(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】製造プロセスにおける反応物の多相状態を監視および制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
G01N21/47 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022104827
(22)【出願日】2022-06-29
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100207217
【氏名又は名称】樋口 智夫
(72)【発明者】
【氏名】高 ▲豊▼生
(72)【発明者】
【氏名】劉 子瑜
(72)【発明者】
【氏名】林 正軒
(72)【発明者】
【氏名】▲顔▼ 志穎
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064633(JP,A)
【文献】特表2015-528911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0161101(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0116019(US,A1)
【文献】特表2010-508534(JP,A)
【文献】特開2011-069682(JP,A)
【文献】国際公開第2020/030947(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プロセス
の結晶化反応における反応物の相変化状態を監視および制御するように構成される、反応物の多相状態を監視および制御するためのシステムであって、
複数の観察領域における複数のプロセス反応時点に対応する
複数の監視画像
グループを撮像する
複数の画像検知装置を含む監視装置
であって、前記複数の画像検知装置は、それぞれ、前記複数の観察領域の一つに対応し、前記複数の画像検知装置は、それぞれ、前記製造プロセスの前記結晶化反応における前記反応物の前記相変化に応じて異なる観察領域で各グループの複数の監視画像を撮像して、前記複数の監視画像グループを生成する、監視装置と、
前記
複数の監視画像
グループを受信し、前記
複数の監視画像
グループから複数の画像インデックス特徴を抽出する画像処理モジュールと、
前記画像インデックス特徴にしたがって、
それぞれが前記
複数の観察領域
の一つに対応する複数の相モードを決定する相状態分析モジュールと、
前記画像インデックス特徴にしたがって、前記相モードに対応する前記反応物の生成特性の
グループを決定する特徴分析モジュールと、
前記生成特性の
グループにしたがって、前記製造プロセスの調整を実行する調整モジュールと、を備える、システム。
【請求項2】
前記
複数の監視画像
グループが、前記
複数の観察領域のうちの3つの観察領域にそれぞれ対応する第1の監視画像、第2の監視画像、および第3の監視画像を含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記画像インデックス特徴の各々が、前記反応物によって生成された小さな結晶核によって反射された散乱光の光強度と、前記第1の監視画像、前記第2の監視画像および前記第3の監視画像の各々の平均グレースケール値の標準偏差と、前記監視画像の単一画像内の画素強度の各々の標準偏差とのうちの1つである、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記相モードが、固液二相および固液気三相の各々である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記生成特性の
グループが、前記反応物の濁度、流動性、固形分および結晶サイズ
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記調整モジュールが、前記反応物の前記生成特性の
グループにしたがって制御ロジックを出力して、反応槽内の前記反応物の前記製造プロセスのパラメータを調整する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記特徴分析モジュールは、コンピュータービジョンおよび機械学習を通じて、前記反応物の結晶サイズに対応する前記画像インデックス特徴の一つを決定し、異なる相モードにおける前記反応物の前記生成特性の
