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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】抗老化用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20240115BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20240115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/745
A61P43/00 107
A61P27/02
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P13/12
A61P17/14
A61P27/12
A61P1/16
A61P11/00
A61P35/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021570686
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046210
(87)【国際公開番号】W WO2021145113
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020006097
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020066742
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02621
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一弥
(72)【発明者】
【氏名】大野 和也
(72)【発明者】
【氏名】吉本 真
(72)【発明者】
【氏名】密山 恵梨
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-517568(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188943(WO,A1)
【文献】New Survey Showed GI Health and Anti-Aging Benefits of Morinaga's Probiotics Milk with BB536, [online],2015年11月19日,[retrieved on 2021.01.07], <URL: https://www.businesswire.com/news/home/20151119005020/en>
【文献】石井有理ほか,マリアアザミ抽出物、大豆抽出物、コラーゲンペプチド、ビフィズス菌および リンゴ抽出物含有サプリメントの皮膚に及ぼす影響 -無作為化プラセボ対象二重盲検並行群間比較試験-,Glycative Stress Research,2016年,vol. 3 , no.3,p.156 -171
【文献】"ATCC GenomePortal_ATCC Genome Portal"、[online],[2023年2月13日検索]、インターネット< URL :https://genomes.atcc.org/genomes/2ee534150b20496d?tab=overview-tab>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
C12N
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Pubmed
DDBJ/GeneSeq/UniProt/PDB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を含有し、
前記細菌にはその寄託株及びそれと実質的に同等な株が包含され、
前記実質的に同等な株は、前記寄託株とのゲノム配列の類似度が99.0%以上の同一性を有し、かつ前記寄託株から育種された株又は自然に生じた株であり、
ミトコンドリア病、眼科疾患、アテローム性動脈硬化、心疾患、腎臓病からなる群から選択される疾患又は症状の一種又は二種以上の予防又は改善のために用いられる、ミトコンドリア機能改善用組成物。
【請求項2】
ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を含有し、
前記細菌にはその寄託株及びそれと実質的に同等な株が包含され、
前記実質的に同等な株は、前記寄託株とのゲノム配列の類似度が99.0%以上の同一性を有し、かつ前記寄託株から育種された株又は自然に生じた株であり、
早老症、白内障、脱毛症、心肥大、脂肪肝、間質性肺炎、COPD、腎糸球体硬化、動脈硬化、がん、肉腫、リンパ腫、下垂体腫瘍から選択される一種又は二種以上の予防又は改善のために用いられる、細胞老化阻害用組成物。
【請求項3】
前記実質的に同等な株は、前記寄託株と同一の菌学的性質を有する株である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621が、当該細菌の寄託株である、請求項1~に記載の組成物。
【請求項5】
飲食品である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
医薬品である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗老化用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
健康で長生きすることは多くの人が願うことである。そのため、古くから抗老化を目指す研究は種々なされてきた。
