(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】屈折率測定装置及び屈折率測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/45 20060101AFI20240115BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20240115BHJP
G01M 11/02 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G01N21/45 A
G01M11/00 L
G01M11/02 B
(21)【出願番号】P 2023517018
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017251
(87)【国際公開番号】W WO2022230193
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123962
【氏名又は名称】斎藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】富田 恵多
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-186117(JP,A)
【文献】特開2016-200461(JP,A)
【文献】特開2018-004409(JP,A)
【文献】特開2012-122763(JP,A)
【文献】特開2018-048914(JP,A)
【文献】特表2004-520599(JP,A)
【文献】特開2005-106706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-G01M 11/08
G01N 21/41-G01N 21/45
G01B 9/00-G01B 9/029
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可干渉光と低コヒーレンス光とを選択的に切り替えて出射する光源切替部を有する光源部と、
前記光源部からの光束を測定光束と参照光束とに分割する光束分割部と、
前記参照光束を参照ミラーに集光する第1の集光光学系を有する参照光学系と、
前記測定光束を測定用ミラーに集光する第2の集光光学系を有する測定光学系と、
前記参照光学系の光路内に設けられ、前記参照ミラーと前記第1の集光光学系を前記参照光学系の光軸に沿った方向に駆動する第1の走査ステージと、
前記測定光学系の光路内に設けられ、前記測定用ミラーと被検レンズを前記測定光学系の光軸に沿った方向に駆動する第2の走査ステージと、
前記参照光学系から戻る光束と前記測定光学系から戻る光束との干渉信号を検出する検出部と、
プロセッサと、を有し、
前記プロセッサは、
前記光源部からの光束を前記光源切替部により前記可干渉光に切り替え、前記参照光学系からの光束と、前記測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、前記参照光学系と前記測定光学系との光路長を調整する光路長調整部と、
前記参照光学系からの光束と、前記被検レンズを前記第2の走査ステージに保持している状態で前記被検レンズを透過した前記測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、前記被検レンズの中心厚さを算出する中心厚さ算出部と、
前記光源部からの光束を前記光源切替部により前記低コヒーレンス光に切り替え、前記被検レンズを前記第2の走査ステージに保持している状態で、前記参照光束と前記測定光束との干渉信号をフーリエ変換解析によってスペクトル位相を含む複素スペクトル信号に変換するフーリエ変換部と、
前記スペクトル位相を2階微分した演算結果を屈折率の分散式に対して非線形最小二乗法により適用し、前記分散式の係数を決定する屈折率算出部と、を有することを特徴とする屈折率測定装置。
【請求項2】
前記測定光学系と前記参照光学系とは、マイケルソン干渉計により形成され、
前記マイケルソン干渉計は、
前記参照ミラーの位置を測定する第1のレーザ測長器と、
前記測定用ミラーの位置を測定する第2のレーザ測長器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の屈折率測定装置。
【請求項3】
前記第2の走査ステージが、前記被検レンズを保持している場合、
前記プロセッサは、
前記光源切替部により前記光源部からの光束を前記低コヒーレンス光に切り替え、
前記第1の走査ステージを前記参照光学系の光軸方向に駆動することにより前記参照光束の光路長を変化させ、
前記検出部によって、前記参照光束と、前記被検レンズを透過し、前記測定用ミラーで反射した前記測定光束との干渉縞信号を測定することを特徴とする請求項1に記載の屈折率測定装置。
【請求項4】
前記第2の走査ステージが、前記被検レンズを保持している場合、
前記プロセッサは、
前記光源切替部により前記光源部からの光束を前記低コヒーレンス光に切り替え、
前記第1の走査ステージを固定することにより前記参照光束の光路長を一定にし、
前記検出部は分光器であり、
前記分光器によって、前記参照光束と、前記被検レンズを透過して前記測定用ミラーで反射した前記測定光束との周波数干渉信号を測定することを特徴とする請求項1に記載の屈折率測定装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第2の走査ステージに保持された前記被検レンズの中心厚さが所定の厚さ以上である場合、
前記光源切替部により前記光源部からの光束を前記低コヒーレンス光に切り替え、
前記第1の走査ステージを前記参照光学系の前記光軸方向に駆動することにより前記参照光束の光路長を変化させ、
前記検出部によって、前記参照光束と、前記被検レンズを透過し、前記測定用ミラーで反射した前記測定光束と、の干渉縞信号を測定し、
前記プロセッサは、
前記第2の走査ステージに載置された前記被検レンズの中心厚さが所定の厚さ以下である場合、
