(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240116BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240116BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240116BHJP
G02B 7/198 20210101ALI20240116BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
B60R11/02 C
G02B7/198
(21)【出願番号】P 2019204071
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】原 圭成
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124331(WO,A1)
【文献】特開2019-078966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
G02B 27/01
G02B 27/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載されるように構成され、投影部(3a)に表示光を投影することにより虚像(VRI)を表示する虚像表示装置であって、
前記表示光を前記投影部へ向けて反射する反射鏡であって、回転軸(A1)のまわりに回動することにより、向きを変更可能に形成された可動鏡(40,240,440)と、
前記可動鏡に配置された連結点(OAC,IAC)に対して連結され、前記連結点に力を及ぼして、前記可動鏡を駆動させる駆動部(70,470)と、
前記可動鏡を前記回転軸のまわりに回動可能となるように支持する支持部(60)と、を備え、
前記可動鏡を、前記可動鏡の幾何中心(GC)を境界(BO)に含むように仮想的に二等分した部位であって、前記幾何中心より前記連結点側に位置する部位を、連結点側部位(CP)と定義し、前記幾何中心より前記連結点とは反対側に位置する部位を、反対側部位(OP)と定義すると、
前記連結点側部位の剛性は、前記反対側部位の剛性より高くされ、
前記回転軸の端部である回転軸端部(44R,44L)は、前記可動鏡の外部に突出するように一対形成され、
一対の前記回転軸端部は、前記支持部に対して固定された軸受部(62)とばね(63)との間に挟まれて、前記支持部に支持され
、
前記連結点は、前記可動鏡のうち前記回転軸の軸上に配置されている軸上連結点である虚像表示装置。
【請求項2】
前記可動鏡は、
前記表示光を反射する反射面(41a)と、
前記反射面の裏側に設けられ、前記反射面を保持する板状の保持板部(50,250)と、を有し、
前記保持板部は、前記連結点から前記保持板部の板面(50a)に沿うように延伸するリブ(51b,51k,251)を有する請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記リブ(51k)は、前記反対側部位での貫通が規制されるように、前記板面の途中で延伸を止めている請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記反対側部位は、前記連結点側部位よりも軽量化されている請求項1から3のいずれか1項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
車両(1)に搭載されるように構成され、投影部(3a)に表示光を投影することにより虚像(VRI)を表示する虚像表示装置であって、
前記表示光を前記投影部へ向けて反射する反射面(41a)を有する反射鏡であって、回転軸(A1)のまわりに回動することにより、向きを変更可能に形成された可動鏡(40,240,440)と、
前記可動鏡のうち前記反射面を挟む前記回転軸上の一対の支持点(SUP)を、前記可動鏡が前記回転軸のまわりに回動可能となるように両持ち支持する支持部(60)と、
前記可動鏡に配置された連結点(OAC,IAC)に対して連結され、前記連結点に力を及ぼして、前記可動鏡を駆動させる駆動部(70,470)と、を備え、
前記連結点は、前記一対の支持点の中点(MP)を通り、前記回転軸に垂直な仮想の垂直面(PP)に対し、前記一対の支持点のうち一方の支持点側に偏って配置され、
前記可動鏡において、前記垂直面よりも前記連結点側となる部位(RP)の剛性は、前記連結点とは前記垂直面を挟んだ反対側となる部位(LP)の剛性よりも高くされ、
前記回転軸の端部である回転軸端部(44R,44L)は、前記可動鏡の外部に突出するように一対形成され、
一対の前記回転軸端部は、前記支持部に対して固定された軸受部(62)とばね(63)との間に挟まれて、その位置を前記支持点とするように、前記支持部に支持されている虚像表示装置。
【請求項6】
前記可動鏡は、前記車両の振動に伴って共振する周波数が前記虚像の視認者が表示揺れを感知可能となる上限値である感知可能上限値よりも高くなるような、高共振周波数構造をなしている請求項1から5のいずれか1項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記連結点は、前記可動鏡のうち前記回転軸から離れた軸外に配置されている軸外連結点である請求項
5又は6に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記連結点は、前記可動鏡のうち前記回転軸の軸上に配置されている軸上連結点である請求項
