IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーサル製缶株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ボトル缶 図1
  • 特許-ボトル缶 図2
  • 特許-ボトル缶 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ボトル缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/16 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B65D1/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019191662
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2020066471
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018198169
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】花房 達也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】飯村 友明
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140832(JP,A)
【文献】特開2018-140827(JP,A)
【文献】特開2002-292434(JP,A)
【文献】特開2011-116456(JP,A)
【文献】特開平1-210136(JP,A)
【文献】特開2001-213416(JP,A)
【文献】意匠登録第1613682(JP,S)
【文献】米国特許第9139324(US,B1)
【文献】国際公開第98/29314(WO,A1)
【文献】米国特許第5355710(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 - 1/48
B21D 51/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径が公称211径の円筒状胴部と、該円筒状胴部の上端から缶軸方向上側に向かうに従って縮径する縮径部と、該縮径部の上端に接続された首部と、該首部の上に形成された口径38mmの口部とを備え、前記縮径部は、前記円筒状胴部の上端から凸状外面を形成する凸湾曲部と、該凸湾曲部の上端から前記首部の下端にかけて凹状外面を形成する凹湾曲部とを有しており、
前記凸湾曲部の外面の曲率半径が45mm以上80mm以下であり、前記凹湾曲部の外面の曲率半径が85mm以上115mm以下であり、
前記首部が前記口部より小径に形成され、
さらに前記首部は、前記凹湾曲部の上端から外面が凸となる凸屈曲部を有し、
前記円筒状胴部と前記凸湾曲部との接続位置から、前記凹湾曲部と前記凸屈曲部との接続位置までの缶軸方向の長さが45mm以上70mm以下であることを特徴とするボトル缶。
【請求項2】
前記凸屈曲部と前記凹湾曲部との接続部における前記凹湾曲部の接線は、缶軸に対する角度が2°以上12°以下に形成されていることを特徴とする請求項1記載のボトル缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部に金属製キャップが装着され、飲料等の内容物が充填されるボトル缶に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物が充填される容器として、ボトル形状の缶(ボトル缶)の開口部に、金属製キャップを装着して密封する容器が知られている。このボトル缶は、一般に、底部を有する円筒状胴部の開口部側に、上方へ向かうに従い漸次縮径する肩部、縮径部が設けられ、縮径部の上端に口部が設けられた構成とされている。このようなボトル缶は、金属板材(アルミニウム合金材料の板材)にカッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程、Drawing & Ironing)を施すことにより、有底円筒状の缶体に形成され、その有底円筒状の缶体の胴部に縮径加工を施すことにより肩部及び縮径部が形成され、その後、雄ねじ部、カール部等を有する口部が形成される。
【0003】
このようなボトル缶として、例えば、特許文献1に記載のボトル缶や特許文献2に記載のボトル缶が知られている。
特許文献1記載のボトル缶は、絞り且つしごき加工された側壁が、切頭円錐形部に続いており、切頭円錐形部は、上部に缶本体よりも直径の小さい首部を有し、その首部が、円筒状胴部に続いており、その円筒状胴部にねじが形成され、円筒状胴部の上方にビードが形成され、ねじの下方に環状ビードが形成されている。このボトル缶は、直径約76mm、高さ約180mmで約590ml入るように設計される。あるいは、直径が約51mmないし83mm、高さが約89mmないし254mmの範囲で、大体207mlから946ml以上入ってもよいとも記載されている。
