(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】画像形成装置および冷却方法
(51)【国際特許分類】
B41J 11/04 20060101AFI20240116BHJP
B65H 5/22 20060101ALI20240116BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B41J11/04
B65H5/22 B
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2019221122
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 良一
(72)【発明者】
【氏名】外園 豊
(72)【発明者】
【氏名】切石 皓大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健悟
(72)【発明者】
【氏名】宮本 不二夫
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-062988(JP,A)
【文献】特開2004-198863(JP,A)
【文献】特開2014-100891(JP,A)
【文献】特開2017-007308(JP,A)
【文献】特開2019-073027(JP,A)
【文献】特開2013-028016(JP,A)
【文献】特開平10-175341(JP,A)
【文献】特開2013-116638(JP,A)
【文献】特開2013-241272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00- 11/70
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12- 29/24
B65H 29/32
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
前記チャンバーに前記冷却エアーを供給する冷却エアー供給部と、
を備え
、
前記冷却エアー供給部は、前記載置面に対向して配置され、前記冷却エアーを前記チャンバーから前記流路に流れるように供給する、
画像形成装置。
【請求項2】
前記切替部は、
前記チャンバーが前記搬送回転体の第1の回転位置
に位置する場合、前記開口を前記吸引部に接続して、
当該チャンバーからエアーを吸引させ、
前記チャンバーが前記搬送回転体の第2の回転位置
に位置する場合、前記開口を通じて
当該チャンバーに前記冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の回転位置は、前記載置面に吸着されている前記記録媒体に画像が形成される領域を含み、
前記第2の回転位置は、前記記録媒体が前記載置面に吸着されなくなる非吸引領域に対応する、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記流路に流れる前記冷却エアーを吸引する冷却エアー吸引部を備える、
請求項
1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記冷却エアー供給部は、エアーを送風する送風部を備え、
前記送風部の風量を制御する制御部を有する、
請求項
1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記冷却エアー供給部は、温度調整部を備え、
前記温度調整部の温度を制御する制御部を有する、
請求項
1から5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記搬送回転体の温度が設定温度となるように、前記搬送回転体を加熱する加熱部を備える、
請求項
1から6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記設定温度は、前記記録媒体の種類に応じて異なる、
請求項
7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の温度が設定温度となるように、前記搬送回転体を加熱する加熱部と、
を備え、
前記設定温度は、前記記録媒体の種類に応じて異なる、
画像形成装置。
【請求項10】
前記記録媒体にエネルギー線硬化性を有するインクを吐出して画像を形成する画像形成部と、
前記記録媒体に吐出された前記インクにエネルギー線を照射するエネルギー線照射部と、を備える、
請求項
1から9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記チャンバーは、前記搬送回転体の周方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記流路を構成する管に連結されている、
請求項
1から10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記チャンバーは、前記搬送回転体の回転軸方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記流路を構成する管に連結されている、
請求項
1から10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記チャンバーは、前記搬送回転体の回転軸方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記流路を構成する管に連結されている、
画像形成装置。
【請求項14】
前記載置面に吸着されている前記記録媒体に対応する前記チャンバーからエアーを吸引する制御を行う制御部を有する、
請求項
11から13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記流路を構成する管には、対応する前記チャンバーへの流路の開度を調節する弁が設けられており、
前記制御部は、前記弁の開閉を切り替えることにより、前記載置面に吸着されている前記記録媒体に対応する前記チャンバーからエアーを吸引する制御を行う、
請求項
14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記記録媒体が載置された領域に対応する複数の前記チャンバーにおいて、搬送方向の先端側の前記チャンバーで前記冷却エアーが流通されるように切り替えられた際に、搬送方向の後端側の前記チャンバーでは前記吸引部によってエアーが吸引されている、
請求項
11に記載の画像形成装置。
【請求項17】
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記チャンバーは、前記搬送回転体の周方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記流路を構成する管に連結されており、
前記記録媒体が載置された領域に対応する複数の前記チャンバーにおいて、搬送方向の先端側の前記チャンバーで前記冷却エアーが流通されるように切り替えられた際に、搬送方向の後端側の前記チャンバーでは前記吸引部によってエアーが吸引されている、
画像形成装置。
【請求項18】
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記チャンバーに前記冷却エアーを供給する冷却エアー供給部と、
前記搬送回転体によって搬送されている前記記録媒体または前記搬送回転体の温度を測定する温度測定部と、
測定された温度に応じて前記冷却エアー供給部による冷却動作の制御を行う制御部と、
を備える請求項
1から17のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記温度測定部は、前記記録媒体の搬送方向における画像形成部の上流側の前記記録媒体または搬送回転体の温度を測定する、
請求項18に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記搬送回転体の外周の長さは、同時に複数の前記記録媒体を搬送できる長さである、
請求項1から19のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記記録媒体の搬送方向における画像形成部の上流側で前記記録媒体の表裏を反転させて前記搬送回転体に供給する反転部を備える、
請求項1から20のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記搬送回転体によって前記記録媒体を搬送していない場合、前記搬送回転体の温度を測定する温度測定部の測定結果に応じて、前記搬送回転体に配置された全てのチャンバーに前記冷却エアーを供給する、
請求項1から21のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項23】
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記搬送回転体によって前記記録媒体を搬送していない場合、前記搬送回転体の温度を測定する温度測定部の測定結果に応じて、前記搬送回転体に配置された全てのチャンバーに前記冷却エアーを供給する、
画像形成装置。
【請求項24】
