(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】光ファイバの製造方法、および光ファイバの製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 37/027 20060101AFI20240116BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C03B37/027 A
G02B6/02 356A
(21)【出願番号】P 2019097120
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2022-02-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 崇広
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 巌
(72)【発明者】
【氏名】森本 仁広
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-259254(JP,A)
【文献】特開平02-051441(JP,A)
【文献】米国特許第04514205(US,A)
【文献】国際公開第2019/044703(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/063640(WO,A1)
【文献】特開2012-006797(JP,A)
【文献】特開平10-067531(JP,A)
【文献】特開2015-071505(JP,A)
【文献】特開2007-268361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00 - 37/16
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ用のガラス母材から線引きされたガラスファイバを、樹脂が塗布される前に、第1ケーシング内に収容され、第1冷媒で冷却された冷却筒を貫通して形成されるファイバ通路に通す第1の工程と、
前記ガラスファイバを、前記第1ケーシングの内部に引き込む前に、第2ケーシングの内部に引き込む第2の工程と、を有し、
前記第1ケーシングと前記冷却筒との間には第1乾燥空間が形成され、
前記第1の工程は、前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の
前記第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することを含み、
前記第2ケーシングは前記冷却筒とは接触することなく前記第1ケーシングと接触しており、前記第2ケーシングの内部には第2乾燥空間が形成され、
前記第2の工程は、前記第2ケーシングの内部に形成される
前記第2乾燥空間に、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外部空間の露点よりも低い露点の第2乾燥ガスを導入することにより、前記第2乾燥空間の気圧を前記外部空間の気圧よりも高くすることを含み、
前記ガラスファイバの走行速度が1000m/分以上であ
り、
前記第1の工程は、前記第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することにより、前記第1乾燥空間の気圧を前記外部空間の気圧よりも高くすることを含み、
前記第2の工程は、前記第2乾燥空間に、前記外部空間の露点および前記冷却筒の温度よりも低い露点の前記第2乾燥ガスを導入することにより、前記第2乾燥空間の気圧を前記第1乾燥空間の気圧よりも高くすることを含み、
前記ファイバ通路の気圧が、前記第1乾燥空間の気圧以上であり、且つ前記第2乾燥空間の気圧よりも低く、
前記第1乾燥ガスは、空気または窒素であり、
前記第2乾燥ガスは、空気または窒素であり、
前記ファイバ通路に流すガスは、ヘリウムである、光ファイバの製造方法。
【請求項2】
光ファイバ用のガラス母材から線引きされたガラスファイバを、樹脂が塗布される前に、第1ケーシング内に収容され、第1冷媒で冷却された冷却筒を貫通して形成されるファイバ通路に通す第1の工程と、
前記ガラスファイバを、前記第1ケーシングの内部に引き込む前に、第2ケーシングの内部に引き込む第2の工程と、を有し、
前記第1の工程は、前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することを含み、
前記第2の工程は、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外部空間から前記第2ケーシングの内部の第2乾燥空間に前記ガラスファイバと共に引きずり込まれた水蒸気を、前記第2乾燥空間に配置される吸着部に吸着させることを含む、光ファイバの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程は、
前記ガラスファイバと共に前記外部空間から前記第2乾燥空間に引きずり込まれた水蒸気を、前記吸着部である冷却部によって冷却することにより、前記冷却部に吸着することと、
前記冷却部の温度が前記冷却筒の温度よりも低くなるように、前記冷却部を冷却する第2冷媒の温度を制御することと、を含む、請求項
2に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程は、前記ガラスファイバと共に前記外部空間から前記第2乾燥空間に引きずり込まれた水蒸気を、前記吸着部である多孔質材料からなる吸着剤に吸着することを含む、請求項
2または
3に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項5】
光ファイバ用のガラス母材から線状のガラスファイバを引き伸ばすべく、前記ガラス母材を加熱溶融する線引炉と、
第1冷媒で冷却される冷却筒と、前記冷却筒を貫通して形成され、前記ガラスファイバが通過するファイバ通路と、前記冷却筒を収容する第1ケーシングとを有する冷却装置と、
前記第1冷媒の温度を調整する温調器と、前記温調器から前記冷却筒に向けて前記第1冷媒を送るポンプとを有する第1冷媒供給装置と、
前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入する第1乾燥ガス供給装置と、
前記ガラスファイバが前記第1乾燥空間よりも先に通る第2乾燥空間を内部に形成する第2ケーシングと、
前記第2乾燥空間に配置され、前記ガラスファイバと共に前記第2乾燥空間に引きずり込まれた水蒸気を吸着する吸着部と、
前記冷却装置によって冷却された前記ガラスファイバに樹脂を塗布する塗布装置と、を備える、光ファイバの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバの製造方法、および光ファイバの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの製造方法は、線引炉において、光ファイバ用ガラス母材を加熱溶融し、光ファイバ用ガラス母材を線状のガラスファイバに引き伸ばす工程を有する。この工程は、「線引き」とも呼ばれる。線引き直後のガラスファイバは、高温であるので、そのままでは保護用の樹脂を塗布することができない。そのため、線引き直後のガラスファイバは、樹脂を塗布する前に、冷却装置によって冷却される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の冷却装置は、冷媒で冷却される冷却筒と、当該冷却筒を内部に収容するケーシングとを有する。ガラスファイバは、冷却筒を鉛直方向に貫通するファイバ通路を通過することにより、冷却される。ケーシングと冷却筒の間の空間は、冷却筒の温度よりも低い露点の乾燥雰囲気に保持されるので、ガラスファイバに対して水蒸気の凝結による微小な水滴の付着を未然に防止できる(例えば特許文献1の段落[0014]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常の線引き装置では、ガラスファイバは、線引炉と冷却装置との間において、外気に曝される。外気に曝さず、線引炉から冷却装置までガラスファイバの通路を外気から遮断すると、線引炉から冷却装置に熱風が流れ込むことになり、冷却装置でのガラスファイバを冷却する能力が著しく低下する。
