(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20240115BHJP
A43B 5/06 20220101ALI20240115BHJP
A43B 7/32 20060101ALI20240115BHJP
A43B 13/18 20060101ALI20240115BHJP
A43B 13/16 20060101ALI20240115BHJP
A43B 13/40 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A43B13/14 B
A43B5/06
A43B7/32
A43B13/18
A43B13/16
A43B13/40
(21)【出願番号】P 2022514880
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016304
(87)【国際公開番号】W WO2021210044
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 圭太
(72)【発明者】
【氏名】田平 義仁
(72)【発明者】
【氏名】波多野 元貴
(72)【発明者】
【氏名】新 陽介
(72)【発明者】
【氏名】益本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】北本 桂士
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩基
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-271804(JP,A)
【文献】特開2019-165937(JP,A)
【文献】登録実用新案第3049755(JP,U)
【文献】特開2019-063491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/06
A43B 7/32
A43B 13/00 - 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の一部を構成するソール
と、
前記ソールに接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備え、
前記ソールは、
少なくとも前記履物の長手方向における後部に位置する後足領域に設けられており、着地時に足の踵に加わる衝撃を緩和させる緩衝部と、
少なくとも前記履物の前記長手方向における中央部に位置する中足領域に設けられており、前記緩衝部の剛性よりも高い剛性を有し、かつ、足の中足部を支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記緩衝部の前方に設けられており、前記履物の幅方向における一端から他端に至るように延びる形状を有する支持面を有し、
前記緩衝部は、
前記支持面から窪んだ高さ位置に位置する凹面と、
それぞれが前記凹面から前記支持面と同じ高さ位置まで延びる形状を有する複数の柱状体と、を有
し、
前記アッパーは、前記ソールの表面に接続された中底を有し、
前記支持面は、前記中底に接着されており、
前記緩衝部は、前記中底に接着されていない、履物。
【請求項2】
前記柱状体の平面視において、前記柱状体の軸方向と直交する方向における前記柱状体の寸法のうち最も大きな最大寸法は、前記柱状体の高さ寸法よりも大きく、
前記柱状体の高さ寸法は、前記ソールの厚みの30%以下である、請求項1に記載の
履物。
【請求項3】
前記緩衝部は、
前記長手方向における前端に位置する前端部と、
前記長手方向における後端に位置する後端部と、
前記前端部と前記後端部とを連結しており、前記幅方向における前記緩衝部の内側の縁部を構成する内側縁部と、を有し、
前記前端部は、前記幅方向における前記ソールの中心線よりも外側に位置しており、
前記支持部は、前記内側縁部から前記幅方向における内側に向かって延びる形状を有する内側支持部を有する、請求項1又は2に記載の
履物。
【請求項4】
前記内側縁部は、前記前端部から前記後端部に向かうにしたがって次第に前記幅方向における内側に向かう形状を有する前側縁部を有する、請求項3に記載の
履物。
【請求項5】
前記凹面は、
ベース面と、
前記ベース面に対して傾斜した傾斜面と、を有し、
前記傾斜面は、前記幅方向における外側から内側に向かうにしたがって次第に前記柱状体の
表面に近づくように傾斜する形状を有する、請求項1から4のいずれかに記載の
履物。
【請求項6】
前記複数の柱状体のうち互いに隣接する一対の前記柱状体間の寸法は、前記柱状体の高さ寸法以上である、請求項1から5のいずれかに記載の
