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特許7419632植物抽出物含有顆粒の製造方法、植物抽出物含有顆粒からの微粉の発生を抑制する方法、及び、植物抽出物含有顆粒の不快な味を抑制する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】植物抽出物含有顆粒の製造方法、植物抽出物含有顆粒からの微粉の発生を抑制する方法、及び、植物抽出物含有顆粒の不快な味を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20240116BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240116BHJP
   A23L 19/10 20160101ALI20240116BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L5/00 D
A23L19/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020550534
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2019039081
(87)【国際公開番号】W WO2020071475
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018189597
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 尚之
(72)【発明者】
【氏名】田口 修也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】岸 孝礼
(72)【発明者】
【氏名】平山 善丈
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-169247(JP,A)
【文献】特開2002-142710(JP,A)
【文献】特開2011-092080(JP,A)
【文献】特開2008-189571(JP,A)
【文献】特開2010-142124(JP,A)
【文献】特開2000-026317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23
A61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物抽出物含有顆粒の製造方法であって、秋ウコン、春ウコン及びガジュツから選択される1種以上の植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含み、前記原料混合物の水分量が1~10%(w/w)であり、前記原料混合物がシェラック及び糖アルコールを含み、前記顆粒が口腔内即溶性顆粒であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記原料混合物が、10%(w/w)以上の植物抽出物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料混合物が、0.1~2%(w/w)の前記シェラックを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記原料混合物が、3~8%(w/w)のエタノールを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記原料混合物が、前記糖アルコールとして、1~5%(w/w)の還元水飴を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記原料混合物が、デキストリンを含まない、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
植物抽出物含有顆粒からの微粉の発生を抑制する方法であって、秋ウコン、春ウコン及びガジュツから選択される1種以上の植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含む前記植物抽出物含有顆粒の製造において、前記原料混合物として、水分量が1~10%(w/w)であり且つシェラック及び糖アルコールを含む原料混合物を用いることを含み、前記顆粒が口腔内即溶性顆粒である、方法。
【請求項8】
植物抽出物含有顆粒の不快な味を抑制する方法であって、秋ウコン、春ウコン及びガジュツから選択される1種以上の植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含む前記植物抽出物含有顆粒の製造において、前記原料混合物として、水分量が1~10%(w/w)であり且つシェラック及び糖アルコールを含む原料混合物を用いることを含み、前記顆粒が口腔内即溶性顆粒である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出物含有顆粒の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、植物抽出物含有顆粒からの微粉の発生を抑制する方法に関する。本発明はまた、植物抽出物含有顆粒の不快な味を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
