(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】液体貯蔵容器
(51)【国際特許分類】
B65D 53/00 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
B65D53/00 100
(21)【出願番号】P 2023078247
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2019103870の分割
【原出願日】2019-06-03
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】久永 あかね
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 健太
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088207(JP,A)
【文献】特開平11-292123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0054584(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0155991(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B41J 2/175
B65D 75/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備え、液体を貯蔵可能な液体貯蔵部と、
前記開口部の周縁部に保持され前記開口部を封止する、破断可能な蓋材と、
前記液体貯蔵部に着脱可能に取り付けられ、前記蓋材を介して前記開口部を覆い、前記液体貯蔵部に貯蔵された液体を、破断された前記蓋材と前記開口部とを通して流出させるノズル部材と、を備え、
前記蓋材は易破断線を有し、前記易破断線は前記周縁部に対して接触することなく延びる端部領域を有しており、前記端部領域は端部に向かうにつれて前記周縁部から離れる、液体貯蔵容器。
【請求項2】
前記易破断線の少なくとも一部は曲線からなる、請求項1に記載の液体貯蔵容器。
【請求項3】
前記易破断線のすべては曲線からなる、請求項1に記載の液体貯蔵容器。
【請求項4】
前記易破断線は、前記蓋材の中心を通る第1の部分と、前記第1の部分の両端に曲線を介して接続され、各々が前記端部領域を有する一対の第2の部分と、を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体貯蔵容器。
【請求項5】
複数の前記易破断線が設けられ、前記複数の易破断線が前記蓋材の中心で交差している、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体貯蔵容器。
【請求項6】
前記複数の易破断線は前記蓋材の中心に関して回転対称である、請求項5に記載の液体貯蔵容器。
【請求項7】
前記複数の易破断線は一対の易破断線であり、各易破断線は前記蓋材の中心を通る直線状の第1の部分と、前記第1の部分の両端に曲線を介して接続され、前記第1の部分に対し概ね直交する一対の第2の部分と、前記第2の部分に接続され、各々が前記端部領域を有する一対の第3の部分と、を有する、請求項5または6に記載の液体貯蔵容器。
【請求項8】
前記複数の易破断線は一対のS字状の曲線である、請求項5または請求項6に記載の液体貯蔵容器。
【請求項9】
前記第3の部分は曲線からなり、前記曲線の曲率半径は3mm以上である、請求項7に記載の液体貯蔵容器。
【請求項10】
前記易破断線は前記蓋材の厚さより浅い深さの切り込みである、請求項1から9のいずれか1項に記載の液体貯蔵容器。
【請求項11】
前記切り込みは前記蓋材の前記液体貯蔵部と対向する面に形成されている、請求項10に記載の液体貯蔵容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体貯蔵容器に関し、特にインクジェット記録装置が備えるインクタンクに充填されるインクを貯蔵する液体貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は通常、インクを収容するインクタンクと、インクタンクから供給されたインクを吐出する記録ヘッドと、を備えている。インクジェット記録装置のなかには、インクを充填可能なインクタンクを備えるものがある。特許文献1には、インクタンクに充填されるインクを貯蔵するボトル(以下、液体貯蔵容器という)が開示されている。