(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/16 20200101AFI20240115BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20240115BHJP
B60W 40/101 20120101ALI20240115BHJP
B60W 40/107 20120101ALI20240115BHJP
【FI】
B60W50/16
B60W40/076
B60W40/101
B60W40/107
(21)【出願番号】P 2022501382
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 IB2021050859
(87)【国際公開番号】W WO2021165774
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020024205
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176861(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086104(WO,A1)
【文献】特開2020-015366(JP,A)
【文献】特開2017-001636(JP,A)
【文献】特開2021-002328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
B60T 7/12
B60T 8/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(3)及び後輪(4)を備える鞍乗型車両(100)に搭載されるライダー支援システム(50)の制御装置(51)であって、
前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)のライダーに与える警告の必要性を判定する判定部(52)と、
前記判定部(52)で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両(100)の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行する
ことを決定して、該少なくとも1回のハプティクス動作を実行するハプティクス動作実行部(53)と、
を備えており、
更に、前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)の走行状態情報を取得する取得部(54)を備えており、
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において前記加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるために制動力を変化させる際の各車輪の優先度を、前記取得部(54)で取得される前記走行状態情報に応じて変化させる、
制御装置。
【請求項2】
前記ハプティクス動作は、前記前輪(3)及び前記後輪(4)のうちの一方の車輪のみの制動力を変化させる動作であり、
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記前輪(3)及び前記後輪(4)のうちから、前記ハプティクス動作において前記制動力を変化させる前記一方の車輪を前記取得部(54)で取得される前記走行状態情報に応じて選択することで、前記優先度を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ハプティクス動作は、前記前輪(3)及び前記後輪(4)のうちの両方の車輪の制動力を変化させる動作であり、
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において前記前輪(3)に生じさせる制動力の変化と前記後輪(4)に生じさせる制動力の変化との配分を前記取得部(54)で取得される前記走行状態情報に応じて変化させることで、前記優先度を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記取得部(54)で取得される前記走行状態情報は、前記鞍乗型車両(100)に生じている加減速度を示す情報を含む、
請求項1~3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記加減速度を示す情報が前記鞍乗型車両(100)に低い加減速度が生じている状態を示す情報である場合に、該加減速度を示す情報が該鞍乗型車両(100)に高い加減速度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前記前輪(3)の優先度を高くする、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記取得部(54)で取得される前記走行状態情報は、前記鞍乗型車両(100)の前記車輪に生じているスリップ度を示す情報を含む、
請求項1~5の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記スリップ度を示す情報が前記前輪(3)に高いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、該スリップ度を示す情報が該前輪(3)に低いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前記後輪(4)の優先度を高くする、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記スリップ度を示す情報が前記後輪(4)に高いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、該スリップ度を示す情報が該後輪(4)に低いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前記前輪(3)の優先度を高くする、
請求項6又は7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記取得部(54)で取得される前記走行状態情報は、前記鞍乗型車両(100)が走行している道路の上下勾配度を示す情報を含む、
請求項1~8の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記上下勾配度を示す情報が前記道路に高い上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合に、該上下勾配度を示す情報が該道路に低い上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前記後輪(4)の優先度を高くする、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記取得部(54)で取得される前記走行状態情報は、前記鞍乗型車両(100)の前記車輪に生じているサスペンション減衰度を示す情報を含む、