【0006】
一方で、外気に曝されると、ガラスファイバが冷却装置のケーシングの内部に引き込まれるとき、ガラスファイバと共に外気がケーシングの内部に引きずり込まれることになる。ガラスファイバの走行速度が速いほど、外気がケーシングの内部に引きずり込まれやすい。
【0007】
外気は、水蒸気を含む空気であり、外気の露点は、冷却筒の温度よりも高い。このため、従来、冷却筒のファイバ通路に外気の水蒸気が引きずり込まれることにより、ファイバ通路において霜または結露が発生することがあった。
【0008】
本開示の一態様は、冷却筒のファイバ通路における霜または水滴の発生を抑制できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、光ファイバ用のガラス母材から線引きされたガラスファイバを、樹脂が塗布される前に、第1ケーシング内に収容され、第1冷媒で冷却された冷却筒を貫通して形成されるファイバ通路に通す第1の工程を有する。前記製造方法は、前記ガラスファイバを、前記第1ケーシングの内部に引き込む前に、第2ケーシングの内部に引き込む第2の工程を有する。前記第1ケーシングと前記冷却筒との間には第1乾燥空間が形成される。前記第1の工程は、前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することを含む。前記第2ケーシングは前記冷却筒とは接触することなく前記第1ケーシングと接触しており、前記第2ケーシングの内部には第2乾燥空間が形成される。前記第2の工程は、前記第2ケーシングの内部に形成される第2乾燥空間に、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外部空間の露点よりも低い露点の第2乾燥ガスを導入することにより、前記第2乾燥空間の気圧を前記外部空間の気圧よりも高くすることを含む。前記ガラスファイバの走行速度が1000m/分以上である。前記第1の工程は、前記第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することにより、前記第1乾燥空間の気圧を前記外部空間の気圧よりも高くすることを含む。前記第2の工程は、前記第2乾燥空間に、前記外部空間の露点および前記冷却筒の温度よりも低い露点の前記第2乾燥ガスを導入することにより、前記第2乾燥空間の気圧を前記第1乾燥空間の気圧よりも高くすることを含む。前記ファイバ通路の気圧が、前記第1乾燥空間の気圧以上であり、且つ前記第2乾燥空間の気圧よりも低い。前記第1乾燥ガスは、空気または窒素である。前記第2乾燥ガスは、空気または窒素である。前記ファイバ通路に流すガスは、ヘリウムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、冷却筒のファイバ通路における霜または水滴の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光ファイバの製造装置を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る冷却筒および第1ケーシングを示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る冷却筒および第1ケーシングを示す断面図であって、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る第1ケーシング、第2ケーシングおよび第2乾燥装置を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す第1ケーシングおよび第2ケーシングの変形例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る光ファイバの製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1変形例に係る光ファイバの製造装置の要部を示す図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係る光ファイバの製造装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
〔1〕本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、光ファイバ用のガラス母材から線引きされたガラスファイバを、樹脂が塗布される前に、第1ケーシング内に収容され、第1冷媒で冷却された冷却筒を貫通して形成されるファイバ通路に通す第1の工程を有する。前記製造方法は、前記ガラスファイバを、前記第1ケーシングの内部に引き込む前に、第2ケーシングの内部に引き込む第2の工程を有する。前記第1ケーシングと前記冷却筒との間には第1乾燥空間が形成される。前記第1の工程は、前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することを含む。前記第2ケーシングは前記冷却筒とは接触することなく前記第1ケーシングと接触しており、前記第2ケーシングの内部には第2乾燥空間が形成される。前記第2の工程は、前記第2ケーシングの内部に形成される第2乾燥空間に、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外部空間の露点よりも低い露点の第2乾燥ガスを導入することにより、前記第2乾燥空間の気圧を前記外部空間の気圧よりも高くすることを含む。前記ガラスファイバの走行速度が1000m/分以上である。前記第1の工程は、前記第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することにより、前記第1乾燥空間の気圧を前記外部空間の気圧よりも高くすることを含む。前記第2の工程は、前記第2乾燥空間に、前記外部空間の露点および前記冷却筒の温度よりも低い露点の前記第2乾燥ガスを導入することにより、前記第2乾燥空間の気圧を前記第1乾燥空間の気圧よりも高くすることを含む。前記ファイバ通路の気圧が、前記第1乾燥空間の気圧以上であり、且つ前記第2乾燥空間の気圧よりも低い。前記第1乾燥ガスは、空気または窒素である。前記第2乾燥ガスは、空気または窒素である。前記ファイバ通路に流すガスは、ヘリウムである。
【0014】
上記〔1〕の製造方法によれば、第2乾燥空間の気圧が外部空間の気圧よりも高いので、外部空間から第2乾燥空間に外気が流れ込むのを抑制できる。また、第2乾燥空間において、ガラスファイバに引きずられてきたガスを第2乾燥ガスに置換できる。第2乾燥ガスの露点は、外部空間の露点よりも低い。それゆえ、第2乾燥空間におけるガスの水蒸気量を、外部空間の水蒸気量よりも低減でき、ガラスファイバと共に第2乾燥空間から第1乾燥空間に引きずり込まれるガスの水蒸気量を、外部空間の水蒸気量よりも低減できる。ひいては、ガラスファイバと共に第1乾燥空間からファイバ通路に引きずり込まれるガスの水蒸気量を低減でき、ファイバ通路における霜または結露の発生を抑制できる。
