(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】軸方向外向きに突出するローラトラックを有する遠心振り子およびトルク伝達デバイス
(51)【国際特許分類】
F16F 15/14 20060101AFI20240115BHJP
F16D 13/64 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16F15/14 Z
F16D13/64 F
(21)【出願番号】P 2022551761
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 DE2021100044
(87)【国際公開番号】W WO2021170168
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】102020105174.3
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アラン リュシュ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヘスラー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ロス
(72)【発明者】
【氏名】ローラン テリオ
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-046117(JP,A)
【文献】特開2000-046113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0208886(US,A1)
【文献】国際公開第2015/058766(WO,A1)
【文献】特表2011-522185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/14
F16D 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア(2)と、少なくとも1つのローラ体(3)によって前記キャリア(2)に対して枢動するように取り付けられた振り子(4)と、を備え、前記少なくとも1つのローラ体(3)の第1の回転領域(5)が、前記キャリア(2)のローラトラック(6)に収容され、かつ前記少なくとも1つのローラ体の第2の回転領域(7)が、前記振り子(4)のローラトラック(8)に収容された、自動車のドライブトレイン用遠心振り子(1)であって、前記
キャリアの
前記ローラトラック(
6)が、軸方向に形成された板金部(9)によって、部分的または全面的に形成され、前記軸方向に形成された板金部(9)の自由縁部が、最も近い振り子(4)から遠ざかる方向を向いていることを特徴とする、遠心振り子(1)。
【請求項2】
前記形成された板金部(9)が、板金成形によって湾曲させたエリアを有し、前記エリアに対して、前記ローラ体(3)の一部を接触させることができ、かつ前記エリアの上を、前記ローラ体(3)の前記一部
が転がることを特徴とする、請求項1に記載の遠心振り子(1)。
【請求項3】
前記ローラトラック(6、8)を形成している貫通穴(11)のベアリング領域(10)を、前記板金部(9)が、部分的または全面的に形成していることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠心振り子(1)。
【請求項4】
前記板金部(9)が、前記ベアリング領域(10)の、半径方向外側(12)および/または半径方向内側(13)を形成していることを特徴とする、請求項3に記載の遠心振り子(1)。
【請求項5】
前記キャリア(2)が、2つのフランジ要素(14、15)を有し、両方のフランジ要素(14、15)が、各ローラ体(3)のためのローラトラック(6)を有し、前記ローラトラック(6)が、軸方向に形成された板金部(9)によって形成され、前記ローラ体(3)を収容していることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の遠心振り子(1)。
【請求項6】
前記2つのフランジ要素(14、15)の前記形成された板金部(9)の前記自由縁部どうしが、互いに反対方向を向いていることを特徴とする、請求項5に記載の遠心振り子(1)。
【請求項7】
前記板金部(9)が、前記キャリア(2
)の径方向に延在するディスク領域(16)に対して、本質的に直交して延びるように形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の遠心振り子(1)。
【請求項8】
前記板金部(9)と前記ディスク領域(16)との間の移行部(17)が、前記移行部(17)によって形成される半径(18)が、前記ディスク領域(16)
の材料厚さ(19)の半分未満であるように形成されることを特徴とする、請求項7に記載の遠心振り子(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのローラ体(3)が、円錐型の支持表面(20)を有し、前記円錐型の支持表面(20)によって、前記少なくとも1つのローラ体(3)が、前記キャリア(2)または前記振り子(4)上に
