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特許7419488複合フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】複合フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20240115BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240115BHJP
   H10K 59/80 20230101ALI20240115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240115BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240115BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G02B1/14
H10K59/10
H10K59/80
B32B27/00 B
G09F9/00 302
G09F9/30 310
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022201639
(22)【出願日】2022-12-16
(65)【公開番号】P2023124801
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0025534
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520287378
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス ソリューションズ 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks solutions Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】112, Seonggeo-gil, Seonggeo-eup, Seobuk-gu, Cheonan-si,Chungcheongnam-do 31044, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュンキ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ソクジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン、スンヨン
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-175397(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173867(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/104520(WO,A1)
【文献】特開2019-105830(JP,A)
【文献】特開2002-055204(JP,A)
【文献】特開2021-161433(JP,A)
【文献】特開2017-080970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/14
H10K 59/10
H10K 59/80
B32B 27/00
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの一面上に配置されるハードコート層と、
前記基材フィルムの他面上に配置される弾性層とを含み、
前記弾性層の貯蔵モジュラスは、常温(25℃)にて7×10 Pa~1×10 Paであり、
下記式(1)による△E'値が300以下である、複合フィルム:
△E'=E'[-30℃]/E'[50℃]...(1)
ここで、
E'[-30℃]は、前記弾性層の-30℃における貯蔵モジュラス(Pa)であり、
E'[50℃]は、前記弾性層の50℃における貯蔵モジュラス(Pa)である。
【請求項2】
前記弾性層の貯蔵モジュラスは、
-30℃にて1×10Pa~3×10Paであり、
50℃にて1×10Pa~1×10Paである、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムの貯蔵モジュラスに対する前記弾性層の貯蔵モジュラスの比(弾性層/基材フィルム)は25℃にて0.5以下である、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記複合フィルムについて、ISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定される前記ハードコート層表面のビッカース硬度(H)が30N/mm以上であり、下記式で算出される復元率(Recovery)が69%以上である、請求項1に記載の複合フィルム:
Recovery(%)=[(hmax-h)/hmax]×100
ここで、hmaxは、30mNの力で前記ハードコート層の表面を15秒間下方に押して5秒間維持(creep)させる間の最大インデンテーション深さ(μm)であり、hは、前記力が除去された後も復元されずに残っているインデンテーションの深さ(μm)である。
【請求項5】
前記複合フィルムは、
下記式により算出されるH増加(N/mm)が2.0N/mm以上であり、
下記式により算出されるRecovery増加(%)が1.5%以上である、請求項1に記載の複合フィルム:
増加(N/mm)=H1(N/mm)-H2(N/mm
Recovery増加(%)=Recovery1(%)-Recovery2(%)
ここで、
1は、前記複合フィルムのビッカース硬度(H)(N/mm)であり、H2は、前記複合フィルムから前記弾性層のみを除いた層構造を有するフィルムのビッカース硬度(H)(N/mm)であり、
Recovery1は、前記複合フィルムの復元率(%)であり、Recovery2は、前記複合フィルムから前記弾性層のみを除いた層構造を有するフィルムの復元率(%)である。
【請求項6】
前記弾性層は、2~8の官能基を有するUV硬化型ウレタンアクリレート系オリゴマーを含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物およびエポキシアクリレート系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムの厚さは40μm~200μmであり、
前記ハードコート層の厚さは2μm~20μmであり、
前記弾性層の厚さは10μm~100μmである、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムは、高分子フィルムまたは超薄型ガラス(UTG)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項10】
ディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルの前面上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウは、
基材フィルムと、
前記基材フィルムの一面上に配置されるハードコート層と、
前記基材フィルムの他面上に配置される弾性層とを含み、
前記弾性層の貯蔵モジュラスは、常温(25℃)にて7×10 Pa~1×10 Paであり、
下記式(1)による△E'値が300以下である、ディスプレイ装置:
△E'=E'[-30℃]/E'[50℃]...(1)
ここで、
E'[-30℃]は、前記弾性層の-30℃における貯蔵モジュラス(Pa)であり、
E'[50℃]は、前記弾性層の50℃における貯蔵モジュラス(Pa)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、表面硬度に優れた複合フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ技術は、IT機器の発達に伴う需要に支えられ発展し続けており、カーブド(curved)ディスプレイ、ベンデッド(bended)ディスプレイなどの技術はすでに商用化されている。近年、大画面と携帯性とが同時に求められるモバイル機器分野において、外力に応じて柔軟に曲がったりフォルディング(folding)されたりし得る、フレキシブルディスプレイ(flexible display)装置が好まれている。特に、フォルダブル(foldable)ディスプレイ装置は、使用しないときは折りたたんで小さくして携帯性を高め、使用するときは広く広げて大画面を実現できることが大きな利点である。
【0003】
このようなフレキシブルディスプレイ装置において、カバーウィンドウは柔軟でかつ復元性を有することが求められ、また、ディスプレイが外部に露出されるアウトフォールディングタイプの場合、柔軟性だけでなく外力に対する保護機能を有することが求められている。
【0004】
ディスプレイ装置は、カバーウィンドウに透明なポリイミドやポリエステルのような高分子フィルムまたはガラス基板を主に使用するが、高分子フィルムは外部のスクラッチに脆弱であり、ガラス基板は柔軟性に乏しい問題がある。
【0005】
これを解決するべく、特許文献1は、耐スクラッチ性および柔軟性を向上させるために、透明な基材上にシロキサン樹脂を用いた高屈曲層および高硬度層を順次形成して製造されるハードコーティングフィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開第2019-0026611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用されるハードコートフィルムの表面硬度を高めるために、一般にハードコート層(上部コーティング層)の厚さを増大させるか、ハードコート層の組成を変更することが試みられるが、この場合、概ねハードコート層が容易に砕ける(brittle)性質が強くなり、柔軟な特性を失い得る。
【0008】
そこで、本発明者らが研究した結果、ハードコート層の反対面(すなわち、基材フィルムの下部面)に、温度によるモジュラス変化特性を一定範囲に調節した弾性層を導入することにより、ハードコート層の厚さを増大させたり、ハードコート層の組成を変更したりしなくとも、ハードコート層の表面硬度と弾性回復特性を向上させ得ることを見出した。
【0009】
したがって、以下の実現例により、表面硬度および弾性回復力が高いとともにフレキシブルな特性を有する複合フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実現例によると、基材フィルムと、前記基材フィルムの一面上に配置されるハードコート層と、前記基材フィルムの他面上に配置される弾性層とを含み、下記式(1)による△E'値が300以下である、複合フィルムが提供される。