【0016】
上記〔1〕の製造方法によれば、第1乾燥空間の気圧P1が外部空間の気圧P0よりも高いので、外部空間から第1乾燥空間に外気が流れ込むのを抑制できる。また、第2乾燥空間の気圧P2が第1乾燥空間の気圧P1よりも高いので、気圧P2と気圧P0との差圧ΔP2が気圧P1と気圧P0との差圧ΔP1よりも大きくなる。従って、第2乾燥空間を介して外部空間から第1乾燥空間に外気が流れ込むのを、より制限できる。第2乾燥空間を介して外部空間から第1乾燥空間に外気が流れ込むには、差圧ΔP1よりも大きな差圧ΔP2に逆らって外気を引きずることになるからである。第2乾燥空間を介して外部空間から第1乾燥空間に外気が流れ込むのを制限する効果は、第1ケーシングと第2ケーシングとが接する場合に特に顕著に得られる。
【0017】
また、上記〔1〕の製造方法によれば、第2乾燥空間の気圧が第1乾燥空間の気圧よりも高いので、第2乾燥空間から第1乾燥空間に第2乾燥ガスが流れ込む。これにより、第1乾燥空間の気圧を高め、第1乾燥空間の気圧と外部空間の気圧との差圧を大きくできる。従って、第1ケーシング23を構成する部材同士の隙間を介して、外部空間から第1乾燥空間に外気が流れ込むのを抑制することができる。また、第2乾燥ガスの露点は冷却筒の温度よりも低いので、第2乾燥ガスが冷却筒21によって冷却されても、霜または結露が発生することはない。
【0018】
〔3〕本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、光ファイバ用のガラス母材から線引きされたガラスファイバを、樹脂が塗布される前に、第1ケーシング内に収容され、第1冷媒で冷却された冷却筒を貫通して形成されるファイバ通路に通す第1の工程を有する。前記製造方法は、前記ガラスファイバを、前記第1ケーシングの内部に引き込む前に、第2ケーシングの内部に引き込む第2の工程を有する。前記第1の工程は、前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することを含む。前記第2の工程は、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外部空間から前記第2ケーシングの内部の第2乾燥空間に前記ガラスファイバと共に引きずり込まれた水蒸気を、前記第2乾燥空間に配置される吸着部に吸着することを含む。
【0019】
上記〔3〕の製造方法によれば、ガラスファイバと共に外部空間から第2乾燥空間に引きずり込まれたガスの水蒸気を、第2乾燥空間に配置される吸着部に吸着する。それゆえ、第2乾燥空間におけるガスの水蒸気量を、外部空間の水蒸気量よりも低減でき、ガラスファイバと共に第2乾燥空間から第1乾燥空間に引きずり込まれるガスの水蒸気量を、外部空間の水蒸気量よりも低減できる。ひいては、ガラスファイバと共に第1乾燥空間からファイバ通路に引きずり込まれるガスの水蒸気量を低減でき、ファイバ通路における霜または結露の発生を抑制できる。
【0020】
〔4〕上記〔3〕に記載の第2の工程は、前記ガラスファイバと共に前記外部空間から前記第2乾燥空間に引きずり込まれた水蒸気を、前記吸着部である冷却部によって冷却することにより、前記冷却部に吸着することを含んでもよい。上記〔3〕に記載の第2の工程は、前記冷却部の温度が前記冷却筒の温度よりも低くなるように、前記冷却部を冷却する第2冷媒の温度を制御することを含んでもよい。
【0021】
上記〔4〕の製造方法によれば、第2乾燥空間におけるガスの露点は、冷却部の温度と同程度まで下がる。冷却部の温度は、冷却筒の温度よりも低いため、第2乾燥空間におけるガスの露点を、冷却筒の温度よりも低くすることができる。また、ガラスファイバと共に第2乾燥空間から第1乾燥空間に引きずり込まれるガスの露点を、冷却筒の温度よりも低くすることができる。ひいては、ガラスファイバと共に第1乾燥空間からファイバ通路に引きずり込まれるガスの露点を、冷却筒の温度よりも低くすることができ、ファイバ通路における霜または結露の発生を抑制できる。
【0022】
〔5〕上記〔3〕または〔4〕に記載の第2の工程は、前記ガラスファイバと共に前記外部空間から前記第2乾燥空間に引きずり込まれた水蒸気を、前記吸着部である多孔質材料からなる吸着剤に吸着することを含んでもよい。
【0023】
上記〔5〕の製造方法によれば、多孔質材料からなる吸着剤を使用するので、冷却する必要がなく、より手軽に水蒸気を吸着できる。
【0024】
〔6〕本開示の一態様に係る光ファイバの製造装置は、線引炉と、冷却装置と、第1冷媒供給装置と、第1乾燥ガス供給装置と、第2ケーシングと、第2乾燥ガス供給装置と、塗布装置と、を備える。前記線引炉は、光ファイバ用のガラス母材から線状のガラスファイバを引き伸ばすべく、前記ガラス母材を加熱溶融する。前記冷却装置は、第1冷媒で冷却される冷却筒と、前記冷却筒を貫通して形成され、前記ガラスファイバが通過するファイバ通路と、前記冷却筒を収容する第1ケーシングとを有する。前記第1冷媒供給装置は、前記第1冷媒の温度を調整する温調器と、前記温調器から前記冷却筒に向けて前記第1冷媒を送るポンプとを有する。第1乾燥ガス供給装置は、前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入する。前記第2ケーシングは、前記ガラスファイバが前記第1乾燥空間よりも先に通る第2乾燥空間を内部に形成する。前記第2乾燥ガス供給装置は、前記第2乾燥空間に、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外部空間の露点よりも低い露点の第2乾燥ガスを導入することにより、前記第2乾燥空間の気圧を前記外部空間の気圧よりも高くする。前記塗布装置は、前記冷却装置によって冷却された前記ガラスファイバに樹脂を塗布する。
【0025】
上記〔6〕の製造装置によれば、上記〔1〕の製造方法と同様の効果が得られる。
【0026】
〔7〕本開示の他の一態様に係る光ファイバの製造装置は、線引炉と、冷却装置と、第1冷媒供給装置と、第1乾燥ガス供給装置と、第2ケーシングと、吸着部と、塗布装置と、を備える。前記線引炉は、光ファイバ用のガラス母材から線状のガラスファイバを引き伸ばすべく、前記ガラス母材を加熱溶融する。前記冷却装置は、第1冷媒で冷却される冷却筒と、前記冷却筒を貫通して形成され、前記ガラスファイバが通過するファイバ通路と、前記冷却筒を収容する第1ケーシングとを有する。前記第1冷媒供給装置は、前記第1冷媒の温度を調整する温調器と、前記温調器から前記冷却筒に向けて前記第1冷媒を送るポンプとを有する。第1乾燥ガス供給装置は、前記第1ケーシングと前記冷却筒との間の第1乾燥空間に、前記冷却筒の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入する。前記第2ケーシングは、前記ガラスファイバが前記第1乾燥空間よりも先に通る第2乾燥空間を内部に形成する。前記吸着部は、前記第2乾燥空間に配置され、前記ガラスファイバと共に前記第2乾燥空間に引きずり込まれた水蒸気を吸着する。前記塗布装置は、前記冷却装置によって冷却された前記ガラスファイバに樹脂を塗布する。
【0027】
上記〔7〕の製造装置によれば、上記〔3〕の製造方法と同様の効果が得られる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)について詳細に説明する。以下の説明では、同一のまたは対応する要素には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0029】
〔光ファイバの製造装置〕
