(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】制御装置、収納ラック、ファン制御システム、ファン制御方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240116BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H05K7/20 U
H05K7/20 J
H01L23/46 C
(21)【出願番号】P 2019041159
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】白地 隆弘
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/010617(WO,A1)
【文献】特開2011-226737(JP,A)
【文献】特開2009-140421(JP,A)
【文献】特開昭59-055100(JP,A)
【文献】特開2009-134507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御するファン制御部と
を備え
、
前記ファン制御部が利用する情報には、前記電子機器の内部に設けられ当該電子機器の内部から外部への排気の温度を検出する排気温度センサのセンサ出力値と、前記筐体に設けられ前記排気ファンによる排気を冷却する冷媒が循環する循環路において前記排気と前記冷媒の熱交換を行う部分に流入する前記冷媒の温度を検出する冷媒温度センサのセンサ出力値との両方が含まれる制御装置。
【請求項2】
前記取得部により取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンの回転数の下限値を設定する下限値設定部をさらに備え、
前記ファン制御部は、前記排気ファンの駆動制御に利用する予め定められた情報を取得し当該取得した情報を利用して、前記排気ファンの回転数を、前記下限値設定部により設定された前記下限値から所定の上限値までの回転数範囲内で設定し、当該設定した回転数に基づいて前記排気ファンを駆動制御する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記収納ラックの前記筐体内に複数の前記電子機器が収納されている場合には、前記下限値設定部は、前記筐体内の前記電子機器からそれぞれ取得した前記空冷ファンの回転数に関する情報を利用して、前記筐体内の前記電子機器の空冷ファンによるトータルの風量を算出し、前記排気ファンによる排気の風量がトータルの風量を下回らないように前記排気ファンの回転数の下限値を設定する請求項
2に記載の制御装置。
【請求項4】
空冷ファンを備えた電子機器を収納する筐体と、
筐体に設けられ前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンと、
請求項1乃至請求項
3の何れか一つに記載の制御装置と
を備える収納ラック。
【請求項5】
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報を取得する取得部を備える監視装置と、
前記取得部により取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御するファン制御装置と
を備え
、
前記ファン制御装置が利用する情報には、前記電子機器の内部に設けられ当該電子機器の内部から外部への排気の温度を検出する排気温度センサのセンサ出力値と、前記筐体に設けられ前記排気ファンによる排気を冷却する冷媒が循環する循環路において前記排気と前記冷媒の熱交換を行う部分に流入する前記冷媒の温度を検出する冷媒温度センサのセンサ出力値との両方が含まれるファン制御システム。
【請求項6】
前記監視装置は、前記収納ラックの前記筐体の外に配置されている請求項
5に記載のファン制御システム。
【請求項7】
コンピュータによって、
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報を取得し、
取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御
し、
前記排気ファンの駆動制御に利用する情報には、前記電子機器の内部に設けられ当該電子機器の内部から外部への排気の温度を検出する排気温度センサのセンサ出力値と、前記筐体に設けられ前記排気ファンによる排気を冷却する冷媒が循環する循環路において前記排気と前記冷媒の熱交換を行う部分に流入する前記冷媒の温度を検出する冷媒温度センサのセンサ出力値との両方が含まれるファン制御方法。
【請求項8】
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報を取得する処理と、
取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御する処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム
であって、