液体貯蔵容器は、インクを収容可能な液体貯蔵部と、液体貯蔵部に着脱可能に取り付けられたノズル部材と、を有している。液体貯蔵部に貯蔵されたインクはノズル部材からインクタンクに充填される。物流時のインク漏れを防止するため、液体貯蔵部の開口部にはフィルム(以下、蓋材という)が貼り付けられている。液体貯蔵容器の使用時には、ノズル部材を液体貯蔵部から取り外し、蓋材を剥がして液体貯蔵部の開口部を開放し、再びノズル部材を液体貯蔵部に装着する。これによって、液体貯蔵容器からインクタンクへのインクの充填が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体貯蔵容器の開口部に貼り付けられた蓋材を剥がす際に。蓋材が裂けてしまうことがある。開口部の周縁部の一部に蓋材が残存すると、開口部の周縁部に、蓋材が剥離された部位と蓋材が残存した部位とによる段差が生じる。これによって、液体貯蔵部とノズル部材との間の密着性が低下し、液体貯蔵部とノズル部材の隙間からインクが漏れ出す可能性がある。このような課題はインク以外の液体を貯蔵する液体貯蔵容器についても生じる。
【0005】
本発明は、開封後も液体貯蔵部とノズル部材との間の密着性を維持することが容易な液体貯蔵容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体貯蔵容器は、開口部を備え、液体を貯蔵可能な液体貯蔵部と、開口部の周縁部に保持され開口部を封止する、破断可能な蓋材と、液体貯蔵部に着脱可能に取り付けられ、蓋材を介して開口部を覆い、液体貯蔵部に貯蔵された液体を、破断された蓋材と開口部とを通して流出させるノズル部材と、を備えている。一態様では、蓋材は易破断線を有し、易破断線は周縁部に対して接触することなく延びる端部領域を有しており、端部領域は端部に向かうにつれて周縁部から離れる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、開封後も液体貯蔵部とノズル部材との間の密着性を維持することが容易な液体貯蔵容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の一実施形態に係る液体貯蔵容器の概略概略図である。
【
図5】実施形態と参考例に係る蓋材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態はインクジェットプリンタ(以下、液体吐出装置1という)が備えるインクタンクに充填されるインクを貯蔵する液体貯蔵容器を対象とするが、本発明はインク以外の液体を貯蔵する液体貯蔵容器も含む。各図面において同じ機能を有するものには同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。
【0010】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置1の要部の内部構成を示す斜視図、
図1(b)は、インクタンク12の外観を示す斜視図である。液体吐出装置1は、4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)のインクを収容する4つのインクタンク12a~12d(総称してインクタンク12という)を備えている。液体吐出装置1は、記録媒体(図示せず)を搬送するための搬送ローラ13と、インクを吐出する記録ヘッド14を支持し走査させるキャリッジ15と、キャリッジ15を駆動するためのキャリッジモータ16と、を備えている。インクタンク12に収容されたインクは、インク流路17を介して記録ヘッド14に供給され、記録ヘッド14から吐出される。インクタンク12は、インクを収容するインクタンク本体121と、インクタンク本体121に連通する連通流路122と、タンクカバー123と、から構成されている。タンクカバー123はインクタンク本体121に装着され、インクタンク本体121の内部を密閉する。インクをインクタンク12に補充するには、先ずインクタンク12からタンクカバー123を取り外し、後述する液体貯蔵容器2のノズル部材22の液体流出部223(
図3参照)を連通流路122に挿入し、インクを注入する。インクの充填が終了したら、液体貯蔵容器2をインクタンク12から取り外し、タンクカバー123をインクタンク本体121に取り付けて、連通流路122を塞ぐ。
【0011】
図2(a)は、インクタンク12に充填されるインクを貯蔵する液体貯蔵容器2の斜視図を、
図2(b)は液体貯蔵容器2の分解斜視図を示している。