図1は、一実施形態に係る光ファイバの製造装置を示す図である。光ファイバの製造装置1は、例えば、線引炉10と、冷却装置20と、第1冷媒供給装置30と、第1乾燥ガス供給装置40と、外径測定器50と、樹脂塗布装置60と、樹脂硬化装置65と、巻取装置70と、制御装置90とを備える。
【0030】
線引炉10は、光ファイバ用のガラス母材2から線状のガラスファイバ3を引き伸ばすべく、ガラス母材2を加熱溶融する。ガラス母材2は、予め棒状に形成され、径方向に屈折率分布を有する。ガラス母材2の長手方向が鉛直方向になるように、ガラス母材2が吊り下げられる。
【0031】
ガラスファイバ3は、ガラス母材2の下端部から線状に引き伸ばされ、垂れ下がる。ガラスファイバ3は、ガラス母材2と同様に、径方向に屈折率分布を有する。ガラスファイバ3は、コアと、コアの外周を覆うクラッドとを有する。コアの屈折率は、クラッドの屈折率よりも大きい。
【0032】
線引炉10は、ガラス母材2を加熱溶融する加熱源11と、加熱源11を収容する炉筐体12とを有する。加熱源11は、例えば電気ヒータである。なお、加熱源11は、コイルと導体とで構成されてもよい。高周波電源がコイルに電流を印加すると、コイルが導体の周囲に磁場を形成し、磁場の変化によって渦電流が導体に流れ、導体が発熱する。
【0033】
炉筐体12は、炉筐体12の上端部に入口を有する。ガラス母材は、炉筐体12の入口から炉筐体12の内部に挿入される。また、炉筐体12は、炉筐体12の下端部に出口を有する。ガラスファイバ3は、炉筐体12の出口から炉筐体12の外部に引き出される。炉筐体12の内部には、ヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスが導入される。
【0034】
線引き直後のガラスファイバ3は、高温であるので、そのままでは保護用の樹脂を塗布することができない。そのため、線引き直後のガラスファイバ3は、樹脂を塗布する前に、冷却装置20によって冷却される。冷却装置20は、線引炉10の鉛直方向下方に配置される。
【0035】
冷却装置20は、第1冷媒で冷却される冷却筒21と、冷却筒21を貫通して形成されるファイバ通路22とを有する。ファイバ通路22は、冷却筒21を鉛直方向に貫通して形成される。ファイバ通路22の入口22aは、冷却筒21の上面に形成される。ファイバ通路22の出口22bは、冷却筒21の下面に形成される。ファイバ通路22は、ガラスファイバ3が通過する通路である。ガラスファイバ3は、ファイバ通路22の入口22aから、ファイバ通路22の出口22bに向けて走行する。
【0036】
冷却筒21は、鉛直方向に一列に複数配置される。複数の短尺の冷却筒21に分けて配置することで、設備コストを低減できる。長尺の部材を一体に製造するよりも、短尺の部材を別々に製造して接続した方が、コストを低減できるからである。また、冷却筒21毎に冷却筒21の温度を変えることも可能である。冷却筒21の温度は、第1冷媒の温度と同程度になる。
【0037】
冷却装置20は、冷却筒21を収容する第1ケーシング23を有する。第1ケーシング23と冷却筒21との間に第1乾燥空間24が形成される。第1乾燥空間24は、第1ケーシング23の内部であって且つ冷却筒21の外部に形成される。第1乾燥空間24には、冷却筒21の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスが導入される。
【0038】
露点とは、水蒸気を含むガスを冷却したときに、水蒸気から水への凝縮が始まる温度のことである。露点が0℃以下である場合、水蒸気を含むガスを露点まで冷却すると、水蒸気から水への凝縮と、水から氷への凝固とが始まる。
【0039】
本実施形態において、露点は、第1乾燥空間24の気圧P1と同じ気圧下で測定するものとする。本開示は、第1乾燥空間24における霜または結露の発生を抑制するものだからである。第1乾燥空間24の気圧P1は、後述するように外部空間6の気圧P0よりも高い。
【0040】
外部空間6とは、第1ケーシング23および後述の第2ケーシング110の外部に形成される空間のことである。外部空間6は、通常、空気で占められる。外部空間6の気圧P0は、大気圧である。
【0041】
なお、第1乾燥空間24の気圧P1と外部空間6の気圧P0との差圧ΔP1(ΔP1=P1-P0)は、通常、外部空間6の気圧P0の1%以下である。従って、露点は、外部空間6の気圧P0、つまり、大気圧下で測定してもよい。差圧ΔP1が大気圧の1%以下であれば、差圧ΔP1による露点の差は無視できる程度に小さいからである。
【0042】
ところで、冷却筒21は、上述の如く、鉛直方向に一列に複数配置される。複数の冷却筒21は、異なる温度に制御されることがある。例えば、下側に配置される冷却筒21の温度は、上側に配置される冷却筒21の温度よりも低く制御されることがある。複数の冷却筒21が異なる温度に制御される場合、冷却筒21の最低温度よりも低い露点の第1乾燥ガスが、第1乾燥空間24に導入される。
【0043】
第1ケーシング23は、冷却筒21の周囲に第1乾燥ガスを保持する。第1乾燥ガスとして、本実施形態では後述するように乾燥空気を用いるが、窒素ガスなどを用いてもよい。第1乾燥ガスの露点が冷却筒21の温度よりも低いので、第1乾燥ガスが冷却されても、霜または結露が冷却筒21に付くのを抑制でき、霜または結露によってガラスファイバ3が断線するのを抑制できる。なお、霜が生じるのは、冷却筒21の温度が0℃以下の場合である。結露が生じるのは、冷却筒21の温度が0℃を超える場合である。
【0044】
上記したように、第1乾燥空間24の気圧P1は、外部空間6の気圧P0よりも僅かに高い。その差圧ΔP1によって、外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むのを制限できる。外部空間6から第1乾燥空間24への外気の流入を抑制することで、外部空間6から第1乾燥空間24への水蒸気の流入を抑制でき、冷却筒21に霜または結露が付くのを抑制できる。
【0045】
第1ケーシング23は、第1ケーシング23の上端部に入口23aを有する。ガラスファイバ3は、第1ケーシング23の入口23aから第1ケーシング23の内部に引き込まれる。また、第1ケーシング23は、第1ケーシング23の下端部に出口23bを有する。ガラスファイバ3は、第1ケーシング23の出口23bから第1ケーシング23の外部に引き出される。
【0046】
ガラスファイバ3は、第1ケーシング23の入口23aから第1ケーシング23の出口23bに向けて走行し、その途中でファイバ通路22を通過する。ガラスファイバ3の温度は、第1ケーシング23の入口23aにおいて、例えば1200℃程度である。また、ガラスファイバ3の温度は、第1ケーシング23の出口23bにおいて、例えば50℃程度である。
【0047】
ガラスファイバ3は、第1ケーシング23の入口23aから第1ケーシング23の出口23bに至るまでの間に、1000°以上冷却される。少なくとも一部の冷却筒21は、ガラスファイバ3を急速に冷却すべく、0℃よりも低温の第1冷媒によって冷却される。
【0048】
図2は、一実施形態に係る冷却筒および第1ケーシングを示す断面図である。
図3は、一実施形態に係る冷却筒および第1ケーシングを示す断面図であって、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0049】
冷却装置20は、冷却筒21に形成される第1冷媒流路25を有する。第1冷媒流路25の一部は、ファイバ通路22に沿って形成される。第1冷媒流路25は、例えば
図3に示すように、ファイバ通路22の周りに4本配置される。なお、第1冷媒流路25の本数は特に限定されない。