前記排気ファンを駆動制御する処理で利用する情報には、前記電子機器の内部に設けられ当該電子機器の内部から外部への排気の温度を検出する排気温度センサのセンサ出力値と、前記筐体に設けられ前記排気ファンによる排気を冷却する冷媒が循環する循環路において前記排気と前記冷媒の熱交換を行う部分に流入する前記冷媒の温度を検出する冷媒温度センサのセンサ出力値との両方が含まれるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を収納する収納ラックの筐体内の排気を行うファンの駆動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク接続に利用するネットワーク機器やサーバなどの電子機器が集約されて収納ラックに収納される場合がある。収納ラックには、当該収納ラックの筐体に設置され筐体内から外部へと排気を行うファンが設けられている種類がある。そのファンの駆動による筐体内から外部への排気によって、電子機器から発せられた熱が筐体の外部に排出され、これにより、筐体内(収納ラック内)の温度上昇を抑制することが図られている。そのファンの駆動制御は、例えば、収納ラック内の温度を検出する温度センサのセンサ出力値に応じてファンの回転数を増減させることにより行われる。
【0003】
なお、特許文献1(特開2017-54216号公報)には、ラック装置内に収納されている情報処理装置の消費電力を求め、求めた消費電力に応じて吸排気のダクトの開閉を制御する構成が示されている。また、特許文献2(特開2010-43817号公報)には、サーバ室の内部を、サーバを収納するラックが配置されているホットゾーンと、サーバが配置されていないクールゾーンとに区画する構成が示されている。さらに、特許文献2には、ホットゾーンからクールゾーンへの風量と、クールゾーンからホットゾーンへの風量とがほぼ等しくなるように送風機による風量を制御する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-54216号公報
【文献】特開2010-43817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したように、収納ラック内の温度上昇を抑制すべく、ファン駆動により収納ラック内の排気を行っているのにも拘わらず、収納ラック内の一部領域(例えば、床面に近い領域)の温度が上昇してしまうことがある。そのように温度が上昇してしまう領域に熱に弱い部品(例えば、ケーブル端子部分に設けられるQSFP(Quad Small Form-factor Pluggable)等の通信モジュール)があると、当該部品が熱損傷してしまう事態が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は上記課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、電子機器を収納する収納ラックの筐体内において一部領域の温度が上昇してしまう事態(以下、熱だまりとも記す)を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る制御装置の一形態は、
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報、あるいは、前記電子機器の内部から外部に排出される排気の温度に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御するファン制御部と
を備える。
【0008】
本発明に係る収納ラックの一形態は、
空冷ファンを備えた電子機器を収納する筐体と、
筐体に設けられ前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンと、
本発明の制御装置と
を備える。
【0009】
本発明に係るファン制御システムの一形態は、
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報、あるいは、前記電子機器の内部から外部に排出される排気の温度に関する情報を取得する取得部を備える監視装置と、
前記取得部により取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御するファン制御装置と
を備える。
【0010】
本発明に係るファン制御方法の一形態は、
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報、あるいは、前記電子機器の内部から外部に排出される排気の温度に関する情報を取得し、
前記取得部により取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御する。
【0011】
本発明に係るコンピュータプログラムの一形態は、
空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている前記電子機器の前記空冷ファンの回転数に関する情報、あるいは、前記電子機器の内部から外部に排出される排気の温度に関する情報を取得する処理と、
