(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-12
(45)【発行日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ばね部材
(51)【国際特許分類】
F16F 1/18 20060101AFI20240115BHJP
F16F 1/26 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
F16F1/18 Z
F16F1/26
(21)【出願番号】P 2023571451
(86)(22)【出願日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2023016146
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022072074
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】田島 典拓
(72)【発明者】
【氏名】米岡 篤志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033802(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064572(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/091824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/18- 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向で互いに対向する第1被押圧体および発熱体を有する第2被押圧体を、互いが前記第1方向に離反する向きに押圧するばね部材であって、
第1部材および第2部材を備え、
前記第1部材は、前記第2部材を形成する材質より熱伝導率が高い材質で形成され、
前記第1部材において、前記第1方向に直交する第2方向の両端部に、前記第1被押圧体および前記第2被押圧体のうちのいずれか一方の押圧体に当接する第1当接部が形成されるとともに、前記第2方向の中間部に、前記第1被押圧体および前記第2被押圧体のうちのいずれか他方の押圧体に当接する第2当接部が形成され、
前記第2部材において、前記第2方向の両端部が、前記第1当接部を介して前記一方の押圧体を押圧するとともに、前記第2方向の中間部が、前記第2当接部を介して前記他方の押圧体を押圧し、
前記第1部材には、前記第1部材と一体に形成されるとともに、前記発熱体からの熱が伝えられる保護突起が設けられている、ばね部材。
【請求項2】
前記第1部材および前記第2部材はそれぞれ、前記第2方向の中間部が、前記他方の押圧体側に向けて突出するように湾曲若しくは屈曲している、請求項1に記載のばね部材。
【請求項3】
前記第1被押圧体は、前記発熱体からの熱を外部に放出する放熱体である、請求項1に記載のばね部材。
【請求項4】
前記保護突起は、前記第1部材の前記第2当接部から、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に突出した板体となっている、請求項1~3のいずれか一項に記載のばね部材。
【請求項5】
前記保護突起には、波形状、若しくは渦巻き形状に曲げられた密集部が形成されている、請求項4に記載のばね部材。
【請求項6】
前記密集部は、前記保護突起のうち、前記第2当接部に接続された接続部分に対して、前記第1方向に前記一方の押圧体側に向けて張り出し、かつ前記一方の押圧体から前記第1方向に交差する方向に離れる、請求項5に記載のばね部材。
【請求項7】
前記保護突起は平面部を有し、
前記保護突起には、前記平面部の表裏面のうち少なくとも一方の面から突出する放熱突起が形成されている、請求項4に記載のばね部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばね部材に関するものである。
本願は、2022年04月26日に、日本に出願された特願2022-072074号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、第1方向で互いに対向する第1被押圧体と第2被押圧体との間に、第1被押圧体および第2被押圧体を、互いが第1方向に離反する向きに押圧した状態で設けられるばね部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のばね部材では、第1被押圧体および第2被押圧体のうちのいずれか一方から他方に向けて熱を伝えるのに用いようとすると、ばね部材の荷重特性を優先させた場合、ばね部材の熱伝導特性を、設計通りに安定して発揮させることが困難になる可能性があった。
