利用可能であることができる。さまざまな態様において、構造化単位106は、より小さい一次細孔の数の増加によって水の毛管凝縮が可能になるので、従来の設計よりも改善された触媒層180のイオン伝導率を可能にする。
【0045】
[0056]これに加えて、さまざまな態様において、触媒層180はマクロ細孔を含むか、またはそれを有するように構成されることができる。例えば、構造化単位106は、マクロ細孔または三次細孔とよぶことができる空間が構造化単位106の間に存在するように、触媒層180の層に沿って間隔を置いて配置することができる。そのような細孔分布は、(従来の触媒層設計と比較して)触媒層180を通る水の改善された管理を提供することによって、高い相対湿度(例えば、80%を超える相対湿度)での触媒層180のフラッディングを低減することができる。触媒層180を通る水の改善された管理は、触媒層180、ひいては触媒層180が利用されるMEAのより長い寿命および/またはより効率的な動作を提供することができる。さらに、さまざまな代表的態様において企図されるようにマクロ細孔を有する触媒層180を構成することにより、酸素拡散率は改善される。
【0046】
[0057]さまざまな代表的態様において、触媒層180は、動作中のクラッキングに対し改善された耐性を有する(および/または達成する、または示す)ように構成される。MEAの触媒層のクラッキングは、主要な破損モードである。例えば、従来の触媒層設計において、触媒層の膨張および収縮(動作中の触媒層内の相対湿度の上昇および低下に対応する)は、触媒層内にクラックを伝播することができる。さまざまな態様において、構造化単位106の物理的構造は、動作中の改善された膨張および収縮を提供する。これは、構造化単位106が従来の触媒層凝集体よりも均一であり、したがって、これらの単位間の空間もより均一であることに、少なくとも部分的に起因し;空隙空間が単純に大きくなるという事実と組み合わせると、これらのより大きな空間内に均一に膨潤し、壊滅的な触媒層の破損(すなわち、クラッキング)を低減および/または防止する能力をもたらす。したがって、本開示の原理を施用すると、クラックが形成されにくく、触媒層180を通って伝播しにくいことが確実になる。この改善された性能により、触媒層180の寿命は延びる。
【0047】
[0058]さまざまな態様において、コア212および/またはシェル210は1以上の添加剤を含む。例えば、添加剤は、改善された安定性、剛性、化学反応物もしくは電気化学反応の生成物の輸送、または触媒層180の他のパラメータなど、コア212および/またはシェル210の性能の利益または向上を付与する化学構成要素を包含することができる。適した添加剤は、疎水性ポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデンまたはこのポリマーから形成される酸)、ラジカル捕捉イオンまたは化合物(例えば、酸化セリウム、CeO2)、疎水性粉末(例えば、テフロン(登録商標)コーティングした炭素)、および/または他の適した添加剤もしくは添加剤の組み合わせのうちの1以上を含むことができる。さまざまな態様において、添加剤は、コア212および/またはシェル210において0.01質量%~10質量%の濃度を構成することができる。
【0048】
[0059]コア212およびシェル210は、異なる濃度の同様または同一の添加剤を含むことができ、および/またはそれらを有するように構成されることができる。あるいは、コア212およびシェル210は、異なる添加剤および/もしくは添加剤濃度を含む、ならびに/またはそれらを有するように構成される。さらに他の態様では、コア212またはシェル210のうちの1つだけが、1以上の添加剤を含むか、またはそれを有するように構成される。特定の態様を参照して記載したが、コア212および/またはシェル210における適切な添加剤の任意の組み合わせは、本開示の範囲内である。
【0049】
[0060]表1は、さまざまな態様に従った、構造化単位106を包含する触媒層180の代表的な特性を例示する。
[0061]
【0050】
【0051】
[0062]ここで
図5を参照して、さまざまな代表的態様に従った構造化単位の触媒層を形成するための方法500を例示する。方法500は、例えば、MEAで使用するための触媒層180を形成することができる。
【0052】