前記取得部により取得された情報を利用して、前記収納ラックの前記筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が前記電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように前記排気ファンを駆動制御する処理と
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子機器を収納する収納ラックの筐体内において一部領域の温度が上昇してしまう熱だまりの事態発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の制御装置を備えた収納ラックの内部構成を説明する図である。
【
図2】収納ラックに収納される電子機器の内部構成の一例を表す図である。
【
図3】第1実施形態の制御装置の構成を簡略化して表すブロック図である。
【
図4】第1実施形態の制御装置における動作の一例を表すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の制御装置における別の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態のファン制御システムの構成を説明する図である。
【
図7】第2実施形態のファン制御システムが適用されている収納ラックの構成を説明する図である。
【
図8】ファン制御システムのその他の実施形態を説明する図である。
【
図9】第3実施形態における電子機器の内部構成を説明する図である。
【
図10】本発明に係る制御装置のその他の実施形態を説明する図である。
【
図11】本発明に係る収納ラックのその他の実施形態を説明する図である。
【
図12】本発明に係るファン制御システムのその他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は本発明に係る第1実施形態の制御装置を備えた収納ラックの内部構成を説明する図である。収納ラック1は、電子機器を収納する筐体2を有する。
図1の例では、筐体2の内部2aには、電子機器として、複数のサーバ11と、それらサーバ11のネットワーク接続を制御するネットワークスイッチ12とが収納されている。
【0016】
図2は、筐体2に収納されるサーバ11やネットワークスイッチ12等の電子機器の内部構成の一例を簡略化して表す図である。
図2の例では、電子機器は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ31と、半導体メモリ等の記憶装置32とを備える。プロセッサ31と記憶装置32は筐体30の内部に収納されている。筐体30の内部には、空冷ファン34が配置されている。この空冷ファン34は、筐体30に設けられた給気口(図示せず)と、プロセッサ31および記憶装置32の配置領域と、筐体30に設けられた排気口(図示せず)とを通る経路の通風を発生させることにより、プロセッサ31等を空冷する。また、筐体30の内部には、給気温度センサ35が設けられている。この給気温度センサ35は、空冷ファン34の駆動による通風の経路においてプロセッサ31および記憶装置32の配置領域(空冷対象領域)よりも上流側に配置されており、空冷対象領域に流れ込む通風(給気)の温度を検出する。例えば、空冷ファン34は、給気温度センサ35により検出される温度に応じて回転数が制御される。
【0017】
なお、第1実施形態では、サーバ11には、管理用コントローラであるBMC(Base Management Controller)が搭載されている。このBMCは、IPMI(Intelligent Platform Management Interface)による標準仕様に応じた構成を備えており、ここでは、その構成の説明は省略する。
【0018】
第1実施形態の収納ラック1の筐体2には、上述のような内部構成を持つ電子機器が収納される収納空間2aの開口部が形成されており、当該開口部を開閉自在なドア3が筐体2に備えられている。ドア3は、筐体2の収納空間2aから筐体2の外部への排気を通す構成を備えている。また、ドア3には、排気ファン4(
図1の例では複数の排気ファン4)が搭載されており、当該排気ファン4の駆動により、筐体2の収納空間2aから外部にドア3を通って排気が行われる。なお、筐体2には、例えばドア3に対向する筐体部分に外部から収納空間2aに給気する給気孔(図示せず)が設けられている。
【0019】
さらに、ドア3には、当該ドア3を通る排気を冷却する冷媒が循環する循環路5の受熱部6が設けられている。つまり、循環路5は、冷媒が排気と熱交換することにより排気を冷却する受熱部6と、冷媒に放熱させて冷媒を冷却する放熱部(図示せず)とを通って冷媒が循環する循環路である。このような循環路5の受熱部6が、排気ファン4の駆動による排気の通風経路内に位置するようにドア3に設けられている。循環路5には、受熱部6に流入する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ7が設けられている。
【0020】
さらに、筐体2には、収納空間2aの温度を検出する温度センサ8が設けられている。第1実施形態では、温度センサ8の設置位置は、排気ファン4の駆動による排気の通風経路において受熱部6よりも上流側の排気の温度を検出する位置となっている。