【0003】
老化現象のひとつに、細胞レベルの老化(細胞老化)がある。
細胞老化は、細胞が生存可能な状態を維持し、かつ代謝的活性を有しながらも、増殖能力を失っている状態であると一般に定義されている。哺乳類細胞が細胞分裂し増殖できる回数は有限であり、細胞分裂回数が寿命(制限回数)を迎えると細胞老化が誘導される。高齢者から分離した細胞と若齢者から分離した細胞をin vitroで培養し細胞分裂回数を比較すると、高齢者から分離した細胞の方が早く分裂寿命を迎えることが知られている。細胞老化はほかにも、DNA末端複製によるテロメア短縮、DNA損傷、腫瘍抑制遺伝子及び癌遺伝子の発現や活性の変化、酸化ストレス、炎症、化学療法剤、UV照射及び電離放射線への曝露など、様々な刺激又は因子によって引き起こされ得ることが知られている(非特許文献1)。
【0004】
細胞老化が誘導された細胞(老化細胞)からは、老化関連分泌表現型(SASP;Senescence Associated Secretory Phenotype)と総称される種々の因子が分泌され、周囲の細胞を老化させたり、またSASPが血管を介して全身へ移行すると、移行先で細胞老化や発がんを促進したり、慢性炎症を生じさせたり、免疫細胞を遊走させたりして、その結果組織の機能を障害することがある(非特許文献1)。細胞老化は加齢に伴い様々な組織で誘導されると考えられ、動脈硬化、糖尿病、認知症などとの関係も示唆されており、加齢性疾患を引き起こす要因の一つと考えられている(非特許文献2)。
老化細胞のもつこのような性質から、老化細胞を蓄積しないようにすること(Senolytics)に関心が高まっており、Senolyticによる老化細胞の除去は、いくつかの加齢性疾患に対し有効的であることが動物実験及びヒト臨床試験において示されている(非特許文献2)。さらに、マウスモデルにおいては、Senolyticによる寿命延長作用が示されており個体レベルでの抗老化作用が明らかにされている(非特許文献3)。このように細胞老化が個体老化において重要な役割を担っていることが示唆されている。
【0005】
個体レベルの老化は、老化細胞の蓄積の他にも、エネルギー代謝の副産物として主にミトコンドリアで産生されたフリーラジカル(活性酸素種等)が、DNAやタンパク質、脂質などを酸化し、細胞障害性を誘導することが原因となることも提唱されている(非特許文献4)。実際に筋肉のミトコンドリア機能障害を誘導したマウスでは全身性の老化症状が促進されている(非特許文献5)。加齢に伴い機能不良を起こしたミトコンドリアが増加することが、フリーラジカルの過剰な蓄積を引き起こす要因の一つと考えられている。さらに、フリーラジカルの過剰な蓄積は細胞老化を引き起こすストレスの一つとしてもよく知られている。そのため、ミトコンドリア機能を改善することができる成分が、抗老化に有用となり得るとされている。
【0006】
多くの生物にはフリーラジカルの除去およびフリーラジカル等の酸化ストレスによる損傷の修復に関わる遺伝子が存在する。例えば、スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)は活性酸素種(ROS)の1種であるスーパーオキサイドを無毒化する主要な酸化ストレス防御酵素である。実際に、SOD1が発現しないマウスでは、細胞老化が促進することが報告されている(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】原英二“細胞老化の新局面”実験医学, 37(11), 1728-1733, (2019)
【文献】Paez-Ribes M, Gonzalez-Gualda E, Doherty GJ, Munoz-Espin D. EMBO Molecular Medicine, 11(12), PMID:31746100, (2019)
【文献】Baker DJ, Childs BG, Durik M, Wijers ME, Sieben CJ, Zhong JA, Saltness R, Jeganathan KB, Verzosa GC, Pezeshki A et al., Nature, 530, 184-189, (2016)
【文献】R Perez-Campo, M Lopez-Torres, S Cadenas, C Rojas, G Barja. J. Comp. Physiol. B, 168(3), 149-158, (1998)
【文献】Tezze C, Romanello V, Desbats MA, Cell Metab., 25(6), 1374-1389, (2017)
【文献】Yiqiang Zhang et al., Redox Biol, 11, 30-37, (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、抗老化のための組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621やその培養物あるいは処理物が、抗老化作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の一の態様は、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を含有する、抗老化用組成物である。
本態様において、抗老化は、細胞老化阻害作用及び/又はミトコンドリア機能改善作用によるものであってよい。
本態様の組成物は、寿命延長及び/又は運動機能低下抑制のために用いられるものであってよい。
本発明の別の態様は、抗老化のために用いられる、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を含有する組成物である。
