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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】埋設物検出装置および埋設物検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20240116BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20240116BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01S7/40 121
G01S13/88 200
G01V3/12 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019127552
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021012153
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 康平
(72)【発明者】
【氏名】清水 良治
(72)【発明者】
【氏名】岡村 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】鶴巣 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 充典
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-500550(JP,A)
【文献】特開2010-025949(JP,A)
【文献】特開2010-281596(JP,A)
【文献】特開2010-281643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01V 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して照射された電磁波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出装置であって、
電磁波を前記対象物へ放射する送信部と、
前記電磁波の反射波を受信するサンプル・ホールド回路を有する受信部と、
放射する電磁波またはサンプリングパルスをデジタル信号によって任意に遅延させることが可能な可変遅延素子と、
前記受信部において受信される前記反射波のサンプリング期間が前記反射波の検出に必要な期間と合致するように調整するための補正値を保存した記憶部と、
前記記憶部に保存された前記補正値を参照して、前記前記反射波のサンプリング期間が前記反射波の検出に必要な期間と合致するように、前記可変遅延素子を制御し、前記サンプリング期間が最小限の長さになるように設定する制御部と、
を備えている埋設物検出装置。
【請求項2】
前記補正値は、装置ごとに異なる値が記憶され、装置ごとの個体差に起因する前記サンプリング期間のずれを調整する、
請求項1に記載の埋設物検出装置。
【請求項3】
前記補正値は、温度変化に起因する前記サンプリング期間のずれを調整する温度補正係数または温度補正テーブルを含む、
請求項1または2に記載の埋設物検出装置。
【請求項4】
前記温度変化を検出する温度センサを、さらに備え、
前記制御部は、前記温度センサにおいて検出された温度変化を用いて、前記温度補正係数から補正量を算出、または前記温度補正テーブルを参照して、前記可変遅延素子を制御する、
請求項3に記載の埋設物検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記サンプリング期間の開始タイミングを、前記反射波の受信開始タイミングに合わせるように調整を行う、
請求項1から4のいずれか1項に記載の埋設物検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記サンプリング期間の長さを変化させる複数の設定モードを有している、
請求項1から5のいずれか1項に記載の埋設物検出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記サンプリング期間を、前記対象物の表面から所定の深さまでの期間に変更する第1設定モードを有している、
請求項6に記載の埋設物検出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記サンプリング期間における遅延時間の変化間隔を1より大きい値に変更する第2設定モードを有している、
請求項1から7のいずれか1項に記載の埋設物検出装置。
【請求項9】
対象物に対して照射された電磁波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出装置であって、
電磁波を前記対象物へ放射する送信部と、
前記電磁波の反射波を受信するサンプル・ホールド回路を有する受信部と、
放射する電磁波またはサンプリングパルスをデジタル信号によって任意に遅延させることが可能な可変遅延素子と、
前記受信部において受信される前記反射波のサンプリング期間が前記反射波の検出に必要な期間と合致するように調整するための補正値を保存した記憶部と、
前記記憶部に保存された前記補正値を参照して、前記前記反射波のサンプリング期間が前記反射波の検出に必要な期間と合致するように、前記可変遅延素子を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記対象物の表面からの距離が大きくなるにつれて同一遅延時間でのサンプリングを複数回実施して平均化した値を前記反射波の検出値として用いる第3設定モードを有している、
埋設物検出装置。
【請求項10】
対象物に対して照射された電磁波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出方法であって、
デジタル信号によって、放射する電磁波の遅延時間または前記反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する遅延時間調整ステップと、
予め記憶部に保存された補正値を参照して、受信される前記反射波のサンプリング期間が前記反射波の検出に必要な期間と合致するように前記サンプリング期間を調整し、前記サンプリング期間が最小限の長さになるように設定する補正ステップと、
電磁波を前記対象物へ放射する送信ステップと、
前記補正ステップにおいて調整された前記サンプリング期間に従って、前記電磁波の反射波を受信する受信ステップと、
を備えている埋設物検出方法。
【請求項11】
前記補正ステップでは、装置ごとの個体差に起因する前記サンプリング期間のずれを調整する、