前記光源切替部により前記光源部からの光束を前記低コヒーレンス光に切り替え、
前記第1の
走査ステージを固定することにより前記参照光束の光路長を一定にし、
前記検出部である分光器によって、前記参照光束と、前記被検レンズを透過し、前記測定用ミラーで反射した前記測定光束と、の周波数干渉信号を測定することを特徴とする請求項1に記載の屈折率測定装置。
【請求項6】
可干渉光と低コヒーレンス光とを選択的に切り替えて出射する光源光供給工程と、
前記光源光供給工程による光束を測定光束と参照光束とに分割する光束分割工程と、
第1の集光光学系により前記参照光束を参照ミラー
に集光す
る参照光生成工程と、
第2の集光光学系により前記測定光束を測定用ミラーに集光す
る測定光生成工程と、
前記参照ミラーと前記第1の集光光学系を参照光学系の光軸に沿った方向に駆動する第1の走査工程と、
前記測定用ミラーと被検レンズを測定光学系の光軸に沿った方向に駆動する第2の走査工程と、
前記参照光生成工程により得られる光束と前記測定
光生成工程により得られる光束との干渉信号を検出する検出工程と、
前記光源光供給工程による光束を前記可干渉光に切り替え、前記参照光学系からの光束と、前記測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、前記参照光学系と前記測定光学系との光路長を調整する光路長調整工程と、
前記参照光学系からの光束と、
前記第2の走査工程において前記被検レンズを透過した前記測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、前記被検レンズの中心厚さを算出する中心厚さ算出工程と、
前記光源光供給工程による光束を前記低コヒーレンス光に切り替え、前記被検レンズを前記第2の走査工程において保持している状態で、前記参照光束と前記測定光束との干渉信号をフーリエ変換解析によってスペクトル位相を含む複素スペクトル信号に変換するフーリエ変換工程と、
前記スペクトル位相を2階微分した演算結果を屈折率の分散式に対して非線形最小二乗法により適用し、前記分散式の係数を決定する屈折率算出工程と、を有することを特徴とする屈折率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率測定装置及び屈折率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、曲面等を有する被検物の位相屈折率を高精度に計測するため、マイケルソン干渉光学系と低コヒーレンス光源を組み合わせ、その干渉信号を解析する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された屈折率計測装置では、被検物を、空気中および空気とは異なる位相屈折率を有する媒質、例えばマッチングオイル中に設置して、複数回の測定が必要である。このように、従来は、測定手順が複雑である、という問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、被検レンズの位相屈折率を高精度かつ簡素に測定できる屈折率測定装置及び屈折率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る屈折率測定装置は、可干渉光と低コヒーレンス光とを選択的に切り替えて出射する光源切替部を有する光源部と、光源部からの光束を測定光束と参照光束とに分割する光束分割部と、参照光束を参照ミラーに集光する第1の集光光学系を有する参照光学系と、測定光束を測定用ミラーに集光する第2の集光光学系を有する測定光学系と、参照光学系の光路内に設けられ、参照ミラーと第1の集光光学系を参照光学系の光軸に沿った方向に駆動する第1の走査ステージと、測定光学系の光路内に設けられ、測定用ミラーと被検レンズを測定光学系の光軸に沿った方向に駆動する第2の走査ステージと、参照光学系から戻る光束と測定光学系から戻る光束との干渉信号を検出する検出部と、プロセッサと、を有する。
【0007】
プロセッサは、光源部からの光束を光源切替部により可干渉光に切り替え、参照光学系からの光束と、測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、参照光学系と測定光学系との光路長を調整する光路長調整部と、参照光学系からの光束と、被検レンズを第2の走査ステージに保持している状態で被検レンズを透過した測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、被検レンズの中心厚さを算出する中心厚さ算出部と、光源部からの光束を光源切替部により低コヒーレンス光に切り替え、被検レンズを第2の走査ステージに保持している状態で、参照光束と測定光束との干渉信号をフーリエ変換解析によってスペクトル位相を含む複素スペクトル信号に変換するフーリエ変換部と、スペクトル位相を2階微分した演算結果を屈折率の分散式に対して非線形最小二乗法により適用し、分散式の係数を決定する屈折率算出部と、を有する。
【0008】
また、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る屈折率測定方法は、可干渉光と低コヒーレンス光とを選択的に切り替えて出射する光源光供給工程と、光源光供給工程による光束を測定光束と参照光束とに分割する光束分割工程と、第1の集光光学系により参照光束を参照ミラーに集光する参照光生成工程と、第2の集光光学系により測定光束を測定用ミラーに集光する測定光生成工程と、参照ミラーと第1の集光光学系を参照光学系の光軸に沿った方向に駆動する第1の走査工程と、測定用ミラーと被検レンズを測定光学系の光軸に沿った方向に駆動する第2の走査工程と、参照光生成工程により得られる光束と測定光生成工程により得られる光束との干渉信号を検出する検出工程と、光源光供給工程による光束を可干渉光に切り替え、参照光学系からの光束と、測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、参照光学系と測定光学系との光路長を調整する光路長調整工程と、参照光学系からの光束と、第2の走査工程において被検レンズを透過した測