飲食品、飼料、医薬品、医薬部外品等の形態で経口摂取される成分には、苦味、辛味、酸味、渋味等の不快な味を呈する成分が含まれることがある。植物抽出物もそのような成分の例であるが、植物抽出物は、ほとんどの場合苦いため、錠剤化するか、顆粒化した製品を水に溶かして服用する仕様が多い。また、植物抽出物は一般的に糖質を含んでいるために、粘性があり、粉末化しても嵩低い重質な粉体となる。そのため植物抽出物を使用すると造粒負荷が大きくて顆粒化しづらいという特有の問題がある。
【0004】
特許文献1では、従来顆粒化が難しかった植物抽出物を含有する顆粒の製造において、基材に糖アルコールと澱粉を用いること、練合工程で用いる水の量をできるだけ減少させて練合後の粉末混合物の水分量を所定の範囲になるように原料を配合することによって、粉末混合物の練合時に粘度が上がらずに押出し造粒が容易にできること、多孔質で口溶け性に優れ、苦みがなく、嵩高い顆粒が得られることが開示されている。
【0005】
一方、特許文献2では、好ましい質感、物性を有する顆粒化された食品、酵素を製造する方法として、デキストリンを3重量%以上99.5重量%以下含有する粉末食品または粉末酵素にエタノール/水の混合容量比が5/5~9.5/0.5であるエタノール溶液およびシェラックを添加して造粒することを特徴とする食品または酵素の造粒方法が開示されている。特許文献3では、乳化製剤、粉末香料、酸味料、甘味料などの被分散物質および粉状シェラックにシェラックアルコール溶液を添加混合し、乾燥後、粉砕することにより、熱安定性の高い、優れた徐放性乾燥物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-61483号公報
【文献】特開平11-266847号公報
【文献】特開2009-55851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明は、植物抽出物を含有する混練物が高粘度であるために押出し造粒に適さないという課題を解決する。しかしながら本発明者らは、特許文献1に記載の方法で得られた顆粒は、多孔質で口溶け性に優れる反面、脆く壊れやすいために、製造時に微粉が発生し易くロスが多い、という新たな課題を見出した。また、植物抽出物含有顆粒において、植物抽出物に特有な苦味、後味等の不快な味を抑制する方法として、特許文献1に記載の方法は必ずしも満足できるものではなかった。
【0008】
本発明は、植物抽出物含有顆粒の押出し造粒による製造において、原料混合物の粘度上昇を抑制するとともに、製造歩留りを悪化させる微粉の発生を抑制すること、及び/又は、植物抽出物に特有な不快な味を抑制することを目的とする。なお、特許文献2及び3では植物抽出物含有顆粒に特有の課題を解決する手段は記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、植物抽出物含有顆粒の押出し造粒による製造において、水分量が1~10%(w/w)であり且つ植物抽出物に加えてシェラックを含む原料混合物を用いることにより、原料混合物の押出し時の粘度上昇が抑制され、微粉の発生が抑制され、且つ、植物抽出物に特有な不快な味が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含み、前記原料混合物の水分量が1~10%(w/w)であり、前記原料混合物がシェラックを含むことを特徴とする、植物抽出物含有顆粒の製造方法。
(2)前記原料混合物が、10%(w/w)以上の植物抽出物を含む、(1)に記載の方法。
(3)前記植物抽出物が、秋ウコン、春ウコン及びガジュツから選択される1種以上の植物の抽出物である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記原料混合物が、0.1~2%(w/w)の前記シェラックを含む、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記原料混合物が、3~8%(w/w)のエタノールを含む、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記原料混合物が、1~5%(w/w)の還元水飴を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記原料混合物が、デキストリンを含まない、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)植物抽出物含有顆粒からの微粉の発生を抑制する方法であって、植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含む前記植物抽出物含有顆粒の製造において、前記原料混合物として、水分量が1~10%(w/w)であり且つシェラックを含む原料混合物を用いることを含む方法。
