(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】包装容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B65D77/04 D
(21)【出願番号】P 2019156297
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海林 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】安喰 裕太
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026271(JP,A)
【文献】特開2001-219965(JP,A)
【文献】特開2010-235197(JP,A)
【文献】特開平10-309208(JP,A)
【文献】特開平08-299184(JP,A)
【文献】特開2016-108008(JP,A)
【文献】特開2006-117286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04-77/06
B65D 25/22
B65D 65/00-65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料を袋状に製袋してなる容器本体と、
前記容器本体の底部側を収容する箱状に形成された外装体と
を備え、
前記容器本体は、周方向に沿って帯状に垂れ下がる帯状垂下片を有し、
前記容器本体の外周面と前記帯状垂下片との間に、前記外装体の上端縁側が挟み込まれて、前記容器本体と前記外装体とを着脱自在に一体化し得る包装容器
の製造方法であって、
前記容器本体を製袋するに先立って、前記可撓性材料の内面層どうしを帯状に重ね合わせ、当該帯状に重なり合う部分をヒートシールすることによって
前記帯状垂下片を形成
することを特徴とする包装容器
の製造方法。
【請求項2】
前記帯状垂下片の上端縁に沿って、前記容器本体に易開封線が形成された請求項1に記載の包装容器
の製造方法。
【請求項3】
前記外装体が、前記容器本体を下方から支持する底面部と、前記容器本体を側方から支持する正面部、背面部、及び側面部を有し、上面側が開口部とされた立方体状又は直方体状の箱状に形成された請求項1又は2に記載の包装容器
の製造方法。
【請求項4】
前記外装体の前記側面部に、前記側面部の上端縁中央部から下端縁両端部に向かう斜め線と、前記側面部の上端縁中央部から下端縁中央部に向かう縦線とのいずれか一方又は両方からなる折り癖をつけた請求項3に記載の包装容器
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封後に、開封口が広く開口した状態に保持されるようにして、内容物を取り出し易くした包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、可撓性材料を製袋してなる包装袋に、調理済食品又は半調理食品を充填、密封し、加圧加熱下で滅菌処理してなる加圧加熱食品又はレトルト食品と称される食品類が広く流通している。この種の食品類にあっては、通常、内容物を加熱した後に、食器に移し替えられて喫食される。
【0003】
近年、この種の食品類に対して、内容物を食器に移し替えることなく、包装袋を食器代わりに用いて喫食できるようにすることが求められており、例えば、特許文献1には、包装袋の上部を水平に開封した後に、その上端部を折り返すことによって開口した状態に保持されるようにして、包装袋を食器代わりに用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可撓性材料を製袋してなる包装袋は、形状保持性に劣るため、食器代わりに用いるには未だ改善の余地があった。すなわち、開封後、内容物を食器に移し替えることなく喫食できるようにするには、開封口が広く開口した状態に保持されるようにして、内容物を取り出し易くする必要がある。
【0006】
