(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20240115BHJP
B66B 1/18 20060101ALI20240115BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B66B1/14 Z
B66B1/18 S
B66B3/00 L
B66B3/00 M
(21)【出願番号】P 2022192779
(22)【出願日】2022-12-01
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ン シオンキー
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-7286(JP,A)
【文献】特開2021-11376(JP,A)
【文献】特開2019-156504(JP,A)
【文献】特開2018-203421(JP,A)
【文献】特開2014-177345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/14
B66B 1/18
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されたエレベータで発生した乗場呼びの情報を登録する乗場呼び登録部と、
前記エレベータの乗りかご内の床面積に対する、かご内利用者が占有している床部分の面積で示される、かご床占有率を算出するかご床占有率算出部と、
前記エレベータの運転状況に基づいて、現在から過去の所定期間に発生した乗場呼び数に対する、乗場呼び応答して前記乗りかごが戸開しても該当する乗場の待ち利用者が乗り込まなかった回数で示される利用スキップ率を算出する利用スキップ率算出部と、
前記乗りかごを乗場呼びに応答させるか否かを判定するために前記かご床占有率ごとに予め設定された、前記利用スキップ率の閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びが登録されたときに、前記利用スキップ率算出部で算出された利用スキップ率が、前記かご床占有率算出部で算出された現在のかご床占有率に対応する前記閾値を超える場合には、前記乗りかごを前記乗場呼びに応答させないことを決定する運転制御部と、を備えたエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記閾値記憶部は、前記かご床占有率ごと、および時間帯ごとに前記閾値を記憶し、
前記運転制御部は、前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びが登録されたときに、前記利用スキップ率算出部で算出された利用スキップ率が、前記かご床占有率算出部で算出された現在のかご床占有率および現在時刻が該当する時間帯に対応する前記閾値を超える場合には、前記乗りかごを前記乗場呼びに応答させないと決定する、請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記建物の各階の乗場それぞれにおいて待ち利用者が占有している床部分の面積である乗場床占有面積を算出する乗場床占有面積算出部をさらに備え、
前記利用スキップ率算出部は、前記乗りかごが乗場呼びに応答していずれかの階床で戸開したときに、前記乗場床占有面積算出部で算出された、該当する階床の乗場の乗場床占有面積および、前記かご床占有率算出部で算出されたかご床占有率が変わらない場合に、該当する乗場の待ち利用者が前記乗りかごに乗り込まなかったと判定することで、前記利用スキップ率を算出する、請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記乗りかごが乗場呼びに応答していずれかの階床で戸開したときに、前記乗場床占有面積算出部で算出された、該当する階床の乗場の乗場床占有面積の変化量、および、前記かご床占有率算出部で算出されたかご床占有率の変化量を、前記エレベータの管理用情報として蓄積する管理用情報蓄積部をさらに備え、
前記利用スキップ率算出部は、前記管理用情報蓄積部に蓄積された情報に基づいて、前記利用スキップ率を算出する、請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
建物の各階のエレベータの乗場それぞれに設置された表示装置に通信可能に接続され、
前記エレベータで発生した乗場呼びの情報を登録する乗場呼び登録部と、