図3(a)は液体貯蔵容器2の断面図を、
図3(b)は液体貯蔵容器2の分解断面図を示している。液体貯蔵容器2は、液体貯蔵部21と、ノズル部材22と、キャップ23と、蓋材24とから構成されている。液体貯蔵部21は、インクを貯蔵可能な筒状の胴部211と、外周部に雄ねじ(図示せず)が形成された筒状の係合部212と、を有し、係合部212はインクの充填及び吐出が可能な円形の開口部213を備えている。開口部213の周りには平坦な環状面である周縁部214が形成されている。胴部211と係合部212は一体形成されている。液体貯蔵部21は弾性を有する材料で構成されており、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂を用いることができる。開口部213は、係合部212の胴部211と反対側のノズル部材22側に設けられている。
【0012】
ノズル部材22は液体貯蔵部21とは別体で構成され、液体貯蔵部21に着脱可能に取り付けられている。ノズル部材22は、内周部に雌ねじ(図示せず)が形成された結合部221と、キャップ23と係合するキャップ係合部222と、インクを吐出させる液体流出部223と、を有している。結合部221とキャップ係合部222と液体流出部223は一体形成されている。キャップ係合部222の外周面には雄ねじ(図示せず)が形成されている。結合部221の内径は、液体貯蔵部21の係合部212の外径よりも大きい。結合部221は液体貯蔵部21の係合部212とねじで係合している。従って、結合部221を係合部212に対して回転させることによって、ノズル部材22を液体貯蔵部21から取り外すことができる。結合部221の下端には液体貯蔵部21の周縁部に当接する突き当て部224が形成されている。ノズル部材22は次に述べる蓋材24を介して開口部213を覆っている。蓋材24が取り付けられた液体貯蔵部21にノズル部材22を係合すると、蓋材24は、液体貯蔵部21の開口部213の周縁部214と、ノズル部材22の結合部221の裏面との間に挟まれる。蓋材24を破断することによって、液体貯蔵部21に貯蔵されたインクを、蓋材24と開口部213とを通して流出させることができる。
【0013】
ノズル部材22にはキャップ23が着脱可能に装着されている。キャップ23の内周部にはキャップ係合部222の雄ねじと係合する雌ねじ(図示せず)が形成されている。キャップ23をノズル部材22に対して回転させることによって、開封後の液体貯蔵容器2を密閉し、液体貯蔵部21に残存するインクの蒸発を防止することができる。これによって、インクが余った場合でも、液体貯蔵容器2を長期間保管することができる。また、キャップ23は、液体貯蔵容器2の落下等によるインクの飛散を防止する。
【0014】
開口部213の周縁部214には開口部213を封止ないし密閉する蓋材24が保持されている。蓋材24は開口部213と同心の円形の薄肉部材であり、開口部213を覆う大きさと形状を有している。これによって、未開封の液体貯蔵容器2の液体貯蔵部21の密封性が保たれ、インクが液体貯蔵部21に密閉される。蓋材24は接着剤、シーリング部材によるカシメ、熱溶着などの手段によって開口部213の周縁部214に取り付けられる。蓋材24は破断可能な材料、例えば紙、樹脂若しくは金属箔の層、またはこれらの積層体で形成される。紙としてはコート紙、アート紙などを用いることができ、インクとの接触面に、撥水剤の塗布などによる耐インク性処理が施されていることが好ましい。樹脂としては、市販のフィルムや押し出し成形されたフィルムを用いることができる。市販のフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエチレンなどのフィルム、またはこれらのフィルムを積層した積層フィルムを用いることができる。押し出し成形されたフィルムとしては、ポリエチレン、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸共重合体などのフィルム、またはこれらのフィルムを積層した積層フィルムを用いることができる。樹脂層は、接着剤層、無機物蒸着層、バリアコート層などの他の層を具備していてもよい。金属箔としては、アルミニウム箔、チタン箔等の金属箔、アルミニウム合金箔、ステンレス箔等の合金箔を用いることができる。
【0015】