本発明者らは、この点に着目して、形状保持性に劣る包装袋の開封口を広く開口した状態に保持し、開封後の包装袋から内容物を取り出し易くできるようにすべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装容器の製造方法は、可撓性材料を袋状に製袋してなる容器本体と、前記容器本体の底部側を収容する箱状に形成された外装体とを備え、前記容器本体は、周方向に沿って帯状に垂れ下がる帯状垂下片を有し、前記容器本体の外周面と前記帯状垂下片との間に、前記外装体の上端縁側が挟み込まれて、前記容器本体と前記外装体とを着脱自在に一体化し得る包装容器の製造方法であって、前記容器本体を製袋するに先立って、前記可撓性材料の内面層どうしを帯状に重ね合わせ、当該帯状に重なり合う部分をヒートシールすることによって前記帯状垂下片を形成する方法としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器本体を開封して内容物を取り出す際に、形状保持性に劣る容器本体の開封口を広く開口した状態に保持することができ、これによって、内容物を取り出し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る包装容器の概略を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る包装容器の概略を示す背面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る包装容器の概略を示す側面図である。
【
図5】容器本体を製袋する工程を示す説明図である。
【
図6】容器本体を製袋する工程を示す説明図である。
【
図7】内容物が充填、密封された容器本体を外装体に収容する工程を示す説明図である。
【
図9】容器本体を開封して内容物を喫食する様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る包装容器の概略を示す正面図であり、
図3は、同背面図、
図4は、同側面図である。これらの図に示す包装容器1は、可撓性材料を袋状に製袋してなる容器本体2と、容器本体2の底部側を収容する箱状に形成された外装体3とを備えている。
【0012】
図1,
図3,及び
図4では、調理済食品又は半調理食品が内容物として充填、密封された容器本体2が、外装体3に収容された包装容器1の一例を示している。かかる一例において、容器本体2は、内容物によって押し広げられた底部側が、平らにならされた底面を形成しつつ、三角形状に折り畳まれた隅部が上方に折り返されて、外装体3の内面に沿うように撓んだ状態で収容される(
図7参照)。
【0013】
なお、本実施形態において、上下左右及び縦横の方向は、外装体3の底面を水平面に接地させて包装容器1を正立させた状態(
図1に示す状態)を基準に定めるものとする。
【0014】
外装体3は、容器本体2を下方から支持する底面部30と、容器本体2を側方から支持する正面部31、背面部32、及び側面部33を有し、上面側が開口部とされた立方体状又は直方体状の箱状に形成することができる。内容物が充填、密封された容器本体2は、開口部から外装体3内に押し込まれるようにして収容されるが、収容された容器本体2の底部側を取り囲む箱状に形成されていれば、外装体3の具体的な形態は特に限定されない。
【0015】
また、包装容器1を誤って落としてしまった場合などに、その衝撃から容器本体2を保護する観点から、底面部30は、外装体3の底側の全面を塞ぐように設けるのが好ましいが、容器本体2を下方から支持することができれば、底面部30は、正面部31と背面部32との間に部分的に架け渡すように設けられていてもよい。
【0016】
外装体3に用いる材料としては、箱状の形状を保持できるものであれば特に限定されないが、比較的低コストで、加工も容易な厚紙などの汎用の材料を用いるのが好ましい。
例えば、
図8に示すように裁断された厚紙に、図中、鎖線で示すように折り癖をつけておき、のりしろ部36に接着剤を塗布して、これを箱状に組み立てることによって形成することができる。のりしろ部36を省略して、接着テープを用いて組み立てるようにしてもよい。
【0017】
図8に示す例では、各部の境界線とともに側面部33にも折り癖をつけてある。外装体3を立方体状又は直方体状の箱状に形成する場合、側面部33には、図示するように、側面部33の上端縁中央部から下端縁両端部に向かう斜め線TLと、側面部33の上端縁中央部から下端縁中央部に向かう縦線VLとのいずれか一方(好ましくは前者)又は両方からなる折り癖をつけることができる。このようにすることで、内容物が充填、密封された容器本体2を外装体3内に押し込む際に、側面部33が外側に押し広げられるように、折り癖に沿って適度に変形し易くなり(
図7参照)、容器本体2を外装体3内に無理なく押し込むことができるため好ましい。
【0018】
容器本体2を製袋するのに用いる可撓性材料としては、加圧加熱食品用又はレトルト食品用の包装袋に利用されている各種フィルム材が使用可能である。
