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  • 特許-合金線材とその製造方法及び用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】合金線材とその製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C22C 27/04 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
C22C27/04 101
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006095
(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公開番号】P2022112015
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】202110077980.5
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522025189
【氏名又は名称】厦門虹鷺▲きん▼▲ぼく▼工業有限公司
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN HONGLU TUNGSTEN-MOLYBDENUM INDUSTRY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.339 Liansheng Road, Jimei North Industrial District, Xiamen, Fujian, 361021, China
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】湯 閔楓
(72)【発明者】
【氏名】彭 福生
(72)【発明者】
【氏名】郭 東紅
(72)【発明者】
【氏名】方 毅金
(72)【発明者】
【氏名】呂 晟
(72)【発明者】
【氏名】姚 ▲とう▼▲かい▼
(72)【発明者】
【氏名】呉 先月
(72)【発明者】
【氏名】張 偉兵
(72)【発明者】
【氏名】塗 啓建
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203795(WO,A1)
【文献】特開平02-109640(JP,A)
【文献】特開昭63-170844(JP,A)
【文献】特開2011-125961(JP,A)
【文献】特開2018-187741(JP,A)
【文献】特開2002-356732(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137255(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102586663(CN,A)
【文献】特開2021-030352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 27/04
C22F 1/18
B23H 7/08 - 7/10
C22C 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン合金からなる合金線材であって、
前記タングステン合金は、タングステンと酸化セリウムからなり、
前記酸化セリウムの含有量は、0.1重量%~1.5重量%であり、
前記合金線材の線径は60μm以下であり、
前記合金線材の弾性極限強度は2500MPa以上であり、
前記合金線材の引張強度は4200MPa以上である
ことを特徴とする合金線材。
【請求項2】
タングステン合金からなる合金線材であって、
前記タングステン合金は、タングステンと、酸化セリウムと、金属元素Mからなり、
前記酸化セリウムの含有量は、1重量%であり、
前記タングステンの含有量は、98.995重量%であり、
前記金属元素Mは、カリウムから選択され、前記カリウムの含有量は50ppmであり、
前記合金線材の線径は60μm以下であり、
前記合金線材の弾性極限強度は2500MPa以上であり、
前記合金線材の引張強度は4200MPa以上である
ことを特徴とする合金線材。
【請求項3】
タングステン合金からなる合金線材であって、
前記タングステン合金は、タングステンと、酸化セリウムと、La とからなり、
前記合金線材における酸化セリウムの含有量は1重量%であり、
前記タングステンの含有量は98.8重量%であり、
前記合金線材におけるLa の含有量は0.2重量%であり、
前記合金線材の線径は60μm以下であり、
前記合金線材の弾性極限強度は2500MPa以上であり、
前記合金線材の引張強度は4200MPa以上である
ことを特徴とする合金線材。
【請求項4】
前記合金線材のプッシュプル芯線径は350μm以下である
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の合金線材。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の合金線材の製造方法であって、
粉末ドーピング工程、プレス工程、焼結工程、および分塊圧延工程を含み、
前記分塊圧延工程において、多ロール圧延により焼結ビレットに対して分塊圧延を行い、圧延後のタングステン棒において、酸化セリウム顆粒のワイヤー材の長手方向の長さと顆粒横断面の粒径の比が5より大きい
ことを特徴とする合金線材の製造方法。
【請求項6】
前記粉末ドーピング工程は、固液ドーピング工程、還元工程、粉末生成工程を含み、
前記固液ドーピング工程は、混合後のタングステンドーピング溶液に対して段階的に乾燥する工程を含み、
前記段階的に乾燥する工程は、少なくとも2つの温度段階を含み、
前記2つの温度段階は、100℃を境界線とし、最初に100℃未満の温度で加熱・乾燥し、次に100℃以上の温度で加熱・乾燥する
ことを特徴とする請求項に記載の合金線材の製造方法。
【請求項7】
前記固液ドーピング工程における前記段階的に乾燥する工程は、第1乾燥段階と第2乾燥段階を含み、前記第1乾燥段階の温度は60~80℃であり、前記第2乾燥段階の温度は110~150℃である
ことを特徴とする請求項に記載の合金線材の製造方法。
【請求項8】
前記還元工程は、前記固液ドーピング工程で生成された材料を、平均フィッシャー粒子サイズが1.0~4.0μmの合金粉末に還元する工程を含む
ことを特徴とする請求項に記載の合金線材の製造方法。
【請求項9】
前記粉末ドーピング工程は、固体・固体ドーピング工程を含み、
前記固体・固体ドーピング工程は、フィッシャー粒子サイズが1.0μm~4.0μmのタングステン粉末と、粒度分布D90<2.0μmのセリウムの酸化物を原料として混合し、セリウムの酸化物がドーピングされたタングステン粉末を得ることを含む
ことを特徴とする請求項に記載の合金線材の製造方法。
【請求項10】
前記焼結ビレットにおける酸化セリウムの粒径が2.5μm以下である
ことを特徴とする請求項に記載の合金線材の製造方法。
【請求項11】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の合金線材、または、請求項~請求項10のいずれか1項に記載の合金線材の製造方法によって製造された合金線材の材料切断分野への使用。
【請求項12】
前記材料は、少なくとも硬質表面材料を含み、前記硬質表面材料は、少なくともシリコンウェハ、磁性材料、半導体材料を含み、前記半導体材料は、少なくともサファイア、炭化ケイ素を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の合金線材、または、請求項~請求項10のいずれか1項に記載の合金線材製造方法によって製造された合金線材のケーブル/ロープ分野への使用。
【請求項14】
前記ケーブル/ロープは、医療用/工業用精密機器、および高温炉の牽引に用いられる
ことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の合金線材、または、請求項~請求項10のいずれか1項に記載の合金線材の製造方法によって製造された合金線材の紡織分野への使用。
【請求項16】
前記合金線材から紡績や織布によって作られた手袋や防護服を含む