、前記形成された板金部(9)の、板金成形によ
って湾曲させた前記エリア内に、軸方向に支持されることを特徴とする、請求項
2に記載の遠心振り子(1)。
【請求項10】
前記振り子(4)の前記ローラトラック(8)が、前記キャリア(2)の前記ローラトラック(6)よりも長いことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の遠心振り子(1)。
【請求項11】
前記キャリア(2)の前記ローラトラック(
6)および/または前記振り子(4)の前記ローラトラック(8)が表面硬化されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の遠心振り子(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の遠心振り子(1)と、前記遠心振り子(1)の前記キャリア(2)に接続されたクラッチディスク(22)と、を有する、自動車のドライブトレイン用トルク伝達デバイス(21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドライブトレイン用の遠心振り子、好ましくは、ドライブトレインのクラッチ内または上に用いるための遠心振り子であって、キャリアと、少なくとも1つのローラ体によって、キャリアに対して枢動するように取り付けられた振り子(pendulum mass)とを備える遠心振り子に関する。その遠心振り子においては、少なくとも1つのローラ体の第1の回転領域が、キャリアの(第1の)ローラトラックに収容され、かつ少なくとも1つのローラ体の第2の回転領域が、振り子の(第2の)ローラトラックに収容されている。本発明は更に、そのような遠心振り子を有するトルク伝達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な遠心振り子は、先行技術においてすでに十分に知られている。例えば、この文脈においては、ドイツ特許商標庁に出願された、特許文献1が、1つのキャリア要素上または2つのキャリア要素上で振り子ローラによって軌道に沿って誘導される、2つの振り子を備える遠心振り子を開示している。
【0003】
しかしながら、先行技術から既知の構成は、以前に実装された変形形態のローラトラックが、比較的高い費用をかけて再加工された場合にのみ、動作中に発生する高い荷重に耐えることができるという点で、不利であるということが判明している。また、ローラトラックを形成する際に、対応する切断面が、直接的にローラトラックとして使用できるように、対応する滑らかな切断部を可能な限り高く形成する必要が既にある。そのため、キャリアまたは振り子の対応する構成部品を、冷間圧延されたストリップ材料から作られた板金から形成することが提案された。なぜならば、これらは、原理的に、好適な切断品質を可能にするためである。しかしながら、これには、比較的高コストであるという不利な点がある。更に、板金の厚さは、ローラトラックの表面積を増大させるために、できる限り厚くするべきであるということが示唆されている。しかしながら、これは、結果として、遠心振り子の重量の増加をもたらすだけでなく、追加的手段によって実現されねばならない、より要求の多い製造方法をもたらす。対応する板は、しばしば、深い表面硬化深度を実現するためにあらかじめ浸炭される。これもまた、製造コストの増加につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第10 2013 221 607.6号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに、本発明の目的は、先行技術から知られている不利益をなくし、具体的には、一方で製造が容易で、他方で可能な限り摩耗に耐えるように構成された遠心振り子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の遠心振り子によって実現される。好ましい例示的な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
特に、この目的は、2つのローラトラックの少なくとも1つが、軸方向に形成された/突出した板金部によって、部分的または全面的に形成され、軸方向に形成された板金部の自由縁部が、最も近い振り子から遠ざかる方向を向いている本発明によって達成される。このようにしてローラトラック(複数可)を板金部から作成することによって、それらのローラトラック(複数可)は、最早、切断面によって直接形成されることがなくなり、キャリアまたは振り子の横方向面によって形成されるようになる。これにより、実際の切断面を後処理する必要性が、大きく減少する。また、ローラトラックは、更により高い耐摩耗性を有するように、可能な限り幅広に構成される。
【0008】
形成された板金部が、板金成形によって湾曲させたエリアを有し、そのエリアに対して、ローラ体の一部を接触させることができ、かつそのエリアの上を、ローラ体の一部が好ましくは転がれば、有利である。