グループを分析して前記反応物の監視インデックスを確立する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記監視装置のうちの1つが、光検出器と、少なくとも1つの光源と、遮蔽要素とを含み、前記遮蔽要素が、前記光検出器と前記光検出器を取り囲む前記光源とを分離するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
製造プロセス
の結晶化反応における反応物の相変化状態を監視および制御するように構成される、反応物の多相状態を監視および制御するための方法であって、
複数の画像検知装置によって、複数の観察領域における複数のプロセス反応時点に対応する
複数の監視画像
グループを撮像すること
であって、前記複数の画像検知装置は、それぞれ、前記複数の観察領域の一つに対応し、前記複数の画像検知装置は、それぞれ、前記製造プロセスの前記結晶化反応における前記反応物の前記相変化に応じて異なる観察領域で各グループの複数の監視画像を撮像して、前記複数の監視画像グループを生成する、複数の監視画像グループを撮像することと、
前記
複数の監視画像
グループにしたがって、複数の画像インデックス特徴を抽出することと、
前記画像インデックス特徴にしたがって、
それぞれが前記
複数の観察領域
の一つに対応する複数の相モードを決定することと、
前記画像インデックス特徴にしたがって、前記相モードに対応する前記反応物の生成特性の
グループを決定することと、
前記生成特性の
グループにしたがって、前記製造プロセスの調整を実行することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記複数の監視画像グループは、前記
複数の観察領域のうちの3つの観察領域に対応する第1の監視画像、第2の監視画像および第3の監視画像
を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記画像インデックス特徴の各々が、前記反応物によって生成された小さな結晶核によって反射された散乱光の光強度と、前記第1の監視画像、前記第2の監視画像および前記第3の監視画像の各々の平均グレースケール値の標準偏差と、前記監視画像の単一画像内の画素強度の各々の標準偏差とのうちの1つである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記相モードが、固液二相および固液気三相の各々である、請求項
8に記載の方法。
【請求項13】
前記生成特性の
グループが、前記反応物の濁度、流動性、固形分および結晶サイズ
を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項14】
前記反応物の前記生成特性の
グループにしたがって制御ロジックを出力して、反応槽内の前記反応物の前記製造プロセスのパラメータを調整することを含む、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、監視システムおよびその方法に関し、より詳細には、製造プロセスにおける反応物の多相状態を監視および制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、反応物の結晶化状態の制御は、製造プロセスにおける重要な手順であり、現場監視員によって実行される現在のプロセスは、侵襲的装置を介して槽内のサンプルを抽出するか、またはガラス窓を通して観察し、現場監視員が反応物を最良の結晶化状態に調整するのを容易にするために、要員の経験に基づいて反応物の結晶化状態を推測することである。製造プロセスの制御は、要員の経験に依存するため、人的要因は、反応物の最終生成物の品質に決定的な影響を及ぼすため、最終生成物の品質は良くない。
【0003】
したがって、反応物の品質に影響を及ぼす人的要因を回避するために、反応物の監視および制御プロセスに存在する技術的ボトルネックを克服することが必要である。
【0004】
