(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 17/03 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
F16C17/03
(21)【出願番号】P 2023524012
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009730
(87)【国際公開番号】W WO2022249627
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2021087514
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 拓造
(72)【発明者】
【氏名】吉峰 千尋
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 善友
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/046404(WO,A1)
【文献】特開2016-217364(JP,A)
【文献】特開2000-274432(JP,A)
【文献】特開平06-026516(JP,A)
【文献】米国特許第5720558(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26,33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する回転軸を外周側から傾動可能に支持するとともに、周方向に間隔をあけて複数設けられている軸受パッドと、
前記軸受パッドの前記回転軸に対向するパッド面と前記回転軸の外周面との間に油を供給する給油部と、
を備え、
複数の前記軸受パッドは、
前記回転軸を前記軸線の直下で支持する第一軸受パッドと、
前記第一軸受パッドを前記回転方向から挟み込むように配置されている一対の第二軸受パッドと、
を含み、
前記第一軸受パッドと前記第二軸受パッドとのうち、前記第二軸受パッドの前記パッド面にのみ、前記回転方向に延びる溝が形成されている軸受装置。
【請求項2】
前記軸受パッドは、前記パッド面と該パッド面の反対側に位置する背面とを接続するとともに、前記軸線方向を向く一対の側面を有し、
前記溝は、
一方の前記側面に開口し、前記回転方向に延びるにつれて一方の前記側面から離間する第一溝と、
他方の前記側面に開口し、前記回転方向に延びるにつれて他方の前記側面から離間する第二溝と、
を含む請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記軸受パッドは、前記回転軸を前記軸線よりも上方側から支持するとともに、前記パッド面に前記溝が形成されている第三軸受パッドをさらに含む請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記溝は、前記パッド面に複数形成されている請求項1から3の何れか一項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置に関する。
本願は、2021年5月25日に日本に出願された特願2021-087514号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮機や蒸気タービン等の回転機械に用いられるLOP(Load On Pad)配置の軸受パッドを備える軸受装置が開示されている。軸受装置が支持する回転軸は、外部から加わる励振力の影響を受けて振動することがある。回転軸が振動して変位すると、回転軸を外側から囲む軸受ハウジングや軸受環は、油膜を介して外側に押される。その際、これら軸受ハウジング及び軸受環は、油膜反力を回転軸に返すことで回転軸の振動を減衰させるダンパとして機能する。
【0003】
特許文献1の軸受装置では、軸受ハウジングの周囲を囲む軸受環の水平方向の両側部に油溜まり部が形成されている。これにより、回転軸振動時に軸受環が回転軸に返す油膜反力の水平及び垂直方向成分の大きさを異ならせることができる。即ち、軸受パッドから回転軸へ向かう油膜反力の異方性を高めることができる。その結果、回転軸の振動安定性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転軸の振動安定性が向上すると、回転機械の回転数を上昇させることができる。しかしながら、回転機械の回転数が上昇すると、回転軸との摺動部分である油膜の温度が上昇し、軸受パッドの温度が従前よりも上昇してしまうという課題がある。
【0006】