【0021】
さらにまた、筐体2には、制御装置10が設けられている。制御装置10は、排気ファン4を駆動制御する機能を備えている。第1実施形態では、制御装置10は、収納ラック1の筐体2の内部に収納されているサーバ11のBMCと接続されており、当該BMCから情報を取得可能な構成となっている。また、制御装置10は、ネットワークスイッチ12とも接続されており、ネットワークスイッチ12からも情報を取得可能となっている。
【0022】
図3は、制御装置10の構成を簡略化して表すブロック図である。制御装置10は、CPU等のプロセッサ20と、記憶装置21とを備えている。
【0023】
記憶装置21は、コンピュータプログラム(以下、プログラムとも記す)27や各種データを記憶する記憶媒体である。記憶媒体には、ハードディスク装置や、半導体メモリなどの様々な種類があり、ここでは、何れの種類の記憶媒体も記憶装置21として採用してよく、記憶媒体の構成の説明は省略する。また、複数種の記憶媒体が制御装置10に備えられる場合があるが、ここでは、このような場合であっても、便宜上、まとめて記憶装置21と記す。
【0024】
プロセッサ20は、記憶装置21のプログラム27を読み出し、当該プログラム27を実行することにより、プログラム27に基づいた機能を持つことができる。例えば、第1実施形態では、プロセッサ20は、機能部として、取得部23と、下限値設定部24と、ファン制御部25とを備えている。
【0025】
取得部23は、冷媒温度センサ7のセンサ出力値と、温度センサ8のセンサ出力値とを予め定められたタイミング(例えば、所定の時間間隔毎)でもって取得する機能を備える。さらに、取得部23は、収納ラック1の筐体2内に収納されている各サーバ11のBMCから空冷ファン34の回転数の情報を予め定められたタイミング(例えば、所定の時間間隔毎)でもって取得する機能をも備える。また、取得部23は、上記同様に、ネットワークスイッチ12に設けられた空冷ファン34の回転数の情報をも取得する機能を備える。
【0026】
さらにまた、取得部23は、取得したセンサ出力値を、発信元のセンサを識別するセンサ識別情報やセンサ出力値の出力時間(あるいは取得時間)などの情報を関連付けて記憶装置21に登録する機能を備えていてもよい。さらに、取得部23は、サーバ11等から取得した空冷ファン34の回転数の情報を、取得元のサーバ11を識別する識別情報や取得時間などの情報を関連付けて記憶装置21に登録する機能を備えていてもよい。
【0027】
下限値設定部24は、収納ラック1の筐体2の内部に熱だまりが発生する事態を防止すべく、排気ファン4の回転数の下限値を設定する機能を備えている。つまり、筐体2の内部の熱だまりは、サーバ11の空冷ファン34による風量が筐体2の排気ファン4による風量よりも多くて筐体2の内部の通風がスムーズにドア3を通って外部に排出されないことに因ると考えられる。このことから、下限値設定部24は、筐体2の排気ファン4による風量がサーバ11の空冷ファン34による風量を下回らないように排気ファン4の回転数の下限値を可変設定する機能を備える。
【0028】
第1実施形態では、下限値設定部24は、排気ファン4の回転数の下限値の設定に、サーバ11とネットワークスイッチ12の空冷ファン34の回転数の情報を利用する。すなわち、ファン駆動による風量はファンの回転数に比例して増減する。このことから、下限値設定部24は、取得部23により取得された空冷ファン34の回転数に、空冷ファン34の性能等に基づいて予め定められる比例定数を乗算して空冷ファン34による風量を算出する。第1実施形態では、筐体2の内部に複数のサーバ11とネットワークスイッチ12が収納されており、複数の空冷ファン34があることから、下限値設定部24は、各空冷ファン34による風量を算出した後に、それら空冷ファン34による風量の総和を算出する。下限値設定部24は、算出された風量の総和を、排気ファン4による風量の下限値として設定し、当該風量の下限値と、排気ファン4の性能等により予め定められる比例定数とを利用して、排気ファン4の回転数の下限値を算出する。排気ファン4が複数設けられている場合には、下限値設定部24は、複数の排気ファン4の駆動によるトータルの風量が、上述のように設定した風量の下限値となる各排気ファン4の回転数を当該回転数の下限値として算出する。
【0029】
ファン制御部25は、取得部23により取得された冷媒温度センサ7のセンサ出力値および温度センサ8のセンサ出力値を利用して、筐体2から外部に排出される排気の温度が設定された温度となるように排気ファン4の回転数を制御する機能を備える。ファン制御部25が排気ファン4の回転数を制御する手法は、ここでは、限定されない。ただ、第1実施形態では、ファン制御部25は、下限値設定部24により設定された下限値から排気ファン4の仕様等により定められた上限値までの回転数範囲内で排気ファン4の回転数を制御する。つまり、排気ファン4の回転数を可変制御する回転数範囲の上限値と下限値は、排気ファン4の性能や仕様等によって予め設定され、通常、その設定された固定の回転数範囲内で排気ファン4の回転数が制御される。これに対し、第1実施形態では、サーバ11等の空冷ファン34の駆動制御状況に応じて排気ファン4の回転数の下限値が下限値設定部24により可変設定される。このため、ファン制御部25は、次のような処理も行う。