履物。
【請求項7】
前記柱状体の
表面は、平面視において多角形状に形成されており、
前記複数の柱状体のうち互いに隣接する一対の前記柱状体間の寸法は、前記柱状体の前記表面の各辺の長さよりも小さい、請求項1から6のいずれかに記載の
履物。
【請求項8】
前記柱状体の前記表面は、平面視において五角形以上の多角形状に形成されている、請求項7に記載の
履物。
【請求項9】
前記柱状体は、軸線が延びる方向である軸方向において相対する第1端面および第2端面と、前記第1端面の周縁および前記第2端面の周縁を接続する複数の接続面とを外表面として有する外形が柱状の緩衝材からなり、
前記第1端面は、前記軸方向に沿って見た場合に外形がN角形(Nは3以上の整数)であり、
前記第2端面は、前記軸方向に沿って見た場合に外形がM角形(Mは4以上であってNよりも大きい整数)であり、
前記複数の接続面によって規定される周面のうちの前記軸方向における途中位置には、(M-N)個の頂点が設けられ、
前記周面に設けられた(M-N)個の頂点から前記第1端面が有するN個の頂点のうちの1個の頂点に達するように1本の第1稜線が設けられ、
前記周面に設けられた(M-N)個の頂点から前記第2端面が有するM個の頂点のうちの周方向において隣り合う2個の頂点に達するように2本の第2稜線が設けられ、
前記第1端面が有するN個の頂点のうちの残る頂点から前記第2端面が有するM個の頂点のうちの残る頂点に達するように(2×N-M)本の第3稜線が設けられ、
前記第1稜線、前記第2稜線および前記第3稜線に含まれる稜線は、互いに交差することがなく、
前記第1稜線、前記第2稜線および前記第3稜線に含まれる稜線により、前記複数の接続面が規定されている、請求項7に記載の
履物。
【請求項10】
前記柱状体は、複数個の緩衝材が組み合わされることでユニット化されてなる緩衝ユニットを含む緩衝構造体からなり、
前記複数個の緩衝材の各々は、軸線が延びる方向である軸方向において相対する第1端面および第2端面と、前記第1端面の周縁および前記第2端面の周縁を接続する複数の接続面とを外表面として有する外形が柱状の緩衝材からなり、
前記第1端面は、前記軸方向に沿って見た場合に外形がN角形(Nは3以上の整数)であり、
前記第2端面は、前記軸方向に沿って見た場合に外形がM角形(Mは4以上であってNよりも大きい整数)であり、
前記複数の接続面によって規定される周面のうちの前記軸方向における途中位置には、(M-N)個の頂点が設けられ、
前記周面に設けられた(M-N)個の頂点から前記第1端面が有するN個の頂点のうちの1個の頂点に達するように1本の第1稜線が設けられ、
前記周面に設けられた(M-N)個の頂点から前記第2端面が有するM個の頂点のうちの周方向において隣り合う2個の頂点に達するように2本の第2稜線が設けられ、
前記第1端面が有するN個の頂点のうちの残る頂点から前記第2端面が有するM個の頂点のうちの残る頂点に達するように(2×N-M)本の第3稜線が設けられ、
前記第1稜線、前記第2稜線および前記第3稜線に含まれる稜線は、互いに交差することがなく、
前記第1稜線、前記第2稜線および前記第3稜線に含まれる稜線により、前記複数の接続面が規定されており、
前記複数個の緩衝材は、互いが有する前記複数の接続面のうち、前記第1稜線および前記第2稜線によって規定される接続面同士が隙間を介して相互に対向するように隣り合って配置され、
前記複数個の緩衝材同士の間に形成された前記隙間の大きさが、略一定である、請求項7に記載の
履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ソール及び履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着地時に足に加わる衝撃を緩和させる構造を備える履物が知られている。例えば、米国特許出願公開第2015/0223560号明細書には、複数の凸状要素を有するミッドソールが開示されている。複数の凸状要素は、ミッドソールの表面に設けられた窪み面からミッドソールの表面まで延びる形状を有している。複数の凸状要素は、ミッドソールの全域にわたって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0223560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランニング等の動作では、着地時に特に踵部分に比較的大きな衝撃が加わるため、この衝撃を緩和させつつ、足のアーチ(内側縦アーチ及び外側縦アーチ)の崩れを抑制したいというニーズがある。
【0005】