[0063]さまざまな態様において、方法500は、エレクトロスプレープロセスを利用して、構造化触媒単位(構造化単位106など)の1以上の垂直に積み重ねられた層を含む触媒層(触媒層180など)が形成する。例えば、エレクトロスプレーは、電界中で1以上のイオン含有分散液を噴霧して、比較的または実質的に球形の単位または粒子を形成することを含むことができる。詳細に記載するように、電気的バイアスは、分散液を通して噴霧する針と、分散液を付着させる基材との間に印加することができる。分散液が針を出ると、テイラーコーンが形成して、分散液の液体ジェットが作り出される。ジェットが基材に向かって移動すると、分散液のイオン成分はジェットの外側表面に向かって引き寄せられる。さまざまな態様において、コアおよびシェル構造は、1以上の分散液が針を出て、電界を通過し、基材上に堆積するときに形成される。
【0053】
[0064]さまざまな態様において、方法500は、エレクトロスプレー装置の第1の針に対して基材を位置決めする段階530を含む。さまざまな態様において、方法500は、一般にデカール転写技術と呼ばれる、中間基材上に触媒層を堆積させることを含む。例えば、中間基材は、上部に触媒層が堆積しているデカールを含むことができる。さらに検討するように、デカールは、次いで、触媒層を交換膜に転写するために使用することができる。MEAの従来の形成方法では、デカール転写法が利用される。これは、交換膜(プロトン交換膜など)は溶媒によって負の影響を受ける可能性があり、したがって、「湿潤」(すなわち、溶媒含有)触媒層を基材に施用する堆積技術に適した基材ではないためである。
【0054】
[0065]他の態様において、MEAを形成するための従来技術とは対照的に、方法500は、交換膜(プロトン交換膜など)上への触媒層180の直接堆積を含む。例えば、より詳細に検討するように、構造化単位106および触媒層180は実質的に溶媒を含まない(すなわち、1質量%未満の溶媒、またはさらに0.1質量%未満の溶媒を含む)ので、触媒層180を交換膜に直接施用することができる。これにより、より速く、より単純で、および/またはより低コストの製造が可能になる。
【0055】
[0066]触媒層を堆積させることができる任意の適した基材(ガス拡散層および燃料電池で利用される他の基材を含む)は、本開示の範囲内である。基材は、針から望ましい距離で位置決めされる。より詳細に検討するように、この距離は、第1の分散液の化学構成要素の物理的特性に少なくとも部分的に基づいて決定または選択することができる。
【0056】
[0067]段階530は、例えば、エレクトロスプレー装置の第1の針の下の位置でプラットフォーム上に基材を置くことを含むことができる。さまざまな態様において、第1の針と基材の間の距離は5センチメートル~30センチメートルである。しかしながら、要望に応じて、任意の適した距離を利用することができる。
【0057】
[0068]方法500はさらに、第1の分散液の第1のリザーバーを提供することを含む(段階532)。例えば、第1の分散液は、構造化単位106の望ましい化学成分を含むことができる。さまざまな態様において、第1の分散液は、溶媒中の触媒粒子(触媒粒子224など)、炭素含有担体粒子(担体粒子222など)、およびアイオノマー(第1のアイオノマー220aなど)の混合物を含む。溶媒としては、例えば、水、アルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、ケトン、および/または任意の他の適した溶媒もしくはそれらの組み合わせを挙げることができる。さまざまな態様において、第1の分散液は、上記のものなどの添加剤(1または複数)を含むことができる。
【0058】
[0069]さまざまな態様において、方法500はさらに、第1の針と基材の間に電気的バイアスを印加する段階534を含む。例えば、基材は、アルミニウムまたは鋼プレートのような導電性金属プレート上に置くことができる。伝導性金属プレートおよび第1の針は、第1の針と伝導性プレートとの間、したがって、伝導性プレート上に位置決めされた基材に、電気的バイアスを印加することができる電源に結合されていてもよい。
【0059】
[0070]方法500はさらに、第1の分散液を第1のリザーバーから第1の針に通して基材に向かってポンプ輸送するか、さもなければ移送する段階536を含む。上記のように、第1の分散液が針を出ると、電界によって、液体は、基材に向かって移動する比較的薄いジェットを形成する。
【0060】