また、切頭円錐形首部は、真っ直ぐな切頭円錐首ではなく、複数の凹凸段またはリブがあるのが好ましいと記載されている。
一方、特許文献2記載のボトル缶は、胴部の上に、上端側に向かうに従い一定の傾斜で漸次縮径する円錐台面状の肩部と、この肩部からさらに上端側に向かって延びる筒状の首部と、首部の上端から外周側に張り出す膨出部、ネジ部およびカール部を備えたキャップ取付部(口部)とが形成されており、胴部の外径(直径)が、64.24mm~68.24mmで、内容量が410ml用のボトル缶であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-062755号公報
【文献】特開2018-131261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のボトル缶では、円筒状胴部と、開口部を形成する小径の口部との間の縮径部分が階段状に形成されており、意匠性に劣る。特許文献2記載のボトル缶は、当該縮径部分が比較的滑らかに形成されているが、円錐台面状であるため、全体として角ばった印象を受ける。
また、このような階段状や円錐台面状の縮径部分を有するボトル缶の場合、飲料を注ぎ出すときに脈動が生じるおそれがある。特に、内容量が多くなると、脈動の影響が大きくなるので、注ぎ性を改善する必要が生じる。
さらに、内容量が多く、高さが大きくなるほど、キャッピング等の際の軸荷重によって変形が生じない強度も求められる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、円筒状胴部と口部との間の縮径部分を滑らかでかつ柔らかい印象の外観とし、大容量であっても良好な注ぎ性を有し、かつ軸荷重に対する強度(コラム強度)も高いボトル缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のボトル缶は、外径が公称211径(円筒状胴部の外径が64.24mm以上68.24mm以下)の円筒状胴部と、該円筒状胴部の上端から缶軸方向上側に向かうに従って縮径する縮径部と、該縮径部の上端に形成された口径38mm(後述の膨出部の外径が36.0mm以上40.0mm以下)の口部とを備え、前記縮径部は、前記円筒状胴部の上端から凸状外面を形成する凸湾曲部と、該凸湾曲部の上端から前記口部の下端にかけて凹状外面を形成する凹湾曲部とを有しており、
前記凸湾曲部の外面の曲率半径が45mm以上80mm以下であり、前記凹湾曲部の外面の曲率半径が85mm以上115mm以下である。
【0008】
円筒状胴部と口部との間に、曲率半径の大きい凸湾曲部と凹湾曲部とを連結した縮径部を形成したので、滑らかでかつ柔らかい印象の外観を呈し、意匠性に優れている。また、縮径部が滑らかに形成されるので、飲料を口部から注ぎ出す際に、縮径部の内周面を飲料が滑らかに流れる。このため、脈動が生じにくい。特に、円筒胴部が長く、高さの大きい大容量のボトル缶において、良好な注ぎ性を有する。
また、ボトル缶の製造工程においては、倒立姿勢で搬送しながら内部を洗浄する工程があるが、その際の洗浄液の流出性も良好であり、内部に洗浄液が残りにくい。
さらに、径の大きい円筒状胴部と小径の口部との間で、曲率半径の大きい凸湾曲部と凹湾曲部とが連続して形成されているので、小径の口部の下端部を親指と人差し指とで握るように持つと、手の平の窪みに凹湾曲部から凸湾曲部の外面が倣うように接触するので、グリップ感にも優れている。このため、特に内容量の大きい大型缶に適用した場合に、持ったときの安定感に優れる。
また、高さの大きいボトル缶であっても、縮径部が凸湾曲部と凹湾曲部とにより滑らかに連続した形状であるので、軸荷重に対しても高い強度を有する。
【0009】
ボトル缶の一つの実施形態として、前記口部と前記縮径部との間に、前記口部より小径の首部が形成されるとともに、該首部の下端部に、前記縮径部の上端から外面が凸となる凸屈曲部が形成され、該凸屈曲部と前記凹湾曲部との接続部における前記凹湾曲部の接線は、缶軸に対する角度が2°以上12°以下に形成されている。
【0010】
このボトル缶では、首部の凸屈曲部と縮径部の凹湾曲部との接続部は、凸屈曲部の曲率中心の缶軸方向位置よりも開口端側に配置される。このため、縮径部の高さ寸法を大きく確保することができ、その分、充填可能な内容量も増大し、大容量のボトル缶に有利である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、円筒状胴部と口部との間の縮径部分を滑らかでかつ柔らかい印象の外観とし、大容量であっても良好な注ぎ性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るボトル缶の半分を断面にした正面図である。
