(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】吊り構造
(51)【国際特許分類】
F16B 1/00 20060101AFI20240116BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20240116BHJP
F16B 2/12 20060101ALI20240116BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20240116BHJP
E04B 9/18 20060101ALN20240116BHJP
E04B 9/26 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
F16B1/00 A
E04B9/00 H
F16B2/12 B
F16B37/04 K
E04B9/18 Q
E04B9/26 B
(21)【出願番号】P 2019124009
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 淳
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝宣
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】辻 一樹
(72)【発明者】
【氏名】向井 直人
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-190058(JP,A)
【文献】特開2006-183753(JP,A)
【文献】特開平04-221150(JP,A)
【文献】特開2008-020170(JP,A)
【文献】特開2005-140166(JP,A)
【文献】特開2013-060713(JP,A)
【文献】特開2019-094650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 1/00-2/26
E04B 9/00-9/36
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H型鋼の梁
の下フランジに固定されるクランプ材と、
前記クランプ材に下部が支持されるとともに、上端部が
下方に向けて開口する水平なリップ溝形鋼からなる吊り木を支持する支持金具と、
前記支持金具に支持される前記吊り木と、
前記吊り木に吊り下げられて、被吊下部材を吊り下げ固定する吊り金具と、
前記吊り金具に固定される前記被吊下部材と、
を備える吊り構造であって、
前記吊り金具は、当該吊り金具の長さ方向が前記吊り木の開口幅よりも長く形成されており、当該吊り木の内部に挿入され、当該吊り木の両側のリップに引っ掛かる第二掛け止めプレートと、前記第二掛け止めプレートに設けられたネジ孔に螺合し、上端が前記第二掛け止めプレートから上方に出入可能な第二ボルトと、前記第二ボルトを回転させる第二操作部と、を備え、前記第二ボルトは、その上端を前記吊り木の溝底に圧接させて、前記上端と前記第二掛け止めプレートとが離反することにより、前記吊り木に吊り下げ固定されるものであり、
前記支持金具は、前記第二掛け止めプレートと同一形状の第一掛け止めプレートと、前記第二ボルトと同一形状の第一ボルトと、前記第二操作部と同一形状の第一操作部と、を有し、
前記第一掛け止めプレートが、前記吊り木の内部に挿入され、当該吊り木の両側のリップに引っ掛かり、前記第一ボルトが、前記第一掛け止めプレートに設けられたネジ孔に螺合し、上端が前記第一掛け止めプレートから上方に出入可能となっており、前記第一操作部が、前記第一ボルトを回転させるものであり、前記第一ボルトの上端を前記吊り木の溝底に圧接させて、前記上端と前記第一掛け止めプレートとが離反することにより、前記吊り木を固定するものであることを特徴とする吊り構造。
【請求項2】
前記吊り木の前記リップは互いに接近する方向に向かって上がる方向に傾斜しており、
前記第一掛け止めプレート及び前記第二掛け止めプレートは、長さ方向の両端部がそれぞれ端縁に向かって下方に傾斜することを特徴とする請求項1に記載の
吊り構造。
【請求項3】
前記吊り金具は、前記被吊下部材に設けられた係止爪を挟持する上下一対の挟持部を備え、
少なくとも上側の前記挟持部は、前記
第二ボルトに螺着する上ナット、前記上ナットの下面に固定される上ワッシャ、及び、前記上ワッシャの下面に固定される上防振材が一体に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊り構造。
