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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ばね部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/18 20060101AFI20240115BHJP
   F16F 1/26 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16F1/18 Z
F16F1/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023571450
(86)(22)【出願日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2023016145
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022072069
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】田島 典拓
(72)【発明者】
【氏名】米岡 篤志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033802(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064572(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/091824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/18-1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向で互いに対向する第1被押圧体および第2被押圧体を、互いが前記第1方向に離反する向きに押圧するばね部材であって、
第1部材および第2部材を有する複数のばねユニットを備え、
前記第1部材は、前記第2部材を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成され、
前記第1部材において、前記第1方向に直交する第2方向の両端部に、前記第1被押圧体に当接する第1当接部が形成されるとともに、前記第2方向の中間部に、前記第2被押圧体に当接する第2当接部が形成され、
前記第2部材において、前記第2方向の両端部が、前記第1当接部を介して前記第1被押圧体を押圧するとともに、前記第2方向の中間部が、前記第2当接部を介して前記第2被押圧体を押圧し、
複数の前記ばねユニットは、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に連ねられて設けられ、
複数の前記ばねユニットのうち、少なくとも1つの前記ばねユニットにおける前記第2方向の一端部は、このばねユニットと前記第3方向で隣り合う他の前記ばねユニットの前記第2方向の一端部に対して、前記第2方向にずれた位置に設けられている、ばね部材。
【請求項2】
前記第1部材および前記第2部材はそれぞれ、前記第2方向の中間部が、前記第2被押圧体側に向けて突出するように湾曲若しくは屈曲している、請求項1に記載のばね部材。
【請求項3】
複数の前記ばねユニットのうち、少なくとも1つの前記ばねユニットに、前記第3方向に突出した突出部が設けられ、
前記突出部は、前記第1部材と同一の材質で一体に形成された伝導部と、前記第2部材と同一の材質で一体に形成された支持部と、を備え、
前記伝導部における前記第3方向の先端部に、前記第1被押圧体、若しくは前記第2被押圧体に当接する第4当接部が形成され、
前記支持部における前記第3方向の先端部に、前記伝導部における前記第3方向の先端部が係止されている、請求項1または2に記載のばね部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばね部材に関するものである。
本願は、2022年04月26日に、日本に出願された特願2022-072069号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、第1方向で互いに対向する第1被押圧体と第2被押圧体との間に、第1被押圧体および第2被押圧体を、互いが第1方向に離反する向きに押圧した状態で設けられるばね部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2014-11936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のばね部材では、第1被押圧体および第2被押圧体のうちのいずれか一方から他方に向けて、電流を流したり、熱を伝えたりするのに用いようとすると、ばね部材の荷重特性を優先させた場合、ばね部材の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることが困難である。