図2図1のボトル缶の要部の拡大図である。
図3】ボトル缶の製造時の形状の変遷を(a)から(d)の順に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るボトル缶の正面図である。このボトル缶1は、開口端部1aにキャップ(図示省略)が装着されることにより、飲料等を収容する容器として用いられる。
ボトル缶1は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の薄板金属からなり、図1に示すように、底部11を有する円筒状胴部12に、円筒状胴部12の上端から缶軸方向上側に向かうに従って縮径する縮径部13と、縮径部13の上端に形成された口径38mm(公称径であり、具体的には後述の膨出部141の外径が36.0mm以上40.0mm以下)の口部14とを備えている。縮径部13は、円筒状胴部12の上端から凸状外面となる凸湾曲部131と、凸湾曲部131の上端から口部14の下端にかけて凹状外面となる凹湾曲部132とを有している。
図1に示すように、円筒状胴部12及び縮径部13、口部14は互いに同軸に配置されており、本実施形態において、これらの共通軸を缶軸Sと称して説明を行う。
【0015】
円筒状胴部12は、外径が公称211径(64.24mm以上68.24mm以下)であり、例えば66.2mmの外径に形成される。円筒状胴部12の下端部には、ドーム状をなす底部11が形成されており、底部11は、缶軸S上に位置するとともに、上方(円筒状胴部11の内部)に向けて膨出するように形成されたドーム部111と、ドーム部111の外周縁部と円筒状胴部12の下端部とを接続するヒール部112とを備えている。また、ドーム部111とヒール部112との接続部分は、缶軸方向の下方に向けて凸となるように屈曲形成されており、ボトル缶1が正立姿勢(図1に示される、口部14が上方を向く姿勢)となるように載置面上に載置されたときに、載置面に接する接地部113となっている。接地部113は、底部11において最も下方に向けて突出しているとともに、周方向に沿って延びる環状をなしている。この接地部113の直径D2は例えば56mmに形成される。
【0016】
縮径部13は、缶軸方向の下側に凸湾曲部131、上側に凹湾曲部132が形成され、これらが滑らかに接続されている。この場合、下側の凸湾曲部131の曲率半径R1より、上側の凹湾曲部132の曲率半径R2が大きく設定されている。具体的には、凸湾曲部131は、その外面の曲率半径R1が45mm以上80mm以下(75mm以下が好ましい)に形成され、凹湾曲部132は、その外面の曲率半径R2が85mm以上115mm以下に形成される。
また、縮径部13と口部14との間には、口部14より小径の首部15が形成されている。この首部15は、その下端部に、縮径部13の上端から半径方向外方に向けて凸となる比較的小さい曲率半径R3の凸屈曲部151が形成され、凸屈曲部151の上端に凹屈曲部152、凹屈曲部152の上端にわずかな幅の小径円筒部153が順次形成されている。このため、首部15は、縮径部13と口部14との間でくびれた形状に形成される。凸屈曲部151の下端は縮径部13の上側の凹湾曲部132の上端に滑らかに接続されている。
【0017】
本実施形態において、円筒状胴部12と縮径部13の下側の凸湾曲部131との接続位置から、縮径部13の上側の凹湾曲部132と首部15の下端部の凸屈曲部151との接続位置までの缶軸方向の長さH2は、45mm以上70mm以下に形成される。
また、凸屈曲部151の外面の曲率半径R3は2mm以上25mm以下に形成される。そして、縮径部13の凹湾曲部132と首部15の凸屈曲部151との接続位置は、図2に示すように、凸屈曲部151の曲率半径R3の中心位置Cよりも缶軸方向の上方位置に配置されている。このため、凹湾曲部132と凸屈曲部151との接続部における凹湾曲部132の接線Tは、缶軸Sの上方に向かうにしたがって漸次缶軸Sに接近する方向に傾斜しており、缶軸Sに対する傾斜角度θが2°以上12°以下に形成されている。したがって、首部15の凸屈曲部151の缶軸方向長さが小さく形成され、その分、縮径部13の缶軸方向長さH2が大きく形成される。この接線Tは、凹湾曲部132と凸屈曲部151との共通接線となる場合もある。
【0018】
ところで、通常のボトル缶においては、前述した特許文献2記載のボトル缶のように、縮径部は円錐台面状に形成され、缶軸を通る縦断面ではストレートに形成される。また、この縮径部の缶軸方向の長さは、211径の円筒状胴部と38mm口径の口部を有するボトル缶において、例えば25mm程度に形成される。このため、円筒状胴部と縮径部との間は小さい曲率半径の屈曲部となってボトル缶の直径が急激に変化したように角ばった印象を与え、縮径部においてはボトル缶の外径が直線的に小さくなり、また、縮径部の上端は小さい直径で口部に接続される。
