(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】チェーン式コンベア装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20240116BHJP
B65G 19/08 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B65G43/00 D
B65G19/08
(21)【出願番号】P 2019029464
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】村井 康夫
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-156663(JP,A)
【文献】特開2005-138259(JP,A)
【文献】特開2013-101059(JP,A)
【文献】特開平09-300171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0190794(US,A1)
【文献】実開昭59-130808(JP,U)
【文献】特開昭59-198215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00-43/10
B65G 19/00-19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に粉粒体の供給口と他端に排出口を有するダクトと、前記ダクト内に配置する駆動スプロケット及び従動スプロケットと、前記駆動スプロケット及び従動スプロケットにかけ渡して循環移動するコンベアチェーンと、前記コンベアチェーンの
リンクプレートの両側面
に固定して搬送方向と交差する方向に延出して前記コンベアチェーンの循環移動に伴って前記ダクト内の前記粉粒体を搬送方向に押し出す搬送プレートと、を有するチェーン式コンベア装置において、
前記供給口に接続する供給手段から供給される前記粉粒体の搬送量を計測する計量部と、
前記計量部と、前記駆動スプロケットに接続する駆動モータと電気的に接続して、前記計量部の測定値が、設定搬送負荷よりも大きいとき前記駆動モータの設定速度よりも速くし、前記設定搬送負荷以下のとき前記設定速度以下の低速にする制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とするチェーン式コンベア装置。
【請求項2】
一端に粉粒体の供給口と他端に排出口を有するダクトと、前記ダクト内に配置する駆動スプロケット及び従動スプロケットと、前記駆動スプロケット及び従動スプロケットにかけ渡して循環移動するコンベアチェーンと、前記コンベアチェーンの
リンクプレートの両側面
に固定して搬送方向と交差する方向に延出して前記コンベアチェーンの循環移動に伴って前記ダクト内の前記粉粒体を搬送方向に押し出す搬送プレートと、を有するチェーン式コンベア装置の運転方法において、
前記供給口に接続する供給手段から供給される前記粉粒体の搬送量を計測する工程と、
前記粉粒体の計量測定値が設定搬送負荷よりも大きいとき前記
駆動スプロケットに接続する駆動モータの設定速度よりも速くし、前記設定搬送負荷以下のとき前記設定速度以下の低速にする制御を行う工程と、
を有することを特徴とするチェーン式コンベア装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、石膏、木粉、穀類などの粉粒体を連続的に搬送することができるチェーン式コンベア装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の石炭、石膏、木粉、穀類などをほぼ水平方向に搬送する装置にチェーン式コンベアがある。このチェーン式コンベアは、搬送方向に長く形成した四角断面のダクトの空間内部に搬送物となる粉粒体を受け入れてダクト空間内を搬送移動させている(例えば特許文献1、2に開示あり)。
図3は従来のチェーン式コンベア装置の説明図であり、(1)は一部拡大した平面図、(2)は一部拡大した側面図、(3)は一部拡大した正面図である。ダクト1内の底面にコンベアチェーン2と、コンベアチェーン2の左右に粉粒体を搬送方向に押す搬送プレート3を取り付けて、コンベアチェーン2を無端状に連結して、ダクト1空間の長手方向に一方から粉粒体を受け入れて他方の搬送先に排出している(
図3(1)参照)。
排出部は、空間の底部に開口部を設けて、コンベアチェーン2及び搬送プレート3によって掻き寄せられた粉粒体を落下させる構造が一般的に採用されている。
このとき単位時間当たりの搬送量は、粉粒体を搬送する空間の充填量によって決まる。充填量が多い(搬送負荷が大きい)場合は、四角断面の内壁を粉粒体が滑りながら搬送されて、粉粒体の移動方向の反力と自重によって、コンベアチェーン2と搬送プレート3が自由な動きをすることなく、コンベアチェーン2の引張方向へ搬送移動する。
【0003】
そしてダクト内部は、粉粒体で充填されているので、コンベアチェーン2と空間内壁の摺動音が遮音されている。さらに空間内壁の振動(内壁の可動を抑制する)も搬送物の内壁を押す力で振動を抑えられるので騒音や振動の影響は少ない。
しかしながら、搬送空間内の充填量が少なくなる(搬送負荷(以下単に負荷ということあり)が小さい)と、コンベアチェーン2と内壁底部に取り付けられたレール側面の摺動音が、充填物によって吸収されて抑えられることなく、騒音の悪影響が顕在化する。内部空間が多くなると内部で発生した摺動音が共鳴箱の効果でさらに増幅される。