本発明の組成物は、好ましくは、飲食品である。
本発明の組成物は、好ましくは、医薬品である。
【0011】
本発明の別の態様は、抗老化用組成物の製造における、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上の使用である。
本発明の別の態様は、抗老化における、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上の使用である。
本発明の別の態様は、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を対象に投与することを含む、抗老化方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば細胞老化が阻害されることにより、及び/又はミトコンドリア機能が改善することにより、抗老化効果を得ることができる。そのため、寿命を延長させたり、運動機能低下を抑制したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】細胞老化誘導後2日目のTIG-3細胞におけるSA-β-Gal染色率(平均値)を示すグラフ。
図2】細胞老化誘導後3日目のTIG-3細胞におけるp16遺伝子の相対発現量を示すグラフ。
図3】線虫の生存率を示すグラフ。
図4】ミトコンドリア機能障害を誘導した線虫の生存率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0015】
本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を含有する。
【0016】
ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2018年1月26日にNITE BP-02621の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621は、「BB536」とも呼ばれる。これと同一の細菌であるBifidobacterium longum subsp. longum ATCC BAA-999(番号:ATCC BAA-999)は、American Type Culture Collection(ATCC;米国、20110、ヴァージニア州、マナサス、ユニバーシティ ブルバード10801(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110, United States of America))から、ATCC BAA-999として入手可能である(例えば、特開2012-223134号公報等参照)。
【0017】
なお、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621には、当該細菌名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」又は「誘導株」ともいう)も包含される。すなわち、上記受託番号で上記寄託機関に寄託されている株そのものに限られず、それと実質的に同等な株も包含される。細菌について、「上記寄託株と実質的に同等の株」とは、上記寄託株と同一の種に属し、さらに上記寄託株とのゲノム配列の類似度(Average Nucleotide Identity値)が、好ましくは99.0%以上、より好ましくは99.5%以上、さらに好ましくは100%の同一性を有し、かつ、好ましくは上記寄託株と同一の菌学的性質を有する株をいう。細菌について、上記寄託株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託株から育種された株や寄託株から自然に生じた株が挙げられる。育種方法としては、遺伝子工学的手法による改変や、突然変異処理による改変が挙げられる。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、エチルメタンスルフォネート、及びメチルメタンスルフォネート等の変異剤による処理が挙げられる。寄託株から自然に生じた株としては、寄託株の使用の際に自然に生じた株が挙げられる。そのような株としては、寄託株の培養(例えば継代培養)により自然に生じた変異株が挙げられる。派生株は、一種の改変により構築されてもよく、二種又はそれ以上の改変により構築されてもよい。
【0018】
本発明の組成物に含有させるビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621は、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよいし、前述のビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621を培養することにより取得したものを用いてもよい。
培養方法は、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621が増殖できる限り、特に制限されない。培養方法としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の培養に通常用いられる方法を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。培養温度は、例えば、25~50℃であってよく、35~42℃であることが好ましい。培養は、好ましくは嫌気条件下で実施することができ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら実施することができる。また、培養は、液体静置培養等の微好気条件下で実施することもできる。培養は、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621が所望の程度に増殖するまで実施することができる。