「SYSTEM AND METHOD FOR HAZE MEASUREMENT」と題する米国特許第9,423,346号明細書は、透過サンプルのヘイズ値を測定するための装置および方法を開示している。装置は、第1の光ビームを放射するように選択的に構成可能な第1の光源と、第2の光ビームを放射するように選択的に構成可能な第2の光源と、外面および内面を有する積分球とを備え、内面は、内面に入射する光を反射するように構成され、内面は、内部容積をさらに囲む。積分球は、積分球の内部容積から光を放射するように構成された出口ポートをさらに備える。出口ポートは、第1の光源からの光が妨害されることなく積分球を出るように配置され、第2の光源からの光は、出口ポートを出る前に積分球の内面で拡散される。光検出器も含まれ、積分球を出る光がサンプルを通過して光検出器に入射したときに光強度信号を生成するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示は、コンピュータビジョン画像処理および反応物のリアルタイム分析を確立してオンライン自動制御を実現するように構成された、製造プロセスにおける反応物の多相状態を監視および制御するためのシステムおよび方法に関する。
【0007】
一実施形態によれば、製造プロセスにおける反応物の相状態を監視および制御するように構成された、反応物の多相状態を監視および制御するためのシステムが提供される。システムは、監視装置と、画像処理モジュールと、相状態分析モジュールと、特徴分析モジュールと、調整モジュールとを含む。監視装置は、複数の観察領域における複数のプロセス反応時点に対応する監視画像の複数のクラスタを撮像するように構成される。画像処理モジュールは、監視画像のクラスタを受信し、監視画像のクラスタから複数の画像インデックス特徴を抽出するように構成される。相状態分析モジュールは、画像インデックス特徴にしたがって観察領域に対応する複数の相状態モードを決定するように構成される。特徴分析モジュールは、画像インデックス特徴にしたがって、相モードに対応する反応物の生成特性のクラスタを決定するように構成される。調整モジュールは、生成特性のクラスタにしたがって、製造プロセスの調整を実行するように構成される。
【0008】
別の実施形態によれば、製造プロセスにおける反応物の多相状態を監視および制御するための方法が提供される。監視および制御方法は、以下のステップを含む。複数の観察領域における複数のプロセス反応時点に対応して、監視画像の複数のクラスタが撮像される。監視画像のクラスタにしたがって、複数の画像インデックス特徴が抽出される。画像インデックス特徴に応じて、観察領域に対応する複数の相モードが決定される。画像インデックス特徴にしたがって、相モードに対応する反応物の生成特性のクラスタが決定される。生成特性のクラスタにしたがって、製造プロセスの調整が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態にかかる、反応物の多相状態を監視および制御するためのシステムの概略図である。
【0010】
【
図2】本開示の実施形態にかかる、
図1の反応物の多相状態を監視および制御するためのシステムの一部の詳細な概略図である。
【0011】
【
図3】本開示の実施形態にかかる反応物の多相状態を調整するための方法の概略フローチャートである。
【0012】
【
図4】本開示の実施形態にかかる監視装置の概略図である。
【0013】
【
図5】本開示の実施形態にかかる結晶サイズ分析および固形分分析のイメージ図を示している。
【
図6A】本開示の実施形態にかかる結晶サイズ分析および固形分分析のイメージ図を示している。
【
図6B】本開示の実施形態にかかる結晶サイズ分析および固形分分析のイメージ図を示している。
【
図6C】本開示の実施形態にかかる結晶サイズ分析および固形分分析のイメージ図を示している。
【0014】
【
図7】本開示の実施形態にかかる反応物の多相状態の長期監視データの概略図を示している。
【
図8】本開示の実施形態にかかる反応物の多相状態の長期監視データの概略図を示している。
【
図9】本開示の実施形態にかかる反応物の多相状態の長期監視データの概略図を示している。
【0015】
以下の詳細な説明では、説明の目的で、開示された実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、これらの具体的な詳細なしに1つ以上の実施形態が実施されることができることは明らかであろう。他の例では、図面を簡略化するために、周知の構造および装置が概略的に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態における技術的特徴が、本開示の実施形態における添付の図面と併せて以下に明確且つ完全に説明される。明らかに、記載された実施形態は、全ての実施形態ではなく、本開示の実施形態の一部にすぎない。
【0017】
