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特許7419423繰り返し屈曲デバイス用粘着剤、粘着シート、繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】繰り返し屈曲デバイス用粘着剤、粘着シート、繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20240115BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240115BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022056192
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2017220925の分割
【原出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2022087156
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141453(JP,A)
【文献】特開2017-036395(JP,A)
【文献】特開2017-110049(JP,A)
【文献】特開2017-179230(JP,A)
【文献】特開2011-236298(JP,A)
【文献】特開2011-168786(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0114687(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0041369(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、
ポリロタキサン化合物を含有するアクリル系粘着剤であり、
100%モジュラスが、0.016N/mm以上、0.1N/mm以下である
ことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、前記ポリロタキサン化合物(C)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【請求項3】
-20℃における貯蔵弾性率G’(-20)が、0.01MPa以上、1.8MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【請求項4】
50℃における貯蔵弾性率G’(50)が、0.001MPa以上、0.5MPa以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【請求項5】
引張試験による破断伸度が、500%以上、4000%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【請求項6】
引張試験による破断応力が、0.2N/mm以上、5N/mm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【請求項7】
ゲル分率が、35%以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【請求項8】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層が、請求項1に記載の繰り返し屈曲デバイス用粘着剤からなる
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項9】
前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材および他の屈曲性部材と、
前記一の屈曲性部材と前記他の屈曲性部材とを互いに貼合する粘着剤層と
を備えた繰り返し屈曲積層部材であって、
前記粘着剤層が、請求項8または9に記載の粘着シートの粘着剤層である
ことを特徴とする繰り返し屈曲積層部材。
【請求項11】
前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材の少なくとも一方が、表示素子であることを特徴とする請求項10に記載の繰り返し屈曲積層部材。
【請求項12】
請求項10または11に記載の繰り返し屈曲積層部材を備えたことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス。
【請求項13】
繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、
ポリロタキサン化合物を含有するアクリル系粘着剤であり、
引張試験による破断伸度が、800%以上であり、
引張試験による破断応力が、0.3N/mm以上であり、
100%モジュラスが、0.016N/mm以上、0.1N/mm以下である
ことを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し屈曲されるデバイス用の粘着剤および粘着シート、ならびに繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デバイスの一種である、電子機器の表示体(ディスプレイ)として、屈曲可能なディスプレイが提案されている。かかる屈曲性ディスプレイは、例えば、湾曲させて円柱状の柱に設置するような据え置き型ディスプレイ用として、あるいは折り曲げたり丸めたりして持ち運べるモバイルディスプレイ用として、幅広い用途が期待されている。
【0003】
屈曲性ディスプレイの種類としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0004】
上記のような屈曲性ディスプレイにおいては、当該屈曲性ディスプレイを構成する一の屈曲可能な部材(屈曲性部材)と、他の屈曲性部材とを粘着シートの粘着剤層によって貼合することが一般的であると考えられる。ここで、屈曲不可能な従来のディスプレイ用の粘着シートとしては、例えば、特許文献1及び2に示されるものが知られている。
【0005】
屈曲性ディスプレイは、1回だけ曲面成形するのではなく、特許文献3に記載されているように、繰り返し屈曲させる(折り曲げる)場合がある。このような用途の繰り返し屈曲デバイスに従来の粘着シートを使用すると、外力を解放した後でも、屈曲性ディスプレイが大きく屈曲したままになり、その屈曲状態が固定されてしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-174907号公報
【文献】特開2016-774号公報
【文献】特開2016-2764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題を解決するために、粘着剤の凝集力を小さくして、粘着剤を柔らかい設計にすることが考えられる。しかしながら、その場合には、耐久条件下で屈曲性部材と粘着剤層との間に浮きや剥がれが発生し、耐久性の低下を引き起こしてしまう。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合において、外力を解放した後でも、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態を緩和することができるとともに、耐久性の低下を抑制し得る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤および粘着シート、ならびに繰り返し屈曲させた場合において、外力を解放した後でも、屈曲状態を緩和することができるとともに、耐久性の低下が抑制され得る繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための繰り返し屈曲デバイス用粘着剤であって、ポリロタキサン化合物を含有することを特徴とする繰り返し屈曲デバイス用粘着剤を提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤からなる粘着剤層は、屈曲された後、外力を開放すると、ポリロタキサン化合物が発揮するスライディング効果により、屈曲部にかかる応力を緩和することができる。これにより、当該粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスが屈曲されたときにも、当該粘着剤層は、屈曲部においても柔軟な状態が維持される。