△E'=E'[-30℃]/E'[50℃]...(1)
【0011】
ここで、E'[-30℃]は、前記弾性層の-30℃における貯蔵モジュラス(Pa)であり、E'[50℃]は、前記弾性層の50℃における貯蔵モジュラス(Pa)である。
【0012】
他の実現例によると、ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルの前面上に配置されるカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウは、基材フィルムと、前記基材フィルムの一面上に配置されるハードコート層と、前記基材フィルムの他面上に配置される弾性層とを含み、前記式(1)による△E'値が300以下である、ディスプレイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
前記実現例による複合フィルムは、温度によるモジュラス変化特性が一定範囲に調節された弾性層が、ハードコート層の反対面(すなわち、基材フィルムの下部面)にコーティングされることにより、ハードコート層の表面硬度と弾性回復特性とを向上させ得る。
【0014】
したがって、前記実現例による複合フィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウ、例えば図6aおよび図6bのようにディスプレイが外部に露出するアウトフォールディングまたはインフォールディングタイプの装置のカバーウィンドウに適用され、柔軟な特性を有しつつ外力に対するディスプレイの保護性能を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実現例によるディスプレイ装置の分解斜視図である。
図2図2は、一実現例による複合フィルム(カバーウィンドウ)の断面図である。
図3図3は、動的粘弾性測定装置(DMA)による様々な弾性層の温度による貯蔵モジュラス曲線である。
図4図4は、ナノインデンテーション試験において、サンプルの圧入前(a)および後(b)を示すものである。
図5図5は、インデンターチップによる圧入(a)および解除(b)の際におけるサンプルの断面図を示すものである。
図6a図6aは、インフォールディングタイプのフレキシブルディスプレイ装置を示すものである。
図6b図6bは、アウトフォールディングタイプのフレキシブルディスプレイ装置を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、様々な実現例および実施例を、図面を参照して具体的に説明する。
以下の実現例を説明するにおいて、関連する公知の構成または機能に関する具体的な説明が、実現例の要旨を不明瞭にし得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。また、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張または省略されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0017】
本明細書において、ある構成要素が他の構成要素の上/下に形成されるか、もしくは互いに連結または結合されるという記載は、これらの構成要素間に直接または他の構成要素を介して間接的に形成、連結または結合されることを全て含む。また、各構成要素の上/下に関する基準は、対象を観察する方向に応じて変わり得るものと理解されるべきである。
【0018】
本明細書において各構成要素を指す用語は、他の構成要素と区別するために使用されるものであり、実現例を限定することを意図するものではない。また、本明細書において単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を指さない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本明細書において「含む」という記載は、特定の特性、領域、段階、工程、要素および/または成分を具体化するためのものであり、特に反する記載がない限り、他の特性、領域、段階、工程、要素および/または成分の存在や付加を除外するものではない。
【0020】
本明細書において第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用されるものであり、前記構成要素は前記用語によって限定されるべきではない。前記用語は、ある構成要素を他の構成要素と区別する目的で使用される。
【0021】
本明細書に記載の化合物または高分子の分子量、例えば、数平均分子量または重量平均分子量は、周知のように、炭素-12を基準とした相対質量として単位を記載しないが、必要に応じて同じ数値のモル質量(g/mol)であるものと理解しても良い。
【0022】
本明細書において「置換された」とは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のC-C30アルキル基、置換または非置換のC-C30アルケニル基、置換または非置換のC-C30アルキニル基、置換または非置換のC-C30アルコキシ基、置換または非置換のC-C30脂環式有機基、置換または非置換のC-C30ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アリール基、および置換または非置換のC-C30ヘテロアリール基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されたものを指し、互いに隣接する2つの置換基は連結して環を形成することもあり得る。
【0023】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の分解斜視図である。
図1を参照すると、一実現例によるディスプレイ装置1は、ディスプレイパネル20と、前記ディスプレイパネル20の前面(視認面)上に配置されるカバーウィンドウ10とを含む。具体的に、前記ディスプレイ装置1は、カバーウィンドウ10、ディスプレイパネル20、基板30、およびこれらを保護するフレーム40を含む。また、前記カバーウィンドウ10と前記ディスプレイパネル20との間に接着層が形成され得る。例えば、前記接着層は、光学的に透明な接着剤を含み得る。
【0024】
前記実現例によるディスプレイ装置は柔軟性を有し得る。例えば、前記ディスプレイ装置は、フレキシブルディスプレイ装置またはフォルダブルディスプレイ装置であり得る。
【0025】
前記ディスプレイパネル20は、液晶ディスプレイ(LCD)パネルであり得る。または、前記ディスプレイパネル20は、有機発光ディスプレイ(OLED)パネルであり得る。前記有機発光ディスプレイ装置は、前面偏光板と有機発光ディスプレイパネルとを含み得る。前記前面偏光板は、前記有機発光ディスプレイパネルの前面上に配置され得る。より具体的に、前記前面偏光板は、前記有機発光ディスプレイパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。前記有機発光ディスプレイパネルは、ピクセル単位の自発光によって画像を表示する。前記有機発光ディスプレイパネルは、有機発光基板と駆動基板とを含む。前記有機発光基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機発光ユニットを含む。前記有機発光ユニットは、それぞれ、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含む。前記駆動基板は、前記有機発光基板に駆動的に結合される。すなわち、前記駆動基板は、前記有機発光基板に駆動電流のような駆動信号を印加し得るように結合され得る。より具体的に、前記駆動基板は、前記有機発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機発光基板を駆動し得る。
【0026】
前記ディスプレイ装置1には、カバーウィンドウ10として一実現例による複合フィルムが適用される。図2は、一実現例によるカバーウィンドウ(すなわち、一実現例による複合フィルム)の断面図である(図1におけるA-A')。
【0027】
図2を参照すると、一実現例によるカバーウィンドウ10は、基材フィルム100と、前記基材フィルム100の一面上に配置されるハードコート層200と、前記基材フィルム100の他面上に配置される弾性層300とを含む。
【0028】
[フィルムの特性]
前記複合フィルムは、温度によるモジュラス変化特性が一定範囲に調節された弾性層が、ハードコート層の反対面(すなわち、基材フィルムの下部面)にコーティングされることにより、ハードコート層の表面硬度と弾性回復特性とを向上させ得る。
【0029】
前記温度によるモジュラス変化は、例えば、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定され得る。
【0030】
一実現例によると、下記式(1)による△E'値が300以下である。
△E'=E'[-30℃]/E'[50℃]...(1)
ここで、E'[-30℃]は、前記弾性層の-30℃における貯蔵モジュラス(Pa)であり、E'[50℃]は、前記弾性層の50℃における貯蔵モジュラス(Pa)である。
【0031】
例えば、前記式(1)の△E'は、300以下、250以下、200以下、150以下、100以下、または50以下であり得る。また、前記式(1)の△E'は、1以上、1超、2以上、10以上、20以上、30以上、50以上、または100以上であり得る。具体例として、前記式(1)の△E'は、2~300、または10~200であり得る。
【0032】
また、前記弾性層は、各温度別モジュラスが一定範囲内に調節され得る。
一例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、-30℃にて3×10Pa以上、5×10Pa以上、7×10Pa以上、または1×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、-30℃にて1×1010Pa以下、7×10Pa以下、5×10Pa以下、または3×10Pa以下であり得る。
【0033】
他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、-10℃にて1×10Pa以上、5×10Pa以上、7×10Pa以上、または1×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、-10℃にて1×1010Pa以下、7×10Pa以下、5×10Pa以下、または3×10Pa以下であり得る。
【0034】
また他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、10℃にて5×10Pa以上、7×10Pa以上、1×10Pa以上、または3×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、10℃にて1×1010Pa以下、7×10Pa以下、5×10Pa以下、または3×10Pa以下であり得る。