記録媒体を載置可能な載置面を有する搬送回転体を回転させながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送し、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させ、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える
冷却方法において、
前記冷却エアーを流通させる動作の場合、前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーから、前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路に流れるように、前記載置面に対向して配置された冷却エアー供給部から前記冷却エアーを供給する、
冷却方法。
【請求項25】
記録媒体を載置可能な載置面を有する搬送回転体を回転させながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送し、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させ、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える冷却方法において、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーは、前記搬送回転体の周方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記搬送回転体の側面に配置され、各々の前記チャンバーに連通する流路を構成する管に連結されており、
前記記録媒体が載置された領域に対応する複数の前記チャンバーにおいて、搬送方向の先端側の前記チャンバーで前記冷却エアーが流通されるように切り替えられた際に、搬送方向の後端側の前記チャンバーではエアーが吸引されている、
冷却方法。
【請求項26】
記録媒体を載置可能な載置面を有する搬送回転体を回転させながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送し、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させ、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える冷却方法において、
前記搬送回転体によって前記記録媒体を搬送していない場合、前記搬送回転体の温度を測定する温度測定部の測定結果に応じて、前記搬送回転体に配置された全てのチャンバーに前記冷却エアーを供給する、
冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙、布帛等の種々の記録媒体に対して高精細な画像を記録(形成)する装置として、インクジェットヘッド(以下、単にヘッドとも称する)のノズルからインクを吐出する方式によるインクジェット画像形成装置が広く普及している。
【0003】
従来、インクジェット画像形成装置では、不具合等を事前に防止して生産性および画質を担保するために、インク、インクタンク、ヘッド、用紙を載置して搬送するドラムやベルトなどの搬送回転体など、様々な部品等の温度制御(監視や調整等)を実行する。
【0004】
上記のうち、搬送回転体の温度制御は、搬送回転体に載置される用紙の温度と密接に関係し、用紙の温度管理とともに重要な事項となる。より詳しくは、用紙の温度は、画像形成プロセスまでの間すなわちヘッドからインクが吐出されるまでの間は、用紙が載置される搬送回転体の温度(熱エネルギー)が当該用紙に伝播されることで変化する。
【0005】
そして、画像形成の際に用紙の温度が適切でない場合、ヘッドから用紙に吐出、着弾されるインク(ドット)の拡がり性が悪くなって画質が低下する場合がある。
【0006】
具体的には、インク着弾時(画像形成時)に用紙の温度が目標温度から乖離している状態では、用紙上でのインクドットの拡がり性の確保ないし均一化が保てなくなり、印刷画像の品質が低下するおそれがある。
【0007】
このため、インクジェット画像形成装置は、印刷ジョブの実行時に、搬送回転体の温度を適正温度に制御することによって、搬送回転体に載置される用紙の温度を目標温度から許容範囲内に収めるようにした機種が多い。
【0008】
例えば、特許文献1に記載のインクジェット画像形成装置では、印刷胴(搬送回転体)をアルミニウム合金で構成し、熱容量を小さくすることで温度制御をしやすくした搬送ドラムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、例えばUV(紫外線)などのエネルギー線を照射して硬化するエネルギー線硬化型のインクを使用する等、外的な温度上昇要因によって搬送回転体が温度上昇する場合に、かかる搬送回転体の冷却を効率的に行うことができず、後述のように、ウエイト(印刷停止)等の待ち時間を確保する必要がある等の問題があった。
【0011】
本発明の目的は、外的要因により温度上昇した搬送回転体の冷却を効率的に行うことが可能な画像形成装置および冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像形成装置は、
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔と、
前記吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
前記チャンバーに前記冷却エアーを供給する冷却エアー供給部と、
を備え、
前記冷却エアー供給部は、前記載置面に対向して配置され、前記冷却エアーを前記チャンバーから前記流路に流れるように供給する。
また、本発明に係る画像形成装置は、
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の温度が設定温度となるように、前記搬送回転体を加熱する加熱部と、
を備え、
前記設定温度は、前記記録媒体の種類に応じて異なる。
また、本発明に係る画像形成装置は、
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記チャンバーは、前記搬送回転体の回転軸方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記流路を構成する管に連結されている。
また、本発明に係る画像形成装置は、
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記チャンバーは、前記搬送回転体の周方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記流路を構成する管に連結されており、
前記記録媒体が載置された領域に対応する複数の前記チャンバーにおいて、搬送方向の先端側の前記チャンバーで前記冷却エアーが流通されるように切り替えられた際に、搬送方向の後端側の前記チャンバーでは前記吸引部によってエアーが吸引されている。
また、本発明に係る画像形成装置は、
記録媒体を載置可能な載置面を有し、回転しながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送する搬送回転体と、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させる吸引部と、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部と、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーと、
前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路の開口と、
を備え、
前記搬送回転体によって前記記録媒体を搬送していない場合、前記搬送回転体の温度を測定する温度測定部の測定結果に応じて、前記搬送回転体に配置された全てのチャンバーに前記冷却エアーを供給する。
【0013】
本発明に係る冷却方法は、
記録媒体を載置可能な載置面を有する搬送回転体を回転させながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送し、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させ、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える冷却方法において、
前記冷却エアーを流通させる動作の場合、前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーから、前記搬送回転体の側面に配置され、前記チャンバーに連通する流路に流れるように、前記載置面に対向して配置された冷却エアー供給部から前記冷却エアーを供給する。
また、本発明に係る冷却方法は、
記録媒体を載置可能な載置面を有する搬送回転体を回転させながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送し、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させ、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える冷却方法において、