よって、当該粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスが繰り返し屈曲されたときにも、上述の効果が発揮されることにより、繰り返し屈曲の外力を解放した後でも、繰り返し屈曲デバイスが大きく屈曲した状態が固定されることが抑制され、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態を効果的に緩和することができる。また、当該粘着剤層は、柔軟な状態を維持することができるため、当該繰り返し屈曲デバイスに追従し易いものとなる。これにより、当該粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲されたときにも、当該繰り返し屈曲デバイスと粘着剤層との界面における浮きや剥がれが効果的に抑制され、耐久性に優れたものとなる。さらに、上記繰り返し屈曲デバイス用粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有することで上記の物性を得ることができるため、粘着剤の凝集力を小さくして、粘着剤を柔らかい設計にする必要がない。したがって、凝集力不足による耐久性の低下を抑制することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、前記ポリロタキサン化合物(C)とを含有する粘着性組成物を架橋してなる粘着剤であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤は、-20℃における貯蔵弾性率G’(-20)が、0.01MPa以上、1.8MPa以下であることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1~3)に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤は、50℃における貯蔵弾性率G’(50)が、0.001MPa以上、0.5MPa以下であることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明1~4)に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤は、100%モジュラスが、0.005N/mm以上、0.1N/mm以下であることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1~5)に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤は、引張試験による破断伸度が、500%以上、4000%以下であることが好ましい(発明6)。
【0016】
上記発明(発明1~6)に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤は、引張試験による破断応力が、0.2N/mm以上、5N/mm以下であることが好ましい(発明7)。
【0017】
第2に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、前記粘着剤層が、前記繰り返し屈曲デバイス用粘着剤(発明1~7)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明8)。
【0018】
上記発明(発明8)においては、前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されていることが好ましい(発明9)。
【0019】
第3に本発明は、繰り返し屈曲されるデバイスを構成する一の屈曲性部材および他の屈曲性部材と、前記一の屈曲性部材と前記他の屈曲性部材とを互いに貼合する粘着剤層とを備えた繰り返し屈曲積層部材であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明8,9)の粘着剤層であることを特徴とする繰り返し屈曲積層部材を提供する(発明10)。
【0020】
上記発明(発明10)においては、前記一の屈曲性部材および前記他の屈曲性部材の少なくとも一方が、表示素子であることが好ましい(発明11)。
【0021】
第4に本発明は、前記繰り返し屈曲積層部材(発明10,11)を備えたことを特徴とする繰り返し屈曲デバイスを提供する(発明12)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る返し屈曲デバイス用粘着剤および粘着シートは、繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合において、外力を解放した後でも、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態を緩和することができるとともに、耐久性の低下を抑制することができる。また、本発明に係る繰り返し屈曲積層部材および繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲させた場合において、外力を解放した後でも、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態を緩和することができるとともに、耐久性の低下が抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る繰り返し屈曲積層部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔繰り返し屈曲デバイス用粘着剤〕
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイス用粘着剤(以下、単に「粘着剤」という場合がある。)は、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤である。繰り返し屈曲デバイスおよび屈曲性部材については、後述する。
【0025】
本実施形態に係る粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有する。ポリロタキサン化合物は、環状分子とそれを貫通する直鎖状分子との機械的結合を有しており、環状分子は直鎖状分子上を自由に移動することが可能となっている。かかる構造に基づくスライディング効果により、当該粘着剤からなる粘着剤層が屈曲されたときに、屈曲部にかかる応力を緩和することができる。これにより、当該粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスが屈曲されたときにも、当該粘着剤層は、屈曲部においても柔軟な状態が維持される。よって、当該粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスが繰り返し屈曲されたときにも、上述の効果が発揮されることにより、繰り返し屈曲の外力を解放した後でも、繰り返し屈曲デバイスが大きく屈曲した状態が固定されることが抑制され、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態を効果的に緩和することができる。この効果を、以下、「繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果」という場合がある。なお、上記繰り返し屈曲の回数としては、一例として3万回が例示される。
【0026】
また、上記粘着剤層は、柔軟な状態を維持することができるため、当該繰り返し屈曲デバイスに追従し易いものとなる。これにより、当該粘着剤層が適用された繰り返し屈曲デバイスは、繰り返し屈曲されたときにも、当該繰り返し屈曲デバイスと粘着剤層との界面における浮きや剥がれが効果的に抑制され、耐久性に優れたものとなる。さらに、本実施形態に係る粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有することで上記の物性を得ることができるため、粘着剤の凝集力を小さくして、粘着剤を柔らかい設計にする必要がない。粘着剤の凝集力を小さくすると、一般的には耐久性が低下するが、本実施形態に係る粘着剤によれば、粘着剤の凝集力を小さくする必要がなく、したがって、耐久性の低下を抑制することができる。以上の作用により、例えば、本実施形態に係る粘着剤からなる粘着剤層を介して2つの屈曲性部材を積層してなる積層体を高温高湿条件下、一例として、85℃、85%RH条件下に72時間置いた場合でも、屈曲性部材と粘着剤層との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される。
【0027】
本実施形態に係る粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、前述した作用効果を発揮し易く、粘着物性、光学特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0028】