例えば移動によって、チェーンローラが摩耗して、ローラ高さ寸法が小さくなると、コンベアチェーン2のリンクプレートや搬送プレート3が内部で接触し騒音発生の機会が増える(
図3(2)参照)。さらに、搬送量が少なくなるとダクト1内に投入された粉粒体が、コンベアチェーン2の左右均等に落下することが困難となって、左右のいずれかに偏ってしまい、負荷のアンバランスが生じる(
図3(3)参照)。
その結果、コンベアチェーン2が蛇行して、コンベアチェーン2のリンクプレートとチェーンレールの側面が接触して擦れ音が発生する。負荷が少ない状態において、ダクト1内壁が振動して共鳴箱のように騒音が発生するトラブルが発生する。その他にも、搬送プレート3に作用する回転力によって、コンベアチェーン2のリンクプレートや搬送プレート3が回転方向に動いて、内壁と接触する機会が増えて騒音発生の主な原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-237924号公報
【文献】特許第5931651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、チェーン式コンベアの搬送負荷状況によって変化するコンベア運転の騒音を低減できるチェーン式コンベア装置及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、一端に粉粒体の供給口と他端に排出口を有するダクトと、前記ダクト内に配置する駆動スプロケット及び従動スプロケットと、前記駆動スプロケット及び従動スプロケットにかけ渡して循環移動するコンベアチェーンと、前記コンベアチェーンのリンクプレートの両側面に固定して搬送方向と交差する方向に延出して前記コンベアチェーンの循環移動に伴って前記ダクト内の前記粉粒体を搬送方向に押し出す搬送プレートと、を有するチェーン式コンベア装置において、
前記供給口に接続する供給手段から供給される前記粉粒体の搬送量を計測する計量部と、
前記計量部と、前記駆動スプロケットに接続する駆動モータと電気的に接続して、前記計量部の測定値が、設定搬送負荷よりも大きいとき前記駆動モータの設定速度よりも速くし、前記設定搬送負荷以下のとき前記設定速度以下の低速にする制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とするチェーン式コンベア装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、搬送負荷が少なくなったときに発生する金属擦れ音などの騒音を効果的に防止できる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、一端に粉粒体の供給口と他端に排出口を有するダクトと、前記ダクト内に配置する駆動スプロケット及び従動スプロケットと、前記駆動スプロケット及び従動スプロケットにかけ渡して循環移動するコンベアチェーンと、前記コンベアチェーンのリンクプレートの両側面に固定して搬送方向と交差する方向に延出して前記コンベアチェーンの循環移動に伴って前記ダクト内の前記粉粒体を搬送方向に押し出す搬送プレートと、を有するチェーン式コンベア装置の運転方法において、
前記供給口に接続する供給手段から供給される前記粉粒体の搬送量を計測する工程と、
前記粉粒体の計量測定値が設定搬送負荷よりも大きいとき前記駆動スプロケットに接続する駆動モータの設定速度よりも速くし、前記設定搬送負荷以下のとき前記設定速度以下の低速にする制御を行う工程と、
を有することを特徴とするチェーン式コンベア装置の運転方法を提供することにある。
上記第2の手段によれば、搬送負荷が少なくなったときに発生する金属擦れ音などの騒音を効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンベアに供給される負荷を上流側設備で計量して、設定搬送負荷以下のときにコンベア装置の搬送速度を遅くする制御をしている。これにより、省エネ、摩耗寿命改善、騒音低減などに有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のチェーン式コンベア装置の概略構成図である。
【
図2】搬送速度と搬送負荷の関係を示すグラフである。
【
図3】従来のチェーン式コンベア装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のチェーン式コンベア装置及びその運転方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
[チェーン式コンベア装置10]
図1は、本発明のチェーン式コンベア装置の概略構成図である。図示のように本発明のチェーン式コンベア装置10(以下、単にコンベア装置10ということあり)は、一端に粉粒体12の供給口22と他端に排出口24を有するダクト1と、前記ダクト1内に配置する駆動スプロケット30及び従動スプロケット32と、前記駆動スプロケット30及び従動スプロケット32にかけ渡して循環移動するコンベアチェーン2と、前記コンベアチェーン2の両側面から搬送方向と交差する方向に延出して前記ダクト1内の前記粉粒体12を搬送方向に押し出す搬送プレート3と、前記供給口22に接続する供給手段14から供給される前記粉粒体12の搬送量を計測する計量部50と、前記計量部50と、前記駆動スプロケット30に接続する駆動モータ31と電気的に接続して、前記計量部50の測定値が、設定搬送負荷よりも大きいとき前記駆動モータ31の設定速度よりも速くし、前記設定搬送負荷以下のとき前記設定速度以下の低速にする制御を行う制御部60と、を備えている。
【0011】
