(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】電池、その関連装置、製造方法及び製造機器
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240115BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240115BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240115BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20240115BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240115BHJP
H01M 50/35 20210101ALI20240115BHJP
H01M 50/358 20210101ALI20240115BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20240115BHJP
H01M 50/367 20210101ALI20240115BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M50/342 101
H01M10/613
H01M10/6561
H01M50/289
H01M50/35 201
H01M50/358
H01M10/6567
H01M50/342 201
H01M50/367
(21)【出願番号】P 2022534435
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2020101440
(87)【国際公開番号】W WO2022006895
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 毓群
(72)【発明者】
【氏名】姚 ▲鵬▼程
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 智▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲興▼地
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 小波
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-160573(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017212223(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 50/342
H01M 10/613
H01M 10/6561
H01M 50/289
H01M 50/35
H01M 50/358
H01M 10/6567
H01M 50/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池であって、
交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び前記第1壁に設置され、電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して前記内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む電池セルと、
前記第1壁に取り付けられ、流体を収容して前記電池セルの温度を調整するための熱管理部材と、
前記第2壁に取り付けられ、前記電池セルを支持するための支持部材と、
を含み、
前記熱管理部材は、前記リリーフ機構が作動する時に、前記電池セル内から排出された排出物が前記熱管理部材を通過するように構成さ
れ、
前記熱管理部材は、
前記リリーフ機構の作動を可能にするための空間を提供できるように構成される逃げ構造を含み、
前記熱管理部材は、前記電池セルに取り付けられて前記逃げ構造と前記リリーフ機構との間に逃げキャビティを形成する電池。
【請求項2】
前記電池セルは、
底壁と側壁で形成された収容キャビティ及び前記収容キャビティに接近できる開口部を含むハウジングと、
前記開口部を密閉するように構成されるカバープレートと、
をさらに含み、
前記第1壁は前記カバープレート又は前記側壁のうちの少なくとも1つの壁を含み、前記第2壁は前記底壁である請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電池は、
カバー及びシェルを含み、前記シェルと前記カバーが前記電池セルを収容するための電気キャビティを共同で取り囲んで形成するケースをさらに含み、
前記支持部材は、前記シェルの一部であり、又は前記シェルの内側に配置される請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記ケースは、互いに対向して配置された前記カバーと前記シェルとの間に延在するビームをさらに含み、かつ前記熱管理部材は、前記ビームと前記第1壁との間に配置される請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記熱管理部材と前記支持部材は一体構造で形成される請求項1~4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記熱管理部材には貫通孔が設置され、前記貫通孔は、前記電池セル内から排出された前記排出物が前記熱管理部材を通過することを可能にするように構成される請求項1~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記熱管理部材は、前記電池セル内から排出された前記排出物が前記熱管理部材を通過できるように、前記電池セル内から排出された前記排出物で破壊され得るように構成される請求項1~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記熱管理部材は、前記流体が前記熱管理部材の内部から流出するように、前記電池セル内から排出された前記排出物で破壊され得るように構成される請求項1~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記逃げ構造は、逃げ底壁及び前記逃げキャビティを取り囲む逃げ側壁を含み、前記逃げ底壁は、前記排出物が前記熱管理部材を通過することを可能にするように、前記リリーフ機構が作動する時に破壊されるように構成される請求項
1~8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記逃げ底壁は局所解放機構を含み、前記局所解放機構は、少なくとも前記電池セルからの排出物が前記熱管理部材を通過して排出されることを可能にするように、前記リリーフ機構が作動する時に作動されるように構成される請求項
9に記載の電池。
【請求項11】
前記逃げ側壁は、前記逃げ底壁に対して所定の角度をなし、且つ前記所定の角度は105°~175°の間である請求項
9に記載の電池。
【請求項12】
前記逃げ側壁は、前記リリーフ機構が作動する時に破壊されて、前記流体を流出させるように構成される請求項
9~11のいずれか一項に記載の電池。
【請求項13】
前記電池は、
前記リリーフ機構に対して前記熱管理部材の他側に配置され、前記リリーフ機構が作動する時に前記排出物を収集するように構成される収集キャビティをさらに含む請求項1~
12のいずれか一項に記載の電池。
【請求項14】
ビームは中空空間を有し、前記中空空間は前記収集キャビティを形成する請求項
13に記載の電池。
【請求項15】
前記支持部材は追加収集キャビティをさらに含み、前記追加収集キャビティと前記収集キャビティは、前記収集キャビティの下部又は底部
に連通する請求項
13又は14に記載の電池。
【請求項16】
前記収集キャビティ内に導流構造が設けられ、前記導流構造は、前記排出物を所定の位置に案内することに寄与できるように構成される請求項
13~
15のいずれか一項に記載の電池。
【請求項17】
前記流体は冷却媒体であり、前記熱管理部材は、前記冷却媒体を収容して、前記電池セルを降温することに用いられる請求項1~
16のいずれか一項に記載の電池。
【請求項18】
電気エネルギーを供給するための請求項1~
17のいずれか一項に記載の電池を含む装置。
【請求項19】
電池の製造方法であって、
複数の電池セルを提供するステップであって、前記複数の電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルは、交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び前記第1壁に設置され、前記電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して前記内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む、ステップと、
流体を収容して前記電池セルの温度を調整することに用いられ、前記リリーフ機構が作動する時に、前記電池セル内から排出された排出物が熱管理部材を通過するように構成される熱管理部材を提供し、且つ前記熱管理部材を前記第1壁に取り付けるステップと、
支持部材を提供し、前記支持部材を前記第2壁に取り付けて、前記電池セルを支持するステップと、
を含
み、
前記熱管理部材は、
前記リリーフ機構の作動を可能にするための空間を提供できるように構成される逃げ構造を含み、
前記熱管理部材は、前記電池セルに取り付けられて前記逃げ構造と前記リリーフ機構との間に逃げキャビティを形成する電池の製造方法。
【請求項20】
前記方法は、
カバー及びシェルを含み、前記シェルと前記カバーが前記電池セルを収容するための電気キャビティを共同で取り囲んで形成するケースを提供するステップと、
