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▶ イーライ リリー アンド カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】抗IL-1β抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20240115BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 1/13 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240115BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P29/00
A61P9/00
A61P35/00
A61P19/02
A61P19/06
A61P9/04
A61P9/06
A61P9/10
A61P35/02
A61P35/04
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2022543633
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 US2021013896
(87)【国際公開番号】W WO2021150486
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】62/963,327
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ホッブス,ウェンディ ロサ
(72)【発明者】
【氏名】スコラ,アンドリュー ディクソン
【審査官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-531509(JP,A)
【文献】特表2008-543340(JP,A)
【文献】特表2016-503293(JP,A)
【文献】特開2008-295456(JP,A)
【文献】DHIMOLEA,E.,Canakinumab,mAbs,2010年,2:1,3-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)と、軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトIL-1βタンパク質に結合する抗体であって、前記VHが、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、前記VLが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、
前記HCDR1が、AASGFTFSDHYMS(配列番号7)を含み、
前記HCDR2が、YISSSGSTIYYADSVKG(配列番号8)を含み、
前記HCDR3が、AREADSSGYYYVGVDV(配列番号9)を含み、
前記LCDR1が、RASQSISSYLN(配列番号11)を含み、
前記LCDR2が、YGASSDQS(配列番号12)を含み、
前記LCDR3が、QQGYYFPPT(配列番号13)を含む、抗体。
【請求項2】
前記VHが、配列番号6を含み、前記VLが、配列番号10を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記VHが、配列番号17を含み、前記VLが、配列番号10を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記VHが、配列番号18を含み、前記VLが、配列番号10を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号2を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、配列番号15を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号16を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号2のアミノ酸2~449を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号2からなるHCと、配列番号4からなるLCとを含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプを有する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が、ヒトIgG4アイソタイプを有する、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
配列番号2および4をコードする配列を含む核酸。
【請求項13】
(a)配列番号2をコードする第1の核酸配列、および配列番号4をコードする第2の核酸配列を含むベクター、または
(b)配列番号2をコードする核酸配列を含む第1のベクター、および配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクター
を含む、組成物。
【請求項14】
(a)配列番号2をコードする第1の核酸配列、および配列番号4をコードする第2の核酸配列を含むベクター、または
(b)配列番号2をコードする核酸配列を含む第1のベクター、および配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクター
を含む、細胞。
【請求項15】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
抗体を生成するための方法であって、請求項14または15に記載の細胞を、抗体が発現される条件下で培養し、次いで前記発現された抗体を培養培地から回収することを含む、方法。
【請求項17】
請求項14または15に記載の細胞を、抗体が発現される条件下で培養し、次いで前記発現された抗体を培養培地から回収することによって生成される、抗体。
【請求項18】
請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項19】
ヒトIL-1βに関連する炎症性疾患の治療を必要とする対象における、ヒトIL-1βに関連する炎症性疾患を治療するための薬剤であって、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体を含み、前記対象に、治療有効量の前記抗体を投与することを含むことを特徴とする、薬剤。
【請求項20】
前記炎症性疾患が、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、クリピリン関連周期性症候群(CAPS)、新生児期発症多系統炎症性症候群(NOMIS)、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(soJIA)、痛風関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、1型糖尿病、2型糖尿病、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、または加齢黄斑変性である、請求項19に記載の薬剤。
【請求項21】
心血管疾患の治療を必要とする対象における、心血管疾患を治療するための薬剤であって、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体を含み、前記対象に、治療有効量の前記抗体を投与することを含むことを特徴とする、薬剤。
【請求項22】
前記心血管疾患が、狭心症、心筋梗塞(MI)、脳卒中、心不全、または不整脈である、請求項21に記載の薬剤。
【請求項23】
がんの治療を必要とする患者における、がんを治療するための薬剤であって、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体を含み、前記対象に、治療有効量の前記抗体を投与することを含むことを特徴とする、薬剤。
【請求項24】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、転移性前立腺がん、低または中リスクの骨髄異形成白血病、または限局性腎臓がんである、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
療法に使用するための、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項26】
炎症性疾患の治療に使用するための、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
前記炎症性疾患が、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、クリピリン関連周期性症候群(CAPS)、新生児期発症多系統炎症性症候群(NOMIS)、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(soJIA)、痛風関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、1型糖尿病、2型糖尿病、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、または加齢黄斑変性である、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