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができるばね部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のばね部材は、第1方向で互いに対向する第1被押圧体および第2被押圧体を、互いが前記第1方向に離反する向きに押圧するばね部材であって、第1部材および第2部材を有する複数のばねユニットを備え、前記第1部材は、前記第2部材を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成され、前記第1部材において、前記第1方向に直交する第2方向の両端部に、前記第1被押圧体に当接する第1当接部が形成されるとともに、前記第2方向の中間部に、前記第2被押圧体に当接する第2当接部が形成され、前記第2部材において、前記第2方向の両端部が、前記第1当接部を介して前記第1被押圧体を押圧するとともに、前記第2方向の中間部が、前記第2当接部を介して前記第2被押圧体を押圧し、複数の前記ばねユニットは、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に連ねられて設けられ、複数の前記ばねユニットのうち、少なくとも1つの前記ばねユニットにおける前記第2方向の一端部は、このばねユニットと前記第3方向で隣り合う他の前記ばねユニットの前記第2方向の一端部に対して、前記第2方向にずれた位置に設けられている。
【0007】
上記一態様によれば、ばね部材が、第1部材および第2部材を備えている。ばね部材を、第1被押圧体と第2被押圧体との間に設け、第1部材とともに第2部材を第1方向に弾性変形させることで、第1部材における第1当接部を第1被押圧体に強く当接させ、第1部材における第2当接部を第2被押圧体に強く当接させることが可能になり、主に第1部材が有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
第2部材における第2方向の中間部が、第1部材における第2当接部を介して第2被押圧体を押圧する。したがって、第2当接部を、第2被押圧体に確実に強く当接させることが可能になり、第1被押圧体および第2被押圧体に対する第1部材の接触状態を確実に安定させることができる。
ばね部材が第1部材を備えていて、第2部材の表面に、第1部材と同じ材質のメッキが施されているのではないことから、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、設計通りの前述した特性を、長期にわたって発揮させることができる。
【0008】
第3方向に連ねられて設けられた複数のばねユニットのうち、少なくとも1つのばねユニットにおける第2方向の一端部が、このばねユニットと第3方向で隣り合う他のばねユニットの第2方向の一端部に対して、第2方向にずれた位置に設けられている。
したがって、複数のばねユニットの全てについて、第2方向の両端部が、第2方向の同じ位置に位置している場合と比べて、例えば、第1部材の第1当接部を、第1被押圧体のうちの特定の部分に正確に当接させやすくすることができる場合がある等、ばね部材を適用する部位に制限が生ずるのを抑制することができる。
【0009】
前記第1部材および前記第2部材はそれぞれ、前記第2方向の中間部が、前記第2被押圧体側に向けて突出するように湾曲若しくは屈曲していてもよい。
【0010】
複数の前記ばねユニットのうち、少なくとも1つの前記ばねユニットに、前記第3方向に突出した突出部が設けられ、前記突出部は、前記第1部材と同一の材質で一体に形成された伝導部と、前記第2部材と同一の材質で一体に形成された支持部と、を備え、前記伝導部における前記第3方向の先端部に、前記第1被押圧体、若しくは前記第2被押圧体に当接する第4当接部が形成され、前記支持部における前記第3方向の先端部に、前記伝導部における前記第3方向の先端部が係止されてもよい。
【0011】
ばねユニットに突出部が設けられているので、第1被押圧体、若しくは第2被押圧体に、第1当接部、若しくは第2当接部だけでなく、第1部材と同一の材質で形成された伝導部の第4当接部も当接させることが可能になる。また、突出部を、第1方向に弾性変形させた状態で、第1被押圧体と第2被押圧体との間に設けることで、伝導部の第4当接部を、第1被押圧体、若しくは第2被押圧体に強く当接させることができる。これにより、例えば導電性および伝熱性等の特性を向上させ、かつ設計通りに安定して発揮させることができる。
突出部が、ばねユニットから第3方向に突出しているので、第1部材および伝導部を、第1被押圧体、若しくは第2被押圧体の広範囲にわたって当接させることが可能になり、例えば導電性および伝熱性等の特性を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ばね部材の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】第1実施形態として示したばね部材を第1方向の他方側から見た平面図である。
図1B図1Aの1B-1B線矢視断面図である。
図2A】第2実施形態として示したばね部材を第1方向の他方側から見た平面図である。
図2B図2Aの2B-2B線矢視断面図である。
図3】第3実施形態として示したばね部材の断面図である。
図4A】第4実施形態として示したばね部材を第1方向の他方側から見た平面図である。
図4B図4Aの4B-4B線矢視断面図である。
図4C図4Aの4C-4C線矢視断面図である。