請求項1~10の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記サスペンション減衰度を示す情報が前記前輪(3)に高いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、該サスペンション減衰度を示す情報が該前輪(3)に低いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前記後輪(4)の優先度を高くする、
請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記サスペンション減衰度を示す情報が前記後輪(4)に高いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、該サスペンション減衰度を示す情報が該後輪(4)に低いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前記前輪(3)の優先度を高くする、
請求項11又は12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記ハプティクス動作実行部(53)は、前記ハプティクス動作において、前記鞍乗型車両(100)の制動系統(10)、駆動系統(20)及び変速系統(30)のうちの少なくとも一つを制御して前記制動力を変化させる、
請求項1~13の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前輪(3)及び後輪(4)を備える鞍乗型車両(100)に搭載されるライダー支援システム(50)の制御方法であって、
制御装置(51)の判定部(52)が、前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)のライダーに与える警告の必要性を判定する判定ステップ(S101)と、
前記制御装置(51)のハプティクス動作実行部(53)が、前記判定ステップ(S101)で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両(100)の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行する
ことを決定して、該少なくとも1回のハプティクス動作を実行するハプティクス動作実行ステップ(S103)と、
を備えており、
更に、前記制御装置(51)の取得部(54)が、前記鞍乗型車両(100)の走行中に、該鞍乗型車両(100)の走行状態情報を取得する取得ステップ(S102)を備えており、
前記ハプティクス動作実行ステップ(S103)では、前記ハプティクス動作実行部(53)が、前記ハプティクス動作において前記加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるために制動力を変化させる際の各車輪の優先度を、前記取得ステップ(S102)で取得される前記走行状態情報に応じて変化させる、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に搭載されるライダー支援システムの制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハプティクス動作によって鞍乗型車両のライダーに警告を与える技術が公知である。制御装置は、鞍乗型車両の走行中に警告の必要性を判定する。制御装置は、警告が必要であると判定された場合に、鞍乗型車両の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両では、他の車両(例えば、自動車、トラック等)と比較して、ホイールベースが極端に短いことに起因して、加減速度のごく小さな変化によっても走行安全性が大きく低下し得る。そして、従来の制御装置のように、その時点での鞍乗型車両の状態に関わらず同じハプティクス動作が実行される仕様では、挙動が最も不安定になりやすい状態でハプティクス動作が実行されても走行安全性が維持されるように、加減速度の変化量を極めて小さく設定しなければならず、ライダーによる警告の知覚が不十分になる場合が生じ得る。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ライダーによる警告の知覚性を向上し得る制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、前輪及び後輪を備える鞍乗型車両に搭載されるライダー支援システムの制御装置であって、前記鞍乗型車両の走行中に、該鞍乗型車両のライダーに与える警告の必要性を判定する判定部と、前記判定部で前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行部と、を備えており、更に、前記鞍乗型車両の走行中に、該鞍乗型車両の走行状態情報を取得する取得部を備えており、前記ハプティクス動作実行部は、前記ハプティクス動作において前記加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるために制動力を変化させる際の各車輪の優先度を、前記取得部で取得される前記走行状態情報に応じて変化させる。
【0007】
本発明に係る制御方法は、前輪及び後輪を備える鞍乗型車両に搭載されるライダー支援システムの制御方法であって、制御装置の判定部が、前記鞍乗型車両の走行中に、該鞍乗型車両のライダーに与える警告の必要性を判定する判定ステップと、前記制御装置のハプティクス動作実行部が、前記判定ステップで前記警告が必要であると判定された場合に、前記鞍乗型車両の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行ステップと、を備えており、更に、前記制御装置の取得部が、前記鞍乗型車両の走行中に、該鞍乗型車両の走行状態情報を取得する取得ステップを備えており、前記ハプティクス動作実行ステップでは、前記ハプティクス動作実行部が、前記ハプティクス動作において前記加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるために制動力を変化させる際の各車輪の優先度を、前記取得ステップで取得される前記走行状態情報に応じて変化させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、ハプティクス動作実行部が、ハプティクス動作において加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるために制動力を変化させる際の各車輪の優先度を、鞍乗型車両の走行状態情報に応じて変化させる。そのため、加減速度のごく小さな変化によって鞍乗型車両の走行安全性が大きく低下し得る状況下であっても、走行安全性に影響しづらい方の車輪を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、制御装置における制御フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るライダー支援システムついて、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係るライダー支援システムは、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0012】