さらにまた、記載された特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられることができる。以下の説明では、本開示の実施形態の完全な理解を与えるために、多数の具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者は、本開示の技術的解決策が特定の詳細のうちの1つ以上なしで実施されることができること、または他の方法、組成物、装置、ステップなどが使用されることができることを理解するであろう。他の例では、本開示の態様を不明瞭にすることを避けるために、周知の方法、装置、実装、または動作は詳細に示されていないか、または説明されていない。
【0018】
本開示の添付の図面に示されるように、本実施形態における反応物の多相状態を監視および制御するためのシステム100は、現場監視員を人間の眼およびその経験によって現在の反応状態を判断するように置き換え、人為的な誤判定を低減するために、コンピュータビジョンを介して実装されることができる。さらに、本実施形態における反応物の状態を監視および制御するためのシステム100は、監視装置110を使用して異なる観察領域内の複数の画像を撮像し、異なる観察領域内の監視画像の複数のクラスタを介して相状態分析および生成特性分析を行い、その結果、異なる相状態における反応物の生成特性が取得されて、特徴サイズの識別を改善することができる。同時に、本実施形態の調整モジュール136は、連続プロセス監視および制御の目的を達成するために、画像処理モジュール120によって生成された複数の画像インデックス特徴および異なる相状態に対応する反応物の生成特性にしたがって反応物の製造プロセスパラメータを連続的に制御することができる。
【0019】
本開示の実施形態にかかる反応物の多相状態を監視および制御するためのシステム100の概略図およびその詳細な概略図をそれぞれ示す
図1および
図2を参照されたい。
【0020】
図1および
図2に示すように、反応物の多相状態を監視および制御するためのシステム100は、製造プロセスにおける反応物の相変化状態を監視および制御するように構成される。相変化状態とは、例えば、結晶化反応の変化状態であり、結晶化反応とは、反応槽106内の相状態が固相、液相および気相であってもよく、三相状態が共存していてもよい反応物、固液のみが共存する二相状態、固相、液相および気相のいずれか一方のみが存在する単相状態を言う。異なる段階の反応物が生成されると、より重い密度を有する固体反応物が反応槽106の底部に堆積し、固液二相反応物は、反応槽106の中間層を流れることができ、固体反応物の上方に位置するが、固液気三相反応物は、より少ない固体反応物を含むため、それらは反応槽106の上層を流れ、固液二相反応物の上方に位置する。最上層のガス状反応物については、本開示の主たる生成物ではないため、無視することができる。本実施形態では、異なる相状態の反応物は、異なる特性を有する。異なる相状態における反応物の生成特性を分析することにより、反応物の最終生成物の品質が良好に制御されることができる。
【0021】
一実施形態では、監視システム100は、反応槽106、複数の監視装置110、画像処理モジュール120、相分析モジュール132、特徴分析モジュール134、および調整モジュール136を含むことができる。
図1において、相状態分析モジュール132、特徴分析モジュール134、および調整モジュール136は、単一のコンピューティングモジュール130(プロセッサなど)または複数の独立したモジュールの組み合わせに統合されることができる。本開示は、これに限定されない。反応槽106は、反応すべき原料102および水に入るための少なくとも1つの弁104を有し、これらの原料102は、反応物を生成するために適切なプロセスパラメータの下で制御される。最後に、反応物は、反応槽106を通って排出され、最終生成物108になることができる。
【0022】
図1を参照すると、監視装置110は、複数の監視画像を撮像するためのカメラまたは画像センサなどの複数の検出器を含む。各検出器は、下から上へ順に配置され、所定の距離だけ離れており、各検出器は、画像処理モジュール120が画像認識を実行するために、反応槽106の異なる領域における反応物の相変化(相状態および/または生成特性など)を撮像する役割を果たす。
【0023】
