(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】後処理装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20240116BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B65H37/04 D
G03G15/00 460
(21)【出願番号】P 2019171671
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 達朗
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-118257(JP,A)
【文献】特開2002-265139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/04
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーを開放させたときに、ステープラーが初期位置からずれないように該ステープラーを拘束する拘束機構と、
前記カバーを閉塞したときに、前記拘束機構による前記ステープラーに対する拘束を解除する拘束解除機構と、
前記ステープラーを予め定めた方向に移動可能に支持する支持板と、
を備え
、
前記拘束機構は、
前記支持板に形成された開口部を通って前記ステープラーに設けられた被係止部を係止する係止部を有する後処理装置。
【請求項2】
前記拘束機構は
、
前記係止部を前記被係止部へ向けて付勢する付勢部材
を備えている請求項1に記載の後処理装置。
【請求項3】
前記係止部における前記ステープラーの前記初期位置への移動方向の上流側を向く先端面が、テーパー面とされている
請求項1又は請求項2に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記係止部は、鉛直方向の下側から突出して前記被係止部を係止する構成とされている請求項
1~請求項3
の何れか1項に記載の後処理装置。
【請求項5】
前記
係止部は、支軸を中心に回転する構成とされており、
前記拘束解除機構は、
前記カバーの内面に設けられ、前記カバーを閉塞したときに、前記係止部が前記被係止部から離れる方向へ回転するように、前記支軸に対して前記係止部とは反対側に設けられた基部を押圧する突起部で構成されている請求項1~請求項4
の何れか1項に記載の後処理装置。
【請求項6】
前記
基部は、前記ステープラーよりも前記カバー側に配置されている請求項
5に記載の後処理装置。
【請求項7】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置本体と、
前記画像形成装置本体から排出された複数の前記記録媒体を針で綴じるステープラーを有する請求項1~請求項6の何れか1項に記載の後処理装置と、
を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の記録用紙を整合して積載し、ステープル処理する後処理装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。この後処理装置では、ステープラーが装置本体の奥側から手前側まで移動可能に構成され、マルチポジションでのステープル処理が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ユーザーがカバーを開けてステープラーに接触しても、印刷ジョブ始動時にはステープラーが初期位置からずれていないようにできる後処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の後処理装置は、カバーを開放させたときに、ステープラーが初期位置からずれないように該ステープラーを拘束する拘束機構と、前記カバーを閉塞したときに、前記拘束機構による前記ステープラーに対する拘束を解除する拘束解除機構と、を備えている。
【0006】
また、本発明に係る第2の態様の後処理装置は、第1の態様の後処理装置であって、前記拘束機構は、前記ステープラーに設けられた被係止部を係止する係止部を有する拘束部材と、前記係止部を前記被係止部へ向けて付勢する付勢部材と、を備えている。
【0007】
また、本発明に係る第3の態様の後処理装置は、第2の態様の後処理装置であって、前記係止部における前記ステープラーの前記初期位置への移動方向の上流側を向く先端面が、テーパー面とされている。
【0008】
