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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20240116BHJP
   F24H 1/40 20220101ALI20240116BHJP
   F22B 37/42 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
F23N5/24 106A
F24H1/40 Z
F22B37/42 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019154101
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021032499
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中島 正隆
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146071(JP,A)
【文献】特開2005-249340(JP,A)
【文献】特開2011-137599(JP,A)
【文献】特開2016-114311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
F24H 1/40
F22B 37/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、
バーナにより生成された燃焼ガスと被加熱流体を熱交換するモノチューブ式の熱交換器と、
前記被加熱流体の前記熱交換器の入口側の一次側温度を検出する一次側温度検出部と、
前記被加熱流体の前記熱交換器の出口側の二次側温度を検出する二次側温度検出部と、
記憶部及び失火判定部を有する制御部と、を備え、
前記記憶部は、
前記被加熱流体が前記一次側温度検出部の配置位置から前記二次側温度検出部の配置位置まで流れるのに要する時間に対応する到達基準時間を記憶し、
前記失火判定部は、
所定のタイミングにおける前記二次側温度に基づく情報と、前記所定のタイミングよりも前記到達基準時間を遡ったタイミングにおける前記一次側温度に基づく情報との差を温度差情報として算出し、前記温度差情報が所定の閾値を下回る状態が前記到達基準時間よりも長い第3所定時間継続した場合に、前記バーナの失火を判定する、ボイラシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
第1所定時間における前記一次側温度の平均値を一次側平均温度として算出する一次側平均温度算出部と、
第2所定時間における前記二次側温度の平均値を二次側平均温度として算出する二次側平均温度算出部と、を備え、
前記失火判定部は、
所定のタイミングにおける前記二次側平均温度と、前記所定のタイミングよりも前記到達基準時間を遡ったタイミングにおける前記一次側平均温度との差を前記温度差情報として算出し、前記温度差情報が所定の閾値を下回る状態が前記到達基準時間よりも長い第3所定時間継続した場合に、前記バーナの失火を判定する、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記第1所定時間及び前記第2所定時間は、前記到達基準時間よりも短い、請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記到達基準時間を設定する到達基準時間設定部を有し、
前記到達基準時間設定部は、被加熱流体の情報である被加熱流体情報に基づき、前記到達基準時間を設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【請求項5】
バーナの炎を検知する炎検知手段をさらに備え、
前記失火判定部は、
前記炎検知手段によって炎を検知している状態であっても、前記温度差情報が所定の閾値を下回る状態が前記第3所定時間継続した場合に、前記バーナが失火したと判定する、請求項1~4のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【請求項6】
排ガス出口温度を検出する排ガス出口温度検出部をさらに備え、
前記失火判定部は、
前記温度差情報が所定の閾値を下回る状態が前記第3所定時間継続し、かつ前記排ガス出口温度が、前記二次側平均温度に所定の温度を加えた温度以下である場合に、前記バーナが失火したと判定する、請求項2又は請求項3に記載のボイラシステム。
【請求項7】
前記失火判定部は、
前記バーナの失火を判定する処理を、ボイラの運転を開始してから第4所定時間を経過した後に開始する、請求項1~6のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラの燃焼により熱媒油等の熱媒体を加熱し、加熱した熱媒体を負荷機器としての熱使用部との間で循環ポンプにより循環させることで熱使用部に対して熱を供給するボイラシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ボイラシステムにおいては、ボイラのバーナの失火を判定してボイラ本体内における燃料溜まりを未然に防止する失火判定部が設けることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-207258号公報