前記シェルの内側に前記支持部材を提供するか、又は前記シェルの一部を前記支持部材として使用するステップと、
をさらに含む請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記ケースは、互いに対向して配置された前記カバーと前記シェルとの間に延在するビームをさらに含み、
前記熱管理部材を提供するステップは、前記熱管理部材を前記ビームと前記第1壁との間に配置することを含む請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
電池の製造機器であって、
複数の電池セルを製造するための電池セル製造モジュールであって、前記複数の電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルは、交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び前記第1壁に設置され、前記電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して前記内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む、電池セル製造モジュールと、
流体を収容して前記電池セルの温度を調整することに用いられ、前記リリーフ機構が作動する時に、前記電池セル内から排出された排出物が熱管理部材を通過するように構成される熱管理部材を製造するための熱管理部材製造モジュールと、
前記電池セルを支持するための支持部材を製造するための支持部材製造モジュールと、
前記熱管理部材を前記第1壁に取り付け、及び前記支持部材を前記第2壁に取り付けるための組み立てモジュールと、
を含
み、
前記熱管理部材は、
前記リリーフ機構の作動を可能にするための空間を提供できるように構成される逃げ構造を含み、
前記熱管理部材は、前記電池セルに取り付けられて前記逃げ構造と前記リリーフ機構との間に逃げキャビティを形成する電池の製造機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池分野に関し、具体的には、電池、その関連装置、製造方法及び製造機器に関する。
【背景技術】
【0002】
化学電池、電化電池、電気化学電池又は電気化学セルとは、酸化還元反応により、正極、負極活物質の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置を指す。通常の酸化還元反応との相違点は、酸化と還元反応が別々に実行され、酸化が負極で実行され、還元が正極で実行され、電子の増減が外部回路を介して実行され、それにより電流が形成されることである。これはすべての電池の本質的な特徴である。長期間の研究、発展の結果、化学電池は、種類が様々になり、用途が広くなり、建物にしか収容できない巨大な装置から、ミリメートルで計算するタイプまで登場されている。現代の電子技術の発展は、化学電池に対して非常に高い要件を求めている。化学電池の技術のあらゆる突破は、電子機器の革新的な発展をもたらしてしまう。世界中の多くの電気化学科学者は、電気自動車に動力を供給する化学電池の分野に研発の関心を集中している。
【0003】
リチウムイオン電池は、化学電池の1種として、体積が小さく、エネルギー密度が高く、電力密度が高く、サイクル使用の回数が多く、保管時間が長いなどの利点を有し、いくつかの電子機器、電動交通工具、電動玩具及び電動機器に広く使用され、例えば、リチウムイオン電池は、現在、携帯電話、ノートパソコン、電気自転車、電気自動車、電動飛行機、電動船、電動玩具車、電動玩具船、電動玩具飛行機及び電動工具などに広く使用されている。
【0004】
リチウムイオン電池技術の継続的な発展に伴って、リチウムイオン電池の性能に対する要件が高まっており、リチウムイオン電池が様々な設計要素を同時に考慮できることが期待され、その中で、リチウムイオン電池の安全性能は特に重要である。
【発明の概要】
【0005】
本願は、電池の安全性及びコンパクトさを向上させるために、電池、その関連装置、製造方法及び製造機器を提供する。
【0006】
本願の第1態様によれば、電池を提供し、該電池は、交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び前記第1壁に設置され、前記電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して前記内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む電池セルと、前記第1壁に取り付けられ、流体を収容して、前記電池セルの温度を調整するための熱管理部材と、前記第2壁に取り付けられ、前記電池セルを支持するための支持部材と、を含み、前記熱管理部材は、前記リリーフ機構が作動する時に、前記電池セル内から排出された排出物が前記熱管理部材を通過するように構成される。
【0007】
リリーフ機構、熱管理部材及び支持部材のこのような配置方式により、電池セルが該電池で垂直、横、水平又は逆に配置されるかに関わらず、支持部材及び熱管理部材とリリーフ機構はすべて電池セルの交差して設置された2つの壁面に配置され、電池が占める空間に従来技術の持っていない柔軟性がもたらされる。リリーフ機構及び熱管理部材と支持部材が占有する必要がある空間は2つの異なる次元又は方向に分散される。これは、例えば車両への配置に適する電池の空間利用率の向上に寄与し、さらに電池構造のコンパクトさを向上させ、車両の電池のエネルギー密度を向上させることに寄与する。同時に、このような設計は、熱管理部材とリリーフ機構の連携により、内部圧力を直ちに解放して、電池の安全性を向上させることにも寄与する。
【0008】
いくつかの実施例では、前記電池セルは、底壁と側壁で形成された収容キャビティ及び前記収容キャビティに接近できる開口部を含むハウジングと、前記開口部を密閉することに適するカバープレートと、をさらに含み、前記第1壁は前記カバープレート又は前記側壁のうちの少なくとも1つの壁を含み、且つ前記第2壁は前記底壁である。開口部付きの収容キャビティを有するハウジング及び開口部を密閉することに適するカバープレートを有する電池セルをこのように設計することによって、電池セルの装着又は取り外しが容易であり、メンテナンスコストの削減に寄与し、且つ電池セルの配置方式に一定の柔軟性を与えることに寄与する。
【0009】
いくつかの実施例では、前記電池はケースをさらに含み、前記ケースはカバー及びシェルを含み、前記シェルと前記カバーが前記電池セルを収容するための電気キャビティを共同で取り囲んで形成し、前記支持部材は、前記シェルの一部であるか、又は前記シェルの内側に配置される。シェルとカバーは、複数の電池セルを収容するための空間を提供し、電池セルを確実に保護することができる。
【0010】
いくつかの実施例では、前記ケースは、互いに対向して配置された前記カバーと前記シェルとの間に延在するビームをさらに含み、前記熱管理部材は前記ビームと前記第1壁との間に配置される。このような配置方式は、空間利用率を十分に向上させることができ、さらに電池構造がよりコンパクトになる。
【0011】
いくつかの実施例では、前記熱管理部材と前記支持部材は一体構造で形成される。このような一体構造の支持部材と熱管理部材は、電池の構造強度の向上に寄与できる。
【0012】
いくつかの実施例では、前記熱管理部材には貫通孔が設置され、前記貫通孔は、前記電池セル内から排出された前記排出物が前記熱管理部材を通過することを可能にするように構成される。熱管理部材に設置された貫通孔により、電池の内部に熱暴走が発生した場合、電池セルの排出物が即座に貫通孔を通って外部に排出されて熱管理部材を通過することを確保し、排出物の排出不良によるリスクを低減させることができる。且つ貫通孔を用いることにより、電池セルからの排出物は貫通孔を通って電池からより迅速に排出でき、それにより、排出が妨げられることによる二次高圧のリスクを低減させ、電池の安全性能を向上させる。
【0013】
いくつかの実施例では、前記熱管理部材は、前記電池セル内から排出された前記排出物が前記熱管理部材を通過できるように、前記電池セル内から排出された前記排出物で破壊され得るように構成される。このような熱管理部材の構造により、電池の内部に熱暴走が発生した場合、電池セルの排出物を効果的に排出することを確保し、排出物の排出不良によるリスクを低減させ、電池の内部に熱暴走が発生した場合の電池の安全性を向上させることができる。
【0014】
いくつかの実施例では、前記熱管理部材は、前記流体が前記熱管理部材の内部から流出するように、前記電池セル内から排出された前記排出物で破壊され得るように構成される。このような配置方式は、例えば電池セルからの高温高圧排出物を早めに効果的に降温し、又は他の適切な方式で温度調整を早めに行うことができ、従って電池の安全性能の向上に寄与する。
【0015】
いくつかの実施例では、前記熱管理部材は逃げ構造をさらに含み、前記逃げ構造は、前記リリーフ機構の作動を可能にするための空間を提供できるように構成され、前記熱管理部材は前記電池セルに取り付けられて前記逃げ構造と前記リリーフ機構との間に逃げキャビティを形成する。逃げ構造の設置は、リリーフ機構が効果的に作動できることを確保できる。また、逃げキャビティは、電池セルの排出物に緩衝空間を提供することができ、それにより、電池セルの排出物による外部の衝撃力を低減させ、さらに電池の安全性能を向上させる。
【0016】
いくつかの実施例では、前記逃げ構造は、逃げ底壁及び前記逃げキャビティを取り囲む逃げ側壁を含み、前記逃げ底壁は、前記排出物が前記熱管理部材を通過することを可能にするように、前記リリーフ機構が作動する時に破壊されるように構成される。このような配置は、簡単な方式及び低いコストで、リリーフ機構が作動する時に排出物を熱管理部材に通過させるという目的を実現する。
【0017】