5又は6に記載の虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、虚像の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるように構成され、投影部に表示光を投影することにより虚像を表示する虚像表示装置が知られている。特許文献1の装置は、表示光を投影部へ向けて反射する反射鏡であって、回転軸のまわりに回動することにより、向きを変更可能に形成された可動鏡を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の可動鏡は、全体に均一な剛性を有すると認められる。剛性によって可動鏡の共振を抑制する工夫が見られないため、可動鏡が車両の振動に伴って共振し、この共振により、視認者が虚像の表示揺れを感じてしまうことが懸念される。視認者に感知される表示揺れによって、虚像の視認性が悪化してしまう。
【0005】
この明細書の開示による目的のひとつは、視認者に虚像の表示揺れを感じさせ難くすることにより、虚像の高い視認性が実現された虚像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された態様のひとつは、車両(1)に搭載されるように構成され、投影部(3a)に表示光を投影することにより虚像(VRI)を表示する虚像表示装置であって、
表示光を投影部へ向けて反射する反射鏡であって、回転軸(A1)のまわりに回動することにより、向きを変更可能に形成された可動鏡(40,240,440)と、
可動鏡に配置された連結点(OAC,IAC)に対して連結され、連結点に力を及ぼして、可動鏡を駆動させる駆動部(70,470)と、
可動鏡を回転軸のまわりに回動可能となるように支持する支持部(60)と、を備え、
可動鏡を、当該可動鏡の幾何中心(GC)を境界(BO)に含むように仮想的に二等分した部位であって、幾何中心より連結点側に位置する部位を、連結点側部位(CP)と定義し、幾何中心より連結点とは反対側に位置する部位を、反対側部位(OP)と定義すると、
連結点側部位の剛性は、反対側部位の剛性より高くされ、
回転軸の端部である回転軸端部(44R,44L)は、可動鏡の外部に突出するように一対形成され、
一対の回転軸端部は、支持部に対して固定された軸受部(62)とばね(63)との間に挟まれて、支持部に支持され、
連結点は、可動鏡のうち回転軸の軸上に配置されている軸上連結点である。
【0007】
このような態様によると、可動鏡において、連結点側部位の剛性が反対側部位よりも高くされている。したがって、車両の振動が可動鏡に加わっても、駆動部に対して連結された連結点を実質的な固定点とした可動鏡の共振、又は当該共振に伴う可動鏡のねじれは、高い剛性によって、抑制される。すなわち、可動鏡が投影部へ向けて反射する表示光の光路が安定化されるので、表示光が投影部に投影されて結像することによる虚像の表示揺れも、抑制される。したがって、駆動部による駆動によって向きを変更可能に形成された可動鏡が虚像表示装置に採用されていても、視認者に虚像の表示揺れを感じさせ難くすることができる。以上により、虚像表示装置において虚像の高い視認性を実現することができる。
【0008】
ここに開示された態様の他のひとつは、車両(1)に搭載されるように構成され、投影部(3a)に表示光を投影することにより虚像(VRI)を表示する虚像表示装置であって、
表示光を投影部へ向けて反射する反射面(41a)を有する反射鏡であって、回転軸(A1)のまわりに回動することにより、向きを変更可能に形成された可動鏡(40,240,440)と、
可動鏡のうち反射面を挟む回転軸上の一対の支持点(SUP)を、可動鏡が回転軸のまわりに回動可能となるように両持ち支持する支持部(60)と、
可動鏡に配置された連結点(OAC,IAC)に対して連結され、連結点に力を及ぼして、可動鏡を駆動させる駆動部(70,470)と、を備え、
連結点は、一対の支持点の中点(MP)を通り、回転軸に垂直な仮想の垂直面(PP)に対し、一対の支持点のうち一方の支持点側に偏って配置され、
可動鏡において、垂直面よりも連結点側となる部位(RP)の剛性は、連結点とは垂直面を挟んだ反対側となる部位(LP)の剛性よりも高くされ、
回転軸の端部である回転軸端部(44R,44L)は、可動鏡の外部に突出するように一対形成され、
一対の回転軸端部は、支持部に対して固定された軸受部(62)とばね(63)との間に挟まれて、その位置を支持点とするように、支持部に支持されている。
【0009】
このような態様によると、支持部により、回転軸のまわりに回動可能に一対の支持点を両持ち支持された可動鏡に対して、当該可動鏡を駆動する駆動部と連結される連結点は、一対の支持点の中点を通り、回転軸に垂直な仮想の垂直面に対し、一方の支持点側に偏って配置される。こうした連結点の配置の偏りにより、部分的な剛性の増強を以って可動鏡の表示揺れの原因となる共振を抑制する態様を容易に実現することができる。
【0010】
具体的に、可動鏡において、垂直面よりも連結点側となる部位の剛性は、連結点とは反対側となる部位の剛性よりも高くされている。したがって、車両の振動が可動鏡に加わっても、駆動部に対して連結された連結点を実質的な固定点とした可動鏡の共振、又は当該共振に伴う可動鏡のねじれは、高い剛性によって、抑制される。すなわち、可動鏡が投影部へ向けて反射する表示光の光路が安定化されるので、表示光が投影部に投影されて結像することによる虚像の表示揺れも、抑制される。したがって、視認者に虚像の表示揺れを感じさせ難くすることができる。以上により、虚像表示装置において虚像の高い視認性を実現することができる。
【0011】
なお、括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】右側の回転軸端部及び軸受部等を拡大して示す斜視図である。
【
図8】可動鏡ユニットを示す背面図であって、連結点側部位及び反対側部位を示す図である。