【文献】特開2016-114311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2には、ボイラ本体の外に設けられた熱交換器の上流部の温水の温度と熱交換器の下流部の温水の温度との差である温度差に基づいて、バーナの失火を判定する技術が開示されている。
しかしながら、熱媒体がボイラ内の流路を流れるのに要する時間を考慮しない場合、例えば熱媒体のボイラへの流入温度に温度変動があるときなどは、バーナの燃焼状態を正確に反映した温度差情報を取得するのは困難である。特に、バーナで生成された燃焼ガスによりモノチューブ式熱交換器の内部を流れる熱媒体を加熱する熱媒ボイラでは、熱媒体が上流部から下流部まで流れるのに要する時間が長くなるため、熱媒体がボイラ内の流路を流れるのに要する時間を考慮しない場合は、熱媒体のボイラへの流入温度と流出温度の対応関係のズレが大きくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボイラへの流入温度と流出温度の対応関係を正しく評価し、熱媒体としての被加熱流体のボイラへの流入温度に温度変動がある場合などにおいても、バーナの失火を精度よく判定することが可能なボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バーナと、バーナにより生成された燃焼ガスと被加熱流体を熱交換するモノチューブ式の熱交換器と、前記被加熱流体の前記熱交換器の入口側の一次側温度を検出する一次側温度検出部と、前記被加熱流体の前記熱交換器の出口側の二次側温度を検出する二次側温度検出部と、記憶部及び失火判定部を有する制御部と、を備え、前記記憶部は、前記被加熱流体が前記一次側温度検出部の配置位置から前記二次側温度検出部の配置位置まで流れるのに要する時間に対応する到達基準時間を記憶し、前記失火判定部は、所定のタイミングにおける前記二次側温度に基づく情報と、前記所定のタイミングよりも前記到達基準時間を遡ったタイミングにおける前記一次側温度に基づく情報との差を温度差情報として算出し、前記温度差情報に基づき、前記バーナの失火を判定する、ボイラシステムに関する。
【0007】
また、本発明の前記制御部は、第1所定時間における前記一次側温度の平均値を一次側平均温度として算出する一次側平均温度算出部と、第2所定時間における前記二次側温度の平均値を二次側平均温度として算出する二次側平均温度算出部と、を備え、前記失火判定部は、所定のタイミングにおける前記二次側平均温度と、前記所定のタイミングよりも前記到達基準時間を遡ったタイミングにおける前記一次側平均温度との差を前記温度差情報として算出し、前記温度差情報に基づき、前記バーナの失火を判定することが好ましい。
【0008】
また、本発明のボイラシステムにおける、前記第1所定時間及び前記第2所定時間は、前記到達基準時間よりも短いことが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記制御部は、前記到達基準時間を設定する到達基準時間設定部を有し、前記到達基準時間設定部は、被加熱流体の情報である被加熱流体情報に基づき、前記到達基準時間を設定することが好ましい。
【0010】
また、本発明の前記失火判定部は、前記温度差情報が所定の閾値を下回る場合に、前記バーナが失火したと判定することが好ましい。
【0011】
また、本発明の前記失火判定部は、前記温度差情報が所定の閾値を下回る状態が第3所定時間継続した場合に、前記バーナが失火したと判定することが好ましい。
【0012】
また、本発明のボイラシステムにおける、前記第3所定時間は、前記到達基準時間よりも長いことが好ましい。
【0013】
また、本発明のボイラシステムは、バーナの炎を検知する炎検知手段をさらに備え、前記失火判定部は、前記炎検知手段によって炎を検知している状態であっても、前記温度差情報が所定の閾値を下回る場合に、前記バーナが失火したと判定することが好ましい。
【0014】
また、本発明のボイラシステムは、排ガス出口温度を検出する排ガス出口温度検出部をさらに備え、前記失火判定部は、前記温度差情報が所定の閾値を下回り、かつ前記排ガス出口温度が、前記二次側平均温度に所定の温度を加えた温度以下である場合に、前記バーナが失火したと判定することが好ましい。
【0015】
また、本発明のボイラシステムの前記失火判定部は、前記バーナの失火を判定する処理を、ボイラの運転を開始してから第4所定時間を経過した後に開始することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ボイラへの流入温度と流出温度の対応関係を正しく評価し、熱媒体としての被加熱流体のボイラへの流入温度に温度変動がある場合などにおいても、バーナの失火を精度よく判定することが可能なボイラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態のボイラシステムを示す概略図である。
図2】上記実施形態の制御部を示す機能ブロック図である。