図5A】第5実施形態として示したばね部材を第1方向の他方側から見た平面図である。
図5B図5Aの5B-5B線矢視断面図である。
図6A】第6実施形態として示したばね部材を第1方向の他方側から見た平面図である。
図6B図6Aの6B-6B線矢視断面図である。
図7A】第7実施形態として示したばね部材を第1方向の他方側から見た平面図である。
図7B図7Aの7B-7B線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るばね部材の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のばね部材1は、図1Aおよび図1Bに示されるように、第1方向Zで互いに対向する第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を、互いが第1方向Zに離反する向きに押圧した状態で設けられる。ばね部材1は、第1方向Zに弾性変形した状態で、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設けられる。
ばね部材1は、伝導板11(第1部材)および支持板12(第2部材)を有する複数のばねユニット10a、10b、10cを備えている。伝導板11および支持板12は、全域にわたって互いに接合されていない状態で設けられている。
【0015】
伝導板11および支持板12はそれぞれ、第1方向Zに直交する第2方向Xの中間部が、第2被押圧体W2側に向けて突出するように湾曲若しくは屈曲している。
以下、第1方向Zに沿う第1被押圧体W1側を一方側といい、第1方向Zに沿う第2被押圧体W2側を他方側という。
第2方向Xに沿って、中央部から離れて端部に向かう側を外側といい、端部から離れて中央部に向かう側を内側という。
第1方向Zおよび第2方向Xに直交する方向を第3方向Yという。
【0016】
図示の例では、伝導板11および支持板12はそれぞれ、第2方向Xに沿って中央部から外側に向かうに従い前記一方側に向けて延びている。なお、伝導板11および支持板12はそれぞれ、例えば、前記他方側に向けて尖るように屈曲してもよい。
【0017】
伝導板11は、支持板12を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成されている。伝導板11は、例えば銅、若しくはアルミニウム等で形成されている。伝導板11の板厚は、例えば50μm~100μm程度となっている。
支持板12は、伝導板11を形成する材質よりヤング率が高い材質で形成されている。支持板12は、例えば炭素鋼、若しくはステンレス鋼等で形成されている。
【0018】
伝導板11において、第2方向Xの両端部に、第1被押圧体W1に当接する第1当接部13が形成されるとともに、第2方向Xの中間部に、第2被押圧体W2に当接する第2当接部14が形成されている。
【0019】
第1当接部13は、伝導板11における第2方向Xの開放端縁11cが、第2方向Xの外側を向くように第2方向Xに延びている。第1当接部13は、前記一方側に向けて突の曲面状となるように湾曲している。第1当接部13は、第3方向Yに延びる軸線回りに湾曲している。
第2当接部14は、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。
【0020】
伝導板11は、第1方向Zから見て、伝導板11における第2方向Xの中央部を通り、第3方向Yに延びる直線に対して対称形状を呈する。伝導板11は、第1方向Zから見て、伝導板11における第3方向Yの中央部を通り、第2方向Xに延びる直線に対して対称形状を呈する。伝導板11は、第1方向Zから見て、第2方向Xに長い長方形状を呈する。
【0021】
支持板12において、第2方向Xの両端部に、伝導板11における第2方向Xの両端部がそれぞれ係止されるとともに、第2方向Xの中間部に、第2当接部14に当接して第2被押圧体W2との間で第2当接部14を第1方向Zに挟み込む第3当接部15が形成されている。
【0022】
第3当接部15は、支持板12における第2方向Xの中間部に位置し、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。第3当接部15の前記他方側を向く面が、伝導板11の第2当接部14に覆われている。第3当接部15および第2当接部14は、互いに接合されていない状態で当接している。
なお、第3当接部15および第2当接部14は、互いに接合してもよく、また、ばね部材1を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設ける前の状態では、第3当接部15および第2当接部14を、第1方向Zに互いに離間させてもよい。
【0023】
支持板12における第2方向Xの両端部に、伝導板11における第2方向Xの両端部がそれぞれ移動可能に係止されている。図示の例では、伝導板11および支持板12のうちのいずれか一方における少なくとも第2方向Xの両端部に、貫通孔16が形成されるとともに、いずれか他方における第2方向Xの両端部が、貫通孔16に移動可能に挿通されている。
【0024】
図示の例では、貫通孔16は、支持板12に形成されている。貫通孔16に、伝導板11の第1当接部13が、第2方向Xの内側から外側に向かうに従い、前記他方側から前記一方側に挿通されている。