心血管疾患の治療に使用するための、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
前記心血管疾患が、狭心症、心筋梗塞(MI)、脳卒中、心不全、または不整脈である、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
がんの治療に使用するための、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項31】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、転移性前立腺がん、低または中リスクの骨髄異形成白血病、または限局性腎臓がんである、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
炎症性疾患の治療用の薬剤の製造における、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項33】
心血管疾患の治療用の薬剤の製造における、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項34】
がんの治療用の薬剤の製造における、請求項1~11および17のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬の分野に関する。より具体的には、本開示は、ヒトIL-1βに結合する抗体(IL-1ベータまたはIL-1βまたはインターロイキン-1βは、本明細書において同じ意味を有する)に関し、炎症性疾患(アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、心不全、がん、およびまれな遺伝性障害(例えば、IL-1βの過剰生成をもたらす遺伝性変異)を含むが、これらに限定されない)の治療および/または予防に有用であり得る。本開示はまた、これらの炎症性疾患を治療および/または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心血管疾患(CVD)は、心臓や血管が関与する疾患の一種である。CVDの一般的な症状には、とりわけ、狭心症、心筋梗塞(MI、一般に心臓発作として知られている)、脳卒中、心不全、および不整脈が含まれる。疾患の複雑な性質のために、疾患の開始および進行に寄与する多くの危険因子が特定されている。これらには、脂質異常症、高血圧、糖尿病、タバコの使用、不健康な食事、運動不足、および肥満が含まれる。しかしながら、これらの伝統的な危険因子を制御しようとする努力にもかかわらず、心血管疾患は、依然として米国および世界中で主要な死因となっている。
【0003】
過去20年間の研究では、CVD、特にアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の病因における重要な要素として、炎症過程が強調されてきた。1990年代半ばの疫学データは、高感度C反応性タンパク質(hsCRP)またはインターロイキン-6(IL-6)のいずれかによって測定される炎症が、従来の危険因子とは独立して、一次予防と二次予防の両方の将来の主要な有害心血管事象(MACE)と強く関連していることを示した(Ridker et al.(2018)J.Am.Coll.Cardiol.72:3320-3331)。前臨床研究では、アテローム性動脈硬化症のプラークの開始と進行における炎症の役割も示されている(Aday et al.(2019)Front.Cardiovasc.Med.6:16 doi:10.3389/fcvm.2019.00016)。重要なことに、炎症はプラークの不安定化および破裂にも寄与し、MIや脳卒中などの急性心血管事象を引き起こす。
【0004】
インターロイキン-1ファミリーは、炎症の中心的な要素であり、様々な炎症性疾患の治療標的としてよく研究されてきた(Szekely et.al.(2018)Cardiol.Ther.7:25-44)。IL-1遺伝子ファミリーには、IL-1α、IL-1β、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)の3つのメンバーがある。IL-1αおよびIL-1βは、IL-1受容体のアゴニストであるのに対し、IL-1raは特異的受容体アンタゴニストであり、したがって、IL-1(IL-1αまたはIL-1β)の内因性競合阻害因子である。IL-1βは、IL-1の主要な循環形態である。これは、前駆体(プロIL-1β)として生成され、様々な炎症性刺激の下、NLRP3(NOD、LRR、およびパイリンドメイン含有タンパク質3)インフラマソームを介して活性化される。重要なことに、アテローム性動脈硬化症に関連することが知られている複数の因子が、NLRP3インフラマソームを活性化することが最近発見された。これらには、コレステロール結晶、アテローム易発性(atheroprone)振動流、低酸素、および好中球細胞外トラップが含まれ、アテローム発生におけるNLRP3インフラマソーム-IL1β経路の重要な役割を支持する(Ridker(2016)Circ.Res.118:145-156)。
【0005】
IL-1βの活性型は、オートクライン、パラクライン、および内分泌作用があり、したがって、広範囲の炎症性疾患に関与している。マックル・ウェルズ症候群(MWS)、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、および新生児期発症多系統炎症性症候群(NOMIS)などのまれな遺伝性障害は、とりわけ、IL-1βの過剰生成に関連している。カナキヌマブ(IL-1β抗体)、アナキンラ(IL-1R拮抗薬)、リロナセプト(IL-1トラップ)による介入はすべて、これらの過剰生成症候群の症状を改善する(Ridker(2016)Circ.Res.118:145-156)。
【0006】
IL-1βの阻害は、炎症性の素地を有するがんの治療にも役割を果たしている可能性がある。多くの悪性腫瘍は、慢性炎症の領域で発生し、炎症の解消が不十分であると、腫瘍の浸潤、進行、および転移に主要な役割を果たす可能性がある(Grivennikov et al.(2010)Cell 140:883-899)。炎症は、肺がんの病態生理学的な関連性があり、例えば、喫煙またはその他の外部から吸入された毒素は、持続的な炎症反応を引き起こす。この炎症性活性化は、部分的には、NLRP3インフラマソームの活性化を介して媒介され、活性型IL-1βが局所的に生成される。臨床では、hsCRPおよびIL-6の高いベースライン濃度が、その後に診断された肺がんと関連していることがわかっている。カナキヌマブによるIL-1β遮断は、総がん死亡率、偶発的肺がんおよび肺がん死亡率の低下と関連していた(Ridker et al.(2017)Lancet 390:1833-1842)。
【0007】
したがって、本開示は、様々ながんの治療または予防に有用であり得、がんとして、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、前立腺がん(例えば、転移性前立腺がん)、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫(例えば、低リスクまたは中リスクの骨髄異形成性白血病))、胃がん(食道がんを含む)、卵巣がん、腎臓がん、肝臓がん(例えば、肝細胞がん(HCC))、皮膚がん(例えば、黒色腫)、頭頸部がん、脳がん、大腸がん、膀胱がん、膵臓がん、および腎臓がん(例えば、限局性腎臓がん)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
ヒトIL-1βに結合する治療用抗体を提供する必要性が依然として存在する。特に、好ましい臨床的性状を有するIL-1β抗体を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、ヒトIL-1βに対する操作されたヒト抗体を包含する。本開示の抗体は、以下の特性のうちの1つ以上を有する:(1)望ましい結合親和性ならびに/または会合速度および解離速度で、ヒトおよびカニクイザルIL-1βに結合すること、(2)強力なIL-1βの中和活性、(3)IL-1βに対する高い特異性、ならびに(4)低い免疫原性リスク。
【0010】
本開示は、操作されたIL-1β抗体およびそれをコードするDNAを含むベクター、ならびに抗体を生成するための方法を提供する。加えて、本開示は、炎症性疾患(例えば、心血管疾患およびがん)を治療するための操作されたIL-1β抗体の使用を提供し、これは、IL-1βシグナル伝達の調節(例えば、拮抗)および/またはIL-1βの過剰生成の影響の緩和から恩恵を受ける可能性がある。
【0011】
したがって、一部の実施形態では、本開示は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含むヒトIL-1βタンパク質に結合する抗体であって、VHが、重鎖相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、VLが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、
HCDR1が、AASGFTFSDHYMS(配列番号7)を含み、
HCDR2が、YISSSGSTIYYADSVKG(配列番号8)を含み、
HCDR3が、AREADSSGYYYVGVDV(配列番号9)を含み、
LCDR1が、RASQSISSYLN(配列番号11)を含み、
LCDR2が、YGASSDQS(配列番号12)を含み、