図3】熱媒油の一次側温度T1及び熱媒油の二次側温度T2の時間的な推移を示すグラフである。
図4】熱媒油の一次側温度T1及び熱媒油の二次側温度T2の時間的な推移を示すグラフである。
図5】本実施形態の第1変形例における、制御部を示す機能ブロック図である。
図6】本実施形態の第2変形例における、制御部を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のボイラシステム1を示す概略図である。
図1に示すように、ボイラシステム1は、熱媒ボイラ2と、熱媒循環ライン3と、燃料供給ライン4と、排ガスライン5と、制御部7と、を備える。本実施形態の熱媒ボイラ2は、熱媒油を被加熱流体(熱媒体)として使用することで、蒸気よりも高い温度(例えば、180度~300度)の熱を供給することができるボイラである。
【0019】
熱媒ボイラ2は、缶体20と、バーナ21と、バーナ21に燃焼用空気を供給する送風機22と、缶体20の内部に配置され、熱媒油が流通する熱媒油加熱管23と、を備える。熱媒ボイラ2は、バーナ21により燃料を燃焼させて缶体20の内部を加熱することで、熱媒油加熱管23中を流通する熱媒油を加熱する。ここで、熱媒油加熱管23は、バーナにより生成された燃焼ガスと熱媒油を熱交換するモノチューブ式の熱交換器を構成している。
なお、缶体20には、バーナ21が燃焼しているときの炎を検知する炎検知手段としての炎センサ24が設けられている。
【0020】
本実施形態における熱媒ボイラ2は、燃焼量を高燃焼、高燃焼よりも少ない燃焼量で燃焼する低燃焼、燃焼停止の3つの位置に切り換えることができる3位置燃焼制御ボイラとする。ここで、高燃焼とは、熱媒ボイラ2の熱出力が定格出力の100%となる燃焼量で燃焼させる状態であり、低燃焼とは、熱媒ボイラ2の熱出力が定格出力の例えば20%~50%となる燃焼量で燃焼させる状態をいう。本実施形態では低燃焼を定格出力の50%となる燃焼量で燃焼させる状態とする。
【0021】
燃料供給ライン4は、熱媒ボイラ2のバーナ21に接続されている。燃料は、この燃料供給ライン4から燃料調整弁41を介してバーナ21に供給される。本実施形態においては、燃料として油が用いられている。
【0022】
排ガスライン5は、熱媒ボイラ2の缶体20に接続されている。熱媒ボイラ2からの排ガスは、この排ガスライン5を介して、缶体20の外部に排出される。
なお、排ガスライン5の熱媒ボイラ2の出口近傍には、熱媒ボイラ2の出口近傍の排ガス出口温度を検出するための、排ガス出口温度検出部51が配置される。
【0023】
バーナ21、送風機22、炎センサ24、燃料調整弁41、排ガス出口温度検出部51は、信号線9を介して制御部7と電気的に接続されている。
【0024】
熱媒循環ライン3は、熱媒ボイラ2(熱媒油加熱管23)と熱使用部200とを接続し熱媒ボイラ2で加熱された熱媒油を熱使用部200に供給する熱媒油供給ライン32と、熱使用部200と熱媒ボイラ2(熱媒油加熱管23)とを接続し熱使用部200で熱が使用された熱媒油を熱媒ボイラ2に戻す熱媒油戻しライン31と、を備える。
【0025】
熱媒油戻しライン31の熱媒ボイラ2(熱媒油加熱管23)の入口近傍には、一次側温度検出部33が配置される。一次側温度検出部33は、この位置における熱媒油温度、すなわち、熱媒循環ライン3を循環する熱媒油の熱媒油加熱管23の入口側温度として、熱媒油の一次側温度T1を検出する。
熱媒油供給ライン32の熱媒ボイラ2(熱媒油加熱管23)の出口近傍には、二次側温度検出部34が配置される。二次側温度検出部34は、この位置における熱媒油温度、すなわち、熱媒循環ライン3を循環する熱媒油の熱媒油加熱管23の出口側温度として、熱媒油の二次側温度T2を検出する。
【0026】
また、熱媒油供給ライン32には、循環ポンプ35が配置される。なお、本実施形態においては、循環ポンプ35は、熱媒ボイラ2の出口側となる熱媒油供給ライン32に設置しているが、熱媒油戻しライン31に設置してもよい。
また、熱媒油戻しライン31には、流量検出部36が配置される。なお、本実施形態においては、流量検出部36は、熱媒ボイラ2の入口側となる熱媒油戻しライン31に設置しているが、熱媒油供給ライン32に設置してもよい。
【0027】
一次側温度検出部33、二次側温度検出部34、循環ポンプ35、流量検出部36は、信号線9を介して制御部7と電気的に接続されている。
【0028】
循環ポンプ35を作動することにより、熱媒油加熱管23内で加熱された熱媒油は、熱媒油供給ライン32を経由して熱使用部200に送られる。熱使用部200で熱を奪われた熱媒油は、熱媒油戻しライン31を経由して熱媒ボイラ2に戻される。このように、循環ポンプ35を作動することにより、熱使用部200で熱を奪われ温度の低下した熱媒油は、熱媒循環ライン3により熱媒ボイラ2に循環させるように構成される。
【0029】
制御部7は、熱媒ボイラ運転スイッチ(図示せず)がオンされることに応答して、熱媒ボイラ2の燃焼を開始する。また、制御部7は、熱媒ボイラ運転スイッチがオフされることに応答して、熱媒ボイラ2の燃焼を停止する。
制御部7は、循環ポンプ起動スイッチ(図示せず)がオンされることに応答して、熱媒循環ライン3に設けられた循環ポンプ35の運転を開始する。また、制御部7は、循環ポンプ強制停止スイッチ(図示せず)がオンされることに応答して、循環ポンプ35の運転を停止することができる。