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステン合金材料技術分野に関わり、具体的に、合金線材ならびにその製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ある程度高い強度、高い硬度の材料として、高炭素鋼線やタングステン線などが知られている。しかし、従来の高炭素鋼線の引張強度は一般的に4500MPa未満である一方、直径が50μmを超え、加工限界に達しており、より小さい直径に加工することができない。
【0003】
また、タングステンは1mm未満の曲げ半径で優れた柔軟性を有し、一方、ステンレス鋼のワイヤーは、同様な非常に小さい曲げ半径では、複数回繰り返される曲げ応力のため、機能がなくなる可能性がある。また、一般的に、316ステンレス鋼は2500~2550°Fの温度で溶けるが、タングステンは、温度が6192°Fに達する時に溶ける。そのため、タングステンは、優れた耐熱性と引張強度が求められる機械的なワイヤーロープの用途に、良好な性能を有する。
【0004】
同時に、長寿命と柔軟性という2つの長所のため、タングステンは医療用及び工業用マイクロ・メカニカル・ワイヤーロープの高性能材料となりつつある。タングステンは靭性、柔軟性、耐熱性の特性を有するため、タングステン・ワイヤーロープは頑丈で耐久性を有し、長い期間、メンテナンスや交換が不要である。タングステンは現在知られている最も靭性の高い材料の1つである。ダイヤモンドのモース硬度は10であり、タングステンのモース硬度は9であり、これに対し、ステンレス鋼のモース硬度は約6である。
【0005】
普通のタングステン・ワイヤーの引張強度は一般的に4000MPa以下であり、しかし、その靭性が悪く、製造工程が複雑で、加工が非常に難しいため、効果的に大量に生産することが困難である。大量生産に適し、且つ4500MPaを超える高強度と高靭性の線材は未だに市場に存在しない。例えば半導体材料のサファイア、炭化ケイ素、シリコンウェハ、磁性材料などの高硬度材料の切断や、高精密機器及び高温炉牽引に使われるケーブルやロープなどの応用では、各分野の実際の応用の様々なニーズを満たすような、より高い強度、靭性、および細さを有するワイヤーが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の高強度タングステン合金線材は異なるサイズにより性能に欠陥が存在するという問題を解決するために、本発明は合金線材を提供し、前記合金線材はタングステン合金からなり、前記タングステン合金はタングステンとセリウムの酸化物を含み、前記合金線材の線径は100μm以下であり、前記合金線材の引張強度は3800MPa以上である。
【0007】
また、合金線材における酸化セリウムの含有量は0.1重量%(wt%)~1.5重量%である。
また、前記合金線材の線径は60μm以下であり、合金線材のプッシュプル芯線径は350μm以下である。
合金線材の弾性極限強度は2500MPa以上であり、合金線材の引張強度は4200MPa以上である。
また、タングステン合金は金属元素Mを更に含み、金属元素Mは、カリウム、レニウム、モリブデン、鉄、コバルト、または希土類金属のうちの少なくとも1つから選択される。
更に、前記カリウムの含有量は80ppm未満である。
更に、タングステン合金は、酸化セリウムのほかに、希土類酸化物の一種類又は複数種類を更に含む。
【0008】
本発明は、粉末ドーピング工程、プレス工程、焼結工程、および分塊圧延工程を含む、上記のような合金線材を製造するための方法を提供する。
前記分塊圧延工程において、ロール圧延により焼結ビレットに対して分塊圧延を行い、圧延後のタングステン棒において、酸化セリウム顆粒のワイヤー材の長手方向の長さと顆粒横断面の粒径の比が5より大きい。
【0009】
更に、前記粉末ドーピングは、以下のステップを含む。
固液ドーピング工程、還元工程、製粉工程。
前記固液ドーピング工程は、混合後のタングステンドーピング溶液に対して段階的に乾燥する工程を含み、前記段階的に乾燥する工程は、少なくとも2つの温度段階を含み、前記2つの温度段階は、100℃を境界線とし、最初に100℃未満の温度で加熱・乾燥し、次に100℃以上の温度で加熱・乾燥する。
更に、前記固液ドーピング工程における前記段階的に乾燥する工程は、第1乾燥段階と第2乾燥段階を含み、前記第1乾燥段階の温度は60~80℃であり、前記第2乾燥段階の温度は110~150℃である。
更に、前記還元工程は、前記固液ドーピング工程で生成された材料を、平均フィッシャー粒子サイズが1.0~4.0μmの合金粉末に還元する工程を含む。
【0010】
更に、前記粉末ドーピング工程は、以下のステップを含む。
固体・固体(固固)ドーピング工程。
前記固体・固体ドーピング工程は、フィッシャー粒子サイズが1.0μm~4.0μmのタングステン粉末と、粒度分布D90<2.0μmのセリウムの酸化物を原料として混合し、セリウムの酸化物がドーピングされたタングステン粉末を得ることを含む。
更に、前記焼結ビレットにおける酸化セリウムの粒径が2.5μm以下である。
【0011】
本発明は、材料切断の分野で使用される合金線材を提供する。
前記合金材料は、上述のような合金線材、または上述のような合金線材の製造方法によって製造された合金線材を利用している。
更に、前記材料は、少なくとも硬質表面材料を含み、前記硬質表面材料は、少なくともシリコンウェハ、磁性材料、半導体材料を含み、前記半導体材料は、少なくともサファイア、炭化ケイ素を含む。
【0012】
本発明は、ケーブル/ロープ用途の合金線材を提供する。
前記合金材料は、上述したような合金線材、または上述したような合金線材の製造方法によって製造された合金線材を利用している。
更に、前記ケーブル/ロープは、医療用/工業用精密機器、及び高温炉の牽引用に用いられる。
【0013】
本発明は、紡織用途の合金線材を提供する。
前記合金材料は、上述したような合金線材、または上述したような合金線材の製造方法によって製造された合金線材を利用している。
更に、前記合金線材から紡績や織布によって作られた手袋や防護服を含む。
【0014】
本発明の合金線材、及びその製造方法と応用により、従来技術と比べて以下のような有益な技術的効果を有する。
1.線径が100μm以下であり、引張強度が3800MPa以上である。
2.前記合金線材の線径が60μm以下であり、前記合金線材のプッシュプル芯の線径が350μm以下であり、前記合金線材の弾性極限強度が2500MPa以上であり、前記合金線材の引張強度が4200MPa以上である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施例または従来技術の構成をより明確に説明するため、以下、実施例または従来技術に用いられる図面を簡単に説明する。また、以下の説明する図面は、本発明の実施例であり、当業者にとって創造的な労働を必要とせず、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0016】
図1】本発明のプッシュプル式靭性試験装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例の目的、構成およびメリットをより明確にするため、以下、図面を参照しながら、本発明の実施例の構成を明確かつ完全に説明する。また、以下に説明する実施例は本発明の一部の実施例であり、すべての実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を経ずに得られたすべての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0018】
本発明は、合金線材を提供する。
前記合金線材はタングステン合金からなり、前記タングステン合金はタングステンと希土類酸化物を含む。
前記タングステンの含有量は90wt%以上であり、前記希土類酸化物の含有量は0.1wt%以上である。
例えば、前記タングステンの含有量が95wt%以上であってもよく、好ましくは、97.0wt%~99.9wt%の範囲であり、例えば、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%などが挙げられる。