LCDR3が、QQGYYFPPT(配列番号13)を含む、抗体を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、VHが、配列番号6を含み、VLが、配列番号10を含む、抗体を提供する。他の実施形態では、本開示は、VHが、配列番号6からなり、VLが、配列番号10からなる、抗体を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、VHが、配列番号17または配列番号18を含み、VLが、配列番号10を含む、抗体を提供する。他の実施形態では、本開示は、VHが、配列番号17または配列番号18からなり、VLが、配列番号10からなる、抗体を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号2を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む抗体を提供する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号2からなるHCと、配列番号4からなるLCとを含む。
【0015】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号15または配列番号16を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む、抗体を提供する。他の実施形態では、本開示は、配列番号15または配列番号16からなる重鎖(HC)と、配列番号4からなる軽鎖(LC)とを含む、抗体を提供する。
【0016】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号2のアミノ酸2~445を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む、抗体を提供する。他の実施形態では、本開示は、配列番号15または配列番号16のアミノ酸2~445を含む重鎖(HC)と、配列番号4を含む軽鎖(LC)とを含む、抗体を提供する。
【0017】
一部の実施形態では、抗体のエピトープは、抗体:抗原複合体のX線結晶構造を取得し、抗原上のどの残基が目的の抗体上の残基の4.5Å以内にあるかを特定することによって決定される。一実施形態では、本発明の抗体は、残基R120、E153、K219、E221、N224、M264、Q265、F266、およびS268のうちのいくつかまたはすべてを含むエピトープで、ヒトIL-1β(配列番号1)に結合する。
【0018】
一部の実施形態では、抗体は、操作されたヒトIgG1またはIgG4アイソタイプを有する。
【0019】
好ましい実施形態では、抗体は、操作されたヒトIgG4アイソタイプを有する。
【0020】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号2または4をコードする核酸配列を含む。
【0021】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号15または4をコードする核酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号16または4をコードする核酸配列を含む。
【0023】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号2をコードする第1の核酸配列と、配列番号4をコードする第2の核酸配列とを含む、ベクターを提供する。
【0024】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号15をコードする第1の核酸配列と、配列番号4をコードする第2の核酸配列とを含む、ベクターを提供する。
【0025】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号16をコードする第1の核酸配列と、配列番号4をコードする第2の核酸配列とを含む、ベクターを提供する。
【0026】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号2をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクターとを提供する。
【0027】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号15をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクターとを提供する。
【0028】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号16をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクターとを提供する。
【0029】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号2をコードする第1の核酸配列と、配列番号4をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含む、細胞を提供する。
【0030】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号15をコードする第1の核酸配列と、配列番号4をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含む、細胞を提供する。
【0031】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号16をコードする第1の核酸配列と、配列番号4をコードする第2の核酸配列とを含むベクターを含む、細胞を提供する。
【0032】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号2をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクターとを含む、細胞を提供する。
【0033】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号15をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクターとを含む、細胞を提供する。
【0034】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号16をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、配列番号4をコードする核酸配列を含む第2のベクターとを含む、細胞を提供する。
【0035】
一実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。
【0036】
一実施形態では、本開示は、抗体を生成するための方法であって、上記の細胞を、前記抗体が発現される条件下で培養し、次いで前記発現された抗体を培養培地から回収することを含む方法を提供する。
【0037】
一実施形態では、本開示は、上記の細胞を、抗体が発現される条件下で培養し、前記発現された抗体を培養培地から回収することによって生成される抗体を提供する。
【0038】
一実施形態では、本開示は、本開示の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0039】
一実施形態では、本開示は、2つの軽鎖と、2つの重鎖とを含む抗体であって、各軽鎖が、配列番号4で与えられるアミノ酸配列を有し、各重鎖が、配列番号2で与えられるアミノ酸配列を有する抗体を提供する。
【0040】
一実施形態では、本開示は、2つの軽鎖と、2つの重鎖とを含む抗体であって、各軽鎖が、配列番号4で与えられるアミノ酸配列を有し、各重鎖が、配列番号15または配列番号16で与えられるアミノ酸配列を有する抗体を提供する。
【0041】
一実施形態では、本開示は、疾患を予防するための方法であって、本開示の抗体と、許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態では、本開示は、炎症性疾患を治療するための方法であって、炎症性疾患が、心臓血管疾患、がん、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、新生児期発症多系統炎症性症候群(NOMIS)、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(soJIA)、痛風関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、1型糖尿病、2型糖尿病、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、および眼疾患(例えば、加齢黄斑変性)を含むがこれらに限定されないリストから選択される方法を提供する。
【0042】
特定の実施形態では、本開示は、心血管疾患を治療するための方法であって、心血管疾患が、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、または心不全を含むがこれらに限定されないリストから選択される、方法を提供する。
【0043】
特定の実施形態では、本開示は、がんを治療するための方法であって、がんのタイプが、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、転移性前立腺がん、低または中リスクの骨髄異形成白血病、および限局性腎臓がんを含むがこれらに限定されないリストから選択される、方法を提供する。
