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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ハンガー及びハンガーセット
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/02 20060101AFI20240115BHJP
   A47G 25/32 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
A47G25/02 B
A47G25/32 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023133484
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505073705
【氏名又は名称】上野 英里子
(73)【特許権者】
【識別番号】323006792
【氏名又は名称】上野 紗菜
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 英里子
(72)【発明者】
【氏名】上野 紗菜
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-016499(JP,Y1)
【文献】特開2020-103781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 25/02
A47G 25/32
A47F 7/19
A47G 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガー及びハンガーラックを有するハンガーセットであって、
上記ハンガーは、
頭部及び当該頭部に延設された一対の肩部を有するハンガー本体と、
上記頭部に突設され、上記ハンガーラックと係合する係合ボスとを有し、
上記ハンガーラックは、
上記係合ボスが係合することにより上記ハンガー本体を吊り下げた状態で保持する係合ボス保持部を有し、
当該係合ボスと上記係合ボス保持部との間に、当該係合ボス保持部に対する上記係合ボスの相対回転を規制する回転規制機構が設けられており
上記回転規制機構は、
上記係合ボスの外形が所定の中心軸を有する多角柱を呈し、
上記係合ボス保持部に上記係合ボスが嵌合する多角形の嵌合孔が設けられることにより構成されている、ハンガーセット。
【請求項2】
上記係合ボスは、上記中心軸に直交する断面の面積が当該中心軸に沿って漸次変化する錐体を呈する、請求項1に記載のハンガーセット。
【請求項3】
上記ハンガーラックは、天板を有し、
複数の上記係合ボス保持部が上記天板に並設されている、請求項1または2に記載のハンガーセット。
【請求項4】
上記頭部と上記係合ボスとの境界に頸部が形成されており、
上記天板は、当該天板の縁に開口し且つ上記係合ボス保持部に連通する案内溝が設けられている、請求項3に記載のハンガーセット。
【請求項5】
上記係合ボスは、表示版を備えている、請求項1または2に記載のハンガーセット。
【請求項6】
請求項1に記載のハンガーセットに適用されるハンガーであって、
頭部及び当該頭部に延設された一対の肩部を有するハンガー本体と、
上記頭部に突設され、上記ハンガーラックと係合する係合ボスとを有し、
上記係合ボスの外形が所定の中心軸を有する多角柱を呈する、ハンガー。
【請求項7】
上記係合ボスは、上記中心軸に直交する断面の面積が当該中心軸に沿って漸次変化する錐体を呈する、請求項6に記載のハンガー。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衣類等を掛けるためのハンガーの構造、並びに衣類等を展示ないし収納するためのハンガーセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣服を傷めないように吊るし、あるいは家具に収納するために、従来ハンガーが使用されている(たとえば特許文献1参照)。一般的なハンガーの構造は、衣服が掛けられる本体と、この本体に設けられたフックとを有する。このフックは、上記本体の頂部に突設され、鉤状を呈する。
【0003】