また、軸受パッドがLOP配置の軸受装置である場合、回転軸の真下に配置される軸受パッドが回転軸に返す油膜反力は他の軸受パッドの油膜反力と比較して大きい。即ち、この軸受パッドの配置によっても、油膜反力の異方性を高めることができる。一方、回転軸の真下に配置されるこの軸受パッドにかかる荷重は、他の軸受パッドと比較して大きい。このため、回転軸の振動安定性が向上すると回転軸の真下の軸受パッドの温度が上昇してしまうという課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、回転軸の振動安定性を向上させつつ、軸受パッドの温度上昇を抑制することができる軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る軸受装置は、軸線回りに回転する回転軸を外周側から傾動可能に支持するとともに、周方向に間隔をあけて複数設けられている軸受パッドと、前記軸受パッドの前記回転軸に対向するパッド面と前記回転軸の外周面との間に油を供給する給油部と、を備え、複数の前記軸受パッドは、前記回転軸を前記軸線の直下で支持する第一軸受パッドと、前記第一軸受パッドを前記回転方向から挟み込むように配置されている一対の第二軸受パッドと、を含み、前記第一軸受パッドと前記第二軸受パッドとのうち、前記第二軸受パッドの前記パッド面にのみ、前記回転方向に延びる溝が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の軸受装置によれば、回転軸の振動安定性を向上させつつ、軸受パッドの温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る軸受装置の軸線と直交する方向の断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る軸受装置の第二軸受パッドの斜視図である。
【
図3】本開示の第一実施形態の第一変形例に係る第二軸受パッドの斜視図である。
【
図4】本開示の第一実施形態の第二変形例に係る第二軸受パッドの斜視図である。
【
図5】本開示の第二実施形態に係る軸受装置の第二軸受パッドの斜視図である。
【
図6】本開示の第二実施形態の変形例に係る第二軸受パッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
(軸受装置)
以下、本開示の実施形態に係る軸受装置について、図面に基づき説明する。
本実施形態の軸受装置は、圧縮機や蒸気タービン等の回転機械に用いられる軸受装置である。軸受装置は、上記回転機械の回転軸を回転可能に支持するラジアル軸受である。
図1に示すように、軸受装置10は、軸受パッド20と、ハウジング30と、ピボット軸40と、給油部50と、を備えている。
【0012】
(軸受パッド)
軸受パッド20は、軸線О方向に延びるとともに、該軸線О回りに回転する回転軸1を外周側から傾動可能に支持する部材である。本実施形態では、5つの軸受パッド20が回転軸1の周りの周方向に等間隔に設けられている。
軸受パッド20は、パッド面21と、背面22と、前側面23と、後側面24と、側面25と、を有している。
【0013】
パッド面21は、軸線О方向から見て径方向外側に凹み、所定の寸法を曲率半径とする一様な円弧形状をなすとともに、当該円弧形状を維持したまま軸線О方向に延在している内周面である。即ち、パッド面21は、径方向外側に凹となる円筒面状をなしている。パッド面21は、回転軸1の外周面1aと対向している。これにより、例えば回転軸1の回転時には、パッド面21と回転軸1の外周面1aとの間に区画される隙間に潤滑油としての油が供給され、該隙間に油膜が形成される。パッド面21は、当該油膜を介して回転軸1を外周側から摺動可能(回転可能)に支持している。
【0014】
本実施形態では、軸受パッド20の背面22を形成する外周側端部は、鋼材等から形成された基部(図示省略)とされている。基部には、例えばホワイトメタル等の軸受鋼が積層される。つまり、パッド面21は、軸受鋼が基部に積層されることにより形成されている。
【0015】
背面22は、パッド面21の反対側に位置しており、所定の寸法を曲率半径とする一様な円弧形状をなすとともに、当該円弧形状を維持したまま軸線О方向に延在している円筒面状の外周面である。即ち、背面22は、径方向外側に凸となる円筒面状をなしている。背面22の略中央には、径方向内側に向かって凹む凹部22aが形成されている。
【0016】
前側面23及び後側面24は、パッド面21と背面22とを接続するとともに、回転軸1の回転方向Tを向く面である。
側面25は、パッド面21、背面22、前側面23,及び後側面24を互いに接続するとともに、軸線О方向を向く一対の面である。
【0017】
上記のパッド面21、背面22、前側面23、後側面24、及び側面25により、軸受パッド20は、軸線Оに直交する断面視で周方向に円弧状に延びるとともに、パッド面21から背面22にかけての径方向の寸法が一様な湾曲板形状をなしている。
【0018】
軸受パッド20は、第一軸受パッド20aと、第二軸受パッド20bと、第三軸受パッド20cと、を含んでいる。第一軸受パッド20aは、回転軸1を軸線Оの直下で支持している。第二軸受パッド20bは、第一軸受パッド20aを回転軸1の回転方向Tから挟み込むように、一対が配置されている。第三軸受パッド20cは、回転軸1を軸線Оよりも上方側から支持している。本実施形態では、軸受パッド20は、一つの第一軸受パッド20a、二つの第二軸受パッド20b、及び二つの第三軸受パッド20cを含む。