【0035】
また他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、常温(25℃)にて1×10Pa以上、5×10Pa以上、7×10Pa以上、または1×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、常温(25℃)にて1×1010Pa以下、5×10Pa以下、1×10Pa以下、または7×10Pa以下であり得る。
【0036】
また他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、30℃にて1×10Pa以上、5×10Pa以上、7×10Pa以上、または1×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、30℃にて1×1010Pa以下、5×10Pa以下、3×10Pa以下、または1×10Pa以下であり得る。
【0037】
また他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、50℃にて1×10Pa以上、5×10Pa以上、7×10Pa以上、または1×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、50℃にて1×10Pa以下、5×10Pa以下、3×10Pa以下、または1×10Pa以下であり得る。
【0038】
また他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、70℃にて5×10Pa以上、1×10Pa以上、5×10Pa以上、または8×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、70℃にて5×10Pa以下、1×10Pa以下、7×10Pa以下、または5×10Pa以下であり得る。
【0039】
また他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、90℃にて5×10Pa以上、1×10Pa以上、5×10Pa以上、または7×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、90℃にて5×10Pa以下、1×10Pa以下、7×10Pa以下、または5×10Pa以下であり得る。
【0040】
具体的な一例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、-30℃にて1×10Pa~3×10Paであり、-10℃にて1×10Pa~3×10Paであり、10℃にて3×10Pa~3×10Paであり、30℃にて1×10Pa~1×10Paであり、50℃にて1×10Pa~1×10Paであり得る。
【0041】
具体的な他の例として、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、-30℃にて1×10Pa~3×10Paであり、50℃にて1×10Pa~1×10Paであり得る。
【0042】
特に、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、高温にてさらに差別化され得る。具体的に、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、50℃にて1×10Pa以上であり得る。また、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、70℃にて5×10Pa以上であり得る。さらに、前記弾性層の貯蔵モジュラスは、90℃にて5×10Pa以上であり得る。
【0043】
前記弾性層は、前記基材フィルムに比べて低いモジュラスを有する。一例として、前記基材フィルムの貯蔵モジュラスに対する前記弾性層の貯蔵モジュラスの比(弾性層/基材フィルム)は、-30℃にて0.9以下、例えば0.5~0.9であり得る。他の例として、前記基材フィルムの貯蔵モジュラスに対する前記弾性層の貯蔵モジュラスの比(弾性層/基材フィルム)は、25℃にて0.5以下、例えば0.005~0.5、または0.05~0.5であり得る。また他の例として、前記基材フィルムの貯蔵モジュラスに対する前記弾性層の貯蔵モジュラスの比(弾性層/基材フィルム)は、50℃にて0.1以下、例えば0.001~0.1または0.001~0.05であり得る。
【0044】
前記実現例による複合フィルムは、カバーウィンドウに適用するのに好適な表面硬度を有する。
【0045】
前記複合フィルムの表面硬度は、ナノインデンテーション試験により測定され得る。
【0046】
ナノインデンテーション(nanoindentation)は、一定の幾何学的形状を有するインデンター(indenter)を材料表面にμN~mNレベルの小さい力(荷重)で加えて除去する過程で得られる力-変位曲線(force-displacement curve)を解析して、硬度、弾性係数だけでなく引張物性、残留応力など、様々な機械的特性を測定する分析技術である。
【0047】
インデンターチップ(indenter tip)は様々な幾何学的形状を有し得るが、例えば、円錐(conical)、ピラミッドまたは三角錐(Berkovich三角錐またはVickers三角錐)、円筒平面パンチ(cylindrical flat punch)形状などを有し得る。
【0048】
図4は、ナノインデンテーション試験において、サンプルに圧入する前(a)および後(b)を示すものである。図5は、インデンターチップによる圧入(a)および解除(b)の際におけるサンプルの断面図を示すものである。
【0049】
図4および図5を参照すると、一般的な高分子材料は粘弾性体であるため、インデンター2の下端のチップ2aによってサンプル10aが圧入されたときに最大試験力Fmaxで最大深さhmaxに変形され、その後インデンター2を除去してインデンターチップ2aによる圧入を解除すると、高分子の弾性により変形の一部は復元されるが、残りは永久的に復元されず一定深さhを有する跡(dent)2bが残るようになる。
【0050】
このようなナノインデンテーション試験において、剛性(stiffness、S)、接触投影面積(projected contact area、A)、試験力(F)、最大力(Fmax)における最大インデンテーション深さ(hmax)などが測定され、力-変位曲線が得られ、これらの結果に基づいてインデンテーションモジュラス(indentation modulus、EIT)、インデンテーション硬度(indentation hardness、HIT)、ビッカース硬度(Vickers hardness、H)、マルテンス硬度(Martens hardness、H)、インデンテーションクリープ(indentation creep、CIT)、弾性回復率(Recovery relation、ηIT)などを算出することができる。前記ナノインデンテーション試験は、例えばISO 14577-1:2002(E)規格に基づいて行われ得る。
【0051】
ビッカース硬度(H)は、インデンテーション硬度(HIT)に0.0945を乗じた値(HIT×0.0945)で算出され、例えばISO 14577-1:2002(E)規格に基づいて測定され得る。ビッカース硬度(H)から、延性、展性、耐衝撃性などの塑性的物性を知り得る。前記実現例による複合フィルムのビッカース硬度(H)は、例えば、20N/mm以上、25N/mm以上、30N/mm以上であり、また70N/mm以下、50N/mm以下、または40N/mm以下であり得る。具体的な一例として、前記複合フィルムについて、ISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定される前記ハードコート層表面のビッカース硬度(H)が30N/mm以上であり、より具体的には、30N/mm~70N/mm、または30N/mm~40N/mmであり得る。
【0052】
前記実現例による複合フィルムの高いビッカース硬度(H)は、弾性層に起因するものであり得る。例えば、前記複合フィルムは、下記式により算出されるH増加(N/mm)が0.5N/mm以上であり、具体的に1.0N/mm以上、1.5N/mm以上、または2.0N/mm以上であり、より具体的な一例として、1N/mm~10.0N/mmまたは1.5N/mm~5.0N/mmであり得る。
【0053】
増加(N/mm)=H1(N/mm)-H2(N/mm
ここで、H1は、前記複合フィルムのビッカース硬度(H)(N/mm)であり、H2は前記複合フィルムから前記弾性層のみを除いた層構造を有するフィルムのビッカース硬度(H)(N/mm)である。
【0054】
また、一実現例による前記弾性層(弾性層単一膜)表面のビッカース硬度(H)は、0.3N/mm以上であり、より具体的に0.3N/mm~5N/mmまたは0.3N/mm~3.5N/mmであり得る。
【0055】
インデンテーション硬度(HIT)は塑性硬度とも呼ばれ、最大力における永久(塑性)変形に対する材料の抵抗性を測定したものであって、これにより延性、展性、耐衝撃性などの塑性的物性を知り得る。具体的に、インデンテーション硬度(HIT)は、最大試験力(Fmax)を浸透深さにおける接触投影面積(A)で除した値(Fmax/A)で算出される。前記実現例による複合フィルムのインデンテーション硬度(HIT)は、例えば、250N/mm以上、300N/mm以上、310N/mm以上、320N/mm以上、325N/mm以上、327N/mm以上、328N/mm以上、329N/mm以上、または330N/mm以上であり、また700N/mm以下、500N/mm以下、400N/mm以下、または350N/mm以下であり得る。具体的な一例として、前記複合フィルムについて、ISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定される前記ハードコート層表面のインデンテーション硬度(HIT)が327N/mm以上であり、より具体的に、327N/mm~500N/mmまたは327N/mm~400N/mmであり得る。
【0056】
前記実現例による複合フィルムの高いインデンテーション硬度(HIT)は、弾性層に起因するものであり得る。例えば、前記複合フィルムは、下記式により算出されるHIT増加(N/mm)が5N/mm以上であり、具体的に10N/mm以上または15N/mm以上であり、より具体的な一例として、5N/mm~50N/mmまたは10N/mm~30N/mmであり得る。
IT増加(N/mm)=HIT1(N/mm)-HIT2(N/mm
ここで、HIT1は、前記複合フィルムのインデンテーション硬度(HIT)(N/mm)であり、HIT2は、前記複合フィルムから前記弾性層のみを除いた層構造を有するフィルムのインデンテーション硬度(HIT)(N/mm)である。