図2を参照すると、反応槽106は、反応槽106の異なる領域内の反応物を露出させるためのガラス窓105または光透過領域などの複数の観察領域を含み、各検出器は、各観察領域において位置合わせし、反応槽106の異なる領域内の反応物の相変化を撮像する。例えば、下層の検出器1は、反応槽106の底部に堆積した固相反応物を撮像することができ、中層の検出器2、3は、反応槽106の中層の固液二相反応物を撮像することができ、上層の検出器4は、反応槽106の上方に位置する固液気三相反応物を撮像することができる。さらに、最上層に位置する検出器5は、反応槽106の最上部に位置するガス状の反応物を撮像することができる。検出器1から5は、同時に画像を撮像するかまたは時分割多重で画像を撮像することができるが、本開示ではこれに限定されない。
【0024】
本実施形態の監視装置110は、例として5個の検出器を有するが、反応槽106の容積に応じて検出器の数や位置が調整されることができる。監視装置110は、複数の観察領域における複数のプロセス反応時点に対応する複数の監視画像のクラスタを撮像するように構成される。さらに、各検出器は、複数の監視画像を連続的に撮像する役割を果たすため、画像処理モジュール120は、これらの監視画像のクラスタを受信し、これらの監視画像のクラスタから複数の画像インデックス特徴を抽出することができる。例えば、画像処理モジュール120は、検出器4によって撮像された監視画像121のクラスタを受信し、固液気三相反応物の画像インデックス特徴を抽出することができる。さらに、画像処理モジュール120は、検出器2および3によって撮像された監視画像122のクラスタおよび監視画像123のクラスタを受信し、固液二相反応物の画像インデックス特徴を抽出することができる。さらに、検出器1および検出器5によって検出される反応物は単相であり、反応物の変化は比較的小さいため、反応物の画像インデックス特徴はほぼ一定に維持され、反応物の流れとともに変化されることはできない。したがって、画像処理モジュール120は、相変化状態を有する反応物の監視画像のクラスタを受信し、後続の相状態分析モジュール132および特性分析モジュール134のために、そこから画像インデックス特徴(
図6Aから
図6Cを参照)を抽出して、反応物の相モード135および生成特性137の対応するクラスタを決定することができる。
【0025】
一実施形態では、画像処理モジュール120は、画像輝度、画像変化率、および画像変動などの画像インデックス特徴を介して、濁度、流動性、および固形分などの反応物の生成特性を分析する。続いて、
図2において、相状態分析モジュール132は、反応物の画像輝度などの画像インデックス特徴にしたがって反応物の濁度を判断することができ、または画像変化率および画像変動などの画像インデックス特徴にしたがって反応物の流動性を判断することができる。さらに、相状態分析が完了した後、特徴分析モジュール134は、機械学習によって反応物の結晶サイズおよび量などの固形分生成特性を決定することができる。本実施形態では、結晶107は、例えば、反応物が結晶化した後に生成される生成物である。結晶107の数が多いほど、生成物の固形分が高く、結晶状生成物が反応槽106の底部に堆積され、完全に結晶化していない半生成物(例えば、小さな結晶核108)は、容積が小さく反応物とともに流動するため、不完全に結晶化した小結晶核108の一部のみが反応槽106の底部に堆積される。
【0026】
図1を参照すると、一実施形態では、例えばニューラルネットワーク129およびそのアルゴリズムを介して機械学習が実行され、訓練モデル131を確立し、長期監視データ(原料の種類、供給比、圧力条件、温度条件、最終生成物などの情報127)が入力端データとして使用され、最終生成物特徴が出力端データとして使用され、入力端データと出力端データとの相関が機械学習によって確立され、最終生成物108の結果を予測する。
【0027】
一実施形態では、最終生成物108の品質が期待される結果に到達しない場合、調整モジュール136は、反応物の生成特性のクラスタにしたがって制御ロジック133を出力して、製造プロセスを調整することができる。制御ロジック133は、例えば、入力端において製造プロセスパラメータ(例えば、水量、供給物量、空気圧、温度など)を調整する。例えば、制御ロジック133は、供給物量、水量、空気圧、温度などのパラメータを調整するために、反応槽106の自動弁104を開閉するように制御する。最終生成物108の品質が期待される結果に到達すると、製造プロセスが完了し、最終生成物108が反応槽106から取り出される。
【0028】