[0071]さまざまな態様において、方法500はさらに、第1の分散液が基材に接触する前に、第1の分散液から溶媒の少なくとも一部を蒸発させる段階を含む。例えば、第1の分散液が第1の針を出て、電界を通過して基材に向かって移動するとき、溶媒は、分散液から部分的および/または完全に蒸発することができる。この蒸発は、構造化単位106の形態を固化することができる。別の言い方をすれば、分散液は、基材に向かって移動し、乾燥すると、物理的コア-シェル構造を形成し、その結果、構造化単位106は、基材と接触する前に溶媒を実質的に含まない(すなわち、1パーセント未満の溶媒を含有する)。
【0061】
[0072]第1の針の出口と基材の間の距離は、構造化単位106が基材に接触する前に第1の溶媒の大部分(例えば、99パーセントを超える)またはすべてが確実に蒸発するように、選択することができる。さまざまな態様において、構造化単位106を基材に接触させて触媒層180を形成する前に乾燥させることにより、触媒層のクラッキングを低減または排除することができる。従来、触媒層中に存在する溶媒が蒸発すると、触媒層にクラックが形成する。触媒層180(すなわち構造化単位106)の構成要素から溶媒の大部分またはすべてを蒸発させることによって、触媒層180におけるこのようなクラックの形成は低減または排除される。
【0062】
[0073]ここで
図6を参照して、さまざまな代表的態様に従った構造化単位の触媒層を形成する別の方法600を例示する。方法500と同様に、方法600は、触媒層(触媒層180など)、例えば、構造化単位(構造化単位106など)の1以上の垂直に積み重ねられた層を含む触媒層180を形成することができる。
【0063】
[0074]さまざまな態様において、方法600は、エレクトロスプレー装置の第1の針に対して基材を位置決めする段階642を含む。方法500の段階530と同様に、適した基材(交換膜または中間基材など)を、エレクトロスプレー装置の第1の針の下に所定の距離で位置決めすることができる。第1の針と基材の間の距離は、例えば、5センチメートル~30センチメートルを含むことができるが、より一般的には任意の適した距離であることができる。
【0064】
[0075]方法600はさらに、第1の分散液の第1のリザーバーおよび第2の分散液の第2のリザーバーを提供する段階644を含む。例えば、第1の分散液は、第1の溶媒または溶媒混合物中の触媒粒子224、担体粒子222、および第1のアイオノマー220aの混合物を含むことができる。第2の分散液は、第2の溶媒または溶媒混合物中の触媒粒子224、担体粒子222、および第2のアイオノマー220bの混合物を含むことができる。上記のように、第1のアイオノマー220aおよび第2のアイオノマー220bは、互いに同一または異なっていることができる。さらに、第1の溶媒および第2の溶媒(または混合物)は、互いに同一または異なっていることができる。さまざまな態様において、第1の分散液または第2の分散液のうちの少なくとも1つは、上記のものなど1以上の添加剤を含むことができる。
【0065】
[0076]さまざまな態様において、方法600はさらに、第1の針と基材の間に電気的バイアスを印加する段階646を含む。方法500の段階534と同様に、段階646は、第1の針と伝導性プレートとの間、したがって、伝導性プレート上に位置決めされた基材に、電気的バイアスを印加することを含むことができる。
【0066】
[0077]方法600はさらに、第1のリザーバーからの第1の分散液および第2のリザーバーからの第2の分散液を、第1の針に通して基材に向かってポンプ輸送するか、さもなければ移送する段階648を含むことができる。さまざまな態様において、第1の針は、第1のリザーバーおよび第2のリザーバーの両方と流体連通しており、その結果、第1の分散液および第2の分散液はそれらが第1の針を通ってポンプ輸送される際に混合される。
【0067】
[0078]さまざまな態様において、方法600はさらに、分散液が基材に接触する前に、第1の分散液および第2の分散液から溶媒を蒸発させる段階650を含む。方法500の段階538と同様に、第1の分散液中の第1の溶媒および第2の分散液中の第2の溶媒を、各分散液が基材の表面に到達する前に、少なくとも部分的に蒸発させる。
【0068】
[0079]ここで
図7を参照して、さまざまな代表的態様に従った構造化単位の触媒層を形成する別の方法700を例示する。さまざまな態様において、方法700は、それぞれカニューレおよび別個の針に流体的に結合されている2つのリザーバーを利用することを含む。
【0069】