従来のフックは、通常、線材が鉤状に湾曲形成されている。そのため、たとえば複数のハンガーが並べられたときに、隣り合うフック同士が絡み合ったり、一のハンガーのフックが他のハンガーに掛けられた衣服に引っ掛かったりすることがある。このような不都合を回避するために、フックの形状が変更され、このフックを保持するアンカー部材を備えたハンガーセットが提案されている(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-123698号公報
【文献】特開2006-230946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このハンガーセットは、従来のフックに代えて球状の頭部を有するハンガーと、アンカー部材としてのハンガーポールとを備えている。このハンガーポールに複数の挿入孔が設けられており、各挿入孔は、所定の間隔で並設されている。これら挿入孔に上記球状の頭部が係合すると、ハンガーポールに複数のハンガーが上記所定の間隔で整列する。これにより、ハンガー同士の絡み合いや、ハンガーに掛けられた衣服が隣り合うハンガーのフックに引っ掛かることが防止される。
【0006】
ところで、たとえばブティックにおいては、衣服を単に並べるだけでなく、所要の姿勢で安定させて展示させたいという要請がある。
【0007】
しかしながら、従来のハンガーセットでは、複数のハンガーが所定間隔で並設されても、これに掛けられた衣服を一定の姿勢で保持することができず、上記要請に応えられないばかりか、衣服の姿勢が乱れて見苦しい陳列となるおそれもあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、衣類を美しく陳列することができるハンガーセット、およびこのハンガーセットに適用されるハンガーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 上記課題を解決するための本発明に係るハンガーセットは、ハンガー及びハンガーラックを備えており、上記ハンガーは、頭部及び当該頭部に延設された一対の肩部を有するハンガー本体と、上記頭部に突設され、上記ハンガーラックと係合する係合ボスとを有する。上記ハンガーラックは、上記係合ボスが係合することにより上記ハンガー本体を吊り下げた状態で保持する係合ボス保持部を有する。上記係合ボスと上記係合ボス保持部との間に、当該係合ボス保持部に対する上記係合ボスの相対回転を規制する回転規制機構が設けられている。
【0010】
この構成によれば、ハンガーの頭部に突設された係合ボスが、ハンガーラックに設けられた係合ボス保持部に係合し、これにより、ハンガー本体は、ハンガーラックに吊り下げられた状態となる。このとき、上記回転規制機構により、上記係合ボス保持部に対する上記係合ボスの相対回転が規制されるので、ハンガーラックに吊り下げられたハンガー本体が回転することはない。その結果、ハンガーに掛けられた衣類は、ハンガーラックに対して位置ずれや姿勢変化を起こすことなく美しく陳列される。
【0011】
(2) 上記回転規制機構は、上記係合ボスの外周面の少なくとも一部に曲面が形成されると共に当該曲面の一部に対して屈曲された係合平面が形成され、さらに、上記曲面及び係合平面が当接した状態で上記係合ボスが嵌合する嵌合部が上記係合ボス保持部に設けられることにより構成される。
【0012】
この場合、上記係合ボスが上記係合ボス保持部に係合すると、上記係合ボスに形成された曲面及び係合平面は、上記係合ボス保持部に設けられた嵌合部と当接する。このように曲面及びこれに対して屈曲して形成された平面が上記嵌合部と当接するので、上記係合ボス保持部に対する上記係合ボスの相対回転が、簡単に且つ確実に規制される。
【0013】
(3) 上記回転規制機構は、上記係合ボスの外形が所定の中心軸を有する多角柱を呈し、上記係合ボス保持部に上記係合ボスが嵌合する多角形の嵌合孔が設けられることにより構成される。
【0014】
この場合、上記係合ボスは、上記係合ボス保持部に設けられた嵌合孔に嵌め込まれる。このとき、上記中心軸が上記嵌合孔の中心と一致するように、上記係合ボスが上記嵌合孔に嵌め込まれる。上記係合ボスの外形は多角柱状であるから、上記係合ボスは、上記嵌合孔の内周面と面接触する。これにより、上記係合ボス保持部に対する上記係合ボスの相対回転が、簡単に且つ確実に規制される。
【0015】
(4) 上記係合ボスは、上記中心軸に直交する断面の面積が当該中心軸に沿って漸次変化する錐体を呈するのが好ましい。