本実施形態において適用可能な製造プロセスは、結晶化反応に限定されず、濃縮、希釈、重合、分解、染色、脱色などの少なくとも1つの化学反応であってもよい。画像処理モジュール120は、画像輝度、画像変化率、および画像変動などのコンピュータビジョンを使用して、濃度、希釈、重合、分解、染色、脱色などの反応物の少なくとも1つの化学反応を分析することができ、次いで、相分析モジュール132および特徴分析モジュール134のうちの少なくとも一方は、自動プロセス制御の目的を達成し、人的要因の影響を回避するために、反応物の相モード135(例えば、気体、液体、固体、固液二相、固液気三相など)およびその生成特性137のクラスタ(例えば、濁度、流動性、および結晶のサイズ/数など)を自動的に決定することができる。
【0029】
さらに、
図2および
図3を参照すると、
図3は、本開示の実施形態にかかる反応物の多相状態を監視および制御するための方法の概略フローチャートを示している。まず、原料102が反応槽106に供給される(ステップS11)。異なる領域の画像が複数の検出器によって撮像され、その後、位置スクリーニングが実行されて、観察されるべき領域内の反応物の監視画像(例えば、第1の監視画像121から第3の監視画像123)を取得する(ステップS12)。固液二相混合位置の第2および第3の監視画像122、123(ステップS13)と固液気三相混合位置の第1の監視画像121(ステップS14)とが撮像されるが、これに限定されない。次に、固液二相混合位置における反応物の画像インデックス特徴が分析されて、観察領域に対応する反応物の生成特性を取得し(ステップS15)、反応物の濁度が結晶核監視インデックスAよりも低いかどうかを決定するステップを含んで反応物が濃度制御範囲内にあるかどうかが決定され(ステップS16)、反応物の濁度が結晶核監視インデックスAよりも高い場合、結晶性結晶107の数が不足していることを意味し、粘着性があるため、製造プロセスは、反応物の濁度を下げる希釈手順(ステップS17)を実行する。逆に、反応物の濁度が結晶核監視インデックスAよりも低い場合、結晶107の個数が十分であり、非常に結晶鮮明であることを意味する。一実施形態では、上述した結晶核監視インデックスAは、例えば、反応物によって生成された小結晶核108に光が投射された後に散乱される光強度の閾値である。小さな結晶核108の数が多いほど、反射光強度が強くなり、光検出器113によって撮像された画像の明るさも強くなる(例えば、光強度の閾値よりも大きい)。したがって、上述した結晶核監視インデックスAは、反応物の生成特性(濁度など)に対応する画像インデックス特徴(光強度など)を決定するための閾値として使用されることができる。
【0030】
次いで、反応物の流れが流動性監視インデックスBよりも低いかどうかを決定し続け、反応物の流れが流動性監視インデックスBよりも高い場合、それは結晶性結晶107の流量が高すぎることを意味するため、製造プロセスは、反応物の流れを減少させるために濃縮手順を実行する(ステップS17)。逆に、反応物の流量が流動性監視インデックスBよりも低い場合、結晶性結晶107の流量が低すぎることを示しており、希釈手順が実行されることができる(ステップS17)。実施形態では、上述した流動性監視インデックスBは、例えば、反応物に光が投射された後の画像変化率(例えば、流れる縞模様、渦電流、または明暗の変化など)の閾値である。反応物の流れが速いほど、反射光の像はより均一に変化し、光検出器113によって撮像された画像全体の平均グレースケール値の変動はより小さく(例えば、フレーム間の平均グレースケール値の標準偏差と流れ窓の数との積未満)、逆もまた同様である。反応物の流れが遅いほど、反射光の像がより不均一に変化するため、光検出器113によって撮像される画像全体のグレースケースの変動はより大きい(例えば、フレーム間の平均グレースケール値の標準偏差と流れ窓の数との積よりも大きい)。したがって、上述した流動性監視インデックスBは、反応物の生成特性(流動性など)に対応する画像インデックス特徴(フレーム間の平均グレースケール値の標準偏差など)を判断するための閾値として使用されることができる。流れ窓の数は、1つ以上、例えば本実施形態では3つであってもよい。
【0031】