[0080]さまざまな態様において、方法700は、エレクトロスプレー装置の第1の針および第2の針に対して基材を位置決めする段階754を含む。方法500の段階530と同様に、適した基材(交換膜または中間基材など)を、エレクトロスプレー装置の針(または複数の針)の下に所定の距離で位置決めすることができる。針(1以上)と基材の間の距離は、例えば、5センチメートル~30センチメートル、より一般的には、任意の適した距離を含むことができる。
【0070】
[0081]さまざまな態様において、第1の針および第2の針は互いに対して同軸上に位置決めされる。例えば、第1の針は、第2の針によって同軸的に包囲されていてもよい。他の態様において、第1の針および第2の針は、例えば並んで位置決めされるなど、互いに離れている。
【0071】
[0082]方法700はさらに、第1の分散液の第1のリザーバーおよび第2の分散液の第2のリザーバーを提供する段階756を含むことができる。方法600の段階644と同様に、第1の分散液は、第1の溶媒または溶媒混合物中の触媒粒子224、担体粒子222、および第1のアイオノマー220aの混合物を含むことができる。第2の分散液は、第2の溶媒または溶媒混合物中の触媒粒子224、担体粒子222、および第2のアイオノマー220bの混合物を含むことができる。上記のように、第1のアイオノマー220aおよび第2のアイオノマー220bは、互いに同一または異なっていることができる。さらに、第1の溶媒および第2の溶媒(または混合物)は、互いに同一または異なっていることができる。さまざまな態様において、第1の分散液および第2の分散液のうちの少なくとも1つは、上記のものなど1以上の添加剤を含むことができる。
【0072】
[0083]さまざまな態様において、方法700はさらに、針と基材の間に電気的バイアスを印加する段階758を含む。方法600の段階646と同様に、段階758は、第1の針と伝導性プレートとの間および第2の針と伝導性プレートとの間、したがって、伝導性プレート上に位置決めされた基材に、電気的バイアスを印加することを含むことができる。
【0073】
[0084]方法700はさらに、第1のリザーバーからの第1の分散液および第2のリザーバーからの第2の分散液を、それぞれの針に通して基材に向かってポンプ輸送するか、さもなければ移送する段階760を含むことができる。方法600の段階648と同様に、段階760は、第1の分散液を第1の針に通して基材に向かってポンプ輸送することを含むことができる。さらに、第1の分散液がポンプ輸送されているとき、第2の分散液を、第2の針に通して基材に向かってポンプ輸送することができる。このような態様では、方法600とは対照的に、第1の分散液および第2の分散液は、それぞれの針を出る前に混合されない。
【0074】
[0085]さまざまな態様において、方法700はさらに、分散液が基材に接触する前に、第1の分散液および第2の分散液から溶媒を蒸発させる段階762を含む。方法600の段階650と同様に、第1の分散液中の溶媒は、分散液が基材に接触する前に少なくとも部分的に蒸発する。さらに、第2の分散液の第2の溶媒は、基材の表面に到達する前に少なくとも部分的に蒸発することができる。
【0075】
[0086]1つの針(すなわち、第1の針)または2つの針(すなわち、第1の針および第2の針)を特に参照して記載してきたが、さまざまな代表的な態様に従った触媒層の形成方法では、例えば、1、2、3、またはそれ以上の分散液に対応する3以上の針を利用することができる。これに加えて、特定の針を使用して単一の分散液を流すことができ、一方、別の針を利用して、それによって混合された2以上の分散液を流すことができる。さらに、特定の針を通る特定の分散液の流量は、同じ針を通る別の分散液の流量と異なる(および/または異なる針を通る別の分散液の流量と異なる)ことができる。さらに、第1の針と基材との間に印加される電気的バイアスは、第2の針と基材との間に印加される電気的バイアスと異なることができる。これに加えて、複数の針および/または針の組み合わせを利用してもよく;例えば、一態様において、第1の分散液は第1の針に通して基材に向かってポンプ輸送され、一方、第2の分散液は、第2の針および第3の針に通して基材に向かってポンプ輸送される。さらに、利用されるさまざまな針の特性は、互いに異なっていることができる。例えば、第1の分散液を基材に向かって分配するために利用される第1の針は第1の管腔サイズおよび/またはベベル配置を有することができ、一方、第2の分散液を基材に向かって分配するために利用される第2の針は、第2の異なる管腔サイズおよび/またはベベル配置を有することができる。