前記搬送回転体の内部に配置され、前記複数の吸引孔に連通するチャンバーは、前記搬送回転体の周方向に複数並ぶように配列されており、
各々の前記チャンバーは、前記搬送回転体の側面に配置され、各々の前記チャンバーに連通する流路を構成する管に連結されており、
前記記録媒体が載置された領域に対応する複数の前記チャンバーにおいて、搬送方向の先端側の前記チャンバーで前記冷却エアーが流通されるように切り替えられた際に、搬送方向の後端側の前記チャンバーではエアーが吸引されている。
また、本発明に係る冷却方法は、
記録媒体を載置可能な載置面を有する搬送回転体を回転させながら、前記載置面に載置された前記記録媒体を搬送し、
前記載置面に形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって前記載置面に前記記録媒体を吸着させ、
前記載置面のうち前記記録媒体が載置されていない領域において、前記搬送回転体の内部と外部との間で前記吸引孔を介して、前記搬送回転体を冷却するための冷却エアーを流通させるように、前記エアーを吸引する動作と前記冷却エアーを流通させる動作とを切り替える冷却方法において、
前記搬送回転体によって前記記録媒体を搬送していない場合、前記搬送回転体の温度を測定する温度測定部の測定結果に応じて、前記搬送回転体に配置された全てのチャンバーに前記冷却エアーを供給する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外的要因により温度上昇した搬送回転体の冷却を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置の概略構成を説明する側面図である。
【
図2】
図1のインクジェット画像形成装置の主要な機能を説明するためのブロック図である。
【
図3】搬送ドラムの内部および周囲の部品の構成を説明する図である。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、従来構成における画像形成時および画像形成後の搬送ドラムの状態等を説明するための断面図である。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、本実施の形態の特徴的な構成による画像形成時および画像形成後の搬送ドラムの状態等を説明するための断面図である。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、本実施の形態における他の構成例を説明するための概要図である。
【
図7】本実施の形態のさらに他の構成例を説明するための図であり、冷却エアーの流通方向を
図5Bの例と逆方向に構成する場合の縦断面図である。
【
図8】本実施の形態の更なる他の構成例を説明する図であり、搬送ドラムのチャンバーを回転軸(幅)方向に複数並ぶように配列した例を示す断面図である。
【
図9】本実施の形態の特徴的な処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施の形態に係るインクジェット画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態における搬送ドラム方式のインクジェット画像形成装置1の概略構成を示す側面図である。また、
図2は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、このインクジェット画像形成装置1は、記録媒体Pを給送(給紙)する給紙部11と、用紙搬送部2および画像形成部3等を備えた画像形成装置本体300と、画像が形成された記録媒体Pを排紙する排紙部28とを備えている。また、インクジェット画像形成装置1は、搬送方向における後述する画像形成部3の下流側に、エネルギー線照射部60を備えている(
図2も参照)。
【0019】
また、
図2に示すように、インクジェット画像形成装置1は、印刷ジョブに関する種々のデータが入力および記憶されるデータ入力部10、およびインクジェット画像形成装置1全体の制御を司る制御部40を備える。
【0020】
図1を参照すると、給紙部11は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ111と、給紙トレイ111から画像形成部3に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部112とを有する。
【0021】
給紙トレイ111は、一または複数の記録媒体Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレイ111は、給紙トレイ111に載置された記録媒体Pの量(枚数)に応じて上下動するように設けられており、当該上下動方向について、最上の記録媒体Pが媒体供給部112により搬送される位置で保持される。
【0022】
媒体供給部112は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで、記録媒体Pを給紙トレイ111から画像形成装置本体300内へ搬送する。
【0023】
画像形成装置本体300は、記録媒体Pを搬送する用紙搬送部2として、大径(この例では3倍胴)の搬送ドラム53と、受け渡しローラー52と、複数のヘッド31~36が配列される画像形成部3と、エネルギー線照射部60と、複数の搬送ローラー56~59と、を備える。
【0024】
上記のうち、搬送ドラム53は、本発明の「搬送回転体」に対応する。
【0025】
また、上記の「3倍胴」は、搬送ドラム53の周長(一周のサイズ)が、このインクジェット画像形成装置1で使用可能な最大長さを有する記録媒体Pを同時に3枚保持できるサイズであることを意味する。
【0026】
なお、搬送ドラム53の他の例として、例えば4倍胴や5倍胴のものであってもよい。以下は、上記の搬送ドラム53を「胴」と呼ぶ場合がある。
【0027】
上記のうち、主として、搬送ドラム53および搬送ローラー56~59に備えられた後述の爪部によって、記録媒体Pの搬送路ないし搬送先を切り替える搬送切替部25(
図2を参照)が構成される。
【0028】
また、画像形成装置本体300は、後述する複数のインクジェットヘッドが配列される画像形成部3と、記録媒体P上に形成された画像(インク像)を硬化させて記録媒体Pに定着させるためのエネルギー線照射部60と、を備えている。
【0029】
さらに、画像形成装置本体300は、記録媒体Pの表裏を反転させて送り出すための用紙反転部26を備えている。この例では、主として、搬送ローラー59と、後述するスイングアーム部51bとの協働動作により、用紙反転部26の機能が実現される。
【0030】
受け渡しローラー52は、給紙部11の媒体供給部112により搬送された記録媒体Pを搬送ドラム53に引き渡す。受け渡しローラー52は、その搬送面上で記録媒体Pを保持するために、制御部40の制御により開閉状態が切り替えられる爪部52aを備える。
【0031】
受け渡しローラー52は、給紙部11の媒体供給部112と搬送ドラム53との間の位置に設けられ、媒体供給部112から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部51fで保持して取り上げるとともに爪部52aで保持し、
図1中の矢印で示す時計方向に回転することで、記録媒体Pを搬送ドラム53(いずれかの爪部53a~53c)へと引き渡す。
【0032】
搬送ドラム53は、円柱面状の外周曲面(搬送面)53e上に記録媒体Pを保持した状態で、
図1の紙面に垂直な方向(以下、「直交方向」と称する)に延びた回転軸53d(
図3等を参照)を中心として回転することで、記録媒体Pを搬送面53eに沿った搬送方向(
図1中の矢印で示す反時計方向)に搬送する。
【0033】
搬送ドラム53は、その搬送面53e上で記録媒体Pを保持するために、爪部53a,53b,53c,および
図4A等で後述するエアー吸引部(「吸引部」としての用紙吸引ブロアー70等)を備える。
【0034】
搬送ドラム53に設けられた3つの爪部53a,53b,53cは、受け渡しローラー52および搬送ローラー56,57および58の周長と同じ間隔で配置されている。記録媒体Pは、いずれかの爪部53a~53cにより端部が押さえられ、かつエアー吸引部により搬送面に吸い寄せられることで、搬送ドラム53の搬送面53eに保持される。
【0035】
搬送ドラム53の爪部53a,53b,53cは、上流側の受け渡しローラー52の爪部52aから受け渡される記録媒体Pの一端(搬送方向の先端、以下、単に「先端」という)を、所定の押圧力で押圧して、記録媒体Pの一端ひいては全体を搬送面53e上に保持する役割を担う。また、これら爪部53a,53b,53cは、上記の押圧状態が解除される(開方向に動く)ことにより、搬送面53eに保持された記録媒体Pの先端を下流側の搬送ローラー56の爪部56aに受け渡す役割を担う。
【0036】