また、本発明に係る第4の態様の後処理装置は、第2又は第3の態様の後処理装置であって、前記係止部は、鉛直方向の下側から突出して前記被係止部を係止する構成とされている。
【0009】
また、本発明に係る第5の態様の後処理装置は、第4の態様の後処理装置であって、前記ステープラーは、支持板上を移動可能に構成されており、前記係止部は、前記支持板に形成された開口部を通って前記被係止部を係止する構成とされている。
【0010】
また、本発明に係る第6の態様の後処理装置は、第2~第5の何れかの態様の後処理装置であって、前記拘束部材は、支軸を中心に回転する構成とされており、前記拘束解除機構は、前記カバーの内面に設けられ、前記カバーを閉塞したときに、前記係止部が前記被係止部から離れる方向へ回転するように、前記支軸に対して前記係止部とは反対側に設けられた基部を押圧する突起部で構成されている。
【0011】
また、本発明に係る第7の態様の後処理装置は、第6の態様の後処理装置であって、前記基部は、前記ステープラーよりも前記カバー側に配置されている。
【0012】
また、本発明に係る第8の態様の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置本体と、前記画像形成装置本体から排出された複数の前記記録媒体を針で綴じるステープラーを有する第1~第7の何れかの態様の後処理装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様の発明によれば、ユーザーがカバーを開けてステープラーに接触しても、印刷ジョブ始動時にはステープラーが初期位置からずれていないようにすることができる。
【0014】
第2の態様の発明によれば、拘束機構を簡単に構成することができる。
【0015】
第3の態様の発明によれば、ステープラーが初期位置から移動されている状態で、そのステープラーを手動で初期位置へ移動させたときに、そのステープラーの被係止部を構成する周辺部分がテーパー面に沿って係止部を簡単に乗り越えることができる。
【0016】
第4の態様の発明によれば、係止部が、鉛直方向の上側から突出して被係止部を係止する構成に比べて、印刷ジョブ時におけるステープラーの移動の阻害を抑制することができる。
【0017】
第5の態様の発明によれば、係止部が、支持板の外側を通って被係止部を係止する構成に比べて、拘束機構をコンパクトに構成することができる。
【0018】
第6の態様の発明によれば、拘束解除機構が、カバーとは別の部材に設けられた突起部で構成されている場合に比べて、拘束解除機構を簡単に構成することができる。
【0019】
第7の態様の発明によれば、基部がカバーから離れた位置に配置されている場合に比べて、突起部の長さを短くすることができる。
【0020】
第8の態様の発明によれば、カバーを開けてもステープラーが移動可能となるものに比べて、ステープラーのイニシャライズ動作の必要性を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る後処理装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る後処理装置のステープラー及び案内部を上から見て示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る後処理装置の案内部を示す底面図である。
【
図4】本実施形態に係る後処理装置のステープラー及び案内部を下から見て示す斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る後処理装置のステープラー及び案内部を一部破断して上から見て示す拡大斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る後処理装置のステープラーに対する拘束機構及び拘束解除機構を示す側面図である。
【
図7】本実施形態に係る後処理装置のカバーを開放させた状態を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る後処理装置のステープラーに対する拘束機構の手動動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、以下において、記録媒体の一例としての記録用紙Pの搬送方向上流側を単に「上流側」といい、搬送方向下流側を単に「下流側」という場合がある。また、
図1における矢印UPを画像形成装置10の上方向とし、