本開示の目的は、着地時に踵に加わる衝撃の緩和と、足のアーチの崩れの抑制と、の双方を達成可能なソール及び履物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の一局面に従ったソールは、履物の一部を構成するソールであって、少なくとも前記履物の長手方向における後部に位置する後足領域に設けられており、着地時に足の踵に加わる衝撃を緩和させる緩衝部と、少なくとも前記履物の前記長手方向における中央部に位置する中足領域に設けられており、前記緩衝部の剛性よりも高い剛性を有し、かつ、足の中足部を支持する支持部と、を有し、前記支持部は、前記緩衝部の前方に設けられており、前記履物の幅方向における一端から他端に至るように延びる形状を有する支持面を有し、前記緩衝部は、前記支持面から窪んだ高さ位置に位置する凹面と、それぞれが前記凹面から前記支持面と同じ高さ位置まで延びる形状を有する複数の柱状体と、を有する。
【0007】
また、この開示の一局面に従った履物は、前記ソールと、前記ソールに接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この開示によれば、着地時に踵に加わる衝撃の緩和と、足のアーチの崩れの抑制と、の双方を達成可能なソール及び履物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態の履物を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線での断面図である。
【
図4】
図2におけるIV-IV線での断面図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI線での断面図である。
【
図16】本開示の第2実施形態の履物のソールの緩衝部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。以下の説明では、長手方向、幅方向、前方、後方等の用語が用いられる。これら方向を示す用語は、地面等の平らな面に置かれた履物1を着用した着用者の視点から見た方向を示す。例えば、前方は、つま先側を指し、後方は、踵側を指す。また、内側は、幅方向における足の第1趾側を指し、外側は、幅方向における足の第5趾側を指す。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態の履物を概略的に示す斜視図である。
図2は、ソールの平面図である。
図3は、
図2におけるIII-III線での断面図である。
図4は、
図2におけるIV-IV線での断面図である。なお、
図2には、左足用のソール10が示されているが、このソール10は、右足にも適用可能であり、この場合、左足用のソール10と対称になる。本実施形態の履物1は、例えば、ランニングシューズが好適であるが、他のスポーツシューズやウォーキングシューズとして適用可能であり、履物の用途は問わない。
【0012】
図1、
図3及び
図4に示されるように、履物1は、ソール10と、アッパー20と、を備えている。
【0013】
アッパー20は、ソール10に接続されており、ソール10とともに足を収容する空間を形成する。
図3に示されるように、アッパー20は、アッパー本体22と、中底24と、を有している。アッパー本体22は、足の上面を被覆している。中底24は、アッパー本体22の下部に接続されており、アッパー20の底部を構成している。中底24は、ソール10の表面に接続されている。
【0014】
ソール10は、履物1の一部を構成している。ソール10は、アッパー20の下部に接続されている。ソール10は、アウターソール100と、ミッドソール200と、を有している。
【0015】
アウターソール100は、接地部を構成している。アウターソール100は、ゴム等からなる。
【0016】
ミッドソール200は、アウターソール100上に設けられている。このミッドソール200上にアッパー20が配置されている。つまり、ミッドソール200は、アッパー20とアウターソール100との間に設けられている。
【0017】
ミッドソール200は、例えば、主成分としての樹脂材料と、副成分としての発泡剤や架橋剤と、を含む樹脂製のフォーム材により形成される。樹脂材料として、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が利用可能である。熱可塑性樹脂として、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に利用可能である。熱硬化性樹脂として、例えばポリウレタン(PU)が好適に利用可能である。あるいは、ミッドソール200は、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤や発泡剤、補強剤、架橋剤と、を含むゴム製のフォーム材により形成されてもよい。ゴム材料として、例えばブタジエンゴムが好適に利用可能である。なお、ミッドソール200は、上記の材料に限らず、適度な強度を有しつつ緩衝性に優れる樹脂またはゴム材料により形成されてもよい。