本実施形態に係る粘着剤は、特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、ポリロタキサン化合物(C)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果が良好に得られるとともに、良好な粘着力および所定の凝集力が得られるため、耐久性に優れたものとなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0029】
(1)粘着性組成物Pの成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、上限値として、-40℃以下であることが好ましく、特に-42℃以下であることが好ましく、さらには-45℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)の上限値が上記であると、得られる粘着剤の柔軟性を向上させることができる。これにより、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより優れたものとなる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の下限値は、特に限定されないが、-90℃以上であることが好ましく、特に-80℃以上であることが好ましく、さらには-70℃以上であることが好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)の測定方法は、後述の試験例に示す通りである。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子内に反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)とを含有することが好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が-40℃以下であるもの(以下「低Tgアルキルアクリレート」という場合がある。)が好ましい。かかる低Tgアルキルアクリレートを構成モノマー単位として含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を前述した範囲に設定し易くすることができ、得られる粘着剤の柔軟性を向上させることができる。
【0032】
低Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル(Tg-55℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg-65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg-58℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-70℃)、アクリル酸イソノニル(Tg-58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg-60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg-41℃)、メタクリル酸n-ラウリル(Tg-65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg-55℃)、メタクリル酸トリデシル(-40℃)等が好ましく挙げられる。中でも、得られる粘着剤の柔軟性をより向上させる観点から、低Tgアルキルアクリレートとして、ホモポリマーのTgが、-45℃以下であるものであることがより好ましく、-50℃以下であるものであることが特に好ましい。具体的には、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、アルキル基の炭素数が2~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基とは、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基をいう。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、下限値として50質量%以上含有することが好ましく、特に60質量%以上含有することが好ましく、さらには70質量%以上含有することが好ましい。上記低Tgアルキルアクリレートを50質量%以上含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を前述した範囲により設定し易くなる。
【0034】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記低Tgアルキルアクリレートを、上限値として99質量%以下含有することが好ましく、特に97質量%以下含有することが好ましく、さらには95質量%以下含有することが好ましい。上記低Tgアルキルアクリレートを99質量%以下含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に他のモノマー成分(特に反応性官能基含有モノマー)を好適な量導入することができる。
【0035】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃を超えるモノマー(以下「ハードモノマー」という場合がある。)を併用することも好ましい。これにより、ガラス転移温度(Tg)を前述した範囲に設定し易くすることができるとともに、得られる粘着剤に所望の凝集力を付与することができる。なお、このハードモノマーには、後述する反応性官能基含有モノマーも含まれる。
【0036】
上記ハードモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル(Tg10℃)、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、メタクリル酸エチル(Tg65℃)、メタクリル酸n-ブチル(Tg20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg48℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg107℃)、アクリル酸n-ステアリル(Tg30℃)、メタクリル酸n-ステアリル(Tg38℃)、アクリル酸シクロヘキシル(Tg15℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg66℃)、アクリル酸フェノキシエチル(Tg5℃)、メタクリル酸フェノキシエチル(Tg54℃)、メタクリル酸ベンジル(Tg54℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリロイルモルホリン(Tg145℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、アクリル酸(Tg103℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg89℃)、アクリルアミド(Tg165℃)等のアクリル系モノマー、酢酸ビニル(Tg32℃)、スチレン(Tg80℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記ハードモノマーの中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を前述した範囲に設定し易くする観点、および得られる粘着剤に所望の凝集力を付与する観点から、アクリル酸イソボルニル、アクリロイルモルホリンおよびアクリル酸の少なくとも1種を使用することが特に好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記ハードモノマーを含有する場合、得られる粘着剤の凝集力を向上させる観点から、当該ハードモノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには3質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該ハードモノマーを30質量%以下含有することが好ましく、特に20質量%以下含有することが好ましく、さらには15質量%以下含有することが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含有することで、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、後述する架橋剤(B)と反応し、これにより架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を低くし、得られる粘着剤に所望の柔軟性を付与する観点からは、水酸基含有モノマーを使用することが好ましい。また、上記反応性官能基含有モノマーの中でも、得られる粘着剤の凝集力向上の観点からは、カルボキシ基含有モノマーを使用することが好ましい。