請求項10に記載の埋設物検出方法。
【請求項12】
前記補正ステップでは、温度変化に起因する前記サンプリング期間のずれを調整する、
請求項10または11に記載の埋設物検出方法。
【請求項13】
前記補正ステップでは、前記サンプリング期間の開始タイミングを、前記反射波の受信開始タイミングに合わせるように調整を行う、
請求項10から12のいずれか1項に記載の埋設物検出方法。
【請求項14】
前記補正ステップでは、前記サンプリング期間の長さを変化させる複数の設定モードから選択された補正を実施する、
請求項10から13のいずれか1項に記載の埋設物検出方法。
【請求項15】
前記補正ステップでは、前記サンプリング期間を、前記対象物の表面から所定の深さまでの期間に変更する第1設定モードを実施する、
請求項14に記載の埋設物検出方法。
【請求項16】
前記補正ステップでは、前記サンプリング期間における前記遅延時間の変化間隔を1より大きい値に変更する第2設定モードを実施する、
請求項10から15のいずれか1項に記載の埋設物検出方法。
【請求項17】
前記補正ステップでは、前記対象物の表面からの距離が大きくなるにつれて同一遅延時間での前記サンプリングを複数回実施して平均化した値を前記反射波の検出値として用いる第3設定モードを実施する、
請求項10から16のいずれか1項に記載の埋設物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、壁や地中等に含まれる埋設物を検出する埋設物検出装置および埋設物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、コンクリート内に含まれる鉄筋等の埋設物を検出する装置として、コンクリートの表面を移動させながら、コンクリートの表面に向かって放射した電磁波の反射波の変化に基づいて、埋設物を検出する装置が用いられている。
特許文献1には、電磁波を送信アンテナから放射し、受信アンテナで受信された対象物からの反射波を、高速鋸歯状波発生器と低速鋸歯状波発生器および交点パルス発生器を用いて生成したサンプリングパルスによってサンプリングするチャープサンプリング方式地中レーダについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-154177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された装置では、高速鋸歯状波と低速鋸歯状波とを比較して、サンプリングパルスを生成しているため、例えば、装置ごとの個体差、温度変化等によって、埋設物の検出に必要な受信波のサンプリングを行う期間がずれてしまうおそれがある。特に、例えば、数センチの深さの埋没物を検出するためには10ps程度の非常に短い時間間隔で受信波をサンプリングする必要があり、基準パルスから、受信波の地表面にあたる信号が受信されるまでの遅延時間と、サンプリングパルスの初期遅延時間を数10ps程度の精度で合わせることは困難である。
【0005】
このため、従来の構成では、装置の個体差や温度変化等によってサンプリングを行う期間がずれてしまった場合でも受信波を確実にサンプリングできるように、サンプリングを行う期間を長く設定していた。
しかし、サンプリング期間を延長した場合には、埋設物の検出に必要な受信波の取得に要する時間も延長されるため、処理効率が低下するという課題があった。
【0006】
本発明の課題は、埋設物の検出に必要な受信波の取得時間を短縮して効率よくサンプリングを行うことが可能な埋設物検出装置および埋設物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る埋設物検出装置は、対象物に対して照射された電磁波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出装置であって、送信部と、受信部と、可変遅延素子と、記憶部と、制御部と、を備えている。送信部は、電磁波を対象物へ放射する。受信部は、電磁波の反射波を受信するサンプル・ホールド回路を有する。可変遅延素子は、放射する電磁波またはサンプリングパルスをデジタル信号によって任意に遅延させることが可能である。記憶部は、受信部において受信される反射波のサンプリング期間が反射波の検出に必要な期間と合致するように調整するための補正値を保存している。制御部は、記憶部に保存された補正値を参照して、反射波のサンプリング期間が反射波の検出に必要な期間と合致するように、可変遅延素子を制御する。
【0008】
ここでは、放射された電磁波の反射波を受信して、例えば、コンクリート内に存在する鉄筋等の埋設物を検出する埋設物検出装置において、デジタル信号によって反射波のサンプリングパルスを設定するとともに、反射波のサンプリング期間を反射波の検出に必要な期間に合致させるための補正値を記憶部に保存している。
ここで、可変遅延素子は、例えば、ディレイICであって、デジタル信号によって反射波を受信するサンプリングパルスの遅延時間を設定する。
【0009】
上記補正値には、例えば、補正値、補正係数、補正テーブルが含まれる。
また、補正値によって調整されるサンプリング期間のずれは、例えば、製品ごとの個体差、温度変化等に起因して発生する。
これにより、例えば、製品出荷時等において、受信部において受信した反射波の波形を確認して、個体差や温度変化に起因するサンプリング期間のずれを補正するための補正値を記憶部に保存させることで、サンプリング期間のずれを記憶部に保存された補正値を参照して補正することができる。
この結果、反射波のサンプリング期間を最小限の長さになるように設定することができるため、埋設物の検出に必要な受信波の取得時間を短縮して効率よく反射波のサンプリングを行うことができる。
【0010】
第2の発明に係る埋設物検出装置は、第1の発明に係る埋設物検出装置であって、補正値は、装置ごとに異なる値が記憶され、装置ごとの個体差に起因するサンプリング期間のずれを調整する。
これにより、例えば、製品出荷時等において、受信部において受信した反射波の波形を確認して、個体差に起因するサンプリング期間のずれを補正するための補正値を記憶部に保存させることで、個体差に起因するサンプリング期間のずれを記憶部に保存された補正値を参照して補正することができる。
【0011】
第3の発明に係る埋設物検出装置は、第1または第2の発明に係る埋設物検出装置であって、補正値は、温度変化に起因するサンプリング期間のずれを調整する温度補正係数または温度補正テーブルを含む。
【0012】
これにより、例えば、製品開発時等において、外気温を変化させて受信部において受信した反射波の波形を確認して、温度変化に起因するサンプリング期間のずれを把握した上で、補正するための補正テーブルを作成し、記憶部に保存させることで、温度変化に起因するサンプリング期間のずれを記憶部に保存された補正テーブルを参照して補正することができる。