【0057】
また、一実現例による弾性層の前記インデンテーション硬度(HIT)は、2.5N/mm~50N/mm、2.5N/mm~40N/mm、または3N/mm~35N/mmであり得る。
【0058】
インデンテーションモジュラス(EIT)は、サンプルとインデンターとのポアソン比(Poisson's ratio)、インデンターのモジュラス、およびインデンテーション接触の減少モジュラスを用いて算出され、例えばISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定され得る。インデンテーションモジュラス(EIT)から、硬さの程度や耐摩耗性などの弾性的物性を知り得る。前記実現例による複合フィルムのインデンテーションモジュラス(EIT)は、例えば、2500MPa以上、2800MPa以上、2900MPa以上、2935MPa以上、または2950MPa以上であり、また4000MPa以下、3500MPa以下、3300MPa以下、または3100MPa以下であり得る。具体的な一例として、前記複合フィルムについて、ISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定される前記ハードコート層表面のインデンテーションモジュラス(EIT)が2700MPa以上であり、より具体的に2700MPa~4000MPaであり得る。
【0059】
また、一実現例による前記弾性層の前記インデンテーションモジュラス(EIT)は、50MPa~2000MPa、100MPa~1500MPa、または1000MPa~1500MPaであり得る。
【0060】
弾性回復率(ηIT)は、サンプル表面にインデンターを圧入し、その後解除する際に得られる力-深さ曲線において、圧入時の総仕事量(total mechanical work of indentation、Wtotal)に対する解除時の総仕事量(elastic reserve deformation work、Welast)の百分率(すなわち、(Welast/Wtotal)×100、%)で計算され、例えばISO 14577-1:2002(E)規格に基づいて測定され得る。前記実現例による複合フィルムの弾性回復率(ηIT)は、例えば、50%以上、55%以上、60%以上、61%以上、62%以上、または63%以上であり、また、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下であり得る。具体的な一例として、前記複合フィルムについて、ISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定される前記ハードコート層表面の弾性回復率(ηIT)は61%以上であり、より具体的に61%~70%または61%~65%であり得る。
【0061】
さらに、一実現例による弾性層の前記弾性回復率(ηIT)は、15%~45%、20%~35%、または20%~30%であり得る。
【0062】
インデンテーションクリープ(CIT)は、一定の力において材料の追加変形のことを指す。インデンテーションクリープ(CIT)を測定するために、インデンターをさらに長い時間(数分から数時間)にわたって一定の力でサンプルに圧入するが、これによる持続的な圧力によって増加した圧入深さを測定して算出し得る。前記実現例による複合フィルムのインデンテーションクリープ(CIT)は、例えば、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、または4.3%以上であり、また、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.7%以下、4.6%以下、または4.5%以下であり得る。具体的な一例として、前記複合フィルムについて、ISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定される前記ハードコート層表面のインデンテーションクリープ(CIT)は、4.0%以上であり、より具体的に4.0%~5.5%または4.0%~5.0%であり得る。
【0063】
また、一実現例による前記弾性層のインデンテーションクリープ(CIT)は、5%~20%、5%~15%、7%~15%、または10%~13%であり得る。
【0064】
復元率(Recovery)は、ナノインデンテーション試験により測定された値に基づいて、下記式で算出され得る。前記実現例による複合フィルムの復元率は、例えば、60%以上、65%以上、69%以上、70%以上、または71%以上であり、また、90%以下、85%以下、80%以下、または75%以下であり得る。具体的な一例として、前記複合フィルムについて、ISO 14577-1:2002(E)規格に基づいてナノインデンテーション試験により測定される前記ハードコート層表面の復元率は69%以上であり、より具体的に70%~90%または70%~80%であり得る。前記復元率は下記式で算出される。
【0065】
Recovery(%)=[(hmax-h)/hmax]×100
ここで、hmaxは、30mNの力で前記ハードコート層の表面を15秒間下方に押して5秒間維持(creep)させる間の最大インデンテーション深さ(μm)であり、hは、前記力が除去された後も復元されずに残っているインデンテーションの深さ(μm)である。
【0066】
前記実現例による複合フィルムの高い復元率は、弾性層に起因するものであり得る。例えば、前記複合フィルムは、下記式により算出されるRecovery増加(%)が0.5%以上であり、具体的に1.0%以上、1.5%以上、または1.6%以上であり、より具体的な一例として、0.5%~5%、0.5%~3%、または1%~3%であり得る。
【0067】
Recovery増加(%)=Recovery1(%)-Recovery2(%)
ここで、Recovery1は、前記複合フィルムの復元率(%)であり、Recovary2は、前記複合フィルムから前記弾性層のみを除いた層構造を有するフィルムの復元率(%)である。
【0068】
また、一実現例による前記弾性層表面の復元率は、25%~55%、30%~50%、35%~50%、または35%~45%であり得る。
【0069】
一実現例によると、前述の式により算出されるH増加(N/mm)が2.0N/mm以上であり、前述の式により算出されるRecovery増加(%)が1.5%以上であり得る。
【0070】
前記実現例による複合フィルムは、光透過率、例えば、可視光平均透過率が特定のレベル以上であり、それによりディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用されるのに有利である。例えば、前記フィルムの光透過率は、70%以上、75%以上、80%以上、82%以上、83%以上、85%以上、または90%以上であり得る。一方、前記フィルムの光透過率範囲の上限は特に限定されないが、例えば、100%以下、98%以下、95%以下、または90%以下であり得る。このような透過率は、例えばASTM D1003規格に基づいて測定され得る。
【0071】
また、前記実現例による複合フィルムは、ヘイズが特定のレベル以下であり、それによりディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用されるのに有利である。例えば、前記フィルムのヘイズは、5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2%以下、または1.5%以下であり得る。一方、前記フィルムのヘイズ範囲の下限は特に限定されないが、例えば、0%以上、0.5%以上、または1%以上であり得る。このようなヘイズは、例えば、ASTM D1003規格に基づいて測定され得る。
【0072】
具体的な一例として、前記複合フィルムは、90%以上の光透過率および1.5%以下のヘイズを有し得る。
【0073】
[弾性層]
前記弾性層はハードコート層の反対面に形成され、モジュラスが調整され耐衝撃層として作用することにより、ハードコート層の表面硬度および復元率を向上させ得る。
【0074】
前記弾性層は有機樹脂を含み得る。前記有機樹脂は、硬化性樹脂、具体的に、熱硬化性樹脂またはUV硬化性樹脂を含み得る。これにより、前記弾性層は硬化性コーティング層であり得る。前記有機樹脂はバインダーの役割をし得る。特に、前記有機樹脂は弾性重合体(elastomer)を含み得る。
【0075】
一例として、前記弾性層はアクリレート系バインダーを含み得る。前記アクリレート系バインダーの含有量は、前記弾性層の重量を基準に30重量%~98重量%であり得る。具体的に、前記アクリレート系バインダーの含有量は、弾性層の重量を基準に40重量%~95重量%または50重量%~90重量%であり得る。
【0076】
具体的な一例として、前記アクリレート系バインダーは、ウレタンアクリレート系化合物を含み得る。
【0077】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、ウレタン結合を繰り返し単位で含み、複数の官能基を有し得る。
【0078】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、ジイソシアネート化合物とポリオールとが反応して形成されたウレタン化合物の末端がアクリレート基で置換されたものであり得る。例えば、前記ジイソシアネート化合物は、炭素数4~12の直鎖状、分岐状または環状の脂肪族ジイソシアネート化合物および炭素数6~20の芳香族ジイソシアネート化合物のうちの少なくとも1つを含み得る。前記ポリオールは、2~4個のヒドロキシ基(-OH)を含み、炭素数4~12の直鎖状、分岐状または環状の脂肪族ポリオール化合物または炭素数6~20の芳香族ポリオール化合物であり得る。前記アクリレート基による末端置換は、イソシアネート基(-NCO)と反応し得る官能基を有するアクリレート系化合物によって行われ得る。例えば、ヒドロキシ基、アミン基などを有するアクリレート系化合物が用いられ、炭素数2~10のヒドロキシアルキルアクリレートまたはアミノアルキルアクリレートが用いられ得る。
【0079】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、官能基数が1個以上、2個以上、3個以上、または4個以上であり、また、15個以下、12個以下、9個以下、7個以下、6個以下、5個以下、または4個以下であり得る。具体例として、前記ウレタンアクリレート系化合物の官能基数は、2~12個、2~10個、または2~8個であり得る。
【0080】
前記ウレタンアクリレート系化合物はオリゴマーであり得る。具体的な一例として、前記弾性層は、2~8の官能基を有するUV硬化型ウレタンアクリレート系オリゴマーを含み得る。