いくつかの実施例では、前記逃げ底壁は局所解放機構を含み、前記局所解放機構は、少なくとも前記電池セルからの排出物が前記熱管理部材を通過して排出されることを可能にするように、前記リリーフ機構が作動する時に作動されるように構成される。このような配置は、簡単な方式及び低いコストで、リリーフ機構が作動する時に排出物を熱管理部材に通過させるという目的を実現し、且つ通常の使用状態(例えば、電池セルに熱暴走が発生していない場合)で、電池セルの内部空間をある程度で密閉する。
【0018】
いくつかの実施例では、前記逃げ側壁は、前記逃げ底壁に対して所定の角度をなし、且つ前記所定の角度は105°~175°の間である。このように設置された逃げ構造は、製造が容易であり、且つ逃げ側壁が電池セルからの排出物で破壊され、流体を迅速に流出させて排出物の冷却を支援することに寄与し、それにより電池の安全性能を向上させる。
【0019】
いくつかの実施例では、前記逃げ側壁は、前記リリーフ機構が作動する時に破壊されて、前記流体を流出させるように構成される。該配置は、低いコスト及び簡単な方式で、流体を流出させることができ、それにより、電池自体の流体を用いて電池セルからの排出物の温度を直ちに調整又は影響し、例えば電池セルからの排出物の温度を迅速に低減させ、それにより、電池の安全性能をさらに向上させる。
【0020】
いくつかの実施例では、前記電池は収集キャビティをさらに含み、前記収集キャビティは、前記リリーフ機構に対して前記熱管理部材の他側に配置され、前記リリーフ機構が作動する時に前記排出物を収集するように構成される。収集キャビティの設置により、排出物をさらに緩衝して、排出物の衝撃力をさらに低減させることができ、また、収集キャビティはさらに、排出物による外部部材又は外部構造への二次損傷のリスクを低減させることに寄与する。
【0021】
いくつかの実施例では、前記ビームは中空空間を有し、前記中空空間は前記収集キャビティを形成する。このような配置方式は、さらに空間利用率を向上させることができる。
【0022】
いくつかの実施例では、前記支持部材は追加収集キャビティをさらに含み、前記追加収集キャビティと前記収集キャビティは、前記収集キャビティの下部又は底部に操作可能に連通する。追加収集キャビティの配置は、排出物をさらに緩衝して、排出物の衝撃力をさらに低減させ、且つ排出物を電池の外部に排出する前に排出物を一時的に収容するためのより大きな空間を提供することができる。
【0023】
いくつかの実施例では、前記収集キャビティ内に導流構造が設けられ、前記導流構造は、前記排出物を所定の位置に案内することに寄与できるように構成される。このような配置は、排出物を追加収集キャビティにより効果的で早めに案内して収容し、又は追加収集キャビティを介して排出物を電池外により安全に排出し、収集キャビティで蓄積された排出物による他の安全上のリスクを回避することに寄与する。
【0024】
いくつかの実施例では、前記流体は冷却媒体であり、前記熱管理部材は、前記冷却媒体を収容して、前記電池セルを降温することに用いられる。冷却媒体を用いて電池セルを降温することにより、電池セルは、低温でより安全な動作状態にあり、電池の安全性能の向上に寄与する。
【0025】
本願の第2態様によれば、装置を提供する。該装置は、上記第1態様に記載の電池を含み、該電池は、該装置に電気エネルギーを供給することに用いられる。
【0026】
本願の第3態様によれば、電池の製造方法をさらに提供し、該方法は、複数の電池セルを提供するステップであって、前記複数の電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルは、交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び前記第1壁に設置され、前記電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して前記内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む、ステップと、流体を収容して前記電池セルの温度を調整することに用いられ、且つ前記リリーフ機構が作動する時に、前記電池セル内から排出された排出物が前記熱管理部材を通過するように構成される熱管理部材を提供し、前記熱管理部材を前記第1壁に取り付けるステップと、支持部材を提供し、前記支持部材を前記第2壁に取り付けて、前記電池セルを支持するステップと、を含む。
【0027】
いくつかの実施例では、前記方法は、カバー及びシェルを含み、前記シェルと前記カバーが前記電池セルを収容するための電気キャビティを共同で取り囲んで形成するケースを提供するステップと、前記シェルの内側に前記支持部材を提供するか、又は、前記シェルの一部を前記支持部材として使用するステップと、をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施例では、前記ケースは、互いに対向して配置された前記カバーと前記シェルとの間に延在するビームをさらに含み、且つ前記熱管理部材を提供するステップは、前記熱管理部材を前記ビームと前記第1壁との間に配置することを含む。
【0029】
本願の第4態様によれば、電池の製造機器を提供し、該機器は、複数の電池セルを製造するための電池セル製造モジュールであって、前記複数の電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルは、交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び前記第1壁に設置され、前記電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して前記内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む、電池セル製造モジュールと、流体を収容して前記電池セルの温度を調整することに用いられ、且つ前記リリーフ機構が作動する時に、前記電池セル内から排出された排出物が前記熱管理部材を通過するように構成される熱管理部材を製造するための熱管理部材製造モジュールと、前記電池セルを支持するための支持部材を製造するための支持部材製造モジュールと、前記熱管理部材を前記第1壁に取り付け、及び前記支持部材を前記第2壁に取り付けるための組み立てモジュールと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで説明される図面は、本願のさらなる理解を提供して、本願の一部を構成するものであり、本願の例示的な実施例及びその説明は、本願を解釈するためのものであり、本願を不適切に限定するものではない。図面では、
【
図1】本願の電池を用いる車両のいくつかの実施例の構造模式図を示す。
【
図2】本願のいくつかの実施例に係る垂直に配置される電池セルの分解図を示す。
【
図3】本願のいくつかの実施例に係る水平に配置される電池セルの斜視図を示す。
【
図4】
図3に示される別の角度からの水平に配置される電池セルの斜視図を示す。
【
図6】本願のいくつかの実施例に係る電池の分解図を示す。
【
図8】
図7のA部の局部拡大断面図を示し、熱管理部材に形成された例示的な逃げ構造が示されている。
【
図9】本願のいくつかの実施例に係る電池のケースのシェル部分の斜視図を示す。
【
図10】本願の別のいくつかの実施例に係る電池のケースのシェル部分の斜視図を示す。
【
図11】本願のいくつかの実施例に係る熱管理部材の上面図を示す。
【
図15】本願の電池の製造方法のいくつかの実施例の模式的なフローチャートを示す。
【
図16】本願の電池の製造機器のいくつかの実施例の構造模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本願に係る複数の実施例を示す図面を参照しながら、本願の実施例の技術案を明確、かつ完全に説明し、理解されるように、説明される実施例は、本願の実施例の一部に過ぎず、実施例の全部ではない。本願に記載の実施例に基づき、当業者が創造的な労働を必要とせずに得た全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0032】
特に定義されない限り、本願で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者が理解できる通常の意味を有する。本願では、出願される明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。本願の明細書、特許請求の範囲、及び上記図面の簡単な説明における 「備える」、「含む」、「有する」、「具備」、「含有」、「含み」などの用語は開放形態の用語である。従って、例えば、1つ又は複数のステップ又は素子を「備える」、「含む」、「有する」方法又は装置は、1つ又は複数のステップ又は素子を具備するが、この1つ又は複数の素子を具備することに限定されない。本願の明細書、特許請求の範囲又は上記図面における「第1」、「第2」などの用語は、特定の順序又は主従関係を説明するためのものではなく、異なる対象を区別するためのものに過ぎない。また、「第1」、「第2」という用語は、説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は暗示し、又は指示された技術的特徴の数を暗然的に示すものとして理解できない。これにより、「第1」、「第2」で限定される特徴は、1つ又は複数の該特徴を明示的又は暗然的に含むことができる。本願の説明では、特に説明されない限り、「複数」は2つ以上を意味する。
【0033】
本願の説明では、理解する必要があるように、「中心」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「軸方向」、「径方向」、「円周方向」などの用語が示した方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本願の説明を容易にし及び説明を簡素化するためのものに過ぎず、示した装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構築及び操作されることを指示又は暗示しないため、本願を限定するものとして理解できない。