図4(a)は参考例1の蓋材24の平面図である。蓋材24には、蓋材24を破断する際の起点となる易破断線243が形成されている。易破断線243は蓋材24の他の部位と比べて破断しやすい線状部である。易破断線243は蓋材24の厚さより浅い深さの溝ないし切り込みであり、蓋材24の表面に連続的なラインとして形成される。易破断線243は線状に形成される限り他の構成を有してもよく、例えばミシン目で構成されてもよい。易破断線243は、ロータリーダイカッター、レーザー光照射等によって形成することができる。易破断線243の切り込みは、蓋材24のノズル部材22と対向する面241aと、液体貯蔵部21と対向する面241b(
図3(b)参照)のいずれにも形成することができるが、より好ましくは、液体貯蔵部21と対向する面241bに形成される。蓋材24の破断は、後述するようにノズル部材22と対向する面241aへの接触ないし圧力が契機となって生じる。易破断線243の切り込みが液体貯蔵部21と対向する面241bに形成されることで、切り込みが広がるように蓋材24が変形する。このため、蓋材24が易破断線243に沿って破断しやすくなる。
【0016】
未開封の液体貯蔵容器2からインクタンク12にインクを充填する際は、液体貯蔵部21に接合された蓋材24を易破断線243に沿って破断する。蓋材24が易破断線243に沿って破断されることによって、液体貯蔵部21の開口部213の密閉性が破られ液体貯蔵部21の内部と外部が連通する。蓋材24は、蓋材24を押し込む部材を用いて破断する。このような部材として、例えば、開封用の突起を有する部材、棒状の部材などが挙げられる。ノズル部材22の内側に円筒状の突起を設けてもよい。インクタンク12の連通流路122の周囲に、蓋材24の破断が可能な部位を設けてもよい。あるいは、連通流路122自体を蓋材24の破断具として用いてもよい。利用者が蓋材24を手で剥離する必要がないため、手が汚れないように作業することが容易である。蓋材24の破断位置は易破断線243の配置によって決まるため、蓋材24を破断するのに用いる部材の形状や位置の精度は高いものである必要はない。
【0017】
図4(a)に示すように、易破断線243は全体として蓋材24の中心24A(開口部213の中心に一致する)に関し回転対象となっている。易破断線243は蓋材24の中心24Aを通る第1の部分2431と、第1の部分2431の両端にそれぞれ接続された一対の第2の部分2432と、を有している。第1の部分2431は蓋材24の中心24Aを挟んで対向する2つの点25A,25Bの間を直線状に延びており、その長さはほぼ蓋材24の直径に等しい。参考例1では一つの第1の部分2431によって蓋材24が2分割されているが、複数の第1の部分2431を設けることによって蓋材24を多分割してもよい。第1の部分2431が蓋材24の中心24Aを通るため、蓋材24の中心24Aに圧力を掛けることによって、蓋材24を、易破断線243を起点として確実に破断することができる。各第2の部分2432は周縁部214との複数の接点26を通って周縁部214に沿って延びている。接点26とは周縁部214の内周部2141と易破断線243の接点を意味する。第2の部分2432は複数の直線からなり、各直線は隣接する直線に対して接点26で角度を変えている。第2の部分2432は、周縁部214の内周部2141に位置する端部27で終端している。換言すれば、易破断線243は液体貯蔵部21の周縁部214の内部には形成されない。接点26の数ないし第2の部分2432を構成する直線の数は限定されず、隣接する直線同士がなす角度も同一でもよいし互いに異なっていてもよい。さらに、易破断線243は第1の部分2431の両端25A,25Bにそれぞれ接続された一対の第3の部分2433を有している。各第3の部分2433は接点26を通ることなく、周縁部214の内周部2141に位置する他の端部27で終端している。第2の部分2432の端部27は第1の部分2431から離れている。蓋材24は冶具などによって液体貯蔵部21の内部に押し込まれるが、周縁部214の一部に接合されたままである。これによって、破断した蓋材24が液体貯蔵部21の内部に落下することが防止される。
【0018】
易破断線243と、端部27を通る周縁部214の接線28とは端部27において45°以下の角度θをなしている。同様に、易破断線243と、接点26を通る周縁部214の接線29とは接点26において45°以下の角度θをなしている。これらの角度θ(以下、接触角θという)は30°以下とするのがさらに好ましい。
図4(a)に示す例では、接触角θは第2の部分2432の端部27と接点26で30°、第3の部分2433の端部27で45°である。このように易破断線243を構成することの利点について比較例と比較しながら説明する。
【0019】