第1被押圧体および第2被押圧体のうち、いずれか一方を放熱体とし、かついずれか他方が発熱体を含む場合に、発熱体の発熱量が放熱体の放熱量を超えると、発熱体が温度上昇により損傷しやすくなる可能性があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、熱伝導特性を設計通りに安定して発揮させ、かつ発熱体の損傷を抑えることができるばね部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のばね部材は、第1方向で互いに対向する第1被押圧体および発熱体を有する第2被押圧体を、互いが前記第1方向に離反する向きに押圧するばね部材であって、第1部材および第2部材を備え、前記第1部材は、前記第2部材を形成する材質より熱伝導率が高い材質で形成され、前記第1部材において、前記第1方向に直交する第2方向の両端部に、前記第1被押圧体および前記第2被押圧体のうちのいずれか一方の押圧体に当接する第1当接部が形成されるとともに、前記第2方向の中間部に、前記第1被押圧体および前記第2被押圧体のうちのいずれか他方の押圧体に当接する第2当接部が形成され、前記第2部材において、前記第2方向の両端部が、前記第1当接部を介して前記一方の押圧体を押圧するとともに、前記第2方向の中間部が、前記第2当接部を介して前記他方の押圧体を押圧し、前記第1部材には、前記第1部材と一体に形成されるとともに、前記発熱体からの熱が伝えられる保護突起が設けられている。
【0007】
上記一態様によれば、ばね部材が、第1部材および第2部材を備えている。ばね部材を、第1被押圧体と第2被押圧体との間に設け、第1部材とともに第2部材を第1方向に弾性変形させることで、第1部材における第1当接部を、第1被押圧体および第2被押圧体のうちのいずれか一方の押圧体に強く当接させ、第1部材における第2当接部を、第1被押圧体および第2被押圧体のうちのいずれか他方の押圧体に強く当接させることが可能になり、主に第1部材が有する熱伝導特性を、設計通りに安定して発揮させることができる。
第2部材における第2方向の中間部が、第1部材における第2当接部を介して前記他方の押圧体を押圧する。したがって、第2当接部を、前記他方の押圧体に確実に強く当接させることが可能になり、第1被押圧体および第2被押圧体に対する第1部材の接触状態を確実に安定させることができる。
ばね部材が第1部材を備えていて、第2部材の表面に、第1部材と同じ材質のメッキが施されているのではないことから、熱容量および放熱量を容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、設計通りの熱伝導特性を長期にわたって発揮させることができる。
【0008】
第1部材に、第1部材と一体に形成されるとともに、発熱体からの熱が伝えられる保護突起が設けられている。したがって、例えば発熱体の発熱量が第1被押圧体の放熱量を超えたとしても、発熱体からの熱が、第1部材の保護突起に伝わることとなり、第1部材の熱容量が増大することで、発熱体の温度上昇が緩やかになり、また、第1部材の放熱量が増大することで、発熱体の温度上昇が抑制される。したがって、発熱体が温度上昇に起因して損傷するのを抑制することができる。
【0009】
前記第1部材および前記第2部材はそれぞれ、前記第2方向の中間部が、前記他方の押圧体側に向けて突出するように湾曲若しくは屈曲していてもよい。
【0010】
前記第1被押圧体は、前記発熱体からの熱を外部に放出する放熱体であってもよい。
【0011】
前記保護突起は、前記第1部材の前記第2当接部から、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に突出した板体となってもよい。
【0012】
保護突起が、第1部材の第2当接部から第3方向に突出した板体となっているので、第1部材および保護突起を一体に形成するに際し、例えばプレス加工を採用することができる等、製造上の制約を生じにくくすることが可能になる。したがって、ばね部材を容易に得ることができるとともに、保護突起が、第1部材および第2部材の円滑な変形を規制するのを抑制することができる。
【0013】
前記保護突起には、波形状、若しくは渦巻き形状に曲げられた密集部が形成されてもよい。
【0014】
保護突起に密集部が形成されているので、第1部材からの保護突起の突出長さを抑えつつ、第1部材の熱容量を確保することができる。
【0015】
前記密集部は、前記保護突起のうち、前記第2当接部に接続された接続部分に対して、前記第1方向に前記一方の押圧体側に向けて張り出し、かつ前記一方の押圧体から前記第1方向に交差する方向に離れてもよい。
【0016】
保護突起のうち、第2当接部に接続された接続部分に対して、第1方向に前記一方の押圧体側に向けて張り出した密集部が、前記一方の押圧体から第1方向に交差する方向に離れる。したがって、第1被押圧体および第2被押圧体が第1方向に互いに接近移動したときに、密集部が前記一方の押圧体に干渉するのを防ぐことができる。
【0017】