【0034】
本願の説明では、説明する必要があるように、特に明確に規定及び限定されない限り、「装着」、「接続」、「連結」、「取り付け」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続又は一体的な接続であってもよく、直接接続であってもよく、中間媒体を介した間接的接続であってもよく、2つの素子内部の連通であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願での具体的な意味を理解することができる。
【0035】
本願で言及されている「実施例」は、実施例を組み合わせて説明される特定の特徴、構造又は特性が本願の少なくとも1つの実施例に含まれてもよいことを意味する。明細書の様々な位置に現れる該語句は必ずしも同じ実施例を指すものではなく、他の実施例と相互に排他的に独立又は代替の実施例でもない。当業者は、本願で説明される実施例が他の実施例と組み合わせることができることを明確又は暗黙的に理解できる。
【0036】
上記したように、強調する必要があるように、本明細書で「備える/含む」という用語が使用される場合、前記特徴、整数、ステップ又はユニットの存在を明確に示すために使用されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、部材又はグループ化された特徴、整数、ステップ、部材が存在し又は添加することを排除しない。本願で使用されるように、単数形の「1つ」、「一」及び「該」は、文脈で明確に示されない限り、複数形も含む。
【0037】
本明細書で使用される「一」、「1つ」という用語は1つを表すことができるが、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」と同じ意味を有することもできる。「約」という用語は、一般的に、言及された数値に10%を増やし又は減らし、又はより具体的には5%を増やし又は減らすことを意味する。特許請求の範囲で使用される「又は」という用語は、代替可能な技術案のみを指すことを明確に説明しない限り、「及び/又は」の意味を表す。
【0038】
本願における「及び/又は」という用語は、関連対象の関連関係を説明するためのものに過ぎず、3つの関係が存在し得ることを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在すること、AとBが同時に存在すること、Bが単独で存在することの3つの状況を示すことができる。また、本願における「/」という文字は、一般的に前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0039】
本分野に係る電池は、充電できるかどうかに応じて、一次電池及び充電式電池に分けることができる。一次電池(Primary Battery)は、「使い捨て」電池及びガルバニ電池とも呼ばれ、理由は、それらの電気量が消耗した後、再充電して使用することができず、廃棄することしかできないことである。充電式電池は、二次電池(Secondary Battery)又はセカンダリ電池、蓄電池とも呼ばれる。充電式電池の製造材料及びプロセスは一次電池とは異なり、その利点は、充電後に複数回で繰り返し使用でき、充電式電池の出力電流負荷容量がほとんどの一次電池よりも高いことである。現在、一般的な充電式電池のタイプについて、鉛酸電池、ニッケル水素電池及びリチウムイオン電池がある。リチウムイオン電池は、軽量、大容量(容量が同重量のニッケル水素電池の1.5倍~2倍である)、メモリー効果がないなどの利点を有し、且つ自己放電率が非常に低いため、価格が比較的高くても、依然として広く使用されている。リチウムイオン電池は、純電気自動車及びハイブリッド車にも広く使用されており、このような用途に使用されるリチウムイオン電池の容量は比較的小さいが、出力、充電電流が大きく、使用寿命が長く、ただし、コストが高い。
【0040】
本願の実施例で説明される電池は充電式電池である。以下、主にリチウムイオン電池を例として本願に開示されている実施例を説明する。理解されるように、本願に開示されている実施例は、他の任意の適切なタイプの充電式電池に適用できる。本願の実施例に係る電池とは、1つ又は複数の電池セルを含むことにより、より高い電圧及び容量を提供する単一の物理モジュールを指し、例えば、本願に係る電池は、電池モジュール又は電池パックなどを含んでもよい。本願に開示されている実施例に係る電池は、該装置に給電するように、適切な装置に直接又は間接的に適用され得る。電池セルは、一般的に、包装方式に応じて、円筒形電池セル、角形電池セル及びソフトパック電池セルに分けることができる。以下、主に角形電池セルを中心として説明する。理解されるように、以下に説明される実施例は、特定の側面で円筒形電池セル又はソフトパック電池セルにも適用できる。
【0041】
電気自動車などのいくつかの大電力の応用シナリオでは、電池の応用は、電池セル、電池モジュール及び電池パックという3つのレベルを含む。電池モジュールは、外部の衝撃、熱、振動などから電池セルを保護し、所定の数の電池セルを一体に電気的に接続して1つのフレームに入れることによって形成されるものである。電池パックは、電気自動車に搭載されている電池システムの最終状態である。現在、ほとんどの電池パックは、1つ又は複数の電池モジュールに電池管理システム(BMS)、熱管理部材などの様々な制御及び保護システムを組み立てることにより製造される。電池分野技術の発展に伴って、電池モジュールというレベルは省略されてもよく、すなわち、電池セルで電池パックを直接形成する。この改良により、電池システムの重量エネルギー密度、体積エネルギー密度が向上すると共に、部品の数も顕著に減らす。本願に係る電池は電池モジュール又は電池パックを含む。
【0042】
リチウムイオン電池セルは主にリチウムイオンが正極極板と負極極板との間で移動することにより動作する。リチウムイオン電池セルは、電極材料として嵌め込まれたリチウム化合物を使用する。現在、リチウムイオン電池として使用される正極材料は主に、一般的に、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)及びリン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。正極極板と負極極板との間に分離膜が設置されて三層材料を有する薄膜構造を形成する。該薄膜構造は一般的に巻回又は積層の方式で、所要の形状を有する電極組立体を製造する。例えば、円筒形電池セルの場合、三層材料の薄膜構造が円筒形の電極組立体に巻回され、角形電池セルの場合、薄膜構造は、略長方体状を有する電極組立体に巻回又は積層される。
【0043】
電池セルの場合、主な安全危険は、充電及び放電過程に起因するものであり、同時に適切な環境温度設計が要求されている。不必要な損失を効果的に回避するために、電池セルに対して、一般的に、少なくとも3つの保護手段がある。具体的には、保護手段は、スイッチング素子、適切な分離膜材料の選択及びリリーフ機構を少なくとも含む。スイッチング素子とは、電池セル内の温度又は抵抗が一定の閾値になった時に電池の充電又は放電を停止できる素子を指す。分離膜は、正極極板と負極極板を分離することに用いられ、温度が一定の数値に上昇した時にその上に付着したミクロンスケール(さらにナノスケール)の細孔を自動的に溶解することができ、これにより、リチウムイオンが分離膜を通過できなくなり、電池の内部反応が停止する。
【0044】
リリーフ機構とは、電池セルの内部圧力又は温度が所定の閾値になった時に作動して内部圧力及び/又は内部物質を解放するための素子又は部材を指す。リリーフ機構は、具体的には、防爆弁、空気弁、リリーフ弁又は安全弁などの形態を使用してもよく、具体的には、感圧又は感温素子又は構造を使用でき、すなわち、電池セルの内部圧力又は温度が所定の閾値になった時に、リリーフ機構は動作を実行し、又はリリーフ機構内に設けられた脆弱構造が破壊され、それにより内部圧力を解放するための開口部又は通路を形成する。本願に係る閾値は、圧力閾値又は温度閾値であってもよく、該閾値の設計は、設計需要によって異なり、例えば、危険又は制御不能のリスクが存在すると考えられる電池セルの内部圧力又は内部温度値に基づいて該閾値を設計又は決定することができる。且つ、該閾値は、例えば、電池セルの正極極板、負極極板、電解液及び分離膜のうちの1つ又は複数の材料により決められ得る。
【0045】
本願に係る「作動」とは、リリーフ機構が動作を発生し又は起動して電池セルの内部圧力又は物質を解放することを指す。発生した動作は、リリーフ機構の少なくとも一部の破裂、引き裂き、破砕又は開放などを含んでもよいがこれらに限定されない。リリーフ機構が作動する時に、電池セルの内部の高温高圧物質は排出物として作動部位から外部に排出される。このように、圧力/温度が制御できる場合、電池セルの圧力又は排出物を解放させることができ、それにより、より深刻な事故の発生を回避する。本願に係る電池セルからの排出物は、電解液、溶解又は分割された正負極極板、分離膜の破片、反応によって生成された高温高圧ガス及び/又は火炎などを含むがこれらに限定されない。通常、該高温高圧排出物は、電池セルのリリーフ機構が設置される方向に向かって排出され、その力及び破壊力が非常に大きく、さらに、該方向に設置されたカバーなどの1つ又は複数の構造を突破することができる。
【0046】
従来のリリーフ機構は、一般的に、電池セルの頂部又は上方のカバープレートに設置され、すなわち、カバープレート上の電極端子と同じ側に配置され、支持部材は、一般的に、カバープレートに対向する側に設置され、すなわち、通常、支持部材はハウジングの底壁又は底部に取り付けられる。本願に係る支持部材は、支持の役割を果たすか、又は重力作用に抵抗する部材として理解できるため、通常、ハウジングの底壁又は底部に取り付けられた部材として理解でき、電池セルをその上に支持又は固定する役割を果たす。