計量部50は、供給口22に接続するコンベア、ホッパ、シュートなどの供給手段14から供給される粉粒体12の搬送量を計測している。本実施形態の供給手段14は、船、車両、貨車などから投入されるコンベア、ホッパ、シュート、バケット、ホイルローダなどの搬送設備である。このような搬送設備からコンベア装置10に供給される粉粒体による負荷は一定ではなく変動している。本実施形態の搬送量は、コンベア装置10に対する搬送される粉粒体の負荷(搬送負荷)とみなし、搬送量が多いとき搬送負荷が大きく、搬送量が少ないとき搬送負荷が小さくなる。
【0012】
制御部60は、計量部50と駆動スプロケット30に接続する駆動モータ31と電気的に接続している。制御部60は、計量部50の測定値となる搬送量、換言すると搬送負荷に基づいて、駆動モータ31の回転速度(コンベアチェーン2の搬送速度)を制御している。より具体的な制御部の制御は、コンベアチェーン2への投入量が少ない、換言すると搬送量が少ないときに生じる搬送プレートの左右の負荷が不均一の蛇行、かつダクト1の側壁と接触する金属擦れ音や、搬送プレートに傾く反力が作用して搬送プレートを固定しているリンクプレートが持ち上がり底面と局部接触して金属擦れ音が発生しないように、駆動モータ31へ搬送速度を遅くする制御信号を送る。
図2は搬送速度と搬送負荷の関係を示すグラフである。制御信号は、一例として、あらかじめ設定搬送負荷(
図2中のA)と、このときの設定搬送速度Bを設定しておき、測定値がこの設定搬送負荷Aよりも大きいとき、設定搬送速度(
図2中のB)よりも速く搬送する。例えば、搬送負荷の増加に比例して搬送速度を増加させる設定を行っている。この他、設定速度よりも速い任意の定速で搬送しても良い。そして、測定値が設定搬送負荷以下のとき、設定搬送速度以下の低速となるように設定している。
【0013】
[チェーン式コンベア装置10の運転方法]
上記構成による本発明のチェーン式コンベア装置の運転方法について、以下説明する。
本実施形態のコンベア装置10は、
図1に示すように発電所等において燃料の石炭やバイオマスを貯蔵する貯蔵サイロに設置して使用される。石炭やバイオマス燃料(例えば木質粉、木質ペレットなど)は、各地から船、車両、貨車などで運ばれてホッパに受け入れている。この搬入は連続ではなく、一旦ヤードや大きな容器に受け入れて、産地毎に物性が異なる石炭やバイオマス燃料の水分調整や熱量調整を目的に混合される。この調整後、コンベア装置10で貯蔵サイロに貯めて、後段の燃料使用設備(発電所、熱利用工場など)に搬送する。このとき燃料使用設備から要求された熱量に見合うように、石炭とバイオマス燃料の貯蔵サイロからそれぞれ計量排出し、ブレンドして燃料として使用される。
従来、一般的なコンベア装置の運転方法は、搬送量を一定にするため、搬送物が少ないときに搬送速度を速く設定している。
貯蔵サイロへの燃料の受入れは、搬送手段の種類、搬入量、搬入時刻が一定ではなく、通常、日中に行われる。貯蔵サイロは、燃料使用先に供給切れがないように一定以上ストックしておかなければならない。本実施形態のコンベア装置は、ヤードから貯蔵サイロへ粉粒体を搬送するコンベアであり、夜間には騒音問題のため停止することもできる。しかし発電所などでは連続して供給しなければならないのでヤードからサイロの間のコンベア装置は連続して運転される。この場合、夜間も想定されるため、騒音が発生しないように運転制御が求められる。
【0014】
ヤードから供給される粉粒体の搬送量を計量部50で計量する。測定値が制御部60に送られる。制御部60では搬送負荷に応じた以下のような搬送制御が行われる。
あらかじめ設定搬送負荷Aと、このときの設定搬送速度Bを定めておく。このとき、粉粒体の有無に関わらず、擦れ音などの騒音は発生しない。
搬送量の測定値が設定搬送負荷Aよりも大きいときは、設定搬送速度Bよりも速く搬送する。例えば、搬送負荷の増加に比例して搬送速度を増加させる設定を行っている。この他、設定速度よりも速い任意の定速で搬送しても良い。
そして粉粒体が少なくなって設定搬送負荷A以下の小さいとき、設定搬送速度以下の低速にする制御を行う。
これによりコンベアチェーン2の搬送負荷の変化によって発生するコンベア運転の騒音を低減できる。例えば、搬送量が少なくなると、搬送プレート3の左右の負荷が不均一となって蛇行しやすくなってダクト1の側壁と金属が接触して金属擦れ音が発生するが、この騒音を回避できる。
また搬送量が少なくなると、搬送プレート3が傾く反力が作用して搬送プレート3を固定しているリンクプレートが持ち上がる。そしてリンクプレートや搬送プレート3が底面に局部的に金属接触して金属擦れ音が発生するが、搬送量が少なくなっても搬送プレート3が傾かず、リンクプレートが持ち上がることがない。
従って、各パーツの摺動摩耗量を減らすことができてメンテナンス頻度及び経年劣化を低減できる。また騒音発生を低減できる。さらに、駆動モータの消費電力を低減できて装置全体の省エネ化が図れる。
また、設定搬送負荷以下時の搬送速度の低速制御によってコンベアチェーン駆動のトルクが増加して張力も増加するので、蛇行を回避でき擦れ音などの騒音も発生することがない。
【0015】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のチェーン式コンベア装置及びその運転方法は、特に石炭、石膏、木粉、穀類などの粉粒体の貯蔵、搬送設備において産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0017】
1 ダクト
2 コンベアチェーン
3 搬送プレート
10 チェーン式コンベア装置
22 供給口
24 排出口
30 駆動スプロケット
31 駆動モータ
32 従動スプロケット
50 計量部
60 制御部