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、被検レンズの中心厚さを算出する中心厚さ算出工程と、光源光供給工程による光束を低コヒーレンス光に切り替え、被検レンズを第2の走査工程において保持している状態で、参照光束と測定光束との干渉信号をフーリエ変換解析によってスペクトル位相を含む複素スペクトル信号に変換するフーリエ変換工程と、スペクトル位相を2階微分した演算結果を屈折率の分散式に対して非線形最小二乗法により適用し、分散式の係数を決定する屈折率算出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検レンズの位相屈折率を高精度かつ簡素に測定できる屈折率測定装置及び屈折率測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の屈折率測定装置のシステム構成を示す模式的なシステム構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の屈折率測定装置のプロセッサの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における屈折率測定の一例を示すフローチャートである。
【
図4】被検レンズの中心厚さを算出する工程の一例を示すフローチャートである。
【
図5】(a)、(b)、(c)、(d)は、被検レンズの中心厚さを測定する構成を示す図である。
【
図6】(a)、(b)、(c)、(d)は、干渉縞に関する測定結果、演算結果を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態における屈折率測定の一例を示すフローチャートである。
【
図8】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は、第2実施形態の干渉縞に関する測定結果、演算結果を示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態における屈折率測定の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例の説明に先立ち、本発明のある態様にかかる実施形態の作用効果を説明する。なお、本実施形態の作用効果を具体的に説明するに際しては、具体的な例を示して説明することになる。しかし、後述する実施例の場合と同様に、それらの例示される態様はあくまでも本発明に含まれる態様のうちの一部に過ぎず、その態様には数多くのバリエーションが存在する。したがって、本発明は例示される態様に限定されるものではない。
【0012】
第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の屈折率測定装置(以下、「本実施形態の屈折率測定装置」という)は基本構成を有する。本実施形態の屈折率測定装置の基本構成について説明する。
【0013】
(屈折率測定装置の基本構成)
図1に示すように、本実施形態の屈折率測定装置100は、被検レンズ14の屈折率測定を行う装置である。被検レンズ14の種類は、特に限定されず、適宜の凸レンズ、凹レンズを採用することができる。以下では、一例として、両凸正レンズの場合の例で説明する。
【0014】
本実施形態に係る屈折率測定装置は、
可干渉光と低コヒーレンス光とを選択的に切り替えて出射する光源切替部を有する光源部と、
光源部からの光束を測定光束と参照光束とに分割する光束分割部と、
参照光束を参照ミラーに集光する第1の集光光学系を有する参照光学系と、
測定光束を測定用ミラーに集光する第2の集光光学系を有する測定光学系と、
参照光学系の光路内に設けられ、参照ミラーと第1の集光光学系を参照光学系の光軸に沿った方向に駆動する第1の走査ステージと、
測定光学系の光路内に設けられ、測定用ミラーと被検レンズを測定光学系の光軸に沿った方向に駆動する第2の走査ステージと、
参照光学系から戻る光束と測定光学系から戻る光束との干渉信号を検出する検出部と、
プロセッサと、を有する。
【0015】
プロセッサは、
光源部からの光束を光源切替部により可干渉光に切り替え、参照光学系からの光束と、測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、参照光学系と測定光学系との光路長を調整する光路長調整部と、
参照光学系からの光束と、被検レンズを第2の走査ステージに保持している状態で被検レンズを透過した測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、被検レンズの中心厚さを算出する中心厚さ算出部と、
光源部からの光束を光源切替部により低コヒーレンス光に切り替え、被検レンズを第2の走査ステージに保持している状態で、参照光束と測定光束との干渉信号をフーリエ変換解析によってスペクトル位相を含む複素スペクトル信号に変換するフーリエ変換部と、
スペクトル位相を2階微分した演算結果を屈折率の分散式に対して非線形最小二乗法により適用し、分散式の係数を決定する屈折率算出部と、を有する。以下、具体的に屈折率測定装置100を説明する。
【0016】
屈折率測定装置100は、光源部1、マイケルソン干渉計19、フォトダイオード23(検出部)、CMOSカメラ27(検出部)、分光器29(検出部)、プロセッサ30を有する。
【0017】
光源部1は、低コヒーレンス光を供給する低コヒーレンス光源1A、可干渉光を供給する単一周波数レーザ光源1B、集光レンズ2A、集光レンズ2B、シングルモードファイバ3と、可干渉光と低コヒーレンス光とを選択的に切り替えて出射する光源切替部4を有する。
【0018】
単一周波数レーザ光源1Bは、可干渉光を発生する構成であれば、特に限定されず、例えば、適宜波長のレーザ光源を採用することができる。低コヒーレンス光源1Aは、低コヒーレンス光を発生する構成であれば、特に限定されない。
【0019】
光源切替部4は、後述するプロセッサ30に電気的に接続され、プロセッサ30によって切替動作が制御される。光源切替部4の具体的な構成は、低コヒーレンス光源1A、単一周波数レーザ光源1Bの構成にもよるが、例えば、可動支持されたプリズム、遮光板で光路を遮る構成などを用いることができる。