【0044】
一実施形態では、本開示は、療法に使用するための本開示の抗体を提供する。一実施形態では、本開示は、炎症性疾患の治療に使用するための本開示の抗体を提供する。一実施形態では、本開示は、心血管疾患の治療に使用するための本開示の抗体を提供する。一実施形態では、本開示は、がんの治療に使用するための本開示の抗体を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、炎症性疾患の治療に使用するための本開示の抗体を提供し、炎症性疾患が、心血管疾患である。さらなる実施形態では、本開示は、炎症性疾患の治療に使用するための本開示の抗体を提供し、炎症性疾患が、がんである。
【0045】
さらなる実施形態では、本開示は、炎症性疾患の治療用の薬剤の製造のための本開示の抗体の使用を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、心血管疾患またはがんの治療用の薬剤の製造のための本開示の抗体の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
添付の特許請求の範囲を含めて本明細書で使用される場合、「a」、「an」、および「the」などの単数形の単語は、文脈が別途明確に指示しない限り、それらの対応する複数の指示対象を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、抗原に結合する免疫グロブリンポリペプチド分子である。天然に存在する完全長抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重鎖(H)鎖と2つの軽鎖(L)とを含む免疫グロブリン分子である。各鎖のアミノ末端部分は、その中に含まれる相補性決定領域(CDR)を介した抗原認識を主に担う約100~約110アミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を定義する。
【0048】
CDRには、フレーム領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在している。各軽鎖可変領域(LCVR、VLとしても知られている)および重鎖可変領域(HCVR、VHとしても知られている)は、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。軽鎖の3つのCDRは、「LCDR1、LCDR2、およびLCDR3」と称され、重鎖の3つのCDRは、「HCDR1、HCDR2、およびHCDR3」と称される。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含む。よく知られているKabatの番号付け規則に従った、VLおよびVH領域内のCDRアミノ酸残基の番号付けと配置。
【0049】
軽鎖は、カッパまたはラムダとして分類され、当該技術分野で既知の特定の定常領域によって特徴付けられる。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプを、それぞれIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEとして定義する。IgG抗体は、サブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4にさらに分けることができる。各重鎖のタイプは、当該技術分野で周知の配列を有する特定の定常領域によって特徴付けられる。
【0050】
一部の生物学的システムおよび生成方法では、抗体は、当該技術分野で周知の他の修飾の中でも、グリコシル化、脱アミド化、アシル化、酸化、環化、フコシル化などの翻訳と同時および翻訳後の修飾を受ける可能性がある。別の既知の修飾は、重鎖を含む重鎖可変領域のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミン酸(しばしば、pyrGlu、pyrE、pGlu、またはpEと略される)への環化である。使用する方法および抗体に応じて、ピログルタミン酸に変換されるグルタミン酸の割合は異なり、混合物を表す場合があり、実質的にすべての生成される抗体または非常に低い割合の抗体が関与する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、例えば、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一のコピーまたはクローンに由来する抗体を指し、それが生成される方法ではない。本開示のmAbは、好ましくは、均一または実質的に均一な集団に存在する。完全なmAbには、2つの重鎖および2つの軽鎖が含まれている。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージ提示技術、合成技術、例えばCDR移植、またはそのような技術または当該技術分野で既知の他の技術の組み合わせにより生成することができる。
【0052】
「操作されたヒト」または「操作されたヒトIL-1β抗体」という語句は、本発明による結合特性および機能的特性を有し、ヒトIL-1βに結合し、かつヒトバリアントのフレームワーク配列と実質的に類似もしくは同一のフレームワーク配列(非ヒト抗体に由来するCDRを取り囲む)を含むように操作されているフレームワーク領域を有するように生成および/または操作されたモノクローナル抗体を指す。ヒト抗体およびヒト化抗体は、当該技術分野でよく知られている。本明細書の操作されたヒト抗体は、エフェクター特性もしくは生体機能的特性、または生物物理学的特性(とりわけ、安定性、開発可能性、および/または溶解性など)を変化させるために、例えば、定常領域において、天然配列と比較して意図的に改変され得る。本明細書の別の実施形態は、操作されたヒト抗体を含み、完全にヒトもしくは実質的に完全にヒトの重鎖および/または軽鎖の定常領域を含む。本明細書の別の実施形態は、ジスルフィド結合によって相互接続された2つのHCと2つのLCとを含む免疫グロブリン分子を含み、完全にヒトまたは実質的に完全にヒトのHCおよびLCの定常領域を含む。
【0053】
かかる操作されたヒト抗体の「抗原結合断片」には、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、および単鎖Fv断片が含まれる。
【0054】
「フレームワーク領域」または「フレームワーク配列」は、フレームワーク領域1~4のうちのいずれか1つを指す。本開示に包含される操作ヒト抗体およびその抗原結合断片は、フレームワーク領域1~4のうちのいずれか1つ以上が、実質的にまたは完全にヒトである(すなわち、個々の実質的にまたは完全にヒトのフレームワーク領域1~4の可能な組み合わせのいずれかが存在する)分子を含む。例えば、これには、フレームワーク領域1およびフレームワーク領域2、フレームワーク領域1およびフレームワーク領域3、フレームワーク領域1、2、および3などが実質的または完全にヒトである分子が含まれる。実質的にヒトのフレームワークは、既知のヒト生殖系列フレームワーク配列に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するものである。ヒトフレームワークの生殖系列配列は、ImMunoGeneTics(IMGT)から、またはMarie-Paule LefrancおよびGerard Lefrancの「The 20 Immunoglobulin FactsBook」(Academic Press, 2001,ISBN 012441351)から入手することができる。例えば、生殖系列軽鎖フレームワークは、A11、A17、A18、A19、A20、A27、A30、L1、L11、L12、L2、L5、L15、L6、L8、O12、O2、およびO8からなる群から選択することができ、生殖系列重鎖フレームワーク領域は、VH2-5、VH2-26、VH2-70、VH3-20、25VH3-72、VH1-46、VH3-9、VH3-66、VH3-74、VH4-31、VHI-18、VHI-69、VI-13-7、VH3-11、VH3-15、VH3-21、VH3-23、VH3-30、VH3-48、VH4-39、VH4-59、およびVH5-51からなる群から選択することができる。
【0055】
本明細書で使用される「IL-1β」(IL-1ベータまたはIL-1βまたはインターロイキン-1βとしても知られている)は、IL-1の主要な循環形態を指す。これは、様々な炎症性疾患の下で、NLRP3インフラマソームを介して、活性化される前駆体(プロIL-1βまたはIL-1βプロタンパク質)として生成される。ヒトプロIL-1βは、配列番号1のアミノ酸配列またはそのバリアントを含む。成熟ヒトIL-1βタンパク質は、配列番号14のアミノ酸配列またはそのバリアントを含む。
【0056】
本明細書で使用される「炎症性」には、炎症性疾患と自己炎症性疾患の両方が含まれる。「炎症性疾患(複数可)」という用語には、心血管疾患、がん、IL-1βの過剰生成をもたらすまれな遺伝性疾患、およびIL-1βシグナル伝達の調節(例えば、拮抗)から恩恵を受ける可能性がある他の疾患が含まれるが、これらに限定されない。「炎症性疾患」には、心血管疾患、心不全、がん、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、新生児期発症多系統炎症性症候群(NOMIS)、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(soJIA)、痛風関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、1型糖尿病、2型糖尿病、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、および眼疾患(例えば、加齢黄斑変性を含む)が含まれ得る。