搬送ドラム53の爪部53a,53b,53cは、制御部40の制御により爪の開状態/閉状態が切り替えられる。具体的には、爪部(53a,53b,53c)は、上流側の受け渡しローラー52の爪部52aから記録媒体Pの先端が受け渡されるタイミングで閉状態となることで、記録媒体Pの先端を保持する。また、爪部(53a,53b,53c)は、下流側の搬送ローラー56に録媒体Pの先端を受け渡すタイミングで開状態となることで、下流側の搬送ローラー56の爪部56aに録媒体Pの先端を受け渡す。
【0037】
用紙搬送部2(
図1および
図2を参照)は、上記の搬送ドラム53を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターを有し、制御部40の制御の下、搬送ドラムモーターを駆動して搬送ドラム53を搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転させることで、記録媒体Pを搬送する。搬送回転体としての搬送ドラム53は、記録媒体Pをインクジェットヘッド(31~36)のノズル面に対向させて搬送する役割を担っている。
【0038】
インクジェットヘッド(以下は単に「ヘッド」とも称する)31~36は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム53の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム53の搬送面に対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部から記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を形成する。これらヘッド31~36は、そのインク吐出面と搬送ドラム53の搬送面53eとの間が所定の距離だけ離隔されるように配置される。
【0039】
図1に示す例では、搬送方向の上流側から、イエロー(Y)、ライトマゼンタ(LM)、マゼンタ(M)、ライトシアン(LC)、シアン(C)、ブラック(K)の各インクにそれぞれ対応する6つのヘッド31,32,33,34,35,36が、記録媒体Pの搬送方向上流側からY,LM,M,LC,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0040】
なお、ヘッド数すなわち使用する色の数および色の配列等は、上記のものに限定されるものではなく、任意である。すなわち、本実施の形態のインクジェット画像形成装置1では、使用するインク(色)の種類等に応じて、5つ以下のヘッド数あるいは7つ以上のヘッド数とすることもできる。
【0041】
図示しないが、一具体例では、各々のヘッド(31~36)には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズルとを各々有する複数の記録素子が設けられている。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0042】
この例では、各々のヘッド31~36から紫外線(UV)硬化型のインクが吐出される場合を仮定する。なお、ヘッド31~36から吐出されるインクは、これに限定されず、例えば赤外線や電子線等の他のエネルギー線の照射により乾燥、または、硬化する性質のものであってもよい。
【0043】
図2を参照すると、インクジェット画像形成装置1は、装置全体の制御を司る制御部40と、データ入力部10と、ヘッド駆動部30を含む画像形成部3と、エネルギー線照射部60、温度検知部80、等を備えている。
【0044】
このうち、データ入力部10は、図示しないPC等の外部装置に接続される入力インターフェースやメモリー等を備える。ここで、メモリーは、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0045】
データ入力部10は、制御部40の制御の下、外部装置から印刷ジョブに関するデータ(ジョブ命令、印刷される画像の画像データや種々の設定データなど)を取得(入力および記憶)し、印刷ジョブの実行時に画像データをヘッド駆動部30に出力する。
【0046】
画像形成部3は、上述したように、互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッド31~36と、これらヘッドを駆動するヘッド駆動部30と、を備える。
【0047】
ヘッド駆動部30は、制御部40の制御に基づいて各々のヘッド(31~36)に対して適切なタイミングで画像データに応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、対応するヘッド(31~36)のノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0048】
制御部40は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を有する。
【0049】
上記のうち、CPUは、ROMに記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAMに記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPUは、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0050】
RAMは、CPUに作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAMは、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0051】
ROMは、CPUにより実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROMに代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0052】
エネルギー線照射部60は、搬送ドラム53の直交方向の幅に亘って配置された発光部を有する。エネルギー線照射部60は、搬送ドラム53に載置された記録媒体Pに対して発光部から紫外線等のエネルギー線を照射して、ヘッド(31~36)から記録媒体P上に吐出されたインクに対して所定のエネルギーを付与することにより、記録媒体P上のインクを硬化させて定着させる。
【0053】
搬送方向におけるエネルギー線照射部60の下流側には、搬送ドラム53に対向する搬送ローラー56,搬送ローラー56に対向する搬送ローラー57,搬送ローラー57に対向する搬送ローラー58および59,搬送ローラー58に対向するベルト搬送部280が設けられている。また、搬送方向における搬送ローラー59の下流側には、搬送ローラー59から搬送される記録媒体Pの後端を保持して取り上げるスイングアーム部51bが設けられている。
【0054】
上述のように、搬送ローラー59およびスイングアーム部51bは、記録媒体Pの進行方向の前後ひいては表裏を反転させる用紙反転部26(
図2も参照)としての役割を担う。
【0055】
また、上記の搬送ローラー56,57,58,59には、各々、制御部40の制御により開閉が切り替えられる爪部56a,57a,58a,59aを備えている。
【0056】
搬送ドラム53および搬送ローラー56等の上述した各爪部は、記録媒体Pの搬送方向を切り替えるための搬送切替部25(
図2を参照)の一部をなす。
【0057】
ベルト搬送部280は、内側が3本のローラーにより支持された輪状の搬送ベルトを有する。ベルト搬送部280は、搬送ローラー57および58から受け渡された記録媒体Pを搬送ベルトにより搬送して、排紙部28に送出する。
【0058】
排紙部28は、ベルト搬送部280により画像形成装置本体300から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ281を有する。
【0059】
図2を参照すると、インクジェット画像形成装置1の温度検知部80は、複数の非接触式の温度センサー(以下、単に温度センサーという)を含み、かかる温度センサーの測定結果を制御部40に出力する。
【0060】
一具体例では、温度検知部80の温度センサーは、温度測定の対象物から放射される赤外線を検知する第1のサーミスタと、温度補償用として周囲温度を測定する第2のサーミスタとを備え、かかる2つのサーミスタの出力を演算することにより、当該対象物の温度を測定する。かくして、温度検知部80は、各々の温度センサーにより測定した対象物の温度を、各々、検知信号として制御部40に出力する。かかる用紙温度検知部80は、本発明の「温度測定部」に対応する。
【0061】
本実施の形態では、複数の温度センサーのうちの一つは、上述した受け渡しローラー52の下流かつYヘッド31の上流側における搬送ドラム53の表面に対向する位置に配置されている(以下、「第1温度センサー」と称する)。
【0062】
かかる配置の第1温度センサーによれば、印刷ジョブの実行時に給紙部11から給紙された記録媒体P、もしくは、用紙反転部26から搬送された記録媒体Pにつき、画像形成部3で画像形成(インク像が吐出)される前の段階での温度を測定することができる。また、第1温度センサーによれば、記録媒体Pが載置されていない場合に搬送ドラム53の表面温度を測定することもできる。
【0063】