更に、例えば、前記希土類酸化物の含有量は、0.1wt%~3.0wt%、0.1wt%~2wt%、又は、0.1wt%~1wt%、あるいは0.3wt%~0.8wt%であり、もちろん、0.1wt%、0.3wt%、0.5wt%、0.8wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%等とすることもできる。希土類酸化物の含有量を高めることにより、金属ワイヤーの性能を向上させることができる。しかし、含有率が高すぎると、合金線材を細くすることは難しくなる。
【0019】
また、前記希土類酸化物は、1種類でもよく、複数種類でもよい。
例えば、一般的な希土類酸化物として、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化エルビウム(Er)、酸化ネオジム(Nd)、酸化イットリウム(Y)、酸化ユーロピウム(Eu)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化ランタン(La)、酸化プラセオジム(Pr11)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化セリウム(CeO)、酸化テルビウム(Tb)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化サマリウム(Sm)、酸化プラセオジム((Pr+Nd))、酸化ツリウム(Tm)、酸化ルテチウム(Lu)、酸化スカンジウム(Sc)、酸化プロメチウム(Pm)などがあり、実際に使用する際に、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化スカンジウム(Sc)などの希土類酸化物の一つであってもよく、酸化ランタン(La)と他の希土類酸化物、例えば酸化スカンジウム(Sc)、酸化イットリウム(Y)などをともに含んでもよく、又は、他の複数種類の希土類酸化物の組み合わせを含んでもよく、例えば、酸化ランタン(La)と酸化セリウム(CeO)、酸化ランタン(La)と酸化イットリウム(Y)、酸化ランタン(La)と酸化スカンジウム(Sc)、酸化セリウム(CeO)と酸化イットリウム(Y)など両方を含んでもよい。
【0020】
前記合金線材は、引張強度が2800MPa以上である。また、例えば、前記合金線材は、引張強度が3200MPa以上であってもよく、3800MPa以上であってもよく、4200MPa以上であってもよく、さらに4800MPaや5000MPa以上であってもよい。
また、合金線材は、弾性極限強度が2500MPa以上である。例えば、前記合金線材の弾性極限強度は2700MPa以上であってもよく、3000MPa以上、さらに3200MPa以上であってもよい。
【0021】
前記合金線材の線径は、400μm以下である。合金線材の線径は、例えば、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、100μm、80μm、さらに60μm、40μm、25μm、20μm、10μm等である。前記合金線材は、均質であってもよく、完全に均質でなくてもよく、また、部位によって、例えば1%や数%の差を有してもよい。
特に、前記合金線材の線径は60μm以下にすることができ、これにより、合金線材が柔軟性を有し、容易に十分に曲げられるため、容易に合金線材を巻き取ることができる。
よって、前記合金線材のプッシュプル芯の線径は350μm以下に達することができ、例えば、230μm、200μm、180μm、160μm、130μmなどである。前記合金線材はプッシュプルタフネスに優れていることがわかる。
具体的に、前記合金線材の線径は200μm~400μmであり、前記合金線材の引張強度は2800MPa~4000MPa、例えば3000MPa、または3500MPa、さらに4000MPaであってもよい。
前記合金線材の線径は100~200μmであり、前記合金線材の引張強度は、3200~4800MPa、例えば3400MPa、4000MPa、4500MPa、さらに4800MPaであってもよい。
【0022】
好ましい実施例として、前記合金線材は、タングステン合金からなり、前記タングステン合金は、タングステンとセリウムの酸化物を含む。
前記タングステンの含有量が90wt%以上であり、前記酸化セリウムの含有量が0.1wt%以上1.5wt%以下である。
例えば、前記タングステンの含有量は、95wt%以上であってもよく、好ましくは、97.0wt%~99.9wt%の範囲であり、例えば、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%などが挙げられる。
例えば、前記酸化セリウムの含有量は、0.2wt%~1.5wt%、又は0.2wt%~1wt%、あるいは0.3wt%~0.8wt%であり、もちろん、0.2wt%、0.3wt%、0.5wt%、0.8wt%、1wt%、1.5wt%などとしてもよく、前記酸化セリウムは、好ましくは、酸化セリウム(CeO)であり、酸化セリウムの含有量を高めることにより、合金線材の性能を向上させることができる。しかし、酸化セリウムの含有量が1.5wt%を超えると、前記合金線材を細くすることが難しくなる。
【0023】
前記合金線材において、前記酸化セリウムは、主にタングステン主相(母相)の粒界に分布し、母相の粒内にも少々分布しており、セリウムの酸化物は線状または顆粒串状に分布している。
【0024】
酸化セリウムとタングステンからなる合金線材は、線径が小さいほど引張強度が強くなる。すなわち、酸化セリウムとタングステンからなる合金線材により、線径が小さく、引張強度が高いソーワイヤーや、ケーブルなどを実現することができる。
【0025】
また、前記酸化セリウムは、LSCO等のようなセリウム-金属複合酸化物であってもよい。
さらに、前記タングステン合金は、微量の炭化物、他の希少元素、金属、非金属元素を含んでもよく、例えば、前記炭化物はTiC、ZrCを含み、前記他の希少元素はレニウム等を含み、前記非金属元素はC等を含み、前記金属元素はカリウム、モリブデン、鉄、コバルト等を含む。
カリウムの含有量は80ppm以下とし、適量のカリウムを添加すれば、素材の高温特性を向上させることができ、しかし、多すぎると加工性に影響を与え、クラックや断線の原因となる。
【0026】
前記合金線材の引張強度は、3800MPa以上であり、4200MPa以上、さらに4800MPaまたは5000MPa以上であってもよい。
また、合金線材の弾性極限強度は、2500MPa以上であり、例えば、前記合金線材の弾性極限強度は、2700MPa以上であってもよく、3000MPa、さらに3200MPa以上であってもよい。
【0027】
前記合金線材の線径は、100μm以下である。例えば、合金線材の線径は、100μm、80μm、さらに60μm、40μm、25μm、20μm、10μm等である。前記合金線材は、均質であってもよく、完全に均質でなくてもよく、また、部位によって、例えば1%や数%の差を有してもよい。
特に、前記合金線材の線径は60μm以下とすることができ、これにより、合金線材が柔軟性を有し、容易に十分に曲げられるため、容易に合金線材を巻き取ることができる。
よって、前記合金線材のプッシュプル芯の線径は350μm以下に達することができ、例えば、230μm、200μm、180μm、160μm、130μmなどである。前記合金線材はプッシュプルタフネスに優れていることがわかる。
具体的に、前記合金線材の線径は100μm以下であり、前記合金線材の引張強度は3800MPa以上である。
前記合金線材の線径は60μm以下であり、前記合金線材の引張強度は4200MPa以上であり、前記合金線材の弾性極限強度は2500MPa以上であり、前記合金線材のプッシュプル芯の線径は350μm以下、さらに180μm以下である。
前記合金線材の線径は40μm以下であり、前記合金線材の引張強度は4800MPa以上であり、前記合金線材の弾性極限強度は2700MPa以上であり、前記合金線材のプッシュプル芯の線径は350μm以下、さらに200μm以下である。
前記合金線材の線径は25μm以下であり、前記合金線材の引張強度は5000MPa以上であり、前記合金線材の弾性極限強度は3000MPa以上であり、前記合金線材のプッシュプル芯の線径は350μm以下、さらに250μm以下である。
【0028】
本発明は、合金線材の製造方法を提供する。