【0025】
貫通孔16は、支持板12において、第2方向Xの開放端縁12bに連なる外端縁部12aと、第3当接部15と、の間に位置する部分の全域にわたって1つ形成されている。なお、貫通孔16は、支持板12のうち、第2方向Xの両端部に限って形成された、例えば第3方向Yに延びるスリット等であってもよい。
【0026】
支持板12において、貫通孔16よりも第2方向Xの外側に位置し、第2方向Xの開放端縁12bに連なる外端縁部12aは、支持板12における第2方向Xの開放端縁12bが、第2方向Xの外側を向くように第2方向Xに延びている。支持板12の外端縁部12aは、前記一方側に向けて突の曲面状となるように湾曲している。支持板12の外端縁部12aの前記一方側を向く面が、伝導板11の第1当接部13に覆われている。支持板12の外端縁部12a、および第1当接部13は、互いに接合されていない状態で当接している。なお、支持板12の外端縁部12a、および第1当接部13は、互いに接合してもよい。
【0027】
支持板12は、第1方向Zから見て、支持板12における第2方向Xの中央部を通り、第3方向Yに延びる直線に対して対称形状を呈する。支持板12は、第1方向Zから見て、支持板12における第3方向Yの中央部を通り、第2方向Xに延びる直線に対して対称形状を呈する。
支持板12、および伝導板11それぞれの第2方向Xの中央部は互いに一致している。支持板12、および伝導板11それぞれの第3方向Yの中央部は互いに一致している。
【0028】
図示の例では、伝導板11は弾性変形し、第1当接部13および第2当接部14が、支持板12に第1方向Zに圧接している。伝導板11および支持板12を互いに組付ける前の状態で、支持板12の第1方向Zの大きさは、伝導板11の第1方向Zの大きさより大きくなっている。
伝導板11および支持板12それぞれにおいて、貫通孔16を除き第1方向Zで互いに対向する部分は、全域にわたって互いに当接してもよい。
【0029】
伝導板11および支持板12はそれぞれ、第3方向Yに連ねられて複数設けられている。これにより、伝導板11および支持板12を1つずつ有するばねユニット10a、10b、10cが、第3方向Yに連ねられて複数設けられている。ばねユニット10a~10cの数量は、図示の例の3つに限らず適宜変更してもよい。
【0030】
第3方向Yで互いに隣り合う伝導板11同士は、第2方向Xの中間部に限って連結片11bを介して連結されている。
このように複数の伝導板11が一体に形成された構成に対して、互いに分割された複数の支持板12が複数の伝導板11のそれぞれに取付けられたばね部材を採用してもよい。また、連結片11bは、第2方向Xに間隔をあけて複数設けられてもよい。
【0031】
第3方向Yで互いに隣り合う支持板12同士は、互いに連結されている。
このように複数の支持板12が一体に形成された構成に対して、互いに分割された複数の伝導板11が複数の支持板12のそれぞれに取付けられたばね部材を採用してもよい。
【0032】
ここで、複数のばねユニット10a~10cのうち、少なくとも1つのばねユニット10a~10cにおける第2方向Xの一端部は、このばねユニット10a~10cと第3方向Yで隣り合う他のばねユニット10a~10cの第2方向Xの一端部に対して、第2方向Xにずれた位置に設けられている。
第3方向Yで隣り合い、かつ第2方向Xの一端部の第2方向Xの位置が互いにずれている、2つのばねユニット10a~10cの支持板12同士を連結する部分のうち、第2方向Xの一端部側に位置する部分に、第2方向Xに延びるスリット17が形成されている。
【0033】
図示の例では、ばね部材1は、第1ばねユニット10a、第2ばねユニット10b、および第3ばねユニット10cが、第3方向Yにこの順に連設されて構成されている。
【0034】
第2ばねユニット10bにおける第2方向Xの一端部が、第1ばねユニット10aおよび第3ばねユニット10cそれぞれにおける第2方向Xの一端部に対して、第2方向Xの一端部側にずれている。第2ばねユニット10bを第3方向Yから見て、第2方向Xの一端部側に位置する部分の曲率半径が、第2方向Xの他端部側に位置する部分の曲率半径より大きくなっている。
【0035】
スリット17は、第1ばねユニット10aの支持板12と第2ばねユニット10bの支持板12とを連結する部分のうち、第2方向Xの一端部側に位置する部分に形成されている。また、スリット17は、第2ばねユニット10bの支持板12と第3ばねユニット10cの支持板12とを連結する部分のうち、第2方向Xの一端部側に位置する部分に形成されている。これらのスリット17は、第2方向Xの一端部側に開放されている。
【0036】
第3ばねユニット10cにおける第2方向Xの他端部が、第1ばねユニット10aおよび第2ばねユニット10bそれぞれにおける第2方向Xの他端部に対して、第2方向Xの他端部側にずれている。第3ばねユニット10cを第3方向Yから見て、第2方向Xの他端部側に位置する部分の曲率半径が、第2方向Xの一端部側に位置する部分の曲率半径より大きくなっている。