【0016】
この構成では、上記係合ボスが上記中心軸に沿って上記嵌合孔に挿入されるだけで、当該係合ボスが当該嵌合孔に簡単に嵌め合わされる。
【0017】
(5) 上記ハンガーラックは、天板を有し、複数の上記係合ボス保持部が上記天板に並設されていてもよい。
【0018】
この構成では、複数のハンガーがハンガーラックに並べられた状態で吊り下げられる。したがって、各ハンガーに掛けられた衣類は、ハンガーラックに対して位置ずれや姿勢変化を起こすことなく美しく整列される。
【0019】
(6) 上記頭部と上記係合ボスとの境界に頸部が形成されていてもよい。その場合、上記天板は、当該天板の縁に開口し且つ上記係合ボス保持部に連通する案内溝が設けられているのが好ましい。
【0020】
この構成では、上記係合ボスが上記嵌合孔に挿入される際に、上記頸部が上記案内溝に沿って上記嵌合孔に案内される。すなわち、上記係合ボスは、簡単に上記嵌合孔と位置合わせされ、当該嵌合孔と嵌め合わされる。
【0021】
(7) 上記係合ボスは、表示版を備えているのが好ましい。
【0022】
この構成では、上記表示板にたとえば特定の商標等が表示される。
【0023】
(8) 上記課題を解決するための本発明に係るハンガーは、上記ハンガーセットに適用されるハンガーであって、頭部及び当該頭部に延設された一対の肩部を有するハンガー本体と、上記頭部に突設され、上記ハンガーラックと係合する係合ボスとを有する。上記係合ボスの外周面の少なくとも一部に曲面が形成されると共に、当該曲面の一部に対して屈曲された係合平面が形成されている。
【0024】
この構成によれば、ハンガーの頭部に突設された係合ボスが、ハンガーラックに設けられた係合ボス保持部に係合することにより、ハンガー本体は、ハンガーラックに吊り下げられる。このとき、上記係合ボスに形成された曲面及び係合平面は、上記係合ボス保持部と当接する。この曲面及び当該曲面に対して屈曲形成された平面が上記係合ボス保持部と当接するので、上記係合ボス保持部に対する上記係合ボスの相対回転が、簡単に且つ確実に規制される。その結果、ハンガーに掛けられた衣類は、ハンガーラックに対して位置ずれや姿勢変化を起こすことなく美しく陳列される。
【0025】
(9) 上記課題を解決するための本発明に係るハンガーは、上記ハンガーセットに適用されるハンガーであって、頭部及び当該頭部に延設された一対の肩部を有するハンガー本体と、上記頭部に突設され、上記ハンガーラックと係合する係合ボスとを有する。上記係合ボスの外形は、所定の中心軸を有する多角柱を呈する。
【0026】
この構成によれば、ハンガーの頭部に突設された係合ボスが、ハンガーラックに設けられた係合ボス保持部に係合することにより、ハンガー本体は、ハンガーラックに吊り下げられる。上記係合ボスの外形は多角柱状であるから、上記係合ボスは、上記係合ボス保持部と面接触する。これにより、上記係合ボス保持部に対する上記係合ボスの相対回転が、簡単に且つ確実に規制される。その結果、ハンガーに掛けられた衣類は、ハンガーラックに対して位置ずれや姿勢変化を起こすことなく美しく陳列される。
【0027】
(10)上記係合ボスは、上記中心軸に直交する断面の面積が当該中心軸に沿って漸次変化する錐体を呈するのが好ましい。
【0028】
この構成では、上記係合ボスが上記中心軸に沿って移動されるだけで、上記係合ボス保持部と簡単に嵌め合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るハンガーセット10の外観斜視図である。
図2図2は、ボス13の斜視図である。
図3図3は、ボス13の形状を示す図である。
図4図4は、ハンガーラック12の天板41の要部拡大斜視図である。
図5図5は、天板41の拡大平面図である。
図6図6は、実施形態の第1変形例に係るハンガーラック62の斜視図である。
図7図7は、実施形態の第2変形例に係るハンガーラック91の要部斜視図である。
図8図8は、実施形態の第3変形例に係るハンガーラック65の斜視図である。
図9図9は、実施形態の第4変形例に係るボス13の本体70の斜視図である。
図10図10は、実施形態の第5変形例に係るボス13の本体80の形状を示す図である。