【0019】
培養に用いる培地は、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621が増殖できる限り、特に制限されない。培地としては、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の培養に通常用いられる培地を、そのまま、あるいは適宜修正して、用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩類や硝酸塩類を用いることができる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の培養に通常用いられる培地として、具体的には、強化クロストリジア培地(Reinforced Clostridial medium)、MRS培地(de Man, Rogosa, and Sharpe medium)、mMRS培地(modified MRS medium)、TOSP培地(TOS propionate medium)、TOSP Mup培地(TOS propionate mupirocin medium)、GAM(Gifu Anaerobic Medium)培地、YCFA(Yeast Extract-casein Hydrolysate Acid)培地等が挙げられる。
【0020】
本発明の組成物に含有させるビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の形態は、菌体、細菌の培養物、細菌の処理物のいずれでもよい。
菌体は、通常は生菌体を含有する形態で含有されるのが好ましいが特に限定されない。菌体は、例えば、生菌体であってもよく、死菌体であってもよく、生菌体と死菌体の混合物であってもよい。
細菌の培養物としては、例えば、培養により得られた培養物をそのまま用いてもよく、培養物を希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、培養物として、培養上清や培養画分を用いてもよい。培養上清を用いる場合は、例えばGAM培地で37℃,16hの条件で培養した時の培養液の上清を好ましく使用できる。
細菌の処理物としては、菌体又は培養物に対して、破砕、加熱、凍結乾燥、及びそれらの希釈物、乾燥物又は画分を用いることができる。
【0021】
本発明の組成物は、抗老化作用を発揮することができる。「抗老化」とは、加齢に伴う変化、通常は好ましくない変化を、防止したり抑制したり進行を遅延させることをいう。
本発明の組成物が発揮する抗老化作用は、細胞老化阻害作用によるものであってよい。「細胞老化の阻害」とは、正常細胞が老化細胞へと変化することを阻害することを含む。「正常細胞」とは、生存可能な状態を維持し、かつ代謝的活性及び増殖能力を有する細胞を意味する。「老化細胞」とは細胞老化が誘導された細胞で、生存可能な状態を維持し、かつ代謝的活性を有しながらも、増殖能力を失った状態の細胞を意味する。老化細胞への変化が阻害されることにより、老化細胞の増加が抑制され、老化細胞の蓄積が抑制され、その結果、種々の老化現象の防止、抑制、又は進行の遅延がもたらされ得る。
【0022】
また、本発明の組成物が発揮する抗老化作用は、ミトコンドリア機能の改善作用によるものであってよい。ミトコンドリアの機能に異常が生じると、活性酸素(ROS)が過剰に産生し、細胞を損傷して老化を促進する。そのため、ミトコンドリア機能を改善することにより、抗老化作用がもたらされ得る。ここで「機能改善」とは、機能の向上を含み、また機能の低下の防止、抑制、又は遅延を含む。なお、ミトコンドリア機能は、通常ROS産生量を指標として判断することができる。また、機能低下には機能異常が含まれる。
【0023】
また、本発明の組成物が発揮する抗老化作用は、抗酸化ストレス向上作用によるものであってよい。本明細書において酸化ストレスとは、フリーラジカル等の活性酸素種に起因する、細胞や個体に対する障害作用をいう。抗酸化ストレス向上作用とは、酸化ストレスに対する細胞又は個体の耐性を高めることを意味する。ここで「向上」とは、通常は抗酸化ストレスを高めることを言うが、抗酸化ストレスが低下することを防止、抑制、又は遅延することを含んでもよい。酸化ストレスに対する耐性は、活性酸素種による損傷の修復に関わる遺伝子(酸化ストレス耐性遺伝子)の発現量を指標として判断することができる。本明細書において、抗酸化ストレスは酸化ストレス耐性と同義である。
例えば、活性酸素種による損傷を受けた細胞において、通常はその損傷を修復する作用が働くが、係る修復が不十分であると細胞老化が促進する。そのため、酸化ストレスによる損傷を修復する機能、すなわち酸化ストレス耐性を高めることにより、抗老化作用がもたらされ得る。
例えば、ミトコンドリアの機能の異常により、過剰に産生された活性酸素種による損傷に対する耐性を高めることにより、抗老化作用がもたらされ得る。
【0024】
本発明の組成物は、前述のように抗老化作用を発揮するため、寿命延長や運動機能低下抑制のために好適に用いることができる。ここで寿命延長には、単に長生きすることのほか、健康寿命の延伸が含まれてよい。
【0025】