【0019】
これに対して、本実施形態のボトル缶1は、円筒状胴部12の上端から下側の凸湾曲部131、上側の凹湾曲部132が滑らかに接続されて縮径部13が形成されている。しかも、凸湾曲部131及び凹湾曲部132とも曲率半径R1,R2が従来のボトル缶より相当に大きく、このため、円筒状胴部12から口部14までの間でボトル缶1の直径が滑らかに変化する。また、円筒状胴部12の上端から首部15の凸屈曲部151の下端までの缶軸方向の長さH2、つまり縮径部13の缶軸方向の長さH2が大きいので、曲率が急激に変化する部分がなく、曲率及び外径が缶軸方向の上方に向かうにしたがって全体に滑らかに変化している。
【0020】
また、縮径部13の上側の凹湾曲部132とその上の首部15の凸屈曲部151との接続位置が、凸屈曲部151の曲率中心Cの位置よりも缶軸方向上方位置に配置され、その接続部の共通接線Tが、缶軸Sの上方に向かうにしたがって漸次缶軸Sに接近する方向に傾斜しているので、凹湾曲部132の外面が首部15の小径円筒部153に接近した位置まで連続し、凸屈曲部151の外面から凹湾曲部132の外面が缶軸方向下方に向かうにしたがって漸次拡径するように滑らかに連続している。
【0021】
口部14は、前述した首部15の上に周方向に膨出部141が形成され、膨出部141の上に雄ねじ部142が形成され、雄ねじ部142の上方の開口端部1aにカール部143が形成されている。そして、キャップ(図示略)が雄ねじ部142に螺合し、キャップの裾部が膨出部141に巻き込まれた状態で、キャップ内面のライナがカール部143に圧接して、内部を密封する。
【0022】
このボトル缶1を製造するには、図3に示すように、まず、アルミニウム合金等の薄板金属の板材を打ち抜いて絞り加工することにより、図3(a)に示す比較的大径で浅いカップ21を成形した後、このカップ21に再度の絞り加工及びしごき加工(DI加工)を加えて、図3(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体22を成形し、その上端をトリミングにより切り揃える。このDI加工により、筒体22の底部は最終のボトル缶1としての底部11の形状に成形される。
【0023】
次いで、筒体32の開口端部側を縮径加工(ネックイン加工)することにより、図3(c)に示すように円筒胴部12に連続する縮径部13を形成するとともに、縮径部13の上方で缶軸O方向に延びる小径の円筒部231を有する中間成形体23を形成する。
この縮径加工(ネックイン加工)は、円筒状のネックイン金型を筒体22の開口端側から缶軸方向に押し込んで、ネックイン金型の内周成形部によって筒体22を縮径して、縮径部13を形成する加工であるが、本実施形態のボトル缶1においては、縮径部13が曲率半径の大きい凸湾曲部131と凹湾曲部132とが連続して形成された形状であり、かつ縮径部13の長さH2が長いので、缶軸方向に対して比較的緩やかな傾斜に形成されている。このため、縮径加工が容易である。
【0024】
従来のボトル缶であると、縮径部を加工するのにネックイン金型の内周成形部の径を順次小さくしながら複数回の加工が必要であり、その複数回の加工によって縮径部が階段状に形成されるおそれがある。これを避けるためには、一回の加工面積を小さくして、加工回数を多くするか、縮径加工の最後に階段状部分を押しつぶして滑らかにするためのリフォーム加工をするなどの対策が必要である。
これに対して、本実施形態のボトル缶1の場合は、縮径部13が滑らかな湾曲部131,132が連続して比較的緩やかな傾斜に形成されているので、ネックイン加工時の一回の加工面積を大きくすることができ、縮径部13を滑らかに形成することができる。また、前述した凸湾曲部131及び凹湾曲部132の曲率半径R1,R2であるので、この縮径加工時に、プリーツ(細かい縦じわ)や成形痕(周方向に沿って形成される圧痕)の発生も防止される。従来のボトル缶においては、これらプリーツや成形痕の発生を防止しようとすると、その加工回数を増やす必要があり、生産性が低下する。
【0025】
次いで、この円筒部231を再度拡径及び縮径することにより、図3(d)に示すようにねじ加工する前の筒状部241を有する中間成形体24を形成する。このとき、首部15が形成される。そして、この筒状部241を加工して、膨出部141、雄ねじ部142、カール部143を形成することにより、図1に示すボトル缶1が形成される。
【0026】