図7は比較例の易破断線1243を備える蓋材124の平面図である。易破断線1243は蓋材24の中心24Aから放射状に形成されている。また、易破断線1243は、周縁部214の内周部2141との交点30を通る周縁部214の接線28とほぼ直交している。このような易破断線1243を破断すると、蓋材24の破断線は周縁部214の内部に侵入しやすくなる。この結果、周縁部214上の蓋材24が部分的に剥離し、周縁部214に、蓋材24が剥離されて露出した周縁部214の表面と、剥離されないで残存した蓋材24とによる段差が生じる可能性が高まる。上述の通り、液体貯蔵容器2を使用するときは、まずノズル部材22を取り外し、蓋材24を破断し、再びノズル部材22を装着する。このため、周縁部214の表面に部分的に蓋材24が残存すると周縁部214の平滑性が低下し、液体貯蔵部21とノズル部材22との密着性が低下する。従って、利用者がインクをインクタンク12に注入するために液体貯蔵容器2を上下反転させたり傾けたりしたときにインク漏れが生じやすくなる。また、インクの残った液体貯蔵容器2を横向きや傾けた姿勢で長期保管する際にも、インクが漏れ出す可能性がある。
【0020】
これに対して参考例1では、接触角θが45°以下とされているため、易破断線243を破断した際に、蓋材24の破断線が周縁部214の内部に侵入しにくくなる。周縁部214上の蓋材24が剥離せず周縁部214の全周に渡って残存する可能性が高くなるため、周縁部214の平滑性ないし液体貯蔵部21とノズル部材22との密着性を確保するのが容易となる。そのため、ノズル部材22を液体貯蔵部21に再装着した後も、液体貯蔵容器2の高い密閉性を確保することができる。また、比較例において、蓋材24を周縁部214から完全に剥離できたとしても、周縁部214の剥離面は蓋材24の表面と比べて荒れている(表面粗さが大きい)ので、高い密閉性を確保することが困難な場合がある。本実施形態では、ノズル部材22を液体貯蔵部21に再装着した後にも、ノズル部材22と液体貯蔵部21は、好ましくは全周で蓋材24を介して密着するため、液体貯蔵容器2の高い密閉性を確保することができる。
【0021】
参考例1では蓋材24の周縁部214への貼り付け強度を高めることも可能である。一般に蓋材24の貼り付け強度を高くすると蓋材24を剥がしにくくなり、蓋材24が周縁部214上で裂けたり剥離面が荒れたりしやすくなる。逆に、蓋材24の貼り付け強度を低くすると、蓋材24を剥がしやすくなるが、密閉性の確保が困難となる。参考例1では、易破断線243を設けたことにより蓋材24を容易に破断でき、しかも蓋材24の破断線が周縁部214の内部に侵入しにくくなる。このため、蓋材24の周縁部214への貼り付け強度を高めるほうが液体貯蔵容器2の密閉性を確保する上で有利である。
【0022】
次に、
図4(b)~
図6を参照して、易破断線243の他の構成(第1~第3の実施形態及び参考例2,3)について説明する。これらの実施形態及び参考例では、
図4(a)に示す形態と異なり、易破断線243は周縁部214から離れている。換言すれば、易破断線243は周縁部214の内周部2141より内側にある。また、易破断線243の端部領域2430は、易破断線の端部27に向かって、周縁部214に近づかない方向に延びている。これによって、周縁部214の蓋材24が破断されにくくなり、周縁部214の平滑性を保つことが容易となる。また、これらの実施形態及び参考例では、易破断線243の少なくとも一部は曲線からなっている。
図4(a)に示すように易破断線243が角部を有する場合、角部を起点として易破断線243と異なる方向に新たな破断が発生する場合がある。易破断線243を曲線で構成することにより、破断の起点となる角部がなくなる。その結果、易破断線243を越えて破断が進行する可能性が低くなる。易破断線243の作成上、曲線の最小曲率は3mm以上とするのが好ましい。
【0023】
(参考例2)
図4(b)を参照すると、易破断線243は、蓋材24の中心24Aの両側を延び一端同士が曲線2434を介して接続された一対の第1の部分2431を有する。易破断線243はさらに、第1の部分2431の他端に曲線2435を介して接続され、周縁部214に沿って延びる一対の第2の部分2432を有する。端部領域2430は第2の部分2432の一部である。端部領域2430は、周縁部214の内側を、周縁部214の内周部2141に対して径方向に一定の間隔をあけて延びている。換言すれば、端部領域2430の接線は、蓋材24の中心24Aに関し当該接線の接点と同じ角度位置における接点を通る、周縁部214の内周部2141の接線と概ね平行である。蓋材24の破断が易破断線243を超えて進行しようとした場合にも、破断は概ね接線に沿って進行するため、周縁部214に侵入しにくくなる。本参考例の易破断線243は角部をもたず曲線だけで構成されているため、易破断線243を越えて破断が進行する可能性がさらに低下する。