【0050】
冷却装置20は、冷却筒21に形成される伝熱ガス導入路26を有する。伝熱ガス導入路26は、伝熱ガスをファイバ通路22に導入する。伝熱ガスは、高温のガラスファイバ3から低温の冷却筒21に熱を伝えることにより、ガラスファイバ3の冷却を促進する。伝熱ガスとしては、例えばHeガスが用いられる。
【0051】
伝熱ガスの露点は、冷却筒21の温度よりも低い。例えば、伝熱ガスは、液体窒素によって冷却されたガス管を通った後、伝熱ガス導入路26を介してファイバ通路22に導入してもよい。この場合、伝熱ガスの露点は、液体窒素の沸点(-196℃)と同程度になる。
【0052】
伝熱ガス導入路26は、水平に配置される。伝熱ガス導入路26は、例えば
図3に示すようにファイバ通路22を挟んで一対配置される。なお、伝熱ガス導入路26は、鉛直方向視で、ファイバ通路22の周りに放射状に配置されてもよい。
【0053】
伝熱ガスは、ファイバ通路22の鉛直方向中央部から、ファイバ通路22に導入される。その後、伝熱ガスの流れは、ファイバ通路22の鉛直方向中央部において、鉛直方向上方に向う流れと、鉛直方向下方に向う流れとに分岐する。
【0054】
伝熱ガスは、ファイバ通路22の入口22aとファイバ通路22の出口22bとの両方を通り、第1ケーシング23と冷却筒21との間の第1乾燥空間24に排出され、その後、第1ケーシング23の外部に排出される。なお、伝熱ガスは、回収して再利用しても良い。ファイバ通路22の気圧は、第1乾燥空間24の気圧P1と同程度か、第1乾燥空間24の気圧P1よりも僅かに高い。
【0055】
冷却装置20は、冷却筒21および第1ケーシング23の他に、断熱材27を有する。断熱材27は、第1ケーシング23の内部に導入された第1乾燥ガスから冷却筒21への熱移動を制限することで、冷却筒21の冷却効率を高める。断熱材27は、冷却筒21の表面のうち、ファイバ通路22に面する部分以外の部分を覆う。断熱材27は、ガラスファイバ3と干渉しないように配置される。
【0056】
第1冷媒供給装置30は、
図1に示すように、第1冷媒の温度を調整する温調器31と、温調器31から冷却筒21に向けて第1冷媒を送るポンプ32とを有する。第1冷媒としては、例えば、少なくとも-70℃以上室温(例えば20℃)以下の温度範囲で液相であるものが用いられる。第1冷媒の具体例としては、パーフルオロポリエーテルが挙げられる。
【0057】
第1冷媒は、温調器31によって設定温度まで冷却された後、ポンプ32によって冷却筒21に向けて送られる。第1冷媒は、高温のガラスファイバ3から低温の冷却筒21に伝わる熱を吸収した後、第1冷媒供給装置30に還流される。その後、第1冷媒は、再び温調器31によって設定温度まで冷却された後、ポンプ32によって冷却筒21に向けて送られる。
【0058】
第1乾燥ガス供給装置40は、第1ケーシング23と冷却筒21の間の第1乾燥空間24に、冷却筒21の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入する。第1乾燥ガスの導入口41は、第1乾燥空間24に面し、例えば第1ケーシング23の入口23a付近に配置される。第1乾燥ガスを導入することで、外気が第1ケーシング23の内部に引きずり込まれるのを制限できる。
【0059】
第1乾燥ガス供給装置40は、第1乾燥ガスの原料となるガスに含まれる水蒸気を低減することにより第1乾燥ガスを生成する乾燥機42と、乾燥機42から第1ケーシング23の内部に第1乾燥ガスを送るポンプ43とを有する。第1乾燥ガスの原料ガスとしては、例えば空気が用いられ、この場合、第1乾燥ガスとして、乾燥空気が生成される。水蒸気の含有量の低減は、例えば水蒸気の吸着により行われる。
【0060】
第1乾燥ガス供給装置40は、乾燥機42によって生成した第1乾燥ガスの露点を測定する露点計45を有する。露点計45は、乾燥機42に設置される。第1乾燥ガスは、乾燥機42において予め設定された露点まで乾燥された後、ポンプ43によって乾燥機42から第1ケーシング23の内部に送られる。
【0061】
第1乾燥ガス供給装置40は、第1ケーシング23の内部に導入される第1乾燥ガスの流量を調整する流量調整弁46を有する。第1乾燥ガスは、第1ケーシング23の内部に導入された後、第1ケーシング23の出口23bを通り、第1ケーシング23の外部に排出される。本実施形態では第1乾燥空間24の気圧P1が後述の第2乾燥空間111の気圧P2よりも低いので、第1乾燥ガスは下方向に流れる。
【0062】
外径測定器50は、冷却装置20によって冷却されたガラスファイバ3の外径を測定する。ガラスファイバ3の外径とは、クラッドの外径のことである。外径測定器50は、例えば、ガラスファイバ3に光束を照射し、ガラスファイバ3を通過した後の光束を撮像することにより、ガラスファイバ3の外径を測定する。外径測定器50の測定値が設定値(例えば125μm)になるように、ガラスファイバ3の走行速度が制御される。
【0063】
樹脂塗布装置60は、ガラスファイバ3に樹脂を塗布する。樹脂塗布装置60は、液状の樹脂を貯留・塗布するダイ61を有する。ガラスファイバ3がダイ61を通過することにより、ガラスファイバ3の外周面に樹脂が塗布される。樹脂としては、例えば、紫外線によって硬化する紫外線硬化樹脂が用いられる。
【0064】
樹脂硬化装置65は、ガラスファイバ3の外周面に塗布された樹脂を硬化させる。樹脂硬化装置65は、例えば紫外線硬化樹脂を硬化させる場合は、紫外線を照射する紫外線ランプ66を有する。ガラスファイバ3が紫外線ランプ66の横を通過することにより、ガラスファイバ3の外周面に塗布された樹脂が硬化される。
【0065】
なお、樹脂としては、紫外線硬化樹脂の代わりに、熱硬化樹脂が用いられてもよい。また、複数種類の樹脂がガラスファイバ3の外周面に重ね塗りされてもよい。つまり、複数種類の樹脂層がガラスファイバ3の外周面に積層されてもよい。
【0066】
巻取装置70は、ガラスファイバ3が巻き取られる巻取ボビン4を着脱自在に保持する巻取ボビンホルダ71と、巻取ボビンホルダ71を回転させる巻取モータ72とを有する。ガラスファイバ3は、樹脂硬化装置65を通過した後、ガイドローラ75によって方向転換され、最終的に巻取ボビン4に巻き取られる。なお、ガラスファイバ3は、ガラス母材2から線引きされた後、ガイドローラ75によって方向転換されるまで、鉛直方向下方に走行する。
【0067】
制御装置90は、例えばコンピュータで構成され、
図1に示すようにCPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92と、入力インターフェース93と、出力インターフェース94とを有する。制御装置90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、製造装置1の動作を制御する。また、制御装置90は、入力インターフェース93で外部からの信号を受信し、出力インターフェース94で外部に信号を送信する。
【0068】
ところで、ガラスファイバ3は、線引炉10と冷却装置20との間において、外気に曝される。外気に曝さず、線引炉10から冷却装置20までガラスファイバ3の通路を外気から遮断すると、線引炉10から冷却装置20に熱風が流れ込むことになり、冷却装置20でガラスファイバ3を冷却する能力が著しく低下する。
【0069】
ガラスファイバ3が冷却装置20の第1ケーシング23の内部に引き込まれるとき、ガラスファイバ3と共に外気が第1ケーシング23の内部に引きずり込まれることがある。ガラスファイバ3の走行速度が速いほど、外気が第1ケーシング23の内部に引きずり込まれやすい。
【0070】