【
図9】可動鏡ユニットを示す背面図であって、右側部位及び左側部位を示す図である。
【
図10】第2実施形態の可動鏡及び可動鏡駆動部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0014】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態による虚像表示装置は、
図1に示すように、車両1に搭載されるように構成され、当該車両1のインストルメントパネル2内に収容されているヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)100である。ここで車両とは、自動車、鉄道車両の他、航空機、船舶、移動しないゲーム筐体等の各種乗り物を含むように広義に解される。特に本実施形態の車両1は、四輪の自動車となっている。
【0015】
HUD100は、車両1のウインドシールド3に設定された投影部3aへ向けて画像の表示光を投影する。これによりHUD100は、車両1の乗員により視認可能な虚像VRIを表示する。すなわち、投影部3aにて反射される表示光が、車両1の室内に設定された視認領域EBに到達する。そして、インストルメントパネル2とは対向して配置される座席4に着座し、視認領域EBにアイポイントEPが位置する乗員は、当該表示光を虚像VRIとして知覚する。そして、乗員は、虚像VRIとして表示される各種情報を認識することができる。虚像表示される各種情報としては、例えば車速、燃料残量等の車両1の状態を示す情報、又は視界補助情報、道路情報等のナビゲーション情報が挙げられる。
【0016】
以下において、特に断り書きが無い限り、前、後、上、下、左及び右が示す各方向は、水平面HP上の車両1を基準として表記される。
【0017】
車両1のウインドシールド3は、例えばガラスないし合成樹脂により透光性の板状に形成され、インストルメントパネル2よりも上方に配置されている。ウインドシールド3は、前方から後方へ向かう程、インストルメントパネル2に対して離れるように傾斜して配置されている。ウインドシールド3は、画像の表示光が投影される投影部3aを、滑らかな凹面状又は平面状に形成している。なお、投影部3aは、ウインドシールド3に設けられていなくてもよい。例えば車両1と別体となっているコンバイナを車両1内に設置して、当該コンバイナに投影部3aが設けられていてもよい。
【0018】
視認領域EBは、HUD100により表示される虚像VRIが所定の規格を満たすように(例えば虚像VRI全体が所定の輝度以上となるように)視認可能となる空間領域であって、アイボックスとも称される。視認領域EBは、典型的には、車両1に設定されたアイリプスと重なるように設定される。アイリプスは、乗員のアイポイントEPの空間分布を統計的に表したアイレンジに基づいて、仮想の楕円体状に設定されている。
【0019】
このようなHUD100の具体的構成を、
図2も用いて、以下に説明する。
図2,3に示すように、HUD100は、ハウジング10、表示器20、固定鏡30、可動鏡40、可動鏡支持部60、可動鏡駆動部70、及び制御ユニット80等を含む構成である。このうち、可動鏡40、可動鏡支持部60、及び可動鏡駆動部70等により、可動鏡ユニットが構成されている。
【0020】
ハウジング10は、HUD100の他の要素を収容する中空箱状を呈しており、車両1のインストルメントパネル2内に設置されている。ハウジング10は、投影部3aと対向する上方に、窓部11(
図1参照)を有している。窓部11は、物理的に開口していてもよく、表示光を透過可能な防塵シートで覆われていてもよい。
【0021】
表示器20は、例えば透過型の液晶式の表示器である。表示器20は、液晶パネル及びバックライトをケーシングに収容して形成されている。表示器20は、バックライトにより液晶パネルの画面21を透過照明することで、表示に寄与する表示光を投射するようになっている。なお、表示器20として、反射型の液晶式の表示器、自発光するマイクロLEDを配列したマイクロLED式の表示器、レーザスキャナ方式の表示器、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing;登録商標)方式の表示器等を採用することもできる。表示器20における画面21は、例えばおよそ上方を向き、表示光が上方へ向けて発せられる。
【0022】
固定鏡30及び可動鏡40は、表示器20から発せられた表示光を、投影部3aへと反射する反射鏡である。固定鏡30は、例えば合成樹脂ないしガラスにより、矩形板状に形成されている。固定鏡30は、その表面にアルミニウム等の金属膜を蒸着させること等により形成された反射面31を有している。固定鏡30としては、反射面31が滑らかな平面状に形成された平面鏡、又は反射面31が滑らかな凸面状に形成された凸面鏡等が採用され得る。固定鏡30は、表示器20に対しておよそ上方に位置し、その反射面31は、前方かつ下方の斜め方向を向いている。表示器20から固定鏡30に入射した表示光は、反射面31により可動鏡40へ向けて反射される。
【0023】
図3に示す可動鏡40は、反射体41及びホルダ42等を含む構成である。反射体41は、例えば合成樹脂ないしガラスにより、矩形板状に形成されている。反射体41は、その表面にアルミニウム等の金属膜を蒸着させること等により形成された反射面41aを有している。可動鏡40としては、例えば反射面41aが滑らかな凹面状に形成された凹面鏡が採用され得る。可動鏡40は、表示器20及び固定鏡30に対しておよそ前方に位置し、その反射面41aは、後方かつ上方の斜め方向を向いている。
【0024】