前記エレベータの乗りかご内の床面積に対する、かご内利用者が占有している床部分の面積で示される、かご床占有率を算出するかご床占有率算出部と、
前記エレベータの運転状況に基づいて、現在から過去の所定期間に発生した乗場呼び数に対する、乗場呼び応答して前記乗りかごが戸開しても該当する乗場の待ち利用者が乗り込まなかった回数から、乗場呼びが発生した乗場の待ち利用者に対して乗場呼び登録のキャンセル操作を促すメッセージ情報を出力したにも関わらず該当する待ち利用者がキャンセル操作を行わなかったキャンセル拒否回数を差し引いた値で示される利用スキップ率を算出する利用スキップ率算出部と、
前記乗りかごを乗場呼びに応答させるか否かを判定するために前記かご床占有率ごとに予め設定された、前記利用スキップ率の閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記乗場呼び登録部に新たな乗場呼びが登録されたときに、前記利用スキップ率算出部で算出された利用スキップ率が、前記かご床占有率算出部で算出された現在のかご床占有率に対応する前記閾値を超える場合には、当該乗場呼びが発生した階床の表示装置に、乗場呼び登録のキャンセル操作を促すメッセージ情報を表示させる運転制御部と、を備えたエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記メッセージ情報を表示させた後、所定時間内に該当する乗場の待ち利用者による乗場呼び登録のキャンセル操作が行われると、前記乗場呼び登録部に登録された該当する乗場呼び登録をキャンセルするキャンセル処理部をさらに備えた、請求項5に記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
建物に設置されたエレベータで新たな乗場呼びが登録されたときに、
前記エレベータの運転状況に基づいて、現在から過去の所定期間に発生した乗場呼び数に対する、乗場呼び応答して前記エレベータの乗りかごが戸開しても該当する乗場の待ち利用者が乗り込まなかった回数で示される利用スキップ率を算出し、
算出された利用スキップ率が、現在の前記乗りかご内の床面積に対する、かご内利用者が占有している床部分の面積で示されるかご床占有率に対応する、前記乗りかごを乗場呼びに応答させるか否かを判定するために予め設定された前記利用スキップ率の閾値を超える場合には、前記乗りかごを前記乗場呼びに応答させないことを決定する、エレベータ制御方法。
【請求項8】
建物に設置されたエレベータで新たな乗場呼びが登録されたときに、
前記エレベータの運転状況に基づいて、現在から過去の所定期間に発生した乗場呼び数に対する、乗場呼び応答して前記エレベータの乗りかごが戸開しても該当する乗場の待ち利用者が乗り込まなかった回数から、乗場呼びが発生した乗場の待ち利用者に対して乗場呼び登録のキャンセル操作を促すメッセージ情報を出力したにも関わらず該当する待ち利用者がキャンセル操作を行わなかったキャンセル拒否回数を差し引いた値で示される利用スキップ率を算出し、
算出された利用スキップ率が、現在の前記乗りかご内の床面積に対する、かご内利用者が占有している床部分の面積で示されるかご床占有率に対応する、前記乗りかごを乗場呼びに応答させるか否かを判定するために予め設定された前記利用スキップ率の閾値を超える場合には、当該乗場呼びが発生した階床の表示装置に、乗場呼び登録のキャンセル操作を促すメッセージ情報を表示させる、エレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかご内が混雑している場合、乗場呼びに応答して乗りかごが所定階の乗場で戸開しても、乗場の利用者が乗り込まないことがある。特に、乗りかご内に車椅子利用者またはベビーカー利用者等の大きなスペースを必要とする利用者が乗車しているときには、乗場の利用者が乗り込まない可能性が高くなる。また、近年はコロナ禍の影響によりソーシャルディスタンスを保つことを意識する利用者が多く、乗りかごが戸開しても他の利用者が乗車していると乗り込まない利用者が多くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、乗場呼びに応答して乗りかごが所定階の乗場で戸開しても乗場の利用者が乗り込まない事態が頻繁に発生すると、エレベータの運転効率が低下するとともに、乗場の利用者の待ち時間が長くなり利便性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、乗りかごの無駄な停止をなるべく回避して効率良くエレベータを運転することが可能な、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、利用スキップ率算出部と、動作制御部とを備える。