【0013】
第4の発明に係る埋設物検出装置は、第3の発明に係る埋設物検出装置であって、温度変化を検出する温度センサを、さらに備えている。制御部は、温度センサにおいて検出された温度変化を用いて、温度補正係数から算出、または温度補正テーブルを参照して、可変遅延素子を制御する。
これにより、製品が使用される使用環境における温度変化を温度センサによって検出することで、記憶部に保存された補正テーブルを参照して、現在の温度に応じたサンプリング期間のずれを適切に調整することができる。
【0014】
第5の発明に係る埋設物検出装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る埋設物検出装置であって、制御部は、サンプリング期間の開始タイミングを、反射波の受信開始タイミングに合わせるように調整を行う。
これにより、サンプリング期間のずれの調整は、サンプリング期間の開始タイミングを、反射波の立ち上がり(受信開始)のタイミングに合わせることで、反射波のサンプリング期間を適切に調整することができる。
【0015】
第6の発明に係る埋設物検出装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る埋設物検出装置であって、制御部は、サンプリング期間の長さを変化させる複数の設定モードを有している。
これにより、例えば、ユーザの要望(検出範囲限定、処理効率重視、検出精度重視等)、対象物の材質、埋設物の種類・材質・大きさ等に応じてモードを切り替えることで、サンプリング期間を短く設定することができる。
この結果、反射波のサンプリング期間を最小限の時間で取得することができる。
【0016】
第7の発明に係る埋設物検出装置は、第6の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、サンプリング期間を、対象物の表面から所定の深さまでの期間に変更する第1設定モードを有している。
これにより、例えば、対象物内に存在する埋設物が対象物の表面から所定の距離に存在していることが分かっている場合には、第1設定モードに切り替えることで、対象物の表面から所定の距離の範囲だけサンプリングできるように調整することができる。
【0017】
第8の発明に係る埋設物検出装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る埋設物検出装置であって、制御部は、サンプリング期間における遅延時間の変化間隔を1より大きい値に変更する第2設定モードを有している。
これにより、例えば、ユーザの要望により、埋設物の検出処理の効率を優先したい場合には、第2設定モードに切り替えることで、サンプリング期間における遅延時間の変化間隔を1より大きい値に変更することで、サンプリングの効率を向上させることができる。
【0018】
第9の発明に係る埋設物検出装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る埋設物検出装置であって、制御部は、対象物の表面からの距離が大きくなるにつれて同一遅延時間でのサンプリングを複数回実施して平均化した値を反射波の検出値として用いる第3設定モードを有している。
通常、対象物の表面から距離が大きい(深い)位置にある埋設物の反射波の受信強度は弱くなるため、表面付近の埋設物と比較して検出精度が低下しやすい。
【0019】
これにより、例えば、ユーザの要望により、深い位置にある埋設物の検出精度を向上させたい場合には、第3設定モードに切り替えることで、距離が大きい位置からの反射波のサンプリングを同じ位置で複数回実施し、その平均値を反射波の検出値として用いることで、対象物の表面からの距離が大きい位置に存在する埋設物の検出精度を向上させることができる。
【0020】
第10の発明に係る埋設物検出方法は、対象物に対して照射された電磁波の反射波を受信して対象物内の埋設物の有無を検出する埋設物検出方法であって、遅延時間調整ステップと、補正ステップと、送信ステップと、受信ステップと、を備えている。遅延時間調整ステップでは、デジタル信号によって、放射する電磁波の遅延時間または反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する。補正ステップでは、予め記憶部に保存された補正値を参照して、受信部において受信される反射波のサンプリング期間が反射波の検出に必要な期間と合致するようにサンプリング期間を調整する。送信ステップでは、電磁波を対象物へ放射する。受信ステップでは、補正ステップにおいて調整されたサンプリング期間に従って、インパルス波の反射波を受信する。
【0021】
ここでは、放射された電磁波の反射波を受信して、例えば、コンクリート内に存在する鉄筋等の埋設物を検出する埋設物検出方法において、デジタル信号によって放射する電磁波の遅延時間または反射波のサンプリングパルスを設定するとともに、反射波のサンプリング期間を反射波の検出に必要な期間に合致させるための補正値を記憶部に保存している。
【0022】
ここで、デジタル信号によって行われるサンプリングパルスの遅延時間の設定は、例えば、ディレイICを用いて行われる。
上記補正値には、例えば、補正値、補正係数、補正テーブルが含まれる。
また、補正値によって調整されるサンプリング期間のずれは、例えば、製品ごとの個体差、温度変化等に起因して発生する。
【0023】
これにより、例えば、製品出荷時等において、受信部において受信した反射波の波形を確認して、個体差や温度変化に起因するサンプリング期間のずれを補正するための補正値を記憶部に保存させることで、サンプリング期間のずれを記憶部に保存された補正値を参照して補正することができる。
この結果、反射波のサンプリング期間を最小限の長さになるように設定することができるため、埋設物の検出に必要な受信波の取得時間を短縮して効率よく反射波のサンプリングを行うことができる。
【0024】
第11の発明に係る埋設物検出方法は、第10の発明に係る埋設物検出方法であって、補正ステップでは、装置ごとの個体差に起因するサンプリング期間のずれを調整する。
これにより、例えば、製品出荷時等において、受信部において受信した反射波の波形を確認して、個体差に起因するサンプリング期間のずれを補正するための補正値を記憶部に保存させることで、個体差に起因するサンプリング期間のずれを記憶部に保存された補正値を参照して補正することができる。
【0025】
第12の発明に係る埋設物検出方法は、第10または第11の発明に係る埋設物検出方法であって、補正ステップでは、温度変化に起因するサンプリング期間のずれを調整する。