固定鏡30から可動鏡40に入射した表示光は、反射面41aにより上方の投影部3aへ向けて反射される。中央部が凹む凹面状の反射面41aでの反射によって、虚像VRIを拡大することが可能となる。さらには、反射面41aが自由曲面状に形成されることで、拡大された虚像VRIの歪みを低減することができる。
【0025】
こうして可動鏡40の反射面41aに反射された表示光は、窓部11を透過することで、HUD100の外部へ射出され、ウインドシールド3の投影部3aに入射する。投影部3aに反射された表示光が乗員のアイポイントEPに到達すると、当該乗員は虚像VRIを視認可能となるのである。
【0026】
ホルダ42は、反射体41を保持及び保護している。
図4に示すように、ホルダ42は、例えば合成樹脂ないし金属により形成され、保持枠部43、保持板部50、一対の回転軸端部44R,44L、及び駆動伝達部48を有する。このうち保持板部50、回転軸端部44R,44L及び駆動伝達部48は、一体成形された一部品として設けられ、ビス56によって保持枠部43と締結されている。
【0027】
保持枠部43は、反射面41aを可動鏡40の外部に露出させるように、反射体41の外周部を全周囲む矩形枠状に形成されている。保持板部50は、反射面41aの露出する向きをおもて側の向きとした反射体41の裏側において、反射体41とは介挿部材55を挟むように配置され、反射体41を背面から補強する矩形板状に形成されている。
【0028】
回転軸端部44R,44Lは、保持枠部43及び保持板部50の左右の側面から可動鏡40の外部に突出するように、一対形成されている。一対の回転軸端部44R,44Lは、反射面41aを挟む左右の両側に設けられている。一対の回転軸端部44R,44Lがそれぞれ可動鏡支持部60に支持される。すなわち可動鏡40が一対の回転軸端部44R,44Lが配置された位置を支持点S∪Pとして両持ち支持されることで、可動鏡40は回転軸A1のまわりに回動可能となっている。これにより可動鏡40は、反射面41aの向きを変更可能に形成されている。一対の回転軸端部44R,44L間を結ぶように、可動鏡40の回転中心をなす回転軸A1が構成されている。
【0029】
図2に示すように、反射面41aがより上向きになる(すなわち可動鏡40が寝る)と、投影部3aにおける投影位置がより前方へずれ、虚像VRIの表示位置が上方へ移動する。これと共に、視認領域EBの位置は下方へ移動する。一方、反射面41aがより下向きになる(すなわち可動鏡40が起立する)と、投影部3aにおける投影位置がより後方へずれ、虚像VRIの表示位置が下方へ移動する。これと共に、視認領域EBの位置は上方へ移動する。したがって、可動鏡40の向きの変更に伴って、虚像VRIの空間的表示条件が変更されるようになっている。
【0030】
図5に拡大して示される右側の回転軸端部44Rは、全円柱部45、部分円柱部46、及び球状部47を一体的に形成した突起状をなしている。全円柱部45は、回転軸端部44Rにおいて保持枠部43と接続されるように、回転軸A1に母線を沿わせた円柱状に形成されている。全円柱部45の外周には、ねじりコイルばね57が配置されている。ねじりコイルばね57の一端が可動鏡支持部60に接続され、他端が保持板部50に接続されている。ねじりコイルばね57は、可動鏡駆動部70による可動鏡40の駆動を妨害しない程度の弾性力によって、回動方向に可動鏡40を付勢することで、車両1の振動の影響等による回動方向の可動鏡40のがたつきを、抑制する。
【0031】
部分円柱部46は、全円柱部45を挟んで保持枠部43及び保持板部50とは反対側において、全円柱部45の上側部位だけを部分的に延長するように延伸した部分円柱状に形成されている。部分円柱部46において上側には、滑らかな凸状の部分円柱面46aが形成されている。部分円柱部46において下側には、球状部47が接続されている。
【0032】
球状部47は、上側を部分円柱部46に接続されるとともに、下側に滑らかな凸球状面47aを有する球状に形成されている。球状部47は、可動鏡支持部60に支持されている。
【0033】
可動鏡支持部60は、ハウジング10に対して固定されると共に、可動鏡40を支持している。可動鏡支持部60は、軸受部62及び圧縮コイルばね63を収容した支持ユニット61R,61Lを、各回転軸端部44R,44Lに個別に対応するように一対有した構成である。
【0034】
図5に示すように、軸受部62は、回転軸端部44Rの球状部47を軸受する。軸受部62は、上側を向き、凸球状面47aにフィットする形状の凹球状面62aを有している。球状部47の凸球状面47aと軸受部62の凹球状面62aとが当接することで、可動鏡40は、回転軸A1のまわりに回動可能となると共に、回転軸A1に沿った方向への変位が抑制されるように位置決めされる。
【0035】
圧縮コイルばね63は、回転軸端部44Rを挟んで軸受部62とは反対側(すなわち回転軸端部44Rより上方)に配置され、上端を支持ユニット61Rに対して固定されるとともに、下端を部分円柱面46aと接触させている。これにより、球状部47及び部分円柱部46は、軸受部62と圧縮コイルばね63との間に挟まれた配置となる。圧縮コイルばね63は、その弾性力によって回転軸端部44Rを軸受部62側へ付勢することで、車両1の振動の影響等により可動鏡40がハウジング10に対して浮いてしまうことを、抑制する。
【0036】
詳細を図示しないが、左側の回転軸端部44Lも同様に、可動鏡支持部60の軸受部と圧縮コイルばねとの間に挟まれて、支持される。ただし、左側の回転軸端部44Lは全体を円柱状に形成されており、支持ユニット61Lに収容された軸受部もこれに対応した凹状の部分円柱面46aによって回転軸端部44Lを軸受している。回転軸端部44Lは、回転軸A1に沿った方向への位置決め機能を有していないため、当該方向における可動鏡40、可動鏡支持部60及びハウジング10の製造上の寸法誤差を吸収可能な構造となっている。