前記製造方法は、粉末ドーピング工程、プレス工程、焼結工程、分塊圧延工程、加圧処理工程を含む。
前記粉末ドーピング工程は、処理プロセスに基づき分類され、固液法、液液法、固固法などを含む。
【0029】
具体的には、固液法に従う前記粉末ドーピング工程は、以下の工程を含む。
固液ドーピング工程、還元工程、製粉工程。
前記固液ドーピング工程において、適量の可溶性の希土類塩溶液をタングステン粉末にドーピングし、十分に撹拌した後に、段階的に加熱・乾燥させる。
前記段階的な加熱乾燥では、まず低温、次に高温で乾燥する。例えば、100℃以下で乾燥することで、希土類塩粒子がゆっくり析出し、結晶核の数が増え、その後、100℃以上の温度で乾燥することで、粒子数の多い希土類塩粒子が合体・成長する時間がないため、粒径を大幅に微細化することができる。
前記段階的な乾燥は、少なくとも2つの温度段階を含み、前記2つの温度段階は100℃を境とし、最初に100℃以下で加熱・乾燥し、次に100℃以上で加熱・乾燥する。例えば、最初に60℃~80℃で2時間~6時間加熱・乾燥し、次に110℃~150℃で3時間~5時間加熱・乾燥する。
100℃で分けられたこの2つの温度段階のそれぞれにおいて、さらに複数の温度レベルまたは温度段階で加熱乾燥をしてもよい。例えば、60℃で2時間乾燥させた後、80℃で2時間乾燥させ、その後120℃まで加熱して乾燥させる。もちろん、上述した実施例は、本発明を実施するための実施形態に過ぎず、当業者は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、さらに温度段階の調整や変更をしてもよく、これらは本発明の保護範囲に属する。
さらに例えば、適量の硝酸希土類溶液を青色タングステン粉末に均一に混合し、十分に撹拌した後、60℃~80℃で2時間~6時間加熱し、さらに110℃~150℃で3時間~5時間加熱する。
【0030】
具体的には、液液法に従う前記粉末ドーピング工程は、以下の工程を含む。
液液ドーピング工程、還元工程、製粉工程。
前記液液ドーピング工程において、タングステン酸および/またはタングステン酸塩の溶液に、可溶性希土類塩の溶液をドーピングし、後に希土類塩がドーピングされたタングステン粉末を得るのに使われる。
例えば、メタタングステン酸アンモニウム溶液と希土類塩溶液を原料として液液ドーピングを行い、希土類塩がドーピングされた青色タングステン粉末が得られる。
【0031】
具体的には、固固法に従う前記粉末ドーピング工程は、以下の工程を含む。
固固ドーピング工程。
前記固固ドーピング工程において、フィッシャー粒子サイズが1.0μm~4.0μmのタングステン粉末と粒度分布D90<2.0μmの希土類酸化物を原料として、固固ドーピング混合を行い、希土類酸化物がドーピングされたタングステン粉末が得られる。
さらに、酸化希土類粒子の大きさを確保するために、固固ドーピング工程では、水の沈殿によって粗い粒子を除去して酸化希土類の微粒子を得る。
粗い粒子が速く沈み、細かい粒子が遅く沈む特徴を利用し、沈殿時間30~120分の3段階の沈殿により、D90<2μmの希土類酸化物が得られる。
【0032】
また、還元工程、製粉工程などについて、以下の実施例が好ましいが、以下の実施例に限られない。即ち、
還元工程:固液法および/または液液法でドーピングされた材料は、4温度領域の還元炉で、一回で合金粉末に還元される。
製粉工程:還元後に得られた合金粉を混合し、混合後に平均フィッシャー粒子サイズが1.0~4.0μmの合金粉を粉末混合機に投入する。粉末を6~10rpmの速度で60~90分間混ぜる。
粉末プレス:平均フィッシャー粒子サイズが1.0μm~4.0μmの粉末を160MPa~260MPaの圧力で単重1.5kg~5.0kgのビレットに等方圧プレスし、水素雰囲気の下で予備焼結する。前記予備焼結の温度は、ビレットの強度を高めるために1200~1400℃が好ましい。
焼結:焼結を行い、前記焼結温度は好ましくは1800~2400℃で、焼結時間は好ましくは5~15時間で、密度が17.5~18.5g/cmの焼結ビレットが得られる。
分塊圧延:多ロール圧延機を用いて加熱温度1600~1700℃で連続圧延し、直径15mm~25mmの焼結ビレットバーを8.0mm~12.0mmの合金棒に切り出す。
前記多ロール圧延機を用いることにより、圧延したタングステン棒において、希土類酸化物粒子のワイヤー材の長手方向に沿った長さと顆粒横断面の粒径との比が5より大きいことが保証される。
加圧加工:多ロール圧延機で圧延された後、回転鍛造が複数回繰り返された後に、異なるサイズの伸線ダイスで伸線し、伸線を繰り返すことにより異なる直径の合金線材が作られる。
次に、作られた合金線材に対して、1000℃以下の低温応力除去アニール工程を行ってもよく、これにより、応力分布を均一化し、真直度を向上させる。この工程は、加熱炉または他の装置内で行ってもよく、具体的に、前記合金線材は、水素の保護の下で低温応力除去アニール工程を行ってもよい。
更に、伸線した線材を電解研磨し、洗浄して表面を滑らかにしてもよい。前記電解研磨工程では、例えば、電解液に前記合金線材と炭素棒等の対向電極を含浸させ、合金線材と対向電極との間に通電することなどにより行われる。
【0033】
本発明は、従来のタングステン合金線材と比較して、以下のような特徴と利点がある。
第一、本発明のドーピング工程で固液ドーピングを行う場合、乾燥の際に最初に低温(100℃以下)で乾燥し、次に高温(100℃以上)で乾燥するという段階的な乾燥が行われる。先に硝酸希土類粒子をゆっくりと析出させ、結晶核の数が多くなるようにし、次に粒子数の多い硝酸希土類粒子が合体して成長する時間がないようにする。この乾燥方法により粒径を大幅に微細化することができる。ドーピングの乾燥温度を調整することにより、硝酸希土類の核生成と析出速度を制御することで、青色タングステン粒子にドーピングされた硝酸希土類結晶をより小さくすることができる。
固固ドーピングの際に、粗い粒子は水の沈殿で除去し、粗い粒子の速い沈殿と細かい粒子の遅い沈殿を利用して、沈殿時間30~120分の3段階の沈殿でD90<2μmの希土類酸化物が得られる。
その結果、本発明によって作られたタングステン粉末粒子の表面にある希土類酸化物の粒径、および焼結ビレットの表面にある希土類酸化物の粒径は、共に従来の方法より小さく、希土類酸化物の粒径は2.5μm以下であり、より均一に分布されており、より安定した製品性能を得ることができる。
【0034】
第二、本発明は、多ロール圧延により焼結ビレットの分塊圧延を行い、合金材料に対して、2.5メートル/秒(m/s)以上の速度と大きな変形量での変形処理を行う。従来は、タングステン棒やワイヤーについて、回転鍛造して分塊圧延を行うが、回転鍛造による激しい径方向加工によって、希土類分散粒子が断裂し、分散粒子がタングステン基材のギャップにホールが形成されてしまう。このような加工方法により、後の材料応力集中や、欠陥が生じ、後の加工が困難になる。本発明では、複数のロール(3つ/4つ)を用い、合金材料は分塊圧延時に基材の繊維組織がより発達し、長手方向の変形の速度が速くなり、その結果、希土類酸化物分散粒子が細くなる変形が大きくなり、粒子の横断面サイズが小さくなり、軸方向のサイズは長くなるため、タングステン基材と分散粒子は分塊圧延後に良好な可塑性と靭性を有し、後に連続鍛造時に分散粒子がさらに繊維状の強化組織になり、タングステン・ワイヤーの強度と靭性が向上する。
【0035】
好ましい実施例として、本発明は以下の合金線材製造方法を提供する。
前記製造方法は、粉末ドーピング工程、プレス工程、焼結工程、分塊圧延工程、加圧処理工程を含む。
前記粉末ドーピング工程は、処理プロセスに基づき分類され、固液法、液液法、固固法などを含む。
【0036】
具体的には、固液法に従う前記粉末ドーピング工程は、以下の工程を含む。
固液ドーピング工程、還元工程、製粉工程。
前記固液ドーピング工程において、適量の可溶性のセリウム塩溶液をタングステン粉末にドーピングし、十分に撹拌した後に、段階的に加熱・乾燥させる。
前記段階的な加熱・乾燥では、まず低温、次に高温で乾燥する。例えば、100℃以下で乾燥することで、セリウム塩粒子がゆっくり析出し、結晶核の数が増え、その後、100℃以上の温度で乾燥することで、粒子数の多いセリウム塩粒子が合体・成長する時間がないため、粒径を大幅に微細化することができる。