また、本発明の組成物は、前述のように正常細胞から老化細胞への誘導を阻害し、老化細胞の蓄積を抑制することができるため、細胞老化や老化細胞から分泌されるSASPに関連又は起因する疾患又は症状の改善又は予防することが期待される。かかる疾患や症状としては、早老症、白内障、脱毛症、心肥大、脂肪肝、間質性肺炎、COPD、腎糸球体硬化、動脈硬化、関節炎、椎間板変性、サルコペニア、炎症性腸疾患、糖尿病、メタボリックシンドローム、がん、肉腫、リンパ腫、認知症、下垂体腫瘍、神経変性疾患等が挙げられる。また、本発明の組成物により、骨量減少の緩和、脂肪組織萎縮、心機能の向上、呼吸機能の回復、筋増強などの効果も期待される。
【0026】
また、本発明の組成物は、前述のようにミトコンドリア機能を改善することができるため、ミトコンドリア機能の異常に関連又は起因する疾患又は症状の改善又は予防することが期待される。かかる疾患や症状としては、ミトコンドリア病、筋骨格系障害、皮膚疾患、糖尿病、代謝性疾患、神経変性疾患、眼科疾患、アテローム性動脈硬化、循環器系疾患、心疾患、腎臓病等が挙げられる。
【0027】
また、本発明の組成物は、前述のように抗酸化ストレス向上作用を有するため、酸化ストレスに起因する疾患又は症状の改善又は予防することが期待される。かかる疾患や症状としては、高血圧、炎症、動脈硬化、シワやたるみなどの老化現象、がん、アルツハイマー病などの脳神経疾患、ぜんそくなどの呼吸器疾患、白内障、心疾患、脂肪肝などの消化器疾患、集中力の低下や疲労感などの症状等が挙げられる。
【0028】
本発明の組成物におけるビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物の含有量としては特に限定されないが、例えば前記細菌の菌体量として、組成物1mL当たり1.0×10cfu以上とすることが好ましく、より好ましくは2.0×10cfu以上の菌体を含有するとしてよい。なお、cfuはコロニー形成単位(Colony forming unit)を指す。本明細書においては、例えば、還元脱脂粉乳10質量%を含む固体培地にて38℃で培養したときの値とすることができる。また、菌体が死菌体である場合、cfuは個細胞(cells)と置き換えることができる。
また、前記細菌の培養物として培養上清を用いる場合は、組成物全体の0.1~100質量%とすることが好ましく、より好ましくは1~90質量%、さらに好ましくは10~80質量%とすることができる。
これらは、通常、経口組成物として流通するときの含有量の範囲であってよい。
【0029】
本発明の別の側面は、抗老化のために用いられる、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を含有する組成物である。
本発明の別の側面は、抗老化用組成物の製造における、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上の使用である。
本発明の別の側面は、抗老化における、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上の使用である。
本発明の別の側面は、抗老化のために用いられる、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上である。
本発明の別の側面は、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を対象に投与することを含む、抗老化方法である。
【0030】
本発明の組成物を投与する対象(被投与者)及び摂取させる対象(摂取者)は、動物であれば特に限定されないが、通常はヒトである。また、成人、小児、乳児、新生児(低体重児を含む)等のいずれであってもよいが、通常は成人である。また、性別は特に限定されない。
【0031】
なお、本明細書において「ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を動物に投与すること」は、「ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を動物に摂取させること」と同義であってよい。摂取は、通常は自発的なもの(自由摂取)であるが、強制的なもの(強制摂取)であってもよい。すなわち、投与工程は、具体的には、例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を飲食品や飼料に配合して対象に供給し、以て対象にそれを自由摂取させる工程であってもよい。
【0032】
本発明の組成物の摂取(投与)時期は、特に限定されず、摂取(投与)対象の状態に応じて適宜選択することが可能である。
【0033】
本発明の組成物の摂取(投与)量は、摂取(投与)対象の年齢、性別、状態、その他の条件等により適宜選択される。
本発明の組成物の摂取(投与)量は、本発明に係るビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の菌体の摂取(投与)量として、例えば、成人において0.5~5g/日の範囲が好ましく、1~4g/日の範囲がより好ましく、2~3g/日がさらに好ましい。あるいは、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の培養上清の摂取(投与)量として、例えば、成人において0.5~5g/日の範囲が好ましく、1~4g/日の範囲がより好ましく、2~3g/日がさらに好ましい。
なお、摂取(投与)の量や期間にかかわらず、本発明の組成物は1日1回又は複数回に分けて摂取(投与)することができる。
【0034】
本発明の組成物の摂取(投与)期間は、特に限定されない。また、摂取(投与)期間の上限は特に設けられず、継続的な、長期の摂取(投与)が可能である。
【0035】
本発明の組成物の摂取(投与)経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物を経口摂取(投与)される組成物とする場合は、飲食品の態様とすることが好ましい。
【0037】