そして、反応物の固形分が固形分監視インデックスCより高いかどうかを判断し続ける。反応物の固形分が固形分監視インデックスCよりも低い場合、それは結晶107の個数が少なすぎることを示すため、反応物の濃度を高めるために濃縮プロセスが実行される(ステップS17)。逆に、反応物の固形分が固形分監視インデックスCよりも高い場合、それは結晶性結晶107の量が要件を満たすことを意味し、その後の排出プロセスが実行されることができる。一実施形態では、上述した固形分監視インデックスCは、例えば、光が反応物に投射された後の画像画素強度の標準偏差に基づく。反応物の固形分が多いほど、反射光の反射強度が不均一になるため、光検出器113によって撮像される各画像画素の強度の標準偏差も大きくなる。逆に、反応物の固形分が少ないほど、反射光の反射強度が均一になるため、光検出器113によって撮像された各画像画素の強度の標準偏差も小さくなる。したがって、上述した固形分監視インデックスCは、反応物の生成特性(固形分など)に対応する画像インデックス特徴(画素強度標準偏差など)を判断するための閾値として使用されることができる。
【0032】
結晶107の量が固形分監視インデックスCよりも大きい場合、それが大量生産要件を満たしているかどうかが決定され(ステップS21)、そうである場合、製造プロセスは終了する(ステップS22)。そうでない場合、ステップS11に戻り、原料102の供給速度の制御、水供給、温度および圧力などを制御するなど、プロセスパラメータをさらに調整して、反応物の相状態を変化させる。
【0033】
次に、
図3を参照すると、本実施形態では、固液気三相混合位置における反応物の画像インデックス特徴も分析されて、反応物の結晶サイズを分析するステップ(ステップS18)を含んで観察領域に対応する反応物の生成特性を取得することもでき、反応物の結晶サイズ分析は、機械学習を使用して監視画像内の異なる結晶サイズ、位置および数をマーキングすることができる。
図5に示すように、結晶107のサイズは、マーキングされた四辺形140の対角線長141である。一実施形態では、上述した監視画像は、結晶、気泡、液体および原料の混合画像を含むことができる。しかしながら、結晶性結晶の形状は概ね長方形であり、外観上、気泡、液体、原料の形状とは明らかに異なる。したがって、反応物の相状態を視覚的に識別することが容易である。したがって、実施形態の特徴分析モジュール134は、コンピュータビジョンおよび機械学習により、反応物の生成特性(例えば、結晶サイズ)に対応する画像インデックス特徴(例えば、マーキングされた四辺形140の対角線長141)を決定することができる。次に、結晶107のサイズが大きくなったかどうかが決定される(ステップS19)。結晶107のサイズが大きくならない場合、反応物の生成を増加させるために濃縮手順(ステップS20)が実行される。結晶107のサイズが大きくなると、大量生産の要件を満たすかどうかが決定される(ステップS21)。そうである場合、製造プロセスは終了する(ステップS22)。そうでない場合、ステップS11に戻り、製造プロセスのパラメータをさらに調整する。
【0034】
本開示の実施形態にかかる監視装置110の概略図である
図4を参照する。監視装置110は、ケーシング111、検出器113、少なくとも1つ以上の光源112、遮蔽要素114、および冷却ファン115を含むことができる。ケーシング111は、第1の開口部P1を有し、検出器113、光源112および遮蔽要素114は、全てケーシング111の第1の開口部P1に配置され、ケーシング111の第1の開口部P1の周面には、外部光源からの信号干渉を回避するために光源112を取り囲む遮光壁が設けられている。さらに、遮蔽要素114は、ケーシング111の第1の開口部P1内に配置され、検出器113と光源112とを分離する。遮蔽要素114は、光源112によって投射された光が遮光壁と遮蔽要素114との間の第1の開口部P1を通って出るように、検出器113を取り囲み、遮蔽要素114は、内部光源112からの信号干渉を回避するために、界面(例えば、ガラス窓105)から反射された光が検出器113に直接入るのを防ぐことができる。さらに、冷却ファン115は、ケーシング111の背後に配置され、ケーシング111の内部に冷却空気流を供給し、および/またはケーシング111の内部の熱をケーシング111の外部に排出して、監視装置110の放熱効率および光源112の寿命を改善する。
【0035】
一実施形態では、ケーシング111および遮蔽要素114の形状は、円形、正方形、長方形、または多角形であってもよい。光源112は、発光ダイオードなどであってもよい。検出器113は、短焦点光学レンズを含んでもよい。
【0036】