(9)植物抽出物含有顆粒の不快な味を抑制する方法であって、植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含む前記植物抽出物含有顆粒の製造において、前記原料混合物として、水分量が1~10%(w/w)であり且つシェラックを含む原料混合物を用いることを含む方法。
【0011】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-189597号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物抽出物含有顆粒の押出し造粒による製造において、原料混合物の粘度上昇を抑制することができるため造粒が容易であり、且つ、微粉の発生を抑制することができるため製造時のロスを抑制することができる。また、この方法で製造された植物抽出物含有顆粒は、植物抽出物に特有な不快な味が抑制されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、植物抽出物含有顆粒の製造方法であって、植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含み、前記原料混合物の水分量が1~10%(w/w)であり、前記原料混合物がシェラックを含むことを特徴とする方法に関する。この組成の原料混合物は、押出し造粒時に粘度が上昇しないため造粒負荷が小さく造粒に適している。また、結着性を有するシェラックが含まれていることにより、造粒により形成された顆粒が崩壊し難いため、造粒時に微粉の発生が抑制され、製造歩留りが向上する。更に、この方法で製造された植物抽出物含有顆粒は、植物抽出物に特有な不快な苦味、後味等の不快な味が抑制されている。
【0014】
本発明の他の実施形態は、植物抽出物含有顆粒からの微粉の発生を抑制する方法であって、植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含む前記植物抽出物含有顆粒の製造において、前記原料混合物として上記の組成の原料混合物を用いることを含む方法に関する。
【0015】
本発明の更に他の実施形態は、植物抽出物含有顆粒の不快な味を抑制する方法であって、植物抽出物を含む原料混合物を押出し造粒する工程を含む前記植物抽出物含有顆粒の製造において、前記原料混合物として上記の組成の原料混合物を用いることを含む方法に関する。
【0016】
植物抽出物を含む原料混合物は、後述するように、粉末原料と液体原料とを混合することで製造することができる。
【0017】
(植物抽出物)
本発明において用いる「植物抽出物」としては、ガジュツ(紫ウコン)、秋ウコン、春ウコン(キョウオウ)、センブリ、ゲンチアナ、グレープフルーツ、茶、タマネギ、ソバ、柿、大豆、コーヒー、イチゴ、ゴマ、パセリ、クララ、キハダ、ニガキ、ダイダイ、ホップ、カカオ等の植物の抽出物が挙げられる。これらの植物抽出物は、単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてよい。特に、秋ウコン、春ウコン及びガジュツから選択される1種以上の植物の抽出物が好ましい。本発明で得られる植物抽出物含有顆粒は、これらの植物抽出物の苦味、後味等の不快な味が低減されているため特に好ましい。
【0018】
本発明において「植物抽出物」とは、上記の植物の植物体の一部(例えば食品、医薬品等の用途で通常摂取される部位)又は全部の抽出溶媒による抽出物をいう。抽出溶媒としては、水、熱水、親水性有機溶媒、水と親水性有機溶媒の混合溶媒が挙げられ、アルコール、水、アルコールと水の混合溶媒が好ましく、アルコールとしてはエタノールが好ましい。水と親水性有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、水と親水性有機溶媒との混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90~90:10の範囲が好ましく、20:80~50:50の範囲がより好ましい。この植物抽出物を、粉末の形態で粉末原料の一部として用いることがより好ましい。植物抽出物の粉末は、上記の抽出により得られた溶媒相を乾燥して溶媒を除去することで調製することができる。乾燥は、前記溶媒相を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理に供することによって行うことができる。
【0019】
(シェラック)
シェラックはセラックとも呼ばれ、天然系の食品添加物として使用される樹脂である。シェラックには水不溶性のものと水溶性のものがあるが、本発明ではいずれの種類のシェラックも使用することができる。本発明において、シェラックは、顆粒中の粉末成分を結着して微粉末の発生を抑制する作用と、植物抽出物に由来する不快な味を抑制する作用を有する。シェラックは、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコールに溶解したシェラックアルコール溶液製剤の形態であってもよいし、アンモニアなどのアルカリ水溶液に溶解したシェラックアルカリ水溶液製剤の形態であってもよいし、粉末状の形態であってもよい。シェラックアルコール溶液製剤やシェラックアルカリ水溶液製剤の形態のシェラックは、液体原料の一部として用いることができる。粉末状のシェラックは、粉末原料の一部として用いることができる。シェラックアルコール溶液製剤中のシェラックの濃度は特に限定しないが、例えば、5~70%(w/w)の範囲を例示することができる。本発明の特に好ましい形態では、シェラックアルコール溶液製剤、特にシェラックエタノール溶液製剤の形態のシェラックを用いる。