例えば、以下では、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車に用いられる場合を説明しているが、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に用いられてもよい。鞍乗型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、バギー、自転車等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0013】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
また、本発明における「加減速度」は、加速度が正の値として表現され、減速度が負の値として表現される概念である。つまり、本発明における「加減速度が低下する」との表現は、加速度が低下する状態又は減速度が上昇する状態を意味する。また、本発明における「加減速度が上昇する」との表現は、加速度が上昇する状態又は減速度が低下する状態を意味する。
【0015】
また、本発明における「上下勾配度」は、上り坂の勾配度が正の値として表現され、下り坂の勾配度が負の値として表現される概念である。つまり、本発明における「上下勾配度が高い」との表現は、上り坂の勾配度が高い状態又は下り坂の勾配度が低い状態を意味する。また、本発明における「上下勾配度が低い」との表現は、上り坂の勾配度が低い状態又は下り坂の勾配度が高い状態を意味する。
【0016】
実施の形態
以下に、実施の形態に係るライダー支援システムを説明する。
【0017】
<ライダー支援システムの構成>
実施の形態に係るライダー支援システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、鞍乗型車両への搭載状態を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を説明するための図である。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、鞍乗型車両100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、制動系統10と、駆動系統20と、変速系統30と、を備えている。また、鞍乗型車両100は、制御装置51を含むライダー支援システム50を備えている。
【0019】
制動系統10は、前輪3を制動するための前輪制動機構11と、後輪4を制動するための後輪制動機構12と、を含む。前輪制動機構11に対応した入力部(例えば、ブレーキレバー13)がライダーによって操作されると、その操作量に応じた力で前輪制動機構11のブレーキパッド(図示省略)が前輪3と共に回転するロータ(図示省略)に押し付けられて、前輪3が制動される。また、後輪制動機構12に対応した入力部(例えば、ブレーキペダル14)がライダーよって操作されると、その操作量に応じた力で後輪制動機構12のブレーキパッド(図示省略)が後輪4と共に回転するロータ(図示省略)に押し付けられて、後輪4が制動される。
【0020】
制御装置51は、前輪制動機構11及び後輪制動機構12のそれぞれに生じさせる制動力を個別に制御することが可能である。例えば、制御装置51は、前輪制動機構11のブレーキパッドをロータから離れるように制御して、前輪3に生じさせる制動力を減少させることが可能である。また、制御装置51は、前輪制動機構11のブレーキパッドをロータに近づくように制御して、前輪3に生じさせる制動力を増加させることが可能である。また、制御装置51は、後輪制動機構12のブレーキパッドをロータから離れるように制御して、後輪4に生じさせる制動力を減少させることが可能である。また、制御装置51は、後輪制動機構12のブレーキパッドをロータに近づくように制御して、後輪4に生じさせる制動力を増加させることが可能である。つまり、制御装置51は、前輪3及び後輪4に生じさせる制動力を制御することで、鞍乗型車両100の加減速度を制御することが可能である。また、制御装置51は、前輪3及び後輪4のそれぞれに生じさせる制動力の変化の配分を制御することも可能である。
【0021】
駆動系統20は、駆動源(例えば、エンジン、モータ等)21の出力を変速系統30に伝達する。入力部(例えば、アクセルグリップ22)がライダーによって操作されると、その操作量に応じた出力が、変速系統30で変速されて駆動輪(例えば、後輪4)に伝達される。
【0022】
制御装置51は、駆動系統20の駆動源21の出力を制御することが可能である。例えば、制御装置51は、スロットル(図示省略)の開度を制御して、駆動源21の出力を増減させることが可能である。制御装置51は、スロットルを閉じるように制御することで、駆動輪に制動力(いわゆるエンジンブレーキ)を生じさせることも可能である。つまり、制御装置51は、駆動源21の出力を制御することで、鞍乗型車両100の加減速度を制御することが可能である。また、制御装置51は、駆動輪に生じさせる制動力を制御することも可能である。制御装置51は、前輪3及び後輪4のそれぞれに生じさせる制動力の変化の配分を制御する際に、制動系統10に換えて又は加えて駆動系統20を制御することができる。
【0023】
制御装置51は、変速系統30の変速比を制御することが可能である。例えば、制御装置51は、多段変速機構31の選択段を下げるように制御して、変速比を上げることが可能である。ここで、スロットルが閉じている状態で変速比が上がる場合には、駆動輪に生じている制動力(いわゆるエンジンブレーキ)が増加する。また、制御装置51は、多段変速機構31の選択段を上げるように制御して、変速比を下げることが可能である。ここで、スロットルが閉じている状態で変速比が下がる場合には、駆動輪に生じている制動力(いわゆるエンジンブレーキ)が減少する。つまり、制御装置51は、変速系統30の変速比を制御することで、鞍乗型車両100の加減速度を制御することが可能である。また、制御装置51は、駆動輪に生じさせる制動力を制御することも可能である。制御装置51は、前輪3及び後輪4のそれぞれに生じさせる制動力の変化の配分を制御する際に、制動系統10に換えて又は加えて変速系統30を制御することができる。
【0024】