飲食品としては、本発明の効果を損なわず、経口摂取(投与)できるものであれば形態や性状は特に制限されず、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上を含有させること以外は、通常飲食品に用いられる原料を用いて通常の方法によって製造することができる。
【0038】
飲食品としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、例えば、栄養補助食品(サプリメント)、錠菓;流動食(経管摂取用栄養食);パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。
【0039】
また、飲食品の一態様として飼料とすることもできる。飼料としては、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。
飼料の形態としては特に制限されず、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621、前記細菌の培養物、前記細菌の処理物から選択される一種又は二種以上の他に例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、カゼイン、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等を含有するものであってよい。
【0040】
本発明の組成物が飲食品(飼料を含む)の態様である場合、抗老化に関する用途が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。
【0041】
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明における「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0042】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0043】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)及びこれに類する表示が典型的な例である。
【0044】
かかる表示としては、例えば、「老化を防ぎたい方に」、「運動機能の改善のために」、「健康寿命を延ばしたい方に」、「いつまでも若くありたい方に」、「抗酸化力を向上したい方に」、「抗酸化力を高めます。」、「酸化ストレスに対する耐性を高めたい方に」等が挙げられる。
【0045】
本発明の組成物は、医薬品の態様とすることもできる。
医薬品の摂取(投与)経路は、経口又は非経口のいずれでもよいが経口が好ましい。また、非経口摂取(投与)としては、経皮、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。
医薬品の形態としては、摂取(投与)方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口摂取(投与)の場合、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口摂取(投与)の場合、座剤、軟膏剤、注射剤等に製剤化することができる。
製剤化に際しては、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、他の薬効成分や、公知の又は将来的に見出される抗老化作用を有する成分等の他の医薬を併用することも可能である。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、通常製剤化に用いる担体を配合して製剤化してもよい。かかる担体としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0046】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0047】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0048】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0049】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0050】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0051】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口摂取(投与)用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤等が挙げられる。
【0052】
本発明の医薬品を摂取(投与)するタイミングは、例えば食前、食後、食間、就寝前など特に限定されない。
【実施例
【0053】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の培養上清の調製
ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621(BB536)を、MRS培地(Difco Lactobacillo MRS Broth、Becton, Dickinson and Company製)で前培養した。前培養液を、GAM培地(GAMブイヨン「ニッスイ」、日水製薬株式会社製)に5%(v/v)接種し、37℃、16時間培養した。培養液を10分間、4℃、8000Gの条件で遠心して上清を回収した後、pHを7.0±0.1に調整し、0.22μmフィルターに通して培養上清を調製した。培養上清は-30℃で保存した。