【0047】
且つ、リリーフ機構及び支持部材が電池セルの2つの互いに対向する表面/壁/一部に配置されるという上記配置方式は、電池分野で長年にわたって使用されており、その存在の合理性がある。具体的には、電池セルのボックスについて、カバープレートは単独で加工され、平板状の構造を有し、簡単で適切なプロセスによりリリーフ機構をカバープレートに安定して装着し又は形成することができる。対照的に、リリーフ機構が電池セルのハウジングに単独で設置されることは、より複雑なプロセスを使用し、コストがより高くなる可能性がある。同時に、底部から電池セルを支持することも、製造難度が低い実現方式である。
【0048】
また、従来のリリーフ機構について、作動する時に一定の逃げ空間が必要である。逃げ空間とは、リリーフ機構が作動する時に(例えば、リリーフ機構の少なくとも一部が引き裂かれる)、リリーフ機構の内部又は外部の作動方向(すなわち、引き裂かれる方向)での空間を指す。すなわち、逃げ空間は、リリーフ機構の作動を可能にするための空間である。ハウジングに比べてカバープレートの厚さがより厚いため、リリーフ機構をカバープレートに設置すると、逃げ空間を容易に形成でき、それにより、電池セルの設計及び製造に寄与する。具体的には、電池セルのハウジングがアルミニウム薄板をスタンピングすることによって形成される。カバープレートに比べて、スタンピングして形成されたハウジングの肉厚は非常に薄い。一方では、ハウジングの肉厚が薄いため、逃げ空間を必要とするリリーフ機構をその上に設置することは非常に困難である。他方では、ハウジングが一体的に凹入される構造であるため、その上にリリーフ機構を装着することは非常に困難であり、同時に電池セルのコストも増加する。
【0049】
また、リリーフ機構を電池セルの頂部又は上方のカバープレート以外の箇所に設置すると、リリーフ機構がハウジング内の電解液で腐食されやすくなるという深刻な問題が存在する。充電式電池産業が盛んに発展している近年、電池メーカーは、コスト及び他の様々な要素を総合的に考慮し、実質的に電池セル、特に駆動用電池セルのリリーフ機構を電池セル上方のカバープレートに設置し、すなわち、リリーフ機構と電池セルの電極端子が同じ側に設置される。これは、電池設計者が電池を設計する時に長年にわたって堅持している設計概念になっている。
【0050】
しかしながら、このような電池設計者が長年にわたって堅持している設計概念にもいくつかの欠陥が存在する。例えば、リリーフ機構が電池セルのカバープレートに設置され、支持構造がカバープレートに対向する電池セルの底部に配置されると、必然的に、リリーフ機構と支持構造の設計に占有される必要がある空間が主に同じ次元又は同じ方向に発生し、典型的には、実質的に垂直な方向又は高さ方向に空間を占有する。この方向における空間の占有は、不可避的であり、減少するのは困難であるため、このような電池又は電池パックを使用する自動車の構造設計の設計空間が大幅に制限されている。同時に、このような設計には、電池セルからの排出物が電池セル上方の構造を全部焼き尽くして運転室内の人員の安全に危険をもたらすという問題がさらに存在する可能性がある。
【0051】
一般的に、リリーフ機構がカバープレートに設置され、支持部材がカバープレートに対向する底部に設置され、リリーフ機構と支持部材が電池セルの2つの互いに対向する壁に対して設置されるという設計理念を変更することについては、研究者及び当業者が様々な技術的課題を解決し且つ一定の技術的偏見又は業界で長年にわたって堅持している設計概念を克服する必要があり、やすやすと成功することではない。
【0052】
従来技術における電池に存在する上記問題及び他の潜在的な問題を解決し又は少なくとも部分的に解決するために、本願の発明者は逆に進み、これについて大量の研究及び実験を行った後、新型電池を提出している。
【0053】
例えば、本願の実施例で説明される電池の適用可能な装置は、携帯電話、ポータブルデバイス、ノートパソコン、電気自転車、電気自動車、船、宇宙機、電動玩具及び電動工具などを含むがこれらに限定されず、例えば、宇宙機は、飛行機、ロケット、スペースシャトル及び宇宙船などを含み、電動玩具は固定式又は移動式の電動玩具を含み、例えば、ゲーム機、電動自動車玩具、電動船玩具及び電動飛行機玩具などが挙げられ、電動工具は、金属切削電動工具、研削電動工具、組立電動工具及び鉄道用電動工具を含み、例えば、電動ドリル、電動グラインダー、電動レンチ、電動ドライバ、電動ハンマー、電動インパクトドリル、コンクリート振動機及び電気プレーナーなどが挙げられる。
【0054】
本願の実施例で説明される電池は上記説明される機器に適用できるだけでなく、電池を使用する全ての機器に適用でき、簡潔にするために、以下の実施例はいずれも電気自動車を例として説明される。
【0055】
例えば、
図1は、本願の一実施例に係る車両1の簡単な模式図を示す。車両1は、ガソリン車、ガス車又は新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、純電気自動車、ハイブリッド車又はレンジエクステンダー自動車などであってもよい。
図1に示すように、車両1の内部に電池10が設置されてもよく、例えば、車両1の底部又は前部又は尾部に電池10が設置されてもよい。電池10は、車両1の給電に使用されてもよく、例えば、電池10は車両1の操作電源として使用されてもよい。且つ車両1は、コントローラ30及びモータ40をさらに含んでもよい。コントローラ30は電池10がモータ40に給電するように制御するために使用され、例えば、車両1の起動、ナビゲーション及び走行中の動作電力需要に使用される。本願の別の実施例では、電池10は車両1の操作電源として使用されるだけでなく、車両1の駆動電源として使用され、ガソリン又は天然ガスを代替又は部分的に代替して車両1に駆動動力を提供する。以下、言及される電池10は、複数の電池セル20を含む電池パックとして理解され得る。
【0056】
図2~5に示すように、電池セル20は、ボックス21、電極組立体22及び電解液を含む。電極組立体22は、電池セル20のボックス21に収容され、電極組立体22は、正極極板、負極極板及び分離膜を含む。分離膜の材質は、PP又はPEなどであってもよい。電極組立体22は、巻回構造であってもよく、積層構造であってもよい。ボックス21は、ハウジング211及びカバープレート212を含む。ハウジング211は、複数の壁で形成された収容キャビティ211a及び開口部211bを含む。カバープレート212は、開口部211bに配置されて収容キャビティ211aを密閉する。電極組立体22に加えて、収容キャビティ211a内に電解液がさらに収容される。電極組立体22の正極極板と負極極板には一般的にタブが設けられ、タブは一般的に正極タブ及び負極タブを含む。具体的には、正極極板は正極集電体及び正極活物質層を含み、正極活物質層は正極集電体の表面に塗布され、正極活物質層が塗布されていない正極集電体は、正極活物質層が塗布された正極集電体から突出し、正極活物質層が塗布されていない正極集電体は正極タブとして使用され、正極集電体の材料はアルミニウムであってもよく、正極活物質は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元リチウム又はマンガン酸リチウムなどであってもよく、負極極板は負極集電体及び負極活物質層を含み、負極活物質層は負極集電体の表面に塗布され、負極活物質層が塗布されていない負極集電体は、負極活物質層が塗布された負極集電体から突出し、負極活物質層が塗布されていない負極集電体は負極タブとして使用される。負極集電体の材料は銅であってもよく、負極活物質は、炭素又はシリコンなどであってもよい。大電流が流れて溶断しないことを確保するために、正極タブは、数が複数であり且つ一体に積層され、負極タブは、数が複数であり且つ一体に積層される。正極タブと負極タブは、それぞれ接続部材23を介して電池セル20の外部に位置する正電極端子214a及び負電極端子214bに電気的に接続され得る。角形電池セルの場合、正電極端子214aと負電極端子214bは一般的にカバープレート212の一部に設置される。複数の電池セル20は、正電極端子214a及び負電極端子214bを介して一体に直列接続及び/又は並列接続されて、様々な応用シナリオに使用されている。
【0057】
理解できるように、
図2~5に示される実施例では、ハウジング211は1つの開口部211bを有するが、他のいくつかの実施例では、ハウジング211は、例えば対向して配置された2つの開口部211bを有してもよく、該2つの開口部211bにはカバープレート212がそれぞれ配置されて収容キャビティ211aを密閉する。
【0058】
図6は複数の電池セル20を収容する電池10の分解図を示し、
図7は
図6に示される電池10の断面図を示す。理解できるように、説明を容易にするために、上記正電極端子214aと負電極端子214bは、電極端子214と統称され、
図7では電極端子214が示されている。
図6~7に示すように、本願のいくつかの実施例に係る電池10は、複数の電池セル20及びバス部材12を含み、バス部材12は、電極端子214を接続することにより直列接続及び/又は並列接続の方式で複数の電池セル20に電気的に接続することに用いられる。これらの電池セル20のうちの少なくとも1つの電池セル20はリリーフ機構213を含む。いくつかの実施例では、複数の電池セル20のうちの、電池10での位置のため熱暴走を受けやすい可能性がある電池セルにリリーフ機構213が設置されてもよい。勿論、電池10の各電池セル20にいずれもリリーフ機構213が設置されてもよい。
【0059】