【請求項4】
前記第一操作部は、前記第一ボルトに回転不能に固定されたナットであり、
前記第二操作部は、前記第二ボルトに回転不能に固定されたナットであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の吊り構造。
【請求項5】
前記支持金具は、前記第一ボルトに螺着し、前記第一掛け止めプレートの下面に当接して、当該第一掛け止めプレートの回転を抑制する第一緩み止めナットを更に備え、
前記吊り金具は、前記第二ボルトに螺着し、前記第二掛け止めプレートの下面に当接して、当該第二掛け止めプレートの回転を抑制する第二緩み止めナットを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の吊り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップ溝形鋼からなる吊り木に吊り下げられて、被吊下部材を吊り下げ固定する吊り金具を用いた吊り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば天井埋込型の空気調和装置などの被吊下部材の吊下構造として空調機ケーシングに設けられた係止爪を、吊下げボルトに螺合された下側ナットに引っ掛けて、下側ナットと、当該下側ナットの上に設けられた上側ナットとで係止爪を挟んで固定するものが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。これらの構成の中には、例えば特許文献1のように、係止爪を下側ナットに引っ掛ける際に、上側ナットと係止爪との間に配置される上側ワッシャの落下を防止するために、ボール紙で形成されたワッシャ保持片を上側ワッシャの下に当接させて配置したものも提案されている。また、例えば特許文献2のように、H字形のゴム板からなるワッシャ一体型防振ゴムを、吊りボルトに対して水平方向から係止爪を挟み込むように挿入して、上下のナットで締めることで、上側のワッシャを指で押さえることなく、係止爪を固定できる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-75241号公報
【文献】特開2002-162096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吊りボルトの上端を下向きに開口するリップ溝形鋼からなる吊り木に固定する場合に、リップ部分を上下2つの金具で挟み込んで固定することになり部品点数を増加させることになる。また、防振ゴムを上ナットと被吊下部材の係止爪との間に配置する場合に、防振ゴムの落下を防止するための措置が必要となり、施工性が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、コストダウンと施工性の向上に寄与できる吊り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吊り構造は、H型鋼の梁の下フランジに固定されるクランプ材と、前記クランプ材に下部が支持されるとともに、上端部が下方に向けて開口する水平なリップ溝形鋼からなる吊り木を支持する支持金具と、前記支持金具に支持される前記吊り木と、前記吊り木に吊り下げられて、被吊下部材を吊り下げ固定する吊り金具と、前記吊り金具に固定される前記被吊下部材と、を備える吊り構造であって、前記吊り金具は、当該吊り金具の長さ方向が前記吊り木の開口幅よりも長く形成されており、当該吊り木の内部に挿入され、当該吊り木の両側のリップに引っ掛かる第二掛け止めプレートと、前記第二掛け止めプレートに設けられたネジ孔に螺合し、上端が前記第二掛け止めプレートから上方に出入可能な第二ボルトと、前記第二ボルトを回転させる第二操作部と、を備え、前記第二ボルトは、その上端を前記吊り木の溝底に圧接させて、前記上端と前記第二掛け止めプレートとが離反することにより、前記吊り木に吊り下げ固定されるものであり、前記支持金具は、前記第二掛け止めプレートと同一形状の第一掛け止めプレート、前記第二ボルトと同一形状の第一ボルト、前記第二操作部と同一形状の第一操作部を有し、前記第一掛け止めプレートが、前記吊り木の内部に挿入され、当該吊り木の両側のリップに引っ掛かり、前記第一ボルトが、前記第一掛け止めプレートに設けられたネジ孔に螺合し、上端が前記第一掛け止めプレートから上方に出入可能となっており、前記第一操作部が、前記第一ボルトを回転させるものであり、前記第一ボルトの上端を前記吊り木の溝底に圧接させて、前記上端と前記第一掛け止めプレートとが離反することにより、前記吊り木を固定するものであることを特徴としている。