【0041】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、ガラス転移温度(Tg)、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性、および他の単量体との共重合性の点から、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、およびアクリル酸4-ヒドロキシブチルの少なくとも一つであることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシ基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からはアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、下限値として1質量%以上含有することが好ましく、特に3質量%以上含有することが好ましく、さらには5質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、上限値として40質量%以下含有することが好ましく、30質量%以下含有することがより好ましく、特に20質量%以下含有することが好ましく、さらには15質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性官能基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、得られる粘着剤層の耐久性および繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果の両立が高いレベルで達成される。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマー、特にハードモノマーでもあるアクリル酸を含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や、金属膜、金属メッシュなどが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの他、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が-40℃超、0℃以下であるモノマー(以下「中Tgアルキルアクリレート」という場合がある。)などが挙げられる。中Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸エチル(Tg-20℃)、アクリル酸イソブチル(Tg-26℃)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(Tg-10℃)、アクリル酸n-ラウリル(Tg-23℃)、アクリル酸イソステアリル(Tg-18℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値は、20万以上であることが好ましく、特に40万以上であることが好ましく、さらには60万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記であると、粘着剤の耐久性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0048】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値は、200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましく、さらには90万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の柔軟性がより優れたものとなる。
【0049】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、当該架橋剤(B)を含有する粘着性組成物Pの加熱等をトリガーとして、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を形成する。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、得られる粘着剤層が耐久性に優れたものとなる。
【0051】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、反応性官能基含有モノマーとの反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0053】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましく、さらには1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に6質量部以下であることが好ましく、さらには4質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、得られる粘着剤層の耐久性および繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果の両立が高いレベルで達成される。
【0054】
(1-3)ポリロタキサン化合物(C)
ポリロタキサン化合物(C)は、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、かつ、直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなる化合物である。このポリロタキサン化合物(C)においては、環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することが可能であるが、ブロック基により環状分子は直鎖状分子からは抜け出せない構造となっている。すなわち、直鎖状分子および環状分子は、共有結合等の化学結合ではなく、いわゆる機械的結合により、スライディング効果を発揮しつつ、その形態を維持するものとなっている。本実施形態に係る粘着剤(粘着性組成物P)が、かかる機械的結合を有するポリロタキサン化合物(C)を含有することにより、得られる粘着剤層は、被着体である繰り返し屈曲デバイスが繰り返し屈曲されたときにも、応力を逃し易く、当該繰り返し屈曲デバイスに追従し易いものとなる。その結果、本実施形態に係る粘着剤を繰り返し屈曲デバイスに適用して繰り返し屈曲させた場合において、外力を解放した後でも、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態を緩和することができる。特に、ポリロタキサン化合物(C)の環状分子が、反応性基として水酸基を有する環状オリゴ糖である場合には、架橋剤(B)としてイソシアネート系架橋剤を使用したときに、当該イソシアネート系架橋剤を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)とポリロタキサン化合物(C)(の環状分子)とが架橋され、ポリロタキサン化合物(C)にて環状分子が直鎖状分子上を自由に移動することにより、架橋体としての柔軟性が著しく向上する。これにより、上記の繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより優れたものとなる。
【0055】
本実施形態におけるポリロタキサン化合物(C)は、環状分子として環状オリゴ糖を有することが好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の環状分子として環状オリゴ糖を使用することにより、適切な環径の選択が可能となり、それにより、直鎖状分子上で環状分子が移動することによる効果が発現しやすい。また、上記環状オリゴ糖が反応性基として水酸基を有すると、イソシアネート系架橋剤との反応が容易である。さらに、様々な置換基等の導入も容易であり、それにより、ポリロタキサン化合物(C)とその他の成分との相溶性をポリロタキサン化合物(C)によって調整することが可能となる。さらに、環状オリゴ糖であれば、入手も容易であるという利点もある。なお、本明細書において、「環状分子」または「環状オリゴ糖」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で移動可能であれば、環状分子は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