【0019】
(第二軸受パッド)
図2に示すように、第二軸受パッド20bのパッド面21には、回転方向Tに延びる溝200が形成されている。より詳しくは、溝200は、前側面23から後側面24にかけて、パッド面21に沿って延びており、前側面23及び後側面24に開口している。本実施形態では、一つの溝200が第二軸受パッド20bのパッド面21に形成されている。
【0020】
(ハウジング)
図1に示すように、ハウジング30は、軸線Оを囲う環状をなし、回転軸1及び軸受パッド20を外周側から覆うとともに軸受パッド20を外周側から揺動可能に支持している。ハウジング30は、軸受パッド20の背面22よりも小さい一様な曲率で形成された円筒面状の内面30aを有する。本実施形態では、ハウジング30の内面30aは、軸受パッド20の背面22と線的に接触し、内面30a上で該軸受パッド20を揺動可能に支持している。これにより、ハウジング30と軸受パッド20との間で、いわゆるティルティング機構が構成されている。
【0021】
ハウジング30には、複数の給油孔31が周方向に等間隔に形成されている。本実施形態では、給油孔31は、ハウジング30の外面30bから内面30aにかけて該ハウジング30を径方向に貫通している。給油孔31は、軸受パッド20と同じ数が形成されている。ハウジング30の内面30aに形成されている給油孔31の開口部は、ハウジング30と回転軸1との間であり、かつ軸受パッド20同士の間に存在する空間に開口している。
【0022】
(ピボット軸)
ピボット軸40は、軸受パッド20をハウジング30の内面30a上で揺動可能に位置決めしている柱状の部材である。ピボット軸40は、ハウジング30の内部に設けられるとともに、軸受パッド20の背面22に形成されている凹部22a内に向かって径方向に延在している。即ち、ピボット軸40の端部は、ハウジング30の内面30aから径方向内側に向かって突出しているとともに、凹部22aに挿入されている。
【0023】
凹部22aに挿入されているピボット軸40の端部の外面と該凹部22aの内面との間には所定の大きさのクリアランスが存在している。したがって、回転機械運転中に軸受パッド20を揺動させる力が働いた際、軸受パッド20は、上記クリアランス分、ハウジング30の内面30a上で揺動することが可能である。
【0024】
(給油部)
給油部50は、軸受装置10の外部に存在する給油装置等(図示省略)から供給される潤滑油としての油を、ハウジング30の内部に供給するノズルである。給油部50は、ハウジング30の外部から内部に向かって径方向に延在している。より詳しくは、給油部50は、ハウジング30の外部から内部に延びる過程で、給油孔31の内部を通過している。給油部50の端部は、軸受パッド20同士の間に位置している。給油部50は、ハウジング30内部の空間で回転方向Tに向かって油を噴出する。
【0025】
(作用効果)
続いて、本実施形態に係る軸受装置10の動作について説明する。回転機械の運転により、回転軸1が回転すると、給油部50から回転軸1と軸受パッド20との間に油が供給される。そして、回転軸1の外周面1aと軸受パッド20のパッド面21とが区画する隙間は潤滑油で満たされ、油膜が形成される。これにより、回転軸1は、当該油膜を介してパッド面21によって摺動可能(回転可能)に支持される。
【0026】
ここで、本実施形態の軸受装置10では、一対の第二軸受パッド20bのそれぞれのパッド面21に溝200が形成されているため、パッド面21に溝200が形成されていない場合と比較して、パッド面21の面積が減少し、面圧が低下する。これにより、例えば、外部からの励振力が回転軸1に加わった際、回転軸1が油膜を介して軸受パッド20を押した時に受け取る油膜反力が低下する。一方、第一軸受パッド20aのパッド面21は、重力方向である軸線Оの直下から回転軸1を支持している構成であると同時に、パッド面21に上記溝200が形成されていない。即ち、第一軸受パッド20aのパッド面21から回転軸1に向かう油膜反力は第二軸受パッド20bから回転軸1に向かう油膜反力よりも大きい。つまり、軸受パッド20から回転軸1に向かう油膜反力の大きさを第一軸受パッド20aと第二軸受パッド20bとの間で異ならせることができる。したがって、回転機械運転中に回転軸1に生じる油膜反力の異方性を高めることができ、その結果、回転軸1の振動安定性を向上させることができる。
【0027】
また、給油部50から供給される油は、第二軸受パッド20bのパッド面21に形成された溝200の内部へ入り込む。これにより、第二軸受パッド20b内部を冷却することができるとともに、より多くの油をハウジング30と回転軸1との間に供給することができる。したがって、軸受パッド20の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
[第一実施形態の変形例]