これにより、例えば、製品開発時等において、外気温を変化させて受信部において受信した反射波の波形を確認して、温度変化に起因するサンプリング期間のずれを把握した上で、補正するための補正テーブルを作成し、記憶部に保存させることで、温度変化に起因するサンプリング期間のずれを記憶部に保存された補正テーブルを参照して補正することができる。
【0026】
第13の発明に係る埋設物検出方法は、第10から12の発明のいずれか1つに係る埋設物検出方法であって、補正ステップでは、サンプリング期間の開始タイミングを、反射波の受信開始タイミングに合わせるように調整を行う。
これにより、サンプリング期間のずれの調整は、サンプリング期間の開始タイミングを、反射波の立ち上がり(受信開始)のタイミングに合わせることで、反射波のサンプリング期間を適切に調整することができる。
【0027】
第14の発明に係る埋設物検出方法は、第10から第13の発明のいずれか1つに係る埋設物検出方法であって、補正ステップでは、サンプリング期間の長さを変化させる複数の設定モードから選択された補正を実施する。
これにより、例えば、ユーザの要望、対象物の材質、埋設物の種類・材質・大きさ等に応じてモードを切り替えることで、サンプリング期間を短く設定することができる。
この結果、反射波のサンプリング期間を最小限の時間で取得することができる。
【0028】
第15の発明に係る埋設物検出方法は、第14の発明に係る埋設物検出方法であって、補正ステップでは、サンプリング期間を、対象物の表面から所定の深さまでの期間に変更する第1設定モードを実施する。
これにより、例えば、対象物内に存在する埋設物が対象物の表面から所定の距離に存在していることが分かっている場合には、第1設定モードに切り替えることで、対象物の表面から所定の距離の範囲だけサンプリングできるように調整することができる。
【0029】
第16の発明に係る埋設物検出方法は、第10から15の発明のいずれか1つに係る埋設物検出方法であって、補正ステップでは、サンプリング期間における遅延時間の変化間隔を1より大きい値に変更する第2設定モードを実施する。
これにより、例えば、ユーザの要望により、埋設物の検出処理の効率を優先したい場合には、第2設定モードに切り替えることで、サンプリング期間における遅延時間の変化間隔を1より大きい値に変更することで、サンプリングの効率を向上させることができる。
【0030】
第17の発明に係る埋設物検出方法は、第10から第16の発明のいずれか1つに係る埋設物検出方法であって、補正ステップでは、対象物の表面からの距離が大きくなるにつれて同一遅延時間でのサンプリングを複数回実施して平均化した値を反射波の検出値として用いる。
通常、対象物の表面から距離が大きい(深い)位置にある埋設物の反射波の受信強度は弱くなるため、表面付近の埋設物と比較して検出精度が低下しやすい。
【0031】
そこで、距離が大きい位置からの反射波のサンプリングを同じ位置で複数回実施し、その平均値を反射波の検出値として用いることで、対象物の表面からの距離が大きい位置に存在する埋設物の検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る埋設物検出装置によれば、埋設物の検出に必要な受信波の取得時間を短縮して効率よく反射波のサンプリングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置の構成を示す斜視図。
図2図1の埋設物検出装置の構成を示すブロック図。
図3図2の埋設物検出装置に含まれるインパルス制御モジュールの構成を示すブロック図。
図4図3のMPUが取得する反射波のデータを示す図。
図5図2の埋設物検出装置に含まれるメイン制御モジュールの構成を示すブロック図。
図6】(a)は、反射波の受信波形と反射波をサンプリングするサンプリングパルスとの関係を示す図。(b)は、反射波の受信波形に対してサンプリングパルスがずれた状態を示す図。(c)は、(b)のサンプリングパルスのずれを考慮して、サンプリング期間を長く設定した状態を示す図。
図7】反射波の受信波形に対するディレイICによって設定可能なサンプリングパルスの範囲と走査時の可変範囲とを示す図。
図8】(a),(b)は、図3のインパルス制御モジュールの記憶部に保存された補正テーブルの一例を示す図。
図9】第1設定モードにおいてディレイICによって設定可能なサンプリング期間を示す図。
図10】第2設定モードにおいてディレイICによって設定可能なサンプリングパルスを示す図。
図11】第3設定モードにおいてディレイICによって設定可能なサンプリングパルスを示す図。
図12】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法の処理の流れを示すフローチャート。
図13】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置について、図1図13を用いて説明すれば以下の通りである。
図1は、本実施形態の埋設物検出装置1をコンクリート(対象物)100上に配置した状態を示す斜視図である。図2は、本実施形態の埋設物検出装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0035】
(1-1.埋設物検出装置1の構成)
本実施形態の埋設物検出装置1は、コンクリート100等の対象物の表面100aを移動しながらコンクリート100に向かってインパルス波(電磁波)を放射し、その反射波を受信して解析することによって、コンクリート100内の埋設物101a,101b,101cの位置を検出する。そして、図1では、埋設物検出装置1の移動方向が、矢印Aで示されている。
【0036】
なお、図1に示す例では、埋設物101a,101b,101cは、鉄筋であって、例えば、コンクリート100の表面100aから15cm,10cm,5cmの深さ位置にそれぞれ埋設されている。図1では、コンクリート100の深さ方向が矢印Bで示されており、その反対向き(表面方向)が矢印Cで示されている。
コンクリート100内に埋設された3本の鉄筋(埋設物101a~101c)は、それぞれ、コンクリート100の表面100aに略平行な方向に沿って、埋設物検出装置1の移動方向に交差する向きで配置されている。
【0037】
埋設物検出装置1は、図2に示すように、本体部2と、把手3と、4つの車輪4と、インパルス制御モジュール5と、メイン制御モジュール6と、エンコーダ(回転検出部)7と、表示部8と、を備えている。
把手3は、作業者(ユーザ)によって把持される取っ手部分であって、本体部2の上面に設けられている。4つの車輪は、回転可能な状態で、本体部2の下部に取り付けられている。作業者は、コンクリート100内部の埋設物101を検出する際には、把手3を把持して車輪4を回転させながら、コンクリート100の表面100a上で埋設物検出装置1を移動させる。