図11図11は、実施形態の第6変形例に係るボス13の本体90の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係るハンガーセットの一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0031】
1.ハンガーセットの概要
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係るハンガーセット10の外観斜視図である。
【0033】
このハンガーセット10は、ハンガー11と、ハンガーラック12とを備える。同図では単一のハンガー11が示されているが、一般に複数のハンガー11がハンガーラック12に吊り下げられる。
【0034】
本実施形態に係るハンガーセット10の特徴とするところは、次の3点である。すなわち、ハンガー11は、従来のフックではなくボス13(特許請求の範囲に記載された「係合ボス」に相当)を備えている点、ハンガーラック12にシート部14(特許請求の範囲に記載された「係合ボス保持部」に相当)が形成されている点、ボス13およびシート部14の外形が後述される形状に成形されることにより、両者の相対回転を規制する回転規制機構15が構成されている点、である。後に詳述されるが、このハンガーセット10は、典型的には、ブティック等の店内に設置されるものであり、上記回転規制機構15を備えることにより、洋服が掛けられたハンガー11がハンガーラック12に吊り下げられると、ハンガー11の姿勢、すなわち洋服の姿勢が維持されて、洋服が美しく陳列される。
【0035】
2.ハンガーの構造
【0036】
ハンガー11は、たとえば洋服が掛けられるものであり、ハンガー本体16と、上記ボス13とを有する。ハンガー本体16の構造は既知であり、木材、樹脂、金属等で構成される。ハンガー本体16は、頭部17及び一対の肩部18を有し、各肩部18は、頭部17の両側から張り出すように延設されている。本実施形態形態では、各肩部18に溝19が設けられているが、溝19は省略されてもよい。
【0037】
図2は、ボス13の斜視図である。図3はボス13の形状を示す図であり、同図(a)は正面図、同図(b)は(a)におけるB-矢視図である。
【0038】
ボス13は、ハンガー本体16の頭部17に設けられ(図1参照)、上方に突出している。ボス13は、本体20および脚21(特許請求の範囲に記載された「頸部」に相当)を有する。
【0039】
本体20は、本体上部22および本体下部23とを有し、これらは一体的に形成されている。本体上部22の外形は六角柱であり、本体下部23の外形は六角錐である。本体上部22の高さ25は、本実施形態では15mmに設定され、本体下部23の高さ26は、本実施形態では、45mmに設定されている。もっとも、本体上部22の高さ25および本体下部23の高さ26は、適宜設計変更され得る。
【0040】
本体20は、中心軸24を有する立体的形状をなす。本体上部22は、中心軸24を中心とする六角柱であり、本体下部23は、中心軸24を中心とし、本体上部22に連続する六角錐である。本体20は、平面31~平面36を備え、これらのうち互いに隣り合う平面同士は、その境界で屈曲して連続する(図3(b)参照)。本体20の断面(特許請求の範囲に記載された「中心軸に直交する断面」に相当)の形状は正六角形であり、本体20の断面積(特許請求の範囲に記載された「中心軸に直交する断面の面積」に相当)は、中心軸24に沿って下方に向かって漸次縮小している。
【0041】
本体上部22は六角柱ではなく、本体下部23の上部に連続する錐体であってもよい。本体20の断面の形状は正六角形に限定されるものではなく、正多角形であればよい。もっとも、本体20の断面の形状は正多角形ではなく、一般に多角形が採用され得る。
【0042】
脚21は、円柱状の部材である。脚21は、本体20の下端に設けられ、下方に突出している。脚21の中心は、上記中心軸24と一致している。脚21の外径28は、本実施形態では6mmに設定されている。脚21の外径は特に限定されるものではないが、本体20の外形寸法に比べて小さい値に設定されていればよい。本実施形態では、脚21は金属からなり、脚21の周面にネジ27が形成されている。この脚21は、図1が示すように、ハンガー本体16の頭部17の頂点にねじ込まれて固定される。脚21の長さ29は、本実施形態では30mmに設定されている。ただし、脚21の長さ29は、特に限定されるものではない。
【0043】