前記段階的な乾燥は、少なくとも2つの温度段階を含み、前記2つの温度段階は100℃を境とし、最初に100℃以下で加熱・乾燥し、次に100℃以上で加熱・乾燥する。例えば、最初に60℃~80℃で2時間~6時間加熱・乾燥し、次に110℃~150℃で3時間~5時間加熱・乾燥する。
100℃で分けられたこの2つの温度段階のそれぞれにおいて、さらに複数の温度レベルまたは温度段階で加熱乾燥をしてもよい。例えば、60℃で2時間乾燥させた後、80℃で2時間乾燥させ、その後120℃まで加熱して乾燥させる。もちろん、上述した実施例は、本発明を実施するための実施形態に過ぎず、当業者は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、さらに温度段階の調整や変更をしてもよく、これらは本発明の保護範囲に属する。
さらに例えば、適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一に混合し、十分に撹拌した後、60℃~80℃で2時間~6時間加熱し、さらに110℃~150℃で3時間~5時間加熱する。
【0037】
具体的には、液液法に従う前記粉末ドーピング工程は、以下の工程を含む。
液液ドーピング工程、還元工程、製粉工程。
前記液液ドーピング工程において、タングステン酸および/またはタングステン酸塩の溶液に、可溶性セリウム塩の溶液をドーピングし、後にセリウム塩がドーピングされたタングステン粉末を得るのに使われる。
例えば、メタタングステン酸アンモニウム溶液とセリウム塩溶液を原料として液液ドーピングを行い、セリウム塩がドーピングされた青色タングステン粉末が得られる。
【0038】
具体的には、固固法に従う前記粉末ドーピング工程は、以下の工程を含む。
固固ドーピング工程。
前記固固ドーピング工程において、フィッシャー粒子サイズが1.0μm~4.0μmのタングステン粉末と粒度分布D90<2.0μmのセリウム酸化物を原料として、固固ドーピング混合を行い、セリウム酸化物がドーピングされたタングステン粉末が得られる。
さらに、酸化セリウム粒子の大きさを確保するために、固固ドーピング工程では、水の沈殿によって粗い粒子を除去して酸化セリウムの微粒子を得る。
粗い粒子が速く沈み、細かい粒子が遅く沈む特徴を利用し、沈殿時間30~120分の3段階の沈殿により、D90<2μmのセリウム酸化物が得られる。
【0039】
また、還元工程、製粉工程などについて、以下の実施例が好ましいが、以下の実施例に限られない。即ち、
還元工程:固液法および/または液液法でドーピングされた材料は、4温度領域の還元炉で、一回で合金粉末に還元される。
製粉工程:還元後に得られた合金粉を混合し、混合後に平均フィッシャー粒子サイズが1.0~4.0μmの合金粉を粉末混合機に投入する。粉末を6~10rpmの速度で60~90分間混ぜる。
粉末プレス:平均フィッシャー粒子サイズが1.0μm~4.0μmの粉末を160MPa~260MPaの圧力で単重1.5kg~5.0kgのビレットに等方圧プレスし、水素雰囲気の下で予備焼結する。前記予備焼結の温度は、ビレットの強度を高めるために1200~1400℃が好ましい。
焼結:焼結を行い、前記焼結温度は好ましくは1800~2400℃で、焼結時間は好ましくは5~15時間で、密度が17.5~18.5g/cmの焼結ビレットが得られる。
分塊圧延:多ロール圧延機を用いて加熱温度1600~1700℃で連続圧延し、直径15mm~25mmの焼結ビレットバーを8.0mm~12.0mmの合金棒に切り出す。
前記多ロール圧延機を用いることにより、圧延したタングステン棒において、セリウム酸化物粒子のワイヤー材の長手方向に沿った長さと顆粒横断面の粒径との比が5より大きいことが保証される。
加圧加工:多ロール圧延機で圧延された後、回転鍛造が複数回繰り返された後に、異なるサイズの伸線ダイスで伸線し、伸線を繰り返すことにより異なる直径の合金線材が作られる。
次に、作られた合金線材に対して、1000℃以下の低温応力除去アニール工程を行ってもよく、これにより、応力分布を均一化し、真直度を向上させる。この工程は、加熱炉または他の装置内で行ってもよく、具体的に、前記合金線材は、水素の保護の下で低温応力除去アニール工程を行ってもよい。
更に、伸線した線材を電解研磨し、洗浄して表面を滑らかにしてもよい。前記電解研磨工程では、例えば、電解液に前記合金線材と炭素棒等の対向電極を含浸させ、合金線材と対向電極との間に通電することなどにより行われる。
【0040】
本発明は、従来のタングステン合金線材と比較して、以下のような特徴と利点がある。
第一、本発明のドーピング工程で固液ドーピングを行う場合、乾燥の際に最初に低温(100℃以下)で乾燥し、次に高温(100℃以上)で乾燥するという段階的な乾燥が行われる。先に硝酸セリウム粒子をゆっくりと析出させ、結晶核の数が多くなるようにし、次に粒子数の多い硝酸セリウム粒子が合体して成長する時間がないようにする。この乾燥方法により粒径を大幅に微細化することができる。ドーピングの乾燥温度を調整することにより、硝酸セリウムの核生成と析出速度を制御することで、青色タングステン粒子にドーピングされた硝酸セリウム結晶をより小さくすることができる。
固固ドーピングの際に、粗い粒子は水の沈殿で除去し、粗い粒子の速い沈殿と細かい粒子の遅い沈殿を利用して、沈殿時間30~120分の3段階の沈殿でD90<2μmのセリウム酸化物が得られる。
その結果、本発明によって作られたタングステン粉末粒子の表面にあるセリウム酸化物の粒径、および焼結ビレットの表面にあるセリウム酸化物の粒径は、共に従来の方法より小さく、セリウム酸化物の粒径は2.5μm以下であり、より均一に分布されており、より安定した製品性能を得ることができる。
【0041】
第二、本発明は、多ロール圧延により焼結ビレットの分塊圧延を行い、合金材料に対して、2.5メートル/秒以上の速度と大きな変形量での変形処理を行う。従来は、タングステン棒やワイヤーについて、回転鍛造して分塊圧延を行うが、回転鍛造による激しい径方向加工によって、セリウム分散粒子が断裂し、分散粒子がタングステン基材のギャップにホールが形成されてしまう。このような加工方法により、後の材料応力集中や、欠陥が生じ、後の加工が困難になる。本発明では、複数のロール(3つ/4つ)を用い、合金材料は分塊圧延時に基材の繊維組織がより発達し、長手方向の変形の速度が速くなり、その結果、セリウム酸化物分散粒子が細くなる変形が大きくなり、粒子の横断面サイズが小さくなり、軸方向のサイズは長くなるため、タングステン基材と分散粒子は分塊圧延後に良好な可塑性と靭性を有し、後に連続鍛造時に分散粒子がさらに繊維状の強化組織になり、タングステン・ワイヤーの強度と靭性が向上する。
【0042】
本発明は、以下の実施例および比較例を提供する。
【0043】
実施例1.1
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0044】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0045】
実施例1.2
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが0.25wt%であり、Wが99.75wt%である。
【0046】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0047】
実施例1.3
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1.2wt%であり、Wが98.8wt%である。
【0048】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0049】
実施例1.4
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1.5wt%であり、Wが98.5wt%である。
【0050】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0051】
実施例1.5
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Kが50ppmであり、他の成分がWである。