【0037】
図3,4に示す駆動伝達部48は、可動鏡駆動部70からの外力(例えば引張力)を、回転軸A1のまわりの回動方向への力に変換して、可動鏡40に伝達する。駆動伝達部48は、保持枠部43及び保持板部50のうち回転軸端部44Rが形成された右側側面のうち、回転軸A1から下方に離れた軸外の位置(この位置を軸外連結点OACと称する)から回転軸A1と実質平行な方向に突出する円柱状に形成されている。円柱状の駆動伝達部48の中心軸に実質的に一致して、回転軸A1に実質平行なサブ軸A2が設定されている。
図6に拡大断面を示すように、駆動伝達部48には、延伸溝48aが設けられている。延伸溝48aは、駆動伝達部48の円柱面からサブ軸A2を基準とした径方向内側へ凹むように、サブ軸A2のまわりに湾曲しつつ延伸したV字状に設けられている。
【0038】
こうした可動鏡40に対して、可動鏡駆動部70は、当該可動鏡40の向きを変更するための外力を及ぼす。可動鏡40の向きは、可動鏡駆動部70が外力を及ぼしていない場合、可動鏡40に設けられたねじりコイルばね57の弾性力による可動鏡40の回動方向の付勢により規定される。可動鏡40の向きは、可動鏡駆動部70が外力を及ぼしている場合、当該外力とねじりコイルばね57の弾性力とが釣り合う位置に規定される。
【0039】
可動鏡駆動部70は、電動モータ71、運動変換機構72、及び連結アーム73等を含む構成である。電動モータ71は、例えばステッピングモータであり、制御ユニット80から入力された電気信号に応じて、モータ軸を所定の回転量だけ回転させる。運動変換機構72は、モータ軸の回転運動を、往復直線運動に変換する。
【0040】
連結アーム73は、例えば合成樹脂により形成され、運動変換機構72と可動鏡40の駆動伝達部48とを連結する棒状に形成されている。
図7に示すように、連結アーム73において駆動伝達部48側には、二股に分岐する分岐部74が形成されている。分岐部74によって分岐された一対の先端部には、それぞれ球状の接触体75a,75bが設けられている。この接触体75a,75bが、駆動伝達部48を挟むように延伸溝48aに嵌まり込んでいる。可動鏡駆動部70は、連結アーム73を用いて、軸外連結点OACに連結された態様をなしている。
【0041】
電動モータ71が、モータ軸の回転運動を直線運動に変換した移動量分、連結アーム73を引っ張る。これと連動して、一対の接触体75a,75bが駆動伝達部48を挟み込んだ状態で、延伸溝48a上をサブ軸A2のまわりに滑らかに摺動しながら、駆動伝達部48全体を引っ張る。駆動伝達部48が連結アーム73側に引き寄せられ、可動鏡40が回転軸A1のまわりに回動する。こうした連結態様では、連結アーム73の取り付け角度がサブ軸A2に対する垂直角度に対して誤差を生じていても、可動鏡40は円滑に駆動させられる。
【0042】
制御ユニット80は、
図2に示すように、調整スイッチ81及び制御回路部82等を含む構成である。調整スイッチ81は、ハウジング10の外部の、例えば車両1のステアリングハンドル等に設置され、乗員により操作可能となっている。調整スイッチ81は、例えばプッシュ式の2種類の操作部材81a,81bを有している。具体的に、アップ操作部材81aは、虚像VRIの表示位置を上方に移動させるための操作部材である。ダウン操作部材81bは、虚像VRIの表示位置を下方に移動させるための操作部材である。制御回路部82は、操作部材81a,81bが操作されることに応じて調整スイッチ81から入力された電気信号に基づいて、電動モータ71に電気信号を出力し、モータ軸を回動させる。
【0043】
以下、可動鏡40のホルダ42における保持板部50について、
図8を用いて詳細に説明する。保持板部50は、その板面50aに沿うように延伸する複数のリブ51a,51b,51c,51d,51e,51f,51g,51h,51i,51j,51kを有している。こうした複数のリブ51a~51kの配置により、可動鏡40の剛性の分布及び質量の分布がコントロールされている。ここでいう剛性とは、特に、曲げ剛性及びねじり剛性である。
【0044】
剛性の分布及び質量の分布がコントロールされることによって、可動鏡40は、全体として、高共振周波数構造をなしている。本実施形態における高共振周波数構造とは、車両1の振動に伴って可動鏡40が共振する周波数が、虚像VRIの視認者としての乗員が表示揺れを感知可能となる上限値である感知可能上限値よりも高くなるような構造を、意味する。例えば、可動鏡40が共振する周波数(1秒当たりの振動回数)が80Hzよりも高ければ、乗員が表示揺れを感知することは実質的にないと言え、本実施形態の可動鏡40も共振の周波数が80Hzより高くなるように設定されている。
【0045】
以下のリブ51a~kの配置の説明のために、ここで、連結点側部位CP及び反対側部位OPを定義する。連結点側部位CP及び反対側部位OPは、可動鏡40の幾何中心GCを境界BOに含むように仮想的に二等分した部位として定義される。この仮想の境界BOは、軸外連結点OACからの垂線が幾何中心GCで交わるような平面として定義することができる。連結点側部位CPは、二等分された部位のうち、境界BOより軸外連結点OAC側に位置する部位として定義される。反対側部位OPは、二等分された部位のうち、境界BOより軸外連結点OACとは反対側に位置する部位として定義される。
【0046】
本実施形態では軸外連結点OACが保持板部50の右下隅部に存在するため、境界BOは、可動鏡40の板面50aを回転軸A1に対する斜め方向に分断するような、右上方から左下方へ向かう方向に沿って設定され得る。こうした二等分の態様では、右側の回転軸端部44Rが連結点側部位CPに含まれ、左側の回転軸端部44Lが反対側部位OPに含まれる。
【0047】