以下、得られた「ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621(BB536)の培養上清」を単に「BB536の培養上清」ともいう。
【0055】
[試験例1]細胞老化阻害作用の検討
6ウェルプレート(Falcon セルカルチャー 6ウェル マルチウェルプレート、Corning製)に、MEM培地(Minimum Essential Medium Eagle With Earle′s salts、SIGMA製)、10%FBS(Fetal Bovine Serum、MPバイオ製)、1%P/S(Pen Strep、gibco製)を2mLずつ添加し、PDL(Population Doubling Level)の値が25~50であるTIG-3細胞(1801781/07262017/JCRB Cell Bank)を1×10個/ウェルとなるよう播種した。そこに、実施例1で調製したBB536の培養上清を1%(v/v)又は0.1%(v/v)添加し、37℃、5%、COの条件下で培養した。
培養開始から18時間後、終濃度3μMドキソルビシン(Dox;ドキソルビシン塩酸塩、富士フィルム和光純薬製)を添加して、老化誘導刺激を1時間行った。老化誘導刺激後、2mLのリン酸緩衝整理食塩水(PBS pH 7.4 (1X)、gibco社製)で2回洗浄して2mL MEM培地、10%FBS、1%P/Sを添加した。MEM培地、FBS及びP/SはTIG-3細胞播種時と同じものを用いた。
【0056】
その後、再び前記BB536の培養上清を1%(v/v)又は0.1%(v/v)添加し、2~3日間培養した。以下、得られた試料を「BB536の培養上清群」という。
なお、BB536の培養上清を添加しないウェルも設けた(Dox群)。また、Doxに対するコントロールとして、Dox及びBB536の培養上清を添加せず、DMSOを添加したウェルも設けた(DMSO群)。また、BB536の培養上清群に対するポジティブコントロールとして、BB536の培養上清を添加する代わりに既知の抗酸化物質である1 M N-アセチルシステイン(ナカライテスク社製)を1 μL添加したウェル(NAC群)、及びBB536の培養上清群に対するネガティブコントロールとして、BB536の培養上清を添加する代わりにGAM培地を添加したウェル(GAM群)を、それぞれ設けた。
【0057】
2回目のBB536の培養上清添加から48時間培養後に、老化細胞を特異的に染色する老化関連酸性βガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)染色を行った。SA-β-Gal染色がされた細胞を、明視野顕微鏡(5倍対物レンズ)を用いて3か所撮影し、老化細胞として細胞数をカウントした。
また、2回目のBB536の培養上清添加から72時間培養後に、老化細胞マーカーであるp16の遺伝子発現解析を行った。
逆転写反応はPrimeScript RT Reagent Kit(タカラバイオ社製)、qPCRはTB Green Premix Ex Taq II(タカラバイオ社製)を用いて行った。
【0058】
図1に、各群における播種した全細胞数に対するSA-β-Gal染色された細胞数の割合(染色率%)を示す。Dox群ではSA-β-Gal陽性細胞が36%存在するのに対して、BB536の培養上清群(1%)ではSA-β-Gal陽性細胞が15%であった。このBB536の培養上清群の結果は、ポジティブコントロールであるNAC群のSA-β-Gal陽性細胞の染色率(23%)よりも少ないという結果であった。
図2に、各群におけるp16の遺伝子発現量(内部コントロールGAPDHに対する相対発現量)を示す。Dox群では相対発現量値が0.0214であるのに対し、BB536の培養上清1%投与群では0.0156とDox群に対して有意に減少していた(Welch’s t-test, p値 0.0387)。
以上の結果より、ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の培養上清に細胞老化阻害作用があることがわかった。
【0059】
[実施例2]ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621の菌体の調製
ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621(BB536)を、MRS培地(Difco Lactobacillo MRS Broth、Becton, Dickinson and Company製)を用いて、嫌気条件下で37℃にて培養した。培養16時間後、遠心分離により菌体を回収した。
以下、得られた「ビフィドバクテリウム・ロンガム NITE BP-02621(BB536)の菌体」を単に「BB536の菌体」ともいう。
【0060】
[試験例2]線虫における寿命延長作用の検討
(1)線虫の飼育
線虫(Caenorhabditis elegans N2株)および、その餌となるEscherichia coli OP50(以下、OP50)はCAENORHABDITIS GENETICS CENTERより入手した。
OP50はLB培地(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて、好気条件下で37℃にて培養した。培養16時間後、遠心分離によりOP50の菌体を回収した。得られたOP50の菌体はNGMプレートに塗抹し(OP50の菌体300mg/プレート)、線虫の飼育に用いた。もしくはS-complete培地に添加した(OP50の菌体6mg/mL)。その他、試薬および線虫の飼育、同期化処理は、以下の参考資料に従い実施した。