【0057】
本明細書における「心血管疾患」という用語は、心臓または血管が関与する疾患のクラスを指す。CVDの症状の非網羅的なリストには、狭心症、心筋梗塞(MI、一般に心臓発作として知られている)、脳卒中、心不全、および不整脈が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書における「がん」という用語は、身体の他の部分に浸潤または拡散する可能性のある異常な細胞増殖を伴う一群の疾患を指す。がんの種類の非網羅的なリストには、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、転移性前立腺がん、低リスクまたは中リスクの骨髄異形成白血病、および限局性腎臓がんが含まれるが、これらに限定されない。したがって、がんは、脳、乳房、大腸、皮膚、肝臓、腎臓、肺、膵臓、前立腺、頭頸部、卵巣、子宮、膀胱、胃(食道を含む胃)、結合組織(例えば、肉腫や骨がん)などの固形組織または器官、または血液(例えば、リンパ腫、白血病、および骨髄腫)からの細胞を含み得る。がんはまた、身体の様々な部分の上皮細胞に由来するがん腫、または腺に由来する腺腫などのそれらの細胞起源によって説明され得る。
【0059】
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官、または生体液に適用される「治療」は、外因性の医薬品、治療薬、または組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官への接触を指す。本明細書で使用される場合、「治療」(または「治療する」または「治療すること」)という用語は、IL-1β活性に関連する症状、障害、状態、または疾患の進行または重症度を遅延、中断、阻止、制御、停止、軽減、または逆転することを伴うプロセスを指すが、必ずしも、IL-1β活性に関連するすべての疾患関連の症状、状態、または障害を完全に排除することを伴わない。薬物動態、診断、研究、および実験の方法に適用される「治療」(または「治療する」または「治療すること」)とは、細胞への試薬の接触、ならびに(流体が細胞と接触している場合)流体への試薬の接触を包含する。「予防すること」(または「予防する」)という用語は、何かが発生、存在、もしくは出現しないようにすること、および/または何かを行うことを妨害または停止することを意味する。
【0060】
「活性化」という用語は、内部メカニズムによって、ならびに外部要因または環境要因によって調節される細胞の活性化を指し得る。
【0061】
分子の「活性」は、分子のリガンドまたは受容体への結合、触媒活性、遺伝子発現もしくは細胞シグナル伝達、分化、または成熟化を刺激する能力、抗原性活性、他の分子の活性の調節などを指し得る。分子の「活性」はまた、細胞間相互作用(例えば、接着)を調節もしくは維持する活性、または細胞の構造(例えば、細胞膜もしくは細胞骨格)を維持する活性を指し得る。「活性」はまた、比活性(例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]、または[免疫学的活性]/[mgタンパク質])、生物学的コンパートメントにおける濃度などを意味し得る。
【0062】
本開示に従って同様の機能的特性を示す本明細書に開示された抗体に加えて、操作されたヒト抗体は、いくつかの異なる方法を使用して生成することができる。本明細書に開示される特定の抗体化合物は、追加の抗体化合物を調製するためのテンプレートまたは親抗体化合物として使用することができる。1つのアプローチでは、親抗体化合物のCDRは、親抗体化合物のフレームワークと高い配列同一性を有するヒトフレームワークに移植される。新しいフレームワークの配列同一性は、一般に、親抗体化合物の対応するフレームワークの配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%同一であろう。この移植により、親抗体と比較して、結合親和性が低下する可能性がある。この場合、Queen et al.Al(1991)Proc.Natl.Acad.Sci US 88:2869によって開示された特定の基準に基づいて、親フレームワークの特定の位置で、フレームワークに、復帰変異を導入することができる。抗体のヒト化に有用な方法を記載している追加の参考文献としては、米国特許第4,816,397号、同第5,225,539号、および同第5,693,761号、Levitt(1983)J.Mol.Biol.168:595-620に記載されているコンピュータプログラムABMODおよびENCAD、ならびにWinterおよび共同研究者の方法(Jones et Al.(1986)Nature 321:522-525、Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327、およびVerhoeyen et al.(1988)Science 239:1534-1536)が挙げられる。
【0063】
復帰変異を考慮すべき残基の特定は、以下のように実行することができる。
アクセプターフレームワークのヒトフレームワーク領域のアミノ酸がその位置のヒトフレームワークでは珍しいが、ドナー免疫グロブリンの対応するアミノ酸がその位置のヒトフレームワークで典型的であるカテゴリーに、アミノ酸が分類される場合、使用されるヒト生殖系列配列のフレームワークアミノ酸(「アクセプターフレームワーク」)は、親抗体化合物のフレームワーク(「ドナーフレームワーク」)からのフレームワークアミノ酸に置き換えられる。
【0064】
アクセプターフレームワークのヒトフレームワーク領域の各々のアミノ酸、およびドナーフレームワークの対応するアミノ酸が、その位置のヒトフレームワークでは一般に珍しい場合、かかるアミノ酸は、その位置のヒトフレームワークに典型的なアミノ酸に置き換えることができる。この復帰変異の基準により、親抗体化合物の活性を回復することができる。
【0065】
別のアプローチは、本明細書に開示される抗体化合物と同様の機能的特性を示す操作されたヒト抗体を生成するために、移植されたCDR内のアミノ酸を、フレームワークを変えることなく、ランダムに変異導入し、得られた分子を、親抗体化合物と同等かまたはそれよりも優れている結合親和性および他の機能的特性について、スクリーニングすることを含む。各CDR内の各アミノ酸位置に単一の変異を導入し、続いて、結合親和性および他の機能的特性に対するかかる変異の影響を評価することもできる。改善された特性を生み出す単一の変異を組み合わせて、それらの影響を互いに組み合わせて評価することができる。
【0066】
さらに、前述のアプローチの両方の組み合わせが可能である。CDR移植後、CDRにアミノ酸変化を導入することに加えて、特定のフレームワーク領域に復帰変異を導入することができる。この方法論は、Wu et al,(1999)J.Mol.Biol.294:151-162に記載されている。
【0067】
本開示の操作されたヒト抗体は、様々な経路によって投与される、ヒトの医療における医薬品として使用することができる。最も好ましくは、そのような組成物は、非経口投与用である。かかる薬学的組成物は、当該技術分野で周知の方法(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy;19th ed.(1995)、 A.Gennaro et al.,Mack Publishing Co.)によって調製することができ、本明細書に開示される抗体と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む。
【0068】
以下のアッセイの結果は、本開示の例示されたモノクローナル抗体およびその抗原結合断片が、IL-1βに結合および/または中和し、したがって、炎症性疾患(例えば、心血管疾患またはがん)を治療するために使用され得ることを実証する。
【実施例
【0069】
実施例1:抗体の発現および精製
本開示の抗IL-1β抗体を構築する際に、化学的および物理的安定性に関する重大な問題に遭遇した。例えば、初期の構築物で遭遇した問題には、低い結合親和性、可変領域の脱アミド化、酸化、および低い力価が含まれた。
【0070】
克服すべき結合親和性ならびに化学的および物理的安定性に重大な問題があった。驚くべきことに、本開示の化学的および物理的修飾により、これらの問題が克服された。重鎖および軽鎖の両方で、全体にわたってアミノ酸修飾を導入した。本開示の抗体は、元の構築物からの複数の残基の変化を含み、高い結合親和性を有し、化学的および物理的に安定であることが明らかになった。本開示の抗体を含むいずれの修飾も、初期構築物には見られなかった。
【0071】
表1に、本開示の例示された抗体を提示する。
【0072】