【0009】
したがって、板金部が、部分的または全体的に、ローラトラックを形成する貫通穴のベアリング領域を形成するならば、それも有利である。したがって、ローラトラックの広さは、個別に板金部によって決定され得る。
【0010】
この文脈においては、板金部が、ベアリング領域の半径方向内側および/または半径方向外側を形成するならば、好都合である。ベアリング領域の内側および外側の両方が、板金部によって形成される場合、半径方向外側の板金部の長さと半径方向内側の板金部の長さと(各々の長さは、ローラ体の回転軸に沿った軸方向範囲に対応する)の合計が、貫通穴の幅(径方向幅に対応する幅)よりも小さいならば、更に好ましい。
【0011】
キャリアが2つのフランジ要素を有し、両方のフランジ要素が、各ローラ体のための(第1の)ローラトラックを有し、その(第1の)ローラトラックがローラ体を収容し、かつ軸方向に形成された板金部によって形成されているならば、それはまた有利なことである。これにより、利用可能なガイド面/転がり面が、更に増加する。
【0012】
上記の(それぞれの)板金部は、有利には、キャリアまたは振り子の径方向に延在するディスク領域に対して本質的に直交して延びるようにして形成される。ディスク領域に対して実質的に直交するということは、ディスク領域に対して、90°±10°の角度であることを意味する。
【0013】
更に、板金部とディスク領域との間の移行部が、この移行部によって形成される半径が、ディスク領域の材料厚さの半分未満であるように形成されるならば好都合である。この半径が、ツールをエンボス加工するシーケンス(embossing tool sequence)中の、キャリブレーションのプロセス中に形成されるならば、特に好都合であることが既に判明している。
【0014】
少なくとも1つのローラ体が、円錐形の支持表面を有し、その支持表面によって、そのローラ体が、キャリアまたは振り子上に、好ましくは、板金成形によって湾曲させた、形成された板金部のエリア内に、軸方向に支持されるならば、ローラ体の中央配置が更に最適化される。
【0015】
更に、振り子の(第2の)ローラトラックが、キャリアの(第1の)ローラトラックよりも長いならば、好都合であることが既に判明している。これにより、ローラ体にとって、可能な限り長い転がり面が結果として得られる。
【0016】
キャリアのローラトラックおよび/または振り子のローラトラックが、表面硬化されている場合には、その頑強性が更に増加する。
【0017】
更に、本発明は、上述の実施形態の少なくとも1つによる遠心振り子と、遠心振り子のキャリアに接続されたクラッチディスクと、を有する、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達デバイス、好ましくはクラッチの形態のトルク伝達デバイスに関する。
【0018】
換言すれば、本発明によれば、引抜成形された/突出したローラトラックを有する遠心振り子が実現される。遠心振り子、特にクラッチディスクに取り付けられる、特に2フランジ構成の遠心振り子における摩耗を減らすため、振り子および/または1つまたは複数のフランジのトラックが、板金の形成された表面からなるという提案がされている。
【0019】
ここで本発明が、これ以後、図を参照しながらより詳細に、その文脈においてさまざまな例示的実施形態が示されながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態による本発明による遠心振り子の長手方向の断面の詳細図であり、キャリアおよび振り子のローラトラックに取り付けられたローラ体を示す。
【
図2】本発明による
図1の遠心振り子の正面図であり、切断線I-Iが、
図1による長手方向断面を特徴づけている図を示す。
【
図3】遠心振り子の長手方向断面の全体の断面図を示す。
【
図4】
図1~
図3の遠心振り子の斜視図であり、遠心振り子のフランジ要素の複数の板金部がそれぞれローラトラックを形成することを見て取ることができる。
【
図5】
図4中に「V」という印がつけられている領域の詳細図を示す。
【
図6】
図5による板金部を有するフランジ要素のエリアの詳細図を示す。
【
図7】
図1の遠心振り子において用いられるフランジ要素の正面図を示す。
【
図8a】
図7によるフランジ要素の、
図7のVIII-VIIIで示す切断線に沿った、2つの長手方向断面図(周辺の線が省略されているものとされていないもの)を示す。
【
図8b】
図7によるフランジ要素の、
図7のVIII-VIIIで示す切断線に沿った、2つの長手方向断面図(周辺の線が省略されているものとされていないもの)を示す。
【
図9】
図7によるフランジ要素内に実現されたローラトラックの製造プロセスを、4枚のそれぞれ異なる製造工程を示す部分的図によって示す、一連の画像を示す。
【
図10】ローラトラックの半径方向外側のみに、軸方向に突出する板金部が設けられている、第2の実施形態によるフランジ要素の製造を示す一連の図を示す。
【
図11】
図1~