【0038】
インパルス制御モジュール5は、コンクリート100の表面100aに向けてインパルス波を放射するタイミング、および放射したインパルス波の反射波を受信するタイミング等の制御を行う。
エンコーダ7は、車輪4に接続されており、車輪4の回転に関する情報を検出し、その検出された情報に基づいて、インパルス制御モジュール5に対して、インパルス波の放射タイミングおよび反射波の受信タイミングを制御するための信号を送信する。
【0039】
メイン制御モジュール6は、インパルス制御モジュール5で受信された反射波に関するデータを受け取り、埋設物101の検出を行う。
表示部8は、本体部2の上面に設けられており、埋設物101a,101b,101cの位置を示す画像等を表示する。
【0040】
(1-2.インパルス制御モジュール5)
図3は、インパルス制御モジュール5の構成を示すブロック図である。
インパルス制御モジュール5は、制御部10と、送信アンテナ(送信部)11と、受信アンテナ(受信部)12と、インパルス生成回路13と、ディレイIC14と、サンプリングパルス生成回路15と、高速サンプル・ホールド回路16と、A/Dコンバータ17と、記憶部18と、を有している。
制御部10は、MPU(Micro Processing Unit)等によって構成されており、エンコーダ入力をトリガとして、インパルス生成回路13にインパルス波の発生を指令する。
【0041】
また、制御部10は、受信アンテナ12において反射波を受信するタイミングおよび期間を設定するサンプリングパルスを調整するディレイIC14を制御する。なお、制御部10によるディレイIC14を用いたサンプリング期間の調整制御については、後段にて詳述する。
さらに、制御部10は、埋設物検出装置1の本体部2の内部に設けられた温度センサ19から温度情報を取得する。なお、温度センサ19から取得した温度情報を用いたサンプリング期間の調整制御についても、後段にて詳述する。
【0042】
送信アンテナ11は、本体部2の底面側に設けられており、パルスの周期に基づいて、一定周期でインパルス波を放射する。
受信アンテナ12は、本体部2の底面側に設けられており、主に、送信アンテナ11から放射されたインパルス波の反射波を受信する。具体的には、例えば、送信アンテナ11から放射されたインパルス波がコンクリート100内を往復する時間を5ns(=5000ps)とすると、受信アンテナ12は、送信アンテナ11からインパルス波が放射されてから5ns(5000ps)間に受信される反射波を受信することで、図4に示すような受信波形を得ることができる。
【0043】
インパルス生成回路13は、制御部10によって制御されており、制御部10を介して入力されたエンコーダ7の入力をトリガとし、MPUからの指令に基づいてインパルス波を所定の時間間隔で所定の回数(例えば、10ps間隔で500回)だけ発生させ、送信アンテナ11に出力する。
ディレイIC14は、制御部10によって制御されており、デジタル信号によって、受信アンテナ12において反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間およびサンプリング期間を設定する。具体的には、ディレイIC14は、例えば、10psの間隔で5ns間、サンプリングパルス生成回路15がサンプリングパルスを生成するように、制御部10によって制御される。これにより、受信アンテナ12は、送信アンテナ11からインパルス波が放射されてから5ns間に受信した反射波を高速サンプル・ホールド回路16に取り込ませることができる。
【0044】
サンプリングパルス生成回路15は、ディレイIC14によって設定された遅延時間(例えば、10ps)に基づいて、受信アンテナ12において受信した反射波を取り込むように、高速サンプル・ホールド回路16にサンプリングパルスを送信する。
高速サンプル・ホールド回路16は、サンプリングパルス生成回路15からサンプリングパルスを受信して、受信アンテナ12において受信した反射波を取り込んで、A/Dコンバータ17へ送信する。
【0045】
A/Dコンバータ17は、高速サンプル・ホールド回路16から受信した反射波の信号を、A/D(Analog/Digital)変換して制御部10へ送信する。
記憶部18は、制御部10に接続されており、後述する各種補正テーブル(図8(a)および図8(b)参照)を保存している。さらに、記憶部18には、制御部10に設定された複数の設定モード(第1~第3設定モード)を実施するための情報が保存されている。なお、複数の設定モードに基づくサンプリング制御については、後段にて詳述する。
【0046】
温度センサ19は、埋設物検出装置1の本体部2の内部に設けられており、本体部2内部の温度を検出して、制御部10へ送信する。これにより、制御部10は、温度変化に応じて、サンプリング期間等を調整するように、ディレイIC14を制御することができる。
本実施形態の埋設物検出装置1では、以上の構成により、インパルス制御モジュール5が、エンコーダか7からの入力をトリガとして、送信アンテナ11からインパルス波を複数回出力する。そして、インパルス制御モジュール5は、ディレイIC14を用いて、インパルス波が放射されてからの遅延時間を設定し、反射波の取得タイミングを遅らせることで、コンクリート100の表面100aからの距離ごとの反射波のデータを取得することができる。
【0047】
ここで、図4は、MPUが取得する反射波のデータを示す図である。縦軸は、2048階調を軸Oとして、0~4095階調で受信信号の強度を示し、矢印方向がマイナス側を示す。横軸は、受信アンテナ12との距離を示し、矢印方向(深さ方向Bに対応)が受信アンテナ12からの距離が長いことを示す。また、距離が長いとは、深さが大きいことに相当する。
【0048】
なお、図4に示す波形W1には、コンクリート100内に放射されずにアンテナで反射した反射波も含まれる(p1等)ため、基準波形との差分を算出することにより、コンクリート100内からの反射波のデータの変化が抽出される。
また、図4に示すデータは、エンコーダ7の入力があった後、エンコーダ7から次の入力があるまでの受信信号の強度を示すデータである。ディレイIC14によって設定された遅延時間に基づいて、反射波の取得タイミングを除々に遅らせることによって、受信アンテナ12からの距離が長い位置からの反射波を受信するが、エンコーダ7からの入力があると、受信タイミングの遅延が元に戻され、再び受信タイミングを除々に遅らせる。すなわち、移動方向Aにおける所定の計測位置(エンコーダ7からの入力があった位置)における深さ方向Bの反射波を受信する。このような図4に示すエンコーダ7の入力があった後、次のエンコーダの入力があるまでに受信した反射波のデータを、1ライン分のデータという。制御部10は、1ライン分のデータが貯まるごとに、その1ライン分のRF(Radio Frequency)データをメイン制御モジュール6へ送信する。