前記保護突起は平面部を有し、前記保護突起には、前記平面部の表裏面のうち少なくとも一方の面から突出する放熱突起が形成されていてもよい。
【0018】
保護突起に放熱突起が形成されているので、保護突起の表面積を増加させることができ、保護突起の放熱量を増大させることができる。したがって、発熱体の温度上昇をより効果的に抑制し、発熱体の損傷を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、熱伝導特性を設計通りに安定して発揮させ、かつ発熱体の損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態のばね部材を第1方向の他方側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るばね部材の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のばね部材1は、
図1および
図2に示されるように、第1方向Zで互いに対向する第1被押圧体(他方の押圧体、放熱体)W1と発熱体を有する第2被押圧体(一方の押圧体)W2との間に、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2を、互いが第1方向Zに離反する向きに押圧した状態で設けられる。
【0022】
第1被押圧体W1は、発熱体からの熱を外部に放出する放熱体である。第1被押圧体W1としては、例えばヒートシンク等が挙げられる。第2被押圧体W2としては、例えば半導体デバイス等が挙げられる。ばね部材1、第1被押圧体W1、および第2被押圧体W2により電力変換装置の一部構成している。
ばね部材1は、伝導板11(第1部材)および支持板12(第2部材)を備えている。伝導板11および支持板12は、全域にわたって互いに接合されていない状態で設けられている。
【0023】
伝導板11および支持板12はそれぞれ、第1方向Zに直交する第2方向Xの中間部が、第1被押圧体W1側に向けて突出するように湾曲若しくは屈曲している。なお、伝導板11および支持板12はそれぞれ、第2方向Xの中間部が、第2被押圧体W2側に向けて突出するように湾曲若しくは屈曲してもよい。
【0024】
以下、第1方向Zに沿う第2被押圧体W2側を一方側といい、第1方向Zに沿う第1被押圧体W1側を他方側という。
第2方向Xに沿って、中央部から離れて端部に向かう側を外側といい、端部から離れて中央部に向かう側を内側という。
第1方向Zおよび第2方向Xに直交する方向を第3方向Yという。
【0025】
図示の例では、伝導板11および支持板12はそれぞれ、第2方向Xに沿って中央部から外側に向かうに従い前記一方側に向けて延びている。なお、伝導板11および支持板12はそれぞれ、例えば、前記他方側に向けて尖るように屈曲してもよい。
【0026】
伝導板11は、支持板12を形成する材質より熱伝導率が高い材質で形成されている。伝導板11は、例えば銅、若しくはアルミニウム等で形成されている。伝導板11の板厚は、例えば50μm~100μm程度となっている。
支持板12は、伝導板11を形成する材質よりヤング率が高い材質で形成されている。支持板12は、例えば炭素鋼、若しくはステンレス鋼等で形成されている。
【0027】
伝導板11において、第2方向Xの両端部に、第2被押圧体W2に当接する第1当接部13が形成されるとともに、第2方向Xの中間部に、第1被押圧体W1に当接する第2当接部14が形成されている。
なお、第1当接部13が第1被押圧体W1に当接し、第2当接部14が第2被押圧体W2に当接してもよい。
【0028】
第1当接部13は、伝導板11における第2方向Xの開放端縁11cが、第2方向Xの外側を向くように第2方向Xに延びている。第1当接部13は、前記一方側に向けて突の曲面状となるように湾曲している。第1当接部13は、第3方向Yに延びる軸線回りに湾曲している。
第2当接部14は、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。
【0029】
伝導板11は、第1方向Zから見て、伝導板11における第2方向Xの中央部を通り、第3方向Yに延びる直線に対して対称形状を呈する。伝導板11は、第1方向Zから見て、伝導板11における第3方向Yの中央部を通り、第2方向Xに延びる直線に対して対称形状を呈する。伝導板11は、第1方向Zから見て、第2方向Xに長い長方形状を呈する。
【0030】
支持板12において、第2方向Xの両端部に、伝導板11における第2方向Xの両端部がそれぞれ係止されるとともに、第2方向Xの中間部に、第2当接部14に当接して第1被押圧体W1との間で第2当接部14を第1方向Zに挟み込む第3当接部15が形成されている。
なお、第3当接部15は、第2被押圧体W2との間で第2当接部14を第1方向Zに挟み込んでもよい。
【0031】