【0007】
本発明の吊り構造は、前記吊り木の前記リップは互いに接近する方向に向かって上がる方向に傾斜しており、前記第一掛け止めプレート及び前記第二掛け止めプレートは、長さ方向の両端部がそれぞれ端縁に向かって下方に傾斜するを特徴としている。
【0008】
本発明の吊り構造は、前記吊り金具は、前記被吊下部材に設けられた係止爪を挟持する上下一対の挟持部を備え、少なくとも上側の前記挟持部は、前記第二ボルトに螺着する上ナット、前記上ナットの下面に固定される上ワッシャ、及び、前記上ワッシャの下面に固定される上防振材が一体に設けられることを特徴としている。
【0009】
本発明の吊り構造は、前記第一操作部は、前記第一ボルトに回転不能に固定されたナットであり、前記第二操作部は、前記第二ボルトに回転不能に固定されたナットであることを特徴としている。
【0010】
本発明の吊り構造は、前記支持金具は、前記第一ボルトに螺着し、前記第一掛け止めプレートの下面に当接して、当該第一掛け止めプレートの回転を抑制する第一緩み止めナットを更に備え、前記吊り金具は、前記第二ボルトに螺着し、前記第二掛け止めプレートの下面に当接して、当該第二掛け止めプレートの回転を抑制する第二緩み止めナットを更に備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吊り構造によると、掛け止めプレートがリップ溝形鋼からなる吊り木の両側のリップに引っ掛けられ、操作部を操作することによりボルトが掛け止めプレートのネジ孔の内部で回転し、当該ボルトの上端が掛け止めプレートから上方に突出して吊り木の溝底に圧接し、当該ボルトの上端と掛け止めプレートとが互いに離反することによって、吊り木の内部でボルトが突っ張って、当該吊り木に吊り下げ固定されることとなるので、上下から吊り木のリップを挟み込む構成に比べて部品点数を低減する。また、ボルトの上端が吊り木の溝底に当る感覚があるので、適度な固定力で仮固定することができ、ボルトの高さ位置を簡単に調整することができる。
また、吊り木を支持する支持金具及び吊り木の固定構造と、吊り木に吊り下げられて被吊下部材を吊り下げ固定する吊り金具及び吊り木の固定構造とが同一形状であるので、少ない部品の種類で吊り構造を構成することができ、材料コストを低減できるとともに、部品の種類を削減することで施工作業者の部品選択の負担を低減できる。
【0013】
本発明の吊り構造によると、吊り木のリップが互いに接近する方向に向かって上がる方向に傾斜し、掛け止めプレートの長さ方向の両端部がそれぞれ端縁に向かって下方に傾斜しているので、掛け止めプレートを吊り木の両側のリップの上に架け渡して固定したときに、掛け止めプレートが脱落することを抑制でき、さらに、ボルトを吊り木の溝底に圧接させることで、掛け止めプレートはリップに圧接することとなって、吊り金具が吊り木から脱落することを防止できる。
【0014】
本発明の吊り構造によると、少なくとも上側の挟持部は、ボルトに螺着する上ナット、上ナットの下面に固定される上ワッシャ、及び、上ワッシャの下面に固定される上防振材が一体に設けられるので、上ワッシャ及び上防振材が上ナットとともに保持されることとなり、上ワッシャ及び上防振材を上ナットに固定するための余計な作業を行うことなく、上ワッシャ及び上防振材が下ナット側に落下することを防止でき、被吊下部材の固定が妨げられることを抑制できる。したがって、上向きでの作業を減らすことができるとともに、防振ゴムの入れ忘れも防止でき、施工品質を向上させることができる。
【0015】
本発明の吊り構造によると、操作部は、ボルトに回転不能に固定されたナットであるので、簡単な加工でナットをボルトにカシメ固定するといった簡単な加工で安価に操作部を設けることができ、一般的なレンチで簡単にボルトを回転させることができる。
【0016】
本発明の吊り構造によると、掛け止めプレートの下面に当接する緩み止めナットがボルトに螺着して設けられているので、ボルトの上端を吊り木の溝底に圧接させて吊り木内で突っ張らせて、掛け止めプレートをリブに圧接させた状態で、緩み止めナットを掛け止めプレートの下面に圧接させることで、掛け止めプレートのガタツキや回転を防止することができ、掛け止めプレートの緩みによって吊り金具が吊り木から脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】支持金具をクランプ材を介して梁に固定する状態を示す断面図。