リブ51aは、両回転軸端部44R,44Lを結ぶように、回転軸A1と実質平行に延伸している。リブ51aは、板面50aを連結点側部位CPと反対側部位OPに渡って略貫通するように配置されている。リブ51bは、軸外連結点OACから回転軸A1と実質平行に延伸している。ここでいう「軸外連結点OACから延伸している」とは、軸外連結点OACを正確に起点として延伸している状態のみならず、軸外連結点OACの近傍を起点としている状態をも含む意味である。実際に本実施形態でも、リブ51bは、軸外連結点OACの近傍を起点として延伸している。リブ51bを延伸溝48a、ビス56等と干渉させずに配置する必要があるからである。リブ51bは、板面50aを略貫通するように配置されている。
【0048】
リブ51cは、リブ51bとはリブ51aを対称線として挟んだ対称位置に配置され、回転軸A1と実質平行に延伸している。リブ51cは、板面50aを略貫通するように配置されている。
【0049】
リブ51d,51e,51f,51gは、リブ51aと共に、右側の回転軸端部44Rから放射状に延伸するリブである。リブ51dは、回転軸端部44Rから左上方となる斜め方向に延伸している。リブ51dは、板面50aの連結点側部位CPの途中における中止地点SP1にて、延伸を止めている。リブ51eは、回転軸端部44Rから左下方となる斜め方向に延伸している。リブ51eは、板面50aの途中、詳細には中止地点SP1とはリブ51aを対称線として挟んだ線対称位置である中止地点SP2にて、延伸を止めている。
【0050】
リブ51fは、回転軸端部44Rから左上方となる斜め方向に、より詳細にはリブ51aとなす角度がリブ51dの場合の倍角程度となる斜め方向に、延伸している。リブ51fは、リブ51cの端部近傍にて、延伸を止めている。リブ51gは、回転軸端部44Rから左下方となる斜め方向に、より詳細にはリブ51aとなす角度がリブ51eの場合の倍角程度となる斜め方向に、延伸している。リブ51gは、リブ51bの端部近傍にて、延伸を止めている。
【0051】
リブ51h,51iは、リブ51aと共に、左側の回転軸端部44Lから放射状に延伸するリブである。リブ51hは、回転軸端部44Lから右上方となる斜め方向に、中止地点SP1に向かって延伸している。リブ51hは、連結点側部位CPまで侵入し、中止地点SP1にて、延伸を止めている。リブ51iは、回転軸端部44Lから右下方となる斜め方向に、中止地点SP2に向かって延伸している。リブ51jは、連結点側部位CPまで侵入し、中止地点SP2にて、延伸を止めている。
【0052】
リブ51jは、リブ51cと共に、リブ51cの右側端部から放射状に延伸するリブである。リブ51jは、リブ51jの右側端部から左下方となる斜め方向に延伸している。リブ51jは、反対側部位OPまで侵入し、リブ51iと交差する中止地点SP3にて、延伸を止めている。なお、リブ51jは、他のリブ51a,51d,51kと干渉する都合上、若干屈曲する部分を有している。
【0053】
リブ51kは、リブ51bと共に、軸外連結点OACから放射状に延伸するリブである。リブ51kは、軸外連結点OACから左上方となる斜め方向に延伸している。リブ51kは、リブ51bと同様に、延伸溝48a、ビス56等との干渉を避けて配置されている。リブ51kは、反対側部位OPまで侵入し、詳細にはリブ51hと交差する中止地点SP4にて、延伸を止めている。すなわちリブ51kは、連結点側部位CPから反対側部位OPへ向かって延伸するリブではあるものの、反対側部位OPにおける保持板部50の左側部までの貫通が規制されるように、板面50aの途中で延伸を止めた形状となっている。なお、リブ51kは、他のリブ51a,51e,51jと干渉する都合上、若干屈曲する部分を有している。したがって、本実施形態の保持板部50は、複数のリブ51b,51kが軸外連結点OACから放射状に延伸する態様となっている。
【0054】
なお、
図8において、リブ51j,51kの配置を明確に示すべく、リブ51j,51kに斜線のハッチングが施されている。
【0055】
こうして、特にリブ51j,51kの存在により、連結点側部位CPでのリブの配置密度は、反対側部位OPでのリブの配置密度よりも高くなっている。したがって、連結点側部位CPの剛性は、反対側部位OPの剛性よりも高くなっている。また、可動鏡40の重心は、幾何中心GCよりも連結点側部位CP側に寄っている。換言すると、反対側部位OPは、連結点側部位CPよりも軽量化されている。
【0056】
こうしたリブ51a~kが形成された保持板部50を有する可動鏡40に、車両1の振動が加わった場合、可動鏡支持部60により支持される両回転軸端部44R,44Lだけでなく、可動鏡駆動部70に対して連結され、軸外連結点OACが規定されている駆動伝達部48も、実質的な固定点として機能した状態で、振動の影響を受ける。
【0057】
こうした振動の影響を受ける場合に、実質的な固定点としての軸外連結点OACに近い連結点側部位CPの剛性が高くなっていることで、車両1の振動に伴う共振自体を抑制することができ、共振の周波数も高めることができる。そして、軸外連結点OACから回転軸A1とは異なる対角方向に延伸するリブ51kによって、可動鏡40に複雑なねじれが生じることを抑制することができる。
【0058】
また、軸外連結点OACとは離れた反対側部位OPが軽量化されることによって、軸外連結点OACを中心とするような共振が、反対側部位OPによって増幅されること、又はこれに伴ってねじれが生じることを抑制することができる。
【0059】
可動鏡40の固有振動数Fn[Hz]は、Fn=1/2π・√(k/m)のように表される。ここでk[N/m]は可動鏡40のばね定数である。m[kg]は可動鏡40の質量である。反対側部位OPが軽量化されることによって、可動鏡40全体の質量mが小さくなるため、固有振動数Fnが高くなる。