【0030】
例えば、ファン制御部25は、上述したような固定の回転数範囲内で排気ファン4を制御する回転数の候補値を算出する。そして、ファン制御部25は、その算出した候補値と、下限値設定部24により設定された回転数の下限値とを比較し、候補値が下限値以上である場合には、当該候補値を回転数の目標値として確定する。一方、ファン制御部25は、候補値と下限値設定部24による下限値との比較により、候補値が下限値未満である場合には、下限値設定部24による下限値を回転数の目標値として確定する。そして、ファン制御部25は、そのように確定した回転数の目標値となるように、排気ファン4の回転数を制御する。
【0031】
第1実施形態の制御装置10およびそれを備えた収納ラック1は、上記のように構成されている。次に、制御装置10における排気ファン4の下限値を設定する制御動作の一例と、排気ファン4を駆動制御する動作の一例とを
図4、
図5を利用して説明する。なお、
図4は、排気ファン4の下限値を設定する処理工程を表すフローチャートであり、
図5は、排気ファン4を駆動制御する処理工程を表すフローチャートである。
【0032】
例えば、制御装置10の下限値設定部24は、サーバ11およびネットワークスイッチ12から空冷ファン34の回転数の情報を取得する(
図4のステップS1)。そして、下限値設定部24は、取得した回転数に、空冷ファン34の性能等により予め定められ与えられている比例定数を乗算することにより、空冷ファン34による風量を算出する(ステップS2)。さらに、下限値設定部24は、筐体2の内部に収納されているサーバ11とネットワークスイッチ12の全ての電子機器の空冷ファン34による風量の総和を算出する(ステップS3)。然る後に、下限値設定部24は、算出した風量の総和から、排気ファン4の性能等により予め定められ与えられている比例定数を利用して排気ファン4の回転数の下限値を算出する(ステップS4)。その後、下限値設定部24は、予め定められた処理開始の次のタイミングに備え、当該処理開始のタイミングとなった場合に、ステップS1以降の動作を実行する。
【0033】
ファン制御部25は、
図5に表されるような排気ファン4の駆動制御に係る処理工程を実行する。すなわち、ファン制御部25は、冷媒温度センサ7と温度センサ8のセンサ出力値による温度情報を利用して、排気ファン4の回転数の候補値を算出する(ステップS11)。そして、ファン制御部25は、算出した候補値と、下限値設定部24により算出された排気ファン4の回転数の下限値とを比較し、候補値が下限値以上であるか否かを判断する(ステップS12)。この比較の結果、候補値が下限値以上である場合には、ファン制御部25は、候補値を排気ファン4の回転数の目標値として確定する(ステップS13)。一方、候補値が下限値以上でない(候補値が下限値未満である)場合には、ファン制御部25は、下限値を排気ファン4の回転数の目標値として確定する(ステップS14)。そして、ファン制御部25は、そのように確定した回転数の目標値となるように排気ファン4の回転数を制御する。このようなファン制御部25の一連の処理は繰り返し行われる。
【0034】
以上のように、第1実施形態の収納ラック1は、筐体2と、排気ファン4と、制御装置10とを備え、制御装置10は、排気ファン4による風量がサーバ11等の電子機器の空冷ファン34による風量を下回らないように排気ファン4の回転数の下限値を設定する機能を備える。これにより、制御装置10およびそれを備えた収納ラック1は、排気ファン4による風量が空冷ファン34による風量を下回ることを防止できる。このため、制御装置10およびそれを備えた収納ラック1は、排気ファン4による風量が空冷ファン34による風量を下回ったことに因る筐体2の内部の熱だまりが発生することを防止でき、熱だまりの熱に因る部品や装置の熱損傷を防止できる。
【0035】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態では、ファン制御システムの一実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態における制御装置と収納ラックと電子機器(サーバとネットワークスイッチ)を構成する構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0036】
図6は、第2実施形態におけるファン制御システムの一実施形態の構成を簡略化して表すブロック図である。第2実施形態のファン制御システム15は、監視装置16と、ファン制御装置17とを備える。監視装置16は、取得部23と、下限値設定部24とを備える。第2実施形態では、
図7に表されるように、収納ラック1に収納されるサーバ11の一つが監視装置16としても機能する。つまり、監視装置16としての機能も持つサーバ11のプロセッサ31が、取得部23と下限値設定部24をプログラムの実行により実現する。取得部23と下限値設定部24の機能は、第1実施形態で説明した取得部23と下限値設定部24と同様である。