参考資料
S. Brenner, Genetics, 77 (1), 71-94, 1974, The Genetics of Caenorhabditis Elegans
F. Amrit, et. Al., Methods,68 (3), 465-475, 2014, The C. elegans lifespan assay toolkit
【0061】
(2)試験プレートの調製
上記OP50塗抹NGMプレートに2’-デオキシ-5-フルオロウリジン(東京化成工業社製)を加えてコントロールプレートとした(コントロール群)。なお、2’-デオキシ-5-フルオロウリジンの添加は、新たな個体が付加しないためである。コントロールプレートに対して、通常餌OP50の半量を上記手法で回収したBB536の菌体に置換した(BB536の菌体投与群)。
【0062】
(3)寿命の評価方法
生育同調した線虫(L4/adult期)を2‘-デオキシ-5-フルオロウリジン含有のS-complete培地にて飼育した。コントロール群(n=127)には通常餌OP50を与え、BB536の菌体投与群(n=118)には通常餌OP50の半量をBB536の菌体に置換して与えた。2~3日置きに顕微鏡を用いて生存個体数を測定した。得られたデータに対してカプラン・マイヤー法を用いて生存曲線を算出した。
【0063】
孵化後3日目(L4/adult期)を0日とする生存曲線(寿命)を図3に示す。BB536の菌体投与群において顕著な寿命延長作用が認められた。具体的には平均寿命(日)はコントロール群が19.4±0.57に対して、BB536の菌体投与群が23.7±0.69であった。
【0064】
[試験例3]老齢線虫における運動機能改善作用の検討
線虫の飼育及び試験プレートの調製は試験例2と同様に行った。
コントロールプレートもしくは被験品プレートにて、14日間飼育した老齢の線虫を白金耳でピックアップし、M9バッファー中に移動させ、顕微鏡にて30秒間の首振運動回数を測定した。上記測定は1匹ずつ行った。
【0065】
老齢期の線虫における30秒間の首振運動回数を、表1に示す。BB536によって加齢に伴い低下する運動機能低下が抑制されたことが認められた。具体的な回数は、コントロール群が24.8±3.3に対して、BB536の菌体投与群が33.5±4.0であった。
【0066】
【表1】
【0067】
[試験例4]ミトコンドリア機能障害に対する改善作用の検討
線虫の飼育及び試験プレートの調製は試験例2と同様に行った。
コントロールプレートもしくは被験品プレートにて、7日間飼育した線虫をM9バッファーにて懸濁して96ウェルプレートに播種し、ミトコンドリア機能障害を誘導するため、パラコート(終濃度:1mM)とH2DCFDA(終濃度500μM)を加えて6時間飼育した。その後、プレートリーダーを用いて蛍光強度(Ex:480nm/Em:530nm)を測定することにより活性酸素(ROS)産生量を定量し、各ウェル中の線虫数を顕微鏡にて測定して補正した。
【0068】
線虫におけるROS産生量を表2に示す。BB536によりROS産生が抑制されたことが認められた。具体的には、コントロールに比してBB536の菌体投与群では0.40倍まで抑制されることが確認された。
【0069】
【表2】
【0070】
[試験例5]ミトコンドリア機能障害に対する耐性の検討
線虫の飼育及び試験プレートの調製は試験例2と同様に行った。
生育同調した線虫(L4/adult期)を2’-デオキシ-5-フルオロウリジン含有のS-complete培地にて飼育した。ミトコンドリア機能障害を誘導するため、パラコート(終濃度:10mM)を培地に加えた。コントロール群(n=58)は通常餌OP50を与え、BB536の菌体投与群(n=43)は通常餌OP50の半量をBB536の菌体に置換して与えた。2~3日置きに顕微鏡を用いて生存個体数を測定した。得られたデータに対してカプラン・マイヤー法を用いて生存曲線を算出した。
【0071】
孵化後3日目(L4/adult期)を0日とする生存曲線(寿命)を図4に示す。BB536の菌体投与群において顕著な寿命延長作用が認められた。具体的には平均寿命(日)はコントロール群が5.01±0.34に対して、BB536の菌体投与群が7.16±0.27であった。
【0072】
[試験例6]酸化ストレス耐性遺伝子の発現促進作用の検討
線虫の飼育及び試験プレートの調製は試験例2と同様に行った。
コントロールプレートもしくは被験品プレートにて、14日間飼育した老齢の線虫(各郡n=6)を回収し、RNeasy Mini kit(QIAGEN社)を用いてTotal RNAを回収した後、TaKaRa PrimeScript(登録商標) RT reagent Kitを用いてcDNAを作製した。このcDNAをサンプルとしてリアルタイムPCR法を用いて酸化ストレス耐性遺伝子であるheat shock protein 70 (HSP70)、superoxide dismutase 1 (SOD-1)、thioredoxin-1 (trx-1)、及びglutathione S-transferase 4 (gst-4)、並びに内因性コントロール遺伝子としてACT-1の発現量を定量解析した。酸化ストレス耐性遺伝子の発現量はACT-1の発現量にて補正した。
【0073】
線虫における酸化ストレス耐性遺伝子の発現量を表3に示す。BB536により酸化ストレス耐性遺伝子であるHSP70、SOD-1、trx-1、gst-4の発現量が増加したことが認められた。
【0074】
【表3】
【0075】
試験例2~6の結果から、BB536は老化抑制による寿命延長作用を有することが示された。そのメカニズムとしてはミトコンドリア機能異常抑制作用および抗酸化ストレス向上作用が示唆された。
図1
図2
図3
図4