利用スキップ率算出部は、エレベータで新たな乗場呼びが登録されたときに、エレベータの運転状況に基づいて、現在から過去の所定期間に発生した乗場呼び数に対する、乗場呼び応答して乗りかごが戸開しても該当する乗場の待ち利用者が乗り込まなかった回数で示される利用スキップ率を算出する。動作制御部は、算出された利用スキップ率が、現在のかご床占有率に対応する所定の閾値を超える場合には、乗りかごを乗場呼びに応答させないことを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1および第2実施形態によるエレベータ制御装置を備えたエレベータの構成を示す全体図である。
【
図2】第1および第2実施形態によるエレベータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態によるエレベータ制御装置の閾値記憶部に予め記憶された、利用スキップ率の閾値の一例である。
【
図4】第1実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5A】第2実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5B】第2実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータの構成について、
図1を参照して説明する。本実施形態によるエレベータ1Aは複数の階床を有する建物内に設置され、建物内の昇降路2の上部に設置された巻き上げ機3と、巻き上げ機3にかけ渡されたメインロープ4と、メインロープ4の一端に吊り下げられた乗りかご5と、他端に吊り下げられた釣合い錘6と、建物内の各階の乗場7に設置された乗場ドア71、乗場呼び登録ボタン72、乗場表示装置73、および乗場撮像装置74と、昇降路2の上部に設置されたエレベータ制御装置8Aと、乗りかご5とエレベータ制御装置8Aとを接続するテールコード9とを有する。
【0009】
乗りかご5は、乗場側の側面に設置されたかごドア51と、乗りかご5内の上部に設置され、乗りかご5内を撮影するかご内撮像装置52とを有する。
【0010】
図1では、説明を簡略化するために乗場7を1つのみ示しているが、実際には、建物内の階床ごとに乗場7があり、乗場7ごとに乗場ドア71、乗場呼び登録ボタン72、乗場表示装置73、および乗場撮像装置74が設置されている。
【0011】
乗場表示装置73は例えば液晶ディスプレイで構成され、エレベータ制御装置8Aから送信される表示情報を表示する。乗場撮像装置74は、乗場7の上部に設置され、乗場7を撮影する。
【0012】
図2は、エレベータ制御装置8Aの構成を示すブロック図である。エレベータ制御装置8Aは、記憶部81Aと、CPU82Aとを有する。記憶部81Aは、管理用情報蓄積部811Aと、閾値記憶部812とを有する。管理用情報蓄積部811Aは、後述するようにCPU82Aで算出される、エレベータ1Aの動作に関する管理用情報を蓄積する。
【0013】
閾値記憶部812は、乗りかご5を乗場呼びに応答させるか否かを判定するために管理者により予め設定された、利用スキップ率の閾値を記憶する。利用スキップ率とは、乗場呼び応答して乗りかご5のかごドア51が戸開したときに該当する乗場7の待ち利用者が乗り込まない確率である。
【0014】
CPU82Aは、かご内情報取得部821と、かご床占有率算出部822と、乗場情報取得部823と、乗場床占有面積算出部824と、操作情報取得部825と、乗場呼び登録部826と、管理用情報生成部827Aと、利用スキップ率算出部828Aと、動作制御部829Aと、キャンセル処理部830とを有する。
【0015】
かご内情報取得部821は、かご内撮像装置52で撮影されたかご内撮像情報を取得する。かご床占有率算出部822は、かご内情報取得部821で取得されたかご内撮像情報を解析して、乗りかご5内の床面積に対する、かご内利用者が占有している床部分の面積で示される、かご床占有率を算出する。
【0016】
乗場情報取得部823は、乗場撮像装置74で撮影された乗場撮像情報を取得する。乗場床占有面積算出部824は、乗場情報取得部823で取得された乗場撮像情報を解析して、乗場7において待ち利用者が占有している床部分の面積である乗場床占有面積を算出する。
【0017】