リリーフ機構213は、その位置する少なくとも1つの電池セル20の内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して電池セル20の内部圧力を解放して、より深刻な事故の発生を回避することに用いられる。上記したように、リリーフ機構213は、防爆弁、空気弁、リリーフ弁又は安全弁などと呼ばれてもよい。バス部材12は、バスバー又は母線などとも呼ばれ、複数の電池セル20を直列接続及び/又は並列接続の方式で電気的に接続する部材である。複数の電池セル20がバス部材12を介して直並列に接続された後、電圧が高いため、バス部材12を有する側は、高電圧側と呼ばれる場合がある。
【0060】
図8は
図7に示される電池10に含まれるリリーフ機構213及びリリーフ機構213に関連する熱管理部材13の局部拡大断面図を示す。
図6~8に示すように、熱管理部材13は、リリーフ機構213が作動する時に、電池セル20内から排出された排出物が熱管理部材13を通過するように構成される。理解できるように、本願の熱管理部材13とは、電池セル20の温度を管理又は調整できる部材を指し、いわゆる温度の管理又は調整は、電池セル20を加熱又は冷却することを指し、具体的には、熱管理部材13は、冷却部材及び加熱部材のうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、冬の気温が低いいくつかの地域で電気自動車を起動する前に、電池10を加熱することにより電池の性能を向上させることができる。電池10の使用中に、電池セル20は、いずれも発熱して温度を上昇させるため、熱管理部材13は、流体を収容して複数の電池セル20を降温することに用いられてもよい。降温の有効性を実現するために、熱管理部材13は一般的に、熱伝導性シリカゲルなどの方式で電池セル20に取り付けられる。理解されるように、熱管理部材は、他の接着剤を用いるなどの他の方式で電池セル20に取り付けられてもよい。
【0061】
本願の実施例の説明では、主に熱管理部材13を使用して電池セル20を冷却又は降温する場合について説明され、これらの場合に、熱管理部材13は、冷却流体を収容して降温の目的を実現することができ、従って熱管理部材13は、冷却部材、冷却システム又は冷却板などと呼ばれてもよく、収容された流体は、冷却媒体又は冷却流体と呼ばれてもよく、より具体的には、冷却液又は冷却ガスと呼ばれてもよい。選択可能に、熱管理部材13内に収容された流体は、循環的に流れるものであってもよく、それにより、より良好な温度調節の効果を実現する。選択可能に、流体は、水、水とエチレングリコールの混合液又は空気などであってもよい。
【0062】
続いで、
図6に示すように、電池10は一般的に1つ又は複数の電池セル20を包装するためのケース11を含んでもよい。ケース11は、液体又は他の異物が電池セルの充電又は放電に影響を与えることを回避でき、ケース11は一般的にカバー111及びシェル112で構成され得る。ケース11、特にケース11のシェル112の構造については、以下、より具体的に説明される。
【0063】
図6~8に示すように、従来の電池とは異なり、本願の実施例に係る電池10の重要な特徴は、リリーフ機構213に関連する熱管理部材13はリリーフ機構213が設置された電池セルの同じ側(又は同じ壁)に取り付けられ、電池セル20を支持するための支持部材は、それと交差する他側(又は他方の壁)に取り付けられることである。説明を容易にするために、以下、電池セル20の支持部材で支持される側を第2壁とし(いくつかの好ましい実施例では、第2壁は、具体的に底壁として理解されてもよく、又は底部と呼ばれてもよい)、理解されるように、電池セル20が電池又は電池パックにどのように配置されるか、例えば、ケース11に垂直、横、水平(平らに配置)、逆に配置されるかに関わらず、支持部材で支持される側は、第2壁と呼ばれる。それに対応し、電池セル20の、熱管理部材13が取り付けられ、且つリリーフ機構213が設置された側は、第1壁と呼ばれる(いくつかの好ましい実施例では、第1壁は具体的に側壁と理解されてもよく、又は側部と呼ばれてもよい)。
【0064】
理解されるように、
図2及び
図6に示すように、本願の「垂直配置」とは、電池セル20は、カバープレート212がカバー111に隣接し、ほぼ平行になるようにケース11に取り付けられることを指す。同様に、
図3~5に示すように、「水平配置」又は「横配置」とは、電池セル20は、カバープレート212がカバー111にほぼ垂直になるようにケース11に取り付けられることを指す。「逆に配置」とは、電池セル20は、カバープレート212がシェル112の底部部分112aに隣接し、ほぼ平行になるようにケース11に取り付けられることを指す。
【0065】
さらに理解されるように、本願に係る第1壁及び第2壁は、互いに交差できる限り、第1壁及び第2壁は、電池セル20の任意の適切な壁であってもよく、側壁、底壁、カバープレート212を含む。支持部材とは、電池セル20を支持するための部材であり、例えば、熱管理部材13又はその一部、又は
図6~8に示される電池10のシェル112の任意の適切な部分、又は
図7に示される電池10の保護部材又は保護板115などであってもよい。勿論、支持部材は、シェル112の内側にのみ配置されて、電池セル20を支持するための部材であってもよい。理解を容易にするために、
図9~10では、シェル112の底部部分が支持部材16として提供され、又は支持部材16がシェル112の底部部分又はその一部を形成する実施例が模式的に示されており、且つシェル112の側部部分112b及び底部部分の特徴をより明確に表示するために、電池セル20が取り外される。
【0066】
電池セル20が垂直に配置されるか、横に配置されるか、水平に配置されるか、逆に配置されるかに関わらず、本願の実施例に係る電池10で使用される、支持部材16と熱管理部材13がリリーフ機構213とともに電池セル20の交差して設置された2つの壁面に配置されることにより、いずれも電池が占める空間に、従来技術が持っていない柔軟性を提供することができる。すなわち、本願に係る実施例では、リリーフ機構213と支持部材16の設計に占有される必要がある空間は2つの異なる次元又は方向に分散される。
【0067】
典型的には、実質的に角形の電池10及び電池セル20の場合、リリーフ機構213と支持部材16の設計は、それぞれ自動車の横方向空間及び高さ空間を主に占有し、従来技術の電池がサポート又は適用できない自動車の設計の実現を可能にすることに寄与するだけでなく、いくつかの場合に、電池装置を配置するための車両の空間利用率を向上させ、さらに車両に配置可能な電池装置のエネルギー密度を向上させることに寄与する。具体的には、現在までの電池技術の発展の結果、安全性を確保する場合、電池セル20を収容する空間以外の電池10の各構造及び部材が占有するサイズを1mm縮小することは非常に困難であり、従って、リリーフ機構213と支持部材16の設計に占有される必要がある空間が2つの異なる次元又は方向に分散されることにより、少なくとも一部の自動車の設計に対して電池構造のコンパクトさを顕著に向上させ、それにより電池のエネルギー密度を向上させる。
【0068】
本願のいくつかの実施例によれば、
図6~8に示すように、リリーフ機構213は電池セル20の第1壁に設置されてもよく、且つ熱管理部材13は該第1壁に取り付けられる。いくつかの実施例では、リリーフ機構213は、その外面が第1壁の外面と同一平面にあるように配置されてもよい。このような同一平面にある配置方式は、さらに第1壁と熱管理部材13との間の取り付けに寄与する。いくつかの代替実施例では、リリーフ機構213の外面は、第1壁の外面に凹入されるように配置されてもよい。このような凹入構造は、一部の逃げ空間を提供でき、それにより、熱管理部材13内の逃げ構造134などを削減しさらに省略し、逃げ構造134は、以下、具体的に説明される。
【0069】
本願のいくつかの実施例によれば、
図9~10に示すように、支持部材16は第2壁に取り付けられて、重力方向と反対の方向に沿って電池セル20を支持する。且つ、
図6~8に示すように、リリーフ機構213及び熱管理部材13は、電池セル20がどのようにケース11に配置されるかに関わらず、電池セル20の重力方向に平行な第1壁に設置されてもよい。例えば、電池セル20がケース11に垂直又は逆に配置される場合、該第1壁はすなわち電池セル20自体の側壁であり、電池セル20がケース11に水平に配置される場合、該第1壁はカバープレート212又はカバープレート212に対向する壁であってもよい。
【0070】
説明を容易にするために、以下、
図6~8を参照して、リリーフ機構213及び熱管理部材13が電池セル20の側部又は側壁に配置されるいくつかの実施例が説明され、さらに
図9~10を参照して、上記説明される電池10の、1つ又は複数の電池セル20を包装するためのケース11の具体的な構造及び設計がより具体的に説明される。
【0071】
いくつかの実施例では、
図6~7及び
図9~10に示すように、ケース11は、カバー111及びシェル112を含む。カバー111及びシェル112は、密封して組み合わせられ、複数の電池セル20を収容するための電気キャビティ11aを共同で取り囲んで形成する。いくつかの実施例では、熱管理部材13は、複数の電池セルを収容するためのケース11の一部を構成することができる。例えば、熱管理部材13は、ケース11のシェル112の側部部分112bを構成するか、又は側部部分112bの一部を構成してもよい。側部部分112bに加えて、シェル112は底部部分112aをさらに含む。
図6~7に示すように、いくつかの実施例では、側部部分112bは、フレーム構造として形成され、熱管理部材13と組み立てられ得る。このように、電池10の構造がよりコンパクトになり、空間の有効利用率を向上させることができ、エネルギー密度を向上させることに寄与する。
【0072】
いくつかの実施例では、該支持部材16は、シェル112の一部を構成してもよく、又は、例えば、シェル112の底部部分112a又はその局部構造は、該支持部材16を構成する。さらに又は、いくつかの代替実施例によれば、該支持部材16は、シェル112内に配置されてもよい。
【0073】