例えば、耐擦傷性、耐薬品性などを有するポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム、ナイロン等のポリアミド系樹脂フィルムなどからなる外面層と、シリカ、アルミナ等の金属酸化物又は金属の蒸着薄膜、アルミニウム箔等の金属箔、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の酸素バリア性樹脂フィルムなどからなる中間層と、ヒートシール性を有するポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなどからなる内面層とを積層してなる積層フィルムを使用することができる。
【0019】
また、容器本体2は、周方向に沿って帯状に垂れ下がる帯状垂下片20を有している。帯状垂下片20は、容器本体2の外周面に覆い被さるように垂れ下がり、容器本体2を外装体3に収容したときに、容器本体2の外周面と、帯状垂下片20との間に、外装体3の開口部の上端縁側が挟み込まれるように形成されている(
図2参照)。
【0020】
これにより、容器本体2と外装体3とを着脱自在に一体化することが可能となり、流通過程において、容器本体2と外装体3とが不用意に分離してしまわないようにすることができる一方で、廃棄時には容易に分離することができ、分別廃棄を簡便にすることを可能にする。
【0021】
また、容器本体2には、帯状垂下片20の上端縁に沿って、容器本体2の開封を容易にするための易開封線25を形成するのが好ましい。易開封線25は、容器本体2を形成する可撓性材料に、例えば、レーザー加工、レーザー刃などによるハーフカット処理を施すなどして、直線状の薄肉部として形成することができる(
図2参照)。
【0022】
本実施形態において、容器本体2は、帯状垂下片20を有する以外は、背貼りパウチ(又は合掌パウチ)と称される形態に製袋されており、背貼りシール部21の易開封線25に対応する部位には、ノッチ26が形成されている。これにより、ユーザーは、容器本体2に充填された内容物を喫食する際に、背貼りシール部21に形成されたノッチ26を起点として、易開封線25に沿って容器本体2を引き裂くことにより、容器本体2を容易に開封することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、外装体3の背面部32に、容器本体2の背貼りシール部21との干渉を避けるための切り欠き部35を形成してある。
【0024】
このようにして開封された容器本体2は、容器本体2の外周面と帯状垂下片20との間に挟み込まれた外装体3の上端縁側によって、
図9に示すように、広く開口した状態に保持される。これにより、開封後の容器本体2から、内容物を取り出し易くすることができる。しかも、容器本体2の底部側を収容する外装体3によって、形状保持性が高められているため、内容物を食器に移し替えたりせずとも、そのまま喫食することが可能である。
【0025】
このような効果は、ハサミやカッターなどの切断具を用いて、帯状垂下片20の上端縁に沿って容器本体2を切り裂いても同様に得られるが、容器本体2に易開封線25を形成することにより、容器本体2は、易開封線25に沿って直進性よく引き裂かれて開封される。
その結果、容器本体2の開封口に、ユーザーが口をつけても不快に感じ難くすることができる。さらに、容器本体2の開封口は、容器本体2の外周面と帯状垂下片20との間に外装体3の上端縁側が挟み込まれることによって、厚みが増しており、ユーザーが口をつけたときの不快感はより低減される。
【0026】
このような容器本体2は、例えば、次のようにして製袋することができる。
まず、可撓性材料の外面層側に易開封線25を形成し(
図5(a)参照)、易開封線25と平行に所定の幅で可撓性材料を内面層側に折り返すとともに、易開封線25と概ね重なる部位をさらに折り返して(
図5(b)参照)、可撓性材料の内面層どうしが帯状に重なり合う部分をヒートシールする(
図5(c)参照)。このような工程を経て、可撓性材料に易開封線25と帯状垂下片20とを形成しておく。
【0027】
帯状垂下片20を形成する位置や帯状垂下片20の幅は、容器本体2を外装体3に収容したときに、外装体3の開口部の上端縁側を、容器本体2の外周面と帯状垂下片20との間挟み込むことができ、これによって、容器本体2と外装体3とを着脱自在に一体化し得るように、容器本体2と外装体3の形状、大きさなどに応じて適宜調整する。
また、帯状垂下片20の上端縁と易開封線25とは、できるだけ近接するように形成するのが好ましく、帯状垂下片20の上端縁に易開封線25が重なるように形成するのがより好ましい。
【0028】
可撓性材料には、前述したようにして、容器本体2を外装体3に収容する際に、容器本体2の底部側の隅部を三角形状に折り畳み易くするための案内線27を、エンボス加工などによって、製袋された容器本体2の底部側の隅部(