操作情報取得部825は、いずれかの階床の乗場7の乗場呼び登録ボタン72から送信された、利用者による乗場呼び登録操作の情報を取得する。乗場呼び登録部826は、操作情報取得部825で取得された乗場呼び登録操作の情報に基づいて、該当する階床の乗場呼びの情報を登録する。
【0018】
管理用情報生成部827Aは、乗場呼びまたはかご呼びに応答して乗りかご5がいずれかの階床に着床して戸開する都度、所定の管理用情報を生成して管理用情報蓄積部811Aに記憶させる。管理用情報の詳細については、後述する。
【0019】
利用スキップ率算出部828Aは、管理用情報蓄積部811Aに蓄積された管理用情報に基づいて、現在から過去の所定期間の利用スキップ率を算出する。
【0020】
動作制御部829Aは、乗場呼び登録部826に新たな乗場呼びが登録されたときに、乗りかご5が、乗場呼びが発生した階床に向かって乗場呼びで指定された方向に移動しているが、かご床占有率が100%である場合には、乗りかご5を該当する乗場呼びに応答させないことを決定する。
【0021】
また動作制御部829Aは、乗りかご5のかご床占有率が100%ではないが、乗場呼びが登録されたときに取得した利用スキップ率算出部828Aで算出された利用スキップ率が、閾値記憶部812に記憶された閾値のうち、かご床占有率算出部822で算出された最新のかご床占有率および現在時刻が該当する時間帯に対応する閾値を超える場合には、乗りかご5を該当する乗場呼びに応答させないことを決定する。
【0022】
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータの動作〉
本実施形態によるエレベータ1Aの動作について、説明する。
図3は、エレベータ制御装置8Aの閾値記憶部812に予め記憶された、利用スキップ率の閾値の一例である。
【0023】
図3の例では、かご床占有率の範囲(60~69%、70~79%、80~89%、90~95%)ごと、および時間帯(出勤時間帯である7:00~8:00、昼食時間帯である12:00~13:00、それ以外の時間帯)ごとに予め設定された利用スキップ率の閾値を示している。エレベータ1Aが混雑する出勤時間帯および昼食時間帯は、乗りかご5がある程度混雑していても待ち利用者が乗り込む可能性が高くなることを想定し、これらの時間帯は、他の時間帯よりも閾値が高く設定されている。また、かご床占有率が高いと待ち利用者が乗り込まない可能性が高くなることを想定して、かご床占有率が高い程、閾値が高く設定されている。なお、閾値及び項目については管理者側で任意に設定可能としても構わない。
【0024】
また、エレベータ制御装置8Aの管理用情報蓄積部811Aには、過去に乗場呼びまたはかご呼びに応答して乗りかご5がいずれかの階床に着床して戸開する都度、管理用情報生成部827Aで生成された管理用情報が蓄積されている。管理用情報は、直近の過去の所定期間に関して計数された、乗りかご5が乗場呼びに応答して戸開したにも関わらず乗場7の待ち利用者が乗り込まなかった回数(以下、「利用スキップ回数」と記載する)の情報を含む。
【0025】
また管理用情報は、乗りかご5が乗場呼びまたはかご呼びに応答していずれかの階床で戸開した都度、乗場床占有面積算出部824で算出された、該当する階床の乗場床占有面積の変化量、および、かご床占有率算出部822で算出されたかご床占有率の変化量を含む。
【0026】
また管理用情報は、乗場床占有面積の変化量およびかご床占有率の変化量に基づいて算出された、所定の時間帯ごとの乗場床占有面積の増加量の合計値、乗場の乗場床占有面積の減少量の合計値、かご床占有率の増加量の合計値、かご床占有率の減少量の合計値、各時間帯における1回の乗場呼びに関する、乗場床占有面積の増加量の平均値、乗場床占有面積の減少量の平均値、かご床占有率の増加量の平均値、かご床占有率の減少量の平均値を含む。
【0027】
図4は、エレベータ1Aの稼動中に、エレベータ制御装置8Aが実行する処理の流れを示すフローチャートである。エレベータ1Aの稼動中、エレベータ制御装置8Aのかご内情報取得部821は、かご内撮像装置52で撮影されたかご内撮像情報を、テールコード9を介して取得する。
【0028】
かご床占有率算出部822は、かご内情報取得部821が取得したかご内撮像情報を解析して、乗りかご5内の床面積に対する、かご内利用者が占有している床部分の面積で示される、かご床占有率を所定時間間隔で算出する(S1)。
【0029】