【0056】
環状オリゴ糖としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく挙げられ、中でも特にα-シクロデキストリンが好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の環状分子は、ポリロタキサン化合物(C)中または粘着剤(粘着性組成物P)中で2種以上混在していてもよい。
【0057】
ポリロタキサン化合物(C)の環状分子(環状オリゴ糖)が、反応性基として水酸基を有する場合、その水酸基は、環状オリゴ糖がオリジナル(修飾前の状態をいう。)で有する水酸基であってもよいし、環状オリゴ糖に置換基として導入された水酸基であってもよい。
【0058】
上記環状分子の水酸基価は、下限値として10mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることが特に好ましい。水酸基価の下限値が上記であると、ポリロタキサン化合物(C)がイソシアネート系架橋剤と十分に反応することができる。また、上記環状分子の水酸基価は、上限値として1000mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが特に好ましい。水酸基価の上限値が上記の値を超えると、同一の環状分子において多数の架橋が生じることにより、当該環状分子自体が架橋点となり、ポリロタキサン化合物(C)全体としての架橋点の効果を発揮できなくなり、その結果、粘着剤層の十分な応力緩和性が確保できなくなるおそれがある。
【0059】
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子は、環状分子に包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
【0060】
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子は、粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
【0061】
ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子の数平均分子量は、下限値として3,000以上であることが好ましく、特に10,000以上であることが好ましく、さらには20,000以上であることが好ましい。数平均分子量の下限値が上記以上であると、環状分子の直鎖状分子上での移動量が確保され、粘着剤の応力緩和性が十分に得られる。また、ポリロタキサン化合物(C)の直鎖状分子の数平均分子量は、上限値として300,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましく、さらには100,000以下であることが好ましい。数平均分子量の上限値が上記以下であると、ポリロタキサン化合物(C)の溶媒への溶解性や(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性が良好になる。
【0062】
ポリロタキサン化合物(C)のブロック基は、環状分子が直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
【0063】
具体的には、ポリロタキサン化合物(C)のブロック基は、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、数平均分子量1,000~1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が好ましく、これらのブロック基は、ポリロタキサン化合物(C)中または粘着性組成物P中で2種以上混在していてもよい。
【0064】
以上説明したポリロタキサン化合物(C)は、従来公知の方法(例えば特開2005-154675に記載の方法)によって得ることができる。
【0065】
本実施形態に係る粘着性組成物P中におけるポリロタキサン化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには5質量部以上であることが好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の含有量の下限値が上記であると、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより優れたものとなる。また、ポリロタキサン化合物(C)の含有量は、上限値として50質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。ポリロタキサン化合物(C)の含有量の上限値が上記であると、粘着剤層の全光線透過率を高く維持することができ、光学用途で好適なものとなる。
【0066】
(1-4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0067】
粘着性組成物Pは、上記のシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤層において、被着体である屈曲性部材との密着性が向上し、耐久性がより優れたものとなる。
【0068】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0069】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。
【0071】
(2)粘着性組成物Pの製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、ポリロタキサン化合物(C)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0074】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0075】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ポリロタキサン化合物(C)、ならびに所望により添加剤および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0077】
なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0078】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0079】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0080】
(3)粘着剤の製造
本実施形態に係る粘着剤は、好ましくは粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0081】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0082】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0083】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋されて架橋構造が形成され、粘着剤が得られる。かかる粘着剤は、所定の凝集力を有しており、当該粘着剤からなる粘着剤層が耐久性に優れたものとなる。
【0084】
(4)粘着剤の物性
(4-1)貯蔵弾性率G’(-20)
本実施形態に係る粘着剤の-20℃における貯蔵弾性率G’(本明細書において「貯蔵弾性率G’(-20)」と表記する場合がある。)は、上限値として、1.8MPa以下であることが好ましく、特に0.8MPa以下であることが好ましく、さらには0.5MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率G’(-20)の上限値が上記であると、当該粘着剤は応力緩和性に非常に富んだ軟らかいものとなる。これにより、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより優れたものとなる。上記貯蔵弾性率G’(-20)の下限値は特に限定されないが、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.05MPa以上であることが好ましく、さらには0.1MPa以上であることが好ましい。