また、複数の温度センサーのうちの他の一つは、上述したエネルギー線照射部60の下流側近傍の位置に配置されている(以下、「第2温度センサー」と称する)。かかる第2温度センサーによれば、印刷ジョブの実行時に画像形成部3(使用されるインクのヘッド)で画像が形成されエネルギー線照射部60によりエネルギー線が照射された後の記録媒体Pの温度を測定することができる。また、第2温度センサーによれば、記録媒体Pが載置されていない場合には、かかる温度センサーによって搬送ドラム53の表面温度を測定することもできる。
【0064】
そして、制御部40は、上述のように配置された各々の温度センサーから出力される検知信号に基づいて、搬送ドラム53の温度など、温度に関連した様々な制御を実行する。
【0065】
かかる構成の画像形成装置1では、制御部40の制御下で、以下のように画像形成に関する動作が行われる。
【0066】
印刷ジョブの実行の際に、制御部40は、胴回転すなわち搬送ドラム53の回転を開始させるように、搬送ドラムモーターを駆動制御する。続いて、制御部40は、記録媒体Pの給紙動作を開始するように給紙部11(媒体供給部112等)を制御する。さらに、制御部40は、適宜のタイミングでエアー吸引部(吸引部)を作動させる。
【0067】
かかる制御により、給紙部11から給紙された記録媒体Pは、媒体供給部112および受け渡しローラー52を経由して、
図1中の反時計方向に回転している搬送ドラム53のいずれかの爪部(53a~53c)によって、その搬送方向先端が保持されながら搬送される。
【0068】
ここで、記録媒体Pは、エアー吸引部(吸引部)の動作により、裏面が搬送ドラム53の搬送面53eに設けられた多数の吸引孔(隙間)を通じて吸引されることで、搬送面53eに吸着されながら、搬送ドラム53の回転に応じて安定的に搬送される。
【0069】
続いて、片面印刷を行う場合、制御部40は、搬送切替部25(上述した各爪部の開閉状態)を排紙側に設定する処理を行い、画像形成に使用するヘッド(31~36)を順次駆動し、該当するヘッドからインクを吐出させて、記録媒体Pに画像(インク像)を形成する処理を行う。
【0070】
続いて、制御部40は、エネルギー線照射部60を駆動制御して、インク像が形成された記録媒体Pにエネルギー線を照射する処理を行う。この後、制御部40は、搬送ドラム53に保持されている記録媒体Pの先端を、搬送ローラー56,58,ベルト搬送部280の順で受け渡すように制御して、印刷が完了した記録媒体Pを排紙部28に搬送する。
【0071】
この後、制御部40は、記録媒体Pの排紙および胴回転停止を経て、処理を終了する。かくして、フルカラーの画像が表面に形成された記録媒体Pは、排紙部28の排紙トレイ281上に積載される。
【0072】
一方、両面印刷を行う場合、制御部40は、搬送切替部25(
図2参照)を用紙反転側に設定する。
【0073】
続いて、制御部40は、上述と同様の制御を行い、表面にインク像(画像)が形成された記録媒体Pにエネルギー線を照射する処理を行った後に、搬送ドラム53に保持されている記録媒体Pの先端を、搬送ローラー56、57、59の各爪部(56a,57a,59a)へと順次受け渡した後、記録媒体Pの反転動作の処理を実行する。
【0074】
具体的には、制御部40は、記録媒体Pの搬送方向(進行方向)の先端を搬送ローラー59の爪部59aで保持して、搬送ローラー59によって記録媒体Pを
図1中の時計回りに搬送する動作を行う。
【0075】
続いて、制御部40は、記録媒体Pの後端がスイングアーム部51bに対向する位置に来たときに、スイングアーム部51bを
図1中の反時計方向に回転させながらスイングアーム部51bの先端に設けられた図示しない爪部を閉じると同時に、搬送ローラー59の爪部59aを開く制御を行う。かかる動作により、記録媒体Pが搬送ローラー59からスイングアーム部51bに引き渡される。
【0076】
次いで、制御部40は、スイングアーム部51bを
図1中の時計方向に回転させ、搬送ドラム53の爪部53a,53b,53cのいずれかがスイングアーム部51bの対向位置に来たときに、スイングアーム部51bの先端の不図示の爪部を開くとともに搬送ドラム53の爪部(53a~53cのいずれか)を閉じる制御を行う。かかる動作により、記録媒体Pの表裏が反転し、その後、記録媒体Pは、搬送ドラム53によって画像形成部3に向けて搬送される。
【0077】
この後は、上述した片面印刷の場合と同様の動作が行われることにより、フルカラーの画像が裏面(第2面)に形成された記録媒体Pが排紙部28に搬送され、排紙トレイ281上に積載される。
【0078】
次に、主に
図3、
図4(
図4Aおよび
図4B)を参照して、従来構成におけるエアー吸引部(吸引部)等の構成について説明する。
【0079】
ここで、
図3は搬送ドラム53の内部および周囲の部品の構成を説明する図であり、
図4Aおよび
図4Bは、用紙吸引時(画像形成プロセス実行時)および該プロセス実行後の状態等を説明するための図である。
【0080】
なお、
図3中に示す二つの両矢印につき、上側の矢印A1はエアー吸引部(吸引部)によって記録媒体Pが吸引される吸引領域、下側の矢印A2は、記録媒体Pが吸引されない非吸引領域を、各々示す。
【0081】
上記のうち、吸引領域A1は、画像形成部3(各インク31~36)と対向し、インク像が吐出される(すなわち画像が形成される)画像形成領域、およびエネルギー線照射部60によってエネルギー線が照射される照射領域を含む。
【0082】
図3および
図4Aに示すように、搬送ドラム53は、内部が中空の構造であり、また、その搬送面53eの下(内部側)には、使用される記録媒体P(以下、単に用紙ともいう)の最大幅よりも若干小さい幅を有するチャンバー531が形成されている。
【0083】
図3に示すように、搬送ドラム53の2つの爪部間(例えば、爪部53cと爪部53aとの間)には、3つのチャンバー531(531L,531M,531N)が配列されており、このうち、用紙搬送方向に沿った最初のチャンバー531Lの長さが長い構成となっている。このチャンバー531Lの長さは、インクジェット画像形成装置1で使用可能な最小の長さを有する用紙の長さ(搬送方向のサイズ)に対応している。
【0084】
また、
図4Aに示すように、装置の手前側(
図4A中の左側)および奥側(同図右側)には、搬送ドラム53の回転軸53dを保持する側板55,55が配置されている。さらに、装置奥側における側板55と搬送ドラム53の側面との間には、略リング状の切替プレート54が配置されている。このうち、搬送ドラム53は回転軸53dを中心に回転する一方で、切替プレート54は、回転しないように構成されている。
【0085】
具体的には、切替プレート54は、搬送ドラム53の回転軸53dが挿通される挿通孔が形成されており、また、装置奥側の側板55との間に設けられたばね551によって、搬送ドラム53側に付勢されている。
【0086】
さらに、切替プレート54における搬送ドラム53と対向する側の面には、搬送ドラム53のチャンバー531に負圧を発生させる流路の一部をなす連通開口541が形成されている。
【0087】
かかる連通開口541は、
図3に示すように、切替プレート54の側面における広い範囲に亘って円弧の溝状に複数列(この例では3列)形成されている。具体的には、連通開口541は、使用可能な最大長さを有する用紙に対して使用されるチャンバー531の数(この例では3つ)および吸引領域A1の位置に対応した切替プレート54の位置に形成される。
【0088】
そして、
図4に示すように、各々の連通開口541には、負圧発生源となる用紙吸引ブロアー70に連なる管70aが固定されている。なお、用紙吸引ブロアー70は、ファン(羽根)およびモーター等を備えた公知の構成であるため、詳述を省略する。
【0089】
一方、搬送ドラム53における搬送面53eは、チャンバー531の外面をなし多数の小孔または隙間が形成されたシート状の部材(以下、シートという)が配置されており(
図4Bも参照)、かかるシートを介して空気が流通できるようになっている。一方、このシートに対向する搬送ドラム53の面(チャンバー531の底面)には、チャンバー531に負圧を発生させる流路の一部をなす連通孔531aが形成されている。
【0090】
さらに、
図4Aに示すように、搬送ドラム53における一方すなわち切替プレート54と対向(擦接)する方の側面には、切替プレート54の連通開口541と接続される接続孔532aが形成されている。そして、搬送ドラム53の内部には、外形略L字状の管532が設けられ、かかる管532の一端が接続孔532aに固着され、管532の他端は、上述したチャンバー531の連通孔531aに固着されている。
【0091】
かかる構成によれば、記録媒体Pの搬送から印刷プロセスまでの間は(
図4A参照)、切替プレート54における連通開口541に対して、搬送ドラム53の接続孔532aが接続され、流路として連通されている(
図3中の吸引領域A1の矢印も参照)。
【0092】
このため、かかる期間(すなわち用紙先端が吸引領域A1を抜けるまでの間)において、用紙吸引ブロアー70から発生する吸引圧(負圧)が搬送ドラム53内の管532および対応するチャンバー531の連通孔531aを通じて伝搬されることにより、チャンバー531の気圧が低下する。
【0093】