いくつかの実施例では、熱管理部材13は支持部材16と一体成形されてもよい。理解できるように、上記したように、熱管理部材13及び支持部材16が交差する第1壁及び第2壁に配置されるという構造設計により、熱管理部材13と支持部材16が交差し又は接続されるように設計されてもよく、これに基づき、さらに両者を一体成形できる。例えば、熱管理部材13及び支持部材16は、L字形、逆T字形又はU字形などの全体構造として形成されてもよい。これにより、電池の構造強度を向上させることができる。いくつかの代替実施例では、支持部材16は、熱管理部材13と適切な方式で締結されてもよく、このように、支持部材16及び熱管理部材13の製造がより容易になり、従って製造コストを削減する。
【0074】
いくつかの代替実施例では、熱管理部材13はさらに、シェル112の側部部分112b又は底部部分112aと一体成形されてもよく、それによりケース11のシェル112が一体成形されてもよい。このような成形方式は、シェル112部分の強度がより高くなり、漏れが発生しにくくなる。
【0075】
換言すると、熱管理部材13とケース11との間の関係は様々である。例えば、いくつかの代替実施例では、熱管理部材13は、ケース11のシェル112の一部ではなく、シェル112の一側に組み立てられる部材であってもよい。このように、ケース11の密閉を維持することに寄与する。別のいくつかの代替実施例では、熱管理部材13は、適切な方式でシェル112内に集積されてもよく、これは同様にケース11の密閉を維持することに寄与する。
【0076】
いくつかの実施例では、
図6~9に示すように、電池10は、シェル112の側部部分112bの少なくとも一部で構成された収集キャビティ11bをさらに含む。本願の収集キャビティ11bとは、リリーフ機構213が作動する時に電池セル20及び熱管理部材13からの排出物を収集する空洞を指す。例えば、側部部分112b又は側部部分112bの一部は、中空構造であるように構成され、該中空構造は収集キャビティ11bを構成し、このように、電池10の構造をよりコンパクトにするとともに、電池10を軽量化することができる。熱管理部材13は、側部部分112bと電池セル20との間に配置されてもよく、具体的には、熱管理部材13は、側部部分112bと電池セル20の第1壁との間に配置されてもよい。
【0077】
付加的又は代替的な技術案として、該収集キャビティ11bはさらに、カバー111とシェル112との間に延在するように構成されるビーム114で構成されてもよい。ビーム114は、シェル112の底部部分112aから底部部分112aに垂直な方向に沿ってカバー111に向かって延在する。熱管理部材13は、ビーム114と電池セル20との間に配置されてもよく、具体的には、熱管理部材13は、ビーム114と電池セル20の第1壁との間に配置されてもよい。いくつかの実施例では、ビーム114は、中空構造を有してもよく、且つビーム114の中空空間は、収集キャビティ11bを構成できる。
【0078】
いくつかの実施例では、シェル112の側部部分112bとビーム114は、同じ部材であってもよい。
【0079】
収集キャビティ11bは、排出物を収集することに用いられ、密封されてもよく、密封されなくてもよい。いくつかの実施例では、収集キャビティ11b内に空気、又は他のガスが含まれてもよい。選択可能に、収集キャビティ11b内に冷却液などの液体が含まれてもよく、又は、該液体を収容する部材が設置されてもよく、それにより収集キャビティ11bに入った排出物をさらに降温する。さらに選択可能に、収集キャビティ11b内のガス又は液体は循環的に流れている。
【0080】
いくつかの実施例では、支持部材16は、追加収集キャビティ(図示せず)をさらに含んでもよく、追加収集キャビティと収集キャビティ11bは、収集キャビティ11bの底部又は下部に操作可能に連通して、電池セル20からの排出物を収容することに用いられる。追加収集キャビティは、排出物のためにより大きな放熱面積を提供でき、それにより、排出物は電池10内に効果的に降温された後に排出され、電池10の安全性能を向上させる。収集キャビティ11b内に導流構造がさらに設けられてもよく、該導流構造は、導流槽などの構造を介して排出物を収集キャビティ11b内の所定の位置に案内するのを支援し、該所定の位置は、追加収集キャビティと収集キャビティ11bとの連通部の付近に位置してもよい。これにより、排出物を追加収集キャビティに早めにより効率的に案内して収容し、又は追加収集キャビティを介して排出物を電池10外に安全に排出することに寄与する。
【0081】
以上、
図6~10を参照して説明されるリリーフ機構213と熱管理部材13が電池セル20の第1壁に配置される実施例では、熱管理部材13はさらに、以下説明される構造特徴及び属性の任意の1つ又は複数を有するように設計されてもよい。
【0082】
図11~
図14はそれぞれ本願のいくつかの実施例に係る熱管理部材13の異なる角度の構造図、断面図及び分解図を示す。
図11~14及び上記言及された
図8に示すように、いくつかの実施例では、熱管理部材13は、一対の熱伝導板及び該一対の熱伝導板の間に形成された流路133を含んでもよい。以下の説明を容易にするために、該一対の熱伝導板は、複数の電池セル20に取り付けられた第1熱伝導板131及び第1熱伝導板131の電池セル20から離れる側に配置された第2熱伝導板132と呼ばれる。流路133は、流体がその中に流れることに用いられる。いくつかの実施例では、第1熱伝導板131、第2熱伝導板132及び流路133を含む熱管理部材13は、吹込み成形などの適切なプロセスにより一体的に形成されてもよい。いくつかの代替実施例では、第1熱伝導板131及び第2熱伝導板132は、溶接(例えば、はんだ付け)により一体に組み立てられる。いくつかの代替実施例では、第1熱伝導板131、第2熱伝導板132及び流路133は、それぞれ形成され、一体に組み立てられて熱管理部材13を形成してもよい。
【0083】
例えば、いくつかの実施例では、第1熱伝導板131及び第2熱伝導板132には流路133に対する半凹溝構造がそれぞれ形成されてもよく、且つ第1熱伝導板131及び第2熱伝導板132の半凹溝構造は互いに位置合わせされる。第1熱伝導板131と第2熱伝導板132を一体に組み立てることにより、第1熱伝導板131と第2熱伝導板132の半凹溝構造を流路133に組み合わせ、最終的に熱管理部材13を形成する。
【0084】
勿論、理解されるように、上記説明される熱管理部材13の具体的な構造は、例示的なものに過ぎず、本願の保護範囲を限定するものではない。他の任意の適切な構造又は配置も可能である。例えば、いくつかの代替実施例では、第1熱伝導板131、第2熱伝導板132及び流路133のうちの少なくとも1つが省略されてもよい。例えば、第2熱伝導板132が省略されてもよい。すなわち、いくつかの実施例では、熱管理部材13は、第1熱伝導板131、及び一側に配置され又はその中に埋め込まれた流路133のみを含んでもよい。説明を容易にするために、以下、主に熱管理部材13が第1熱伝導板131、第2熱伝導板132及び流路133を含むことを例として本願の熱管理部材13に関する改良を説明する。
【0085】
上記言及されるように、特定のリリーフ機構213が作動する時に電池セル20の外部のリリーフ機構213に対応する位置に逃げ構造134を設置する必要があり、このようにリーフ機構213はスムーズに作動して作用を発揮することができる。いくつかの実施例では、逃げ構造134は、熱管理部材13に配置されてもよく、それにより、熱管理部材13が複数の電池セル20に取り付けられる場合、逃げ構造134とリリーフ機構213との間に逃げキャビティ134aを形成できる。すなわち、本願に係る逃げキャビティ134aとは、逃げ構造134とリリーフ機構213が共同で取り囲んで形成した密閉空洞であり、この技術案では、電池セル20からの排出物の排出について、該逃げキャビティ134aの入口側表面は、リリーフ機構213が作動するため開放され、該入口側表面に対向する出口側表面は、高温高圧の排出物により部分的に破壊されて開放され、それにより排出物の放出通路が形成される。別のいくつかの実施例によれば、該逃げキャビティ134aは、例えば逃げ構造134とリリーフ機構213が共同で取り囲んで形成した非密閉空洞であってもよく、該非密閉空洞の出口側表面はもともと排出物を流出するための通路を有してもよい。
【0086】
さらに、
図8及び
図13に示すように、いくつかの実施例では、熱管理部材13上に形成された逃げ構造134は、逃げ底壁134b及び逃げキャビティ134aを取り囲む逃げ側壁134cを含んでもよい。本願の逃げ底壁134b及び逃げ側壁134cは、逃げキャビティ134aを対象とするものである。具体的には、逃げ底壁134bは、逃げキャビティ134aのリリーフ機構213に対向する壁であり、逃げ側壁134cは、逃げ底壁134bに隣接して逃げキャビティ134aを所定の角度で取り囲む壁である。いくつかの実施例では、逃げ底壁134bは、第2熱伝導板132の一部であってもよく、逃げ側壁134cは、第1熱伝導板131の一部であってもよい。
【0087】
例えば、いくつかの実施例では、逃げ構造134は、第1熱伝導板131の一部を第2熱伝導板132に向かって凹入して開口部を形成し、且つ開口部のエッジを第2熱伝導板132と適切な固定方式で一体に固定することによって形成されてもよい。リリーフ機構213が作動する時に、電池セル20からの排出物は先ず該逃げキャビティ134aに入る。
図8の逃げキャビティ134aの矢印で示されるように、排出物は略扇形の方向に外部に排出される。
【0088】
従来の熱管理部材と異なり、本願の実施例に係る熱管理部材13は、電池セル20からの排出物が熱管理部材を13通過するように、リリーフ機構213が作動する時に破壊され得る。このような設置の利点は、電池セル20からの高温高圧の排出物が熱管理部材13をスムーズに通過でき、それにより排出物が直ちに排出できないことによる二次事故を回避し、電池10の安全性能を向上させることである。
【0089】