【0085】
(4-2)貯蔵弾性率G’(50)
本実施形態に係る粘着剤の50℃における貯蔵弾性率G’(本明細書において「貯蔵弾性率G’(50)」と表記する場合がある。)は、下限値として、0.001MPa以上であることが好ましく、特に0.01MPa以上であることが好ましく、さらには0.02MPa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率G’(50)の下限値が上記であると、当該粘着剤は所定の凝集力を発揮し、もって耐久性がより優れたものとなる。上記貯蔵弾性率G’(50)の上限値は特に限定されないが、0.5MPa以下であることが好ましく、特に0.1MPa以下であることが好ましく、さらには0.05MPa以下であることが好ましい。
【0086】
(4-3)貯蔵弾性率G’(23)
本実施形態に係る粘着剤の23℃における貯蔵弾性率G’(本明細書において「貯蔵弾性率G’(23)」と表記する場合がある。)は、下限値として、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.02MPa以上であることが好ましく、さらには0.03MPa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率G’(23)の下限値が上記であると、室温において、屈曲によって粘着剤が染み出してしまうことを防止できる。上記貯蔵弾性率G’(23)の上限値は、0.8MPa以下であることが好ましく、特に0.2MPa以下であることが好ましく、さらには0.1MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率G’(23)の上限値が上記であると、室温において、粘着剤が優れた屈曲耐性を発現できる。
【0087】
なお、貯蔵弾性率G’(-20)、G’(50)およびG’(23)は、JIS K7244-6に準拠した方法により測定した値であり、具体的な測定方法は、後述の試験例に示す通りである。
【0088】
(4-4)100%モジュラス
本実施形態に係る粘着剤の100%モジュラスは、下限値として、0.005N/mm以上であることが好ましく、特に0.01N/mm以上であることが好ましく、さらには0.015N/mm以上であることが好ましい。100%モジュラスの下限値が上記であると、繰り返し屈曲デバイスの耐久性がより優れたものとなる。上記100%モジュラスの上限値は、0.1N/mm以下であることが好ましく、特に0.07N/mm以下であることが好ましく、さらには0.05N/mm以下であることが好ましい。上記100%モジュラスの上限値が上記であると、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより優れたものとなる。本実施形態に係る粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有するため、上記のような範囲の100%モジュラスを達成することが可能である。なお、本明細書における100%モジュラスの測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0089】
(4-5)破断伸度
本実施形態に係る粘着剤の引張試験による破断伸度は、下限値として、500%以上であることが好ましく、特に800%以上であることが好ましく、さらには1000%以上であることが好ましい。破断伸度の下限値が上記であると、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより優れたものとなる。また、繰り返し屈曲させた際に、粘着剤が凝集破壊してしまう等の不具合の発生を抑制することができる。本実施形態に係る粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有するため、上記のような大きい破断伸度を達成することが可能である。上記破断伸度の上限値は特に限定されないが、4000%以下であることが好ましく、特に3500%以下であることが好ましく、さらには3000%以下であることが好ましい。なお、本明細書における破断伸度の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0090】
(4-6)破断応力
本実施形態に係る粘着剤の引張試験による破断応力は、下限値として、0.2N/mm以上であることが好ましく、特に0.3N/mm以上であることが好ましく、さらには0.4N/mm以上であることが好ましい。破断応力の下限値が上記であると、繰り返し屈曲させた際に、粘着剤が凝集破壊してしまう等の不具合の発生を抑制することができ、繰り返し屈曲デバイスの耐久性がより優れたものとなる。上記破断応力の上限値は特に限定されないが、5N/mm以下であることが好ましく、特に3N/mm以下であることが好ましく、さらには2N/mm以下であることが好ましい。本実施形態に係る粘着剤は、ポリロタキサン化合物を含有するため、上記のような範囲の破断応力を達成することが可能である。なお、本明細書における破断応力の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0091】
(4-7)ゲル分率
本実施形態に係る粘着剤は、ゲル分率が35%以上であることが好ましく、特に40%以上であることが好ましく、さらには45%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、90%以下であることが好ましく、特に76%以下であることが好ましく、さらには71%以下であることが好ましい。本実施形態に係る粘着剤は、ゲル分率が45%以上であることにより、応力緩和性を維持しつつ、耐久性がさらに優れたものとなる。なお、ゲル分率の測定方法は、後述の試験例に示す通りである。
【0092】
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材と他の屈曲性部材とを貼合するための粘着剤層を有し、当該粘着剤層が、前述した粘着剤からなるものである。
【0093】
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0094】
(1)構成要素
(1-1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した実施形態に係る粘着剤から構成され、好ましくは、粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤から構成される。
【0095】
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層11の厚さは、上限値として300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さが上記範囲内であると、所望の粘着力を発揮し易く、かつ、繰り返し屈曲デバイスの屈曲状態緩和効果がより優れたものとなる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0096】
(1-2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0097】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0098】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0099】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0100】
(2)物性
(2-1)ヘイズ値
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11のヘイズ値は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、特に50%以下であることが好ましく、さらには40%以下であることが好ましい。粘着剤層11のヘイズ値が70%以下であると、光学用途(表示体用)として好適な透明性を確保できる。粘着剤層11のヘイズ値の下限値は、特に限定されないが、通常、0%以上である。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0101】
(2-2)透明導電膜に対する粘着力