【0049】
なお、埋設物検出装置1は、作業者(ユーザ)によってコンクリート100の表面100a上を移動しているため、計測位置は厳密に同じ位置ではなく、深さ方向Bもコンクリート100の表面100aに対して厳密に垂直な方向ではない。
【0050】
(1-3.メイン制御モジュール6)
図5は、メイン制御モジュール6の構成を示すブロック図である。
メイン制御モジュール6は、受信部21と、RFデータ管理部22と、埋設物判定部24と、判定結果登録部25と、表示制御部26と、を有している。
受信部21は、インパルス制御モジュール5の制御部10から送信されるごとに、1ライン分のRFデータを受信する。
RFデータ管理部22は、受信部21が受信した1ライン分のRFデータを記憶する。
【0051】
埋設物判定部24は、RFデータ管理部22において記憶された1ライン分のRFデータを用いて、埋設物101の有無を判定するとともに、埋設物101の位置を検出する。
なお、埋設物判定部24における埋設物101の検出処理については、受信アンテナ12において受信した複数の1ライン分のRFデータに基づいて、既知の方法を用いて実施すればよい。具体的には、例えば、埋設物101が鉄筋等の金属である場合には、送信アンテナ11から放射されたインパルス波は、その表面において反射される。このため、受信アンテナ12において、このような埋設物101の表面で反射された反射波の速度(強度)と、反射波を受信するまでの時間とを検出することで、コンクリート100内の埋設物101の有無およびその位置を検出することができる。
【0052】
判定結果登録部25は、埋設物判定部24によって検出された埋設物101の位置をRFデータ管理部22に登録する。
表示制御部26は、移動方向Aと深さ方向Bの平面において信号強度を色で階調処理した画像、および埋設物101の位置を表示するように、表示部8の制御を行う。
【0053】
<サンプリングパルスのずれの発生について>
本実施形態では、埋設物検出装置1に含まれるインパルス制御モジュール5の制御部10が、ディレイIC14を用いて、サンプリングパルスの発生タイミング、発生期間、発生回数を制御する。
ここで、受信アンテナ12において受信した反射波(受信波)を取り込む期間(サンプリング期間)は、図6(a)に示すように、受信波の立ち上がりから変化がなくなるまでの期間だけに合わせて設定されることが好ましい。
しかし、埋設物検出装置1ごとの個体差、あるいは温度変化等に起因して、サンプリングパルスのタイミングが受信波の波形変化がある期間からずれてしまうおそれがある。例えば、図6(b)に示す例では、サンプリング期間が後ろにずれており、コンクリート100の表面100a付近における反射波(受信波)のサンプリングが行えない。
【0054】
このため、従来の装置では、例えば、図6(c)に示すように、装置個体差等に起因する反射波の波形に対するサンプリング期間のずれを吸収することができるように、サンプリング期間を長く設定されていた。しかし、図6(c)に示すように、サンプリング期間が長く設定された場合、反射波の受信結果から埋設物101の有無を判定するまでの処理に時間が掛かり、処理効率が低下してしまう。
【0055】
<サンプリング期間の調整制御>
そこで、本実施形態の埋設物検出装置1では、反射波の波形の変化が検出される期間に対して、サンプリング期間を無用に長くすることなく、最小限のサンプリング期間を設定し、かつ、装置個体差や温度変化等に起因するサンプリング期間のずれにも対応できるように、制御部10が、ディレイIC14を制御する。
【0056】
具体的には、制御部10は、図7に示すように、ディレイIC14によって設定可能なサンプリング期間の範囲の中から、適切なタイミングになるように走査時の可変範囲(サンプリング期間)を設定する。
なお、図7では、制御部10によって制御されたサンプリング期間におけるサンプリングパルスを、太い矢印によって示している。
【0057】
より詳細には、制御部10は、記憶部18に保存された補正テーブルを参照して、装置個体差または温度変化に起因するサンプリング期間のずれを解消するように、ディレイIC14を制御する。
このとき、サンプリング期間のずれを解消する際には、制御部10は、サンプリング期間の開始タイミングを、反射波の受信開始タイミングに合わせるように制御する。
【0058】
記憶部18には、図8(a)に示す個体差補正値と、図8(b)に示す温度補正テーブルとが予め保存されている。
図8(a)に示す個体差補正値は、埋設物検出装置1ごとに設定される補正値であって、例えば、装置ID(A01)と、補正値(37step)とが保存されている。そして、個体差補正値は、例えば、埋設物検出装置1の製品出荷前に、送信アンテナ11から放射されたインパルス波の反射波を受信アンテナ12において受信した受信波形と、サンプリングパルスのサンプリング期間とを比較して、製品ごとに異なる補正値が記憶部18に保存されればよい。
【0059】
図8(b)に示す温度補正テーブルは、0℃から60℃までの温度範囲において10℃ごとに設定される補正値を含むテーブルであって、例えば、温度範囲(0,10,20,30,40,50,60℃)と、補正量(-10step,-5step,-1step,+2step,+6step,+11step,+18step)とが保存されている。そして、温度補正テーブルは、例えば、埋設物検出装置1の製品開発前等に、環境温度を変化させて温度センサ19によって検出された温度変化に基づいて、送信アンテナ11から放射されたインパルス波の反射波を受信アンテナ12において受信した受信波形と、サンプリングパルスのサンプリング期間とを比較して、温度ごとに必要な補正値を含むテーブルが作成され、記憶部18に保存されればよい。
【0060】
本実施形態の埋設物検出装置1では、以上のように、制御部10が、記憶部18に保存された各種補正値および/または補正テーブルを参照して、図7に示すように、反射波の波形が変化した部分と、サンプリングパルスのタイミング(サンプリング期間)とが合致するように、ディレイIC14を制御する。
これにより、装置個体差や温度変化等に起因するサンプリング期間のずれを解消して、正確に反射波のサンプリングを行うことができるとともに、サンプリング期間を最小限の期間に設定することができるため、埋設物101の検出に必要な受信波の取得時間を短縮して効率よく反射波のサンプリングを行うことができる。
【0061】
<各種設定モードについて>