脚21の形状は、円柱状に限定されるものではなく、柱状であればよい。上記ネジ27が省略されて、既知の固着手段により脚21がハンガー本体16に連結されていてもよい。脚21は、真直な棒状である必要はなく、湾曲していてもよい。脚21が省略されて本体20が直接にハンガー本体16に固定されていてもよい。その場合、ハンガー本体16に対して本体20が着脱自在であるのが好ましい。
【0044】
3.ハンガーラックの構造
【0045】
図1が示すように、ハンガーラック12は、天板41と、脚部42とを有する。なお、これらの図において、二点鎖線は、天板41および脚部42の一部の図示が省略されていることを示している。
【0046】
図4は、ハンガーラック12の天板41の要部拡大斜視図であり、図5は、天板41の拡大平面図である。
【0047】
天板41は、本実施形態では矩形の板部材からなる。天板41を構成する材料は、木材、樹脂、金属等が採用され得る。天板41の縁44に沿って、上記シート部15が設けられている。このシート部15は、同図が示すように、複数の係合溝43を備えている。これら係合溝43は、上記縁44に沿って所定の間隔で並設されている。各係合溝43は、案内溝45と、嵌合孔46(特許請求の範囲に記載された「嵌合部」に相当)とを有する。本実施形態では、複数の係合溝43が規則的に並んでいるが、隣り合う係合溝43間の間隔は一定でなくてもよいし、少なくとも一つの係合溝43が天板41に設けられていればよい。
【0048】
案内溝45は、天板41を上下方向に貫通している。案内溝45は、天板41の縁44に開口し、天板41の内側に延びている。案内溝45の幅47は、本実施形態では8mmに設定されている。ただし、この幅47は、上記ハンガー11の脚21の外径28(図3参照)よりも大きく設定されていればよい。案内溝45の長さ48は、本実施形態では50mmに設定されているが、特に限定されるものではない。
【0049】
嵌合孔46は、案内溝45に連続しており、天板41を上下方向に貫通している。嵌合孔46の内壁面形状は、正六角形であり、嵌合孔46の内壁面に6つの平面51~平面56が形成されている。この平面51~平面56によって形成される正六角形は、上記ボス13の本体20の外形形状に対応している(図3(b)参照)。すなわち、嵌合孔46の内壁面形状は、上記本体20の外形形状と相似の関係にあり、嵌合孔46のサイズは、上記本体20の外形サイズよりも小さく設定されている。なお、嵌合孔46の内壁面形状は、正六角形に限定されるものではなく、上記本体20の外形形状に対応して設計され得る。
【0050】
したがって、上記ボス13の本体20が嵌合孔46に挿入されると(図1参照)、上記本体20は、嵌合孔46を挿通することなく嵌め合わされる。上記嵌合孔46を形成する平面51~平面56(図4参照)のうち、互いに隣り合う二つの平面は、上記本体20に形成された平面31~平面36(図3(b)参照)と同様に、その境界で屈曲して連続するから、上記本体20の平面31~平面36(図3(b)参照)は、それぞれ、上記嵌合孔46を形成する平面51~平面56と面接触する。これにより、上記本体20は、嵌合孔46に対して中心軸24を中心として回転することが規制される。すなわち、上記本体20に形成された平面31~平面36及び嵌合孔46の内壁面を規定する平面51~平面56が、上記回転規制機構15を構成している。
【0051】
本実施形態では、上記6つの平面31~平面36が、それぞれ上記6つの平面51~平面56に対応して当接し、6つの平面対を構成する。ただし、これら6つの平面対のうち、少なくとも一つの平面対が形成されれば上記回転規制機構15が成立し、上記嵌合孔46に対する上記本体20の相対回転が規制される。具体的には、上記本体20の外形が正六角錐でなくても、上記平面31及び平面32が形成されており、且つ、上記嵌合孔46の内壁面形状が上記本体20に対応し且つ上記平面31及び平面32と面接触する平面51及び平面52が形成されていれば、上記回転規制機構15が構成され得る。
【0052】
図1が示すように、脚部42は、主柱47と石突48とを有する。主柱47は、天板41の下面に固定されており、天板41を支持する。石突48は、主柱47の下端に設けられ、主柱47を安定して直立させる。
【0053】
4.ハンガーセットの使用態様
【0054】