【0052】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液をカリウム含有量50ppmのカリウムドープタングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0053】
実施例1.6
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Laが0.2wt%であり、Wが98.8wt%である。
【0054】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液、硝酸ランタン溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0055】
比較例1.1
以下の比較例は、従来の方法で製造されたタングステン合金線材で、材料組成は実施例1と同じで、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0056】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、120℃の温度で4時間、蒸気乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:複数回の回転鍛造を用いて直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:複数回の回転鍛造と異なるサイズの伸線ダイスによって行われる伸線加工により、伸線を何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材が製造される。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0057】
比較例1.2
以下の比較例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0058】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、120℃の温度で4時間、蒸気乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0059】
比較例1.3
以下の比較例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0060】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:複数回の回転鍛造を用いて直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:複数回の回転鍛造と異なるサイズの伸線ダイスによって行われる伸線加工により、伸線を何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材が製造される。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0061】
比較例1.4
以下の比較例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが0.05wt%であり、Wが99.95wt%である。
【0062】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結により、密度18.10g/cmの焼結ビレットが得られる。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0063】
比較例1.5
以下の比較例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1.6wt%であり、Wが98.4wt%である。
【0064】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸セリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0065】
実施例2.1
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0066】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、固固ドーピング:酸化セリウムの粉末を水溶液に入れて5分間攪拌した後、上層の溶液を二次シンクに流し込み、さらに5分間攪拌し、10分間置いて沈殿させた後、上層の水溶液を三次シンクに流し込み、さらに5分間撹拌し、30分間置いて沈殿させ、上層の溶液を四次シンクに流し込んで24時間置いて沈殿させた後に、溶液をろ過して100度まで24時間加熱し、D90<2.0μmの酸化セリウム粉末が得られる。平均粒径2.0μmのタングステン粉末は、水沈殿処理を施したD90<2.0μmの適量の酸化セリウム粉末と共に、粉末混合装置で均質化混合が60分間行われる。
ステップ2、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ3、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ4、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ5、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0067】
比較例2.1
以下の比較例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0068】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、固固ドーピング:平均粒径2.0μmのタングステン粉末は、適量の酸化セリウム粉末と共に、粉末混合装置で均質化混合が60分間行われる。
ステップ2、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ3、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ4、分塊圧延:複数回の回転鍛造を用いて直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ5、加圧加工:複数回の回転鍛造と異なるサイズの伸線ダイスによって行われる伸線加工により、伸線を何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材が製造される。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0069】
比較例2.2
以下の比較例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0070】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、固固ドーピング:平均粒径2.0μmのタングステン粉末は、適量の酸化セリウム粉末と共に、粉末混合装置で均質化混合が60分間行われる。
ステップ2、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ3、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ4、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ5、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0071】
比較例2.3
以下の比較例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、CeOが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0072】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、固固ドーピング:適量の酸化セリウムの粉末を水溶液に入れて5分間攪拌した後、上層の溶液を二次シンクに流し込み、さらに5分間攪拌し、10分間置いて沈殿させた後、上層の水溶液を三次シンクに流し込み、さらに5分間撹拌し、30分間置いて沈殿させ、上層の溶液を四次シンクに流し込んで24時間沈殿させた後に、溶液をろ過して100度まで24時間加熱し、D90<2.0μmの酸化セリウム粉末が得られる。平均粒径2.0μmのタングステン粉末は、水沈殿処理を施したD90<2.0μmの適量の酸化セリウム粉末と共に、粉末混合装置で均質化混合が60分間行われる。