図1における紙面手前側を「前側」、紙面奥側を「後側」とする。更に、画像形成装置10の前後方向を「幅方向」という場合がある。
【0023】
図1に示されるように、画像形成装置10は、記録用紙Pに対して画像を形成する画像形成装置本体12と、画像形成装置本体12によって画像が形成された複数枚の記録用紙Pに対して綴じ処理(ステープル処理)などの後処理を行う後処理装置20と、を備えている。
【0024】
<画像形成装置本体>
画像形成装置本体12は、記録用紙Pを収容する収容部14と、記録用紙Pに画像を形成する画像形成部16と、画像が形成された記録用紙Pを排出する排出ロール18と、画像形成装置本体12の動作を制御する制御部15と、を備えている。
【0025】
収容部14は、サイズや種類の異なる記録用紙Pを収容可能なように複数設けられている。また、収容部14は、それぞれ前側に引き出し可能に構成されており、引き出した状態で記録用紙Pの補充作業が行えるようになっている。
【0026】
画像形成部16は、収容部14から搬送されて来た記録用紙Pに画像を形成するようになっている。なお、画像形成部16は、感光体に付着させたトナー像を記録用紙Pに転写して画像を形成する電子写真方式とされていてもよいし、インクを記録用紙P上に吐出して画像を形成するインクジェット方式とされていてもよい。
【0027】
排出ロール18は、画像形成部16によって画像が形成された記録用紙Pを排出するようになっている。排出ロール18は、記録用紙Pを挟みながら送り出すロール対からなり、このロール対がそれぞれ逆方向に回転することによって、記録用紙Pが画像形成装置本体12から排出されるようになっている。
【0028】
制御部15は、画像形成装置本体12に設けられている各構成部材の動作を制御するようになっている。また、制御部15は、後処理装置20に対して記録用紙Pの後処理を実行する旨の指示信号を出力するようになっている。
【0029】
ここで、画像形成装置本体12の動作について簡単に説明する。まず、制御部15から指示信号が出力されることにより、収容部14から記録用紙Pが1枚ずつ送り出される。そして、その送り出された記録用紙Pに画像形成部16によって画像が形成され、その後、その記録用紙Pが排出ロール18から排出される。
【0030】
<後処理装置>
後処理装置20は、画像形成装置本体12の排出ロール18よりも下流側に接続されたトランスポートユニット22と、トランスポートユニット22によって搬送された記録用紙Pに対して予め定められた後処理を施すフィニッシャユニット30と、を備えている。
【0031】
トランスポートユニット22は、画像形成装置本体12において画像が形成された記録用紙Pをフィニッシャユニット30に向けて搬送する複数の搬送ロール26と、その記録用紙Pに対して2穴又は4穴等の穴あけ(パンチ)を施すパンチ機構部24と、を備えている。
【0032】
フィニッシャユニット30は、用紙束Bに対して綴じ処理を行う綴処理装置32と、綴処理装置32に向けて記録用紙Pを搬送する搬送ロール28と、綴処理装置32によって綴じ処理が施された用紙束Bを排出する排出ロール34と、排出された用紙束Bを積載する積載部36と、後処理装置20に設けられた各構成部材の動作を制御する制御部38と、を備えている。
【0033】
ここで、後処理装置20の動作について簡単に説明する。まず、画像形成装置本体12の制御部15から後処理装置20の制御部38に対し、記録用紙Pに対する後処理を実行する旨の指示信号が出力される。すると、これを契機として、制御部38が、後処理装置20の各構成部材に対して記録用紙Pの後処理を実行する指示信号を出力する。
【0034】
一方、後処理装置20のトランスポートユニット22に対して、画像形成装置本体12にて画像が形成された記録用紙Pが供給される。トランスポートユニット22では、パンチ機構部24による穴あけ(パンチ)が必要に応じて行われ、その後、搬送ロール26によって記録用紙Pがフィニッシャユニット30へ供給される。
【0035】
フィニッシャユニット30へ供給された記録用紙Pは、搬送ロール28によって更に搬送され、綴処理装置32によって綴じ処理が施される。そして、綴処理装置32によって綴じ処理が施された用紙束Bは、排出ロール34によって積載部36へ排出される。
【0036】
[綴処理装置]
図1に示されるように、綴処理装置32は、記録用紙Pを集積して用紙束Bを形成するとともに、用紙束Bに対して綴じ処理を施すようになっている。綴処理装置32は、印刷ジョブによって、ステープル(針)を用いずに用紙束Bに対して綴じ処理を行う針無し綴じ処理と、ステープル(針)を用いて用紙束Bに対する綴じ処理を行う針有り綴じ処理と、を選択可能になっている。なお、それぞれの綴じ処理が施される用紙束Bにおける位置も選択可能になっている。