【0060】
本実施形態では、可動鏡40全体の剛性を高めるための高コスト化を抑制しつつ、軸外連結点OACを固定点とした可動鏡40の共振を効率的に除去することが可能となっている。可動鏡40全体の剛性を高めるための高コスト化とは、例えば保持板部50全体に十分に高い剛性の材料を採用することによる材料コストの上昇、保持板部50全体を厚くすることによる材料コストの上昇等である。
【0061】
以上では、可動鏡40を連結点側部位CPと反対側部位OPとに仮想的に分割して説明したが、本実施形態の可動鏡40は、
図9を用いて以下のような左右非対称構造として説明することもできる。
【0062】
可動鏡40において、回転軸A1が支持される両回転軸端部44R,44Lの中点MPを通り、かつ、回転軸A1に垂直な仮想の垂直面PPを定義することができる。可動鏡40に設けられた軸外連結点OACは、この垂直面PPに対して、一方の回転軸端部側(本実施形態では回転軸端部44R側)に偏った位置に設けられている。そうすると、可動鏡40は、垂直面PPよりも回転軸端部44R及び軸外連結点OAC側となる右側部位RPと、垂直面PPよりも回転軸端部44L側であって、軸外連結点OACとは垂直面PPを挟んだ反対側となる左側部位LPとに、仮想的に分割できる。そして、右側部位RPのリブの配置密度は、左側部位LPのリブの配置密度よりも高くなっている。右側部位RPの剛性は、左側部位LPの剛性よりも高くなっている。また、可動鏡40の重心は、中点MPより右側部位RPに寄っている。換言すると、左側部位LPは、右側部位RPよりも軽量化されている。
【0063】
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に改めて説明する。
【0064】
第1実施形態によると、可動鏡40において、連結点側部位CPの剛性が反対側部位OPよりも高くされている。したがって、車両1の振動が可動鏡40に加わっても、可動鏡駆動部70に対して連結された軸外連結点OACを実質的な固定点とした可動鏡40の共振、又は当該共振に伴う可動鏡40のねじれは、高い剛性によって、抑制される。すなわち、可動鏡40が投影部3aへ向けて反射する表示光の光路が安定化されるので、表示光が投影部3aに投影されて結像することによる虚像VRIの表示揺れも、抑制される。したがって、可動鏡駆動部70による駆動によって向きを変更可能に形成された可動鏡40がHUD10に採用されていても、視認者に虚像VRIの表示揺れを感じさせ難くすることができる。以上により、HUD10において虚像VRIの高い視認性を実現することができる。
【0065】
また、第1実施形態によると、反射面41aの裏側に設けられ、反射面41aを保持する板状の保持板部50は、軸外連結点OACから保持板部50の板面50aに沿うように延伸するリブ51b,51kを有する。こうしたリブ51b,51kの配置により、連結点側部位CPの剛性が高まり、軸外連結点OACを実質的な固定点とした可動鏡40の共振に伴う可動鏡40のねじれは、容易に抑制可能となる。したがって、虚像VRIの表示揺れの抑制効果を高めることができる。
【0066】
また、第1実施形態によると、リブ51kは、反対側部位OPでの保持板部50の貫通が規制されるように、板面50aの途中で延伸を止めている。リブの延伸中止形状により、連結点側部位CPの剛性を高めることと、可動鏡40の軽量化を図ることとが両立できる。したがって、可動鏡40が共振する周波数が高くなり、視認者が表示揺れを感じ難くなる。
【0067】
また、第1実施形態によると、反対側部位OPは、連結点側部位CPよりも軽量化されている。軸外連結点OACを実質的な固定点とした共振を抑制する上で、剛性が連結点側部位CP程必要ない反対側部位OPが軽量化されることで、可動鏡40全体が軽量化される。したがって、可動鏡40が共振する周波数が高くなり、視認者が表示揺れを感じ難くなる。
【0068】
また、第1実施形態によると、可動鏡支持部60により、回転軸A1のまわりに回動可能に一対の支持点SUPを両持ち支持された可動鏡40に対して、当該可動鏡40を駆動する可動鏡駆動部70と連結される軸外連結点OACは、一対の支持点SUPの中点MPを通り、回転軸A1に垂直な仮想の垂直面PPに対し、一方の支持点SUP側に偏って配置される。こうした軸外連結点OACの配置の偏りにより、部分的な剛性の増強を以って可動鏡40の表示揺れの原因となる共振を抑制する態様を容易に実現することができる。
【0069】
具体的に、可動鏡40において、垂直面PPよりも軸外連結点OAC側となる右側部位RPの剛性は、軸外連結点OACとは反対側となる左側部位LPの剛性よりも高くされている。したがって、車両1の振動が可動鏡40に加わっても、可動鏡駆動部70に対して連結された軸外連結点OACを実質的な固定点とした可動鏡40の共振、又は当該共振に伴う可動鏡40のねじれは、高い剛性によって、抑制される。すなわち、可動鏡40が投影部3aへ向けて反射する表示光の光路が安定化されるので、表示光が投影部3aに投影されて結像することによる虚像VRIの表示揺れも、抑制される。したがって、視認者に虚像VRIの表示揺れを感じさせ難くすることができる。以上により、HUD10において虚像VRIの高い視認性を実現することができる。
【0070】
また、第1実施形態によると、可動鏡40は、車両1の振動に伴って共振する周波数が虚像VRIの視認者が表示揺れを感知可能となる上限値である感知可能上限値よりも高くなるような、高共振周波数構造をなしている。共振を原因とした虚像VRIの表示揺れは、視認者にとって感知困難なものとなるため、虚像VRIの視認性を高めることができる。
【0071】
(第2実施形態)
図10に示すように、第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0072】