第一実施形態の第一変形例として、例えば
図3に示す第二軸受パッド20bを採用してもよい。第一変形例では、上記第一実施形態に対して、第二軸受パッド20bのパッド面21に形成されている溝200の構成が異なる。
第一変形例では、溝200は、前側面23にのみ開口するとともに、該前側面23から後側面24に向かうパッド面21の中途位置まで該パッド面21に沿って延びている。
この構成によっても、上記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
第一実施形態の第二変形例として、例えば
図4に示す第二軸受パッド20bを採用してもよい。第二変形例では、上記第一実施形態に対して、第二軸受パッド20bのパッド面21に形成されている溝200の構成が異なる。
第二変形例では、溝200は、後側面24にのみ開口するとともに、該後側面24から前側面23に向かうパッド面21の中途位置まで該パッド面21に沿って延びている。
この構成によっても、上記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
[第二実施形態]
以下、本開示の第二実施形態に係る軸受装置について
図5を参照して説明する。第二実施形態で説明する軸受装置は、第二軸受パッドのパッド面に形成されている溝の構成のみが、第一実施形態に対して異なる。そのため、第一実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0031】
(第二軸受パッド)
第二軸受パッド20bのパッド面21には、回転方向Tに延びる溝210が形成されている。溝210は、第一溝200aと、第二溝200bと、を含んでいる。
第一溝200aは、軸線О方向を向く一対の側面25のうち、一方の側面25に開口し、回転方向Tに延びるにつれて一方の側面25から離間している。第二溝200bは、他方の側面25に開口し、回転方向Tに延びるにつれて他方の側面25から離間している。本実施形態では、第一溝200a及び第二溝200bの回転方向Tに延びた先のそれぞれの端部がパッド面21上で互いに接続され、一つの溝210を成している。つまり、溝210は、回転方向Tに延びるヘリングボーン形状でパッド面21に形成されている。本実施形態では、複数の溝210がパッド面21に形成されており、
図5では、三つの溝210が形成されている場合を例示している。なお、
図6に示すように、第一溝200a及び第二溝200bの回転方向Tに延びた先のそれぞれの端部は、パッド面21上で互いに近づいた状態で、互いに接続されていなくてもよい。
【0032】
(作用効果)
上記構成によれば、上記第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
一方、第二軸受パッド20bから回転軸1に向かう油膜反力が低下した場合には、回転軸1が外部励振力に起因しないアンバランス振動を引き起こす蓋然性が高まる。上記溝210が第二軸受パッド20bのパッド面21に形成されているため、アンバランス振動が生じた場合に、回転軸1から軸受パッド20にかかる力を打ち消す油膜反力をパッド面21から返すことができる。
【0033】
また、上記第二実施形態に係る軸受装置10では、第二軸受パッド20bのパッド面21に複数の溝210が形成されている。
これにより、上記作用効果をより高めることができる。
【0034】
[その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は各実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示は実施形態によって限定されることはなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【0035】
上記第一実施形態及び第一実施形態の変形例で説明した溝200は、第二軸受パッド20bのパッド面21に複数形成されていてもよい。これにより、上記第一実施形態で説明した作用効果をより高めることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、第三軸受パッド20cのパッド面21に溝200,210が形成されていてもよい。
上記構成によれば、給油部50から供給される油は、第三軸受パッド20cのパッド面21に形成された溝200,210の内部へ入り込む。これにより、第三軸受パッド20c内部を冷却することができるとともに、より多くの油をハウジング30と回転軸1との間に供給することができる。したがって、軸受パッド20の温度上昇を抑制することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、軸受パッド20が一つの第一軸受パッド20a、二つの第二軸受パッド20b、及び二つの第三軸受パッド20cを含む構成を説明したが、この構成に限定されることはない。軸受パッド20は、一つの第一軸受パッド20a、二つの第二軸受パッド20b、及び一つの第三軸受パッド20cを含む構成であってもよい。この際、これら第一軸受パッド20a、第二軸受パッド20b、及び第三軸受パッド20cは、周方向に等間隔に配置されてよい。即ち、第一軸受パッド20aが回転軸1の直下に配置され、一対の第二軸受パッド20bが回転軸1の真横に配置され、第三軸受パッド20cが回転軸1の直上に配置される構成であってよい。