【
図5】梁に固定された支持金具を吊り木に固定した状態を示す省略斜視図。
【
図6】梁に固定された支持金具を吊り木に固定した状態を示す省略断面図。
【
図7】支持金具と吊り木との接合部分の状態を示す拡大断面図。
【
図8】吊り木に吊り金具を吊り下げ固定した状態を示す斜視図。
【
図9】吊り木に吊り金具を吊り下げ固定する手順を示す省略断面図。
【
図10】吊り金具の下側の挟持部に被吊下部材の係止爪を引っ掛ける状態を示す断面図。
【
図11】吊り金具の下側の挟持部に被吊下部材の係止爪を引っ掛けた状態を示す断面図。
【
図12】被吊下部材を吊り金具に吊り下げ固定した状態を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の吊り金具1及び吊り構造2の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の吊り構造2は、例えば空気調和機などの天井埋め込み式の被吊下部材3を天井懐に配置するための構造である。被吊下部材3は、空気調和機に限られるものではなく、例えば換気扇、又は配線・配管固定用ラックといった天井側に固定する必要がある種々の部材であってもよい。
【0020】
吊り構造2は、
図1に示すように、梁4に固定されるクランプ材5と、クランプ材5に下部が支持されて立設される支持金具6と、支持金具6に支持されて2本の梁4の間に架設される吊り木7と、吊り木7に吊り下げられる吊り金具1と、吊り金具1に固定される被吊下部材3と、を備える構造である。梁4は、上下にフランジが配置されるH形鋼であり、2本の梁4が互いに平行に架設されている。
【0021】
クランプ材5は、
図4及び
図5に示すように、梁4の下側のフランジ4aに固定されて、支持金具6の下部を支持する金具である。クランプ材5は梁4の下側のフランジ4aを上下から挟み込む梁固定部51と、梁固定部51から水平方向に突出して形成されており支持金具6の下部を支持する支持部52と、を有する。梁固定部51は、上板部53、下板部54、及び、上板部53と下板部54とを繋ぐ連結部55からなる側面視略コ字状である。下板部54には雌ネジが設けられた固定孔56が貫通して設けられている。そして、下板部54の固定孔56には梁4にクランプ材5を固定するためのクランプボルト57が螺着している。梁4の下側のフランジ4aの上下に上板部53及び下板部54を配置した状態で、クランプボルト57を締め付けることでクランプボルト57の先端が下側のフランジ4aに圧接し、梁4にクランプ材5が固定される。
【0022】
支持部52は、上板部53と面一な平板状に形成されている。支持部52には、支持金具6の第一ボルト60の下部を受ける受け溝58が形成されており、第一ボルト60の下部を受け溝58に挿入した状態で第一ボルト60に螺着された上下の固定ナット64で支持部52を挟み込むことで、支持部52と支持金具6の第一ボルト60とを接合している。なお、支持部52と支持金具6は予め溶接されるなど他の固定方法であっても良い。
【0023】
支持金具6は、鉛直方向に長い全ネジの第一ボルト60と、当該第一ボルト60に螺着され、支持部52を挟み込んで、支持金具6を支持部52に固定する上下一対の固定ナット64と、第一ボルト60の中間部に形成され第一ボルト60を回転操作するための第一操作部61と、第一ボルト60の上部に設けられ吊り木7の両側のリップ71に引っ掛かる第一掛け止めプレート62と、第一掛け止めプレート62の下面に当接して第一掛け止めプレート62が第一ボルト60に対して回転することを抑制する第一緩み止めナット63と、を備えている。支持金具6の第一ボルト60、第一操作部61、第一掛け止めプレート62、第一緩み止めナット63の形状は後述する吊り金具1の第二ボルト10、第二操作部21、第二掛け止めプレート12、第二緩み止めナット13と同一形状であるので詳細な説明は省く。
【0024】
吊り木7は、
図1及び
図5に示すように、2本の梁4の間に当該梁4に対して垂直に、且つ互いに平行に2本水平に架設されている。吊り木7は、下方に向かって開口するリップ溝形鋼から成る。吊り木7は、両側のリップ71が、互いに接近する方向に向かって上がる方向に傾斜している。
【0025】
そして、吊り木7に吊り下げられる吊り金具1は、