かご床占有率算出部822がかご床占有率を算出すると、動作制御部829Aが、算出されたかご床占有率の情報を乗場表示装置73に表示させる(S2)。乗場の待ち利用者は、乗場表示装置73に表示されたかご床占有率の情報を視認することで現在の乗りかご5の混雑状況を認識し、これに基づいて乗場呼び登録操作を行うか否かを判断することができる。
【0030】
乗場7で待ち利用者が乗場呼び登録ボタン72を操作して上下いずれかの方向に移動するための乗場呼び登録操作を行うと、当該操作情報が操作情報取得部825で取得され、該当する乗場呼びが乗場呼び登録部826に登録される(S3の「YES」)。
【0031】
乗場呼びが登録されると動作制御部829Aは、乗りかご5が、乗場呼びが発生した階床に向かって乗場呼びで指定された方向に移動しているか否かを判定する(S4)。乗りかご5が、乗場呼びが発生した階床に向かって乗場呼びで指定された方向に移動していないときには、乗りかご5が該当する動作状態になるまで、ステップS4の判定処理が繰り返される(S4の「NO」)。
【0032】
乗りかご5が、乗場呼びが発生した階床に向かって乗場呼びで指定された方向に移動していると判定すると(S4の「YES」)、動作制御部829Aは、かご床占有率算出部822で算出された情報に基づいて、乗りかご5の現在のかご床占有率が100%であるが否かを判定する(S5)。ここで、乗りかご5の現在のかご床占有率が100%であると判定した場合には、動作制御部829Aは乗りかご5を該当する乗場呼びに応答させないことを決定して該当階を通過させて(S6)、ステップS4に戻る。
【0033】
その後、乗りかご5内の利用者の少なくとも一部がいずれかの階床で降車することにより乗りかご5のかご床占有率が100%でない状態になるまで(S5の「YES」)、ステップS4~S6の処理が繰り返される。
【0034】
乗りかご5の現在のかご床占有率が100%でないと判定したときには(S5の「NO」)、動作制御部829Aは、利用スキップ率算出部828Aに利用スキップ率の算出を指示する。利用スキップ率算出部828Aは、動作制御部829Aから利用スキップ率の算出が指示されると、管理用情報蓄積部811Aに蓄積された情報に基づいて、下記式(1)により、現在から過去の所定期間の平均利用スキップ率を算出し、動作制御部829Aに送出する。
【0035】
【0036】
具体的には、利用スキップ率算出部828Aは、現在から過去の所定期間(例えば、1ヶ月)に発生した乗場呼び数に対する利用スキップ回数の割合を、該当する期間の平均利用スキップ率として算出し、動作制御部829Aに送出する。
【0037】
動作制御部829Aは、取得した平均利用スキップ率が、閾値記憶部812に記憶された閾値のうち、かご床占有率算出部822で算出された最新のかご床占有率および現在時刻が該当する時間帯に対応する閾値を超えるか否かを判定する(S7)。
【0038】
動作制御部829Aは、取得した利用スキップ率が該当する閾値を超えると判定すると(S7の「YES」)、乗りかご5を該当する乗場呼びに応答させないことを決定して該当階を通過させ(S6)、ステップS4に戻る。
【0039】
その後、乗りかご5内の利用者の少なくとも一部がいずれかの階床で降車することにより、取得した利用スキップ率が該当する閾値以下になるまで、ステップS4~S7の処理が繰り返される(S7の「YES」)。
【0040】
動作制御部829Aは、取得した利用スキップ率が該当する閾値以下になったと判定すると(S7の「NO」)、乗りかご5を乗場呼び応答させて乗場呼びが発生した階床に着床させ、かごドア51および乗場ドア71を戸開させる(S8)。かごドア51および乗場ドア71が戸開した後、戸閉する前に、かご床占有率算出部822が最新のかご内撮像情報に基づいてかご床占有率を算出する。また、乗場床占有面積算出部824が、乗場情報取得部823が取得した最新の乗場撮像情報を解析して、乗場7において待ち利用者が占有している床部分の面積である乗場床占有面積を算出する。
【0041】
管理用情報生成部827Aは、乗りかご5の戸開前のかご床占有率と戸開後のかご床占有率との変化量、および戸開前の乗場床占有面積と戸開後の乗場床占有面積との変化量に基づいて、乗場7の待ち利用者が乗りかご5に乗車したか否かを判定する(S9)。
【0042】
ここで、乗場7の待ち利用者が乗車したと判定したときには(S9の「YES」)、管理用情報生成部827Aは、かご床占有率の変化量および乗場床占有面積の変化量の情報を用いて、該当する時間帯に関する管理用情報を更新する(S10)。
【0043】