【0024】
(第1の実施形態)
図5(a)を参照すると、易破断線243は、蓋材24の中心24Aを通る第1の部分2431と、第1の部分2431の両端に曲線2434を介して接続され、周縁部214に沿って延びる一対の第2の部分2432と、を有する。第1の部分2431は直線状に延びている。端部領域2430は第2の部分2432の一部であり、
図5(a)に示される通り、端部領域2430は端部に向かって周縁部214から次第に離れるようになっている。易破断線243は蓋材24の中心24Aに関して回転対称とされている。易破断線243が蓋材24の中心24Aを通るため、蓋材24の中心24A付近に圧力を掛けることによって蓋材24を容易に破断することができる。また、蓋材24の中心24A付近に圧力を掛けた場合、蓋材24の易破断線243の両側の部分が互いに反対方向に引きちぎられるため、蓋材24を容易に且つ安定して破断することができる。
【0025】
(参考例3)
図5(b)を参照すると、易破断線243は、蓋材24の中心24Aを通る第1の部分2431と、第1の部分2431の各端部25A,25Bにそれぞれ2つの第2の部分2432が接続された4つの第2の部分2432と、を有している。各第2の部分2432の第1の部分2431との接続部と反対側の端部領域2430は周縁部214に沿って延びている。易破断線243は蓋材24の中心24Aに関して回転対称である。蓋材24の中心24A付近に圧力を掛けた場合、破断は4つの第2の部分2432に沿って進行するため、蓋材24を容易に且つ安定して破断することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図6(a)を参照すると、複数の易破断線243が設けられ、複数の易破断線243が蓋材24の中心24Aで交差している。本実施形態では2つの易破断線243が設けられている。各易破断線243は蓋材24の中心24Aを通る直線状の第1の部分2431と、第1の部分2431の両端に曲線2434を介して接続された一対の第2の部分2432と、第2の部分2432に接続された第3の部分2433とを有する。第2の部分2432は第1の部分2431に対し概ね直交している。端部領域2430は第3の部分2433の一部である。
図6(a)に示す例では、第3の部分2433の曲率半径は3mmであり、液体貯蔵部21の開口部213の直径は25mmである。径の相違によって、第3の部分2433は端部に向かって周縁部214から離れるように構成される。複数の易破断線243は蓋材24の中心24Aに関して回転対称である。蓋材24の中心24A付近に圧力を掛けた場合、易破断線243を境に四方に引きちぎられるため、蓋材24を容易に且つ安定して破断することができる。
【0027】
(第3の実施形態)
図6(b)を参照すると、複数の易破断線243は一対の易破断線243であり、各易破断線243は概ねS字状の曲線である。特に、易破断線243は2つの円弧を組み合わせた形状であるのが好ましい。易破断線243の端部領域2430は周縁部214との最近接点31を通り、最近接点31から端部27に向かうにつれて周縁部214から離れていく。複数の易破断線243は蓋材24の中心24Aに関して回転対称である。易破断線243が円弧で形成されているため、易破断線243を越えて破断が進行しにくい。また、易破断線243が最近接点31を過ぎると周縁部214から離れていくため、一層周縁部214での破断が生じにくくなる。一例では円弧の直径は11mmとである。本実施形態は破断後の状態が最も良好であり、インク注入や長期保管時にインク漏れが最も生じにくい。
【0028】
以上説明した実施形態と各参考例を組み合わせることもできる。例えば、
図4(a)に示す易破断線243は直線だけで構成されているが、角部などを曲線にすることもできる。同様に、
図5(b)に示す易破断線243も角部を曲線にすることができる。
図4(b)~
図6(a)に示す易破断線243の端部領域2430を、
図6(b)に示すように、端部27に向けて周縁部214から径方向内側に離れる形状としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
2 液体貯蔵容器
21 液体貯蔵部
22 ノズル部材
24 蓋材
213 開口部
214 周縁部
243 易破断線