図6参照)に対応する位置に形成しておくこともできる。
【0029】
次に、帯状垂下片20が周方向に沿って延在するようにして、内面層が内側となるように可撓性材料の両端縁部を合掌させ、内面層どうしをヒートシールする。これによって、背貼りシール部21を形成するとともに、下端縁部の内面層どうしをヒートシールして、ボトムシール部22を形成する。このような工程を経ることによって、上方が開口する袋状の容器本体2が製袋される(
図6参照)。
【0030】
なお、
図5及び
図6に示す例では、所定の形状、大きさに裁断された可撓性材料に対して上記各工程が行われるようにしているが、ロール状に巻き取られた長尺な可撓性材料を巻き戻しながら上記各工程が行われるようにしてもよいのはいうまでもない。
【0031】
このようにして製袋された容器本体2は、上方が開口した状態で充填工程に搬送されて、内容物が充填される。そして、容器本体2の上端縁部をヒートシールすることにより、トップシール部23が形成されて密封される。このようにして内容物が充填、密封された容器本体2は、加圧加熱による滅菌処理がなされた後に、
図7に示すようにして、外装体3に収容される。すなわち、ボトムシール部22を折り曲げるとともに、容器本体2の底部側の隅部を三角形状に折り畳んで、底面を平らにならすことによって、容器本体2の底部側を外装体3に収容可能な形状に整える。そして、折り畳まれた隅部を上方に折り返して外装体3内に押し込みながら、容器本体2の外周面と帯状垂下片20との間に、外装体3の上端縁側が挟み込まれて、外装体3に収容される。
【0032】
外装体3は、
図8に示すように展開された状態で充填工程に搬送されて、所望の時点で組み立てられるようにしてもよく、組み立てられた外装体3を多段に積み重ねた状態で充填工程に搬送されるようにしてもよい。
また、内容物が充填、密封された容器本体2を滅菌処理した後に、当該容器本体2を外装箱に個別に収容して市場に供するようにし、これを購入したユーザーが、外装箱を加工して外装体3に組み立てて使用できるようにしてもよい。
【0033】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0034】
本発明に係る包装容器1は、コンビニエンスストアなどの店頭で、内容物を電子レンジで加熱し、そのままイートインコーナーで喫食するような用途に特に好適であり、電子レンジで加熱するに際し、前述した実施形態では、背貼りシール部21に形成されたノッチ26の近傍のみを開封して、内部の蒸気を逃がせるようにしておけばよい。これに対して、容器本体2には、特許第6245490号公報、特開2017-214129号公報などに開示された蒸気抜き機構を設けるようにしてもよい。
【0035】
また、内容物を加熱して喫食する際には、外装体3の断熱作用により、包装容器1が熱くて把持できないというような不具合を抑制し、内容物が冷め難くもなる。これに対して、外装体3の断熱作用を高めるために、外装体3には、発泡シートなどの断熱材を積層してもよい。
【0036】
また、本発明に係る包装容器1は、内容物を食器に移し替えることなく喫食するような用途に限定されることなく、容器本体2の開封口を広く開口した状態に保持することができ、これによって、内容物を取り出し易くすることができることを利用して、種々の用途に応用することもできる。例えば、小麦粉、コーヒーの粉、粉洗剤などを内容物とし、これらを少量ずつ取り出して使用する包装容器として用いることも可能である。このような用途に供する場合、特に図示しないが、容器本体2の開封口付近の内面側に、ジッパーなどと称される凹凸篏合による再封止が可能な部材を取り付けることもできる。
【0037】
また、前述した実施形態では、容器本体2を背貼りパウチとして製袋した例を示した。これに対して、容器本体2は、平パウチ、スタンディングパウチ、ガゼットパウチなどの他の形態に製袋してもよい。
【0038】
要するに、本発明に係る包装容器1は、容器本体2が、周方向に沿って帯状に垂れ下がる帯状垂下片20を有し、容器本体2の外周面と帯状垂下片20との間に、容器本体2の底部側を収容する箱状に形成された外装体3の上端縁側が挟み込まれて、容器本体2と外装体3とを着脱自在に一体化し得るように構成されていれば、これ以外の細部の構成は、前述した実施形態に限定されることなく適宜変更することができる。
また、前述した実施形態で説明した細部の構成を適宜取捨選択して組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 包装容器
2 容器本体
20 帯状垂下片
25 易開封線
3 外装体
30 底面部
31 正面部
32 背面部
33 側面部
TL 斜め線
VL 縦線