第3当接部15は、支持板12における第2方向Xの中央部に位置し、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。第3当接部15の前記他方側を向く面が、伝導板11の第2当接部14に覆われている。第3当接部15および第2当接部14は、互いに接合されていない状態で当接している。
なお、第3当接部15および第2当接部14は、互いに接合してもよく、また、ばね部材1を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設ける前の状態では、第3当接部15および第2当接部14を、第1方向Zに互いに離間させてもよい。
【0032】
支持板12における第2方向Xの両端部に、伝導板11における第2方向Xの両端部がそれぞれ移動可能に係止されている。図示の例では、伝導板11および支持板12のうちのいずれか一方における少なくとも第2方向Xの両端部に、貫通孔16が形成されるとともに、いずれか他方における第2方向Xの両端部が、貫通孔16に移動可能に挿通されている。貫通孔16は、伝導板11および支持板12のうちのいずれか一方において、第2方向Xに沿って中央部を挟む両側に位置する部分にそれぞれ形成されている。
【0033】
図示の例では、貫通孔16は、支持板12に形成されている。貫通孔16に、伝導板11の第1当接部13が、第2方向Xの内側から外側に向かうに従い、前記他方側から前記一方側に挿通されている。
【0034】
貫通孔16は、支持板12において、第2方向Xの開放端縁12bに連なる外端縁部12aと、第2方向Xの中央部と、の間に位置する部分の全域にわたって1つ形成されている。なお、貫通孔16は、支持板12のうち、第2方向Xの両端部に限って形成された、例えば第3方向Yに延びるスリット等であってもよい。
【0035】
支持板12において、貫通孔16よりも第2方向Xの外側に位置し、第2方向Xの開放端縁12bに連なる外端縁部12aは、支持板12における第2方向Xの開放端縁12bが、第2方向Xの外側を向くように第2方向Xに延びている。支持板12の外端縁部12aは、前記一方側に向けて突の曲面状となるように湾曲している。支持板12の外端縁部12aは、第3方向Yに延びる軸線回りに湾曲している。支持板12の外端縁部12aの前記一方側を向く面が、伝導板11の第1当接部13に覆われている。支持板12の外端縁部12a、および第1当接部13は、互いに接合されていない状態で当接している。なお、支持板12の外端縁部12a、および第1当接部13は、互いに接合されてもよい。
【0036】
支持板12は、第1方向Zから見て、支持板12における第2方向Xの中央部を通り、第3方向Yに延びる直線に対して対称形状を呈する。支持板12は、第1方向Zから見て、支持板12における第3方向Yの中央部を通り、第2方向Xに延びる直線に対して対称形状を呈する。
支持板12、および伝導板11それぞれの第2方向Xの中央部は互いに一致している。支持板12、および伝導板11それぞれの第3方向Yの中央部は互いに一致している。
【0037】
図示の例では、伝導板11は弾性変形し、第1当接部13および第2当接部14が、支持板12に第1方向Zに圧接している。伝導板11および支持板12を互いに組付ける前の状態で、支持板12の第1方向Zの大きさは、伝導板11の第1方向Zの大きさより大きくなっている。
伝導板11および支持板12それぞれにおいて、貫通孔16を除き第1方向Zで互いに対向する部分は、全域にわたって互いに当接してもよい。
【0038】
伝導板11および支持板12はそれぞれ、第3方向Yに連ねられて複数ずつ設けられている。伝導板11および支持板12の各数量は、図示の例の3つに限らず適宜変更してもよい。
【0039】
第3方向Yで互いに隣り合う伝導板11同士は、第2方向Xの中央部に限って連結片11bを介して連結されている。
このように複数の伝導板11が一体に形成された構成に対して、互いに分割された複数の支持板12が複数の伝導板11のそれぞれに取付けられたばね部材を採用してもよい。また、連結片11bは、第2方向Xに間隔をあけて複数設けられてもよく、また、伝導板11における第2方向Xの中央部から第2方向Xに離れた位置に設けられてもよい。
【0040】
第3方向Yで互いに隣り合う支持板12同士は、第2方向Xの全長にわたって互いに連結されている。
なお、第3方向Yで互いに隣り合う支持板12同士は、第2方向Xにおける一部、若しくは複数個所に限って連結されてもよい。
このように複数の支持板12が一体に形成された構成に対して、互いに分割された複数の伝導板11が複数の支持板12のそれぞれに取付けられたばね部材を採用してもよい。
【0041】
そして、本実施形態では、伝導板11に、伝導板11と一体に形成されるとともに、発熱体からの熱が伝えられる保護突起17が設けられている。保護突起17および伝導板11それぞれの材質は互いに同じになっている。保護突起17は、第3方向Yに連ねられて設けられた複数の伝導板11のうち、第3方向Yの両端部に位置する2つの伝導板11に設けられている。
【0042】