また、乗場7の待ち利用者が乗車しなかったと判定したときには(S9の「NO」)、管理用情報生成部827Aは、管理用情報蓄積部811Aに記憶された直近の過去の所定期間内に関する利用スキップ回数を「1」増加させることで、管理用情報を更新する(S11)。このように、管理用情報内の利用スキップ数を更新することで、その後に乗場呼びが発生した際に、現在の利用状況を反映して精度良く平均利用スキップ率が算出され、この精度の高い平均利用スキップ率に基づいて当該乗場呼びに乗りかご5を応答させるか否かの判定を適切に行うことができる。
【0044】
その後、動作制御部829Aは、乗りかご5を戸閉させ、次の目的階に向かって移動を開始させる(S12)。
【0045】
以上の第1実施形態によれば、乗りかごの無駄な停止をなるべく回避して、効率良くエレベータを運転することができる。
【0046】
上述した第1実施形態では、1台のエレベータ1Aに関して、乗りかご5の現在の混雑状況および過去の利用状況から算出された利用スキップ率に基づいて、乗場呼びに乗りかご5を応答させるか否かを判断する処理について説明したが、同様の手法を用いて、複数台のエレベータを制御してもよい。
【0047】
複数台のエレベータを制御する場合、これらのエレベータに通信接続された群管理装置が、各乗りかごの現在の混雑状況および過去の利用状況から算出された複数のエレベータ全体の利用スキップ率に基づいて、乗場呼びに応答させる乗りかごを判断する。具体的には、乗場呼びが登録されたときに、群管理装置が複数のエレベータの中から、乗場呼びが発生した階床に向かって登録された方向に移動しており、かご床占有率が100%ではない乗りかごを割り当て候補として特定する。そして群管理装置は、複数のエレベータ全体に対する最新の利用スキップ率が、特定した乗りかごの最新のかご床占有率および現在時刻が該当する時間帯に対応する閾値を超えると判定すると、当該乗りかごを乗場呼びに応答させないようにする。
【0048】
また群管理装置は、複数のエレベータ全体に対する最新の利用スキップ率が、対応する閾値以下であると判定すると、特定した乗りかごを乗場呼びに応答させて着床、戸開させる。そして、戸開後に利用者が乗車したか否かに基づいて、上述したステップS9~S12で説明したように、管理用情報を更新する。ここで更新される管理用情報は、エレベータごとに生成してもよいし、複数のエレベータ全体をまとめた値を用いて生成してもよい。
【0049】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータ1Bの構成は、第1実施形態で説明したエレベータ1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明については省略する。
【0050】
記憶部81Bの管理用情報蓄積部811Bは、管理用情報としてさらに、直近の過去の所定期間内に、後述するように乗場表示装置73に乗場呼び登録のキャンセル操作を促すメッセージ情報を乗場7の待ち利用者に対して表示させたにも関わらず、待ち利用者が該当する操作を行わなかった回数(以下、「キャンセル拒否回数」と記載する)の情報を記憶する。
【0051】
CPU82Bの動作制御部829Bは、乗場呼びが登録されたときに、乗りかご5が、乗場呼びが発生した階床に向かって乗場呼びで指定された方向に移動しており、かご床占有率が100%であると判定されている場合には、乗場呼びが発生した階の乗場表示装置73に、乗りかご5が通過することを通知する第1メッセージを表示させるとともに、乗りかご5を該当する階床を通過させ、該当する乗場呼びに応答させないことを決定する。
【0052】
また動作制御部829Bは、かご床占有率が100%ではないが、乗場呼びが登録されたときに取得した平均利用スキップ率が、最新のかご床占有率および現在時刻が該当する時間帯に対応する閾値を超えると判定すると、乗場呼びが発生した階床の乗場表示装置73に所定の第2メッセージ情報を表示させる。第2メッセージ情報は、乗りかご5内が高占有状態であることを通知するとともに、乗場呼び登録のキャンセル操作を促すメッセージ情報である。
【0053】
また動作制御部829Bは、乗場表示装置73に第2メッセージ情報を表示させた後、所定時間内に乗場7の待ち利用者により乗場呼び登録のキャンセル操作がなかった場合には、第2メッセージ情報に対する乗場呼び登録のキャンセル操作がなかったことを管理用情報生成部827Bに通知する。
【0054】