一実施形態では、検出器113は、遮蔽要素114の第2の開口部P2に配置され、検出器113の撮像ユニットは、ガラス窓105の内側の試験対象物(結晶核または反応物など)に面するため、反射光は、対象物によって反射され、次いで第2の開口部P2を通って検出器113に入射し、複数の監視画像を取得することができる。一実施形態では、検出器113は、二次元画像アレイの光学レンズであり、検出器113の解像度は高く、光源112は安定しており、外部環境によって影響を受けにくく、検出器113は、反応槽106の外部から反応物をリアルタイムに検出することができ、反応物の画像データを分析のためにバックエンドにおいて画像処理モジュール120に送信して、人間の判断の誤りが最終生成物108の品質に影響を及ぼすのを回避する。
【0037】
それぞれ、本開示の実施形態にかかる結晶サイズ分析および固形分分析のためのイメージ図である
図5、
図6A、
図6B、および
図6Cを参照する。
図5において、本実施形態では、例えば、ラベリングソフトウェアは、複数の監視画像における結晶位置をフレーム化するように構成され、TensorFlowなどのソフトウェアは、ラベリング位置特徴を学習するように構成される。学習モードが完了した後、実際の監視画像のリアルタイム識別が実行されて、反応物の結晶サイズを取得することができる。結晶107の大きさは、例えば、四辺形140の対角線長141である。さらに、
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、それぞれ、反応物の3つの相モードおよびそれらの画像インデックス特徴の概略図である。本実施形態の固形分分析方法は、例えば、
図6Aに示すように、単一画像における画素グレースケール値の標準偏差を分析する。固形分が多く且つ流動性が低い固体反応物の監視画像142は、画素グレースケール値の均一な分布を有するため、グレースケール値の最大平均グレースケール値および最小標準偏差が取得されることができた。第2に、
図6Bに示すように、固液二相反応物は、固形分が2番目に多く且つ流動性が高い。前者の監視画像142と比較して、監視画像143の画素グレースケール値分布は均一性が低いため、グレースケール値の2番目に高い平均グレースケール値および2番目に小さい標準偏差が取得されることができた。さらにまた、
図6Cに示すように、固液気三相反応物の監視画像144は、固形分が少なく且つ流動性が高い。2つの前者の監視画像142、143と比較して、監視画像144は、前者の2つよりも不均一な画素グレースケール値分布を有するため、グレースケール値の最低平均グレースケール値および最高標準偏差が取得されることができた。
【0038】
本開示の実施形態にかかる反応物状態の長期監視データの概略図である
図7から
図9を参照されたい。
図7は、濁度分析のために構成された結晶核監視インデックスのデータ図であり、
図8は、固形分分析のために構成された固形分監視インデックスのデータ図であり、
図9は、流動分析のために構成された流動性監視インデックスのデータ図である。
図7において、濁度分析が実行される場合、チンダル効果により、反応物によって生成された小さな核108は、散乱された光に画像のグレースケール値を変化させる。したがって、結晶核監視インデックスが使用されて、(
図3のステップS15に示すように)反応物の濁度を決定することができる。さらに、
図8において、固形分分析が実行される場合、検出器によって取得された単一画像における画素の強度(またはグレースケール値)がそれぞれ異なるため、反応物の固形分は、(
図3のステップS23に示すように)固形分監視インデックスによって決定されることができる。さらに、
図9において、流動性分析が実行される場合、検出器によって撮像された画像全体のグレースケール平均値はフレーム間で異なり、グレースケール平均値の標準偏差が算出されて反応物の流動性を取得することができる。したがって、反応物の流れは、(
図3のステップS17に示すように)流動性監視インデックスによって決定されることができる。したがって、本実施形態では、製造プロセスにおける反応物の各バッチの反応は、異なる相状態における反応物の生成特性を分析することによって長時間記録されることができ、その結果、後続の反応物を製造するための基準データとして使用されることができる信頼性および検証可能性を有する反応物の監視インデックスを確立し、次いでオンライン自動化プロセス制御の目的を達成することができる。
【0039】
開示された実施形態に対して様々な変更および変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書および実施例は、例示的なものとしてのみみなされ、真の範囲および趣旨は、特許請求の範囲およびそれらの均等物の全範囲によって示されることが意図される。