【0020】
また、本実施形態に係る屈折率測定装置は、
測定光学系と参照光学系とは、マイケルソン干渉計により形成され、
マイケルソン干渉計は、
参照ミラーの位置を測定する第1のレーザ測長器と、
測定用ミラーの位置を測定する第2のレーザ測長器と、を有する。以下、具体的に説明する。なお、マイケルソン干渉計に限られず、他の干渉計(トワイマン・グリーン干渉計など)を用いることでもできる。
【0021】
光源部1からの光信号は、マイケルソン干渉計19に入射する。マイケルソン干渉計19は、偏光板6、ビームスプリッター(光束分割部)7、参照光学系12、測定光学系18を有する。光束分割部は、光源部1からの光束を測定光束と参照光束とに分割する。
【0022】
参照光学系12は、第1の集光レンズ8(第1の集光光学系)、参照ミラー9、第1のレーザ測長器10、第1の走査ステージ11を有する。第1の集光レンズ8は、参照光束を参照ミラー9に集光する第1の集光光学系である。測定光学系18は、第2の集光レンズ13(第2の集光光学系)、被検レンズ14、測定用ミラー15、第2のレーザ測長器16、第2の走査ステージ17を有する。第2の集光レンズ13は、測定光束を測定用ミラー15に集光する第2の集光光学系である。
【0023】
参照光学系12と測定光学系18からの光信号は、集光レンズ20、絞り21を経て、ビームスプリッター22へ入射する。ビームスプリッター22の光路分割面を反射した光束は、フォトダイオード23に入射する。
【0024】
ビームスプリッター22の光路分割面を透過した光束は、開口絞り24、コリメーターレンズ25を経て、ビームスプリッター26へ入射する。ビームスプリッター26の光路分割面を透過した光束は、CMOSカメラ27に入射する。プロセッサ30は、CMOSカメラ27からの光干渉信号を解析する。
【0025】
また、ビームスプリッター26の光路分割面を反射した光束(周波数干渉信号)は、集光レンズ28を経て、分光器29に入射する。プロセッサ30は、周波数干渉信号を解析する。
【0026】
プロセッサ30は、光源切替部4、ステージコントローラ32、第1のレーザ測長器10、第2のレーザ測長器16、フォトダイオード23、CMOSカメラ27、分光器29、表示部31、操作部33に接続されて、制御を行う。
【0027】
低コヒーレンス光源1Aは、波長が広帯域であるレーザ光源である。低コヒーレンス光源1Aは、例えば、SLD(スーパールミネッセントダイオード)や光周波数コム光源が用いられる。低コヒーレンス光源1Aのコヒーレンス長、即ち光軸方向の分解能は、以下の式(1)によって表される。
【0028】
【0029】
例えば、低コヒーレンス光源1Aの中心波長λc=0.675μm、帯域Δλ=0.008μmのとき、コヒーレンス長ΔZcoh=26μmとなる。
【0030】
単一周波数レーザ光源1Bは、波長が狭線幅であるレーザ光源である。単一周波数レーザ光源1Bは、例えば、He-Neレーザ光源や半導体レーザ光源が用いられる。
【0031】
偏光板6は、コリメーターレンズ5から出射される平行光のうち、一方向の偏光成分のみを透過させる。
【0032】
プロセッサ30は、参照ミラー9と第1のレーザ測長器10との光路長Lc、測定用ミラー15と第2のレーザ測長器16との光路長Lcに対して、測定環境の温度T、湿度H、気圧Pをフィードバック制御する機構を搭載している。例えば、以下の式(2)のエドレンの式と測定環境の温度T、湿度H、気圧Pを用いることで、空気の屈折率nairを測定できる。
【0033】
【0034】
そして、以下の式(3)により光路長Lcを高精度に測定する。
【0035】
L0=Lc×nair 式(3)
ここで、
Lcは、光路長(mm)、
L0は、測長値(mm)、
nairは、空気の屈折率、である。
【0036】
マイケルソン干渉計19は、光源部1からの入射光を、ビームスプリッター7によって参照光と測定光との二つに分割する。
【0037】
ビームスプリッター7を反射した光束は、参照光学系12に入射する。集光レンズ8を透過した光は、参照ミラー9の表面に集光され、反射する。これにより、参照光を得る。
【0038】
また、ビームスプリッター7を透過した光束は、測定光学系18に入射する。集光レンズ13と被検レンズ14を透過した光は、測定用ミラー15の表面に集光され、反射する。これにより、測定光を得る。
【0039】
参照光と測定光は、進行してきた光路を戻り、再びビームスプリッター7で重ね合わせられ、集光レンズ20に入射する。
【0040】
第1の走査ステージ11、第2の走査ステージ17は、ステージコントローラ32に接続されている。プロセッサ30は、ステージコントローラ32を制御する。
【0041】
第1の走査ステージ11は、集光レンズ8と参照ミラー9を駆動する。第2の走査ステージ17は、測定用ミラー15を駆動する。また、第1のレーザ測長器10は、第1の走査ステージ11の移動量を測定する。第2のレーザ測長器16は、第2の走査ステージ17の移動量を測定する。
【0042】
プロセッサ30は、ステージコントローラ32を介して、第1の走査ステージ11、第2の走査ステージ17のステージ移動量を約1MHzから100kHzのサンプリング周期で高精度に測定する。
【0043】
後述する屈折率測定工程において縞走査法(フリンジスキャン法)を行う。このため、少なくとも測定光学系の光軸に沿う方向において、単一周波数レーザ光源1Bの光束の波長の1波長分程度の移動範囲では、この波長を複数に等分して移動することができる移動精度が必要である。本実施形態では、第1の走査ステージ11は、例えば、ピエゾ素子などによって駆動される微小移動機構を併せて有する。
【0044】
プロセッサ30には、干渉縞画像の映像、画像処理された画像データ、および算出された数値データ等を表示する表示部31が接続されている。表示部31は、検出部(フォトダイオード23、CMOSカメラ27、分光器29)が撮像した映像を常時表示していてもよいが、識別可能な干渉縞の発生を検知した場合のみ、映像を写し出すようにしてもよい。
【0045】