保護突起17は、伝導板11の第2当接部14から第3方向Yに突出した板体となっている。保護突起17には、発熱体からの熱が伝導板11を介して伝えられる。保護突起17は、第1方向Zから見て、第2方向Xに長い長方形状を呈する板体となっている。保護突起17のうち、少なくとも第2当接部14との接続部分は、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。前記接続部分は、保護突起17における第2方向Xの中央部に位置している。なお、前記接続部分は、保護突起17における第2方向Xの中央部から第2方向Xに離れてもよい。保護突起17における第2方向Xの両端部は、第2当接部14より第2方向Xの外側に位置している。
【0043】
保護突起17は、全域にわたって平板状に形成されている。保護突起17は、第2方向Xの全域にわたって第1被押圧体W1に当接している。保護突起17および伝導板11それぞれの板厚は、互いに同じになっている。保護突起17の表裏面は、第2当接部14の表裏面に段差無く連なっている。
【0044】
保護突起17は、第1方向Zから見て、保護突起17における第2方向Xの中央部を通り、第3方向Yに延びる直線に対して対称形状を呈する。保護突起17は、第1方向Zから見て、保護突起17における第3方向Yの中央部を通り、第2方向Xに延びる直線に対して対称形状を呈する。保護突起17、および伝導板11それぞれの第2方向Xの中央部は互いに一致している。なお、保護突起17、および伝導板11それぞれの第2方向Xの中央部は、第2方向Xに離れてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材1によれば、伝導板11および支持板12を備えている。ばね部材1を、第1被押圧体W1と第2被押圧体W2との間に設け、伝導板11とともに支持板12を第1方向Zに弾性変形させることで、伝導板11における第1当接部13を第2被押圧体W2に強く当接させ、第2当接部14を第1被押圧体W1に強く当接させることが可能になり、主に伝導板11が有する熱伝導特性を設計通りに安定して発揮させることができる。
【0046】
支持板12に、伝導板11の第2当接部14に当接して第1被押圧体W1との間で第2当接部14を第1方向Zに挟み込む第3当接部15が形成されている。第3当接部15が、第2当接部14を介して第1被押圧体W1を押圧する。したがって、第2当接部14を、第1被押圧体W1に確実に強く当接させることが可能になり、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2に対する伝導板11の接触状態を確実に安定させることができる。
ばね部材1が伝導板11を備えていて、支持板12の表面に、伝導板11と同じ材質のメッキが施されているのではないことから、熱容量および放熱量を容易に高く確保することができるとともに、メッキの剥がれが無く、設計通りの熱伝導特性を、長期にわたって発揮させることができる。
【0047】
伝導板11に、伝導板11と一体に形成されるとともに、発熱体からの熱が伝えられる保護突起17が設けられている。したがって、発熱体の発熱量が第1被押圧体W1の放熱量を超えたとしても、発熱体からの熱が、伝導板11の保護突起17に伝わることとなり、伝導板11の熱容量が増大することで、発熱体の温度上昇が緩やかになり、また、伝導板11の放熱量が増大することで、発熱体の温度上昇が抑制される。したがって、発熱体が温度上昇に起因して損傷するのを抑制することができる。
【0048】
保護突起17が、伝導板11の第2当接部14から第3方向Yに突出した板体となっているので、伝導板11および保護突起17を一体に形成するに際し、例えばプレス加工を採用することができる等、製造上の制約を生じにくくすることが可能になり、ばね部材1を容易に得ることができるとともに、保護突起17が、伝導板11および支持板12の円滑な変形を規制するのを抑制することができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態に係るばね部材2を、
図3を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0050】
本実施形態のばね部材2では、保護突起18に、波形状に曲げられた密集部18aが形成されている。密集部18aは、保護突起18の第2方向Xの両端部に形成されている。密集部18aは、第1方向Zに屈曲しつつ第2方向Xに延びている。密集部18aは、第2被押圧体W2から第1方向Zに交差する方向に離れており、第2被押圧体W2と第1方向Zで対向していない。図示の例では、密集部18aは、第2被押圧体W2から第2方向Xに離れている。
なお、密集部18aは、第2方向Xに屈曲しつつ第1方向Zに延びてもよく、また、第2方向Xに屈曲しつつ第3方向Yに延びてもよく、また、第3方向Yに屈曲しつつ第1方向Zに延びてもよい。
【0051】