排出物が熱管理部材13をスムーズに通過するために、熱管理部材13の、リリーフ機構213に対向する位置に貫通孔又は局部解放機構を設置することができる。例えば、いくつかの実施例では、逃げ底壁134b、すなわち、第2熱伝導板132に局部解放機構が設置されてもよい。本願の局部解放機構とは、リリーフ機構213が作動する時に、少なくとも電池セル20からの排出物が熱管理部材13を通過して排出されることを可能にするように作動できる機構を指す。いくつかの実施例では、局部解放機構は、電池セル20上のリリーフ機構213と同様な構造を使用してもよい。すなわち、いくつかの実施例では、局部解放機構は、第2熱伝導板132に配置された、リリーフ機構213と同様な構造を有する機構であってもよい。いくつかの代替実施例では、局部解放機構は、リリーフ機構213と異なる構造を使用してもよく、逃げ底壁134bに設置された脆弱構造のみであり、脆弱構造は、例えば、逃げ底壁134bと一体化された薄肉部、ノッチ(例えば、
図11及び14に示される十字形のノッチ134d)、又は逃げ底壁134bに装着されたプラスチックなどの易損材料で製造された易損部などを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施例では、排出物が熱管理部材13をスムーズに通過するために、逃げ構造134は、熱管理部材13を貫通する貫通孔であってもよい。すなわち、逃げ構造134は、逃げ側壁134cのみを有してもよく、且つ該逃げ側壁134cはすなわち貫通孔の孔壁である。このような場合、リリーフ機構213が作動する時に、電池セル20からの排出物は逃げ構造134を直接貫通して排出され得る。このように、二次高圧の形成をより効果的に回避でき、それにより電池10の安全性能を向上させる。
【0091】
上記したように、
図6~9に示されるいくつかの実施例では、電池10は、シェル112の側部部分112bの少なくとも一部で構成された収集キャビティ11bを含み、収集キャビティ11bは、リリーフ機構213が作動する時に電池セル20及び/又は熱管理部材13からの排出物を収集することに用いられる。このような実施例では、
図8に示すように、シェル112の側部部分112bの、熱管理部材13又はリリーフ機構213に対応する位置又は壁面に排出孔114aが設けられてもよい。このような場合、排出物は、熱管理部材13を通過して、排出孔114aを通って側部部分112bで構成された収集キャビティ11bに入る。
【0092】
理解できるように、上記したように、いくつかの代替実施例では、収集キャビティ11bは、カバー111とシェル112との間に延在するように構成されるビーム114で構成されてもよく、このような場合、それに対応して、ビーム114の熱管理部材13又はリリーフ機構213に対応する位置又は壁面に上記排出孔114aを設けることができ、電池セル20及び/又は熱管理部材13からの排出物が排出孔114aを通ってビーム114で構成された収集キャビティ11bに入ることに用いられる。
【0093】
いくつかの実施例では、熱管理部材13はさらに、流体が流出するように、リリーフ機構213が作動する時に破壊され得るように構成されてもよい。流体の流出は、電池セル20からの高温高圧の排出物を迅速に降温及び消火でき、それにより、他の電池セル20及び電池10をさらに損傷してより深刻な事故を引き起こすことを回避する。例えば、いくつかの実施例では、逃げ側壁134cは、電池セル20からの排出物で容易に破壊されるように形成されてもよい。
【0094】
電池セル20の内部圧力が大きいため、電池セル20からの排出物は略錐体状の形状で外部に排出される。このような場合、逃げ側壁134cと排出物との接触面積を増加させると、逃げ側壁134cが破壊される可能性を高めることができる。例えば、いくつかの実施例では、逃げ側壁134cは、逃げ底壁134bに対して所定の角度をなし、且つ該所定の角度は105°~175°の間である。該角度を合理的に設定することにより、リリーフ機構213が作動する時に、逃げ側壁134cがより容易に破壊され、さらに流体を流出して排出物に接触させ、流体(例えば、冷却液)を流出の瞬間に排出物の高温でガス化することができ、それにより排出物から大量の熱を吸収して、排出物を直ちに冷却する効果を達成する。
【0095】
また、逃げ側壁134cのこのような配置方式は、上記逃げキャビティ134aを有する場合及び逃げ構造134が貫通孔である場合に適用できる。例えば、逃げ構造134が貫通孔である場合、該貫通孔の孔径はリリーフ機構213の熱管理部材13に向かう方向に沿って徐々に小さくなり、且つ該貫通孔の孔壁がリリーフ機構213の熱管理部材13に向かう方向に対してなした夾角は、例えば15°~85°の間であってもよい。
【0096】
別のいくつかの実施例では、逃げ側壁134cに任意のタイプの脆弱構造が設けられてもよく、リリーフ機構213が作動する時に、逃げ側壁134cが排出物で破壊されて流体を流出させることが容易である。
【0097】
上記実施例は、熱管理部材13が逃げ構造134を有する状況を説明している。しかしながら、いくつかの代替実施例では、熱管理部材13は、逃げ構造134を含まなくてもよい。このような場合、逃げキャビティ134は、例えば、リリーフ機構213の周囲に形成された突出部及び熱管理部材13で形成されてもよい。且つ、熱管理部材13のリリーフ機構213に対向する位置に局部解放機構又は脆弱構造が設置されて、電池セルからの排出物が熱管理部材13を通過し及び/又は熱管理部材13を突破して流体を流出させることができる。
【0098】
別のいくつかの代替実施例では、リリーフ機構213は、逃げ空間を必要とせずに作動できるように設計されてもよく、このようなリリーフ機構213は、熱管理部材13に密着して配置されてもよく、熱管理部材13は、逃げ構造134を有さなくてもよく、逃げキャビティ134aを形成しなくてもよい。これは、同様に実現可能である。
【0099】
上記説明される逃げキャビティ134aが存在する実施例では、逃げキャビティ134aは、熱管理部材13を介して収集キャビティ11bと分離されるように設計されてもよい。ここでの「分離」は、分割であり、密封されなくてもよい。このような場合、排出物が逃げ側壁134cを突破して流体を流出させ、排出物をさらに降温及び消火することにさらに寄与し、それにより電池の安全性を向上させる。また、上記説明される逃げ構造134が貫通孔である場合、逃げキャビティ134aは収集キャビティ11bと互いに連通してもよい。このように、排出物の排出に寄与し、それにより二次高圧による安全上のリスクを回避する。
【0100】
以上、
図1~
図14を参照して本願の実施例の電池が説明されており、以下、
図15~
図16を参照して、本願の実施例の電池の製造方法及び装置が説明されており、ここで詳細に説明されていない部分は、上記各実施例を参照すればよい。
【0101】
具体的には、
図15は本願の実施例の電池の製造方法300の模式的なフローチャートを示す。
図15に示すように、該方法300は、複数の電池セルを提供するステップ301であって、複数の電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルは、交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び第1壁に設置され、電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む、ステップ301と、流体を収容して電池セルの温度を調整することに用いられ、リリーフ機構が作動する時に、電池セル内から排出された排出物が熱管理部材を通過するように構成される熱管理部材を提供し、熱管理部材を第1壁に取り付けるステップ302と、支持部材を提供し、支持部材を第2壁に取り付けて、電池セルを支持するステップ303と、を含む。
【0102】
いくつかの実施例では、該方法は、カバー及びシェルを含み、シェルとカバーが電池セルを収容するための電気キャビティを共同で取り囲んで形成するケースを提供するステップ304と、シェルの内側に支持部材を提供するステップと、をさらに含む。又は、いくつかの代替実施例によれば、シェルの一部を支持部材として使用できる。
【0103】
いくつかの実施例では、ケースは、互いに対向して配置されたカバーとシェルとの間に延在するビームをさらに含み、熱管理部材を提供するステップは、熱管理部材をビームと第1壁との間に配置することを含む。
【0104】
図16は本願の実施例に係る電池の製造機器400の模式的なブロック図を示す。
図16に示すように、本願の実施例に係る機器400は、複数の電池セルを製造するための電池セル製造モジュール401であって、複数の電池セルのうちの少なくとも1つの電池セルは、交差して設置された第1壁及び第2壁を含む少なくとも2つの壁、及び第1壁に設置され、電池セルの内部圧力又は温度が閾値になった時に作動して内部圧力を解放するためのリリーフ機構を含む、電池セル製造モジュール401と、流体を収容して電池セルの温度を調整することに用いられ、且つリリーフ機構が作動する時に、電池セル内から排出された排出物が熱管理部材を通過するように構成される熱管理部材を製造するための熱管理部材製造モジュール402と、電池セルを支持するための支持部材を製造するための支持部材製造モジュール403と、熱管理部材を第1壁に取り付け、及び支持部材を第2壁に取り付けるための組み立てモジュール404と、を含む。
【0105】
最終的に説明されるように、上記実施例は、本願の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではなく、上記実施例を参照して本願を詳細に説明したが、当業者であれば理解されるように、依然として上記各実施例に記載の技術案を修正し、又はそのうちの一部の技術的特徴に対して等価置換を行うことができるが、これらの修正や置換は対応する技術案の本質を本願の各実施例の技術案の精神及び範囲から逸脱させるものではない。
【符号の説明】
【0106】
10 電池
13 熱管理部材
16 支持部材
20 電池セル
213 リリーフ機構