【0081】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、重量平均分子量が、1000以上、1500以上、2000以上、2500以上、3000以上、3500以上、または4000以上であり、また、50000以下、30000以下、20000以下、10000以下、7000以下、または5000以下であり得る。
【0082】
前記ウレタンアクリレート系化合物のガラス転移温度(Tg)は、-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上、-50℃以上、-40℃以上、または-30℃以上であり、また、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、または50℃以下であり得る。具体的な例として、前記ウレタンアクリレート系化合物のガラス転移温度(Tg)は、-80℃~100℃、-80℃~90℃、-80℃~80℃、-80℃~70℃、-80℃~60℃、-70℃~100℃、-70℃~90℃、-70℃~80℃、-70℃~70℃、-70℃~60℃、-60℃~100℃、-60℃~90℃、-60℃~80℃、-60℃~70℃、-60℃~60℃、-50℃~100℃、-50℃~90℃、-50℃~80℃、-50℃~70℃、または-50℃~60℃であり得る。
【0083】
前記弾性層は、光開始剤をさらに含み得る。前記光開始剤は、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、市販の光開始剤としては、Irgacure(登録商標)184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur(登録商標)1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure(登録商標) KIP 100Fなどが挙げられる。前記光開始剤は、単独でまたは互いに異なる2種以上を混合して使用し得る。前記光開始剤の含有量は、前記弾性層の重量を基準に0.01重量%~10重量%であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0084】
前記弾性層の厚さは、2μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上、または20μm以上であり、また、100μm以下、80μm以下、50μm以下、30μm以下であり得る。例えば、前記弾性層の厚さは5μm~100μmであり得る。具体的に、前記弾性層の厚さは10μm~100μmであり得る。より具体的に、前記弾性層の厚さは30μm~80μmであり得る。
【0085】
具体的な一例として、前記基材フィルムの厚さは40μm~200μmであり、前記ハードコート層の厚さは2μm~20μmであり、前記弾性層の厚さは10μm~100μmであり得る。
【0086】
前記弾性層は、前記基材フィルムの表面に直接形成され得る。具体的に、前記弾性層と前記基材フィルムとの間には他の層が存在しなくてもよい。また、前記弾性層の両面のうちのいずれか一面が前記弾性層と基材フィルムとの間の界面として設けられ得る。
【0087】
前記弾性層は、前記基材フィルムの表面に弾性コーティング組成物が塗布され、乾燥および硬化して形成され得る。
【0088】
前記弾性コーティング組成物は、前述のアクリレート系バインダーと共に、光開始剤のような添加剤と溶媒とを含み得る。
【0089】
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒;などを、単独でまたは混合して使用し得る。
【0090】
前記溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので特に制限されないが、前記弾性コーティング組成物に含まれる成分中の固形分に対して、固形分:溶媒の重量比が20:80~99:1、30:70~70:30、40:60~60:40となるように含まれ得る。前記溶媒が前記範囲にあるとき、適切な流動性および塗布性を有し得る。
【0091】
前記弾性コーティング組成物は、バーコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、ダイコーティング、マイクログラビアコーティング、コンマコーティング、スロットダイコーティング、リップコーティング、溶液キャスティング(solution casting)などにより塗布され得る。
【0092】
その後、乾燥工程により前記弾性コーティング組成物に含まれている溶媒が除去され得る。前記乾燥工程は、40℃~100℃、好ましくは40℃~80℃、50℃~100℃、または50℃~80℃の温度条件で行われ、約1分~20分、好ましくは1分~10分または1分~5分間行われ得る。
【0093】
その後、前記弾性層は、光および/または熱によって硬化され得る。一例として、前記弾性層は、窒素雰囲気下でUV光が0.5J/cm~1.5J/cmの量で照射され硬化され得る。
【0094】
[ハードコート層]
前記ハードコート層は、前記基材フィルムの一面上に配置される。
前記ハードコート層は上面および下面を備え、そのうち下面は前記基材フィルムと対面し、上面は外部に露出した最外郭面であり得る。また、前記ハードコート層の下面は、前記基材フィルムの一面と直接接触するか、または追加のコーティング層を介して前記基材フィルムの一面と接合され得る。
【0095】
一例として、前記ハードコート層は、前記基材フィルムの一面上に直接形成されたものであり得る。他の例として、前記ハードコート層は、前記基材フィルムの表面に追加で形成されるプライマーコーティング層を介して前記基材フィルムの一面と接合され得る。
【0096】
前記ハードコート層は、複合フィルムの機械的物性および/または光学物性を向上させ得る。また、前記ハードコート層は、防眩、防汚、帯電防止などの機能をさらに含み得る。
【0097】
前記ハードコート層は、ハードコーティング剤として、有機成分、無機成分、および有無機複合成分のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0098】
一例として、前記ハードコート層は有機樹脂を含み得る。具体的に、前記有機樹脂は、硬化性樹脂であり得る。これにより、前記ハードコート層は硬化性コート層であり得る。また、前記有機樹脂はバインダー樹脂であり得る。
【0099】
具体的に、前記ハードコート層は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物およびエポキシアクリレート系化合物からなる群より選択される1種以上を含み得る。より具体的に、前記ハードコート層は、ウレタンアクリレート系化合物およびアクリルエステル系化合物を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、ウレタン結合を繰り返し単位で含み、複数の官能基を有し得る。
【0101】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、ジイソシアネート化合物とポリオールとが反応して形成されたウレタン化合物の末端がアクリレート基で置換されたものであり得る。例えば、前記ジイソシアネート化合物は、炭素数4~12の直鎖状、分岐状または環状の脂肪族ジイソシアネート化合物および炭素数6~20の芳香族ジイソシアネート化合物のうちの少なくとも1つを含み得る。前記ポリオールは、2~4個のヒドロキシ基(-OH)を含み、炭素数4~12の直鎖状、分岐状または環状の脂肪族ポリオール化合物または炭素数6~20の芳香族ポリオール化合物であり得る。前記アクリレート基による末端置換は、イソシアネート基(-NCO)と反応し得る官能基を有するアクリレート系化合物によって行われ得る。例えば、ヒドロキシ基、アミン基などを有するアクリレート系化合物が用いられ、炭素数2~10のヒドロキシアルキルアクリレートまたはアミノアルキルアクリレートが用いられ得る。
【0102】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、官能基数が2個以上、5個以上、7個以上、または9個以上であり、また、18個以下、15個以下、12個以下、または10個以下であり得る。具体例として、前記ウレタンアクリレート系化合物の官能基数は、2~18個、5~18個、または9~15個であり得る。
【0103】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、重量平均分子量が、1500以上、2500以上、3500以上、または5000以上であり、また、50000以下、30000以下、20000以下、10000以下、または7000以下であり得る。
【0104】
前記ウレタンアクリレート系化合物のガラス転移温度(Tg)は、-80℃~100℃、-80℃~90℃、-80℃~80℃、-80℃~70℃、-80℃~60℃、-70℃~100℃、-70℃~90℃、-70℃~80℃、-70℃~70℃、-70℃~60℃、-60℃~100℃、-60℃~90℃、-60℃~80℃、-60℃~70℃、-60℃~60℃、-50℃~100℃、-50℃~90℃、-50℃~80℃、-50℃~70℃、または-50℃~60℃であり得る。
【0105】
前記アクリルエステル系化合物は、置換または非置換のアクリレートおよび置換または非置換のメタクリレートからなる群より選択される1種以上であり得る。前記アクリルエステル系化合物は、1~10個の官能基を含み得る。
【0106】
前記アクリルエステル系化合物の例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETA)、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられるが、これに制限されない。
【0107】
前記アクリルエステル系化合物の重量平均分子量は、500~6000、500~5000、500~4000、1000~6000、1000~5000、1000~4000、1500~6000、1500~5000、または1500~4000であり得る。前記アクリルエステル系化合物のアクリレート当量は、50g/eq~300g/eq、50g/eq~200g/eqまたは50g/eq~150g/eqであり得る。
【0108】
前記エポキシアクリレート系化合物は、1~10個の官能基を含み得る。前記エポキシアクリレート系化合物の例としては、重量平均分子量100~300の1官能エポキシアクリレートオリゴマー、重量平均分子量250~2000の2官能エポキシアクリレートオリゴマー、重量平均分子量1000~3000の4官能エポキシアクリレートオリゴマーなどが挙げられるが、これに制限されない。前記エポキシアクリレート系化合物のエポキシ当量は、50g/eq~300g/eq、50g/eq~200g/eq、または50g/eq~150g/eqであり得る。
【0109】