本実施形態の埋設物検出装置1では、作業者(ユーザ)の要望(検出範囲限定、処理効率重視、検出精度重視等)、対象物の種類(コンクリート、地中、壁等)、埋設物の種類(金属、木材、ゴム、樹脂等)に応じて、適切に埋設物の検出を実施できるように、制御部10が複数の設定モードを有している。
【0062】
具体的には、本実施形態では、制御部10は、第1~第3設定モードを有している。
第1設定モードは、検出範囲を限定して処理効率を向上させる際に選択されるモードであって、図9に示すように、サンプリング期間を、図7に示す通常のサンプリング期間よりも短くなるように変更する。より詳細には、第1設定モードでは、サンプリング期間を、コンクリート100の表面100aから浅い範囲のみ(所定の深さまでの範囲)に変更する。
【0063】
これにより、例えば、コンクリート100内に存在する埋設物101がコンクリート100の表面100aから所定の深さ(距離)に存在していることが分かっている場合には、作業者は第1設定モードを選択することで、表面100aから所定の距離の範囲だけサンプリングできるように調整することができる。
この結果、埋設物101を検出する際の処理効率を向上させることができる。
【0064】
第2設定モードは、検出精度よりも処理効率を重視する際に選択されるモードであって、図10に示すように、サンプリング期間における遅延時間の変化間隔を1より大きい値(例えば、1個置き)に変更する。
これにより、例えば、作業者が、コンクリート100内に存在する埋設物101の検出精度よりも処理効率を重視したい場合には、作業者は第2設定モードを選択することで、サンプリング期間におけるサンプリング回数を減らして、効率よく埋設物101の検出処理を実施することができる。
【0065】
第3設定モードは、コンクリート100の表面100aから深い位置にある埋設物101の検出精度を向上させたい場合に選択されるモードであって、図11に示すように、サンプリング期間における後の期間になるほど、同じ位置におけるサンプリングの回数を増やす。そして、制御部10は、複数回サンプリングされた結果、取得した値の平均値を検出値として用いる。
【0066】
具体的には、図1に示すコンクリート100の表面100aから最も浅い位置にある埋設物101cに相当する図11の受信波の波形のサンプリングは1回実施し、埋設物101cよりも深い位置にある埋設物101bに相当する図11の受信波の波形のサンプリングは2回実施し、最も深い位置にある埋設物101aに相当する図11の受信波の波形のサンプリングは3回実施する。
これにより、例えば、作業者が、コンクリート100内に存在する深い位置にある埋設物101の検出精度を重視したい場合には、作業者は第3設定モードを選択することで、深い位置にある埋設物101の検出精度を向上させることができる。
【0067】
<サンプリングパルスの調整制御の処理の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した埋設物検出装置1を用いてコンクリート100内の埋設物101の検出を行う際に、制御部10が、図12に示すフローチャートに従って、サンプリングパルスが送信されるサンプリング期間の開始タイミングおよび長さ等を調整する。
【0068】
なお、本実施形態では、サンプリング期間の基準長さを5ns(5000ps)、ディレイ時間の初期値を10psとし、サンプリングを500回実施する例を挙げて説明する。
すなわち、ステップS11では、送信アンテナ11からインパルス波の放射を開始する前に、制御部10が、予め記憶部18に保存された補正テーブルを参照する。
【0069】
次に、ステップS12では、制御部10が、サンプリング期間の基準となる初期値を補正するか否かを判定する。
このとき、制御部10では、記憶部18に予め保存されている補正テーブルの有無、温度センサ19からの受信結果等を用いて、サンプリング期間を補正するか否かの判定を行う。ここで、制御部10が補正を行うと判定した場合には、ステップS13へ進み、補正を行う必要がないと判定した場合には、ステップS14へ進む。
【0070】
次に、ステップS13では、制御部10が、補正テーブルを参照して補正されたサンプリング期間になるように、ディレイIC14を制御する。
具体的には、制御部10は、記憶部18に、装置ごとの個体差を補正する補正テーブルが保存されている場合には、図8(a)に示す個体差補正テーブルを参照して、サンプリング期間の開始タイミングを、受信した反射波の波形の立ち上がりタイミングに合わせるように、ディレイIC14を制御する。
【0071】
また、制御部10は、温度センサ19から現時点での温度の検出結果を受信して、予め設定された基準温度と温度差がある場合には、図8(b)に示す温度補正テーブルを参照して、その温度差に対応する補正量でサンプリング期間の開始タイミングを補正するように、ディレイIC14を制御する。
なお、図8(a)および図8(b)に示す補正テーブルの片方を選択して、サンプリング期間のずれを補正してもよいし、両方の補正テーブルを用いて、サンプリング期間を補正してもよい。
【0072】
一方、ステップS14では、ステップS12において、補正の必要なしと判定されているため、制御部10が、サンプリング期間の初期値として設定されたタイミング、長さ等でサンプリングを行うように、ディレイIC14を制御して、ステップS15へ進む。
次に、ステップS15では、制御部10が、サンプリングを実施する繰り返し回数として、繰り返しカウンタ=500(回)を設定する。
【0073】
次に、ステップS16では、制御部10が、送信アンテナ11から、基準となるインパルス波の出力を開始するように、インパルス生成回路13を制御する。
次に、ステップS17では、制御部10が、サンプリングパルス生成回路15において生成されたサンプリングパルスに応じて、受信アンテナ12において受信した反射波の信号を取得するように、高速サンプル・ホールド回路16を制御するとともに、高速サンプル・ホールド回路16において取得した反射波の信号をA/Dコンバータ17においてA/D変換させる。
【0074】
次に、ステップS18では、1つ目のサンプリングパルスに対応した反射波の受信が完了したため、制御部10が、繰り返しカウンタを“-1”とする。
次に、ステップS19では、サンプリング期間の2つ目のサンプリングパルスに対応する反射波を受信するために、ディレイ値を“+1”とするようにディレイIC14を制御する。
【0075】
次に、ステップS20では、制御部10が、繰り返しカウンタが“0”になっていないかを確認し、繰り返しカウンタ=0になるまで、すなわち、500回目のサンプリングが完了するまで、ステップS17~ステップS19の処理を繰り返し実施する。