【0020】
(他の成分)
原料混合物は、上記の植物抽出物、シェラック以外にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、飲食品や医薬品などの最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分であれば特に限定はされないが、例えば、糖アルコール、澱粉、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、酸化防止剤等が挙げられる。また、必要により、香料、色素、保存料等を用いてもよい。
【0021】
原料混合物は糖アルコール及び澱粉を更に含むことが特に好ましい。糖アルコールは顆粒に良好な口溶け性を付与する作用を有する。澱粉は顆粒形成のために重要である。
【0022】
糖アルコールとしては、粉末還元麦芽糖(マルチトール)、還元水飴、還元乳糖(ラクチトール)、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、イソマルチトール、トレハロース、パラチノース、還元澱粉糖化物等が挙げられる。これらの糖アルコールは、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの糖アルコールのなかでも、水に溶解しやすいこと、植物抽出物よりも吸水性が高く、混練時に吸水しても粘り気が出ないという点において、粉末還元麦芽糖が好ましい。また、原料混合物に可塑性を付与するために、原料混合物に還元水飴を添加することが好ましい。還元水飴としては、還元麦芽糖水飴が特に好ましい。還元水飴は液体原料に含まれる結合剤として用いることができる。好ましくは、糖アルコールは、粉末還元麦芽糖及び還元水飴を含む。
【0023】
澱粉としては、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉、タピオカ澱粉、及びこれらのエステル・エーテル化架橋物、酸化物、部分分解物等が挙げられる。これらの澱粉は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの澱粉のなかでも、粒子が細かく粒径が揃っているため流動性が良く、押出し造粒時の滑りが良くなること、糊化温度が高く、液体原料と混練し造粒しても粘度が高くなりにくいこと、仮に粘度が高くなっても曳糸性が少ない塑性流動粘性であるという点において、コーンスターチが好ましい。
【0024】
甘味料としては、単糖(ブドウ糖、果糖、キシロース、ガラクトース等)、二糖(ショ糖、麦芽糖、乳糖等)、オリゴ糖(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー等)、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)等が挙げられる。
【0025】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、又はこれらのナトリウム塩、カリウム塩、若しくはカルシウム塩等が挙げられる。
【0026】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
【0027】
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、カリウム等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン、カテキン等が挙げられる。
【0029】
(顆粒の製造方法)
本発明において、植物抽出物含有顆粒の製造は、原料混合物として所定の組成のものを用いる以外は、通常の押出し造粒による顆粒の製造工程、すなわち、粉末原料の混合、前記粉末原料の混合物と、結合剤を含む液体原料(練合液)との混合(練合)、押出し造粒、乾燥、整粒、篩通しによって行うことができる。
【0030】
原料混合物の組成は、粉末原料と液体原料とを混合して形成される原料組成物全体に対する組成を指す。
【0031】
原料混合物の水分量は1~10%(w/w)の範囲内であれば特に限定されないが、より好ましくは1.2~5%(w/w)である。
【0032】
原料混合物中のシェラックの含有量は特に限定されないが、好ましくは0.1~2%(w/w)であり、より好ましくは0.3~1.5%(w/w)である。シェラックの含有量は、シェラック樹脂としての含有量を指す。シェラックは溶媒中に溶解した溶液の形態であってもよいし、粉末状であってもよいが、溶液の形態であることが好ましい。
【0033】