【0037】
ファン制御装置17は、第1実施形態で説明したファン制御部25と同様な機能を持ち、収納ラック1の制御装置10のプロセッサ20により実現される。つまり、ファン制御装置17は、監視装置16における取得部23と下限値設定部24から情報を取得し、また、冷媒温度センサ7と温度センサ8から温度の情報を取得し、取得した情報を利用して、排気ファン4を駆動制御する機能を備える。このファン制御装置17による排気ファン4の駆動制御では、第1実施形態と同様に、排気ファン4の回転数を可変制御する回転数範囲の下限値は、下限値設定部24により設定された下限値である。
【0038】
第2実施形態のファン制御システム15は、第1実施形態で説明した取得部23および下限値設定部24およびファン制御部25と同様の機能を備えていることから、第1実施形態の制御装置10およびそれを備えた収納ラック1と同様の効果を得ることができる。つまり、第2実施形態のファン制御システム15は、排気ファン4による風量が空冷ファン34による風量を下回ったことに因る筐体2の内部の熱だまりの発生を防止でき、熱だまりの熱に因る部品や装置の熱損傷を防止できる。
【0039】
なお、第2実施形態では、監視装置16が収納ラック1に収納されているサーバ11により実現される例を説明している。これに代えて、
図8に表されるように、監視装置16は、収納ラック1の筐体2の外部のサーバ40により実現されてもよい。サーバ40は、例えば、別の収納ラックに収納されている。
【0040】
<第3実施形態>
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態の説明において、第1や第2の実施形態で説明した制御装置と収納ラックと電子機器(サーバとネットワークスイッチ)の構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0041】
第3実施形態では、筐体2の内部に収納される電子機器(サーバ11とネットワークスイッチ12)における筐体30の内部には、
図9に表されるような排気温度センサ36が設けられている。排気温度センサ36は、空冷ファン34の駆動による通風の経路における空冷対象領域(プロセッサ31と記憶装置32の配置領域)よりも下流側に配置されており、空冷対象領域を通り抜けた通風(排気)の温度を検出する。
【0042】
サーバ等の電子機器においては、給気温度センサ35と排気温度センサ36のうちの給気温度センサ35のみが設けられることが一般的であるが、ここでは、給気温度センサ35と排気温度センサ36の両方が備えられている。
【0043】
制御装置10あるいは監視装置16の取得部23は、サーバ11とネットワークスイッチ12から、第1や第2の実施形態で説明したような空冷ファン34の回転数の情報を取得するのに代えて、排気温度センサ36のセンサ出力値を取得する機能を備える。つまり、取得部23は、空冷ファン34の回転数の情報を取得する場合と同様に、サーバ11とネットワークスイッチ12のBMCから排気温度センサ36のセンサ出力値を取得する。
【0044】
また、下限値設定部24は、第1と第2の実施形態で説明したような空冷ファン34の回転数に基づいた風量を利用して排気ファン4の下限値を設定しているのに代えて、排気温度センサ36による排気の温度を利用して排気ファン4の下限値を設定する。例えば、下限値設定部24は、筐体2の内部に配置されている全ての電子機器(サーバ11とネットワークスイッチ12)から、同じ取得タイミングで取得した排気温度センサ36による排気の検出温度のうち、最も高い検出温度を抽出する。このように抽出される検出温度は、電子機器の空冷ファン34による風量に応じた情報として使用される。つまり、排気温度センサ36の検出温度の高低変化と、空冷ファン34による風量の増減変化とは同様な傾向が見られると想定される。このことから、排気温度センサ36の検出温度を利用して排気ファン4の回転数の下限値を設定するための排気温度センサ36の検出温度と排気ファン4の回転数の下限値との関係データをシミュレーション等により予め求め、記憶装置21に登録しておく。下限値設定部24は、そのような関係データと、抽出した排気温度センサ36の検出温度とに基づいて、排気ファン4の回転数の下限値を設定する。第3実施形態においても、その設定された排気ファン4の回転数の下限値は、第1と第2の実施形態と同様に、排気ファン4による風量が空冷ファン34による風量を下回ることを防止する値である。
【0045】
第3実施形態における上記以外の構成は、第1実施形態の制御装置10と収納ラック1の構成あるいは第2実施形態のファン制御システムの構成と同様であり、ここでは、その重複説明は省略する。第3実施形態においても、上記のように排気ファン4の回転数の下限値を設定することから、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、第3実施形態では、排気ファン4による風量が空冷ファン34による風量を下回ることが防止される。このため、第3実施形態では、排気ファン4による風量が空冷ファン34による風量を下回ったことに因る筐体2の内部の熱だまりの発生が防止され、熱だまりの熱に因る部品や装置の熱損傷が防止される。