制御装置51は、判定部52と、ハプティクス動作実行部53と、を備えている。制御装置51の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュールであってもよい。また、制御装置51は、例えば、1つにまとめられていてもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0025】
判定部52は、鞍乗型車両100の走行中に、鞍乗型車両100のライダーに与える警告の必要性を判定する。判定部52は、例えば、鞍乗型車両100又はライダーの各部の状態を検出する各種センサの出力に基づいて警告の必要性を判定してもよく、また、鞍乗型車両100に搭載されている周囲環境センサの出力に基づいて警告の必要性を判定してもよく、また、他車両又はインフラストラクチャ設備との無線通信を介して取得される情報に基づいて警告の必要性を判定してもよい。
【0026】
ハプティクス動作実行部53は、判定部52で警告が必要であると判定された場合に、鞍乗型車両100の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行する。一瞬間だけ低下又は上昇させた後の加減速度が、低下又は上昇させる前の加減速度と等しくなってもよく、また、等しくならなくてもよい。ハプティクス動作実行部53は、車輪(前輪3、後輪4)の制動力を増減させることで、加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させる。その増減量、増減の勾配及び増減の間隔は、警告が生じたことをライダーが知覚できる程度の値に設定される。ハプティクス動作は、各車輪に制動力が生じている状態で実行されてもよく、また、各車輪に制動力が生じていない状態で実行されてもよい。
【0027】
ここで、ハプティクス動作実行部53は、鞍乗型車両100の走行中に取得部54で取得される鞍乗型車両100の走行状態情報に応じて、制動力を増減させる際の前輪3及び後輪4の優先度を変化させる。走行状態情報は、各車輪のハプティクス動作に対する適正度を知り得る情報である。
【0028】
なお、ハプティクス動作は、前輪3及び後輪4のうちの一方の車輪のみの制動力を変化させる動作であってもよく、また、前輪3及び後輪4のうちの両方の車輪の制動力を変化させる動作であってもよい。ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの一方の車輪のみの制動力を変化させる動作である場合には、ハプティクス動作実行部53は、前輪3及び後輪4のうちから、ハプティクス動作において制動力を変化させる一方の車輪を取得部54で取得される走行状態情報に応じて選択することで、優先度を変化させる。また、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの両方の車輪の制動力を変化させる動作である場合には、ハプティクス動作実行部53は、ハプティクス動作において前輪3に生じさせる制動力の変化と後輪4に生じさせる制動力の変化との配分を取得部54で取得される走行状態情報に応じて変化させることで、優先度を変化させる。
【0029】
一例として、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100に生じている加減速度を示す情報を含む。その情報は、鞍乗型車両100に生じている加減速度自体の情報であってもよく、また、鞍乗型車両100に生じている加減速度の推定を可能とする他の状態量(例えば、鞍乗型車両100に生じているピッチングの量、サスペンション5に生じている伸縮の量等)の情報であってもよい。ハプティクス動作実行部53が、ハプティクス動作において、加減速度を示す情報が鞍乗型車両100に低い加減速度が生じている状態を示す情報である場合に、加減速度を示す情報が鞍乗型車両100に高い加減速度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前輪3の優先度を高くするとよい。
【0030】
つまり、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの一方の車輪のみの制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、加減速度を示す情報が鞍乗型車両100に基準を下回る加減速度が生じている状態を示す情報である場合に、前輪3のみに制動力の変化を生じさせ、加減速度を示す情報が鞍乗型車両100に基準を上回る加減速度が生じている状態を示す情報である場合に、後輪4のみに制動力の変化を生じさせる。また、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの両方の車輪の制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、加減速度を示す情報が鞍乗型車両100に低い加減速度が生じている状態を示す情報である場合に、加減速度を示す情報が鞍乗型車両100に高い加減速度が生じている状態を示す情報である場合よりも、前輪3及び後輪4に生じさせる制動力の変化の総和に対する前輪3に生じさせる制動力の変化の割合を高くする。
【0031】
一例として、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100の車輪に生じているスリップ度を示す情報を含む。その情報は、車輪に生じているスリップ度自体の情報であってもよく、また、車輪に生じているスリップ度の推定を可能とする他の状態量(例えば、車輪速の変動が生じるタイミング、車輪速の変動の量等)の情報であってもよい。ハプティクス動作実行部53が、ハプティクス動作において、スリップ度を示す情報が前輪3に高いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、スリップ度を示す情報が前輪3に低いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、後輪4の優先度を高くするとよい。また、ハプティクス動作実行部53が、ハプティクス動作において、スリップ度を示す情報が後輪4に高いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、スリップ度を示す情報が後輪4に低いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前輪3の優先度を高くするとよい。
【0032】