図5の遠心振り子を使用することができるトルク伝達デバイスの長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図はその本質上、あくまでも概略的なものに過ぎず、それゆえ、本発明を理解するという目的のみのために意図されているものである。同じ要素には同じ参照記号が付与されている。
【0022】
図11は、本発明による遠心振り子1の好ましい適用エリアを図示しており、これについては以下により詳細に説明する。遠心振り子1が、この
図11に概略的に示され、より詳細な構成は、
図1~
図10に示されている。
図11では、遠心振り子1は、トルク伝達デバイス21のクラッチディスク22に、回転可能に固定される(rotationally fixed)ように取り付けられている。トルク伝達デバイス21は、クラッチ、すなわち摩擦クラッチとして実現される。遠心振り子1は、典型的には、自動車のドライブトレイン内におけるねじれ振動を吸収するために用いられ、好ましくは、内燃機関とトランスミッションとの間のトルク伝達デバイス21とともに用いられる。
【0023】
遠心振り子1は、第1の例示的実施形態との関係で
図1~
図3に示されるように、キャリア2を有する。キャリア2は、複数部品構成を有する。キャリア2は、2つのフランジ要素14、15を有し、その各々が、ローラ体3のための第1のローラトラック6を形成する。
図2によれば、フランジ要素14および15は、円周方向に分配された、複数の第1のローラトラック6を形成する。第1のフランジ要素14の各々の第1のローラトラック6は、第2のフランジ要素15の第1のローラトラック6と、軸方向/軸線の方向に(すなわち、ローラ体3の回転軸24に沿って)位置揃えされる。それぞれの第1のローラトラック6は、本質的に腎臓の形状であり、フランジ要素14、15の円周方向に延びており、軸線方向の貫通穴11によって形成されている。フランジ要素14、15の第1のローラトラック6の各々において、ローラ体3は、第1の回転領域5とともに動く。
【0024】
振り子4は、軸方向には、フランジ要素14,15の、第1のローラトラック6を形成する領域どうしの間に収容され、ローラ体3によって、キャリア2に対するその振り子動作/枢動動作においてガイドされる。この目的のため、振り子4は、第2のローラトラック8を有する。ローラ体3は、第1のローラトラック6どうしの間の軸方向領域に収容され、第2のローラトラック8における第2の回転領域7を形成する。その結果、振り子4は、ローラ体3を介して、かつトルク伝達デバイス21の動作中の遠心力場における、ローラトラック6、8内へのローラ体3の包含によって、枢動可能にガイドされる。
図2はまた、各々の振り子4のために2つのローラ体3が存在することを示し、振り子4に割り当てられたこれらの2つのローラ体3が、その振り子4の、接続された第1のローラトラック6内を走行する。典型的には、円周方向に分配されている、複数の(ここでは3つの)振り子4が、このように枢動可能に、キャリア2上に収容されている。
【0025】
本発明によれば、第1のローラトラック6の各々は、フランジ要素14、15の、軸方向に折り畳まれた/形成された/突出した板金部9によって形成されているが、ここで、軸方向に形成された板金部9の自由縁部または切り口縁部は、最も近い振り子4から遠ざかる方向を向くようになっている。このことを、第1の実施形態に関連付けて、
図1~
図9の様々な図の助けによって例示的に説明する。それ故、第1のローラトラック6を直接形成する複数の軸方向に形成された板金部9を備える第1のローラトラック6のエリア内では、板金から作製された2枚のフランジ要素14、15は同じように提供され、ここで、2つのフランジ部材14、15の形成された板金部9の自由縁部または切り口縁部は互いに逆方向を向いている。
【0026】
この形成プロセスは、第2のフランジ要素15を例として用いて、
図9に関連させて詳しく示されるが、このプロセスが、第1のフランジ要素14にも適用されることは自明である。したがって、ある特定の材料厚さ19を有する板金/板鋼、好ましくはホットストリップがまず提供され、その後、軸方向に突出する板金部9が形成されるように処理される。始めに、小さい貫通穴23が形成される(好ましくは、パンチング加工または切断加工によって)。次に板金部9を広げる、すなわち、貫通穴11が形成されるように軸方向に変形させ、これによって、少なくとも半径方向外側12と半径方向内側13とに、第1のローラトラック6を形成する。最後のキャリブレーションプロセスでは、板金部9の長さを、外側12と内側13で再び増大させる。これにより、半径18が、第2のフランジ要素15の、径方向に延在するディスク領域16と、板金部9との間の移行部17に作り出される。その半径18は、材料厚さ19の半分未満である。
【0027】
図9の最も右の部分的な断面図による完全に形成された状態では、半径方向外側12の板金部9の長さ/軸方向の拡がりl1と、半径方向内側13の板金部9の長さ/軸方向の拡がりl3との和は、貫通穴11(トラック開口部とも呼ぶ)の径方向の拡がりl2(/幅)よりも小さくなっているということも見て取れる。