特に、ガラスファイバ3の走行速度が1000m/分以上であると、外気が第1ケーシング23の内部に引きずり込まれやすい。なお、ガラスファイバ3の走行速度は、例えば600m/分~2500m/分である。
【0071】
外気は、水蒸気を含む空気であり、外気の露点は、冷却筒21の温度よりも高い。このため、冷却筒21のファイバ通路22にガラスファイバ3と共に外気が引きずり込まれると、水蒸気がファイバ通路22に引きずり込まれる。
【0072】
本願発明者は、ガラスファイバ3の断線する原因を検討し、水蒸気がファイバ通路22に引きずり込まれることが原因であることをつきとめた。つまり、ファイバ通路22に水蒸気が引きずり込まれると、ファイバ通路22において霜または結露が生じてしまう。この霜または結露が、ガラスファイバ3の断線する原因であった。
【0073】
光ファイバの製造装置1は、第2ケーシング110を備える。第2ケーシング110は、ガラスファイバ3が第1乾燥空間24よりも先に通る第2乾燥空間111を内部に形成する。ガラスファイバ3は、第2乾燥空間111に導入する第2乾燥ガスに曝され、ガラスファイバ3に引きずられるガスは第2乾燥ガスに置換される。第2乾燥ガスの露点は、詳しくは後述するが外部空間6の露点よりも低い。それゆえ、第2乾燥空間111におけるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減でき、ガラスファイバ3と共に第1乾燥空間24からファイバ通路22に引きずり込まれるガスの水蒸気量を低減できる。
【0074】
図4は、一実施形態に係る第1ケーシング、第2ケーシングおよび第2乾燥装置を示す断面図である。
図4において、矢印は第2乾燥ガスの流れ方向を示す。なお、
図5においても、同様である。
【0075】
第2ケーシング110は、第2ケーシング110の上端部に入口110aを有し、ガラスファイバ3は、入口110aから第2ケーシング110の内部に引き込まれる。また、第2ケーシング110は、第2ケーシング110の下端部に出口110bを有し、ガラスファイバ3は、出口110bから第2ケーシング110の外部に引き出される。
【0076】
第2ケーシング110は、第1ケーシング23の上方に配置され、例えば、第1ケーシング23上に設けられた水平な上板に設置される。なお、
図5に示すように、第1ケーシング23の上板に凹部を形成し、その凹部内に第2ケーシング110が設置されてもよい。
【0077】
第2ケーシング110は、第1ケーシング23に接する。第2ケーシング110の出口110bと、第1ケーシング23の入口23aとは連続的に形成される。ガラスファイバ3は、第2ケーシング110の出口110bを出た直後に、第1ケーシング23の入口23aに入る。それゆえ、第1ケーシング23の入口23aに入る前に、ガラスファイバ3に引きずられるガスの水蒸気量が増加することはない。
【0078】
なお、第2ケーシング110は、本実施形態では第1ケーシング23に接しており第1ケーシング23と間隔をおかずに配置されるが、第1ケーシング23と間隔をおいて配置されてもよい。第1ケーシング23と第2ケーシング110との間隔は、その間をガラスファイバ3が通過する間に、ガラスファイバ3に引きずられるガスの水蒸気量が外部空間6の水蒸気量よりも低く維持される程度の距離であればよい。
【0079】
第2乾燥ガス供給装置120は、外部空間6の露点よりも低い露点の第2乾燥ガスを第2乾燥空間111に導入することにより、第2乾燥空間111の気圧P2を外部空間6の気圧P0よりも高くする。これにより、外部空間6から第2乾燥空間111に外気が流れ込むのを抑制できる。また、第2乾燥空間111において、ガラスファイバ3に引きずられてきたガスを第2乾燥ガスに置換できる。第2乾燥ガスの露点は、外部空間6の露点よりも低いので、第2乾燥空間111におけるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減でき、ガラスファイバ3と共に第2乾燥空間111から第1乾燥空間24に引きずり込まれるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減できる。ひいては、ガラスファイバと共に第1乾燥空間24からファイバ通路22に引きずり込まれるガスの水蒸気量を低減でき、ファイバ通路22における霜または結露の発生を抑制できる。なお、第2乾燥ガスの露点は、上記の通り、第1乾燥空間24の気圧P1と同じ気圧下で測定する。但し、上記の通り、差圧ΔP1(ΔP1=P1-P0)が外部空間6の気圧P0の1%以下であれば、第2乾燥ガスの露点は、外部空間6の気圧P0、つまり、大気圧下で測定してもよい。
【0080】
第2乾燥ガスの導入口121は、第2乾燥空間111に面し、例えば第2ケーシング110の入口110a付近に配置される。入口110a付近に配置することにより、外気が、ガラスファイバ3と共に、第2ケーシング110の入口110aを通り第2ケーシング110の内部に引きずり込まれるのをより制限できる。
【0081】
第2乾燥ガス供給装置120は、乾燥ガス供給源122を有する。乾燥ガス供給源122としては、例えば乾燥機が用いられる。乾燥機は、第2乾燥ガスの原料となるガスに含まれる水蒸気の含有量を低減することにより、第2乾燥ガスを生成する。第2乾燥ガスとしては、例えば、乾燥空気が用いられる。
【0082】
なお、乾燥ガス供給源122は、第2乾燥ガスとして、窒素ガスを、第2乾燥空間111に供給してもよい。窒素ガスとして、液体窒素から蒸発したものが用いられる場合、窒素ガスの露点は、液体窒素の沸点(約-196℃)と同程度であり、外部空間6の露点に比べて著しく低くすることができる。よって、第2乾燥空間111におけるガスの水蒸気量を外部空間6の水蒸気量よりも著しく低減できる。
【0083】
第2乾燥ガス供給装置120は、第2ケーシング110の内部に導入される第2乾燥ガスの圧力を調整する圧力調整弁123を有する。圧力調整弁123は、例えば減圧弁である。第2乾燥空間111の気圧P2を一定に維持でき、第2乾燥空間111の気圧P2と外部空間6の気圧P0との差圧ΔP2(ΔP2=P2-P0)を一定に維持できる。差圧ΔP2は、例えば0Paより大きく0.3MPa以下である。
【0084】
第2乾燥空間111の気圧P2は、外部空間6の気圧P0よりも高ければよく、第1乾燥空間24の気圧P1よりも低くてもよいが、本実施形態では気圧P1よりも高くしている。気圧P2が気圧P1よりも高いと、気圧P2と気圧P0との差圧ΔP2が気圧P1と気圧P0との差圧ΔP1よりも大きくなる。従って、第2乾燥空間111を介して外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むのを、より制限できる。第2乾燥空間111を介して外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むには、差圧ΔP1よりも大きな差圧ΔP2に逆らって外気を引きずることになるからである。第2乾燥空間111を介して外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むのを制限する効果は、第1ケーシング23と第2ケーシング110とが接する場合に特に顕著に得られる。
【0085】
第2乾燥空間111の気圧P2が第1乾燥空間24の気圧P1よりも高いので、第2乾燥空間111から第1乾燥空間24に第2乾燥ガスが流れ込む。これにより、第1乾燥空間24の気圧P1を高め、第1乾燥空間24の気圧P1と外部空間6の気圧P0との差圧ΔP1を大きくできる。差圧ΔP1は、例えば0Paより大きく100Pa以下である。気圧P1が気圧P0よりも高いので、第1ケーシング23を構成する部材同士の隙間を介して、外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むのを抑制することができる。なお、第2乾燥ガスの露点は冷却筒21の温度よりも低いので、第2乾燥ガスが第1乾燥空間24に流れ込み冷却筒21によって冷却されても、霜または結露が発生することはない。