図2及び
図3に示すように、鉛直方向に長い全ネジの第二ボルト10と、第二ボルト10の中間部に形成され第二ボルト10を回転操作するための第二操作部11と、第二ボルト10の上部に設けられ吊り木7の両側のリップ71に引っ掛かる第二掛け止めプレート12と、第二掛け止めプレート12の下面に当接して第二掛け止めプレート12が第二ボルト10に対して回転することを抑制する第二緩み止めナット13と、被吊下部材3に設けられた係止爪31を挟持する上下一対の挟持部14a,14bと、を有している。第二操作部11は、下部がフランジ状に広がって形成されたナットを、第二ボルト10に対して回転不能となるように塑性変形させて形成されている。第二操作部11をレンチを用いて第二ボルト10の周回り方向に回転させることで、第二操作部11とともに第二ボルト10も軸回転させることができる。
【0026】
第二掛け止めプレート12は、長方形平板の長さ方向の両端を下方に折り曲げて形成されたプレートである。第二掛け止めプレート12の中心には上下方向に貫通するネジ孔15が形成されている。第二掛け止めプレート12の寸法は、短辺が吊り木7のリップ71の間の開口幅よりも短く、長辺が当該開口幅よりも長く形成されている。第二掛け止めプレート12は、ネジ孔15が第二ボルト10に螺合しており、第二ボルト10の回転によって第二掛け止めプレート12が第二ボルト10に対して上下に移動する。第二緩み止めナット13は、第二掛け止めプレート12の下側で第二ボルト10に螺着するナットであり、第二掛け止めプレート12の下面に当接させることで、第二掛け止めプレート12が第二ボルト10に対して回転することを抑制するものである。
【0027】
上下一対の挟持部14a,14bは、被吊下部材3に設けられた係止爪31を上下に挟んで挟持するものである。上側の挟持部14a及び下側の挟持部14bは同一の形状に形成されている。上側の挟持部14aは、第二ボルト10に螺着する上ナット16a、上ナット16aの下面に接着固定される上ワッシャ17a、及び、上ワッシャ17aの下面に接着固定される上防振材18aからなる。上ナット16aは第二ボルト10に螺着する形状であり、上ワッシャ17a及び上防振材18aは筒状に形成されて第二ボルト10が挿通される。上防振材18aは下方向に縮径する円錐台筒状であり、粘弾性を有して被吊下部材3の振動を吊り木7側に伝達することを防止する部材である。また、下側の挟持部14bは上側の挟持部14aと上下反転させた同一形状であり、下ナット16bの上面に下ワッシャ17bが接着固定され、下ワッシャ17bの上面に下防振材18bが接着固定される。なお、本実施形態では上述の通りそれぞれの部材が接着固定されているが、本発明の吊り金具1はこれに限定されるものではなく、上ナット16aと上ワッシャ17aが一体形成されているなど他の接合方法で一体化されたものであっても良い。
【0028】
なお、前述の通り、支持金具6の第一ボルト60、第一操作部61、第一掛け止めプレート62、第一緩み止めナット63の形状は吊り金具1の第二ボルト10、第二操作部11、第二掛け止めプレート12、第二緩み止めナット13と同一形状であるので、部品を共通化することで、原材料コストの低減や施工作業者の施工効率を高めることができる。
【0029】
被吊下部材3は、4つの角からそれぞれ突出するように係止爪31が形成されている。係止爪31は、基端側が被吊下部材3に固定されるとともに、先端側の中央に吊り金具1の第二ボルト10が挿入可能なボルト挿入溝32が切り欠かれて形成されている。係止爪31の先端は上方に折れ曲がっており、ボルト挿入溝32に第二ボルト10を挿入して、上側の挟持部14aを係止爪31に引っ掛けたときに、被吊下部材3が脱落することを防止している。
【0030】
以上のように形成される吊り構造2を施工する際には、まず、
図4に示すように、支持金具6の第一ボルト60をクランプ材5の支持部52に形成された受け溝58に挿入し、固定ナット64で上下から支持部52を挟み込んで、支持金具6をクランプ材5に仮固定する。そして、梁4の下側のフランジ4aの上下にクランプ材5の梁固定部51の上板部53及び下板部54を配置した状態で、クランプボルト57を締め付け、梁4にクランプ材5及びクランプ材5に固定された支持金具6を取り付ける。
【0031】
次に、吊り木7の一端側のリップ71の間の開口から支持金具6の第一ボルト60の上端及び第一掛け止めプレート62を挿入し、
図6及び