【0076】
[0087]引き続き方法500、600および/または700を参照すると、プロセスパラメーターを変動させて、構造化単位106およびまたは触媒層180の望ましい構成を達成することができる。例えば、ポンプ速度を増大させると、シェル210の厚さを増大させることができる。さらに、電界の強度および溶媒の蒸発速度を変動させると(例えば、電圧バイアスを変化させることによって、および/またはスピナレットと基材との間の距離を変動させることによって)、それによって生じる構造化単位106の直径を変化させることができる。例えば、連続的に変動しうる、交替する、および/または段階的な配置またはアプローチにおける、そのような変形はすべて、本開示の範囲内である。さらに、構造化単位106(例えば、1以上の層における)は、第1の機構またはプロセスを介して生産することができ、その後、追加的な構造化単位106(例えば、1以上の追加的層における)を、第2の異なる機構またはプロセスを介してその上に堆積させることができる。
【0077】
[0088]
図8を参照して、さまざまな代表的態様に従った構造化単位の少なくとも1つの触媒層を有するMEAを形成する方法800を例示する。さまざまな態様において、方法800は、構造化単位の層を有する触媒層を提供することを含む(段階866)。例えば、方法500、600、および/または700によって形成される触媒層180を、MEAの形成に使用するために提供することができる。
【0078】
[0089]さまざまな態様において、方法800はさらに、構造化単位を交換膜の表面に近接して位置決めすることを含む(段階868)。例えば、段階868は、構造化単位106がプロトン交換膜などの交換膜の表面に近接し、対向するように、触媒層180を位置決めすることを含むことができる。
【0079】
[0090]方法800はさらに、触媒層と交換膜を一緒に加熱プレスすることを含むことができる(段階870)。例えば、圧力および熱の両方を触媒層および交換膜に同時に施用して、触媒層を膜に付着させることができる。いくつかの態様において、加熱プレスは、約摂氏140度の温度で、約1分間、および約4MPaの圧力で行われる。しかしながら、任意の適した温度、持続時間、および/または圧力を利用してもよい。
【0080】
[0091]さまざまな態様において、方法800はさらに、触媒層から基材を除去することを含む(段階872)。例えば、触媒層180の構造化単位106を交換膜に加熱プレスした後、触媒層180の反対側に位置決めされている基材はもはや必要とされない。この基材は、例えば剥離によって、触媒層180の反対側から除去することができる。
【0081】
[0092]方法800は、MEAの一部を構成する電極と膜の対を形成することができる。さまざまな態様において、第2の触媒層は、第1の触媒層とは反対側の膜の側面に付着される。第2の触媒層は、第1の触媒層と同様の構造および/または組成を有する構造化単位106を含むことができる。他の態様において、第2の触媒層は、構造化単位106を有さない、従来通りに作製された触媒層を含むことができ;さらに、第2の触媒層は、第1の触媒層とは構成が異なる構造化単位106を含むことができる。さまざまな態様において、加熱プレスは、触媒層を膜の各側面に施用した後に施用する。
【0082】
[0093]表2に、方法500、600、および/または700など触媒層の代表的な形成方法の代表的で非限定的な動作パラメータおよび特性を例示する。
【0083】
【0084】
[0094]本開示の原理を、以下の実施例セットに記載することができる。これらはそれぞれ例示のために提示しており、限定のためではない。
【実施例】
【0085】
[0095]実施例セットA
[0096]実施例1:内側コアと、外側シェルとを含む構造化単位であって、該内側コアが第1の半径を有し、該内側コアが、複数の炭素含有担体粒子に結合された複数の触媒粒子を含み、第1の濃度でアイオノマーを含み、該外側シェルが、第1の半径から、第1の半径より大きい第2の半径まで内側コアを実質的に包囲し、該外側シェルが、第1の濃度より大きい第2の濃度でアイオノマーを含む、前記構造化単位。
【0086】