スリット17は、第2ばねユニット10bの支持板12と第3ばねユニット10cの支持板12とを連結する部分のうち、第2方向Xの他端部側に位置する部分に形成されている。このスリット17は、第2方向Xの他端部側に開口している。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材1によれば、伝導板11および支持板12を備えている。ばね部材1を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設け、伝導板11とともに支持板12を第1方向Zに弾性変形させることで、伝導板11における第1当接部13を第1被押圧体W1に強く当接させ、第2当接部14を第2被押圧体W2に強く当接させることが可能になり、主に伝導板11が有する例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【0038】
支持板12に、伝導板11の第2当接部14に当接して第2被押圧体W2との間で第2当接部14を第1方向Zに挟み込む第3当接部15が形成されている。第3当接部15は、第2当接部14を介して第2被押圧体W2を押圧する。したがって、第2当接部14を、第2被押圧体W2に確実に強く当接させることが可能になり、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2に対する伝導板11の接触状態を確実に安定させることができる。
ばね部材1が伝導板11を備えていて、支持板12の表面に、伝導板11と同じ材質のメッキが施されているのではないことから、電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つを容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、設計通りの前述した特性を、長期にわたって発揮させることができる。
【0039】
複数のばねユニット10a~10cのうち、少なくとも1つのばねユニット10a~10cにおける第2方向Xの一端部が、このばねユニット10a~10cと第3方向Yで隣り合う他のばねユニット10a~10cの第2方向Xの一端部に対して、第2方向Xにずれた位置に設けられている。
したがって、複数のばねユニット10a~10cの全てについて、第2方向Xの両端部が、第2方向Xの同じ位置に位置している場合と比べて、例えば、伝導板11の第1当接部13を、第1被押圧体W1のうちの特定の部分に正確に当接させやすくすることができる場合がある等、ばね部材1を適用する部位に制限が生ずるのを抑制することができる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係るばね部材2を、図2Aおよび図2Bを参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0041】
本実施形態のばね部材2では、スリット17が、第1ばねユニット10aの支持板22(第2部材)と第2ばねユニット10bの支持板22とを連結する部分のうち、第2方向Xの他端部側に位置する部分にも形成されている。すなわち、第3方向Yで互いに隣り合う支持板22同士は、伝導板21(第1部材)と同様に、第2方向Xの中間部に限って連結片を介して連結されている。
支持板22には貫通孔16が形成されておらず、伝導板21に貫通孔26が形成されている。伝導板21の貫通孔26に、支持板22の第2方向Xの両端部が、第2方向Xの内側から外側に向けてそれぞれ挿通されている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材2によれば、第1実施形態のばね部材1と同様に、ばね部材2の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させること等ができる。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態に係るばね部材3を、図3を参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0044】
本実施形態のばね部材3では、伝導板31(第1部材)および支持板32(第2部材)に、貫通孔16、26が形成されていない。伝導板31が、支持板32の前記他方側を向く面を第2方向Xの全長にわたって覆っている。伝導板31における第2方向Xの両端部が、支持板32における第2方向Xの開放端縁12bを前記他方側から前記一方側に跨ぎ、支持板32における第2方向Xの両端部に巻き付けられている。
【0045】
ばね部材3では、伝導板31における第2方向Xの両端部が、支持板32における第2方向Xの両端部を第1方向Zに締め付けており、支持板32および伝導板31それぞれにおける第2方向Xの両端部同士が固着されている。ばね部材3では、伝導板31における第2方向Xの開放端縁31cが、第2方向Xの内側を向くように、第1当接部13が第2方向Xに延びている。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材3によれば、第1実施形態のばね部材1と同様に、ばね部材3の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させること等ができる。
【0047】
次に、本発明の第4実施形態に係るばね部材4を、図4A図4B、および図4Cを参照しながら説明する。
なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0048】