【0030】
次に、制御部7について図2を参照しながら、詳細に説明する。図2は、制御部7の構成を示す機能ブロック図である。制御部7は、燃焼制御部71と、失火判定部75と、記憶部79と、を備える。
【0031】
燃焼制御部71は、予め設定された目標温度と二次側温度検出部34により計測された熱媒油の二次側温度T2との偏差に基づいて、熱媒ボイラ2の燃焼状態を制御する。前述したように、熱媒ボイラ2は、燃焼量を高燃焼、高燃焼よりも少ない燃焼量で燃焼する低燃焼、燃焼停止の3つの位置に切り換えることができる3位置燃焼制御ボイラである。
したがって、具体的には、燃焼制御部71は、予め設定された目標温度と、熱媒油の二次側温度T2との偏差に基づいて、燃焼を、高燃焼、低燃焼、又は燃焼停止と判定し、この判定に基づき燃料調整弁41を高燃焼、低燃焼又は燃焼停止の位置に切り換える機能を有するとともに、送風機22から当該燃焼状態に必要な燃焼用空気を送気させる。
【0032】
なお、熱媒ボイラ2の燃焼制御方式は、3位置燃焼制御方式としたが、これに限定されるものではない。例えば、2位置燃焼制御方式(燃焼オンとオフの切換え)又は高燃焼位置と低燃焼位置の間に中燃焼位置を設けるn位置燃焼制御方式(n≧4)を適用してもよい。また、燃焼量を連続的に増減可能な比例燃焼制御方式を適用してもよい。
【0033】
記憶部79は、熱媒油が一次側温度検出部33の配置位置から二次側温度検出部34の配置位置まで流れるのに要する時間に対応する到達基準時間tsを記憶している。また、後述の第1所定時間~第4所定時間や、バーナ21の失火を判定するための温度差の閾値などの情報も記憶している。
【0034】
例えば、制御部7が、流量検出部36により実測された、被加熱流体の情報としての熱媒油の流量情報に基づいて、到達基準時間tsを算出し、これを記憶部79に記憶させてもよい。この場合、実測された流量情報と、熱媒油加熱管23の流路長等の情報に基づいて、到達基準時間tsを算出してもよい。或いは、熱媒ボイラ2の機種や、熱媒油加熱管23の管路情報等に基づく標準的な到達基準時間tsを、予め記憶部79に記憶させておいてもよい。
【0035】
また、入力部(不図示)により、到達基準時間tsを入力可能な構成とし、入力された到達基準時間tsを、その後の失火判定処理で用いるために記憶部79に記憶させてもよい。
また、入力部(不図示)により熱媒ボイラ2の機種等の情報を入力可能な構成とし、入力された情報に基づき、適切な到達基準時間tsを記憶部79から読み出し、これを、その後の失火判定処理に用いてもよい。
【0036】
記憶部79としては、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、ダブルデータレート(DDR)メモリチップ、フラッシュメモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、キャッシュメモリ、バッファ、短期記憶メモリユニット、長期記憶メモリユニット、又はその他の適切なメモリユニット又はストレージユニットを含み得る。
【0037】
失火判定部75は、所定のタイミングにおける熱媒油の二次側温度T2に基づく情報と、所定のタイミングよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングにおける熱媒油の一次側温度T1に基づく情報との差を温度差情報として算出し、この温度差情報に基づき、バーナ21の失火を判定する。
通常、熱媒ボイラ2が燃焼しているときは、熱媒油加熱管23を通過する熱媒油の温度が上昇するため、熱媒油の二次側温度T2の温度は、熱媒油の一次側温度T1よりも高くなる。一方、熱媒ボイラ2が燃焼停止状態の場合は、缶体20の余熱等の影響はあるものの、熱媒油の二次側温度T2の温度は、燃焼時ほどは高くならない。
よって、上述の温度差情報が、所定の閾値を下まわる場合、バーナ21が失火していると判定する。
【0038】
この点について、図3図4を用いて詳細に説明する。
図3図4は、所定の条件下における、熱媒油の一次側温度T1及び熱媒油の二次側温度T2の時間的な推移を示すグラフである。グラフの縦軸が熱媒温度T、横軸が時間tとなっている。
【0039】
図3は、時間の経過とともに、熱媒油の一次側温度T1が上昇しているケースの一例を示す。熱媒油に対して、熱媒ボイラ2で加えられる熱量が、熱使用部200で消費する熱量よりも上回る場合などにおいて、このような状況が発生する。図3のケースにおいては、熱媒油の一次側温度T1の上昇に伴って、熱媒油の二次側温度T2も上昇している。
【0040】
ここで、タイミングtaにおいて、バーナ21の失火を判定する方法について説明する。タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度は温度T2aであり、熱媒油の一次側温度は温度T1aである。このとき、単純にタイミングtaにおける温度T2aと温度T1aの温度差(T2a-T1a)と、バーナ21の失火を判定するための閾値ΔTsとを比較してしまうと、図3に示すように、温度差(T2a-T1a)が、閾値ΔTsよりも小さい場合、失火していると判定してしまう。