本開示の抗体は、以下のように作製および精製することができる。HEK293またはCHOなどの適切な宿主細胞は、それぞれ、抗体IおよびIIの、抗体I_HCまたは抗体II_HCの配列および共通のLC配列をコードする最適な所定のHC:LCベクター比を使用して、抗体を分泌させるための発現システムで一過的にトランスフェクトする。抗体が分泌された、清澄化した培地を、多くの一般的に使用される技術のいずれかを使用して精製する。例えば、培地は、適合する緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4))で平衡化されたプロテインAまたはプロテインGに都合よく適用され得る。カラムを洗浄して、非特異的結合成分を除去する。結合した抗体を、例えば、pH勾配(例えば、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)から0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)へ)によって、溶出される。抗体断片をSDS-PAGE等により検出し、次いでプールする。意図する使用に応じて、さらなる精製は任意選択的である。抗体を、一般的な技術を使用して濃縮および/または滅菌濾過し得る。可溶性凝集体および多量体は、サイズ排除、疎水性相互作用、またはイオン交換クロマトグラフィーを含む一般的な技術によって効率的に除去することができる。これらのクロマトグラフィーステップ後の抗体の純度は、99%を上回る。生成物は、-70℃ですぐに凍結するか、または凍結乾燥するか、または、すぐに使用する場合は、4℃で保存することができる。
【0073】
実施例2:抗体の発見および操作
ヒト抗IL-1β抗体のパネルは、完全ヒト酵母ディスプレイライブラリーを使用して得られ、効果的なIL-1β中和抗体であり得る試薬を特定するためにスクリーニングされる。変異が、各抗体の個々の相補性決定領域(CDR)に体系的に導入され、得られたバリアントは、抗原濃度を低下させ、かつ/または解離の時間の増やしながら、複数ラウンドの選択にかけて、親和性が改善されたクローンを単離する。個々のバリアントの配列を決定し、コンビナトリアルライブラリーを構築するために使用することでき、それを、ストリンジェンシーを高めながら追加の選択ラウンドにかけて、個々のCDR領域間の相加的または相乗的な変異のペアリングを特定する。個々のコンビナトリアルクローンを、配列決定し、結合特性を決定する。選択した抗体を変異誘発して、IL-1βに対する結合親和性を維持しながら、メチオニンの酸化などの翻訳後修飾を修正することもできる。追加的に、抗体に対して、潜在的な免疫原性を減少させるために、これらのFW1配列をそれらの生殖系列状態に復帰させるフレームワーク(FW)の置換を行う。
【0074】
操作および/または最適化された抗IL-1β抗体が得られる(本明細書で抗体Iおよび抗体IIと呼ばれる)。これらは、重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を有し、完全な重鎖および軽鎖アミノ酸ならびにそれをコードするヌクレオチド配列が、「アミノ酸およびヌクレオチド配列」と題するセクションに列挙されている。以下の表1に、これらの断片に対応する配列ID、ならびに軽鎖および重鎖のCDRアミノ酸配列を示す。
【表1】
【0075】
実施例3:インビトロでのヒトまたはカニクイザルIL-1βの中和
組換えヒトまたはカニクイザルIL-1βは、N末端HIS-SUMO融合タンパク質として、E.coliで生成される。HisPurNi-NTAクロマトグラフィーを使用してタンパク質を精製し、続いて、エンドトキシンを除去する。次いで、精製された融合タンパク質を、SUMOプロテアーゼUlp1で処理して、HIS-SUMOを融合タンパク質から切断する。次いで、切断されたHIS-SUMOタンパク質を、HisPurNi-NTAによって反応物から除去し、Superdex75サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、タグを除いたIL-1βをさらに精製して均一にする。
【0076】
本開示の抗体は、IL-1βを中和すると予想される。抗体Iおよび/または抗体IIによるIL-1β活性の中和は、例えば、以下に記載されるように、1つ以上のIL-1β細胞ベースの活性アッセイによって評価され得る。
【0077】
IL-1β/IL-1R結合の中和剤のスクリーニングは、NF-kBプロモーターの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を発現するHeLa細胞を使用して、ハイスループットの細胞ベースのアッセイによって、最初に行うことができる。このアッセイでは、組換えIL-1βで誘導されたシグナル伝達の読み出しとして、NF-κB-ルシフェラーゼレポーターシグナルを使用する。次いで、IL-1βの中和は、抗IL-1β抗体の滴定によるルシフェラーゼ活性の減少のレベルを測定することによって定量化される。代替的に、別のインビトロ中和アッセイ(例えば、HEK-Blue細胞ベースのアッセイ)を、以下に詳述する。
【0078】
具体的には、HEK-Blue(商標)IL-1β細胞を、増殖培地(DMEM、4.5g/lのグルコース、2mMのL-グルタミン、10%(v/v)のウシ胎児血清、50U/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、100μg/mLのノルモシン(商標)、100μg/mLのゼオシン(商標)、および200μg/mLのハイグロマイシンB Gold)中、T-75フラスコで、90%コンフルエンスになるまで培養する。細胞を、PBS(Ca++およびMg++なし)で2回洗浄し、1mLのPBSで2分間インキュベートする。次いで、フラスコの側面を軽くたたくことによって細胞を剥離し、10mLの試験培地(DMEM、4.5g/lのグルコース、2mMのL-グルタミン、10%(v/v)の熱不活性化FBS(56℃で30分)、50U/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン、100μg/mLのノルモシン(商標))で再懸濁し、カウントし、試験培地で0.33x10細胞/mLに希釈する。組換えヒトまたはカニクイザルIL-1βおよび試験品を、試験培地で、所望の濃度に調製する。BioCoatポリ-D-リジンプレート(Corning 354461)で、40μLの抗体(5×濃度)を、10μLのIL-1β(20×濃度、アッセイの最終濃度が4pM)と混合し、室温で30分間インキュベートする。150μLの0.33x10細胞/mLのHEK-Blue(商標)IL-1β細胞懸濁液を、抗体とIL-1βとの混合物を含むポリ-D-リジンプレートの各ウェルに分注する。プレートを、37℃、5% CO、90%の相対湿度で、一晩インキュベートする。2日目に、ポリ-D-リジンプレートからの25μLの培地を、Costarアッセイプレート(Corning 3695)に移す。37℃に予温した75μLのQUANTI-Blue検出溶液(Invivogen カタログ番号rep-qb1,rep-qb2)をアッセイプレートに添加する。アッセイプレートを覆い、37℃で1時間インキュベートした後、プレートリーダー(SpectraMax Plus,Molecular Device)でOD650nmで読み取る。データは正規化され、4pM IL-1βの阻害率(%)(0%阻害=4pM IL-1β、100%阻害=0pM IL-1β)として表される。中和抗hIL-1β抗体は、HEK-Blue(商標)IL-1β細胞を刺激する組換えヒトIL-1βの活性を遮断する。中和抗体の相対力価は、4パラメータのロジスティック適合を使用して計算され、IC50値で表される。
【表2】
【0079】
実施例4:インビボでのヒトIL-1βの中和
ヒトIL-1βは、マウスIL-1受容体に結合して刺激し、血清中のマウスサイトカインIL-6の上昇をもたらす。ヒトIL-1βの最適な用量およびマウスIL-6の誘導に最適な時間を特定するために、時間および用量範囲試験が実施される。本開示の抗体のインビボでの中和活性を試験するために、最適化されたプロトコルを以下に記載する。具体的には、Envigoからの雄C57BL/6マウスを、約9週齢で研究に使用する。マウスには、通常の固形飼料を与え(Harlan Teklad diet,2014)、体重によって処置群に無作為化される(n=5~8/群)。本開示の抗体および対照抗体を、生理食塩水に溶解し、示された用量レベルで皮下投与される。24時間後、ヒトIL-1βを、生理食塩水に溶解し、1μg/kgの用量レベルで腹腔内投与する。2時間後、血液試料を後眼窩出血によって採取し、続いて、2000gで3分間遠心分離して、血清試料を単離する。
【0080】
血清中のマウスIL-6のレベルは、V-PLEXマウスIL-6キット(Meso Scale Discovery、カタログ番号K152QXD-2)を使用して、製造元の説明書に従って、決定される。簡潔に、MSDプレートを、150μLの洗浄緩衝液で3回洗浄する。50μLの前もって調製したキャリブレーター(段階希釈)、対照および試験試料(1:10希釈)を、プレート上の適切なウェルに移し、室温で2時間振盪する(500~1000rpm)。このプレートを、150μLの洗浄緩衝液で3回洗浄する。次いで、25μLの検出用抗体溶液を、各ウェルに添加し、続いて、室温で2時間振盪する(500~1000rpm)。このプレートを、PBS-Tで3回洗浄する。150μLの2×読み取り用緩衝液を、各ウェルに添加する。プレートを、MSD SQ120プレートリーダーで、すぐに読み取る。試験試料のIL-6の濃度は、4パラメータのロジスティック適合を使用して、検量線から分析される。
【0081】
アイソタイプが一致する対照抗体(IgG4-PAA)は、研究の陰性対照として使用される。データは、対照群の平均IL-6レベルと比較した阻害率(%)として計算される。平均の差の統計的有意性は、JMP11ソフトウェアを用いて、一元配置分散分析、Dunnettの事後分析を使用して評価される。本開示の抗体は、用量依存的に、ヒトIL-1βの効果を遮断して、マウスIL-1受容体を介したマウスIL-6の増加を刺激する(表3-1、3-2)。