フォトダイオード23は、光信号を電気信号に変換する検出器である。フォトダイオード23は、例えば、バランス検出器を用いる。これにより、高精度に低コヒーレンス干渉の信号強度を測定できる。
【0046】
図2は、プロセッサ30が有する測定制御部150の機能構成を示す。測定制御部150は、屈折率測定装置100の動作制御や屈折率測定のための演算を行う。測定制御部150は、光路長調整部151と、中心厚さ算出部152と、フーリエ変換部153と、屈折率算出部154と、を有する。
【0047】
測定制御部150は、屈折率測定装置100の全体制御を行う。測定制御部150は、制御対象である光源部1と、第1の走査ステージ11と、第2の走査ステージ17と、ステージコントローラ32と、第1のレーザ測長器10と、第2のレーザ測長器16と、通信可能に接続されている。
【0048】
また、測定制御部150は、測定制御部150内の光路長調整部151と、中心厚さ算出部152と、フーリエ変換部153と、屈折率算出部154と、通信可能に接続される。測定制御部150は、それぞれに制御信号やデータを送出すること、及びそれぞれから演算結果を取得すること、ができる。
【0049】
例えば、第1のレーザ測長器10、第2のレーザ測長器16から送出された光路長情報は、測定制御部150を介して、光路長調整部151に送出される。
【0050】
また、検出部(フォトダイオード23、CMOSカメラ27、分光器29)から送出された波面の情報は、測定制御部150を介して、中心厚さ算出部152、フーリエ変換部153に送出される。
【0051】
また、測定制御部150は、屈折率測定装置100の動作を制御するために操作者が操作入力を行うための操作部33と、測定制御部150が行う制御や演算結果に関する情報を文字や画像等によって表示する表示部31が接続されている。
【0052】
操作部33は、例えば、キーボード、マウス、操作ボタン等の操作入力手段を有する。操作者が行う操作入力の例としては、屈折率測定装置100の起動、停止、測定種類の選択、第1の走査ステージ11、第2の走査ステージ17を駆動するための操作入力等を挙げることができる。各操作入力は、必要に応じて、制御信号や数値情報に換算されて、測定制御部150に送出される。
【0053】
光路長調整部151は、光源部1からの光束を光源切替部4により可干渉光に切り替え、参照光学系12からの光束と、測定光学系18からの光束と、の干渉信号とに基づいて、参照光学系12と測定光学系18との光路長を調整する。
【0054】
中心厚さ算出部152は、参照光学系12からの光束と、被検レンズ14を第2の走査ステージ17に保持している状態で被検レンズ14を透過した測定光学系18からの光束との干渉信号に基づいて被検レンズ14の中心厚さを算出する。
【0055】
フーリエ変換部153は、光源部1からの光束を光源切替部4により低コヒーレンス光に切り替え、被検レンズ14を第2の走査ステージ17に保持している状態で、検出部(フォトダイオード23、CMOSカメラ27、分光器29)により取得された参照光束と測定光束との干渉信号をフーリエ変換解析によってスペクトル位相を含む複素スペクトル信号に変換する。
【0056】
屈折率算出部154は、スペクトル位相を2階微分した演算結果を屈折率の分散式に対して非線形最小二乗法により適用し、分散式の係数を決定する。
【0057】
測定制御部150の装置構成は、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータである。このコンピュータによって、上述した説明した各機能に対応する制御プログラムや演算プログラムが実行されるようになっている。
【0058】
(第1実施形態)
図3、
図4のフローチャート(S101からS110、S201からS208)は、低コヒーレンス干渉縞のフーリエ変換解析を用いて、被検レンズ14の位相屈折率の計測、及び解析する処理を示している。
【0059】
図3のステップS101において、被検レンズ14の中心厚さを算出する。
後に説明する
図4は、被検レンズ14の中心厚さを算出する工程を示すフローチャートである。被検レンズ14の中心厚さを算出する工程は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態において、共通に使用する工程である。
【0060】
図4を用いて被検レンズ14の中心厚さを算出する工程を説明する。ステップS201において、光源切替部4は、光源部1からの光束を単一周波数レーザ光源1Bからの可干渉光に切り替えて出射する。
【0061】
ステップS201とステップS202において、ビームスプリッター7は、光源部1からの可干渉光を、分割面において透過する測定光束と、分割面において反射する参照光束とに分割する。
【0062】
ステップS203において、第1の集光レンズ8(第1の集光光学系)は、参照光束を参照ミラー9へ集光する。
【0063】
ステップS204において、第2の集光レンズ13(第2の集光光学系)は、測定光束を測定用ミラー15に集光する。
【0064】
ステップS205において、第1の走査ステージ11は、参照ミラー9と第1の集光レンズ8を、第1の集光レンズ8の光軸に沿った方向、即ち参照光学系12の光軸に沿った方向に駆動する。
【0065】
ステップS206において、第2の走査ステージ17は、測定用ミラー15と被検レンズ14を、第2の集光レンズ13の光軸に沿った方向、即ち測定光学系18の光軸に沿った方向に駆動する。
【0066】
ステップS207において、フォトダイオード23、CMOSカメラ27は、干渉信号を検出する。
【0067】
ステップS208において、中心厚さ算出部152は、被検レンズ14の中心厚さを算出する。
【0068】
次に、被検レンズ14の中心厚さLを測定する手順を
図5(a)、(b)、(c)、(d)を用いて、さらに詳しく説明する。
図5(a)、(b)、(c)、(d)は、測定光学系18における第2の集光ミラー12から第2の測長器16までの構成を示す。
【0069】