すなわち、当該チャンバー531は、その連通孔531aから吸引エアーとしてチャンバー531内の空気が吸い込まれる(吸引される)ことにより、搬送面53eのチャンバー531(各吸引孔)に対していわば蓋の役割を担っている用紙が、搬送ドラム53の搬送面53eに吸着されて保持される。
【0094】
この後、ヘッド(31~36)による画像形成およびエネルギー線照射部60によるエネルギー線の照射が行われた用紙は、片面印刷の場合には、上述のように排紙部28に向けて搬送される。なお、両面印刷が行われる場合、上述のように表裏反転動作が行われた後に再び搬送ドラム53に供給されるが、一旦は搬送ドラム53から離脱され、その間は他の搬送ローラー56,57,59によって搬送されることになる。
【0095】
いずれにしても、
図3中に示す非吸引領域A2においては、通常、用紙を吸引する必要がないため、
図4B中に示すように、搬送ドラム53の管532および接続孔532aは切替プレート54の連通開口541とは接続(連通)されず、用紙吸引ブロアー70に連なる流路が形成されない。
【0096】
言い換えると、用紙を吸引する必要がない非吸引領域A2に対応する切替プレート54の下側の領域には連通開口541が設けられておらず(
図3および
図4B参照)、このため非吸引領域A2に位置する搬送ドラム53の搬送面53e(チャンバー531および吸引孔)は、用紙吸引ブロアー70によって発生する負圧の影響を受けない。
【0097】
一方で、従来は、かかる非吸引領域A2における適所に、図示しない加熱用のヒーターや冷却用のファン(送風機)などを配置し、制御部40による制御の下、搬送ドラム53の温度を調整していた。
【0098】
かくして、印刷ジョブの実行時には、制御部40の制御信号に基づいて、給紙部11から画像形成装置本体300の用紙搬送部2に向けて用紙が給紙(給送)されるとともに、用紙吸引ブロアー70が作動する。
【0099】
続いて、用紙の先端が搬送ドラム53のいずれかの爪部(53a~53c)に保持されるとともに、記録媒体Pの他の部分は、搬送ドラム53のチャンバー531に発生する負圧によって吸着され、搬送ドラム53の搬送面53eに安定的に保持される。
【0100】
かかる用紙の吸着状態は、上述したヘッド(31~36)からのインク吐出による画像形成およびエネルギー線照射部60によるエネルギー線照射の段階まで継続し、その後、当該用紙を吸引しているチャンバー531が非吸引領域A2(
図3参照)に入ることで終了する。
【0101】
ところで、多くのインクジェット画像形成装置では、不具合や故障を事前に防止し、ひいては印刷画像の品質を担保するために、インク、インクタンク、ヘッド、用紙を載置して搬送するドラムやベルトなどの搬送回転体(この例では搬送ドラム53)など、様々な部品等についての温度制御(管理、調整等)を実行する。
【0102】
上記のうち、搬送回転体すなわち搬送ドラム53の温度制御は、載置および搬送される用紙の温度と密接に関係し、用紙の温度管理とともに重要な事項となる。より詳しくは、用紙の温度は、画像形成プロセスまでの間すなわちヘッド(31~36)からインクが吐出されるまでの間は、搬送ドラム53の温度(熱エネルギー)が載置、搬送されている用紙に伝播されることで変化する。
【0103】
そして、画像形成の際に用紙の温度が適切でない場合、ヘッド(31~36)から用紙に吐出、着弾されるインク(ドット)の拡がり性が悪くなって画質が低下する場合がある。
【0104】
具体的には、インク着弾時(画像形成時)に用紙の温度が目標温度から乖離している状態では、用紙上でのインクドットの拡がり性の確保ないし均一化が保てなくなり、印刷画像の品質が低下するおそれがある。
【0105】
このため、一般に、インクジェット画像形成装置は、印刷ジョブの実行時に、胴などの搬送回転体の温度を適正温度に制御することによって、搬送回転体に載置される用紙の温度を目標温度から許容範囲内に収めるようにする機種が多い。
【0106】
一方、上述のように、特許文献1などの従来の技術では、エネルギー線硬化型のインクを使用してエネルギー線を照射して硬化させるなどの外的な温度上昇要因によって搬送回転体が温度上昇する場合に、かかる搬送回転体の冷却を効率的に行うことができない問題があった。
【0107】
すなわち、エネルギー線硬化型のインクを用紙に吐出してエネルギー線を照射した場合、かかるインクの硬化時に硬化熱(外的な温度上昇要因)が発生し、かかる硬化熱のエネルギーが用紙を通じて搬送回転体に伝わることにより、搬送回転体の温度が上昇する。
【0108】
かかる温度上昇が発生した搬送回転体の温度を適正範囲に戻す(冷却する)ために、従来構成の一具体例では、例えば、搬送方向におけるエネルギー線照射部60の下流側(例えば搬送ローラー56の近傍)に冷却用のファンを設け、かかるファンから送風されるエアーにより搬送ドラム53を冷却していた。
【0109】
しかしながら、かかる構成では、上記の硬化熱によって温度上昇した搬送回転体の温度を速やかに適正範囲に戻す(冷却する)能力(性能)が十分ではなかった。このため、従来の技術では、ウエイトすなわち搬送回転体の温度が適正範囲に戻るまでの待機時間を確保して印刷を停止すること、あるいは大規模な冷却装置を設けること等が必要になり、印刷の生産性や省スペース化などの観点からの技術的課題もあった。
【0110】
上記のような課題に鑑みて、本実施の形態では、以下に述べるような構成を採用することで、印刷の生産性および省スペース化などの要請に応えつつ、搬送ドラム53の効率的かつ速やかな冷却を実現して、印刷画像の品質確保を図るようにした。
【0111】
ここで、
図5Aおよび
図5Bは、本実施の形態の特徴的な構成による画像形成時および画像形成後の搬送ドラムの状態等を説明するための断面図であり、
図5A中に破線で囲った部分が本実施の形態の特徴的な構成を示している。
【0112】
上述した従来構成を示す
図4Aおよび
図4Bと比較して分かるように、本実施の形態では、切替プレート54の下側に新たな連通開口(542)を形成するとともに、かかる連通開口542に、搬送ドラム53を冷却するためのエアー(以下、単に「冷却エアー」という)を供給するドラム冷却ブロアー75および管75aを追加的に設けている。
【0113】
なお、切替プレート54の連通開口542は、
図5中では1つしか示していないが、実際には非吸引領域A2(
図3参照)において、上述した連通開口541と同様に、搬送ドラム53内の管532の接続孔532aと接続するように、円弧状に複数列(この例では3列)設けられている。
【0114】
本発明との対応関係において、
図5A中に破線で囲った部分のうち、主に、新たな連通開口542が設けられた切替プレート54は、本発明における「切替部」に対応する。
【0115】
なお、本発明における「切替部」は、このような機械的な構成のみならず、例えば
図8や
図9で後述するような、ドラム冷却ブロアー75や流路のオン/オフ、あるいは流路の開度調整に関する制御的な構成であってもよい。本実施の形態では、上記の切替プレート54および制御部40は、本発明における「切替部」に対応する。
【0116】
総じて、本発明における「切替部」は、搬送ドラム53における吸引孔およびチャンバー531の機能を、「記録媒体Pの吸引(吸着)」機能と、「搬送ドラム53の冷却」機能すなわち「冷却エアーの導入および流通」機能と、で切り替えるための機械的または制御的な構成が含まれる。
【0117】
概して、本実施の形態では、ドラム冷却ブロアー75から管75aを通って供給される冷却エアーを、搬送ドラム53の回転に伴う内部の流路(既存の管532および接続孔532a)の移動を利用し、当該流路を通じて冷却エアーをチャンバー531に供給する構成としている(
図5B参照)。
【0118】
このように、既存の用紙吸引用の流路(管532等)を、冷却エアーの流通経路として活用することで、吸引孔およびチャンバー531の機能を切り替える本実施の形態によれば、省スペース化の要求に対応することができる。
【0119】
上述した構成のうち、ドラム冷却ブロアー75および管75aは、本発明の「冷却エアー供給部」に対応する。ドラム冷却ブロアー75は、ファンおよびファンを回転させるモーター等(すなわち送風部)を備えた公知のブロアーを用いることができる。
【0120】
ドラム冷却ブロアー75から供給される冷却エアーの温度は、特に制限されないが、エネルギー線照射部60を稼働させた際の搬送ドラム53の温度より低いことが望ましく、さらには、常温(すなわち周囲の大気温度)よりも低いことが望ましい。このため、ドラム冷却ブロアー75は、例えばペルチェ装置などの公知の温度調整部を備えた構成とするとよい。
【0121】
かかる構成によれば、チャンバー531に供給された冷却エアーは、従来構成のようにチャンバー531内で滞ることがなく、対応するチャンバー531が非吸引領域A2(
図3参照)に位置する間は、流路を通じてチャンバー531から搬送ドラム53の外部へと継続的に流通する。
【0122】
このように、チャンバー531が非吸引領域A2に位置する場合に、当該チャンバー531に対して、対応する流路を通じて継続的に冷却エアーを供給(流通)する構成とすることで、チャンバー531に供給される冷却エアーの停滞を防止することができる。
【0123】