本実施形態に係る粘着シート1のITO(スズドープ酸化インジウム)からなる透明導電膜に対する粘着力は、下限値として5N/25mm以上であることが好ましく、特に9N/25mm以上であることが好ましく、さらには11N/25mm以上であることが好ましい。粘着シート1の粘着力が5N/25mm以上であると、特に被着体が透明導電膜である場合の耐久性がより優れたものとなる。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、通常は、100N/25mm以下であることが好ましく、75N/25mm以下であることがより好ましく、50N/25mm以下であることが特に好ましい。なお、上記粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0102】
(3)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例として、上記粘着性組成物Pを使用した場合について説明する。一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0103】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0104】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0105】
〔繰り返し屈曲積層部材〕
図2に示すように、本実施形態に係る繰り返し屈曲積層部材2は、第1の屈曲性部材21(一の屈曲性部材)と、第2の屈曲性部材22(他の屈曲性部材)と、それらの間に位置し、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22を互いに貼合する粘着剤層11とを備えて構成される。
【0106】
上記繰り返し屈曲積層部材2における粘着剤層11は、前述した粘着シート1の粘着剤層11である。
【0107】
繰り返し屈曲積層部材2は、繰り返し屈曲デバイス自体であるか、または繰り返し屈曲デバイスの一部を構成する部材である。繰り返し屈曲デバイスは、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能なディスプレイであることが好ましいが、これに限定されるものではない。かかる繰り返し屈曲デバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、フォルダブルディスプレイ等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。
【0108】
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22は、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能な部材であり、例えば、カバーフィルム、バリアフィルム、偏光フィルム、偏光子、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、フィルムセンサー、液晶ポリマーフィルム、発光ポリマーフィルム、フィルム状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELフィルム)、電子ペーパーモジュール(フィルム状電子ペーパー)等が挙げられる。
【0109】
上記の中でも、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の少なくとも一方が、繰り返し屈曲可能な表示素子、具体的には、液晶ポリマーフィルム、発光ポリマーフィルム、フィルム状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELフィルム)、または電子ペーパーモジュール(フィルム状電子ペーパー)であることが好ましい。
【0110】
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22は、構成部材として、室温以下のガラス転移温度を有する材料を含むことも好ましい。室温以下のガラス転移温度を有する材料のガラス転移温度は、上限値として、25℃以下が好ましく、特に10℃以下が好ましく、さらには0℃以下が好ましい。室温以下のガラス転移温度を有する材料のガラス転移温度の下限値は、特に限定されないが、-150℃以上が好ましく、特に-100℃以上が好ましく、さらには-80℃以上が好ましい。第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22が、上記のような室温以下のガラス転移温度を有する材料を含むことで、各屈曲性部材の柔軟性が良好なものとなり、繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0111】
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22のヤング率は、それぞれ0.1~10GPaであることが好ましく、特に0.5~7GPaであることが好ましく、さらには1.0~5GPaであることが好ましい。第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22のヤング率がかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0112】
第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の厚さは、それぞれ10~3000μmであることが好ましく、特に25~1000μmであることが好ましく、さらには50~500μmであることが好ましい。第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の厚さがかかる範囲にあることで、各屈曲性部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0113】
上記繰り返し屈曲積層部材2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の屈曲性部材21の一方の面に貼合する。
【0114】
その後、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の屈曲性部材22とを貼合し、繰り返し屈曲積層部材2を得る。また、他の例として、第1の屈曲性部材21および第2の屈曲性部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0115】
〔繰り返し屈曲デバイス〕
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、上記の繰り返し屈曲積層部材2を備えたものであり、繰り返し屈曲積層部材2のみからなってもよいし、一または複数の繰り返し屈曲積層部材2と、他の屈曲性部材とを備えて構成されてもよい。一の繰り返し屈曲積層部材2と他の繰り返し屈曲積層部材2とを積層するとき、または繰り返し屈曲積層部材2と他の屈曲性部材とを積層するときには、前述した粘着シート1の粘着剤層11を介して積層することが好ましい。
【0116】
本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、粘着剤層が前述した粘着剤からなるため、繰り返し屈曲させた場合において、外力を解放した後でも、屈曲状態が緩和される。例えば、23℃の環境下、4mmφの屈曲径において、3万回繰り返し屈曲させた後の、屈曲部分での折れ角度を30°以下、折れ高さを4cm以下に抑えることができる。
【0117】
また、本実施形態に係る繰り返し屈曲デバイスは、粘着剤層が前述した粘着剤からなるため、耐久性の低下が抑制され得る。例えば、85℃、85%RH条件下に72時間置いた場合でも、屈曲性部材と粘着剤層との界面に浮きや剥がれが発生することが抑制される。
【0118】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0119】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の光学部材が積層されてもよい。
【実施例
【0120】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0121】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸n-ブチル47質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル47質量部、アクリル酸5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシプロピル1質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)70万であった。