保護突起18のうち、第2当接部14に接続された接続部分18bは、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。保護突起18の接続部分18bの表裏面は、第2当接部14の表裏面に段差無く連なっている。接続部分18bは、保護突起18における第2方向Xの中央部に位置している。なお、接続部分18bは、保護突起18における第2方向Xの中央部から第2方向Xに離れてもよい。保護突起18のうち、密集部18aを除く全域が、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。
【0052】
密集部18aは、接続部分18bに対して第1方向Zに第2被押圧体W2側に向けて張り出している。保護突起18は、第2方向Xの全域にわたって第1被押圧体W1に当接している。保護突起18および伝導板11それぞれの板厚は、互いに同じになっている。
保護突起18の第2方向Xの両端部に形成された密集部18aそれぞれにおいて、第2方向Xで互いに隣り合う部分の少なくとも一部同士が、第2方向Xで互いに当接している。なお、それぞれの密集部18aにおいて、第2方向Xで互いに隣り合う部分の全てが、第2方向Xに離れていてもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材2によれば、保護突起18に密集部18aが形成されているので、伝導板11からの保護突起18の突出長さを抑えつつ、伝導板11の熱容量を確保することができる。
保護突起18のうち、第2当接部14に接続された接続部分18bに対して、第1方向Zに第2被押圧体W2側に向けて張り出した密集部18aが、第2被押圧体W2から第1方向Zに交差する方向に離れているので、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2が第1方向Zに互いに接近移動したときに、密集部18aが第2被押圧体W2に干渉するのを防ぐことができる。
【0054】
保護突起18の第2方向Xの両端部に形成された密集部18aそれぞれにおいて、第2方向Xで互いに隣り合う部分の少なくとも一部同士が、第2方向Xで互いに当接しているので、発熱体からの熱を保護突起18の全体に早期に伝えやすくなり、発熱体の損傷を確実に抑えることができる。
【0055】
次に、本発明の第3実施形態に係るばね部材3を、
図4を参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0056】
本実施形態のばね部材3では、保護突起19に、渦巻き形状に曲げられた密集部19aが形成されている。密集部19aは、保護突起19の第2方向Xの両端部に形成されている。密集部19aは、第3方向Yに延びる渦軸線回りに複数周にわたって延びている。密集部19aは、第2被押圧体W2から第1方向Zに交差する方向に離れており、第2被押圧体W2と第1方向Zで対向していない。図示の例では、密集部19aは、第2被押圧体W2から第2方向Xに離れている。
なお、渦軸線は、例えば第1方向Zに延びてもよいし、第2方向Xに延びてもよい。
【0057】
保護突起19のうち、第2当接部14に接続された接続部分19bは、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。保護突起19の接続部分19bの表裏面は、第2当接部14の表裏面に段差無く連なっている。接続部分19bは、保護突起19における第2方向Xの中央部に位置している。なお、接続部分19bは、保護突起19における第2方向Xの中央部から第2方向Xに離れてもよい。保護突起19のうち、密集部19aを除く全域が、表裏面が第1方向Zを向く平板状に形成されている。
【0058】
密集部19aは、接続部分19bに対して第1方向Zに第2被押圧体W2側に向けて張り出している。保護突起19は、第2方向Xの全域にわたって第1被押圧体W1に当接している。保護突起19および伝導板11それぞれの板厚は、互いに同じになっている。
保護突起19の第2方向Xの両端部に形成された密集部19aそれぞれにおいて、第3方向Yから見て渦軸線に交差する渦径方向で互いに隣り合う部分の少なくとも一部同士が、渦径方向で互いに当接している。なお、それぞれの密集部19aにおいて、渦径方向で互いに隣り合う部分の全てが、渦径方向に離れていてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材3によれば、保護突起19に密集部19aが形成されているので、伝導板11からの保護突起19の突出長さを抑えつつ、伝導板11の熱容量を確保することができる。
保護突起19のうち、第2当接部14に接続された接続部分19bに対して、第1方向Zに第2被押圧体W2側に向けて張り出した密集部19aが、第2被押圧体W2から第1方向Zに交差する方向に離れているので、第1被押圧体W1および第2被押圧体W2が第1方向Zに互いに接近移動したときに、密集部19aが、第2被押圧体W2に干渉するのを防ぐことができる。