【0018】
ミッドソール200は、前足領域R1と、後足領域R2と、中足領域R3と、を有している。前足領域R1は、履物1の長手方向における前部に位置する領域である。後足領域R2は、履物1の長手方向における後部に位置する領域である。中足領域R3は、前足領域R1と後足領域R2との間に位置する領域である。
【0019】
前足領域R1は、履物1の全長に対して履物1の前端部から後端部に向かって0%~30%程度の範囲に位置する領域である。中足領域R3は、履物1の全長に対して履物1の前端部から後端部に向かって30%~80%程度の範囲に位置する領域である。後足領域R2は、履物1の全長に対して履物1の前端部から後端部に向かって80%~100%の範囲に位置する領域である。
【0020】
図2に示されるように、ミッドソール200は、緩衝部210と、支持部220と、を有している。
【0021】
緩衝部210は、着地時に足の踵に加わる衝撃を緩和させる部位である。緩衝部210は、少なくとも後足領域R2に設けられている。本実施形態では、緩衝部210は、後足領域R2から中足領域R3の後部に至る領域に設けられている。緩衝部210は、履物1の中心線SC(
図2を参照)に沿って履物1の後端部から50%以下の範囲に形成されることが好ましい。なお、中心線SCは、履物1の中心線に限らず、履物1の標準的な着用者の踵骨の中心と第1趾及び第2趾間とを結ぶ直線に対応する線としてもよい。
【0022】
緩衝部210は、前端部210aと、後端部210bと、内側縁部210cと、外側縁部210dと、を有している。
【0023】
前端部210aは、長手方向における前端に位置する部位である。
図2に示されるように、前端部210aは、中心線SCよりも幅方向における外側に位置している。
【0024】
後端部210bは、長手方向における後端に位置する部位である。
図2に示されるように、後端部210bは、概ね中心線SC上に位置している。
【0025】
内側縁部210cは、前端部210aと後端部210bとを連結しており、幅方向における緩衝部210の内側の縁部を構成している。内側縁部210cは、前側縁部210c1と、後側縁部210c2と、を有している。
【0026】
前側縁部210c1は、長手方向における内側縁部210cの前部を構成している。前側縁部210c1は、前端部210aから後端部210bに向かうにしたがって次第に幅方向における内側に向かう形状を有している。本実施形態では、前側縁部210c1は、幅方向における内向きに凸となるように湾曲する形状を有している。ただし、前側縁部210c1は、幅方向における外向きに凸となるように湾曲する形状を有していてもよいし、直線状に形成されてもよい。
【0027】
後側縁部210c2は、長手方向における内側縁部210cの後部を構成している。後側縁部210c2は、後端部210bに向かうにしたがって次第に幅方向における外側に向かう形状を有している。本実施形態では、後側縁部210c2は、幅方向における内向きに凸となるように湾曲する形状を有している。ただし、後側縁部210c2は、幅方向における外向きに凸となるように湾曲する形状を有していてもよいし、直線状に形成されてもよい。
【0028】
外側縁部210dは、前端部210aと後端部210bとを連結しており、幅方向における緩衝部210の外側の縁部を構成している。
【0029】
緩衝部210は、凹面212と、複数の柱状体214と、を有している。
【0030】
凹面212は、ミッドソール200のうち緩衝部210の周囲の部位の表面(後述の支持面220aを含む)から窪んだ高さ位置に位置している。
図6に示されるように、凹面212は、ベース面212aと、傾斜面212bと、を有している。
【0031】
ベース面212aは、柱状体214の表面と実質的に平行である。
【0032】
傾斜面212bは、ベース面212aに対して傾斜している。傾斜面212bは、内側縁部210cを含む領域A(
図5において斜線が施された領域)に形成されている。傾斜面212bは、前記領域Aのうち緩衝部210内に位置する縁部A1から緩衝部210の外縁A2に向かうにしたがって次第に柱状体214の表面に近づくように傾斜する形状を有している。例えば、
図5におけるVI-VI線での断面では、
図6に示されるように、傾斜面212bは、幅方向における外側から内側に向かうにしたがって次第に柱状体214の表面に近づくように傾斜する形状を有している。この傾斜面212bは、