前述のように、このハンガーセット10(図1参照)は、たとえばブティックの店内に配置される。ハンガー11に洋服が掛けられた状態で、上記ボス13が、ハンガーラック12のシート部14に係合する。これにより、洋服は、ハンガー本体16と共にハンガーラック12に吊り下げられる。このとき、上記回転規制機構15により、ボス13は、シート部14に対して相対的に回転することが規制されるので、ハンガーラック12に吊り下げられたハンガー11が回転することはない。その結果、上記洋服は、ハンガーラック12に対して位置ずれや姿勢変化を起こすことはなく、美しく陳列される。
【0055】
本実施形態では、上記ボス13は、ハンガーラック12の嵌合孔46に嵌め込まれる。このとき、ボス13の中心軸24が嵌合孔46の中心と一致するように、ボス13が嵌合孔46に嵌め込まれる。ボス13の外形は正六角柱であるから、ボス13の外周面(平面31~平面36)は、嵌合孔の内周面(平面51~平面56)と面接触する。これにより、上記ボス13の回転は、簡単に且つ確実に規制される。
【0056】
図2および図3が示すように、本実施形態では、ボス13の断面積は中心軸24に沿って漸次変化し、ボス13は錐体を呈する。したがって、このボス13が上方から下方へ中心軸24に沿って嵌合孔46に挿入されるだけで、嵌合孔46に簡単に嵌め合わされる。つまり、ハンガー11をハンガーラック12に掛ける作業が容易である。
【0057】
本実施形態では、図1が示すように、ハンガーラック12の天板41に複数の嵌合孔46が並設されているから、複数のハンガー11がハンガーラック12に並べられた状態で吊り下げられる。したがって、複数の洋服がハンガーラック12に対して位置ずれや姿勢変化を起こすことなく美しく整列される。
【0058】
本実施形態では、ボス13に脚21が形成されているので、このボス13が嵌合孔46に挿入される際に、上記脚21が上記天板41に設けられた案内溝45に沿って案内される。したがって、ボス13と嵌合孔46と位置合わせが容易であり、その結果、ハンガー11をハンガーラック12に掛ける作業がより簡単になる。
【0059】
本実施形態では、図5が示すように、天板41の奥行き寸法57は大きく、たとえば500mm程度に設定され得る。天板41の奥行き寸法57が大きく設定されることによって、天板41に陳列領域58が形成される。洋服以外の他の商品等は、この陳列領域58に載置され得る。その結果、ハンガーラック12に陳列されている洋服に合わせて、アクセサリー等が天板41上に並べられる。
【0060】
5.変形例について
【0061】
図6は、本実施形態の第1変形例に係るハンガーラック62の斜視図である。
【0062】
この変形例に係るハンガーラック62が上記実施形態に係るハンガーラック12と異なるところは、ハンガーラック12は脚部42を備えており、天板41は脚部42に支持されているのに対し、ハンガーラック62は、リブ63を有し、このリブ63を介して天板41が壁64に固定されている点である。リブ63は、たとえば平板からなり、壁64に接着剤等を介して接着される。
【0063】
図7は、本実施形態の第2変形例に係るハンガーラック91の要部斜視図である。
【0064】
この変形例に係るハンガーラック91が上記実施形態に係るハンガーラック12と異なるところは、ハンガーラック12は天板41によりハンガー11のボス13を支持するのに対し、ハンガーラック91は、円筒棒92によりボス13を支持する点である。なお、同図では、脚部42の図示は省略されている。
【0065】
このハンガーラック91に上記係合溝43(図1参照)が設けられている。本変形例では、複数の係合溝43が円筒棒92の長手方向に並んでいる。具体的には、複数の嵌合孔46が並設されており、各嵌合孔46に案内溝45が連続している。各嵌合孔46および案内溝45は、円筒棒92を貫通している。各案内溝45は、円筒棒92の周面に沿って延びており、嵌合孔46と対向する位置(円筒棒92を半周する位置)まで延びている。本変形例では複数の係合溝43が設けられており、円筒棒92の長手方向に並んでいるが、単一の係合溝43が円筒棒92に設けられていてもよい。
【0066】
図8は、本実施形態の第3変形例に係るハンガーラック65の斜視図である。
【0067】