本実施形態のばね部材4では、第2ばねユニット10bにおける第2方向Xの一端部40が、第1ばねユニット10aおよび第3ばねユニット10cそれぞれにおける第2方向Xの一端部に対して、第2方向Xの一端部側に離れ、かつ第3方向Yに延びている。第2ばねユニット10bは、第1方向Zから見て、T字状を呈し、第2ばねユニット10bにおける第3方向Yの中央部を通り、第2方向Xに延びる直線に対して対称形状を呈する。
【0049】
第2ばねユニット10bにおける第2方向Xの一端部40は、第1ばねユニット10aが、第1方向Zに延びる軸線回りに90°回転した形態と同様の構成となっており、第1当接部13、第2当接部14、第3当接部15、および貫通孔16を備えている。一端部40には、第1当接部13および貫通孔16が2つずつ、第2当接部14および第3当接部15が1つずつ設けられている。第2ばねユニット10bにおける第2方向Xの一端部40において、第1当接部13および貫通孔16は、第3方向Yの両端部に設けられ、第2当接部14および第3当接部15は、第3方向Yの中間部に設けられている。
【0050】
第2ばねユニット10bにおける第2方向Xの一端部40の第3方向Yの両端部は、第1ばねユニット10aおよび第3ばねユニット10cより第3方向Yの外側に位置している。第2ばねユニット10bのうち、連結片11bと、第2方向Xの一端部40と、の間に位置する部分は、第2方向Xの全域にわたって、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材4によれば、第1実施形態のばね部材1と同様に、ばね部材4の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させること等ができる。
【0052】
次に、本発明の第5実施形態に係るばね部材5を、図5A、および図5Bを参照しながら説明する。
なお、この第5実施形態においては、第4実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0053】
本実施形態のばね部材5では、第2ばねユニット10bが、第1方向Zから見てL字状を呈し、第2ばねユニット10bにおける第2方向Xの一端部50に、第1当接部13、第2当接部14、第3当接部15、および貫通孔16が1つずつ設けられている。
以上説明したように、本実施形態によるばね部材5によれば、第4実施形態のばね部材4と同様に、ばね部材5の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させること等ができる。
【0054】
次に、本発明の第6実施形態に係るばね部材6を、図6Aおよび図6Bを参照しながら説明する。
なお、この第6実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0055】
本実施形態のばね部材6では、複数のばねユニット10a、10b、10cのうち、少なくとも1つのばねユニット10a~10cに、第3方向Yに突出した突出部61が設けられている。突出部61は、第1方向Zに弾性変形した状態で、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設けられる。図示の例では、突出部61は、第1ばねユニット10aにおける第2方向Xの中央部に設けられている。なお、突出部61は、複数のばねユニット10a、10b、10cのいずれに設けてもよい。
【0056】
突出部61は、伝導板11と同一の材質で一体に形成された伝導部62と、支持板12と同一の材質で一体に形成された支持部63と、を備えている。
伝導部62における第3方向Yの先端部に、第1被押圧体W1、若しくは第2被押圧体W2に当接する第4当接部64が形成されている。図示の例では、第4当接部64は、第1被押圧体W1に当接するが、第2被押圧体W2に当接してもよい。
支持部63における第3方向Yの先端部に、伝導部62における第3方向Yの先端部が係止されている。支持部63に貫通孔65が形成されており、貫通孔65に伝導部62の第4当接部64が挿通されている。
【0057】
支持部63において、貫通孔65よりも第3方向Yの先端部側に位置し、第3方向Yの開放端縁63bに連なる外端縁部63aは、支持部63における第3方向Yの開放端縁63bが、第3方向Yの先端部側を向くように第3方向Yに延びている。支持部63の外端縁部63aは、前記一方側に向けて突の曲面状となるように湾曲している。支持部63の外端縁部63aの前記一方側を向く面が、伝導部62の第4当接部64に覆われている。支持部63の外端縁部63a、および第4当接部64は、互いに接合されていない状態で当接している。なお、支持部63の外端縁部63a、および第4当接部64は、互いに接合してもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材6によれば、第1実施形態のばね部材1と同様に、ばね部材6の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させること等ができる。
【0059】