【0037】
また、
図1、
図2に示されるように、綴処理装置32は、記録用紙Pを集積して用紙束Bを形成する集積部40と、用紙束Bに対して針無し綴じ処理を実行する針無ステープラー48と、用紙束Bに対して針有り綴じ処理を実行する(用紙束Bを針で綴じる)ステープラー60と、針無ステープラー48及びステープラー60を案内する案内部50と、を備えている。
【0038】
集積部40は、記録用紙Pを下側から支持するとともに、指令された枚数だけ記録用紙Pを集積させて用紙束Bを生成する集積板42と、集積板42に進入した記録用紙Pの下端が突き当たる突当部44と、記録用紙Pを突当部44に向けて搬送する搬送パドル46と、集積板42に集積される記録用紙Pの幅方向の位置を揃える幅方向揃部(図示省略)と、を有している。
【0039】
図1に示されるように、集積板42は水平方向に対して傾斜して設けられている。本実施形態では、記録用紙Pを集積する面が、水平方向に対して30度傾斜して設けられている。このように、集積板42が傾斜して設けられることにより、記録用紙Pが自重で集積板42に沿って落下するようになっている。
【0040】
そして、記録用紙Pの下端が突当部44に突き当たることにより、記録用紙Pの下端が揃えられるようになっている。また、幅方向揃部は、集積板42を挟んで幅方向両側に設けられており、駆動源(図示省略)からの駆動を受けて幅方向に移動するようになっている。これにより、突当部44に突き当たった記録用紙Pの幅方向の位置が揃えられるようになっている。
【0041】
搬送パドル46は、集積板42の上側に設けられている。この搬送パドル46は、駆動源(図示省略)からの駆動を受けて回転することにより、記録用紙Pを突当部44側へ搬送するようになっている。なお、集積板42で集積されて綴じ処理が施された用紙束Bは、排出ロール34によって、突当部44から離間する方向(集積板42に沿って上昇する方向)へ排出されるようになっている。
【0042】
図2、
図3に示されるように、案内部50は、針無ステープラー48及びステープラー60を支持する支持板52と、針無ステープラー48及びステープラー60を予め定めた方向に案内する案内溝54と、を備えている。また、案内部50は、針無ステープラー48の移動経路に沿って設けられるラックギアである針無用ラック58と、ステープラー60の移動経路に沿って設けられるラックギアである針有用ラック56と、を備えている。
【0043】
支持板52は、幅方向が長手方向とされた略長方形状の板状部材であり、上側を向く上面52Aと、下側を向く下面52Bと、を有している。支持板52は、集積板42に対して下方側に配置され、集積板42に沿って設けられている。すなわち、支持板52は、集積板42と同様に、水平方向に対して傾斜して設けられている。本実施形態では、少なくとも支持板52の上面52Aが、水平方向に対して30度傾斜して設けられている(
図1参照)。
【0044】
そして、支持板52が傾斜して設けられていることにより、支持板52が支持する針無ステープラー48及びステープラー60も傾斜して配置されるようになっている。すなわち、針無ステープラー48及びステープラー60も、集積板42(支持板52)と同じ角度で傾斜して配置されている。
【0045】
案内溝54は、支持板52の厚さ方向に貫通した長孔であり、針無ステープラー48及びステープラー60が移動する幅方向に延びる共通の直線溝54Aを有している。そして、案内溝54は、直線溝54Aの前側に上側に向けて湾曲して延びる湾曲溝54Bと、直線溝54Aの後側に位置する分岐点55と、分岐点55を介して直線溝54Aと連続するように分かれた針無用溝54C及び針有用溝54Dと、を有している。
【0046】
なお、直線溝54A、湾曲溝54B、針無用溝54C及び針有用溝54Dは、同じ溝幅で形成されている。また、支持板52の上面52Aにおける直線溝54A及び湾曲溝54Bの下側辺縁部には、それぞれ薄板状のガイド壁57(
図5も参照)が一体に形成されている。
【0047】
針無用溝54Cは、幅方向に沿って略直線状に延びている。針無用溝54Cは、分岐点55を介して直線溝54Aと連続するとともに、直線溝54Aと一致する方向(幅方向)に設けられている。なお、針無ステープラー48は、針無用溝54Cに進入するのに対して、ステープラー60は、針無用溝54Cに進入しない。
【0048】