この変形例に係るハンガーラック65が上記実施形態に係るハンガーラック12と異なるところは、ハンガーラック12は天板41によりハンガー11のボス13を支持するのに対し、ハンガーラック65は、一対の支持部材66によりボス13を支持する点である。この支持部材66は、同図が示すような平板であり、V字状を成すように壁67に設けられている。一対の支持部材66は、その下端部同士の間に所定の隙間が形成されるように配置される。ボス13の脚21は、壁67に垂直な方向に沿って一対の支持部材66間に挿入される。この状態でボス13が下方に移動されると、同図が示すように、ボス13の本体20が一対の支持部材66に当接し支持される。
【0068】
図9は、本実施形態の第4変形例に係るボス13の本体70の斜視図である。
【0069】
前述のように、ボス13の本体20の断面形状(図2参照)は、正六角形に限定されない。同図(a)ないし(c)は、それぞれ、本体70の断面形状が正方形、正八角形、正三角形の場合を示している。ボス13の本体70がかかる形状であっても、上記嵌合孔46(図1参照)の内壁面形状は上記本体70の外形形状に対応されるので、上記本体70が上記嵌合孔46に嵌め合わされることによって、ハンガー11はハンガーラック12に吊り下げられ、しかも、ハンガー11の回転が防止される。
【0070】
図10は、本実施形態の第5変形例に係るボス13の本体80の形状を示す図である。同図(a)が正面図、同図(b)が平面図である。
【0071】
本変形例に係るボス13の本体80は、紡錘形の基材が仮想平面に沿って切断されたような形状である。すなわち、本体80の外周面81は曲面からなる。本体80は、軸線24に沿う仮想平面で切断され、本体80の一部に平面82(特許請求の範囲の範囲に記載された「係合平面」に相当)が形成されている。したがって、同図(b)が示すように、本体80の断面の形状は、D字状を呈し、上記曲面81に対して屈曲した状態で上記平面82が形成される。他方、ハンガーラック12の天板41に設けられた嵌合孔46の内壁面形状も、本体80の断面形状に対応してD字状に形成される。上記曲面81および上記平面82並びに上記嵌合孔46によって、上記回転規制機構15が構成される。
【0072】
本変形例では、ボス13が嵌合孔46に嵌め込まれると、上記曲面81及び上記平面82は、嵌合孔46の内壁面と当接する。このように曲面81およびこれに対して屈曲して形成された平面82が嵌合孔46の内壁面と当接するので、ボス13は、天板41に対して相対的に回転することが規制される。
【0073】
図11は、本実施形態の第6変形例に係るボス13の本体95の形状を示す斜視図である。
【0074】
本変形例に係るボス13の本体95は、表示板85を備えている。この表示板85は、樹脂や金属等からなり、その外形形状は特に限定されるものではない。表示板85に洋服の情報やブランドロゴその他の商標等が表示される。表示板85は、たとえば接着剤等により本体95に接着することもできるし、本体95と一体的に形成されていてもよい。もっとも、この表示板85が省略されてもよい。表示板85が省略された場合であっても、上記ブランドロゴや商標等は、上記本体95(本体20)に表示され得る。
【符号の説明】
【0075】
10・・・ハンガーセット
11・・・ハンガー
12・・・ハンガーラック
13・・・ボス
14・・・シート部
15・・・回転規制機構
16・・・ハンガー本体
17・・・頭部
20・・・本体
21・・・脚
22・・・本体上部
23・・・本体下部
24・・・中心軸
31~36・・・平面
41・・・天板
43・・・係合溝
44・・・縁
45・・・案内溝
46・・・嵌合孔
51~56・・・平面
62・・・ハンガーラック
63・・・リブ
65・・・ハンガーラック
66・・・支持部材
70・・・本体
80・・・本体
81・・・外周面
82・・・平面
91・・・ハンガーラック
92・・・円筒棒
95・・・本体


【要約】
【課題】洋服を美しく陳列することができるハンガーセットを提供すること。
【解決手段】ハンガーセット10は、ハンガー11とハンガーラック12とを有する。ハンガー11は、ボス13を備える。ハンガーラック12にシート部14が形成される。ボス13の外形形状は六角錐であり、シート部14に嵌合孔46が設けられる。ボス13の外周面は6つの平面からなり、嵌合孔46の内壁面は6つの平面からなる。ボス13が嵌合孔46に嵌め込まれると、ボス13の回転が規制される。ハンガー11は、ハンガーラック12に対して姿勢が安定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11