【表3】
【表4】
【0082】
実施例5:MSD-SETによる抗体Iおよび抗体IIの結合親和性の測定
MSD(Meso Scale Discovery)エレクトロケミルミネッセンスアッセイを、ヒトIL-1βに対する抗体I、抗体II、およびカナキヌマブの親和性を測定するために利用する。まず、抗体およびヒトIL-1βの平衡混合物を設定する。混合物中の抗体濃度を、1pM、10pM、および100pMで一定に保ち、リガンドを、0.9nMから0.00004nMの範囲の濃度で滴定する(濃度間は2.5倍希釈)。平衡混合物を、密封された非結合96ウェルプレートに、37℃で72時間設定する。
【0083】
MSD Goldストレプトアビジンプレートは、平衡混合物中の遊離抗体を検出するために使用される。MSDプレートは、最初に、ブロッキング緩衝液(PBS+1%BSA)で、800rpmに設定されたシェーカーで、1時間ブロッキングし、次いで、洗浄緩衝液PBST(PBS+0.05% Tween 20)で3回洗浄される。プレートを、ビオチン化ヒトIL-1βでコーティングした後、PBSTで3回洗浄する。平衡混合物をコーティングされたプレートに加え、室温で2.5分間振盪しながらインキュベートし、すぐにPBSTで3回洗浄する。ヤギ抗ヒトSulfo-TAG抗体をプレートに添加し、振盪しながら室温で1時間インキュベートする。さらに3回洗浄した後、MSD読み取り用緩衝液を、MilliQ水で1:2の濃度に希釈して、ウェルに添加する。その後すぐに、MSD Sector Imager SI6000機器を使用して、プレートを読み取る。
【0084】
データの評価のために、MSD機器の読み取り値は、カスタマイズされたExcelまたはGraphPad Prism8ベースの評価プログラムにインポートされる。これにより、滴定データが自動的にプロットされ、K値および統計パラメータが計算される。
【表5】
【0085】
実施例6:免疫原性リスク評価
抗体IIは、以下に示すように、US7,714,120(ここでは、US’120)およびカナキヌマブを代表する抗体との比較により、インシリコおよびエクスビボの方法を使用して、臨床免疫原性の相対リスクについて特徴付けられる。
【0086】
樹状細胞(DC)内在化アッセイ
このアッセイは、被検抗体を内在化させるヒトDCの能力を評価する。CD14+細胞を培養し、IL-4およびGM-CSFを用いて、未成熟DCに分化させる。被検抗体、アイソタイプ対照、または陽性対照を、検出剤(Fab-QSY7-TAMRA)と1:1の比率でプレインキュベートして、複合体を形成させ、次いで、培養物に添加する。細胞を、1日間インキュベートする。内在化および切断時に、フローサイトメトリーによって陽性TAMRAシグナルを検出し、IgG1-ENアイソタイプ対照および抗CXCR抗体を使用して、正規化された内在化指数を計算する。
【0087】
MAPPSアッセイ(MHC関連ペプチドプロテオミクス)
MAPPSは、被検抗体で前もって処理されたヒト樹状細胞上のMHC-II提示ペプチドの特性を明らかにする。正常なヒトドナーのPBMCから単離されたCD14+細胞を培養し、IL-4およびGM-CSFとインキュベーションすることによって、未成熟DCに分化させる。4日目に、培地を、被検抗体を含む新鮮な培地と交換する。5日目に、LPSを添加して、細胞を、成熟DCに変換する。6日目に、細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含むRIPA緩衝液に溶解する。MHC-II複合体の免疫沈降は、ストレプトアビジンビーズに結合したビオチン化抗MHC-II抗体を使用して行う。結合した複合体を溶出し、濾過する。単離されたMHC-IIペプチドは、質量分析計によって分析される。ペプチドの同定は、酵素を使用しない検索アルゴリズムと、試験配列が追加されたウシ/ヒトデータベースとを使用して、内部プロテオミクスパイプラインによって生成され、試験候補の相補性決定領域からのMHC-IIペプチドを表すドナーの割合を決定する。KNIMEワークフローは、試料の識別ファイルを処理するために使用される。試験品から同定されたペプチドは、親配列に対して整列される。
【0088】
インシリコTCEM(T細胞露出モチーフ)分析
この分析は、MAPPSによって同定された特定のペプチドクラスターが、CD4+T細胞を活性化する可能性を評価する。非生殖系列残基を含むMAPPSで同定されたペプチド配列は、ImmunoEpitopeデータベース(IEDB)分析リソースMHCII結合予測ページに入力される。IEDB推奨の予測方法が選択される。予測では、27の最も頻度の高いHLA-DR、-DP、および-DQアレルが、人口のかなりの部分をカバーしているとみなされる。15残基と等しいかまたはそれ以上の長さの各入力配列は、配列全体にまたがる重複する15mer(1アミノ酸のオフセット)に分割される。各ペプチドについて、ペプチドのスコアを、SWISSPROTデータベースから選択された500万のランダム15merのスコアと比較することによって、パーセンタイルランクが生成される。レジスターの推定P-1、P2、P3、P5、P7、およびP8位置に位置するアミノ酸は、TCEMを生成し、リスクは、これらの位置における非生殖系列残基の存在に基づいて定義される。非生殖系列列の残基および複数のアレルへのコア結合の可能性は、グラフィックレンダリングで報告され、免疫原性リスク評価用に考慮される。
【0089】
MS血清結合
このアッセイは、試験候補の血清タンパク質へのオフターゲット結合を評価する。被検抗体は、Immulon 4 HBXマイクロプレートにコーティングされる。ブロッキング後、ヒト血清を添加し、一晩インキュベートする。結合したタンパク質を、溶出、還元、アルキル化、消化する。ペプチドは、質量分析計で分析される。ペプチドおよびタンパク質の同定は、トリプシン酵素による検索アルゴリズムおよび試験抗体の配列が追加されたヒトデータベースを使用して、内部プロテオミクスパイプラインによって生成される。イオンは、内部プロテオミクスツール(Chrom-Alignment、Metaconsense、Quant)によって定量化され、JMPで、一元配置分析/各対、Studentのt検定のプラットフォームを使用して分析される。JMPを使用したイオンのlog2aucの分析:各イオンごとにYをXで近似/平均の比較/すべての対、Tukey HSD。
【0090】
T細胞増殖アッセイ
このアッセイは、細胞増殖を誘導することによって、CD4+T細胞を活性化する被検抗体または被検MAPPSペプチドの能力を評価する。CD8+T細胞を枯渇させたPBMCを調製し、CFSEで標識する。各試料は、培地対照、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH;陽性の臨床ベンチマーク対照)、被検抗体、または被検MAPPSペプチドで試験される。培養物を、7日間インキュベーションする7日目に、試料を、フローサイトメトリーによって分析する。
【0091】
既存の反応性(ACE架橋形式(ACE-Bridge Format))
このアッセイは、ヒト血清中の被検抗体に対する既存の抗体の存在を評価する。希釈された血清は、ビオチン化された被検抗体でコーティングされたプレート上で一晩捕捉される。翌日、捕捉された反応性タンパク質を、酸で溶出し、次いで、ビオチン化およびルテニル化された被検抗体の存在下で中和される。抗薬物抗体が存在する場合、それらは標識された被検抗体を架橋し、複合体を形成する。複合体は、ストレプトアビジンでコーティングされたメソスケールプレートによって捕捉され、得られたシグナルは、ティア1シグナル(電気化学発光として表される)と呼ばれる。このシグナルは、ティア2で、検出ステップで過剰な非標識の被検抗体を添加することによって確認される。これにより、ティア1シグナルが抑制される。既存の抗薬物抗体の存在は、ティア2阻害の90パーセンタイルの大きさとして表される。
【表6】
【0092】
実施例7:抗ヒトIL-1β抗体IIのエピトープマッピング
X線結晶構造解析を使用して、IL-1β-抗体II Fab複合体の高解像度構造を取得する。IL-1β(配列番号14)および抗体IIを、発現させ、精製し、IL1β-抗体II Fab複合体を形成させるために混合する。複合体を、一般的に知られている技術を使用して結晶化する。Vonrhein,C.et al.,Biological Crystallography 67,293-302 (2011)、Evans,P.R.& Murshudov,G.N.,Biological Crystallography 69,1204-1214 (2013)、McCoy,A.J.et al.,Journal of Applied Crystallography 40,658-674 (2007)、Emsley,P.,Lohkamp,B.,Scott,W.G.& Cowtan,K.,Biological Crystallography 66,486-501(2010)、Murshudov,G.N.et al.,Biological Crystallography 67,355-367(2011)、Winn,M.D.et al.,Biological Crystallography 67,235-242(2011)、およびWilliams,C.J.et al.,Protein Science 27,293-315(2018)を参照されたい。
【0093】