図6に示されるように平坦に形成されてもよいし、上向きに凸となるように湾曲するように形成されてもよいし、下向きに凸となるように湾曲するように形成されてもよい。領域Aの後端部は、中心線SCよりも幅方向における内側に位置している。
【0033】
各柱状体214は、凹面212から支持面220aと同じ高さ位置まで延びる形状を有している。各柱状体214の表面は、平面視において多角形状に形成されていることが好ましく、特に、五角形以上の多角形状に形成されていることが好ましい。本実施形態では、各柱状体214は、六角柱状に形成されている。なお、柱状体214の角部は、厳密な意味での角ではなく、丸まっていてもよく、Cカットされていてもよい。
【0034】
互いに隣接する一対の柱状体214間の寸法g(
図5を参照)は、柱状体214の高さ寸法h(
図7を参照)以上である。前記寸法gは、柱状体214の表面の各辺の長さよりも小さい。
【0035】
柱状体214の平面視において、柱状体214の軸方向と直交する方向における柱状体214の寸法のうち最も大きな最大寸法D(
図5を参照)は、柱状体214の高さ寸法h以上である。前記高さ寸法hは、0.5mm以上に設定されることが好ましい。前記高さ寸法hは、ソール10の厚みT(
図7を参照)の30%以下に設定される。なお、前記高さ寸法hは、凹面212から柱状体214の表面までの距離を意味する。
【0036】
柱状体214の位置は、アウターソール100の接地面部の後端部RP(
図5を参照)から、ヒールセンターHCに沿って前方に向かって、アウターソール100の接地面部のうちつま先の巻き上げ部101以外の部位の中心線SCに沿った方向の寸法L(
図2を参照)の15%~25%の位置を中心とする円X(
図5を参照)内に、柱状体214の少なくとも一部が配置されるように設定される。前記円Xの直径は、アウターソール100の接地面部の縁部のうち前記中心を通るとともに、ヒールセンターHCに直交する直線と交差する部位間の寸法の40%の長さである。本実施形態では、前記円X内に複数の柱状体214が配置されている。この円Xは、長手方向における前記縁部A1の前端部よりも後方に位置している。なお、ヒールセンターHCは、履物1の標準的な着用者の踵骨の中心と第3趾及び第4趾間とを結ぶ直線を意味する。
【0037】
支持部220は、緩衝部210の剛性よりも高い剛性を有し、かつ、足の中足部を支持する部位である。支持部220は、少なくとも中足領域R3に設けられている。なお、剛性は、ソール10の厚み方向における圧縮弾性率と実質的に同義である。
【0038】
支持部220は、支持面220aを有している。支持面220aは、緩衝部210の前方に設けられている。具体的に、支持面220aは、ミッドソール200のうち緩衝部210の前方の部位の表面を構成している。つまり、凹面212は、支持面220aから窪んだ高さ位置に位置している。支持面220aは、幅方向における一端から他端に至るように延びる形状を有している。
【0039】
支持部220は、内側支持部222を有している。内側支持部222は、内側縁部210cから幅方向における内側に向かって延びる形状を有している。より詳細には、内側支持部222は、前側縁部210c1から幅方向における内側に向かって延びる形状を有している。内側支持部222の表面は、支持面220aと連続的につながっている。
【0040】
ミッドソール200のうち緩衝部210の周囲の部位の表面、つまり、支持面220a及び内側支持部222の表面を含む面は、接着剤によって中底24に接着されている。一方、緩衝部210は、中底24に接着されていない。
【0041】
本実施形態では、
図3及び
図4等に示されるように、ミッドソール200は、トップミッドソール201と、ボトムミッドソール202と、衝撃吸収部203と、を有している。
【0042】
ボトムミッドソール202は、アウターソール100上に設けられている。
【0043】
トップミッドソール201は、ボトムミッドソール202の後部の表面に接続されている。このトップミッドソール201の表面に緩衝部210及び内側支持部222が形成されている。支持部220は、平面視(
図2に相当)におけるトップミッドソール201とボトムミッドソール202との境界部近傍に形成されている。
【0044】
衝撃吸収部203は、着地時に主に踵に加わる衝撃を吸収する部位である。衝撃吸収部203は、トップミッドソール201の硬度及びボトムミッドソール202の硬度よりも小さな硬度を有する材料からなる。衝撃吸収部203は、例えば、ポリマー組成物のフォーム材または非フォーム材からなる。
【0045】