第2実施形態の可動鏡440には、駆動伝達部が設けられていない。可動鏡440と可動鏡駆動部470とは、回転軸端部44Rに設定されて回転軸A1の軸上に配置された軸上連結点IACを介して連結されている。第2実施形態では、可動鏡駆動部470が回転軸A1に直結され、回転軸A1を直接的に回動するようになっている。第2実施形態では、軸上連結点IACに基づき定義される境界BOと、垂直面PPとが実質的に一致している。
【0073】
第2実施形態の可動鏡駆動部470は、電動モータ及び減速ギヤ機構を、ケーシングに収容して形成されている。電動モータは、例えばステッピングモータであり、制御ユニット80から入力された電気信号に応じて、モータ軸を所定の回転量だけ回転させる。減速ギヤ機構は、複数の伝達ギヤを直列に噛合させてなる。減速ギヤ機構は、モータ軸の回転を減速して回転軸A1に伝達する。
【0074】
第2実施形態の可動鏡440において保持板部450は、その板面50aに沿うように延伸する複数のリブ451を有している。こうした複数のリブ451の配置により、可動鏡330の剛性の分布及び質量の分布がコントロールされている。第2実施形態の可動鏡330も、全体として、高共振周波数構造をなしている。
【0075】
複数のリブ451は、軸上連結点IACから放射状に延伸するリブとなっている。第1実施形態と同様に、連結点側部位CPでのリブ451の配置密度は、反対側部位OPでのリブ451の配置密度よりも高くなっている。したがって、連結点側部位CPの剛性は、反対側部位OPの剛性よりも高くなっている。また、可動鏡440の重心は、幾何中心GCよりも連結点側部位CP側に寄っている。換言すると、反対側部位OPは、連結点側部位CPよりも軽量化されている。
【0076】
右側部位RPのリブ451の配置密度は、左側部位LPのリブ451の配置密度よりも高くなっている。右側部位RPの剛性は、左側部位LPの剛性よりも高くなっている。また、可動鏡440の重心は、中点MPより右側部位RPに寄っている。換言すると、左側部位LPは、右側部位RPよりも軽量化されている。
【0077】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0078】
具体的に変形例1としては、連結点側部位CP又は右側部位RPの剛性を高めるための補強は、リブ51a~k以外によって実現されてもよい。例えば、連結点側部位CP又は右側部位RPにおける保持板部50の厚さは、反対側部位OP又は左側部位LPの厚さよりも厚なっていてもよい。また例えば、保持板部50は、高い剛性の素材により形成された連結点側部位CP又は右側部位RPと、低い剛性の素材により形成された反対側部位OP又は左側部位LPとを、接合した構成であってもよい。
【0079】
変形例2としては、軸外連結点OACを介した可動鏡40と可動鏡駆動部70との結合態様として、種々の構成を採用することが可能である。例えば、可動鏡40と可動鏡駆動部70とは、ギヤ、チェーン等を用いて結合されていてもよい。
【0080】
変形例3としては、回転軸A1は、全体が実体物として視認されるように柱状等に形成されていてもよく、実体物として視認不能であるが可動鏡40の動きから回転中心として認識されるものであってもよい。
【0081】
変形例4としては、ねじりコイルばね57の代わりに、ハウジング10又は可動鏡支持部60から可動鏡40を引っ張る引張ばねによって、可動鏡40の回動方向への付勢が実現されてもよい。
【0082】
変形例5としては、制御ユニット80は、調整スイッチ81の操作に代えて、車両1に設置されたカメラ等で乗員のアイポイントEPを検出し、当該検出結果に基づいて、当該アイポイントEPから虚像VRIが視認可能となるように、可動鏡駆動部70を駆動させてもよい。
【0083】
第1実施形態に関する変形例6としては、可動鏡40の軸外連結点OACは、垂直面PP上に配置されていてもよい。
図11の例では、保持板部250の下縁部に軸外連結点OACが配置されている。複数のリブ251は、当該軸外連結点OACから放射状に延伸している。こうした構成において、境界BOは、幾何中心GCを含み、かつ、回転軸A1と平行に定義可能である。そして、連結点側部位CPの剛性は、反対側部位OPの剛性よりも高くされている。
【0084】
変形例7としては、第1,2実施形態に準じた高共振周波数構造は、連結点OAC,IAC介して可動鏡駆動部70,470と連結された可動鏡40,240のみならず、固定鏡340等、ハウジング10に対して固定される固定部品に採用されてもよい。
図12の例では、固定鏡340は、外周部分の3点の固定点FIXを、ハウジング10に対してビスにより締結されている。そして、保持板部350には、各固定点FIX同士を結ぶように、リブ351が網目の如く複数設けられている。
【0085】
変形例8としては、
図5に示す回転軸端部44Rの支持構造、及び回転軸端部44Lの支持構造は、高共振周波数構造の有無及び軸外連結点OACの有無に関わらず、単独で採用されてもよい。こうした支持構造が単独で採用された虚像表示装置においても、車両1の振動の影響等により可動鏡40がハウジング10に対して浮いてしまうことを抑制する効果、回転軸A1に沿った方向における可動鏡40、可動鏡支持部60及びハウジング10の製造上の寸法誤差を吸収可能となる効果等を奏する。
【符号の説明】
【0086】
1:車両、3a:投影部、40,240,440:可動鏡、41a:反射面、60:可動鏡支持部(支持部)、70,470:可動鏡駆動部(駆動部)、A1:回転軸、BO:境界、CP:連結点側部位、GC:幾何中心、LP:左側部位、MP:中点、OAC,IAC:連結点、OP:反対側部位、PP:垂直面、RP:右側部位、SUP:支持点、VRI:虚像