【0122】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(B1:トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)1.5質量部と、ポリロタキサン化合物(C)(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製,製品名「セルム スーパーポリマー SH3400P」,直鎖状分子:ポリエチレングリコール,環状分子:ヒドロキシプロピル基およびカプロラクトン鎖を有するα-シクロデキストリン,ブロック基:アダマンタン基,重量平均分子量(Mw)70万,水酸基価72mgKOH/g)5質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.28質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0123】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0124】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シート、すなわち、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0125】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
AA:アクリル酸
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
HPA:アクリル酸2-ヒドロキシプロピル
[架橋剤(B)]
B1:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)
B2:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「TD-75」)
【0126】
〔実施例2~9,比較例1~4〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の配合量、ポリロタキサン化合物(C)の配合量、ならびに粘着剤層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0127】
〔試験例1〕(ガラス転移温度の測定)
実施例および比較例で調製・使用した(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製,製品名「DSC Q2000」)によって、昇温・降温速度20℃/分で測定した。結果を表1に示す。
【0128】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率(G’)の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0129】
上記サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,DYNAMIC ANALAYZER)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:-20℃,23℃,50℃
【0130】
〔試験例3〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0131】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0132】
〔試験例4〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-2000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0133】
〔試験例5〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断した。
【0134】
23℃、50%RHの環境下にて、上記積層体から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,製品名「ITOフィルム」,厚さ:125μm)の透明導電膜に貼付し、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で、ポリエチレンテレフタレートフィルムと粘着剤層との積層体を、透明導電膜から剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0135】
〔試験例6〕(引張試験)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、合計厚さ800μmとした後、10mm幅×75mm長のサンプルを切り出した。サンプル測定部位が10mm幅×25mm長(伸長方向)になるように上記サンプルを引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)にセットし、23℃、50%RHの環境下で当該引張試験機を用いて引張速度200mm/分で伸長させた。応力-歪曲線(SSカーブ)にて、伸び率が100%となる応力値を100%モジュラス(N/mm)として算出(測定)した。また、上記サンプルが破断するまで伸長させ、破断伸度(%)および破断応力(N/mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0136】
〔試験例7〕(屈曲試験)
23℃、50%RHの環境下にて、実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製,製品名「コスモシャイン4300」,厚さ:100μm)の一方の面に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、別のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製,製品名「コスモシャイン4300」,厚さ:100μm)の一方の面に貼合した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。このようにして得たPETフィルム/粘着剤層/PETフィルムからなる積層体を、50mm幅、200mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0137】
得られたサンプルを、耐久試験機(ユアサシステム機器社製,製品名「面状体無負荷U字伸縮試験機」)を用いて、以下の条件で繰り返し屈曲させた。その後、サンプルを水平テーブル上に置いて、当該サンプルの屈曲部を挟んだ一方の部分(パートA)をテーブル面に固定した。そして、当該サンプルの屈曲部を挟んだ他方の部分(パートB)の端部のテーブル面からの垂直距離(折れ高さ;cm)およびパートBのテーブル面からの角度(折れ角度;°)を測定した。結果を表2に示す。
屈曲径:4mmφ
屈曲回数:30000回
試験温度:23℃
【0138】
〔試験例8〕(耐久性の評価)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4300」,厚さ:100μm)とで挟み、積層体を得た。
【0139】
得られた積層体(サンプル)を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層と被着体との界面に浮き・剥がれがないか否か、目視により確認し、以下の基準により耐久性を評価した。
◎…浮きおよび剥がれが全くなかった。
○…1mm未満の微小な気泡が1個または2個発生したが、浮きおよび剥がれが全くなかった。
×…浮きまたは剥がれが発生した。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
表2から分かるように、実施例の粘着シートの粘着剤層は、屈曲状態緩和効果に優れるとともに、高温高湿条件の耐久性にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、繰り返し屈曲デバイスを構成する一の屈曲性部材(例えば各種フィルム)と他の屈曲性部材(例えば表示素子)とを貼合するのに好適である。
【符号の説明】
【0144】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…繰り返し屈曲積層部材
21…第1の屈曲性部材
22…第2の屈曲性部材
図1
図2