図2に示されるように、衝撃吸収部203は、緩衝部210の後部の周囲に設けられている。衝撃吸収部203は、ソール10の厚み方向に緩衝部210と重ならない位置に設けられている。換言すれば、平面視において、衝撃吸収部203は、緩衝部210から離間している。ただし、衝撃吸収部203は、前記厚み方向に緩衝部210と重なる位置に設けられてもよい。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態のソール10では、後足領域R2に設けられた緩衝部210によって着地時に踵に加わる衝撃が緩和され、さらに、足の中足部(踏まず部)を支持する支持部220は、履物1の幅方向における一端から他端に至るように延びる形状を有する支持面220aを有しているため、足のアーチ(内側縦アーチ及び外側縦アーチ)の崩れが抑制される。
【0047】
なお、この実施形態において、
図8に示されるように、各柱状体214は、円柱状に形成されてもよい。あるいは、
図9に示されるように、各柱状体214は、三角柱状に形成されてもよい。
【0048】
あるいは、
図10に示されるように、各柱状体214は、外形が柱状の緩衝材で構成されてもよい。この緩衝材は、軸線AX1が延びる方向である軸方向において相対する第1端面ES1および第2端面ES2と、第1端面ES1の周縁および第2端面ES2の周縁を接続する複数の接続面CSと、を外表面として有している。
【0049】
第1端面ES1は、軸方向に沿って見た場合に外形がN角形(Nは3以上の整数)である。第2端面ES2は、軸方向に沿って見た場合に外形がM角形(Mは4以上であってNよりも大きい整数)である。
【0050】
複数の接続面CSによって規定される周面のうちの軸方向における途中位置には、(M-N)個の頂点Pが設けられている。前記(M-N)個の頂点Pから第1端面ES1が有するN個の頂点のうちの1個の頂点に達するように1本の第1稜線L1が設けられている。前記(M-N)個の頂点Pから第2端面ES2が有するM個の頂点のうちの周方向において隣り合う2個の頂点に達するように2本の第2稜線L2が設けられている。第1端面ES1が有するN個の頂点のうちの残る頂点から第2端面ES2が有するM個の頂点のうちの残る頂点に達するように(2×N-M)本の第3稜線L3が設けられている。
【0051】
第1稜線L1、第2稜線L2および第3稜線L3に含まれる稜線は、互いに交差することがなく、第1稜線L1、第2稜線L2および第3稜線L3に含まれる稜線により、複数の接続面CSが規定されている。
【0052】
図10に示される例では、第1端面ES1は、軸方向に沿って見た場合に外形が五角形の平面からなり、第2端面ES2は、軸方向に沿って見た場合に外形が六角形の平面からなる。すなわち、この例においては、Nが5であり、Mが6である。また、前記頂点Pの数は、1である。複数の接続面CSは、略三角形の外形を有する1つの曲面と、略四角形の外形を有する3つの曲面と、略五角形の外形を有する2つの曲面と、の合計で6つの曲面を含んでいる。
【0053】
上記緩衝材に対して軸方向に沿って圧縮荷重が付与された場合、緩衝材に軸方向に沿った圧縮変形が生じる応力場が発生するのみならず、剪断変形が生じる応力場も発生する。これは、複数の接続面CSがいずれも軸方向と交差する方向に延在しているため、この外形形状に起因して複雑な応力場が発生することによる。換言すれば、緩衝材の変形の主軸が荷重方向(すなわち、緩衝材の軸方向)と異なるため、これが合致する角柱状あるいは円柱状の緩衝材に比べ、剪断変形が格段に発生し易くなる。
【0054】
したがって、剪断変形がより発生し易くなる分だけ体積当たりの変形量が大きくなることになり、これに伴って高い変形能を有することになる。そのため、各柱状体214が上記緩衝材に設定されることにより、高い緩衝機能が発揮される。
【0055】
あるいは、
図11に示されるように、各柱状体214は、複数個の緩衝材が組み合わされることでユニット化されてなる緩衝ユニットを含む緩衝構造体からなっていてもよい。
【0056】
複数個の緩衝材の各々は、
図10に示される緩衝材からなる。複数個の緩衝材は、互いが有する複数の接続面CSのうち、第1稜線L1および第2稜線L2によって規定される接続面同士が隙間Gを介して相互に対向するように隣り合って配置されている。各隙間Gの大きさは、略一定である。
【0057】
図11に示される例では、複数個の緩衝材は、第1端面ES1が五角形でありかつ第2端面ES2が六角形である2個の第1緩衝材と、第1端面ES1が四角形でありかつ第2端面ES2が五角形である2個の第2緩衝材と、の合計で4個の緩衝材からなる。2個の第1緩衝材と2個の第2緩衝材とは、緩衝ユニットの軸線AX2の周囲を取り囲むように交互に配置されているとともに、軸方向に沿った2個の第1緩衝材の向きと軸方向に沿った2個の第2緩衝材の向きとが互いに逆となるように配置されている。これにより、緩衝ユニットは、全体として略六角柱状の外形を呈している。