【0041】
しかしながら、熱媒ボイラ2に流入する熱媒油の一次側温度T1が時間tと共に変動している状況下においては、単純にタイミングtaにおける温度T2aと温度T1aの温度差(T2a-T1a)を用いて判定してしまうと、誤った判定となってしまう可能性がある。
【0042】
そこで、失火判定部75は、タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度T2aと、タイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける熱媒油の一次側温度T1bとの差を温度差ΔT(=T2a-T1b)として算出し、この温度差ΔTに基づき、バーナの失火を判定する。より具体的には、温度差ΔTが、閾値ΔTsを下回る場合に、バーナ21が失火したと判定する。
【0043】
これにより、タイミングtbにおける一次側温度検出部33の熱媒油温度と、その熱媒油が熱媒油加熱管23を流通して二次側温度検出部34に到達したタイミングtaにおける二次側温度検出部34の熱媒油温度との温度差を用いて失火の判定を行うことが可能となる。よって、熱媒ボイラ2への流入温度と流出温度の対応関係を正しく評価することができる。また、閾値に基づいて判定することにより、バーナ21の失火の判定を簡便に行うことができる。
【0044】
なお、図3に示す例においては、タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度T2aと、タイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける熱媒油の一次側温度T1bとの温度差ΔTが、閾値ΔTsよりも大きいため、失火判定部75は、バーナ21は失火していないと判定する。
【0045】
到達基準時間tsは、熱媒油加熱管23の管路情報等に基づく標準的な到達基準時間tsとして、例えば1分といった時間が設定されている。
バーナ21の失火を判定するための閾値ΔTsとしては、少なくとも最小の燃焼量(例えば、低燃焼)において発生する標準的な温度差よりも小さな値が用いられ、例えば5℃、或いは5℃以下の値が設定される。
通常、低燃焼時における標準的な温度差は10℃以上であるため、このような値を設定することにより、誤判定の可能性を低減し、バーナの失火をより高い精度で判定することができる。
【0046】
図4は、時間tの経過とともに、熱媒油の一次側温度T1が低下しているケースの一例を示す。熱媒油に対して、熱媒ボイラ2で加えられる熱量が、熱使用部200で消費する熱量を下回る場合などにおいて、このような状況が発生する。図4のケースにおいては、熱媒油の一次側温度T1の低下に伴って、熱媒油の二次側温度T2も低下している。
【0047】
ここで、タイミングtaにおいて、バーナ21の失火を判定する方法について説明する。タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度T2の温度は温度T2aであり、熱媒油の一次側温度T1の温度は温度T1aである。このとき、単純にタイミングtaにおける温度T2aとT1aの温度差(T2a-T1a)と、バーナ21の失火を判定するための閾値ΔTsとを比較したとき、図4に示すように、温度差(T2a-T1a)が、閾値ΔTsよりも大きい場合、失火していないと判定してしまう。
【0048】
しかしながら、熱媒ボイラ2に流入する熱媒油の一次側温度T1が時間tと共に変動している状況下においては、単純にタイミングtaにおける温度T2aとT1aの温度差(T2a-T1a)を用いて判定してしまうと、誤った判定となってしまう可能性がある。
【0049】
そこで、失火判定部75は、タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度T2aと、タイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける熱媒油の一次側温度T1bとの差を温度差ΔTとして算出し、この温度差ΔTに基づき、バーナの失火を判定する。より具体的には、温度差ΔTが、閾値ΔTsを下回る場合に、バーナ21が失火したと判定する。
【0050】
これにより、タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度T2aと、タイミングtaにおいて二次側温度検出部34の配置位置近傍を流れている熱媒油が、一次側温度検出部33の配置位置近傍を流れていたタイミングtbにおける熱媒油の一次側温度T1bとの温度差を用いて失火の判定をすることが可能となる。よって、熱媒ボイラ2への流入温度と流出温度の対応関係を正しく評価することができる。
【0051】
図4に示す例においては、タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度T2aと、タイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける熱媒油の一次側温度T1bとの温度差ΔT(=T2a-T1b)が、閾値ΔTsよりも小さいため、失火判定部75は、バーナ21は失火していると判定する。
【0052】