管理用情報生成部827Bは、動作制御部829Bから、第2メッセージ情報に対する乗場呼び登録のキャンセル操作がなかったことが通知されると、管理用情報蓄積部811Bに記憶されたキャンセル拒否回数を「1」増加させることで、管理用情報を更新する。
【0055】
利用スキップ率算出部828Bは、管理用情報蓄積部811Bに蓄積されたキャンセル拒否回数を含む管理用情報を用いて、現在から過去の所定期間の利用スキップ率を算出する。
【0056】
キャンセル処理部830は、乗場7の待ち利用者により乗場呼び登録をキャンセルするための操作が行われたときに乗場呼び登録部に登録された該当する乗場呼びをキャンセルする。
【0057】
〈第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータの動作〉
本実施形態によるエレベータ1Bの動作について、説明する。
図5Aおよび
図5Bは、エレベータ1Bの稼動中に、エレベータ制御装置8Bが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
図5A内のステップS21~S25は、第1実施形態で説明したステップS1~S5と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0059】
ステップS25において、動作制御部829Bが乗りかご5の現在のかご床占有率が100%であると判定した場合には、乗りかご5が通過することを通知する第1メッセージ情報を生成し、乗場呼びが発生した階の乗場表示装置73に表示させる(S26)。また動作制御部829Bは、乗りかご5を該当する乗場呼びに応答させないことを決定して該当階を通過させて(S27)、ステップS24に戻る。
【0060】
その後、乗りかご5内の利用者の少なくとも一部がいずれかの階床で降車することにより乗りかご5のかご床占有率が100%でない状態になるまで(S25の「YES」)、ステップS24~S27の処理が繰り返される。
【0061】
乗りかご5の現在のかご床占有率が100%でないと判定したときには(S25の「NO」)、動作制御部829Bは、利用スキップ率算出部828Bに利用スキップ率の算出を指示する。利用スキップ率算出部828Bは、動作制御部829Bから利用スキップ率の算出が指示されると、管理用情報蓄積部811Bに蓄積された情報に基づいて、下記式(2)により、現在から過去の所定期間の平均利用スキップ率を算出し、動作制御部829Bに送出する。
【0062】
【0063】
具体的には、利用スキップ率算出部828Bは、現在から過去の所定期間(例えば、1ヶ月)に発生した乗場呼び数に対する、利用スキップ回数からキャンセル拒否回数を差し引いた値の割合を、該当する期間の平均利用スキップ率として算出し、動作制御部829Bに送出する。
【0064】
動作制御部829Bは、取得した平均利用スキップ率が、閾値記憶部812に記憶された閾値のうち、かご床占有率算出部822で算出された最新のかご床占有率および現在時刻が該当する時間帯に対応する閾値を超えるか否かを判定する(S28)。
【0065】
動作制御部829Bは、取得した利用スキップ率が該当する閾値を超えると判定すると(S28の「YES」)、乗りかご5内が高占有状態であることを通知するとともに、乗場呼び登録のキャンセル操作を促す第2メッセージ情報を生成し、乗場呼びが発生した階の乗場表示装置73に表示させる(S29)。動作制御部829Bは、第2メッセージ情報を、乗場7に設置されたスピーカ装置(図示せず)から音声情報として出力させてもよい。
【0066】
乗場表示装置73に第2メッセージ情報を表示させた後、所定時間内に乗場7の待ち利用者による乗場呼び登録のキャンセル操作が行われた場合には(S30の「YES」)、キャンセル処理部830が、乗場呼び登録部826に登録されている該当する乗場呼び登録をキャンセルし、ステップS23に戻る(S31)。乗場呼び登録のキャンセル操作は、例えば、該当する方向の乗場呼び登録ボタン72を長押しまたは所定回連続操作すること、または乗場7に設置された入力装置(図示せず)に対して所定の入力操作をすることにより、行われる。
【0067】
また、乗場表示装置73に第2メッセージ情報を表示させた後、所定時間内に乗場7の待ち利用者による乗場呼び登録のキャンセル操作がなかった場合には(S30の「NO」)、動作制御部829Bは、第2メッセージ情報に対する乗場呼び登録のキャンセル操作がなかったことを管理用情報生成部827Bに通知する。
【0068】