図5(a)に示すように、被検レンズ14を挿入しない状態において、参照光学系12内の第1の走査ステージ11と、CMOSカメラ27と、単一周波数レーザ光源1Bを使用する。第1の走査ステージ11を微小駆動することで、参照光束の位相を変化させ、縞走査法(フリンジスキャン法)による計測を行う。この状態の測長値をL
1とする。そして、以下の式(4)で示されるゼルニケ多項式(Fringe Zernike多項式)のZ
4項の係数を測定する。
【0070】
【0071】
ゼルニケ多項式は、単位円上で定義された直交多項式である。Z4項の係数は、デフォーカス量に関連している。
【0072】
図5(a)に示す第2の集光レンズ13の集光点13aと測定用ミラー15のデフォーカス量ΔZを、Fringe Zernike係数Z
4項を使用して、以下の式(5)によって算出する。
【0073】
【0074】
図5(b)に示すように、第2の走査ステージ17を算出したデフォーカス量ΔZに基づいて駆動する。第2の集光レンズ13の集光点13aを、測定用ミラー15の表面上に高精度に調整する。その際の、測定用ミラー15までの距離を測定する第2のレーザ測長器16の測長値をL
2とする。
【0075】
次に、
図5(c)に示すように被検レンズ14を挿入した状態で、第1の走査ステージ11とCMOSカメラ27と単一周波数レーザ光源1Bを使用して、縞走査法(フリンジスキャン法)による計測を行う。そして、式(3)で示されるゼルニケ多項式(Fringe Zernike多項式)のZ
4項の係数を算出する。
【0076】
第2の走査ステージ17は、被検レンズ14を固定、保持する不図示の保持部を有する。
【0077】
図5(c)に示すように、デフォーカス量ΔZと第2の走査ステージ17を使用し、第2の集光レンズ13の集光点13aを、被検レンズ14の表面上に高精度に調整する。その際の第2のレーザ測長器16の測長値をL
3とする。
【0078】
第2のレーザ測長器16の測長値L2、L3を使用することで、被検レンズ14の中心厚さLを以下の式(6)により、高精度に測定できる。
【0079】
L=L2―L3 式(6)
ここで
Lは、被検レンズ14の中心厚さ(mm)、
L2は、第2のレーザ測長器16の測長値(mm)、
L3は、第2のレーザ測長器16の測長値(mm)、である。
【0080】
そして、
図5(d)に示すように、被検レンズ14を挿入した際に、中心厚さLに基づいて第2の走査ステージ17を駆動する。CMOSカメラ27と単一周波数レーザ光源1Bを使用して、第2の集光レンズ13の集光点13aを、被検レンズ14と測定用ミラー15の境界面に高精度に合わせる。その際の、第2のレーザ測長器16の測長値をL
4とする。
【0081】
以上の手順により、被検レンズ14の中心厚さLを測定すること、かつ第2の集光レンズ13の集光点13aを被検レンズ14と測定用ミラー15の境界面に高精度に合わせることができる。
【0082】
(屈折率測定)
次に、
図3へ戻り、屈折率測定の手順をフローチャートにより説明する。
【0083】
本手順では、
第2の走査ステージが、被検レンズを保持している場合、
プロセッサは、
光源切替部により光源部からの光束を低コヒーレンス光に切り替え、
第1の走査ステージを参照光学系の光軸方向に駆動することにより参照光束の光路長を変化させ、
検出部によって、参照光束と、被検レンズを透過し、測定用ミラーで反射した測定光束との干渉縞信号を測定する。以下、具体的に説明する。
【0084】
ステップS101において、被検レンズ14の中心厚さを算出する。ステップS101では、上述のステップS201からステップS208の手順より中心厚さを算出する。
【0085】
ステップS102において、光源切替部4によって、コリメーターレンズ5から出射される光を、単一周波数レーザ光源1Bから低コヒーレンス光源1Aに、切り替える。コヒーレンス長は、上述の式(1)で示される。
【0086】
ステップS103において、初めに、ステージコントローラ32は、第1の走査ステージ11を、低コヒーレンス光源1Aによる低コヒーレンス干渉信号がCMOSカメラ27によって検出される位置まで、高速に駆動させ、停止させる。この時、参照光学系12の光路長と、測定光学系18の光路長は等しい。
【0087】
ステップS103において、次に、ステージコントローラ32は、第1の走査ステージ11を低速に駆動させる。そして、低コヒーレンス光源1Aによる低コヒーレンス干渉信号を、CMOSカメラ27もしくはフォトダイオード23によって取得する。この際、測定制御部150は、第1のレーザ測長器10を使用することで、低コヒーレンス干渉信号と、第1のレーザ測長器10との測長値の同期を取り、校正を行う。
【0088】
ステップS103における低コヒーレンス干渉縞の測定方法は、タイムドメイン-光コヒーレンストモグラフィ(TD‐OCT)である。
【0089】
ステップS104において、フーリエ変換部153は、
図6(a)に示す低コヒーレンス干渉信号をフーリエ変換して解析する。これにより、
図6(b)、(c)に示す複素スペクトル信号を得られる。
【0090】
図6(b)は、スペクトル振幅強度を示す。
図6(c)は、スペクトル位相φ(ω)を示す。
図6(c)のスペクトル位相φ(ω)は、信号が-πから+πで、折り返されている。このため、位相接合処理(位相アンラッピング)を行うことによって、
図6(d)に示すスペクトル位相φ(ω)が、位相接合された波形へと変換される。
【0091】
上述したスペクトル位相φ(ω)と位相屈折率np(ω)の関係式は、上述した被検レンズ14の中心厚さLを使用して、以下の式(7)によって表現される。
【0092】
【0093】
ステップS105、S106、S107、S108において、スペクトル位相φ(ω)を2階微分した結果を、例えば、以下の式(8)のセルマイヤー分散式に対して、非線形最小二乗法を適用する。
【0094】
【0095】
ステップS109、S110において、屈折率算出部154は、セルマイヤー分散式の係数を算出することで、可視から近赤外領域までの位相屈折率np(ω)を算出できる。
【0096】
ステップS105からステップS109に示す非線形最小二乗法は、Gauss‐Newton法である。これに限られず、例えば、Levenberg‐Marquardt法を使用しても良い。
【0097】