なお、タイミングTaを現在時刻とし、リアルタイムで常にバーナ21の失火を監視してもよい。
【0053】
なお、失火判定部75は、温度差ΔTが閾値ΔTsを下回る状態が第3所定時間継続した場合に、バーナ21が失火したと判定してもよい。
これにより、一時的な熱媒油の流量変動や温度変化による誤判定の可能性を低減し、バーナ21の失火をより高い精度で判定することが可能となる。
なお、この第3所定時間は、到達基準時間tsよりも長い時間であることが好ましい。例えば、到達基準時間tsが1分である場合、第3所定時間は到達基準時間tsよりも長い時間、例えば5~10分に設定される。
このように、第3所定時間を長めにとり、熱媒ボイラ2の熱媒油加熱管23内の熱媒油が入れ替わる時間を確保することで、誤判定の可能性を低減し、バーナ21の失火をより高い精度で判定することが可能となる。
【0054】
ボイラの運転を開始した直後は、バーナによって加えられる熱量がボイラ缶体を暖めるのに消費され、熱媒油の二次側温度が上昇しにくいため、運転の開始直後から判定を行うと誤った判定となってしまう可能性がある。このため、失火判定部75は、バーナ21の失火を判定する処理を、熱媒ボイラ2の運転を開始してから第4所定時間を経過した後に開始してもよい。第4所定時間は、例えば5~10分に設定される。
これにより、ボイラの運転を開始した直後の誤判定を防止することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態のボイラシステム1は、炎検知手段としての炎センサ24を備えている。ここで、本実施形態の失火判定部75は、炎センサ24によって炎を検知している状態であっても、前述の温度差情報が所定の閾値を下回る場合に、バーナ21が失火したと判定してもよい。
【0056】
一般に、蒸気ボイラにおいては、負荷側で蒸気が消費されるため、燃焼している場合には、蒸発によりボイラ本体内の水が減少する。よって、ボイラ本体内の水位を一定に保つ給水ポンプの作動状況に基づいて、ボイラが燃焼しているか否かを判定することができる。したがって、炎センサが誤検知によりバーナの燃焼を検知している場合であっても、給水ポンプが所定時間作動していない場合には、バーナが失火していると判定することができる。そして、バーナが失火していると判定した場合は、バーナへの燃料供給を停止して、ボイラの燃焼室内の燃料溜まりを未然に防止することができる。
【0057】
しかしながら、本実施形態のような熱媒ボイラ2は、被加熱流体を熱使用部200との間で還流させるものであり、被加熱流体が消費されることがない。よって、通常運転においては被加熱流体が外部から供給されることはなく、被加熱流体供給装置の作動状況に応じてバーナの失火を判定することはできない。そして、炎センサ24が誤検知によりバーナ21の燃焼を検知している場合、バーナ21への燃料供給が継続されることにより、熱媒ボイラ2の燃焼室内に燃料溜まりが生じる可能性がある。
【0058】
よって、本実施形態のように、ボイラシステム1が炎センサ24を備えている場合において、失火判定部75は、炎センサ24によって炎を検知している状態であっても、前述の温度差情報が所定の閾値を下回る場合に、バーナ21が失火したと判定する。
これにより、通常は、炎センサ24によるバーナ21の失火を検知することが可能であり、さらに炎センサ24の誤検知によりバーナ21の失火を検知できていない場合であっても、失火判定部75が、前述の温度差情報に基づいて、バーナ21の失火を判定することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、被加熱流体が熱交換器としての熱媒油加熱管23の上流部から下流部まで流れるのに要する時間が長い場合においても、ボイラへの流入温度と流出温度の対応関係を正しく評価することが可能となり、バーナの失火を精度よく判定することができる。なお、熱媒油加熱管23の管路長が長い場合は滞留時間が長くなるため、時間遅れが顕著になる。熱媒油加熱管内流速が遅い場合も時間遅れが顕著になる。
【0060】
また、本実施形態によれば、例えば、熱使用部200における熱使用量の変動により、被加熱流体としての熱媒油の一次側温度T1に温度変動がある場合などにおいても、すなわち、平均化処理によって除外されるような燃焼の乱れなどによる短時間の変動ではない温度変動がある場合などにおいても、バーナ21の失火を精度よく判定することが可能となる。
【0061】
図5は、本実施形態の第1変形例における、制御部7の構成を示す機能ブロック図である。本変形例の制御部7は、一次側平均温度算出部72と、二次側平均温度算出部73をさらに備える。
【0062】
二次側平均温度算出部73は、タイミングtaにおける熱媒油の二次側温度T2の第2所定時間の平均値を熱媒油の二次側平均温度として算出する。例えば、図3におけるタイミングtaの前後5秒間、トータル10秒間の熱媒油の二次側温度T2の平均値を、熱媒油の二次側平均温度T2a-aveとして算出する。
【0063】
一次側平均温度算出部72は、タイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける熱媒油の一次側温度T1の第1所定時間の平均値を熱媒油の一次側平均温度として算出する。例えば、図3におけるタイミングtbの前後5秒間、トータル10秒間の熱媒油の一次側温度T1の平均値を、熱媒油の一次側平均温度T1b-aveとして算出する。