管理用情報生成部827Bは、第2メッセージ情報に対する乗場呼び登録のキャンセル操作がなかったことが通知されると、管理用情報蓄積部811Bに記憶されたキャンセル拒否回数を「1」増加させることで、管理用情報を更新する(S32)。このように、キャンセル拒否回数を更新することで、その後に乗場呼びが発生した際に、現在の利用状況を反映して精度良く平均利用スキップ率が算出され、この精度の高い平均利用スキップ率に基づいて当該乗場呼びに乗りかご5を応答させるか否かの判定を適切に行うことができる。
【0069】
その後、動作制御部829Bは、乗りかご5を乗場呼び応答させて乗場呼びが発生した階床に着床させ、戸開させる(S33)。乗りかご5が戸開した後、実行するステップS34~S37は、第1実施形態で説明したステップS9~S12と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0070】
以上の第2実施形態によれば、乗りかご内が混雑しているときに、乗場の待ち利用者に乗場呼び登録のキャンセルを促す処理を実行することで、さらに乗りかごの無駄な停止をなるべく回避して、効率良くエレベータを運転することができる。
【0071】
上述した第2実施形態では、1台のエレベータ1Bに関して、乗りかご5の現在の混雑状況および過去の利用状況から算出された利用スキップ率に基づいて、乗場7の待ち利用者に乗場呼び登録のキャンセルを促すか否かを判断する処理について説明したが、同様の手法を用いて、複数台のエレベータを制御してもよい。
【0072】
複数台のエレベータを制御する場合、これらのエレベータに通信接続された群管理装置が、各乗りかごの現在の混雑状況および過去の利用状況から算出された複数のエレベータ全体の利用スキップ率に基づいて、乗場呼びに応答させる乗りかごを判断する。具体的には、乗場呼びが登録されたときに、群管理装置が、複数のエレベータの中から、乗場呼びが発生した階床に向かって登録された方向に移動しており、かご床占有率が100%ではない乗りかごを割り当て候補として特定する。また群管理装置は、複数のエレベータ全体に対する最新の利用スキップ率を、キャンセル拒否回数を考慮して算出する。群管理装置は、算出した利用スキップ率が、特定した乗りかごの最新のかご床占有率および現在時刻が該当する時間帯に対応する閾値を超えると判定すると、乗場7の待ち利用者に乗場呼び登録のキャンセルを促す。その後、待ち利用者により乗場呼び登録のキャンセル操作が行われなかった場合に、キャンセル拒否回数を増加させて管理用情報を更新するとともに、特定した乗りかごを乗場呼びに応答させて着床、戸開させる。そして、戸開後に利用者が乗車したか否かに基づいて、上述したステップS33~S37で説明したように、管理用情報を更新する。ここで更新される管理用情報は、エレベータごとに生成してもよいし、複数のエレベータ全体をまとめた値を用いて生成してもよい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1A,1B…エレベータ、2…昇降路、3…巻き上げ機、4…メインロープ、5…乗りかご、6…釣合い錘、7…乗場、8A,8B…エレベータ制御装置、9…テールコード、51…かごドア、52…かご内撮像装置、71…乗場ドア、72…乗場呼び登録ボタン、73…乗場表示装置、74…乗場撮像装置、81A,81B…記憶部、82A,82B…CPU、811A,811B…管理用情報蓄積部、812…閾値記憶部、821…かご内情報取得部、822…床占有率算出部、823…乗場情報取得部、824…乗場床占有面積算出部、825…操作情報取得部、826…乗場呼び登録部、827A,827B…管理用情報生成部、828A,828B…利用スキップ率算出部、829A,829B…動作制御部、830…キャンセル処理部
【要約】
【課題】 乗りかごの無駄な停止をなるべく回避して効率良くエレベータを運転することが可能な、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法を提供する。
【解決手段】 実施形態によればエレベータ制御装置は、利用スキップ率算出部と、動作制御部とを備える。利用スキップ率算出部は、エレベータで新たな乗場呼びが登録されたときに、エレベータの運転状況に基づいて、現在から過去の所定期間に発生した乗場呼び数に対する、乗場呼び応答して乗りかごが戸開しても該当する乗場の待ち利用者が乗り込まなかった回数で示される利用スキップ率を算出する。動作制御部は、算出された利用スキップ率が、現在のかご床占有率に対応する所定の閾値を超える場合には、乗りかごを乗場呼びに応答させないことを決定する。
【選択図】
図2