【0038】
[付記]
実施形態に記載の軸受装置は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係る軸受装置10は、軸線О回りに回転する回転軸1を外周側から傾動可能に支持するとともに、周方向に間隔をあけて複数設けられている軸受パッド20と、前記軸受パッド20の前記回転軸1に対向するパッド面21と前記回転軸1の外周面1aとの間に油を供給する給油部50と、を備え、複数の前記軸受パッド20は、前記回転軸1を前記軸線Оの直下で支持する第一軸受パッド20aと、前記第一軸受パッド20aを前記回転方向Tから挟み込むように配置されている一対の第二軸受パッド20bと、を含み、前記第一軸受パッド20aと前記第二軸受パッド20bとのうち、前記第二軸受パッド20bの前記パッド面21にのみ、前記回転方向Tに延びる溝200,210が形成されている。
【0040】
上記構成によれば、一対の第二軸受パッド20bのそれぞれのパッド面21に溝200が形成されているため、溝200が形成されていない場合と比較して、パッド面21の面積が減少し、面圧が低下する。これにより、例えば、外部からの励振力が回転軸1に加わった際、回転軸1が油膜を介して軸受パッド20を押した時に受け取る油膜反力が低下する。一方、第一軸受パッド20aのパッド面21は、重力方向である軸線Оの直下から回転軸1を支持している構成であると同時に、溝200が形成されていない。即ち、第一軸受パッド20aのパッド面21から回転軸1に向かう油膜反力は第二軸受パッド20bから回転軸1に向かう油膜反力よりも大きい。つまり、軸受パッド20から回転軸1に向かう油膜反力の大きさを第一軸受パッド20aと第二軸受パッド20bとの間で異ならせることができる。また、給油部50から供給される油は、第二軸受パッド20bのパッド面21に形成された溝200の内部へ入り込む。これにより、第二軸受パッド20b内部を冷却することができるとともに、より多くの油をハウジング30と回転軸1との間に供給することができる。
【0041】
(2)第2の態様に係る軸受装置10は、(1)の軸受装置10であって、前記軸受パッド20は、前記パッド面21と該パッド面21の反対側に位置する背面22とを接続するとともに、前記軸線О方向を向く一対の側面25を有し、前記溝210は、一方の前記側面25に開口し、前記回転方向Tに延びるにつれて一方の前記側面25から離間する第一溝200aと、他方の前記側面25に開口し、前記回転方向Tに延びるにつれて他方の前記側面25から離間する第二溝200bと、を含んでもよい。
【0042】
上記構成によれば、上記と同様の作用効果を奏することができる。一方、第二軸受パッド20bから回転軸1に向かう油膜反力が低下した場合には、回転軸1が外部励振力に起因しないアンバランス振動を引き起こす可能性が高まる。溝210が第二軸受パッド20bのパッド面21に形成されているため、アンバランス振動が生じた場合に、回転軸1から軸受パッド20にかかる力を打ち消す油膜反力をパッド面21から返すことができる。
【0043】
(3)第3の態様に係る軸受装置10は、(1)又は(2)の軸受装置10であって、前記軸受パッド20は、前記回転軸1を前記軸線Оよりも上方側から支持するとともに、前記パッド面21に前記溝200,210が形成されている第三軸受パッド20cをさらに含んでもよい。
【0044】
上記構成によれば、給油部50から供給される油は、第三軸受パッド20cのパッド面21に形成された溝200,210の内部へ入り込む。これにより、第三軸受パッド20c内部を冷却することができるとともに、より多くの油をハウジング30と回転軸1との間に供給することができる。
【0045】
(4)第4の態様に係る軸受装置10は、(1)から(3)の何れかの軸受装置10であって、前記溝200,210は、前記パッド面21に複数形成されていてもよい。
【0046】
これにより、上記作用効果をより高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示の軸受装置によれば、回転軸の振動安定性を向上させつつ、軸受パッドの温度上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…回転軸 1a…外周面 10…軸受装置 20…軸受パッド 20a…第一軸受パッド 20b…第二軸受パッド 20c…第三軸受パッド 21…パッド面 22…背面 22a…凹部 23…前側面 24…後側面 25…側面 30…ハウジング 30a…内面 30b…外面 31…給油孔 40…ピボット軸 50…給油部 200,210…溝 200a…第一溝 200b…第二溝 О…軸線 T…回転方向