なお、上述した縮径部以外の部分も含めて諸寸法について説明しておくと、ボトル缶1の接地部143の底面からカール部143の上面までの高さ(ボトル缶1の高さ)H0は180mm以上230mm以下、底部11を含む円筒状胴部12の高さH1は100mm以上150mm以下である。内容量としては、400ml以上600ml以下の飲料缶として利用することができる。また、板厚は、プレス成形前の元板厚が0.370mm以上0.550mm以下であり、図5(b)に示すDI缶において、筒体22の底部11側の板厚(ウォール厚)t1が0.110mm以上0.150mm以下に形成され、開口端部側の板厚(フランジ厚)t2が0.200mm以上0.240mm以下に形成される。この場合、ウォール厚t1の部分221は、円筒状胴部12の底部111よりも若干缶軸方向上方位置から、後の工程で縮径部13の凸湾曲部131となる部分よりも若干缶軸方向下方位置までであり、フランジ厚t2の部分222は、後の工程で縮径部13の凸湾曲部131となる部分よりも缶軸方向上方部分である。なお、底部11のドーム部111の板厚がほぼ元板厚、あるいは元板厚より若干薄くなる。
【0027】
このボトル缶1は、上記のような外観形状であるため、径の大きい円筒状胴部12と小径の口部14との間で、曲率半径の大きい凸湾曲部131と凹湾曲部132とが連続して形成されているので、円筒状胴部12と口部14との間が滑らかでかつ柔らかい印象の外観を呈し、意匠性に優れている。
また、縮径部13が滑らかに形成されるので、飲料を口部14から注ぎ出す際に、縮径部13の内周面を飲料が滑らかに流れる。このため、脈動が生じにくい。特に、円筒状胴部12が長く、高さの大きい大容量のボトル缶において、良好な注ぎ性を有する。
また、ボトル缶1の製造工程においては、倒立姿勢(開口端部1aを缶軸方向下方に向けた姿勢)で搬送しながら内部を洗浄する工程があるが、その際の洗浄液の流出性も良好であり、内部に洗浄液が残りにくい。
【0028】
さらに、小径の口部14の下端部を親指と人差し指とで握るように持つと、手の平の窪みに凹湾曲部132から凸湾曲部131の外面が倣うように接触するので、グリップ感にも優れている。このため、特に内容量の大きい大型缶に適用した場合に、持ったときの安定感に優れる。
また、円筒状胴部12から凸湾曲部131及び凹湾曲部132にかけて、外径が急激に変化する部分がなく、緩やかに変化しているので、ボトル缶1の外面の印刷面も円筒状胴部12から縮径部13にかけて広い範囲で確保することができ、意匠性に優れたボトル缶1を提供することができる。
また、このように、縮径部13が凸湾曲部131と凹湾曲部132とを滑らかに連続させた形状であるので、キャッピング時等に作用する軸荷重に対しても高い強度を有し、変形が防止される。
【0029】
なお、本発明は上記各実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、ボトル缶として、予め有底円筒状の筒体41を形成して、その開口端部を成形したが、筒体は底部を有していないものも含むものとし、縮径部を成形した後に、筒体の胴部に、別に形成した底部を巻き締めるようにしてもよい。
【実施例
【0030】
プレス成形前の板厚が0.46mmのJIS3004のアルミニウム材を用い、ウォール厚が0.130mm、フランジ厚が0.220mmのDI缶を成形した後、円筒状胴部の外径が66.24mm、口部の膨出部外径が38.0mmのボトル缶を成形した。このとき、円筒状胴部の高さH1、縮径部の高さH2、縮径部の凸湾曲部と凹湾曲部の曲率半径R1,R2を変えた複数のボトル缶を成形し、その成形性を評価するとともに、コラム強度を測定した。
【0031】
コラム強度は、ボトルの口金部上端(開口部)に平板を当接させ、島津製作所製の試験機(型番AG-50kNG)を用いて、5mm/minの速度で軸方向に圧縮して、座屈が開始された時の荷重を測定した。
成形性については、しわが缶の軸方向に延びて形成されるプリーツ(縦じわ)、縮径部に周方向に沿って形成される成形痕(圧痕)の有無を目視により観察して評価した。
その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1により明らかなように、凸湾曲部の外面の曲率半径R1が45mm以上80mm以下で、凹湾曲部の外面の曲率半径R2が85mm以上115mm以下である試料1~4は、コラム強度が1800Nであり、プリーツや成形痕も認められず、成形性も良好であった。また、これら試料1~4において、凸屈曲部と凹湾曲部との接続部における凹湾曲部の接線の角度θを測定したところ、4°~6°の範囲であった。
これに対して、試料5は凸湾曲部の曲率半径R1、凹湾曲部の曲率半径R2のいずれも小さいため、コラム強度が低く、プリーツが認められた。試料6は凹湾曲部の曲率半径R2が大きいため、成形痕が認められた。試料7は凹湾曲部の曲率半径が小さいため、コラム強度が低く、プリーツが認められた。
【符号の説明】
【0034】
1 ボトル缶
11 底部
111 ドーム部
112 ヒール部
113 接地部
12 円筒状胴部
13 縮径部
131 凸湾曲部
132 凹湾曲部
14 口部
141 膨出部
142 雄ねじ部
143 カール部
15 首部
151 凸屈曲部
152 凹屈曲部
153 小径円筒部
図1
図2
図3