前記有機樹脂の含有量は、前記ハードコート層の総重量を基準に30重量%~100重量%であり得る。具体的に、前記有機樹脂の含有量は、ハードコート層の総重量を基準に40重量%~90重量%または50重量%~80重量%であり得る。
【0110】
前記ハードコート層は、光開始剤をさらに含み得る。前記光開始剤の例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、市販の製品としては、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。前記光開始剤は、単独でまたは互いに異なる2種以上を混合して使用し得る。
【0111】
前記ハードコート層は、防汚剤をさらに含み得る。例えば、前記ハードコート層は、フッ素系化合物を含み得る。前記フッ素系化合物は、防汚機能を果たし得る。具体的に、前記フッ素系化合物は、パーフルオロアルキル基を有するアクリレート系化合物であり、具体例として、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート(perfluorohexyl ethyl acrylate)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0112】
前記ハードコート層は、帯電防止剤をさらに含み得る。前記帯電防止剤は、イオン系界面活性剤を含み得る。例えば、前記イオン系界面活性剤は、アンモニウム塩または第4級アルキルアンモニウム塩などを含み、前記アンモニウム塩および第4級アルキルアンモニウム塩は、塩化物、臭化物などのハロゲン化物を含み得る。
【0113】
その外にも前記ハードコート層は、界面活性剤、UV吸収剤、UV安定剤、黄変防止剤、レベリング剤、または色値を改善するための染料などの添加剤をさらに含み得る。例えば、前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤であり得る。前記界面活性剤は、前記ハードコート層内に分散または架橋されている形態で含まれ得る。また、前記UV吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、またはトリアジン系化合物などが挙げられ、前記UV安定剤としては、テトラメチルピペリジン(tetramethyl piperidine)などが挙げられる。これらの添加剤の含有量は、前記ハードコート層の物性を低下させない範囲内で多様に調節され得る。例えば、前記添加剤の含有量は、前記ハードコート層の総重量を基準に0.01重量%~10重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0114】
前記ハードコート層の厚さは、2μm以上、3μm以上、5μm以上、または10μm以上であり、また、50μm以下、30μm以下、20μm以下、または10μm以下であり得る。例えば、前記ハードコート層の厚さは2μm~20μmであり得る。具体的に、前記ハードコート層の厚さは5μm~20μmであり得る。前記ハードコート層の厚さが薄すぎると、基材フィルムを保護するのに十分な表面硬度を有しないため、複合フィルムの耐久性が低下し、厚すぎると複合フィルムの柔軟性が低下し、また複合フィルムの全体厚さが増加して薄膜化に不利となり得る。
【0115】
したがって、前記ハードコート層は、有機系組成物、無機系組成物、および有無機複合組成物のうちの少なくとも1つを含むハードコーティング組成物から形成されたものであり得る。例えば、前記ハードコーティング組成物は、アクリレート系化合物、シロキサン化合物、またはシルセスキオキサン化合物のうちの少なくとも1つを含み得る。また、ハードコート層は無機粒子をさらに含み得る。具体的な一例として、前記ハードコート層は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物、およびフッ素系化合物を含むハードコーティング組成物から形成されたものであり得る。
【0116】
前記ハードコート層は、ハードコーティング組成物が基材フィルム上に塗布され、乾燥および硬化して形成され得る。
【0117】
前記ハードコート組成物は、前述の有機樹脂、光開始剤、防汚剤、帯電防止剤、その他の添加剤および/または溶媒を含み得る。
【0118】
前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒;などを、単独でまたは混合して使用し得る。
【0119】
前記溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので特に制限されないが、前記ハードコーティング組成物に含まれる成分中の固形分に対して、固形分:溶媒の重量比が30:70~99:1または30:70~70:30になるように含まれ得る。前記溶媒が前記範囲にあるとき、適切な流動性および塗布性を有し得る。
【0120】
前記ハードコーティング組成物は、10重量%~30重量%の有機樹脂、0.1重量%~5重量%の光開始剤、0.01重量%~2重量%の防汚剤、および0.1重量%~10重量%の帯電防止剤を含み得る。前記組成によると、ハードコート層の機械的特性および防汚、帯電防止特性がともに向上され得る。
【0121】
前記ハードコーティング組成物は、バーコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、ダイコーティング、マイクログラビアコーティング、コンマコーティング、スロットダイコーティング、リップコーティング、溶液キャスティング(solution casting)などにより基材フィルム上に塗布され得る。
【0122】
その後、乾燥工程により前記ハードコーティング組成物に含まれている溶媒が除去され得る。前記乾燥工程は、40℃~100℃、好ましくは40℃~80℃、50℃~100℃、または50℃~80℃の温度条件で行われ、約1分~20分、好ましくは1分~10分または1分~5分間行われ得る。
【0123】
その後、前記ハードコーティング組成物は、光および/または熱によって硬化し得る。一例として、前記ハードコーティング組成物は、UV光が0.5J/cm~1.5J/cmの量で照射され硬化し得る。
【0124】
[基材フィルム]
前記基材フィルムは、前記複合フィルムに機械的特性を提供しながら前記ハードコート層のベース層として作用する。
【0125】
前記基材フィルムは高分子フィルムであり、またはガラス基板、具体的に厚さ約100μm未満の強化処理されたガラス基板であり得る。例えば、前記基材フィルムは、高分子フィルムまたは超薄型ガラス(UTG)からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0126】
具体的に、前記基材フィルムは高分子フィルムであり、すなわち前記基材フィルムは高分子樹脂を含み得る。
【0127】
一実現例によると、前記基材フィルムはポリエステル系樹脂を含む。例えば、前記基材フィルムは、透明なポリエステル系フィルムであり得る。
【0128】
前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとが重縮合した単一重合体樹脂または共重合体樹脂であり得る。また、前記ポリエステル系樹脂は、前記単一重合体樹脂または共重合体樹脂が混合されたブレンド樹脂であり得る。
【0129】
前記ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸などがある。
【0130】
また、前記ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどがある。
【0131】
好ましくは、前記ポリエステル系樹脂は、結晶性に優れた芳香族ポリエステル系樹脂であり得、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を主成分とし得る。
【0132】
前記ポリエステル系フィルムは、ポリエステル系樹脂、具体的にPET樹脂を約85重量%以上含み、より具体的に、90重量%以上、95重量%以上、または99重量%以上含み得る。他の例として、前記ポリエステル系フィルムは、PET樹脂以外に、他のポリエステル系樹脂をさらに含み得る。具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、約15重量%以下のポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂をさらに含み得る。より具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、約0.1重量%~10重量%、または約0.1重量%~5重量%のPEN樹脂をさらに含み得る。
【0133】
前記組成により、ポリエステル系フィルムが加熱、延伸などを経る製造過程において結晶化度が上昇し、引張強度などの機械的物性が向上され得る。
【0134】
前記ポリエステル系フィルムの製造方法は、(1)ポリエステル樹脂を含む組成物を押出して未延伸フィルムを得る段階と、(2)前記未延伸フィルムを長さ方向および幅方向に延伸する段階と、(3)前記延伸済みフィルムを熱固定する段階とを含んで製造され得る。
【0135】
前記製造方法において、ポリエステル系フィルムは、原料樹脂を押出して予熱、延伸および熱固定を経て製造される。この際、前記ポリエステル系フィルムの原料として用いられるポリエステル樹脂の組成は、前記で例示したとおりである。また、前記押出は、230℃~300℃または250℃~280℃の温度条件で行われ得る。
【0136】
前記ポリエステル系フィルムは、延伸の前に一定温度で予熱される。前記予熱温度の範囲は、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準に、Tg+5℃~Tg+50℃の範囲を満足すると同時に、70℃~90℃の範囲を満足する範囲に決定され得る。前記範囲内であるとき、前記ポリエステル系フィルムが延伸するのに容易な柔軟性を確保するとともに、延伸中に破断する現象を効果的に防止し得る。
【0137】
前記延伸は二軸延伸で行われ、例えば同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法により、幅方向(テンター方向、TD)および長さ方向(機械方向、MD)の2軸に延伸され得る。好ましくは、まず一方向に延伸し、次にその方向の直角方向に延伸する逐次二軸延伸法が行われ得る。
【0138】
前記長さ方向延伸比は2.0~5.0の範囲であり、より具体的に2.8~3.5の範囲であり得る。また、前記幅方向延伸比は2.0~5.0の範囲であり、より具体的に2.9~3.7の範囲であり得る。好ましくは、長さ方向延伸比(d1)と幅方向延伸比(d2)は近似であり、具体的に、前記幅方向の延伸比(d1)に対する長さ方向の延伸比(d2)の比(d2/d1)が、0.5~1.0、0.7~1.0、または0.9~1.0であり得る。前記延伸比(d1、d2)は、延伸前の長さを1.0としたとき、延伸後の長さを示す比である。また、前記延伸の速度は、6.5m/分~8.5m/分であり得るが、特に限定されない。