【0064】
失火判定部75は、タイミングtaにおける二次側平均温度T2a-aveと、タイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける一次側平均温度T1b-aveとの差を温度差情報として算出し、この温度差情報に基づき、バーナの失火を判定する。
【0065】
これにより、バルブ切替による短時間の熱媒油流量の変動や一時的な燃焼状態変化による熱媒油温度の変動などの外乱がある場合においても、平均値を求めることで、外乱の影響を緩和することができる。
【0066】
なお、熱媒油の一次側平均温度T1b-aveを求めるための第1所定時間と、熱媒油の二次側平均温度T2a-aveを求めるための第2所定時間は、到達基準時間tsよりも短くすることが好ましい。
これにより、熱媒油の一次側温度T1、熱媒油の二次側温度T2の過剰な平均化を防ぎ、適切に失火判定を行うことができる。
【0067】
なお、熱媒油の一次側平均温度T1b-ave、熱媒油の二次側平均温度T2a-aveは、移動平均として求めてもよい。この場合、リアルタイムで常にバーナ21の失火を監視することもできる。
【0068】
なお、失火判定部75は、排ガス出口温度を検出する排ガス出口温度検出部51によって検出された排ガス出口温度と熱媒温度との温度差に基づいて、バーナ21の失火を判定してもよい。
具体的には、失火判定部75は、前述の温度差情報が所定の閾値を下回り、かつ排ガス出口温度が、前述の熱媒油の二次側平均温度T2a-aveに所定の温度(例えば、5℃)を加えた温度以下である場合に、バーナ21が失火したと判定してもよい。
【0069】
一般に、熱媒ボイラ2が燃焼している場合、排ガス出口温度は、熱媒油の二次側温度T2よりも高い温度となる。一方、熱媒ボイラ2が燃焼していない場合は、排ガスライン5を流れるガスの温度と、熱媒油の二次側温度T2との温度差は小さくなる。或いは、熱媒油の二次側温度T2よりも、排ガスラインを流れるガスの温度の方が低くなる。よって、被加熱流体の温度と排ガス出口温度の情報を用いた上述の判定手法により、誤判定の可能性を低減し、バーナの失火をより高い精度で判定することが可能となる。
【0070】
図6は、本実施形態の第2変形例における、制御部7の構成を示す機能ブロック図である。本変形例の制御部7は、到達基準時間設定部74をさらに備える。
【0071】
到達基準時間設定部74は、被加熱流体の情報である被加熱流体情報に基づき、到達基準時間tsを設定する。
例えば、到達基準時間設定部74は、流量検出部36により実測された、被加熱流体の情報としての熱媒油の流量情報に基づいて、到達基準時間tsを算出し、これを、バーナ21の失火を判定するための温度差情報を算出する上で必要な到達基準時間tsとして設定する。この場合、実測された流量情報と、熱媒油加熱管23の流路長等の情報に基づいて、到達基準時間tsを算出し、これを設定してもよい。或いは、流量情報と到達基準時間tsの対応関係を示すテーブルデータを、記憶部79に記憶させておいてもよい。到達基準時間設定部74は、流量検出部36により実測された流量情報と、記憶部79に記憶されたテーブルデータに基づいて、到達基準時間tsを設定する。
また、流量情報を用いることに換えて、被加熱流体の流速情報等、種々の被加熱流体情報を用いて到達基準時間tsを算出し、これを、設定してもよい。
【0072】
また、入力部(不図示)より、被加熱流体情報として、被加熱流体の種類や、粘性等の流体特性の情報を入力可能とし、入力された被加熱流体情報に基づき、到達基準時間tsを推定し、これを、バーナ21の失火を判定するための温度差情報を算出する上で必要な到達基準時間tsとして設定してもよい。
記憶部79は、到達基準時間tsを、その後の処理のために記憶する。
これにより、到達基準時間tsを適切に設定することが可能となり、その結果、バーナ21の失火をより高い精度で判定することが可能となる。
【0073】
なお、本実施形態の失火判定部による判定処理は、被加熱流体が熱媒油の場合に特に好適に適用可能であるが、被加熱流体は、熱媒油に限らず、温水であってもよい。
なお、本実施形態においては、熱媒ボイラ2が、ボイラの燃焼室内の燃料溜まりの問題を有する油炊きボイラである場合を例に説明したが、熱媒ボイラ2は、ガス炊きボイラであってもよい。ガス炊きボイラであっても、バーナ21の失火を精度よく判定することが可能となる。
【0074】
以上説明した第1実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0075】
(1)本実施形態のボイラシステム1は、バーナ21と、バーナ21により生成された燃焼ガスと被加熱流体としての熱媒油を熱交換するモノチューブ式の熱交換器としての熱媒油加熱管23と、被加熱流体の熱交換器の入口側の一次側温度を検出する一次側温度検出部33と、被加熱流体の熱交換器の出口側の二次側温度を検出する二次側温度検出部34と、記憶部79及び失火判定部75を有する制御部7と、を備え、記憶部79は、被加熱流体が一次側温度検出部33の配置位置から二次側温度検出部34の配置位置まで流れるのに要する時間に対応する到達基準時間tsを記憶し、失火判定部75は、所定のタイミングtaにおける二次側温度T2aに基づく情報と、所定のタイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける一次側温度T1bに基づく情報との差を温度差情報(温度差ΔT)として算出し、温度差情報に基づき、バーナ21の失火を判定する。