これにより、反射波のサンプリングを行うサンプリング期間を、反射波の波形の立ち上がりから波形の変化がなくなるまでの期間に合致させるようにディレイIC14を制御して、最小限の期間で効率よく反射波のサンプリングを実施することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、単に、サンプリング期間を反射波の波形の立ち上がりから波形の変化がなくなるまでの期間に合致させるようにする制御の他に、サンプリング期間の短縮、サンプリング回数の減少(間引き)、およびサンプリング期間における同一地点での複数サンプリングを実施するために、制御部10が、複数の設定モードを有している。
このような複数の設定モードの選択が可能な構成において、作業者(ユーザ)による設定モードの選択時の処理は、図13に示すフローチャートに従って行われる。
【0077】
すなわち、図13に示すように、ステップS31では、作業者(ユーザ)が、予め制御部10が有している複数の設定モードのうちの1つが選択されたか否かの判定が行われる。
本実施形態では、制御部10は、図9に示すサンプリング範囲を限定する第1設定モード、図10に示すサンプリング期間におけるサンプリングパルスを間引いてサンプリング回数を減らす第2設定モード、図11に示すサンプリング期間の後の期間になるほど同じ地点におけるサンプリング回数を増やす第3設定モードを有している。
【0078】
次に、ステップS32では、制御部10は、予め記憶部18に保存されている作業者(ユーザ)によって選択された設定モードを参照する。
次に、ステップS33では、制御部10は、記憶部18に保存された設定モードの内容に従って、サンプリング期間の長さおよびサンプリングの回数等を変更するように、ディレイIC14を制御する。
【0079】
そして、ステップS33の後、制御部10は、図12に示すフローチャート(ステップS11~ステップS20)に従って、サンプリング期間のタイミング等を制御する。
本実施形態の埋設物検出方法では、以上のステップにより、制御部10が、記憶部18に保存された各種補正テーブルを参照して、図7に示すように、反射波の波形が変化した部分と、サンプリングパルスのタイミング(サンプリング期間)とが合致するように、ディレイIC14を制御する。
【0080】
これにより、装置個体差や温度変化等に起因するサンプリング期間のずれを解消して、正確に反射波のサンプリングを行うことができるとともに、サンプリング期間を最小限の期間に設定することができるため、埋設物101の検出に必要な受信波の取得時間を短縮して効率よく反射波のサンプリングを行うことができる。
さらに、制御部10は、処理効率の向上、検出精度の向上等の作業者(ユーザ)の要望に応じて複数設定された第1~第3設定モードを有している。
これにより、作業者(ユーザ)ごとの要望に応じて、反射波のサンプリングを適切に実施することができる。
【0081】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
(A)
上記実施形態では、補正テーブルとして、装置個体差に起因するサンプリング期間のずれを補正するためのテーブルと、温度変化に伴うサンプリング期間のずれを補正するためのテーブルとを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、装置個体差や温度変化以外の他の要因に起因して生じるサンプリング期間のずれを補正するための補正テーブルを用いてもよい。
【0083】
(B)
上記実施形態では、サンプリング期間のタイミングのずれを補正する際に、制御部10が、サンプリング期間の開始タイミングを、受信した反射波の波形の立ち上がりタイミングに合わせるように、ディレイIC14を制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、制御部が、サンプリング期間の開始と終了のタイミングをそれぞれ、反射波の波形に合わせるように、ディレイIC(可変遅延素子)を制御してもよい。
【0084】
(C)
上記実施形態では、第3設定モードにおいて、同じ位置におけるサンプリング回数を、1回、2回、3回の3段階で設定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、サンプリング回数は、2段階、あるいは4段階以上で設定されていてもよい。
【0085】
(D)
上記実施形態では、送信アンテナ11から放射される電磁波として、インパルス波を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、送信部からサイン波等の他の電磁波を放射する構成であってもよい。
【0086】
(E)
上記実施形態では、埋設物検出装置1によって検出される埋設物101として、コンクリート100内の鉄筋を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、他の材料あるいは地中内に存在する異物を検出する用途に使用されてもよい。
【0087】
(F)
上記実施形態では、本発明を、埋設物検出装置および埋設物検出方法として実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した埋設物検出方法における各ステップをコンピュータに実行させる埋設物検出プログラムとして、本発明を実現してもよい。
【0088】
この埋設物検出プログラムは、記憶部に保存されており、CPUが記憶部に保存されたプログラムを読み込むことで、ハードウェアに各ステップを実行させる。
あるいは、この埋設物検出プログラムを格納した記録媒体として、本発明を実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の埋設物検出装置は、埋設物の検出に必要な受信波の取得時間を短縮して効率よく反射波のサンプリングを行うことができるという効果を奏することから、各種埋設物の検出を行う装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 埋設物検出装置
2 本体部
3 把手
4 車輪
5 インパルス制御モジュール
6 メイン制御モジュール
7 エンコーダ(回転検出部)
8 表示部
10 制御部
11 送信アンテナ(送信部)
12 受信アンテナ(受信部)
13 インパルス生成回路
14 ディレイIC(可変遅延素子)
15 サンプリングパルス生成回路
16 高速サンプル・ホールド回路
17 A/Dコンバータ
18 記憶部
19 温度センサ
21 受信部
22 RFデータ管理部
24 埋設物判定部
25 判定結果登録部
26 表示制御部
100 コンクリート
100a 表面
101a~101c 埋設物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13