したがって、本実施の形態によれば、吸引領域A1に位置する吸引孔およびチャンバー531に用紙吸引させる機能を保持しつつ、エネルギー線照射により高い温度に上昇した搬送ドラム53を、非吸引領域A2で速やかに冷却することができる。このため、本実施の形態によれば、制御部40による搬送ドラム53の温度の管理および制御がより容易になり、ひいては印刷画像の品質を高い水準で維持することができる。
【0124】
上述した
図5に示す構成例では、ドラム冷却ブロアー75および管75a(冷却エアー供給部)は、管532(流路)に接続して、ドラム冷却ブロアー75から出力される冷却エアーを管532(流路)側からチャンバー531側に流通させる役割を担っている。
【0125】
他の例として、冷却エアーをチャンバー531側から管532(流路)側に流通させる構成としてもよく、かかる変形例については
図7で後述する。
【0126】
次に、上述した実施の形態の変形例について説明する。
【0127】
上述した実施の形態では、ドラム冷却ブロアー75内に温度調整部を備える構成とした。これに対して、ドラム冷却ブロアー75に対する支援、あるいは冷却エアーの温度をより速やかに下げる必要性などの観点から、
図6Aに示すように、例えばペルチェ装置などの公知の冷却部76を流路(管75a)に追加する構成としてもよい。
【0128】
かかる構成は、例えば設置スペース等の都合で、ドラム冷却ブロアー75が用紙吸引ブロアー70の近傍に設置されているような場合に採用され得る。すなわち、用紙吸引ブロアー70から排気されるエアーは比較的高温であるため(
図6A中の黒色の矢印を参照)、近傍のドラム冷却ブロアー75に流入されるエアー(
図6A中のハッチング入りの矢印を参照)が想定よりも高くなるケースが発生するからである。
【0129】
上述した実施の形態では、用紙吸引用のブロアー(70)に対して、搬送ドラム53を冷却するための専用のブロアー(ドラム冷却ブロアー75)を別個に設ける構成とした。他の構成例として、
図6Bに示すように、ドラム冷却ブロアー75を設けず、既存の用紙吸引ブロアー70の排気流(付加された管71等を参照)を上述した冷却部76で冷却し、かかる冷却エアーを搬送ドラム53の冷却用として管75aに出力する構成としてもよい。
【0130】
この場合、
図6Aの構成と比較して、管71を付加する代わりにドラム冷却ブロアー75が不要となることから、より低コストで実現できる。ただし、冷却部76は、
図6Aに示すものよりも冷却性能が高いものとする必要があり得る。
【0131】
上述した実施の形態では、ドラム冷却ブロアー75から噴出された冷却エアーが切替プレート54の連通開口541および搬送ドラム53内の管532(流路)を経由してチャンバー531に供給されることにより、搬送ドラム53ひいては記録媒体Pの温度を調整する構成とした。
【0132】
他の構成例として、
図7に示すように、冷却エアーが流通される方向を逆に構成してもよい。
図7に示す例では、冷却部76Aとして、例えば、温調機能を備えた公知の温調ファン(例えばペルチェファン)を使用し、かかる温調ファンのエアー排出口(図示せず)を搬送ドラム53の外周面(搬送面53e)に対向するように設ける。また、上述した管75aには、例えば上述した用紙吸引ブロアー70と同等の機能を備えた吸引ブロアー75Aを配置する。ここで、吸引ブロアー75Aは、本発明の「冷却エアー吸引部」に対応する。
【0133】
かかる構成によれば、冷却部76Aから吹き付けられる冷却エアー(
図7中の5つの白抜き矢印参照)は、搬送ドラム53の搬送面53eを通ってチャンバー531内に充満する。そして、吸引ブロアー75Aの吸引作用によって、かかるチャンバー531内の空気が連通孔531a、管532、切替プレート54の連通開口542、および管75aを通って吸引ブロアー75Aに吸引される。
【0134】
かくして、
図7に示す構成によれば、
図4Bで上述した従来構成とは異なり、搬送ドラム53の搬送面53eに吹き付けられた冷却エアーは、チャンバー531や管532で停滞することなく、吸引ブロアー75Aに向けて円滑に流通する。
【0135】
また、従来構成では、搬送ドラム53の冷却効率を上げるべく、ファン(送風機)の出力すなわちファンから搬送ドラム53に供給される単位時間当たりの風量を上げる(増やす)試みがなされていた。しかしながら、この場合、搬送ドラム53の搬送面53eでエアーが反射して周囲に拡散し、拡散されたエアーにより不具合(例えば搬送面53eに保持された用紙の位置ずれや画質への影響)が発生するおそれがあった。
【0136】
これに対して、冷却エアーを流通させるようにした
図7に示す構成では、冷却エアーの反射、拡散を抑えることができるので、従来構成と比較して冷却用のエアーの流速を上げることができ、結果として、短い時間で搬送ドラム53の温度を調整(冷却)することができる。
【0137】
さらに、
図7に示す構成の変形例として、温調ファン(ペルチェファンなど)の代わりに通常のファンを設け、吸引ブロアー75Aで吸気され排気されたエアーの温度を調節(冷却)する熱交換器を設け、かかる熱交換器によって冷却されたエアーを上記のファンに供給する構成としてもよい。
【0138】
上述した
図5~
図7に示す構成例およびその変形例によれば、搬送ドラム53の回転動作時において、非吸引領域A2にある吸引孔およびチャンバー531では搬送ドラム53の冷却(冷却エアーの流通)が行われ、吸引領域A1にある吸引孔およびチャンバー531では用紙の吸引(負圧形成)が行われる。
【0139】
言い換えると、印刷ジョブの実行時に搬送ドラム53に載置され搬送される1枚の記録媒体Pとの関係では、搬送方向における用紙先端側に位置するチャンバー531Lが非吸引領域A2に来ると、当該チャンバー531Lでは吸引孔を介して冷却エアーの流通が行われ、かつ、後続する他のチャンバー531では吸引孔からエアーを吸引するように、「切替部」が構成されている(すなわち機械的構造を有している)。
【0140】
これに対して、「切替部」の構成を、以下に説明するような制御的な要素を加えた構成とすることにより、種々の用途に対応した機能を搬送ドラム53の搬送面53e(吸引孔およびチャンバー531)に担わせることができるようになる。
【0141】
上述した実施の形態では、搬送ドラム53のチャンバー531が、搬送ドラム53の周方向すなわち記録媒体Pの搬送方向に複数(
図3に示す例では3×3=9個)並ぶように配列されている構成を前提とした。一方、チャンバー531の配列の構成(言い換えると、分割または区分けされる態様)は、これに限定されるものではなく、上記と直交する方向すなわち搬送ドラム53の回転軸53dの方向(幅方向)に複数並ぶように配列(区分け)される態様とすることもできる。
【0142】
図8に、搬送ドラム53の周方向に複数並び、かつ、回転軸53dの方向にも複数並ぶように配列されているチャンバー531Aを備えた搬送ドラム53Aの例を示す。なお、
図8に示すチャンバー531Aは、
図3中のチャンバー531Lに対応するチャンバーの変形例であり、
図3中の他のチャンバー531M,531Nも同様に区分けされている。
【0143】
図8に示すように、搬送ドラム53Aのチャンバー531Aは、回転軸53dまたは載置される用紙の幅方向に複数(この例では3つ)並ぶように配列(分割ないし区分け)された、分割チャンバー531-1,531-2および531-3を備えている。そして、これら分割チャンバー(531-1~3)には、各々、連通孔531aが形成されている。
【0144】
かかる配列ないし分割(区分け)の態様に伴い、搬送ドラム53Aでは、
図5B等と比較して分かるように、内部に設けられる管532(532A)も異なる構成となっている。すなわち、管532Aは、各々の分割チャンバーに設けられた連通孔531aと連結するために、かかる分割数(この例では3つ)だけ分岐する構成となっている。
【0145】
また、管532Aにおいて各々の連通孔531aと連結するように分岐された各々の流路には、図示しない公知の電磁弁が配置されている。各々の電磁弁は、制御部40の制御に従って開閉することで、個々の分割チャンバー531(531-1~531-3)に対する流路の開閉や開度調整を個別に行う。
【0146】
総じて、
図8に示す変形例では、搬送ドラム53に、(3×3×3=)27個のチャンバーが配列されるとともに、各々のチャンバーに対して、開閉切替および開度の制御が可能な流路が設けられている。
【0147】
かかる構成を設けることにより、以下のように種々の制御や使い方ができるようになる。
【0148】
一具体例では、搬送方向のサイズが使用可能な最大長よりも短いサイズの記録媒体Pを使用する場合、制御部40による電磁弁の開閉制御により、周方向に沿った3つのチャンバー531L~N、および個々の分割チャンバー531(531-1~531-3)に種々の機能を担わせることができる。
【0149】
すなわち、制御部40は、吸引領域A1(
図3参照)では3つのチャンバー531L,531M,531Nのうちの一部(例えばチャンバー531Lおよび後続の1つのチャンバー531Mの2つだけ)を用紙吸引用として使用するように、所定のタイミングで、残り1つのチャンバー531Nの流路(すなわち電磁弁)を閉じるように制御する。
【0150】