Levenberg‐Marquardt法は、一般的にGauss‐Newton法に比べ収束するまで、演算回数が多くなってしまう。しかしながら、Levenberg‐Marquardt法は、初期値が最適値から離れている場合においても、安定して収束できるという利点を有する。
【0098】
ステップS105において、上述した非線形最小二乗法に適用するために、上述の式(8)のセルマイヤー分散式の初期値A0、B0、C0、D0、E0、F0を設定する。なお、硝材の種類が判明している場合には、初期値として硝材のカタログ値(硝材メーカーから提供される値)もしくは理論値を入力する。
【0099】
ステップS106において、以下の式(9)で示される非線形最小二乗法アルゴリズムに対して、セルマイヤー分散式の初期値A0、B0、C0、D0、E0、F0を適用する。非線形最小二乗法アルゴリズムをn回繰り返したときの入力値を、An、Bn、Cn、Dn、En、Fnとする。
【0100】
【0101】
ステップS107において、非線形最小二乗法アルゴリズムの計算結果ΔAn、ΔBn、ΔCn、ΔDn、ΔEn、ΔFnと、設定した閾値との比較を行い、以下の条件を満足するかに関して判定する。
【0102】
閾値の条件の例を以下に示す。
ΔAn<10-5
ΔBn<10-5
ΔCn<10-5
ΔDn<10-5
ΔEn<10-5
ΔFn<10-5
【0103】
ステップS107の判定結果が偽(No)の場合、即ち非線形最小二乗法アルゴリズムの計算結果が、閾値を上回っていた場合、ステップS108に進む。ステップS108において、以下の式(10)に示される計算を行い、(n+1)回目の非線形最小二乗法アルゴリズムの入力値An+1、Bn+1、Cn+1、Dn+1、En+1、Fn+1が算出される。
【0104】
【0105】
ステップS106からS108を繰り返すことで、計算値が設定した閾値以下に収束する。そして、ステップS109においてセルマイヤー分散式の係数A、B、C、D、E、Fを算出する。
【0106】
ステップS110において、上述のセルマイヤー分散式の係数A、B、C、D、E、Fより、
図9に示すように、可視から近赤外領域の位相屈折率n
p(ω)を算出できる。
【0107】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る屈折率測定装置の測定手順について説明する。
図7は、周波数干渉縞のフーリエ変換位相解析を使用した、被検レンズ14の位相屈折率の計測および解析する処理を示すフローチャートである。
【0108】
本手順では、第2の走査ステージが、被検レンズを保持している場合、
プロセッサは、
光源切替部により光源部からの光束を低コヒーレンス光に切り替え、
第1の走査ステージを固定することにより参照光束の光路長を一定にし、
検出部は分光器であり、
分光器によって、参照光束と、被検レンズを透過して測定用ミラーで反射した測定光束との周波数干渉信号を測定する。以下、具体的に説明する。
【0109】
まず、ステップS301において、被検レンズ14の中心厚さLを測定する。中心厚さLを測定する手順は、既に
図3、
図4を用いて説明した手順と同じである。このため、重複する説明は省略する。
【0110】
ステップS302において、被検レンズ14の中心厚さLを測定した後、光源切替部4によって、コリメーターレンズ5から出射される光を、単一周波数レーザ光源1Bから低コヒーレンス光源1Aに、切り替える。
【0111】
ステップS303において、ステージコントローラ32は、第1の走査ステージ11を、低コヒーレンス光源1Aによる低コヒーレンス干渉信号が、CMOSカメラ27によって測定される位置まで、高速に駆動させ、停止させる。この時、参照光学系12の光路長と、測定光学系18の光路長とは等しくなる。低コヒーレンス光源1Aによる周波数干渉信号を分光器29によって取得する。
【0112】
ステップS303の測定方法は、フーリエドメイン-光コヒーレンストモグラフィ(FD-OCT)と呼ばれている。本実施形態では、第1実施形態におけるステップS103(
図3)のタイムドメイン-光コヒーレンストモグラフィ(TD-OCT)と異なり、測定する時に、第1の走査ステージ11を機械的に駆動させる必要がない。ただし、参照光学系12の光路長と、測定光学系18の光路長は等しくする必要がある。
【0113】
ステップS304では、
図8(a)に示す上述した周波数干渉信号をフーリエ変換位相解析する。周波数干渉信号を逆フーリエ変換すると、
図8(b)に示す直流成分と2つの交流成分(交流成分1と交流成分2)を有する時間軸の信号に変換できる。
【0114】
図8(c)は、交流成分1のみをバンドパスフィルターによって取り出し、前記交流成分1を時間軸の原点にシフトさせた信号を示す。
【0115】
図8(d)、(e)は、それぞれ、前記シフトさせた交流信号1をフーリエ変換したときの複素スペクトル信号を示す。
図8(d)は、スペクトル振幅強度を示す。
図8(e)は、スペクトル位相φ(ω)を示している。
【0116】
次に、
図8(e)に示すスペクトル位相φ(ω)は、信号が-πから+πで、折り返されているため、位相接合処理(位相アンラッピング)を行うことによって、
図8(f)に示すスペクトル位相φ(ω)は、位相接合された波形へと変換される。
【0117】
ステップS305からステップS309のセルマイヤー分散式の係数の算出の手順は、第1実施形態のステップS105からステップS109(
図3)と同じである。
【0118】
そして、ステップS310において、被検レンズ14の屈折率を算出する。
【0119】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る屈折率測定装置の測定手順について説明する。
図10は、周波数干渉縞のフーリエ変換位相解析を使用した、被検レンズ14の位相屈折率の計測および解析する処理を示すフローチャートである。
【0120】
本手順では、
プロセッサは、
第2の走査ステージに保持された被検レンズの中心厚さが所定の厚さ以上である場合、
光源切替部により光源部からの光束を低コヒーレンス光に切り替え、