このように低水分で且つシェラックを含む原料混合物は、押出し造粒の際に粘度が上昇し難く造粒に適している。また、低水分で且つシェラックを含む原料混合物を造粒して得た顆粒内では、粉末成分がシェラックにより結着しているため、崩壊し難く製造時及び流通時の微粉の発生が抑制される。
【0034】
原料混合物中の植物抽出物の含有量は特に限定されないが、好ましくは、10%(w/w)以上である。原料混合物中の植物抽出物の含有量の上限は特に限定されないが、例えば50%(w/w)以下、好ましくは35%(w/w)以下であることができる。ここで、原料混合物中の植物抽出物の含有量は、原料混合物の全重量に対する、植物抽出物の乾燥重量の割合である。
【0035】
押出し造粒に適した可塑性を原料混合物が有するためには、原料混合物はエタノールを含むことがより好ましく、エタノールの含有量は好ましくは3~8%(w/w)であり、より好ましくは4~6%(w/w)である。
【0036】
押出し造粒に適した可塑性を原料混合物が有するためには、原料混合物は糖アルコール及び/又は澱粉を含むことが好ましい。原料混合物は糖アルコールとして還元水飴を含むことが好ましく、還元水飴の含有量は好ましくは1~5%(w/w)であり、より好ましくは1.5~3%(w/w)である。
【0037】
原料混合物が糖アルコール(その一部は還元水飴であってもよい)を含む実施形態では、原料混合物中の糖アルコールの合計の含有量は好ましくは10~60%(w/w)であり、より好ましくは20~45%(w/w)である。還元水飴以外の糖アルコールは、より好ましくは粉末の糖アルコールであり、より好ましくは粉末還元麦芽糖である。
【0038】
原料混合物が澱粉を含む実施形態では、原料混合物中の澱粉の含有量は好ましくは5~50%(w/w)であり、より好ましくは10~25%(w/w)である。
【0039】
原料混合物が糖アルコールと澱粉とを用いる実施形態において、その混合比は、良好な造粒物を得るうえで糖アルコールに対して澱粉が同量又はそれ以下であれば限定はされないが、例えば、重量比で糖アルコール:澱粉が1:1~5:1が好ましく、1:1~3:1がより好ましい。
【0040】
原料混合物はデキストリンを含まないものであることが好ましい。
【0041】
(粉末原料の混合)
粉末原料としては、植物抽出物、糖アルコール、澱粉、他の成分等が使用できる。粉末原料を混合する方法としては、粉末原料の各成分を均一に混合できる方法であればいかなる方法でもよい。混合機械としては、例えば、V型混合機、リボン型混合機、コンテナミキサー、高速攪拌混合機等が挙げられる。混合温度としては、特に限定はされないが、10℃~35℃が好ましく、15℃~25℃がより好ましい。また、混合時間は、特に限定されないが、0.5~5分間が好ましく、1~2分間がより好ましい。植物抽出物は、最終的に得られる顆粒全量に対して、10重量%以上であることが好ましい。
【0042】
(練合)
次に、上記の粉末原料を混合した粉末混合物に、練合液として液体原料を添加して練合して、原料混合物を形成する。
【0043】
液体原料としては、シェラックアルコール溶液製剤、シェラックアンモニア水溶液製剤、還元水飴、水、エタノール、水とエタノールの混合液(エタノール水溶液製剤)等が挙げられる。また、エタノール水溶液製剤を用いる場合、その混合比は限定されず適宜選択できる。ここで、エタノール水溶液製剤は、市販のエタノール水溶液製剤のほか、酒精(食用の発酵エタノール)を用いてもよい。酒精としては、食用として供されるものであれば特に限定はされない。例えば、澱粉質や糖類を含有する天然原料から酵母の酒精発酵作用で生成したもの、又はこれらの成分を含むものがあり、清酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデー等の酒類、みりん等の発酵調味料等のように、エタノールを含有する水溶液を用いることができる。粉末混合物に対する液体原料の添加量は、練合後の原料混合物の水分量が上記範囲となる量であれば特に限定はされない。また、液体原料には、必要により結合剤を添加してもよく、例えば、単糖類、二糖類、多糖類、セルロース類、糖アルコール類、又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられ、製剤学的に許容できるものあれば特に限定はされない。また、添加量も造粒が可能である量であれば特に制限はない。なお、粉末状の結合剤を用いる場合は、前記の粉末原料中に添加してもよい。結合剤として用いる還元水飴は、液体原料の一部として用いることができる。
【0044】
(押出し造粒)
次に、上記練合後の原料混合物を押出し造粒する。押出し造粒とは、粉末原料の液体原料を配合し練合することで可塑性を付与した原料混合物を多数の穴のあいたスクリーン又は所定の孔径を有するダイスからスクリュー、ローラー等により押出して造粒することをいう。押出し造粒は、低水分条件下で、造粒物を円滑かつ効率よく製造できる点で本発明の方法には好適である。造粒機械としては、前押出し式造粒機、ディスクペレッター式造粒機、リングダイ式造粒機、バスケット式造粒機、オシレーティング式造粒機、シリンダー式造粒機等が挙げられる。本発明における押出し造粒の条件は、即溶性の良好な顆粒の嵩比重を得るために、孔径0.8~1.5mm程度の押出し孔を有するスクリーン又はダイスを用いることが好ましい。