【0139】
前記延伸済みシートは、150℃~250℃、より具体的に160℃~230℃にて熱固定され得る。前記熱固定は、5秒~1分間行われ、より具体的に10秒~45秒間行われ得る。
【0140】
熱固定を開始した後、フィルムは長さ方向および/または幅方向に弛緩されることができ、この際の温度範囲は150℃~250℃であり得る。
【0141】
他の実現例によると、前記基材フィルムはポリイミド系樹脂またはポリアミド系樹脂を含む。具体的に、前記基材フィルムは透明なポリイミド系またはポリアミド系フィルムであり得る。
【0142】
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物とを含む反応物が同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物とが重合して形成されたポリイミド系重合体を含み得る。前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位を含み得る。また、前記ポリイミド系樹脂は、ジカルボニル化合物をさらに含んで重合されたものであってよく、これにより、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位をさらに含むポリアミド-イミド系重合体を含み得る。
【0143】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
【0144】
[化1]
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され、eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0145】
前記化学式1の(E)は、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0146】
具体的に、前記化学式1の(E)は、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0147】
より具体的に、前記化学式1の(E)は、前記化学式1-6bで表される基であり得る。
【0148】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物を含み得る。または、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0149】
一実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を用い得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0150】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0151】
前記ジアンヒドリド化合物は複屈折値が低いため、前記ポリイミド系樹脂を含むフィルムの透過度のような光学物性の向上に寄与し得る。
【0152】
前記ジアンヒドリド化合物は特に限定されないが、芳香族構造を含む芳香族ジアンヒドリド化合物であり得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2の化合物であり得る。
[化2]
【0153】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、もしくは置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択された連結基によって連結されている。
【0154】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0155】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-8aで表される基であり得る。
【0156】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物を含み得る。または、前記ジアンヒドリド化合物はフッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。なお、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0157】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種の混合成分からなり得る。
【0158】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0159】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミック酸を生成し得る。
【0160】
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得る。前記ポリイミドは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を含み得る。
[化A]
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeに関する説明は、前述の通りである。
【0161】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
[化A-1]
前記化学式A-1におけるnは1~400の整数であり得る。
【0162】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
【0163】
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC-C30アルキレン基、置換または非置換のC-C30アルケニレン基、置換または非置換のC-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)-、-Si(CH-、-C(CH-、および-C(CF-の中から選択され、jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり、Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0164】
前記化学式3の(J)は、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0165】
具体的に、前記化学式3の(J)は、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0166】
より具体的に、前記化学式3の(J)は、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、または3-3bで表される基であり得る。
【0167】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)が前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0168】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0169】
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または前記第1ジカルボニル化合物とは異なる第2ジカルボニル化合物を含み得る。
【0170】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
【0171】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が、互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0172】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物であると、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミド-イミド樹脂を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性の向上に寄与し得る。
【0173】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0174】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はBPDCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0175】
具体的に、前記第1ジカルボニル化合物としてBPDC、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを適宜組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド-イミド系樹脂を含むフィルムは高い耐酸化性を有し得る。
【0176】
または、前記第1ジカルボニル化合物はIPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0177】
具体的に、前記第1ジカルボニル化合物としてIPC、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを適宜組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド-イミド系樹脂を含むフィルムが高い耐酸化性を有することができ、製造コストが削減できる。
【0178】
前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0179】
例えば、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0180】
[化B-1]
前記化学式B-1のxは1~400の整数である。
【0181】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0182】
前記基材フィルムの厚さは、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、または100μm以上であり、また、500μm以下、400μm以下、300μm以下、または200μm以下であり得る。具体例として、前記基材フィルムの厚さは20μm~500μmであり、より具体的に40μm~200μmまたは50μm~200μmであり得る。
【0183】
前記基材フィルムは、一定レベルの光学特性および機械的特性を有し得る。
【0184】