エピトープは、抗体IIの残基の4.5Å以内にIL-1βのアミノ酸残基があることを示し、これには、(配列番号1に従って)R120、E153、K219、E221、N224、M264、Q265、F266、およびS268が含まれる。
アミノ酸およびヌクレオチド配列
配列番号1:(ヒトIL-1βプロタンパク質またはプロhIL-1β)
MAEVPELASEMMAYYSGNEDDLFFEADGPKQMKCSFQDLDLCPLDGGIQLRISDHHYSKGFRQAASVVVAMDKLRKMLVPCPQTFQENDLSTFFPFIFEEEPIFFDTWDNEAYVHDAPVRSLNCTLRDSQQKSLVMSGPYELKALHLQGQDMEQQVVFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKNYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWYISTSQAENMPVFLGGTKGGQDITDFTMQFVSS
配列番号2:(抗体Iおよび抗体IIのHC)
VQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDHYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREADSSGYYYVGVDVWGQGTXVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
ここで、Xは、EまたはpEであり
は、MまたはLである
配列番号3:(抗体Iおよび抗体IIのHCのDNA)
gaggtgcagctggtggagtctgggggaggcttggtccagcctggggggtccctgaggctctcctgtgcagcctctggattcaccttcagtgaccactacatgagctggatccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtttcatacattagtagtagtggtagtaccatatactacgcagactctgtgaagggccgattcaccatctccagggacaacgccaagaactcactgtatctgcaaatgaacagcctgagagccgaggacacggcggtgtactactgcgccagagaggctgacagcagcggatactactacgtgggcgtagacgtatggggtcagggtacaatggtcaccgtctcctcagccagcaccaagggcccatcggtcttcccactagcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgagccggtgacggtgtcgtggaactcaggagccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaagacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccctgcccagcacctgaggccgccgggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtaacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggaaagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcaggtggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggt
配列番号4:(抗体Iおよび抗体IIのLC)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYGASSDQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYYFPPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号5:(抗体Iおよび抗体IIのLCのDNA)
gacatccagatgacccagtctccatcctccctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccatcacttgccgggcaagtcagagcattagcagctatttaaattggtatcagcagaaaccagggaaagcccctaagctcctgatctatggtgcatccagtgatcaaagtggggtcccatcaaggttcagtggcagtggatctgggacagatttcactctcaccatcagcagtctgcaacctgaagattttgcaacttactactgtcagcaaggatactacttccctcctacttttggcggagggaccaaggttgagatcaaacgaaccgtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgc
配列番号6:(抗体Iおよび抗体IIのVH)
VQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDHYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREADSSGYYYVGVDVWGQGTXVTVSS
ここで、Xは、EまたはpEであり
は、MまたはLである
配列番号7:(抗体Iおよび抗体IIのHCDR1)
AASGFTFSDHYMS
配列番号8:(抗体Iおよび抗体IIのHCDR2)
YISSSGSTIYYADSVKG
配列番号9:(抗体Iおよび抗体IIのHCDR3)
AREADSSGYYYVGVDV
配列番号10:(抗体Iおよび抗体IIのVL)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYGASSDQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYYFPPTFGGGTKVEIK
配列番号11:(抗体Iおよび抗体IIのLCDR1)
RASQSISSYLN
配列番号12:(抗体Iおよび抗体IIのLCDR2)
YGASSDQS
配列番号13:(抗体Iおよび抗体IIのLCDR3)
QQGYYFPPT
配列番号14:(成熟ヒトIL-1β;配列番号1の残基117-269)
APVRSLNCTLRDSQQKSLVMSGPYELKALHLQGQDMEQQVVFSMSFVQGEESNDKIPVALGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKNYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWYISTSQAENMPVFLGGTKGGQDITDFTMQFVSS
配列番号15:(抗体IのHC)
VQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDHYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREADSSGYYYVGVDVWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
ここで、Xは、EまたはpEである
配列番号16:(抗体IIのHC)
VQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDHYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREADSSGYYYVGVDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
ここで、Xは、EまたはpEである
配列番号17:(抗体IのVH)
VQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDHYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREADSSGYYYVGVDVWGQGTMVTVSS
ここで、Xは、EまたはpEである
配列番号18:(抗体IIのVH)
VQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDHYMSWIRQAPGKGLEWVSYISSSGSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREADSSGYYYVGVDVWGQGTLVTVSS
ここで、Xは、EまたはpEである
配列番号19:(カナキヌマブのHC)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSVYGMNWVRQAPGKGLEWVAIIWYDGDNQYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNGLRAEDTAVYYCARDLRTGPFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
配列番号20:(カナキヌマブのLC)
EIVLTQSPDFQSVTPKEKVTITCRASQSIGSSLHWYQQKPDQSPKLLIKYASQSFSGVPSRFSGSGSGTDFTLTINSLEAEDAAAYYCHQSSSLPFTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【配列表】
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