図7に示すように、両側のリップ71の間に第一掛け止めプレート62を引っ掛かるように架設する。そして、第一操作部61をレンチで回転させて、第一掛け止めプレート62から第一ボルト60の先端が突出するように、第一ボルト60を回転させ、第一ボルト60の先端を吊り木7のウェブの下面である溝底72に圧接させるとともに、第一掛け止めプレート62をリップ71の上面に圧接させて、吊り木7を支持金具6に固定する。そして、第一緩み止めナット63を回転させて第一掛け止めプレート62の下面に圧接させて、第一掛け止めプレート62の緩みを防止する。また、第一ボルト60下部では、固定ナット64をさらに支持部52に圧接するように締めこんで、支持金具6をクランプ材5に固定する。同様の工程を吊り木7の他端側でも行うことで、吊り木7を2本の梁4の間に架設する。さらに同様の工程を繰り返し、2本の吊り木7を梁4の間に平行に架設する。
【0032】
次に、
図8及び
図9に示すように、架設された吊り木7の下方に被吊下部材3の係止爪31が配置されることになる位置に、吊り金具1を吊り下げ固定する工程を行う。具体的には、
図9(A)に示すように、吊り木7のリップ71の間の開口から吊り金具1の第二ボルト10の上端及び第二掛け止めプレート12を挿入する。第二掛け止めプレート12はその短辺が開口の幅方向となるように保持することで、第二掛け止めプレート12の短辺は吊り木7の開口幅よりも短いので、吊り木7内部にに挿入することができる。
【0033】
そして、
図9(B)に示すように、第二掛け止めプレート12を水平に90度回転させることで、開口幅よりも長い長辺の端部がリップ71に引っ掛かって、吊り木7がリップ71の間に架設される。その後、第二操作部11をレンチで回転させて、第二掛け止めプレート12から第二ボルト10の先端が突出するように、第二ボルト10を回転させ、第二ボルト10の先端を吊り木7のウェブの下面である溝底72に圧接させるとともに、第二掛け止めプレート12をリップ71の上面に圧接させて、吊り木7を吊り金具1に吊り下げ固定する。吊り木7のリップ71が互いに接近する方向に向かって上がる方向に傾斜し、第二掛け止めプレート12の長さ方向の両端部がそれぞれ端縁に向かって下方に傾斜しているので、第二掛け止めプレート12を吊り木7のリップ71の上面に圧接させたとき、第二掛け止めプレート12はより強固にリップ71に固定されることとなり、吊り金具1が吊り木7から脱落することを防止できる。
【0034】
そして、
図9(C)に示すように、第二緩み止めナット13を回転させて第二掛け止めプレート12の下面に圧接させて、第二掛け止めプレート12の緩みを防止する。そして吊り金具1を吊り木7に吊り下げ固定する作業を係止爪31が配置される箇所の上方4箇所で繰り返す。
【0035】
次に、吊り金具1の第二ボルト10下部に設けられている下側の挟持部14bの高さを被吊下部材3の係止爪31が配置されることになる高さに調整するとともに、上側の挟持部14aを下側の挟持部14bから離れるように上方に配置する。そして、
図10に示すように、被吊下部材3を持ち上げて、係止爪31を下側の挟持部14bに引っ掛ける。吊り金具1が設けられた4箇所でそれぞれ係止爪31を下側の挟持部14bに引っ掛けると、
図11及び
図12に示すように、上側の挟持部14aを下側の挟持部14bに接近する方向に回転させて、係止爪31を上下の挟持部14a,14bで挟持して、被吊下部材3を吊り下げて、吊り構造2を完成させる。このとき、上側の挟持部14aは上ワッシャ17a及び上防振材18aが上ナット16aと一体となっているので、下側の挟持部14b側に落下することを防止でき、被吊下部材3を下側の挟持部14bに引っ掛ける作業を妨げられることを抑制できる。したがって、上向きでの作業負担を減らすことができるとともに、防振材18a,18bを入れ忘れることも防止でき、施工品質を向上させることができる。
【0036】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る吊り金具1及び吊り構造2は、天井埋め込み式の空気調和機のような被吊下部材3を設置する金具及び構造として好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 吊り金具
2 吊り構造
3 被吊下部材
4 梁
6 支持金具
7 吊り木
10 第二ボルト(ボルト)
11 第二操作部(操作部)
12 掛け止めプレート
13 緩み止めナット
14a 上側の挟持部
16a 上ナット
17a 上ワッシャ
18a 上防振材