【0086】
第2乾燥空間111の体積は、第1乾燥空間24の体積よりも小さい。例えば、第2乾燥空間111の鉛直方向寸法は、第1乾燥空間24の鉛直方向寸法よりも小さい。また、鉛直方向視で、第2乾燥空間111の直径は、第1乾燥空間24の直径よりも小さい。第2乾燥空間111の体積が第1乾燥空間24の体積よりも小さければ、第2乾燥空間111の気圧P2を第1乾燥空間24の気圧P1よりも容易に高めることができる。
【0087】
〔光ファイバの製造方法〕
図6は、一実施形態に係る光ファイバの製造方法を示すフローチャートである。光ファイバの製造方法は、例えば、加熱溶融工程S11と、冷却工程S12と、樹脂塗布工程S13と、樹脂硬化工程S14と、巻取工程S15とを有する。これらの工程は、制御装置90による制御下で、連続して実施される。
【0088】
加熱溶融工程S11では、光ファイバ用のガラス母材2から線状のガラスファイバ3を引き伸ばすべく、ガラス母材2を加熱溶融する。ガラス母材2は、線引炉10において、線状のガラスファイバ3に引き伸ばされる。
【0089】
冷却工程S12では、線引き直後のガラスファイバ3を、樹脂が塗布される前に、冷却する。線引き直後のガラスファイバ3は、高温であるので、そのままでは保護用の樹脂を塗布することができないからである。これにより、線引き直後のガラスファイバ3は、冷却装置20において、室温付近の温度まで冷却される。
【0090】
樹脂塗布工程S13では、冷却されたガラスファイバ3に樹脂を塗布する。樹脂としては、例えば、紫外線硬化樹脂が用いられる。液状の樹脂がダイ61に貯留されており、ガラスファイバ3がダイ61を通過することにより、ガラスファイバ3の外周面に樹脂が塗布される。
【0091】
樹脂硬化工程S14では、ガラスファイバ3に塗布された樹脂を硬化する。例えば、紫外線硬化樹脂を塗布した場合は、ガラスファイバ3が紫外線ランプ66の横を通過することにより、ガラスファイバ3の外周面に塗布された樹脂が硬化される。なお、樹脂としては、紫外線硬化樹脂の代わりに、熱可塑性樹脂が用いられてもよい。
【0092】
巻取工程S15では、樹脂層で被覆されたガラスファイバ3を、巻取ボビン4に巻き取る。巻取ボビン4は、巻取ボビンホルダ71に着脱自在に保持される。巻取モータ72が巻取ボビンホルダ71を回転させることにより、ガラスファイバ3が巻取ボビン4に巻き取られる。
【0093】
ところで、冷却工程S12は、ガラスファイバ3を、第1ケーシング23内に収容される冷却筒21のファイバ通路22に通す第1の工程を有する。また、冷却工程S12は、ガラスファイバ3を、第1ケーシング23の内部に引き込む前に、第2ケーシング110の内部に引き込む第2の工程を有する。第2の工程と第1の工程とは、この順で、連続して実施される。また、第2の工程と第1の工程とは、制御装置90による制御下で、繰り返し実施してもよい。
【0094】
第1の工程は、第2ケーシング110を通過したガラスファイバ3を、第1ケーシング23の内部に引き込むことを含む。第1ケーシング23の内部には、第1乾燥空間24が形成される。ガラスファイバ3は、第1乾燥空間24の雰囲気に曝された後、ファイバ通路22に引き込まれる。
【0095】
第1の工程は、第1乾燥空間24に、冷却筒21の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することを含む。第1乾燥ガスの露点が冷却筒21の温度よりも低いので、第1乾燥ガスが冷却されても、霜または結露が冷却筒21に付くのを抑制できる。
【0096】
第1の工程は、第1乾燥空間24に、冷却筒21の温度よりも低い露点の第1乾燥ガスを導入することにより、第1乾燥空間24の気圧P1を外部空間6の気圧P0によりも高くすることを含む。その差圧ΔP1によって、外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むのを制限できる。外部空間6から第1乾燥空間24への外気の流入を抑制することで、外部空間6から第1乾燥空間24への水蒸気の流入を抑制でき、冷却筒21に霜または結露が付くのを抑制できる。
【0097】
第2の工程は、外部空間6の露点よりも低い露点の第2乾燥ガスを第2乾燥空間111に導入することにより、第2乾燥空間111の気圧P2を外部空間6の気圧P0よりも高くすることを含む。これにより、外部空間6から第2乾燥空間111に外気が流れ込むのを抑制できる。また、第2乾燥空間111において、ガラスファイバ3に引きずられてきたガスを第2乾燥ガスに置換できる。第2乾燥ガスの露点は、外部空間6の露点よりも低いので、第2乾燥空間111におけるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減でき、ガラスファイバ3と共に第2乾燥空間111から第1乾燥空間24に引きずり込まれるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減できる。ひいては、ガラスファイバと共に第1乾燥空間24からファイバ通路22に引きずり込まれるガスの水蒸気量を低減でき、ファイバ通路22における霜または結露の発生を抑制できる。
【0098】
第2の工程は、第2乾燥空間111に、外部空間6の露点および冷却筒21の温度よりも低い露点の第2乾燥ガスを導入することにより、第2乾燥空間111の気圧P2を第1乾燥空間24の気圧P1よりも高くすることを含む。気圧P2が気圧P1よりも高いと、気圧P2と気圧P0との差圧ΔP2が気圧P1と気圧P0との差圧ΔP1よりも大きくなる。従って、第2乾燥空間111を介して外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むのを、より制限できる。第2乾燥空間111を介して外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むには、差圧ΔP1よりも大きな差圧ΔP2に逆らって外気を引きずることになるからである。ところで、上述の如く、気圧P2が気圧P1よりも高いので、第2乾燥空間111から第1乾燥空間24に第2乾燥ガスが流れ込む。これにより、第1乾燥空間24の気圧P1を高め、第1乾燥空間24の気圧P1と外部空間6の気圧P0との差圧ΔP1を大きくできる。第1ケーシング23を構成する部材同士の隙間を介して、外部空間6から第1乾燥空間24に外気が流れ込むのを抑制することができる。なお、第2乾燥ガスの露点は冷却筒21の温度よりも低いので、第2乾燥ガスが第1乾燥空間24に流れ込み冷却筒21によって冷却されても、霜または結露が発生することはない。
【0099】
[第1変形例]
図7は、第1変形例に係る光ファイバの製造装置の要部を示す図である。本変形例の光ファイバの製造装置は、第2乾燥ガス供給装置120に代えて、吸着部130を備える。なお、吸着部130と第2乾燥ガス供給装置120とを組み合わせて使用することも、当然に可能である。
【0100】
吸着部130は、第2乾燥空間111に配置され、ガラスファイバ3と共に外部空間6から第2乾燥空間111に引きずり込まれた水蒸気を吸着する。それゆえ、上記実施形態と同様に、第2乾燥空間111におけるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減でき、ガラスファイバ3と共に第2乾燥空間111から第1乾燥空間24に引きずり込まれるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減できる。ひいては、ガラスファイバ3と共に第1乾燥空間24からファイバ通路22に引きずり込まれるガスの水蒸気量を低減でき、ファイバ通路22における霜または結露の発生を抑制できる。