針有用溝54Dは、分岐点55を介して直線溝54Aと連続するとともに、分岐点55から上側に向けて湾曲して延びている。なお、ステープラー60は、針有用溝54Dに進入するのに対して、針無ステープラー48は、針有用溝54Dに進入しない。
【0049】
つまり、針無ステープラー48は、湾曲溝54B、直線溝54A及び針無用溝54Cとの間を、分岐点55を経由して移動可能になっている。そして、ステープラー60は、湾曲溝54B、直線溝54A及び針有用溝54Dとの間を、分岐点55を経由して移動可能になっている。このような移動経路の切り替えにより、針無ステープラー48及びステープラー60を予め定めた退避位置に個別に誘導可能になっている。
【0050】
すなわち、針無ステープラー48が綴じ処理を施す際には、ステープラー60が針有用溝54Dに退避するようになっている。そして、ステープラー60が綴じ処理を施す際には、針無ステープラー48が針無用溝54Cに退避するようになっている。これにより、針無ステープラー48及びステープラー60の何れか一方の綴じ処理動作が、何れか他方によって妨げられることがないようになっている。
【0051】
図3に示されるように、針無用ラック58は、支持板52の下面52B側で、湾曲溝54B、直線溝54A及び針無用溝54Cに沿って設けられている。針無用ラック58は、長手方向が幅方向に沿って延びる略直線状の針無用ラック直線部58Aと、針無用ラック直線部58Aの前側端部から湾曲溝54Bに沿って湾曲して延びる針無用ラック湾曲部58Bと、を有している。なお、針無用ラック58の歯面は、針無用ラック58の上側を向く面に設けられている。
【0052】
針有用ラック56は、支持板52の下面52B側で、湾曲溝54B、直線溝54A及び針有用溝54Dに沿って設けられている。針有用ラック56は、長手方向が幅方向に沿って延びる略直線状の針有用ラック直線部56Aと、針有用ラック直線部56Aの前側端部から湾曲溝54Bに沿って湾曲して延びる針有用ラック湾曲部56Bと、針有用ラック直線部56Aの後側端部から針有用溝54Dに沿って湾曲して延びる針有用ラック湾曲部56Cと、を有している。
【0053】
また、針有用ラック56は、直線溝54Aよりも上側に設けられており、針有用溝54Dよりも前側に設けられている。すなわち、針有用ラック56は、直線溝54A、針無用溝54C、針有用溝54Dを間に挟んで針無用ラック58と対向する位置に設けられている。なお、針有用ラック56の歯面は、針有用ラック56の上側を向く面に設けられている。
【0054】
ここで、上記したように、案内溝54、針無用ラック58及び針有用ラック56は、支持板52における前側まで延びている。これにより、案内溝54に沿って移動する針無ステープラー48及びステープラー60は、画像形成装置本体12の前側に位置するユーザーに接近することが可能になっている。
【0055】
換言すると、針無ステープラー48及びステープラー60に対して、画像形成装置本体12の前側からユーザーが作業を行う(アクセスする)ことが可能になっている。したがって、例えば針無ステープラー48の保守点検など、針無ステープラー48に対するユーザーの作業が容易に実行可能となっている。そして、例えばステープル(針)の補充など、ステープラー60に対するユーザーの作業が容易に実行可能となっている。
【0056】
なお、本実施形態では、針無ステープラー48は、針無用溝54Cに移動した位置がホームポジション(初期位置)とされており、ステープラー60は、湾曲溝54Bに移動した位置がホームポジション(初期位置)とされている。つまり、針無ステープラー48とステープラー60とではホームポジションが異なっている。また、ステープラー60は、ホームポジションにて針が補充されるようになっている。
【0057】
次に、ステープラー60と、その拘束機構80及び拘束解除機構90について説明する。
【0058】
図4、
図5に示されるように、ステープラー60は、支持板52の上面52A側に位置する上側ユニット62と、支持板52の下面52B側に位置する下側ユニット64と、を有している。上側ユニット62は、記録用紙Pにステープル(針)を取り付けるステープラー本体66と、支持板52の上面52A上を回転しながら移動するホイール68と、を有している。
【0059】
また、下側ユニット64は、駆動源であるモータ72と、モータ72からの駆動を受けて回転するタイミングベルト74(
図3参照)と、タイミングベルト74を介してモータ72からの駆動を受けて回転するとともに、針有用ラック56の歯面と噛み合うピニオンギア76(