[0097]実施例2:構造化単位が0.5~2の全体的なアイオノマー対炭素比(「I/C比」)を含む、実施例1の構造化単位。実施例3:内側コアが第1のI/C比を含み、外側シェルが第2のI/C比を含み、第2のI/C比が第1のI/C比よりも大きい、実施例1~2のいずれかの構造化単位。実施例4:構造化単位が球形であり、該球体の中心と該球体の外縁との間を横断する一連の点におけるI/C比を表す関数が、内側コアと外側シェルの間の境界に変曲点を有する、実施例1~3のいずれかの構造化単位。
【0087】
[0098]実施例5:関数がシグモイド関数である、実施例4の構造化単位。実施例6:関数がステップ関数に近似する、実施例4の構造化単位。実施例7:外側シェルが一定の厚さを有する、実施例1~6のいずれかの構造化単位。実施例8:外側シェルが可変厚さを有する、実施例1~6のいずれかの構造化単位。実施例9:外側シェルが内側コアに存在しないアイオノマーを含む、実施例1~8のいずれかの構造化単位。実施例10:内側コアが複数の担体粒子をさらに含み、各担体粒子がそれに付着している複数の触媒粒子を有する、実施例1~9のいずれかの構造化単位。
【0088】
[0099]本開示では、本明細書の一部を形成し、本開示を実施することができる特定の態様を例示として示す添付の図面を参照した。本開示の範囲から逸脱することなく、他の態様を利用することができ、構造的変更を行うことができることを理解されたい。本明細書における「一態様」、「一態様」、「代表的態様」などへの言及は、記載された態様が特定の特徴、構造、または特性を包含することができることを示すが、すべての態様が必ずしも特定の特徴、構造、または特性を包含するわけではない。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ態様を参照しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が態様に関連して記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の態様に関連してそのような特徴、構造、または特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内であると考える。
【0089】
[0100]本開示のさまざまな態様について上記してきたが、それらは一例として提示してきたに過ぎず、限定するものではないことを理解されたい。当業者には、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細においてさまざまな変更を行うことができることが明らかであろう。したがって、本開示の幅広さおよび範囲は、上記の代表的態様のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。前記説明は、例示および説明の目的のために提示されている。これは、包括的であること、または開示を開示された厳密な形態に限定することを意図したものではない。上記教示の観点から多くの修正および変形が可能である。さらに、前記の代替的態様のいずれかまたはすべてを、本開示の追加のハイブリッド態様を形成するのに望ましい任意の組合せで使用することができることに留意されたい。
【0090】
[0101]さらに、本開示の特定の態様について記載し、例示してきたが、本開示はそのように記載および例示した部分の特定の形態または配置に限定されるものではない。本開示の範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲、本明細書および異なる出願において提出される将来の特許請求の範囲、ならびにそれらの等価物によって定義されるべきである。また、本明細書で使用されるように、用語「結合された」、「結合している」、またはその任意の他の変形は、物理的接続、電気的接続、磁気的接続、光学的接続、通信的接続、機能的接続、熱的接続、化学的接続、および/または任意の他の接続を包含するように意図されている。「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」または「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」と同様の言語が本明細書または特許請求の範囲で使用される場合、この語句は(1)Aのうちの少なくとも1つ;(2)Bのうちの少なくとも1つ;(3)Cのうちの少なくとも1つ;(4)Aのうちの少なくとも1つおよびBのうちの少なくとも1つ;(5)Bのうちの少なくとも1つおよびCのうちの少なくとも1つ;(6)Aのうちの少なくとも1つおよびCのうちの少なくとも1つ;または(7)Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、およびCのうちの少なくとも1つ;を意味することを意図している。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