【0028】
このようにして、フランジ要素14、15のそれぞれにおいて、軸方向に延びる/突出する、板金カップ形態で、単一ピースの板金部9が形成される。先に打抜きまたは切断により機械加工されたその切り口縁部25は、ローラ体3と軸方向に位置揃えされ、かつそれにより径方向にローラ体3と離間され/ローラ体3とは摩擦接触せず、最も近い振り子4またはガイドされることになる振り子4から遠ざかる方向を向く。特に、形成された板金部は、板金成形によって湾曲させたエリアを有し、そのエリアに対して、ローラ体の一部を接触させることができ、かつそのエリアの上を、ローラ体の一部が好ましくは転がることができる。
【0029】
図1はまた、ローラ体3が、円錐形に形成された支持表面20を、各第1のローラトラック6と振り子4との間のエリアに有し、ローラ体が、軸方向では、フランジ要素14、15上、好ましくは板金成形の結果として湾曲しているそれぞれ形成された板金部9のエリアに置かれ、かつ、それによって、ローラ体3をフランジ要素14、15どうしの間の軸方向空間において、(軸方向)中央に配置させるということを明らかにしている。
【0030】
また、各々の第1のローラトラック6が、第2のローラトラック8よりも、短い長さを有し/軸方向に短く、それにより、ローラ体3に向かってより小さい接触面を形成するということも見て取れる。
【0031】
更に、第1のローラトラック6と第2のローラトラック8のそれぞれは、表面硬化されている。
【0032】
図5に見て取れるように、この板金部9は、好ましくは、貫通穴11を形成しているベアリング領域10の全周の周りに延在する。あるいは、
図10に関連付けて例示されるように、原理的には、この貫通穴11/このベアリング領域10の周辺エリア、さらに好ましくは、半径方向外側12に向かうエリアのみに、板金部9を提供することも可能である。
【0033】
この文脈において、完全性を期して、更なる実施形態においては、振り子4が、代替的または追加的に、上記のような板金部9によって実現されるということにも言及すべきであろう。そうなると振り子4もまた、完全に、板金/板鋼、好ましくはホットストリップから形成される。
【0034】
換言すれば、本発明の課題に対する解決法は、(切断縁部25の代わりに)板金表面を、ローラトラック6として使用することにある。板金表面は本質的に、以下のように手段が変化する特質を有する:切断縁部の品質は、もはや重要ではないので、ツールにおいて切断のクリアランスを狭くする必要がなくなる。板金(14、15、4)は、好ましくは、ホットストリップから形成される。トラック幅が最早、板厚に依存しないため、板厚は、より薄く選択され得る。転がり表面の増加が、強度の要件を減らすため、板をあらかじめ浸炭させる必要がなくなる。
【0035】
したがって、本発明は以下の項目に関するものとなる。
1)ローラ3を含み、板金キャリア2および振り子4から形成される遠心振り子1であって、振り子4またはキャリア2のトラック6、8が、板金の形成された表面からなる遠心振り子1。
2)ローラ3を含み、板金キャリア2および振り子4から形成される遠心振り子1であって、板金の切り口縁部25が、ローラ3と接触せず、それゆえに機能的な表面ではない、遠心振り子1。
3)トラック6、8が、もともとトラックの領域にあった、折り曲げられた板金部品から形成される、項目1または2による遠心振り子1。
4)トラック6、8が、90°±10°の角度で他の部分に対して折り曲げられている、項目3による遠心振り子1。
5)トラック6、8が、ツールをエンボス加工するシーケンス中にキャリブレーションされる、項目3による遠心振り子1。結果として、隅の領域の材料が移動するため、半径18は、材料厚さ19の半分未満となっている。
6)ローラ3が、トラックの突出角度に適合された円錐部20を有する、項目4による遠心振り子1。このようにして、自動的中心配置が実現される。
7)トラック6、8は、中央部に、両サイドよりも広いエリアを有する、項目3による遠心振り子1。結果として、最も大きな転がり負荷を受ける中央部のエリアは、過剰な圧力から保護される。
8)トラック6、8の上側の軸方向の拡がりと下側の軸方向の拡がりとの和は、トラック開口部よりも小さい(
図9によると、l1+l3<l2)、項目3による遠心振り子1。
9)トラック6、8の上側のみが折り曲げられている、項目3による遠心振り子1。ローラ3が、下側を転がらないので、この項目においては、湾曲したトラックが不要である。
10)トラック6、8が、表面硬化されている、項目3による遠心振り子1。
【符号の説明】
【0036】
1 遠心振り子
2 キャリア
3 ローラ体
4 振り子
5 第1の回転領域
6 第1のローラトラック
7 第2の回転領域
8 第2のローラトラック
9 板金部
10 ベアリング領域
11 貫通穴
12 外側
13 内側
14 第1のフランジ要素
15 第2のフランジ要素
16 ディスク領域
17 移行部
18 半径
19 材料厚さ
20 支持表面
21 トルク伝達デバイス
22 クラッチディスク
23 穴
24 回転軸
25 切り口縁部