図3参照)と、を有している。そして、案内溝54に通される移動ローラ70が、上側ユニット62及び下側ユニット64を連結している。
【0060】
図5に示されるように、ホイール68は、回転可能に設けられた略円柱状の部材であり、上面52A上において、直線溝54Aよりも下側に2個設けられ、直線溝54Aよりも上側に2個設けられている。また、下側に設けられたホイール68の間には、センサー部材78が上方へ向かって突設されている。このセンサー部材78の先端部には、ガイド壁57が挿入される凹部78Aが形成されている。
【0061】
なお、ステープラー60がホームポジションを採ったときには、センサー部材78がガイド壁57から外れるようになっている。換言すると、センサー部材78が前側へ移動され、ガイド壁57から外れることにより、ステープラー60が、ホームポジションに位置していることが検知されるようになっている。
【0062】
また、
図3~
図5に示されるように、支持板52の前端部には、後述する拘束部材82の係止部84が通る矩形状の開口部53が形成されている。また、
図6に示されるように、下側に設けられたホイール68の間には(センサー部材78に隣接して)、開口部53を通った係止部84が挿入される被係止部の一例としての凹部77が形成されている。
【0063】
そして、
図6に示されるように、この後処理装置20には、カバー92(
図7参照)を開放させたときに、ステープラー60が案内溝54に沿ってホームポジションからずれないように、ステープラー60を拘束する(ステープラー60の移動量を制限する)拘束機構80と、カバー92を閉塞したときに、拘束機構80によるステープラー60に対する拘束を解除する拘束解除機構90と、が設けられている。
【0064】
具体的に説明すると、拘束機構80は、ステープラー60に設けられた凹部77に挿入されて、その凹部77を係止する係止部84を有する拘束部材82と、係止部84を凹部77に挿入される方向へ付勢する付勢部材の一例としてのトーションバネ88と、を備えている。
【0065】
拘束部材82は、
図6に示す側面視で、上側へ突出する係止部84が一端部に形成されるとともに、係止部84よりも短い長さで上側へ突出する基部86が他端部に形成された略「U」字状に形成されており、その基部86の根元に支軸85が通されている。つまり、拘束部材82は、支軸85を中心に回転可能に構成されている。
【0066】
トーションバネ88は、そのコイル部が支軸85に嵌められて設けられている。そして、トーションバネ88の一端部は、後処理装置20に設けられている引掛部25に係止されている。また、トーションバネ88の他端部は、拘束部材82の下側の端面82Aに係止されている。
【0067】
これにより、係止部84がトーションバネ88の付勢力によって凹部77に挿入される方向(上方向)へ付勢されるようになっている。つまり、係止部84は、鉛直方向の下側(鉛直方向に沿った下側ではなく、鉛直方向に対して若干傾いた下側)から突出して凹部77を係止する(凹部77に挿入される)構成になっている。
【0068】
なお、
図8に示されるように、係止部84におけるステープラー60のホームポジションへの移動方向の上流側を向く先端面は、ステープラー60の移動方向及び略上下方向に対して傾斜したテーパー面84Aとされている。また、凹部77は、底面視で略矩形状に形成されている。
【0069】
そして、ステープラー60は、凹部77におけるステープラー60のホームポジションへの移動方向側の内壁77A(
図8(C)参照)が、係止部84におけるテーパー面84Aとは表裏反対側の面に当たることで(位置規制されることで)、ホームポジションからずれない(移動量が制限される)ようになっている。
【0070】
また、
図6に示されるように、拘束部材82の基部86は、トーションバネ88の他端部が係止された端面82Aと連続する端面86Aを、後処理装置20の前側へ向けて配置されている。つまり、その基部86の端面86Aは、ステープラー60よりも後処理装置20の前部を開閉するカバー92側へ向けて配置されている。
【0071】
図7に示されるように、拘束解除機構90は、カバー92の内面に設けられた薄板状で、かつ略台形状の突起部94で構成されている。カバー92は、後処理装置20の外前壁を構成しており、その下端部が、後処理装置20の内前壁96の下端部に回転可能に支持されている。
【0072】
そして、カバー92が閉じられたとき、そのカバー92の内面と対向する内前壁96には、突起部94が挿入される(ユーザーの手指は挿入不可な幅とされた)スリット部98が形成されている。また、そのスリット部98の内側には、拘束部材82の基部86が配置されている。