ステップ2、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ3、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ4、分塊圧延:複数回の回転鍛造を用いて直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ5、加圧加工:複数回の回転鍛造と異なるサイズの伸線ダイスによって行われる伸線加工により、伸線を何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材が製造される。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0073】
実施例3
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、Laが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0074】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸ランタン溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0075】
実施例4
以下の実施例では、本発明に従い、高強度・高耐力タングステン合金線材を製造し、材料の組成は、Yが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0076】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:適量の硝酸イットリウム溶液を青色タングステン粉末に均一にドーピングし、十分に撹拌した後に、最初に低温の80℃で4時間乾燥し、その後120℃で乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料を4温度区域の還元炉へ入れ、ドーピングされた粉末を、適切な粒度を有する合金粉に一回に還元する。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、異なる粒度の組成を有する粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:高温焼結を行い、密度18.10g/cmの焼結ビレットを得る。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0077】
比較例3
本比較例は、レニウム-タングステン合金線材の製造であり、材料の組成は、Reが1wt%であり、Wが99wt%である。
【0078】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、ドーピング:前記重量割合に従ってタングステン粉とレニウム酸アンモニウムを秤量し、ドーパントポットに適量の脱イオン水と秤量したレニウム酸アンモニウムを添加し、十分に溶解させ、次に秤量したタングステン粉を添加し、固液混合の撹拌をし、最後に120℃の温度で4時間乾燥する。
ステップ2、還元:ステップ1で得られた材料は還元炉に投入され、4温度区域の還元炉でタングステン・レニウム合金粉に一回に還元される。その主な構成元素はレニウムが1.000wt%である。
ステップ3、混合:ステップ2で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ4、粉末プレス:等方圧法で、ステップ3で得られた粉末を、200MPaの圧力で単重3.0kgのビレットにプレスし、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結し、ビレットの強度を高める。
ステップ5、高温焼結:ステップ4で得られた予備焼結されたビレットを高温焼結することにより、密度18.2g/cmの焼結ビレットが得られる。
ステップ6、分塊圧延:多ロール圧延機を用いて1650℃の加熱温度で直径23.0mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ7、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0079】
比較例4
本比較例は、従来の純タングステン線の製造である。
【0080】
製造工程は以下の通りである。
ステップ1、還元:パラタングステン酸アンモニウムは還元炉に投入され、4温度区域の還元炉で青色酸化タングステン粉末に還元され、その後、2回目の還元により純粋なタングステン粉末に還元される。
ステップ2、混合:ステップ1で得られた材料を、異なる粒度の組成に応じてミキサーに投入し、粉末を8rpmで80分間混ぜる。
ステップ3、粉末プレス:等方圧法で、ステップ2で得られた粉末を160MPaの圧力で単重3.0kg、20mm径のビレットにプレスし、ビレットの強度を高めるため、水素雰囲気でビレットに対して低温で予備焼結する。
ステップ4、高温焼結:ステップ3で得られた予備焼結されたビレットを高温焼結することにより、密度17.6g/cm、17.5mm径の焼結ビレットが得られる。
ステップ5、分塊圧延:三本ローラーミルを用いて1600℃の加熱温度で直径17.5mmの焼結ビレットを8.0mmの合金棒に連続圧延する。
ステップ6、加圧加工:回転鍛造を複数回繰り返す。次に、異なるサイズの伸線ダイスにより伸線加工を行い、これを何度か繰り返すことで異なる直径を有する合金線材を作る。
また、複数回の伸線加工をスムーズに行うように、タングステン・ワイヤーに対してアニール処理を行い、塑性変形による残留応力を除去する。
【0081】
なお、上記実施例における具体的なパラメータやよく使われる試薬は、本発明の具体的な実施例または好ましい実施例であり、本発明はこれらの実施例に限定されない。当業者は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適切に変更や修正を行ってもよい。
【0082】
実施例1.1、2.1および比較例1.1、2.1で得られたタングステン粉末の表面および焼結ビレットにおけるCeO粒子の粒径を電子顕微鏡で測定し分析し、その結果は表1に示される。
【表1】
表1の試験結果によると、本発明の加工方法は、合金タングステン材料中のCeOの粒径を効果的に微細化することができる。
【0083】
実施例1.1と比較例1.1~1.3、比較例2.1~2.3で得られた異なる仕様の結果物、即ち、ビレット、8.0mm、5.0mm、1.0mm、0.4mmの棒材と線材におけるCeOの粒径を、電子顕微鏡で測定して分析し、その結果は表2に示される。
【表2】
表2の試験結果によると、本発明の加工方法で製造された合金ビレットおよび線材の表面の酸化物粒子の粒径は、比較例1.1~1.3および比較例2.1~2.3の加工方法で製造された合金ビレットおよび線材の酸化物粒子の粒径よりはるかに小さいことが分かる。
【0084】
実施例と比較例で得られた異なる仕様の線材、即ち、0.1mm、0.06mm、0.04mm、0.025mmの線材に対して、以下の方法で引張強度、弾性極限強度、プッシュプルタフネスを測定した。
【0085】
前記引張強度試験方法:標準的な引張試験機を用いて、200mmのタングステン・ワイヤーをクランプし、一方の端部に定速で負荷をかけて、引張強度データと弾性限界強度が得られる。
前記引張強度は、以下の式(1)から求める。
σ=F/S ……(1)
Fは剥離力であり、単位がNであり、Sは元の断面積であり、単位がmmである。
【0086】
前記プッシュプルタフネスの測定方法:まっすぐに伸ばした芯線にタングステン線を1周巻き付け、そして、サンプル・トレイに逆方向の力(8g以上)を加え、モーターで巻き取りディスクを制御して、高速巻き取りを行う。タングステン線が芯線に巻かれながら移動し、芯線の直径が小さければ小さいほど、タングステン線が高速で通過した時に破れなければ、強靭さがより優れていることが分かる。好ましくは、100μmのタングステン線、逆方向力が50gであり、40μmのタングステン線、逆方向力が12gであり、25μmのタングステン線、逆方向力が8gである。前記プッシュプル測定装置は図1に示され、その試験と分析結果は表3に示される。