電極の形成方法であって、
第1の分散液を含有する第1のリザーバーを提供すること、該第1の分散液は、第1のアイオノマー、炭素を含有する触媒粉末、および第1の溶媒を含む;
基材と、第1のリザーバーと流体連通している第1の針との間に、電気的バイアスを印加すること;および
第1の分散液を第1のリザーバーから第1の針に通して基材の第1の表面に向かってポンプ輸送して、基材の表面上に複数の構造化単位を形成すること;
を含む方法。
[2]
さらに、
第2の分散液を含有する第2のリザーバーを提供すること、該第2の分散液は、第2のアイオノマーおよび第2の溶媒を含む;および
第2の分散液を第2のリザーバーから第1の針に通して基材の表面に向かってポンプ輸送すること;
を含む、[1]に記載の方法。
[3]
針が第1のカニューレおよび第2のカニューレを含み、第1の分散液が第1のカニューレを通過し、第2の分散液が第2のカニューレを通過し、第1のカニューレおよび第2のカニューレが第1の針内で同軸上に位置決めされている、[2]に記載の方法。
[4]
構造化単位が第1の半径および第2の半径を有するように構成され、少なくとも1つの構造化単位の第1の半径における第1のアイオノマー対炭素比が0.1~0.9であり、少なくとも1つの構造化単位の第2の半径における第2のアイオノマー対炭素比が0.9~5である、[1]に記載の方法。
[5]
さらに、第1の分散液が基材の表面に接触する前に、第1の分散液から第1の溶媒を蒸発させることを含む、[1]に記載の方法。
[6]
さらに、
第3の分散液を含有する第3のリザーバーを提供すること、該第3の分散液は、第1のアイオノマー、触媒粉末、および第1の溶媒を含む;および
第3の分散液を第3のリザーバーから第2の針または該針の第3のカニューレのうちの1つに通して基材の表面に向かってポンプ輸送すること;
を含む、[2]に記載の方法。
[7]
アイオノマーが、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)、ペルフルオロイミド酸(PFIA)、第四級ポリフェニレンオキシド(QPPO)、または炭化水素ベースのアイオノマーのうちの少なくとも1つを含む、[1]に記載の方法。
[8]
触媒粉末が白金族金属触媒を含む、[1]に記載の方法。
[9]
基材の表面に付着している構造化単位の少なくとも1つの層を含み、該構造化単位のそれぞれが外側シェルおよび内側コアを含む電極であって、
該内側コアが第1の半径を有し、
該内側コアが、複数の炭素含有担体粒子に結合している複数の触媒粒子を含み、第1の濃度でアイオノマーを含み、
該外側シェルが、第1の半径から第1の半径より大きい第2の半径まで内側コアを実質的に包囲し、
該外側シェルが第1の濃度より高い第2の濃度でアイオノマーを含み、そして
該構造化単位のそれぞれが、0.5~2のアイオノマー対炭素の全体比を含む、
前記電極。
[10]
少なくとも1つの構造化単位の第1の半径における第1のアイオノマー対炭素比が0.1~0.9であり、少なくとも1つの構造化単位の第2の半径における第2のアイオノマー対炭素比が0.9~5である、[9]に記載の電極。
[11]
アイオノマー相対濃度プロファイルが、構造化単位の半径におけるアイオノマー対炭素比として定義され、該アイオノマー相対濃度プロファイルが第1の半径において変曲点を有する、[9]に記載の電極。
[12]
アイオノマー相対濃度プロファイルがシグモイド関数である、[9]に記載の電極。
[13]
複数の触媒粒子が、白金族金属触媒または遷移金属ベースのn4-大環状金属錯体触媒のうちの少なくとも1つを含む、[9]に記載の電極。
[14]
アイオノマーが、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)、ペルフルオロイミド酸(PFIA)、第四級ポリフェニレンオキシド(QPPO)、または炭化水素ベースのアイオノマーのうちの少なくとも1つを含む、[9]に記載の電極。
[15]
内側コアが複数の酸化セリウムナノ粒子をさらに含む、[9]に記載の電極。
[16]
燃料電池用の膜電極アセンブリーの形成方法であって、
基材と、基材の表面に付着している複数の構造化単位とを含む触媒層を提供すること、該構造化単位のそれぞれは、外側シェルおよび内側コアを含み、