【0073】
したがって、カバー92を閉じる動作に伴い、スリット部98に挿入された突起部94が、拘束部材82の基部86における端面86A(支軸85よりも上側の端面86A)をトーションバネ88の付勢力に抗して押圧するようになっている。これにより、
図6に仮想線で示されるように、係止部84が支軸85を中心に凹部77から離れる方向へ回転し、ステープラー60の拘束が解除されるようになっている。
【0074】
以上のような構成とされた後処理装置20において、次にその作用について説明する。
【0075】
後処理装置20において、綴処理装置32が綴じ処理しているときには、カバー92が閉じられている。つまり、突起部94が、スリット部98に通され、拘束部材82の基部86(支軸85よりも上側の端面86A)を押圧している。したがって、拘束部材82は、支軸85を中心にトーションバネ88の付勢力に抗して回転し、その係止部84が凹部77から外れている。これにより、ステープラー60の移動が妨げられることがなく(ステープラー60が案内溝54に沿って移動可能となり)、ステープラー60による綴じ処理が実行される。
【0076】
一方、ステープル(針)の残量などは、ユーザーインターフェースに表示されるようになっている。そして、ユーザーは、その残量からステープラー60へステープル(針)を補充する必要があると判断したときには、カバー92を開けるが、その前に、ステープラー60がホームポジションに位置しているか否かが、そのユーザーインターフェースによってユーザーへ報知される。すなわち、センサー部材78がガイド壁57から外れているか否かが、そのセンサー部材78によって検知され、ガイド壁57から外れていると検知された場合には、ステープラー60がホームポジションに位置していると判断される。
【0077】
ステープラー60がホームポジションに位置していると判断されたら、
図7に示されるように、カバー92を開ける。すると、拘束部材82の基部86(端面86A)から突起部94が離れ、拘束部材82は、トーションバネ88の付勢力により支軸85を中心に回転し、その係止部84が開口部53を通って凹部77へ挿入される。これにより、ステープラー60が拘束され、ユーザーがステープル(針)を補充する作業をしても(ユーザーがステープラー60に接触しても)、そのステープラー60が移動することがない(ステープラー60の移動が抑制又は防止される)。
【0078】
ステープラー60に対して、ステープル(針)の補充作業が終了したら、カバー92を閉める。すると、突起部94がスリット部98を通って拘束部材82の基部86(支軸85よりも上側の端面86A)を押圧する。これにより、拘束部材82が支軸85を中心にトーションバネ88の付勢力に抗して回転し、その係止部84が凹部77から外れるが、ステープラー60は、ホームポジションに位置している。
【0079】
つまり、ユーザーがカバー92を開けてステープラー60に接触した後でも、印刷ジョブ始動時には、ステープラー60がホームポジションからずれていない状態となる(センサー部材78によってホームポジションに位置していることが検知される)。したがって、カバー92を開閉する度に、ステープラー60の位置を確定させるイニシャライズ動作をする必要がなくなる(カバー92を開けてもステープラー60が移動可能となるものに比べて、ステープラー60のイニシャライズ動作の必要性が小さくなる)。
【0080】
また、これにより、次のような課題も解決される。すなわち、ステープラー60は、重量物であるため、その動作音は小さくない。近年、増加傾向にある静かなオフィス環境への要求を満たすためには、イニシャライズ動作を行わない(最小限に抑える)ようにしていくことが課題となっている。本実施形態に係る後処理装置20によれば、その課題が解決される。
【0081】
また、カバー92を開閉する度にイニシャライズ動作を行わなくて済むため、カバー92を開閉する度にイニシャライズ動作を行う場合に比べて、騒音の発生が低減されるとともに消費電力が低減され、後処理装置20自体の寿命及び信頼性が向上される。更に、スリット部98にはユーザーの手指が入らないため、ユーザーがステープラー60に対する拘束を誤って解除してしまう不具合も起きない。
【0082】
また、拘束機構80は、ステープラー60に設けられた凹部77を係止する係止部84を有する拘束部材82と、その係止部84を凹部77へ向けて付勢するトーションバネ88と、で構成されている。そのため、拘束機構80が簡単に構成される。