【0058】
この態様においても、緩衝部210による緩衝機能が高まる。
【0059】
また、
図12~
図15に示されるように、緩衝部210の形成領域は、種々変更が可能である。
【0060】
(第2実施形態)
次に、
図16を参照しながら、本開示の第2実施形態のソール10の緩衝部210について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0061】
本実施形態では、緩衝部210の複数の柱状体214は、幅方向における内側において長手方向に沿って並ぶように配置された3つの内側柱状体214aと、幅方向における外側において長手方向に沿って並ぶように配置された3つの外側柱状体214bと、内側柱状体214aと外側柱状体214bとの間において長手方向に沿って並ぶように配置された3つの中央柱状体214cと、を有している。平面視における各外側柱状体214bの表面は、三角形に形成されている。平面視における各中央柱状体214cの表面は、略五角形に形成されている。外側柱状体214bと中央柱状体214cとの間には、凹面212が設けられている。凹面212を挟んで幅方向に互いに隣接する一対の外側柱状体214b及び中央柱状体214cの全体の外形は、略六角柱状に形成されている。
【0062】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0063】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0064】
この開示の一局面に従ったソール10は、履物1の一部を構成するソールであって、少なくとも前記履物の長手方向における後部に位置する後足領域R2に設けられており、着地時に足の踵に加わる衝撃を緩和させる緩衝部210と、少なくとも前記履物の前記長手方向における中央部に位置する中足領域R3に設けられており、前記緩衝部の剛性よりも高い剛性を有し、かつ、足の中足部を支持する支持部220と、を有し、前記支持部220は、前記緩衝部の前方に設けられており、前記履物の幅方向における一端から他端に至るように延びる形状を有する支持面220aを有し、前記緩衝部210は、前記支持面から窪んだ高さ位置に位置する凹面212と、それぞれが前記凹面から前記支持面と同じ高さ位置まで延びる形状を有する複数の柱状体214と、を有する。
【0065】
このソールでは、後足領域に設けられた緩衝部210によって着地時に踵に加わる衝撃が緩和され、さらに、足の中足部(踏まず部)を支持する支持部220は、履物1の幅方向における一端から他端に至るように延びる形状を有する支持面220aを有しているため、足のアーチ(内側縦アーチ及び外側縦アーチ)の崩れが抑制される。
【0066】
また、前記柱状体214の平面視において、前記柱状体の軸方向と直交する方向における前記柱状体の寸法のうち最も大きな最大寸法Dは、前記柱状体の高さ寸法hよりも大きく、前記柱状体の高さ寸法hは、前記ソール10の厚みTの30%以下であることが好ましい。
【0067】
このようにすれば、緩衝部210に対して荷重が加わった際における各柱状体214の変形モードは、せん断よりも圧縮が主となるため、有効に緩衝効果が得られる。
【0068】
また、前記緩衝部210は、前記長手方向における前端に位置する前端部210aと、前記長手方向における後端に位置する後端部210bと、前記前端部と前記後端部とを連結しており、前記幅方向における前記緩衝部の内側の縁部を構成する内側縁部210cと、を有し、前記前端部210aは、前記幅方向における前記ソールの中心線SCよりも外側に位置しており、前記支持部220は、前記内側縁部から前記幅方向における内側に向かって延びる形状を有する内側支持部222を有することが好ましい。
【0069】
このようにすれば、相対的に剛性の低い緩衝部210が幅方向における外側に位置し、相対的に剛性の高い支持部が幅方向における内側に位置するため、着地時における回内(プロネーション)の発生が抑制される。
【0070】
この場合において、前記内側縁部210cは、前記前端部から前記後端部に向かうにしたがって次第に前記幅方向における内側に向かう形状を有する前側縁部210c1を有することが好ましい。
【0071】
この態様では、幅方向における内側に向かうにしたがって次第に緩衝部から支持部に代わるため、着地時における回内(プロネーション)の発生が抑制される。
【0072】