第1の走査ステージを参照光学系の光軸方向に駆動することにより参照光束の光路長を変化させ、
検出部によって、参照光束と、被検レンズを透過し測定用ミラーで反射した測定光束と、の干渉縞信号を測定し、
プロセッサは、
第2の走査ステージに載置された被検レンズの中心厚さが所定の厚さ以下である場合、
光源切替部により光源部からの光束を低コヒーレンス光に切り替え、
第1の走査ステージを固定することにより参照光束の光路長を一定にし、
検出部である分光器によって、参照光束と、被検レンズを透過し測定用ミラーで反射した測定光束と、の周波数干渉信号を測定する。以下、具体的に説明する。
【0121】
まず、ステップS401において、被検レンズ14の中心厚さLを測定する。中心厚さLを測定する手順は、既に
図3、
図4を用いて説明した手順と同じである。このため、重複する説明は省略する。
【0122】
図10のフローチャートは、測定された被検レンズ14の中心厚さLをステップS401の判定条件により、低コヒーレンス干渉縞のフーリエ変換解析(S404、S405)、または周波数干渉縞のフーリエ変換位相解析(S406、S407)を使用し、位相屈折率を計測および解析する処理を示す。
【0123】
低コヒーレンス干渉縞のフーリエ変換解析(S404、S405)及びステップS408からステップS413は、第1実施形態で説明した処理を行う。
【0124】
周波数干渉縞のフーリエ変換位相解析(S406、S407)及びステップS408からステップS413は、第2実施形態で説明した処理を行う。
【0125】
ステップS403において、測定した被検レンズ14の中心厚さLの値が、5mm≦Lの場合は真(Yes)、5mm>Lの場合は偽(No)と判定する。
【0126】
ステップS403の判定結果が真の場合、ステップS404へ進む。ステップS403の判定結果が偽の場合、ステップS406へ進む。
【0127】
被検レンズ14の中心厚さLの値が、5mm≦Lの場合、分光器29で測定される周波数干渉縞の干渉縞間隔が、分光器29の波長分解能を超えてしまうおそれがある。干渉縞間隔が、分光器29の波長分解能を超える場合、高精度に周波数干渉縞を測定することができない。このため、ステップS404へ進む。一方で、5mm>Lの場合、測定時に第1の走査ステージ11の機械的な駆動が不要であるステップS406へと移行する。ステップS406へ進むことで、ステップS404へ進む場合と比較して、測定時間を短くすることが可能となる。
【0128】
このように、本実施形態によれば、被検レンズの中心厚さに対応して、高精度かつ短時間で被検レンズの屈折率を測定できる。
【0129】
上述した基本構成、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態に係る屈折率測定装置100により、以下の屈折率測定方法を行うことができる。
【0130】
屈折率測定方法は、
可干渉光と低コヒーレンス光とを選択的に切り替えて出射する光源光供給工程と、
光源光供給工程による光束を測定光束と参照光束とに分割する光束分割工程と、
第1の集光光学系により前記参照光束を参照ミラーに集光する参照光生成工程と、
第2の集光光学系により前記測定光束を測定用ミラーに集光する測定光生成工程と、
参照ミラーと第1の集光光学系を参照光学系の光軸に沿った方向に駆動する第1の走査工程と、
測定用ミラーと被検レンズを測定光学系の光軸に沿った方向に駆動する第2の走査工程と、
参照光生成工程により得られる光束と測定光生成工程により得られる光束との干渉信号を検出する検出工程と、
光源光供給工程による光束を可干渉光に切り替え、参照光学系からの光束と、測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、参照光学系と測定光学系との光路長を調整する光路長調整工程と、
参照光学系からの光束と、第2の走査工程において被検レンズを透過した前記測定光学系からの光束と、の干渉信号に基づいて、被検レンズの中心厚さを算出する中心厚さ算出工程と、
光源光供給工程による光束を低コヒーレンス光に切り替え、被検レンズを第2の走査工程において保持している状態で、参照光束と測定光束との干渉信号をフーリエ変換解析によってスペクトル位相を含む複素スペクトル信号に変換するフーリエ変換工程と、
スペクトル位相を2階微分した演算結果を屈折率の分散式に対して非線形最小二乗法により適用し、分散式の係数を決定する屈折率算出工程と、を有する。
【0131】
上述の屈折率測定方法は、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態において、フローチャートを用いて説明した屈折率を算出する工程である。
【0132】
上記の実施形態に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせを代えたり、削除したりして実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上のように、本発明は、被検レンズの位相屈折率を高精度かつ簡素に測定できる屈折率測定装置及び屈折率測定方法に有用である。
に適している。
【符号の説明】
【0134】
1 光源部
1A 低コヒーレンス光源
1B 単一周波数レーザ光源
2A、2B 集光レンズ
3 シングルモードファイバ
4 光源切替部
5 コリメーターレンズ
6 偏光板
7 ビームスプリッター
8 第1の集光レンズ
9 参照ミラー
10 第1のレーザ測長器
11 第1の走査ステージ
12 参照光学系
13 第2の集光レンズ
14 被検レンズ
15 測定用ミラー
16 第2のレーザ測長器
17 第2の走査ステージ
18 測定光学系
19 マイケルソン干渉計
20 集光レンズ
21 絞り
22 ビームスプリッター
23 フォトダイオード
24 開口絞り
25 コリメーターレンズ
26 ビームスプリッター
27 CMOSカメラ
28 集光レンズ
29 分光器
30 プロセッサ
31 表示部
32 ステージコントローラ
33 操作部
100 屈折率測定装置
150 測定制御部
151 光路長調整部
152 中心厚さ算出部
153 フーリエ変換部
154 屈折率算出部