つまり、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの一方の車輪のみの制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、スリップ度を示す情報が前輪3に基準を下回るスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、前輪3のみに制動力の変化を生じさせ、スリップ度を示す情報が前輪3に基準を上回るスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、後輪4のみに制動力の変化を生じさせる。また、ハプティクス動作実行部53は、スリップ度を示す情報が後輪4に基準を下回るスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、後輪4のみに制動力の変化を生じさせ、スリップ度を示す情報が後輪4に基準を上回るスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、前輪3のみに制動力の変化を生じさせる。また、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの両方の車輪の制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、スリップ度を示す情報が前輪3に高いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、スリップ度を示す情報が前輪3に低いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合よりも、前輪3及び後輪4に生じさせる制動力の変化の総和に対する後輪4に生じさせる制動力の変化の割合を高くする。また、ハプティクス動作実行部53は、スリップ度を示す情報が後輪4に高いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合に、スリップ度を示す情報が後輪4に低いスリップ度が生じている状態を示す情報である場合よりも、前輪3及び後輪4に生じさせる制動力の変化の総和に対する前輪3に生じさせる制動力の変化の割合を高くする。
【0033】
一例として、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100が走行している道路の上下勾配度を示す情報を含む。その情報は、道路の上下勾配度自体の情報であってもよく、また、道路の上下勾配度の推定を可能とする他の状態量(例えば、鞍乗型車両100に生じている路面垂直方向の加速度の量、サスペンション5に生じている伸縮の量等)の情報であってもよい。ハプティクス動作実行部53が、ハプティクス動作において、上下勾配度を示す情報が道路に高い上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合に、上下勾配度を示す情報が道路に低い上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、後輪4の優先度を高くするとよい。
【0034】
つまり、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの一方の車輪のみの制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、上下勾配度を示す情報が道路に基準を上回る上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合に、後輪4のみに制動力の変化を生じさせ、上下勾配度を示す情報が道路に基準を下回る上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合に、前輪3のみに制動力の変化を生じさせる。また、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの両方の車輪の制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、上下勾配度を示す情報が道路に高い上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合に、上下勾配度を示す情報が道路に低い上下勾配度が生じている状態を示す情報である場合よりも、前輪3及び後輪4に生じさせる制動力の変化の総和に対する後輪4に生じさせる制動力の変化の割合を高くする。
【0035】
一例として、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100の車輪に生じているサスペンション減衰度を示す情報を含む。その情報は、車輪に生じているサスペンション減衰度自体の情報であってもよく、また、車輪に生じているサスペンション減衰度の推定を可能とする他の状態量(例えば、鞍乗型車両100に生じているピッチングの変化の量、サスペンション5の減衰度制御に用いられるパラメータ等)の情報であってもよい。ハプティクス動作実行部53が、ハプティクス動作において、サスペンション減衰度を示す情報が前輪3に高いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、サスペンション減衰度を示す情報が前輪3に低いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、後輪4の優先度を高くするとよい。また、ハプティクス動作実行部53が、ハプティクス動作において、サスペンション減衰度を示す情報が後輪4に高いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、サスペンション減衰度を示す情報が後輪4に低いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合と比較して、前輪3の優先度を高くするとよい。
【0036】
つまり、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの一方の車輪のみの制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、サスペンション減衰度を示す情報が前輪3に基準を下回るサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、前輪3のみに制動力の変化を生じさせ、サスペンション減衰度を示す情報が前輪3に基準を上回るサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、後輪4のみに制動力の変化を生じさせる。また、ハプティクス動作実行部53は、サスペンション減衰度を示す情報が後輪4に基準を下回るサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、後輪4のみに制動力の変化を生じさせ、サスペンション減衰度を示す情報が後輪4に基準を上回るサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、前輪3のみに制動力の変化を生じさせる。また、ハプティクス動作が、前輪3及び後輪4のうちの両方の車輪の制動力を変化させる動作である場合においては、ハプティクス動作実行部53は、サスペンション減衰度を示す情報が前輪3に高いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、サスペンション減衰度を示す情報が前輪3に低いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合よりも、前輪3及び後輪4に生じさせる制動力の変化の総和に対する後輪4に生じさせる制動力の変化の割合を高くする。また、ハプティクス動作実行部53は、サスペンション減衰度を示す情報が後輪4に高いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合に、サスペンション減衰度を示す情報が後輪4に低いサスペンション減衰度が生じている状態を示す情報である場合よりも、前輪3及び後輪4に生じさせる制動力の変化の総和に対する前輪3に生じさせる制動力の変化の割合を高くする。