【0083】
また、拘束解除機構90は、カバー92の内面に設けられた突起部94で構成されている。したがって、拘束解除機構90が、カバー92とは別の部材に設けられた突起部94で構成されている場合に比べて、拘束解除機構90が簡単に構成される。
【0084】
しかも、拘束部材82の基部86は、ステープラー60よりもカバー92側に配置されているため、拘束部材82の基部86が、カバー92から離れた位置に配置されている場合に比べて、突起部94の長さが短くて済む。
【0085】
また、係止部84は、鉛直方向の下側から突出して凹部77を係止する構成とされているため、係止部84が、鉛直方向の上側から突出して凹部を係止する構成に比べて、印刷ジョブ時において、ステープラー60の移動が阻害されるのが抑制又は防止される。
【0086】
更に、係止部84は、支持板52に形成された開口部53を通って凹部77を係止する構成であるため、例えば係止部84が支持板52の外側を通って凹部77を係止する構成に比べて、拘束機構80がコンパクトに構成される。
【0087】
なお、記録用紙Pのジャム又は針のジャムなどが発生して、ステープラー60がホームポジションに位置していない状態(センサー部材78がガイド壁57から外れていないことを検知した状態)で、カバー92を開けなければならないときには、印刷ジョブ始動時までに、手動でステープラー60をホームポジションへ移動させる。
【0088】
すなわち、
図8(A)に示されるように、ユーザーがステープラー60を手指で把持してホームポジションへ移動させる。ここで、上記したように、係止部84におけるステープラー60のホームポジションへの移動方向の上流側を向く先端面は、テーパー面84Aとされている。
【0089】
したがって、
図8(B)、
図8(C)に示されるように、ステープラー60の移動に伴い、ステープラー60の凹部77を構成する周辺部分が、係止部84のテーパー面84Aに当たっても、そのテーパー面84Aに沿って係止部84を簡単に(別の動作を伴わず、ワンアクションで)乗り越えられる。
【0090】
つまり、トーションバネ88の付勢力に抗して拘束部材82を回転させられ、係止部84を下方へ移動させられる。そして、係止部84が凹部77に達するタイミングで、トーションバネ88の付勢力により拘束部材82を回転させられ、係止部84を凹部77に挿入させられる(スムーズに拘束可能となる)。
【0091】
よって、この場合でも、印刷ジョブ始動時には、ステープラー60がホームポジションからずれていない状態となるため(センサー部材78によってホームポジションに位置していることが検知されるため)、ステープラー60の位置を確定させるイニシャライズ動作をする必要がなくなる。
【0092】
以上、本実施形態に係る後処理装置20及び画像形成装置10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る後処理装置20及び画像形成装置10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。
【0093】
例えば、拘束機構80は、図示の拘束部材82及びトーションバネ88に限定されるものではなく、後処理装置20に設けられている既存の部品などを利用して適宜構成されていてもよい。同様に、拘束解除機構90も、カバー92の内面に設けられた図示の突起部94に限定されるものではなく、後処理装置20に設けられている既存の部品などを適宜利用して構成されていてもよい。
【0094】
また、係止部84は、鉛直方向の下側から突出して凹部77を係止する構成に限定されるものではない。例えば、凹部77の位置によっては、水平方向から突出して凹部77を係止する構成とされていてもよい。また、係止部84にテーパー面84Aが形成されるのではなく、ステープラー60を手動で移動させたときに係止部84が当たる、ステープラー60の凹部77を構成する周辺部分に、その係止部84を凹部77へ案内するテーパー面(図示省略)などが形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 画像形成装置
12 画像形成装置本体
20 後処理装置
52 支持板
53 開口部
60 ステープラー
77 凹部(被係止部の一例)
80 拘束機構
82 拘束部材
84 係止部
84A テーパー面
85 支軸
86 基部
88 トーションバネ(付勢部材の一例)
90 拘束解除機構
92 カバー
94 突起部
P 記録用紙(記録媒体の一例)