これにより、被加熱流体の一次側温度T1に温度変動がある場合などにおいても、バーナ21の失火を精度よく判定することが可能となる。
【0076】
(2)本実施形態の制御部7は、第1所定時間における一次側温度T1の平均値を一次側平均温度として算出する一次側平均温度算出部72と、第2所定時間における前記二次側温度T2の平均値を二次側平均温度として算出する二次側平均温度算出部73と、を備え、失火判定部75は、所定のタイミングtaにおける二次側平均温度T2a-aveと、所定のタイミングtaよりも到達基準時間tsを遡ったタイミングtbにおける一次側平均温度T1b-aveとの差を温度差情報(温度差ΔT)として算出し、温度差情報に基づき、バーナ21の失火を判定する。
これにより、バルブ切替による短時間の熱媒油流量の変動や一時的な燃焼状態変化による熱媒油温度の変動などの外乱がある場合においても、平均値を求めることで、外乱の影響を緩和することができる。
【0077】
(3)本実施形態のボイラシステム1における、第1所定時間及び第2所定時間は、到達基準時間tsよりも短い。
このように、第1所定時間及び第2所定時間を到達基準時間tsよりも短くすることにより、一次側温度T1、二次側温度T2の過剰な平均化を防ぎ、適切に失火判定を行うことができる。
【0078】
(4)本実施形態の制御部7は、到達基準時間tsを設定する到達基準時間設定部74を有し、到達基準時間設定部74は、被加熱流体の情報である被加熱流体情報に基づき、到達基準時間を設定する。
これにより、到達基準時間tsを適切に設定することが可能となり、その結果、バーナ21の失火をより高い精度で判定することが可能となる。
【0079】
(5)本実施形態の失火判定部75は、前述の温度差情報(温度差ΔT)が所定の閾値ΔTsを下回る場合に、バーナ21が失火したと判定する。
これにより、バーナの失火の判定を簡便に行うことが可能となる。
【0080】
(6)本実施形態の失火判定部75は、前述の温度差情報(温度差ΔT)が所定の閾値ΔTsを下回る状態が第3所定時間継続した場合に、バーナ21が失火したと判定する。
これにより、一時的な熱媒油の流量変動や温度変化による誤判定の可能性を低減し、バーナ21の失火をより高い精度で判定することが可能となる。
【0081】
(7)本実施形態のボイラシステム1における、第3所定時間は、到達基準時間tsよりも長い。
このように、熱媒ボイラ2の熱媒油加熱管23内の熱媒油が入れ替わる時間を確保することで、誤判定の可能性を低減し、バーナ21の失火をより高い精度で判定することが可能となる。
【0082】
(8)本実施形態のボイラシステム1は、バーナ21の炎を検知する炎検知手段としての炎センサ24をさらに備え、失火判定部75は、炎センサ24によって炎を検知している状態であっても、前述の温度差情報(温度差ΔT)が所定の閾値ΔTsを下回る場合に、バーナ21が失火したと判定する。
これにより、通常は、炎センサ24によるバーナ21の失火を検知することが可能であり、さらに炎センサ24の誤検知によりバーナ21の失火を検知できていない場合であっても、失火判定部75が、バーナ21の失火を判定することができる。
【0083】
(9)本実施形態のボイラシステム1は、排ガス出口温度を検出する排ガス出口温度検出部51をさらに備え、失火判定部75は、前述の(温度差ΔT)が所定の閾値ΔTsを下回り、かつ排ガス出口温度が、二次側平均温度T2a-aveに所定の温度を加えた温度以下である場合に、バーナ21が失火したと判定する。
このように、被加熱流体の温度と排ガス出口温度の情報を用いることにより、誤判定の可能性を低減し、バーナ21の失火をより高い精度で判定することが可能となる。
【0084】
(10)本実施形態の失火判定部75は、バーナ21の失火を判定する処理を、熱媒ボイラ2の運転を開始してから第4所定時間を経過した後に開始する。
これにより、熱媒ボイラ2の運転を開始した直後の誤判定を防止することが可能となる。
【0085】
以上、本発明のボイラの好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 ボイラシステム
2 熱媒ボイラ
21 バーナ
23 熱媒油加熱管(熱交換器)
24 炎センサ(炎検知手段)
3 熱媒循環ライン
31 熱媒油戻しライン
32 熱媒油供給ライン
33 一次側温度検出部
34 二次側温度検出部
35 循環ポンプ
36 流量検出部
4 燃料供給ライン
41 燃料調整弁
5 排ガスライン
51 排ガス出口温度検出部
7 制御部
71 燃焼制御部
72 一次側平均温度算出部
73 二次側平均温度算出部
74 到達基準時間設定部
75 失火判定部
79 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6