【0037】
<ライダー支援システムの動作>
実施の形態に係るライダー支援システムの動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、制御装置における制御フローの一例を示す図である。
【0038】
制御装置51は、ライダー支援動作が有効になっており、且つ、鞍乗型車両100が走行している間において、
図3に示される制御フローを繰り返し実行する。
【0039】
(判定ステップ)
ステップS101において、制御装置51の判定部52は、鞍乗型車両100のライダーに与える警告の必要性を判定する。判定部52が、警告の必要性があると判定すると、ステップS102に進み、そうではない場合には、S101に戻る。
【0040】
(取得ステップ)
ステップS102において、制御装置51の取得部54は、鞍乗型車両100の走行状態情報を取得する。
【0041】
(ハプティクス動作実行ステップ)
ステップS103において、制御装置51のハプティクス動作実行部53は、鞍乗型車両100の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行する。ハプティクス動作実行部53は、車輪(前輪3、後輪4)の制動力を増減させることで、加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させる。ここで、ハプティクス動作実行部53は、ステップS102で取得される走行状態情報に応じて、制動力を増減させる際の前輪3及び後輪4の優先度を変化させる。
【0042】
<ライダー支援システムの効果>
実施の形態に係るライダー支援システムの効果について説明する。
【0043】
ライダー支援システム50では、制御装置51が、鞍乗型車両100のライダーに与える警告の必要性を判定する判定部52と、判定部52で警告が必要であると判定された場合に、鞍乗型車両100の加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるハプティクス動作を少なくとも1回実行するハプティクス動作実行部53と、を備えている。そして、制御装置51が、更に、鞍乗型車両100の走行状態情報を取得する取得部54を備えており、ハプティクス動作実行部53は、ハプティクス動作において加減速度を一瞬間だけ低下又は上昇させるために制動力を変化させる際の各車輪(前輪3、後輪4)の優先度を、取得部54で取得される走行状態情報に応じて変化させる。そのため、加減速度のごく小さな変化によって鞍乗型車両100の走行安全性が大きく低下し得る状況下であっても、走行安全性に影響しづらい方の車輪を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。
【0044】
好ましくは、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100に生じている加減速度を示す情報を含む。そのように構成されることで、鞍乗型車両100に生じている加減速度がとても低くなっている状況下であっても、走行安全性に影響しづらい(つまり、ロックや空転を生じにくい)前輪3を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。また、鞍乗型車両100に生じている加減速度がとても高くなっている状況下であっても、走行安全性に影響しづらい(つまり、ロックや空転を生じにくい)後輪4を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。
【0045】
好ましくは、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100の車輪(前輪3、後輪4)に生じているスリップ度を示す情報を含む。そのように構成されることで、現に走行安全性に影響している(つまり、ロックや空転を生じている又は生じる可能性が高まっている)車輪ではない方の車輪を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。
【0046】
好ましくは、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100が走行している道路の上下勾配度を示す情報を含む。そのように構成されることで、道路の上下勾配度がとても高くなっている状況下であっても、走行安全性に影響しづらい(つまり、ロックや空転を生じにくい)後輪4を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。また、道路の上下勾配度がとても低くなっている状況下であっても、走行安全性に影響しづらい(つまり、ロックや空転を生じにくい)前輪3を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。
【0047】
好ましくは、取得部54で取得される走行状態情報は、鞍乗型車両100の車輪(前輪3、後輪4)に生じているサスペンション減衰度を示す情報を含む。そのように構成されることで、サスペンション減衰度が高くなって走行安全性への影響度が高くなっている(つまり、ロックや空転を生じやすくなっている)車輪ではない方の車輪を優先的に用いて加減速度の変化量が大きなハプティクス動作を実行することが可能となって、ライダーによる警告の知覚性を向上することが可能となる。
【0048】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の一部のみが実施されてもよい。また、例えば、
図3に示される制御フローにおいて、各ステップの順序が入れ替えられてもよく、また、他のステップが加えられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、4 後輪、5 サスペンション、10 制動系統、11 前輪制動機構、12 後輪制動機構、13 ブレーキレバー、14 ブレーキペダル、20 駆動系統、21 駆動源、22 アクセルグリップ、30 変速系統、31 多段変速機構、50 ライダー支援システム、51 制御装置、52 判定部、53 ハプティクス動作実行部、54 取得部、100 鞍乗型車両。