【0060】
保護突起19の第2方向Xの両端部に形成された密集部19aそれぞれにおいて、渦径方向で互いに隣り合う部分の少なくとも一部同士が、渦径方向で互いに当接しているので、発熱体からの熱を保護突起19の全体に早期に伝導させやすくなり、発熱体の損傷を確実に抑えることができる。
【0061】
次に、本発明の第4実施形態に係るばね部材4を、
図5Aおよび
図5Bを参照しながら説明する。
なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0062】
本実施形態のばね部材4では、保護突起20は、表裏面が第1方向Zを向く平面部20aを有している。保護突起20には、平面部20aの表裏面からそれぞれ突出する第1放熱突起20b(放熱突起)および第2放熱突起20c(放熱突起)が形成される。第1放熱突起20bは、平面部20aから上記一方側に突出し、第2放熱突起20cは、平面部20aから上記他方側に突出する。例えば、第1放熱突起20bは、平面部20aにU字状のスリットを形成し、スリットによって囲まれた部分を、上記一方側に突出するように切り起こすことにより形成される。第2放熱突起20cは、平面部20aにU字状のスリットを形成し、スリットによって囲まれた部分を、上記他方側に突出するように切り起こすことにより形成される。第1放熱突起20bおよび第2放熱突起20cは、平面部20aの表裏面に、平面部20aとは別の部材を接合することで形成されていてもよい。
【0063】
第1放熱突起20bと第2放熱突起20cとは、第2方向Xに交互に配置されるとともに、第3方向Yにも交互に配置される。なお、第1放熱突起20bおよび第2放熱突起20cの配置はこれに限られない。
また、保護突起20には、第1放熱突起20bのみが形成されてもよいし、第2放熱突起20cのみが形成されてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材4によれば、保護突起20には、平面部20aの表裏面のうち少なくとも一方の面から突出する放熱突起20b、20cが形成されている。これにより、保護突起20の表面積を増加させることができ、保護突起20の放熱量を増大させることができる。したがって、発熱体の温度上昇をより効果的に抑制し、発熱体の損傷を確実に抑制することができる。
【0065】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0066】
例えば、保護突起17、18、19、20を第1当接部13に設け、第2被押圧体W2からの熱が、保護突起17~20に伝導板11を介さず直接伝えられてもよい。
保護突起17~20は、全域にわたって第1被押圧体W1および第2被押圧体W2と非接触に設けられてもよい。
保護突起17~20および伝導板11それぞれの板厚を互いに異ならせてもよい。
【0067】
ばね部材1、2、3、4として、貫通孔16を有しない構成を採用してもよい。例えば、伝導板11の第2方向Xの両端部を、支持板12の第2方向Xの両端部に巻き締めてもよく、また、支持板12および伝導板11それぞれにおける第2方向Xの両端部同士を、例えばろう付け等により固着してもよい。
ばね部材1~4として、伝導板11および支持板12がそれぞれ、第3方向Yに連ねられて複数設けられた構成を示したが、伝導板11および支持板12を1つずつ備える構成を採用してもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、熱伝導特性を設計通りに安定して発揮させ、かつ発熱体の損傷を抑えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1、2、3、4 ばね部材
11 伝導板(第1部材)
12 支持板(第2部材)
13 第1当接部
14 第2当接部
15 第3当接部
17、18、19、20 保護突起
18a、19a 密集部
18b、19b 接続部分
20a 平面部
20b 第1放熱突起(放熱突起)
20c 第2放熱突起(放熱突起)
W1 第1被押圧体(他方の押圧体)
W2 第2被押圧体(一方の押圧体)
X 第2方向
Y 第3方向
Z 第1方向
【要約】
ばね部材は、第1方向で互いに対向する第1被押圧体および発熱体を有する第2被押圧体を、互いが第1方向に離反する向きに押圧し、第1部材および第2部材を備え、第1部材は、第2部材を形成する材質より熱伝導率が高い材質で形成され、第1部材において、第1方向に直交する第2方向の両端部に、第1被押圧体および第2被押圧体のうちのいずれか一方の押圧体に当接する第1当接部が形成されるとともに、第2方向の中間部に、いずれか他方の押圧体に当接する第2当接部が形成され、第2部材において、第2方向の両端部が、第1当接部を介して一方の押圧体を押圧するとともに、第2方向の中間部が、第2当接部を介して他方の押圧体を押圧し、第1部材には、第1部材と一体に形成されるとともに、発熱体からの熱が伝えられる保護突起が設けられている。