【0046】
<第4実施形態>
以下に、本発明に係る第4実施形態を説明する。なお、第4実施形態の説明において、第1~第3の実施形態で説明した制御装置と収納ラックと電子機器(サーバとネットワークスイッチ)の構成部分と同一名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0047】
第4実施形態では、第3実施形態と同様に、収納ラック1に収納されているサーバ11とネットワークスイッチ12は、排気温度センサ36を備えている。制御装置10あるいは監視装置16の取得部23は、サーバ11とネットワークスイッチ12から、空冷ファン34の回転数の情報ではなく、排気温度センサ36のセンサ出力値(検出温度)を取得する。
【0048】
第4実施形態では、制御装置10あるいは監視装置16の下限値設定部24が省略される。制御装置10のファン制御部25あるいはファン制御装置17は、温度センサ8のセンサ出力値に代えて、取得部23により取得された排気温度センサ36のセンサ出力値(検出温度)を利用して、排気ファン4を駆動制御する。ここで利用される排気温度センサ36の検出温度は、例えば、筐体2の内部における全てのサーバ11とネットワークスイッチ12から、同じ取得タイミングで取得した排気温度センサ36による排気の検出温度のうち、最も高い検出温度である。
【0049】
前述したように、排気温度センサ36による排気の検出温度は、サーバ11あるいはネットワークスイッチ12の空冷ファン34による風量の増減変化と同様な高低変化が見られる。このことから、制御装置10のファン制御部25あるいはファン制御装置17は、温度センサ8の検出温度に代えて、排気温度センサ36による検出温度を利用して排気ファン4を駆動制御することにより、第1~第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、温度センサ8の検出温度に代えて、排気温度センサ36による検出温度を利用することから、温度センサ8を省略することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
なお、本発明は第1~第4の実施形態に限定されずに、様々な実施の形態を採り得る。例えば、
図10は、本発明に係る制御装置のその他の実施形態の構成を表すブロック図である。
図10における制御装置45は、取得部46と、ファン制御部47とを備える。取得部46は、空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている電子機器の空冷ファンの回転数に関する情報、あるいは、電子機器の内部から外部に排出される排気の温度に関する情報を取得する機能を備える。ファン制御部47は、取得部46により取得された情報を利用して、収納ラックの筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように排気ファンを駆動制御する機能を備える。このような構成を持つ制御装置45は、例えば、
図11に表されるような収納ラック50に備えられる。すなわち、
図11における収納ラック50は、筐体51と排気ファン52に加えて、上述した制御装置45を備える。筐体51は、空冷ファンを備えた電子機器を収納する構成を備える。排気ファン52は、筐体51に、筐体内から外部への排気を行うように設置されている。
【0052】
図10における制御装置45と、
図11における収納ラック50は、収納ラックの筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように排気ファンを駆動制御する。このため、制御装置45および収納ラック50は、第1~第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
図12は、本発明に係るファン制御システムのその他の実施形態の構成を表すブロック図である。
図12におけるファン制御システム54は、監視装置55と、ファン制御装置56と備える。監視装置55は取得部57を備える。取得部57は、空冷ファンを備えた電子機器を収納する収納ラックの筐体内に配置されている電子機器の空冷ファンの回転数に関する情報、あるいは、電子機器の内部から外部に排出される排気の温度に関する情報を取得する機能を備える。
【0054】
ファン制御装置56は、取得部57により取得された情報を利用して、収納ラックの筐体内から外部への排気を行う排気ファンによる排気の風量が電子機器の内部から外部に排出される排気の風量を下回らないように排気ファンを駆動制御する機能を備える。
【0055】
このファン制御システム54も、第1~第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1,50 収納ラック
2,51 筐体
4,52 排気ファン
7 冷媒温度センサ
8 温度センサ
10,45 制御装置
11 サーバ
12 ネットワークスイッチ
15,54 ファン制御システム
16,55 監視装置
17,56 ファン制御装置
23,46,57 取得部
24 下限値設定部
25,47 ファン制御部
36 排気温度センサ