【0101】
吸着部130は、例えば、第2冷媒によって冷却される冷却部130Aである。冷却部130Aは、ガラスファイバ3と共に外部空間6から第2乾燥空間111に引きずり込まれた水蒸気を冷却することにより、水蒸気(気体)を氷(固体)または水(液体)に変えて吸着する。冷却部130Aとガラスファイバ3との間隔S1は、冷却筒21の内周面とガラスファイバ3との間隔S2よりも広い。これにより、冷却部130Aに吸着した氷または水と、ガラスファイバ3との接触を抑制できる。
【0102】
冷却部130Aは、例えば、水平方向にガラスファイバ3から遠ざかるにつれ下方に傾斜する傾斜板131Aを有する。傾斜板131Aに沿って、重力によって水を流れ落とすことができる。なお、傾斜板131Aに吸着した氷は、傾斜板131Aへの第2冷媒の供給を停止すると、融けて水に変わる。
【0103】
光ファイバの製造装置は、受け皿132Aを第2乾燥空間111に有する。受け皿132Aは、冷却部130Aの下方に配置され、冷却部130Aから流れ落ちる水を回収する。受け皿132Aには排水管133Aが接続される。受け皿132Aに回収された水は、排水管133Aを通り、第2乾燥空間111の外部に排出される。
【0104】
光ファイバの製造装置は、冷却部130Aを加熱する加熱部135Aを有していても良い。加熱部135Aとしては、例えば電気ヒータなどが用いられる。冷却部130Aを加熱することにより、冷却部130Aに吸着した氷を融かす時間を短縮できる。冷却部130Aに吸着した水を水蒸気に変え、水蒸気を冷却部130Aから脱離することも可能である。加熱部135Aは、例えばガラス母材2の交換時など光ファイバの製造中断時に、冷却部130Aを加熱する。冷却部130Aから氷または水を除去でき、冷却部130Aに吸着した氷または水と、ガラスファイバ3との接触を抑制できる。
【0105】
光ファイバの製造装置は、冷却部130Aに第2冷媒を供給する第2冷媒供給装置140を備える。第2冷媒供給装置140は、第1冷媒供給装置30と同様に構成される。第2冷媒供給装置140は、第2冷媒の温度を調整する温調器141と、温調器141から冷却筒21に向けて第2冷媒を送るポンプ142とを有する。第2冷媒としては、例えば、少なくとも-70℃以上室温(例えば20℃)以下の温度範囲で液相であるものが用いられる。第2冷媒の具体例としては、パーフルオロポリエーテルが挙げられる。
【0106】
第2冷媒は、温調器141によって設定温度まで冷却された後、ポンプ142によって冷却部130Aに向けて送られる。第2冷媒は、冷却部130Aに伝わる熱を吸収した後、第2冷媒供給装置140に還流される。その後、第2冷媒は、再び温調器141によって設定温度まで冷却された後、ポンプ142によって冷却部130Aに向けて送られる。
【0107】
制御装置90は、冷却部130Aの温度が冷却筒21の温度よりも低くなるように、冷却部130Aを冷却する第2冷媒の温度を制御する。制御装置90は、第2冷媒の温度を、第1冷媒の温度よりも低く設定する。第1冷媒の設定温度T1と第2冷媒の設定温度T2との温度差ΔT(ΔT=T1-T2)は、例えば0℃より大きく40℃以下である。
【0108】
第2乾燥空間111において、ガラスファイバ3に引きずられるガスの露点は、冷却部130Aの温度と同程度まで下がる。冷却部130Aの温度は、冷却筒21の温度よりも低い。従って、第2乾燥空間111において、ガラスファイバ3に引きずられるガスの露点を、冷却筒21の温度よりも低くすることができ、その後に第1乾燥空間24に引きずり込まれるガスの露点を、冷却筒21の温度よりも低くすることができる。ひいては、ガラスファイバ3と共に第1乾燥空間24からファイバ通路22に引きずり込まれるガスの露点を、冷却筒21の温度よりも低くすることができる。従って、ファイバ通路22における霜または結露の発生を抑制できる。
【0109】
本変形例の冷却工程S12は、上記実施形態の冷却工程S12とは異なり、第2乾燥ガスを第2乾燥空間111に導入することの代わりに、第2乾燥空間111における水蒸気を吸着部130に吸着することを含む。これにより、上記実施形態と同様に、第2乾燥空間111におけるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減でき、ガラスファイバ3と共に第2乾燥空間111から第1乾燥空間24に引きずり込まれるガスの水蒸気量を、外部空間6の水蒸気量よりも低減できる。ひいては、ガラスファイバ3と共に第1乾燥空間24からファイバ通路22に引きずり込まれるガスの水蒸気量を低減でき、ファイバ通路22における霜または結露の発生を抑制できる。
【0110】
なお、冷却工程S12は、第2乾燥ガスを第2乾燥空間111に導入することと、第2乾燥空間111における水蒸気を第2乾燥空間111に配置される吸着部130に吸着することとを両方含むことも、当然に可能である。
【0111】
[第2変形例]
図8は、第2変形例に係る光ファイバの製造装置の要部を示す図である。本変形例の光ファイバの製造装置は、吸着部130として、冷却部130Aの代わりに、多孔質材料からなる吸着剤130Bを備える。なお、吸着剤130Bと冷却部130Aとを組み合わせて使用することも、当然に可能である。また、吸着剤130Bと第2乾燥ガス供給装置120とを組み合わせて使用することも、当然に可能である。
【0112】
吸着剤130Bは、ガラスファイバ3と共に外部空間6から第2乾燥空間111に引きずり込まれる水蒸気を吸着する細孔を有する。吸着剤130Bを使用すれば、冷却する必要がないので、より手軽に水蒸気を吸着できる。
【0113】
吸着剤130Bは、例えばシリカゲル、アルミナゲル、ゼオライト、または活性炭などで形成される。吸着剤130Bは、例えば、粒状に形成され、粒状の吸着剤130Bは、例えば網に収容される。なお、粒状の吸着剤130Bは、網に収容される代わりに、受け皿などに載せてもよい。
【0114】
光ファイバの製造装置は、吸着剤130Bを加熱する加熱部135Bを有する。加熱部135Bとしては、例えば電気ヒータなどが用いられる。吸着剤130Bを加熱することにより、吸着剤130Bから水蒸気を脱離できる。吸着剤130Bから脱離した水蒸気は、外部空間6に排出される。加熱部135Bは、例えばガラス母材2の交換時など光ファイバの製造中断時に、吸着剤130Bを加熱する。加熱することで、吸着剤130Bの吸着率の低下を抑制できる。
【0115】
本変形例の冷却工程S12は、上記第1変形例の冷却工程S12と同様に、第2乾燥空間111における水蒸気を吸着部130に吸着することを含む。本変形例の冷却工程S12は、上記第1変形例の冷却工程S12と同様であるので、図示および説明を省略する。
【0116】
以上、本開示の実施形態などについて説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0117】
1 製造装置
2 ガラス母材
3 ガラスファイバ
6 外部空間
10 線引炉
20 冷却装置
21 冷却筒
22 ファイバ通路
23 第1ケーシング
24 第1乾燥空間
30 第1冷媒供給装置
31 温調器
32 ポンプ
40 第1乾燥ガス供給装置
90 制御装置
110 第2ケーシング
111 第2乾燥空間
120 第2乾燥ガス供給装置
130 吸着部
130A 冷却部
130B 吸着剤