該内側コアは第1の半径を有し、
該内側コアは、複数の炭素含有担体粒子に結合している複数の触媒粒子を含み、第1の濃度でアイオノマーを含み、
該外側シェルは、第1の半径から第1の半径より大きい第2の半径まで内側コアを実質的に包囲し、
該外側シェルは、第1の濃度より高い第2の濃度でアイオノマーを含み、そして
該構造化単位のそれぞれは、0.5~2のアイオノマー対炭素の全体比を含む;
触媒層の複数の構造化単位を膜の表面に近接して位置決めすること;触媒層と膜を一緒に加熱プレスすること;および、触媒層の基材を除去すること;
を含む、前記方法。
[17]
膜がプロトン交換膜を含む、[16]に記載の方法。
[18]
少なくとも1つの構造化単位の第1の半径における第1のアイオノマー対炭素比が0.1~0.9であり、少なくとも1つの構造化単位の第2の半径における第2のアイオノマー対炭素比が0.9~5である、[16]に記載の方法。
[19]
アイオノマー相対濃度プロファイルが、構造化単位の半径におけるアイオノマー対炭素比として定義され、該アイオノマー相対濃度プロファイルが第1の半径において変曲点を有する、[16]に記載の方法。
[20]
アイオノマー相対濃度プロファイルがシグモイド関数である、[16]に記載の方法。
[21]
複数の触媒粒子が、白金族金属触媒または遷移金属ベースのn4-大環状金属錯体触媒のうちの少なくとも1つを含む、[16]に記載の方法。
[22]
複数の炭素含有担体粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化ニオブ、または炭化タングステンのうちの少なくとも1つを含む、[16]に記載の方法。
[23]
アイオノマーが、ペルフルオロスルホン酸(PFSA)、ペルフルオロイミド酸(PFIA)、第四級ポリフェニレンオキシド(QPPO)、または炭化水素ベースのアイオノマーのうちの少なくとも1つを含む、[16]に記載の方法。
[24]
内側コアが複数の酸化セリウムナノ粒子をさらに含む、[16]に記載の方法。
【符号の説明】
【0091】
100 膜-電極アセンブリー
102 交換膜
104a 電極
104b 電極
106 構造化単位
108 微孔質層
180 触媒層
210 シェル
212 コア
220a アイオノマー
220b 第2のアイオノマー
222 担体粒子
224 触媒粒子
490 I/C比プロファイル
491 縦軸
492 I/C比プロファイル
493 横軸
494 I/C比プロファイル
495a 接線
495b 接線
495d 接線
496 I/C比プロファイル
497a 最大値
497b 最大値
499a 最小値
499b 最小値
500 方法
530 エレクトロスプレー装置の第1の針に対して基材を位置決めする段階
532 第1の分散液の第1のリザーバーを提供する段階
534 第1の針と基材の間に電気的バイアスを印加する段階
536 第1の分散液を第1のリザーバーから第1の針に通して基材に向かってポンプ輸送するか、さもなければ移送する段階
538 第1の分散液が基材に接触する前に、第1の分散液から溶媒の少なくとも一部を蒸発させる段階
600 方法
642 エレクトロスプレー装置の第1の針に対して基材を位置決めする段階
644 第1の分散液の第1のリザーバーおよび第2の分散液の第2のリザーバーを提供する段階
646 第1の針と基材の間に電気的バイアスを印加する段階
648 第1のリザーバーからの第1の分散液および第2のリザーバーからの第2の分散液を、第1の針に通し基材に向かってポンプ輸送するか、さもなければ移送する段階
650 分散液が基材に接触する前に、第1の分散液および第2の分散液から溶媒を蒸発させる段階
700 方法
754 エレクトロスプレー装置の第1の針および第2の針に対して基材を位置決めする段階
756 第1の分散液の第1のリザーバーおよび第2の分散液の第2のリザーバーを提供する段階
758 針と基材の間に電気的バイアスを印加する段階
760 第1のリザーバーからの第1の分散液および第2のリザーバーからの第2の分散液を、それぞれの針に通して基材に向かってポンプ輸送するか、さもなければ移送する段階
762 分散液が基材に接触する前に、第1の分散液および第2の分散液から溶媒を蒸発させる段階
800 方法
866 構造化単位の層を有する触媒層を提供する段階
868 構造化単位を交換膜の表面に近接して位置決めする段階
870 触媒層と交換膜を一緒に加熱プレスする段階
872 触媒層から基材を除去する段階