また、前記凹面212は、ベース面212aと、前記ベース面に対して傾斜した傾斜面212bと、を有し、前記傾斜面は、前記幅方向における外側から内側に向かうにしたがって次第に前記柱状体214の前記表面に近づくように傾斜する形状を有することが好ましい。
【0073】
この態様では、幅方向における内側に向かうにしたがって次第に緩衝部210の剛性が高まるため、着地時における回内(プロネーション)の発生が抑制される。
【0074】
また、前記複数の柱状体のうち互いに隣接する一対の前記柱状体間の寸法gは、前記柱状体の高さ寸法h以上であることが好ましい。
【0075】
このようにすれば、各柱状体214がせん断変形した際に、各柱状体214が当該柱状体に隣接する柱状体に干渉することが抑制される。
【0076】
また、前記柱状体214の前記表面は、平面視において多角形状に形成されており、前記複数の柱状体のうち互いに隣接する一対の前記柱状体間の寸法gは、前記柱状体214の前記表面の各辺の長さよりも小さいことが好ましい。
【0077】
このようにすれば、緩衝部210の形成範囲における柱状体214の数が確保されるため、緩衝機能が確保される。
【0078】
この場合において、前記柱状体214の前記表面は、平面視において五角形以上の多角形状に形成されていることが好ましい。
【0079】
このようにすれば、緩衝部210による緩衝機能が高まる。
【0080】
例えば、前記柱状体214は、軸線AX1が延びる方向である軸方向において相対する第1端面ES1および第2端面ES2と、前記第1端面の周縁および前記第2端面の周縁を接続する複数の接続面CSとを外表面として有する外形が柱状の緩衝材からなり、前記第1端面は、前記軸方向に沿って見た場合に外形がN角形(Nは3以上の整数)であり、前記第2端面は、前記軸方向に沿って見た場合に外形がM角形(Mは4以上であってNよりも大きい整数)であり、前記複数の接続面によって規定される周面のうちの前記軸方向における途中位置には、(M-N)個の頂点Pが設けられ、前記周面に設けられた(M-N)個の頂点から前記第1端面が有するN個の頂点のうちの1個の頂点に達するように1本の第1稜線L1が設けられ、前記周面に設けられた(M-N)個の頂点から前記第2端面が有するM個の頂点のうちの周方向において隣り合う2個の頂点に達するように2本の第2稜線L2が設けられ、前記第1端面が有するN個の頂点のうちの残る頂点から前記第2端面が有するM個の頂点のうちの残る頂点に達するように(2×N-M)本の第3稜線L3が設けられ、前記第1稜線、前記第2稜線および前記第3稜線に含まれる稜線は、互いに交差することがなく、前記第1稜線、前記第2稜線および前記第3稜線に含まれる稜線により、前記複数の接続面CSが規定されていてもよい。
【0081】
この態様では、緩衝部210による緩衝機能が高まる。
【0082】
あるいは、前記柱状体214は、複数個の緩衝材が組み合わされることでユニット化されてなる緩衝ユニットを含む緩衝構造体からなり、前記複数個の緩衝材の各々は、前記緩衝材からなり、前記複数個の緩衝材は、互いが有する前記複数の接続面CSのうち、前記第1稜線および前記第2稜線によって規定される接続面同士が隙間Gを介して相互に対向するように隣り合って配置され、前記複数個の緩衝材同士の間に形成された前記隙間Gの大きさが、略一定であってもよい。
【0083】
この態様においても、緩衝部210による緩衝機能が高まる。
【0084】
また、この開示の一局面に従った履物1は、前記ソール10と、前記ソールに接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパー20と、を備える。
【0085】
前記履物1において、前記アッパー20は、前記ソールの表面に接続された中底24を有し、前記支持面220aは、前記中底24に接着されており、前記緩衝部210は、前記中底24に接着されていないことが好ましい。
【0086】
このようにすれば、柱状体214間に接着剤が入り込むことに起因して緩衝部210の緩衝効果が低減することが抑制される。
【符号の説明】
【0087】
1 履物、10 ソール、20 アッパー、100 アウターソール、200 ミッドソール、201 トップミッドソール、202 ボトムミッドソール、203 衝撃吸収部、210 緩衝部、210a 前端部、210b 後端部、210c 内側縁部、210c1 前側縁部、210c2 後側縁部、210d 外側縁部、212 凹面、212a ベース面、212b 傾斜面、214 柱状体、214a 外側柱状体、214b 内側柱状体、214c 中央柱状体、220 支持部、220a 支持面、222 内側支持部、R1 つま先領域、R2 踵領域、R3 中間領域。