【表3】
なお、表3では、「/」は、該当試験を実施しなかったことを意味する。
表3の試験結果から以下のことが分かる。
本発明により製造された各仕様の線材の引張強度および弾性限界強度は、従来のタングステン線よりはるかに高く、レニウム-タングステン合金線材よりも高い。同じプッシュプルタフネスの場合、本発明の加工方法で製造されたタングステン線材は、レニウム-タングステン線材及び従来の方法で製造されたタングステン線材より、はるかに優れた引張強度とプッシュプルタフネスとの総合性能を有する。
比較例3で製造されたタングステン合金線材は、引張強度が4500MPa以上に達しているが、プッシュプル特性は悪く、本発明の線材に比べて、靭性がはるかに低い。よって、本発明の加工方法では、セリウム酸化物などの物質を加え、処理工程を設けることから、より細く、より高強度、より優れた靭性を持つ合金線材を大量に生産することができる。
【0087】
【表4】
なお、表4では、「\」は、線材の仕様でこれ以上細く加工することができないことを意味する。
表4の試験結果から以下のことが分かる。
本発明の固液ドーピングとロール圧延の分塊圧延方法は、すべての仕様の合金線材の引張強度、弾性極限強度、プッシュプルタフネスを効果的に向上させることができ、同時に、より細くて、より高強度で、より高靭性の合金線材を製造するのに適している。
【0088】
【表5】
なお、表5では、「\」は、線材の仕様でこれ以上細く加工することができないことを意味する。
表5の試験結果から以下のことが分かる。
本発明の固固ドーピングとロール圧延の分塊圧延方法は、すべての仕様の合金線材の引張強度、弾性極限強度、プッシュプルタフネスを効果的に向上させることができ、同時に、より細くて、より高強度で、より高靭性の合金線材を製造するのに適している。
【0089】
よって、本発明の合金線材は、酸化セリウム、希土類元素や希土類酸化物などを添加することにより、より優れた性能を有する合金線材が得られる。また、加工方法を更に最適化することにより、より細く、より高強度で、より優れた靭性を持つ合金線材を大量に製造することができる。
【0090】
本発明の合金線材又は本発明の製造方法により製造された合金線材は、タングステン線が利用された切断加工分野、例えば、ワイヤーのソーイング、ワイヤーを縦糸と横糸に織り込んで金網を製造するなどに用いることができる。
前記ワイヤーのソーイングは、例えば、シリコンウェハ、磁性材料、半導体材料などの硬質表面材料などの様々な材料の切断に用いることができ、半導体材料は、サファイア、炭化ケイ素などの材料を含み、或いは、関連する切断装置を用い併せた切断を行う。その優れた性能を切断に適用することにより、切断品質と切断効率を効果的に向上させることができる。前記金属メッシュは、スクリーン印刷、検査用プローブ、カテーテル用ワイヤーなどに用いることができる。
【0091】
なお、本発明の合金線材を切断分野で実際に応用する際に、前記合金線材をバスバーとして用い、それにダイヤモンドなどの粒子を電気メッキやロウ付けし、シリコンウェハ、サファイア、炭化ケイ素などの第3世代半導体材料、磁性材料などの硬質表面の材料の切断加工に用いる。
【0092】
スクリーン印刷は、プリント基板、厚膜集積回路、太陽電池、抵抗器、コンデンサー、圧電部品、感光部品、熱部品、液晶ディスプレイ部品などの製造に広く用いられている。本発明の合金線材で形成された金属メッシュは、同様にスクリーン印刷に用いることができ、ステンレス鋼線の代わりに使われ、例えば、18μm以下の小型スクリーン等の代わりに使われる。
【0093】
さらに、本発明の合金線材は、高い引張強度、弾性極限強度、プッシュプルタフネス、良好な電気伝導性および機械的特性を有するので、前記合金線材は、医療/工業精密機器のケーブル/コードの分野、例えば、様々な機械装置におけるケーブル/コードに適用することができる。これらのケーブルは最高の強度と最長の寿命を有し、例えば、低侵襲手術器具や多関節システムなどにおいて、高負荷や曲げ荷重に耐えられる。
【0094】
単結晶、多結晶シリコン炉の昇降装置は、スチール・ワイヤーロープが使われている。単結晶、多結晶シリコン炉の昇降重量の増加に伴い、単結晶炉に用いられるスチール・ワイヤーロープの外径も1.8mmから4.5mmに増加している。しかし、鋼線の切断にかかる負荷の30%以下を目標としている前提で、単結晶シリコンの純度と寿命を高めるため、単結晶・多結晶シリコンの炉に「磁場」を埋め込むため、従来はスチール・ワイヤーロープが用いられている。しかし、スチール・ワイヤーロープは磁場中に適用できず、できた単結晶棒の結晶向きが平行でなくなることを招いてしまう。また、スチール・ワイヤーロープは鉄成分が多く、炭素の含有量が多いため、単結晶シリコンの主な不純物が基準値を超えてしまい、高純度の指標に大きく影響する。また、単結晶棒の品質が向上することにつれて、単結晶、多結晶シリコン炉内1500℃で、ロープの引張強度と寿命がますます高く要求されている。
【0095】
上記のように、本発明の合金線材は、高強度、高張力、非磁性、高温耐性、優れた垂直性などの「リフティングシステム」におけるロープの技術的要件を良く満たしており、製錬や鋳造、単結晶炉などの製錬産業、例えば、高温炉の牽引用ロープ等に用いることができる。
【0096】
また、優れた柔軟性と耐摩耗性、そして優れた引張強度と耐疲労性により、前記合金線材は、最新の手術用ロボットに使われるマイクロ・メカニカル・フィラメントを製造するための材料として用いることができる。
【0097】
また、上記の合金線材を、人間の腕、肘、手首の動きを駆動するのに用いることができ、例えば、タングステン合金線材を用いて外科医者の骨格筋を動かし、従来のように医者が自らの体で動かすのではない。これにより、ロボットで医者の負担を軽減でき、医者は複数の手術を行っても疲労や疲れが少ない。
【0098】
さらに、医療用ロボットや医療機器においてワイヤーロープにかかる負荷がますます増大することにつれ、その構造の最適化と改良も進行している。従来はよく使われる1×7、7×7、7×19の構造は、既により精密で複雑な撚り線ロープ(例えば、7×37、19×19、19×37)に置き換えられ、従来より引張強度が向上され、さらに、高い弾性率と優れた柔軟性も備えており、現在の手術器具に求められるより厳しい応用条件を満たしている。更に、直径0.5ミリメートルの19×37構造のワイヤーロープを製造するためには、直径0.0005インチ=12.7μmのフィラメントが必要となり、このような細さは肉眼でほとんど見えない。
【0099】
また、本発明の合金線材は薄くて軽く、高強度、強靭さ等の特性を有するため、紡織等の技術分野にも適用することができ、例えば、耐切創性保護手袋、保護服などがある。合金線材を耐切創性安全装備に応用する際に大きなメリットがある。従来技術において、タングステン線や糸を直接手袋に織り込む際によく使われるサイズは、18.5μm、30μm、40μmであることに対し、本発明の合金線材は、より細い仕様に加工することができ、最も細いのは、3μmに達する。これにより、製品は、より優れた柔らかさを有し、より軽くて薄く、保護レベルを高めながら、より柔軟でフレキシブルな装着感を実現し、さまざまな職業の安全保護に適している。更に、高強度の細いタングステン線はステンレス線の2倍以上の強度を有し、良好な設計により耐切創性を2段階以上向上させることができ、米国規格のA6~A9レベル、欧州規格のFレベルに相当する高い保護性能を実現できる。
【0100】
本発明が提供した合金線材は、直径、引張強度、靭性の点のいずれにおいても、係る要件を満たしている。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明の技術的思想に属する様々な実施例は本発明の保護範囲に属する。当業者は、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、以上の実施例に対して行った変更または修正は、本発明の保護範囲に属する。
図1