【0045】
(乾燥、整粒)
上記造粒物の乾燥は、通常の乾燥方法によって行うことができる。乾燥に用いる乾燥機としては、例えば、通風乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、流動層乾燥機等が挙げられる。所望により、乾燥後に篩、乾式整粒機などで篩過、整粒することができる。
【0046】
本発明の方法により製造された植物抽出物含有顆粒は、食品として提供されてもよいし、経口投与用の医薬品として提供されてもよいが、好ましくは食品である。また、当該顆粒は、食品や医薬品用の容器や袋として使用される容器や袋(例えば、紙、プラスチック、ガラス、金属製の容器や袋等)に収容することが可能である。なかでも、1回の経口摂取量(例えば、1.5g~2g程度)ごとに包装された形態(スティック包装、分包包装等)が好ましい。包材としては、通常、食品や医薬品に使用されているものであれば限定されないが、例えば、アルミ箔、合成樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ラミネート紙などを組み合わせたものが使用できる。
【0047】
本発明の方法により製造された植物抽出物含有顆粒は好ましくは口腔内即溶性顆粒である。口腔内即溶性顆粒は、水無しで服用しても、唾液の存在下で即時に溶解するので、場所や時間を選ばず簡便に服用することができる。
【実施例
【0048】
実施例及び比較例において使用した原料を以下に示す。以下、「%」は特に限定しない限り「%(w/w)」を指す。
エタノール水溶液製剤:「コーヘルシン」(三菱化学フーズ株式会社製、エタノール68%)
還元麦芽糖水飴:「アマルティシロップ」(三菱商事フードテック株式会社製)
シェラックエタノール溶液製剤:「ドラックHAS-312」(株式会社岐阜セラツク製造所製、シェラック樹脂25%、エタノール75%を含む溶液製剤)
粉末還元麦芽糖:「レシス微粉」(三菱商事フードテック株式会社製、マルチトール99.5%含有)
コーンスターチ:「コーンスターチ」(三和澱粉工業株式会社製)
【0049】
<1.試験品の調製>
表1に示す配合(%(w/w))で、液体原料のエタノール水溶液製剤、還元麦芽糖水飴(結合剤)、シェラックエタノール溶液製剤、香料等を混合して溶解し、混合溶液を調製した。一方、表1に示す配合(%(w/w))でウコンエキス(秋ウコンエキス及び春ウコンエキス)、ガジュツエキス、コーンスターチ、粉末還元麦芽糖、甘味料、酸味料等を均一に混合して粉末混合物を調製した。前記混合溶液を練合液として用いて前記粉末混合物にスプレー添加し、練合した。練合後の原料混合物を、押出し造粒機(株式会社ダルトン社製、マルチグランMG-55-1)を用いて孔径1.3mmのスクリーンに押し出して造粒し、吸気温度60℃で10分乾燥後放冷し、比較例及び実施例1~3の試験品の顆粒を調製した。
【0050】
【表1】
【0051】
<2.微粉量の計測>
各試験品の顆粒を目開き212μmのJIS試験用篩により分級し、篩を通過する顆粒(粒度212μm未満)の重量と、篩上に残留する顆粒(粒度212μm以上)の重量を計測し、それぞれの割合(%(w/w))を求めた。
【0052】
結果を表2に示す。
【0053】
液体原料にシェラックを含まない比較例では212μm未満の微粉が約40%であったのに対して、液体原料にシェラックを含む実施例1~3では212μm未満の微粉が約22%以下であり、シェラックの配合量が高いほど、微粉の生成が抑制された。
【0054】
【表2】
【0055】
<3.苦味、後味の評価>
5人のパネラー(被験者1~5)が、各試験品の顆粒を1.8g摂取し、苦味と後味を5段階評価した。苦味、後味が「弱い」を「1」、「やや弱い」を「2」、「ふつう」を「3」、「やや強い」を「4」、「強い」を「5」とした。苦味及び後味について、それぞれ、5人のパネラーによる評価点の平均点を求めた。
【0056】
結果を下記表に示す。シェラックを多く添加するほど顆粒の苦味及び後味が抑制されることが示された。
【0057】
【表3】
【0058】
<4.造粒適性の評価>
混練後の原料混合物が200gとなるスケールで上記の押出し造粒を行ったときの、各試験品の造粒適性を、造粒機での最小造粒負荷と最大造粒負荷(電流値(A))により評価した。最小造粒負荷は、造粒開始時の造粒負荷に相当する。最大造粒負荷は、原料混合物が混練されて最も粘性が高まったときの造粒負荷に相当する。
【0059】
結果を下記表に示す。シェラックを添加しない比較例では、原料混合物が混練されて粘性が高まるため、最大造粒負荷と最小造粒負荷との差が大きい(0.3A)。シェラックを多く添加するほど、原料混合物が混練されたときの粘性の上昇が抑制され、最大造粒負荷と最小造粒負荷との差が小さくなることが確認された。すなわち、シェラックの添加により造粒適性が向上することが示された。
【0060】
【表4】
【0061】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。