前記基材フィルムのヘイズは3%以下であり得る。例えば、前記基材フィルムのヘイズは、2%以下、1.5%以下、または1%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0185】
前記基材フィルムの黄色度(YI)は5以下であり得る。例えば、前記基材フィルムの黄色度は、4以下、3.8以下、2.8以下、2.5以下、2.3以下、または2.1以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0186】
前記基材フィルムは、-50℃~90℃の温度区間における貯蔵モジュラスが1×10Pa~3×10Paであり得る。具体的に、前記基材フィルムは、-30℃~50℃の温度区間における貯蔵モジュラスが1.5×10Pa~3×10Pa、より具体的に2×10Pa~3×10Paであり得るが、これに限定されるものではない。
【0187】
前記基材フィルムの光透過率は80%以上であり得る。例えば、前記基材フィルムの光透過率は、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、または85%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0188】
前記基材フィルムの圧縮強度は0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記基材フィルムの圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0189】
前記基材フィルムの表面硬度はHB以上であり得る。具体的に、前記基材フィルムの表面硬度は、H以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0190】
前記基材フィルムは、引張強度が15kgf/mm以上であり得る。具体的に、前記基材フィルムの引張強度は、18kgf/mm以上、20kgf/mm以上、21kgf/mm以上、または22kgf/mm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0191】
前記基材フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記基材フィルムの伸び率は、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0192】
(実施例)
以下に記述される実施例は、理解を容易にするためのものであるのみ、実現可能な範囲がこれらに限定されるものではない。
【0193】
(製造例:ハードコーティング組成物A)
下記表1の組成で配合してハードコーティング組成物を得た。
【0194】
【表1】
【0195】
(製造例:弾性コーティング組成物A~E)
下記表2の組成で配合して、弾性コーティング組成物A~Eをそれぞれ得た。各々の組成物には、バインダーとして下記表3のような官能基および分子量のウレタンアクリレート系オリゴマーを用いた。
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
(試験例1:モジュラス(弾性層))
a.サンプル:離型フィルムの離型面上に、弾性コーティング組成物A~Eをそれぞれメイヤーバー(Mayer bar)で25μmの厚さでコーティングした。その後、60℃の温度にて2分間熱処理してコーティング組成物中の溶媒を乾燥させ、窒素雰囲気下で1J/cmのUV光を照射した後、離型面から分離した。その結果得られた厚さ25μm~50μmの弾性層単一膜を、長さ50mm×幅10mmに裁断してサンプルを作製した。
b.装置:DMA 7100、日立社製
c.条件
-DMAモード:引張モード(Tension mode)
-周波数:1Hz
-デュアルカンチレバークランプ:サンプルの両端を約20mmの距離にクランピングする
-昇温法:-50℃から100℃まで、5℃/分
d.結果:前記条件で測定した温度によるサンプルの貯蔵モジュラス(Pa)を下記表4および図3に示す。また、下記式の△E'を算出して下記表5に示す。
△E'=E'[-30℃]/E'[50℃]
(ここでE'[-30℃]は、弾性層の-30℃における貯蔵モジュラス(Pa)であり、E'[50℃]は、弾性層の50℃における貯蔵モジュラス(Pa)である)
【0199】
【表4】
【0200】
【表5】
【0201】
前記結果からわかるように、弾性コーティング組成物A、BおよびEでそれぞれ製造された弾性層の△E'は300以下と確認されたのに対し、弾性コーティング組成物CおよびDでそれぞれ製造された弾性層の△E'は300超と確認された。
【0202】
(試験例2:ナノインデンテーション試験(弾性層))
a.サンプル:前述の試験例1のaと同様の方法により、弾性コーティング組成物A~Eから各々の弾性層単一膜サンプルをA4サイズで製造した。その後、別途の前処理はなく試験前まで25±5℃および50±5%RHで保存した。
【0203】
b.装置および方法:サンプルについて、ナノインデンテーション表面分析器(FISCHERSCOPE HM2000、FISCHER社)を使用して、ISO 14577-1:2002(E)および14577-2:2002(E)規格に基づいて、ビッカース硬度(H)、インデンテーション硬度(HIT)、インデンテーションモジュラス(EIT)、弾性回復率(ηIT)およびインデンテーションクリープ(CIT)を測定した。
【0204】
具体的に、サンプルホルダーとして厚さ約3TのGLASS TEST PLATE(Fischerscope Part no. 600-028)上に弾性層単一膜を配置した。その後、ダイヤモンドチップを用いて常温にて30mNの力で15秒間下方に押した後、5秒間維持(creep)し、再び上方に上昇させながらナノインデンテーション試験を行った。
【0205】
また、復元率(Recovery)は、下記式により算出された。
Recovery(%)=[(hmax-h)/hmax]×100
(ここでhmaxは、30mNの力で前記ハードコート層の表面を15秒間下方に押し、5秒間保持する間の最大インデンテーション深さ(μm)であり、hは、前記力が除去された後も復元されずに残っているインデンテーションの深さ(μm)である。
【0206】
c.結果:ナノインデンテーション試験結果を下記表6に示す。
【0207】
【表6】
【0208】
(実施例1:複合フィルムの製造)
段階1)ハードコート層の形成
厚さ65μmの透明ポリエステル系フィルム(NRF、SKC社)の上部面に表1のようなハードコーティング組成物をダイコーティング法によりコーティングした。その後、60℃の温度にて3分間熱処理してコーティング層の溶媒を乾燥させ、UV光を1J/cm照射して硬化させることにより、厚さ約5μmのハードコート層を形成した。
【0209】
段階2)弾性層の形成
前記ハードコート層が形成された反対面(すなわち、ポリエステル系フィルムの下部面)に弾性コーティング組成物Aをメイヤバーでコーティングした。その後、60℃の温度にて2分間熱処理してコーティング組成物中の溶媒を乾燥させ、窒素雰囲気下で1J/cmのUV光を照射した。
【0210】
その結果、ハードコート層(5μm)/ポリエステル系フィルム(65μm)/弾性層(30μm)の3層構造を有する複合フィルムを得た。
【0211】
(実施例2)
弾性層のコーティングのために弾性コーティング組成物Bを用いることを除いては、前記実施例1と同様の手順を繰り返して複合フィルムを得た。
【0212】
(実施例3)
弾性層のコーティングのために弾性コーティング組成物Eを用いることを除いては、前記実施例1と同様の手順を繰り返して複合フィルムを得た。
【0213】
(比較例1)
弾性層を形成しないことを除いては、前記実施例1と同様の手順を繰り返して、ハードコート層(5μm)/ポリエステル系フィルム(65μm)の2層構造を有する複合フィルムを得た。
【0214】
(比較例2)
弾性層のコーティングのために弾性コーティング組成物Cを用いることを除いては、前記実施例1と同様の手順を繰り返して複合フィルムを得た。
【0215】
(比較例3)
弾性層のコーティングのために弾性コーティング組成物Dを用いることを除いては、前記実施例1と同様の手順を繰り返して複合フィルムを得た。
【0216】
(試験例3:モジュラス(基材フィルム))
基材フィルム(ポリエステル系フィルム)について、前記試験例1と同様の方法により-50℃~90℃の温度区間で貯蔵モジュラスを測定した結果、温度の増加によって、概ね2.6×10Paから1.4×10Paまで貯蔵モジュラスが徐々に減少するものと測定された。
【0217】
(試験例4:ナノインデンテーション試験(複合フィルムのハードコート層))
a.サンプル:実施例および比較例で製造した複合フィルムをA4サイズに裁断し、別途の前処理なく試験前まで25±5℃および50±5%RHで保存した。
b.装置および方法:前記試験例2のbと同様の装置および方法により、複合フィルムサンプルのハードコート層表面についてナノインデンテーション試験を行った。
c.結果:ナノインデンテーション試験結果を下記表7に示す。
d.分析:実施例1~3の表面硬度を比較例1と比較して下記表8に示す。
【0218】
【表7】
【0219】
【表8】
【0220】
前記の結果からわかるように、実施例1~3の複合フィルムは、温度による貯蔵モジュラスの比が好ましい範囲に調節された弾性コーティング組成物A、BおよびEを用いて形成された弾性層を選別して導入することにより、その反対面(ハードコート層)のナノインデンテーション表面硬度特性が優れていることが確認できる。
【0221】
具体的に、表8からわかるように、実施例1~3の複合フィルムは、弾性層を備えていない比較例1の複合フィルムに比べてナノインデンテーション表面硬度(H、Recovery、HIT、EIT、ηIT、CIT、hmax)特性が全体的に改善されたことが確認できる。
【0222】
一方、比較例2および3の複合フィルムは、弾性層を備えているにもかかわらず、温度による貯蔵モジュラスの比が所望の範囲外の弾性コーティング組成物CおよびDを用いることにより、実施例1~3の複合フィルムに比べてナノインデンテーション表面硬度特性の低いことが確認できる。
【符号の説明】
【0223】
1:ディスプレイ装置
1a:インフォールディングタイプのフレキシブルディスプレイ装置
1b:アウトフォールディングタイプのフレキシブルディスプレイ装置
2:インデンター
2a:インデンターチップ
2b:跡
10:複合フィルム(カバーウィンドウ)
10a:サンプル
20:ディスプレイパネル
30:基板
40:フレーム
100:基材フィルム
200:ハードコート層
300:弾性層
max:最大試験力
:最大試験力における接触投影面積
max:最大試験力における最大深さ
:試験力の除去後にも復元されない永久深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b