第1ばねユニット10aに突出部61が設けられているので、第1被押圧体W1、若しくは第2被押圧体W2に、第1当接部13、若しくは第2当接部14だけでなく、伝導板11と同一の材質で形成された伝導部62の第4当接部64も当接させることが可能になる。また、突出部61を、第1方向Zに弾性変形させた状態で、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設けることで、伝導部62の第4当接部64を、第1被押圧体W1、若しくは第2被押圧体W2に強く当接させることができる。これにより、例えば導電性および伝熱性等の特性を向上させ、かつ設計通りに安定して発揮させることができる。
【0060】
突出部61が、第1ばねユニット10aから第3方向Yに突出しているので、伝導板11および伝導部62を、第1被押圧体W1、若しくは第2被押圧体W2の広範囲にわたって当接させることが可能になり、例えば導電性および伝熱性等の特性を確実に向上させることができる。
【0061】
次に、本発明の第7実施形態に係るばね部材7を、図7A、および図7Bを参照しながら説明する。
なお、この第7実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0062】
本実施形態のばね部材7では、スリット17が設けられておらず、複数のばねユニット10a、70b、70cの全てについて、第2方向Xの他端部が、第2方向Xの同じ位置に位置し、第1ばねユニット10a、および第3ばねユニット70cの第2方向Xの一端部が、第2方向Xの同じ位置に位置している。
第2ばねユニット70bの第2方向Xの一端部が、第1ばねユニット10a、および第3ばねユニット70cそれぞれの第2方向Xの一端部から、第2方向Xの一端部側に離れている。
【0063】
第2ばねユニット70bにおける第2方向Xの中間部に、複数組の第2当接部14および第3当接部15が、第2方向Xに間隔をあけて設けられている。なお、各組の第2当接部14および第3当接部15の第1方向Zの位置を互いに異ならせてもよい。
第2ばねユニット70bにおける第2方向Xの中間部において、第2方向Xで互いに隣り合う、第1組の第2当接部14および第3当接部15と、第2組の第2当接部14および第3当接部15との間に位置する部分は、前記一方側に向けて窪んでおり、この部分に、第5当接部71と、第6当接部72と、貫通孔73と、が設けられている。
【0064】
第5当接部71は、伝導板11に形成され、第1被押圧体W1に当接する。
第6当接部72は、支持板12に形成され、第5当接部71に当接して第1被押圧体W1との間で第5当接部71を第1方向Zに挟み込んでいる。
貫通孔73は、支持板12に形成され、第5当接部71および第6当接部72を第2方向Xで挟む両側に設けられている。貫通孔73に、伝導板11が支持板12における前記一方側を向く面を覆うように挿通されている。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材7によれば、第1実施形態のばね部材1と同様に、ばね部材7の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させること等ができる。
【0066】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0067】
支持板12、22、32および伝導板11、21、31それぞれにおける第2方向Xの両端部同士は、例えばろう付け等により固着されてもよい。
伝導板11、21、31の第2方向Xの両端部に形成された各第1当接部13の第1方向Zの位置を互いに異ならせてもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、ばね部材の例えば導電性および伝熱性等の特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1、2、3、4、5、6、7 ばね部材
10a 第1ばねユニット(ばねユニット)
10b、70b 第2ばねユニット(ばねユニット)
10c、70c 第3ばねユニット(ばねユニット)
11、21、31 伝導板(第1部材)
12、22、32 支持板(第2部材)
13 第1当接部
14 第2当接部
15 第3当接部
40、50 一端部
61 突出部
62 伝導部
63 支持部
64 第4当接部
W1 第1被押圧体
W2 第2被押圧体
X 第2方向
Y 第3方向
Z 第1方向
【要約】
ばね部材は、第1方向で互いに対向する第1被押圧体および第2被押圧体を互いが第1方向に離反する向きに押圧し、第1部材および第2部材を有する複数のばねユニットを備え、第1部材は、第2部材を形成する材質より電気伝導率および熱伝導率のうちの少なくとも1つが高い材質で形成され、第1部材において、第2方向の両端部に、第1被押圧体に当接する第1当接部が形成され、第2方向の中間部に、第2被押圧体に当接する第2当接部が形成され、第2部材において、第2方向の両端部が、第1当接部を介して第1被押圧体を押圧し、第2方向の中間部が、第2当接部を介して第2被押圧体を押圧し、複数のばねユニットは第3方向に連ねられて設けられ、複数のばねユニットのうち少なくとも1つのばねユニットにおける第2方向の一端部は、このばねユニットと第3方向で隣り合う他のばねユニットの第2方向の一端部に対して第2方向にずれた位置に設けられている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B