一方、制御部40は、非吸引領域A2では、3つのチャンバー531L,531M,531Nの全てを冷却エアー供給用として使用するように、所定のタイミングで、閉状態となっている1つのチャンバー531Nの流路(電磁弁)を開くように制御する。
【0151】
この場合、用紙吸引ブロアー70は、用紙が載置される位置(
図3中の吸引領域A1を参照)に対応するチャンバー531L,531Mのみに負圧を生じさせて用紙を吸着させ、対して、ドラム冷却ブロアー75は、記録媒体Pが載置される位置と関わりなく、非吸引領域A2に位置するチャンバー531に冷却エアーを供給することができる。
【0152】
このような制御を行うことにより、冷却エアーの供給能力を維持しつつ、用紙吸引に必要な分だけチャンバー531を使用して用紙吸引ブロアー70の消費電力の抑制等を図ることができる。
【0153】
他の例としては、記録媒体Pの専ら中央にインクが吐出され、エネルギー線照射に伴うインクの硬化熱が搬送ドラム53の中央に伝達されることにより、搬送ドラム53の温度上昇の態様が幅方向において異なるような場合が発生し得る。
【0154】
このような場合、制御部40の制御によって電磁弁の開度を調整することにより、非吸引領域A2(
図3参照)において各分割チャンバー531-1~3に供給する冷却エアーの量を変える(この場合、分割チャンバー531-2に供給する冷却エアーの量を他の分割チャンバー(531-1,531-3)よりも多くする)ことができる。
【0155】
あるいは、幅方向のサイズが小さい記録媒体Pを使用する場合に、制御部40による電磁弁の開閉制御により、吸引領域A1(
図3参照)において分割チャンバー531-2だけを用いて当該記録媒体Pを吸引する、といった使い方もできる。
【0156】
図8では、チャンバー531を搬送ドラム53Aの軸方向に沿って3分割した構成例について説明した。一方、かかるチャンバー531の分割数はこれに制限されず、2分割としてもよいし、あるいは、4分割以上の分割数であってもよい。
【0157】
また、
図8では、搬送ドラム53Aの側面における一の接続孔532aに連結される管532Aを、幅方向に沿った分割チャンバー(531-1,531-2,531-3)の各々に対して流路を形成するように分岐する構成とした。
【0158】
さらに他の例として、制御部40は、搬送ドラム53(搬送回転体)によって記録媒体Pを搬送していない場合、かつ、搬送ドラム53(搬送回転体)の温度を測定する用紙温度検知部80(温度測定部)の測定結果に応じて、ドラム冷却ブロアー75(冷却エアー供給部)を稼働させて、搬送ドラム53(搬送回転体)に配置された全てのチャンバー531に冷却エアーを供給する制御を行ってもよい。
【0159】
これは、メンテナンス時や、さらなる外的温度上昇要因により搬送ドラム53の大幅な温度上昇が発生した場合などを考慮したものである。
【0160】
以下、
図9のフローチャートを参照して、本実施の形態における搬送ドラム53の温度制御ないし冷却方法に関する特徴的な処理について説明する。なお、
図9に示すフローチャートは、各ヘッド31~36から吐出されるインクがUV等のエネルギー線硬化型のインクであり、かつ
図5に示す構成例の場合を前提とする。
【0161】
また、
図9に示すフローチャートは、従来と同様に、搬送ドラム53の近傍にヒーターなどの加熱部を設けた構成を前提とする。
【0162】
言い換えると、搬送ドラム53の温度は、記録媒体Pの種類に応じて異なる目標温度を設定する必要がある。上記のような場合、ドラム冷却ブロアー75を稼働させず、ヒーター(加熱部)を稼働させて、搬送ドラム53を当該用紙の種類(坪量等)に応じた設定温度に加熱する必要がある。
【0163】
かくして、印刷ジョブの実行開始に伴って、制御部40は、上述した温度検知部80における各々の温度センサーの出力(検知信号)の監視を開始する(ステップS100)。また、制御部40は、適宜のタイミングでドラム冷却ブロアー75(冷却エアー供給部)の稼働を開始させる。
【0164】
続いて、制御部40は、搬送ドラム53によって搬送されている記録媒体Pの表面温度を検知する一または複数の温度センサーの検知結果に基づいて、搬送ドラム53の温度を特定(推定)する(ステップS110)。
【0165】
一具体例では、制御部40は、上述した第2温度センサーの検知結果および使用される用紙の坪量から、搬送ドラム53の温度を特定(推定)する。
【0166】
あるいは、制御部40は、上述した第1温度センサーの検知結果も参照して、画像形成前およびエネルギー線の照射直後の用紙の各々の表面温度から算出される温度上昇量および使用される用紙の坪量から、搬送ドラム53の温度を特定(推定)してもよい。
【0167】
次のステップS120において、制御部40は、搬送ドラム53の温度(推定値)が目標温度の範囲内にあるか否かを判定する。
【0168】
ここで、制御部40は、搬送ドラム53の温度が目標温度の範囲内にあると判定した場合(ステップS120、YES)、ドラム冷却ブロアー75およびヒーター(加熱部)のいずれも稼働する必要なしと判断して処理を終える。
【0169】
一方、制御部40は、搬送ドラム53の温度が目標温度の範囲内にない(範囲を逸脱している)と判定した場合(ステップS120、NO)、ステップS125に移行する。
【0170】
ステップS125において、制御部40は、特定(推定)された搬送ドラム53の温度が上限値を超過しているか否かを判定する。
【0171】
ここで、制御部40は、特定(推定)された搬送ドラム53の温度が上限値を超過していると判定した場合(ステップS125、YES)、ステップS130に移行する。
【0172】
一方、制御部40は、特定(推定)された搬送ドラム53の温度が上限値を超過していないと判定した場合(ステップS125、NO)、当該温度が下限値を超過していると判断してステップS140に移行する。
【0173】
ステップS130において、制御部40は、ドラム冷却ブロアー75を稼働させて非吸引領域A2に位置するチャンバー531に対する冷却エアーの供給を開始して、上述したステップS110に戻る。
【0174】
一方、ステップS140において、制御部40は、加熱部を稼働させて搬送ドラム53を加熱し、ステップS110に戻る。
【0175】
この後、制御部40は、ステップS110で特定(推定)された搬送ドラム53の温度が印刷に使用する記録媒体Pの種類に応じた温度(目標温度の範囲内の値)になった(ステップS120、YES)と判定されるまで、上述したステップS125、およびステップS130又はステップS140の処理を繰り返す。
【0176】
そして、制御部40は、推定された搬送ドラム53の温度が目標温度の範囲内にある(ステップS120、YES)と判定した場合、処理を終える。
【0177】
なお、制御部40は、ドラム冷却ブロアー75の稼働を開始した後のステップS125の判定結果がNOである(目標温度の下限値を超過している)場合、ステップS140において、ドラム冷却ブロアー75の稼働を停止させる制御を行う。
【0178】
また、制御部40は、再度のステップS125の処理でYESすなわち搬送ドラム53の温度が依然として上限値を超過している(目標温度よりも高い)と判定した場合、ステップS130で以下の制御を行なう。
【0179】
すなわち、制御部40は、再度のステップS130において、ドラム冷却ブロアー75の冷却能力を高めるべく、ドラム冷却ブロアー75における、温度調整部の温度設定を下げる或いは送風部の風速を上げる制御を行う。
【0180】
一方、制御部40は、ステップS125でNO(搬送ドラム53の温度が目標温度よりも低くなった)と判定した場合、ドラム冷却ブロアー75の冷却能力を低くするために、ステップS140で、温度調整部における温度設定を上げる、あるいは送風部における風速を下げる制御を行ってもよい。
【0181】
かくして、制御部40は、ステップS120で搬送ドラム53の温度が目標温度の範囲内になったと判定した場合(ステップS120、YES)、処理を終了する。
【0182】
なお、制御部40は、印刷ジョブの終了までは、適宜、
図9のフローチャートの各処理を繰り返し実行する。かかる処理を繰り返し実行することにより、印刷ジョブ実行中における搬送ドラム53の温度変化が可能な限り抑制され、搬送ドラム53の温度が一定に保たれることにより、ひいては記録媒体Pに印刷される画像の品質を一定に保つことができる。
【0183】
総じて、本実施の形態のインクジェット画像形成装置1は、記録媒体Pを載置可能な載置面(搬送面53e)を有し、回転しながら、搬送面53eに載置された記録媒体Pを搬送する搬送回転体としての搬送ドラム53と、搬送面53eに形成された複数の吸引孔からエアーを吸引することによって搬送面53eに記録媒体Pを吸着させる吸引部としての用紙吸引ブロアー70と、搬送面53eのうち記録媒体Pが載置されていない領域において、搬送ドラム53の内部と外部との間で吸引孔を介して、搬送ドラム53を冷却するための冷却エアーを流通させるように、エアーを吸引する動作と冷却エアーを流通させる動作とを切り替える切替部(切替プレート54、制御部40、等)と、を備える。
【0184】
他の観点からは、インクジェット画像形成装置1は、記録媒体Pを、チャンバー531の一部をなす搬送面53e(載置面)に載せて画像形成部3等に搬送する搬送回転体としての搬送ドラム53と、記録媒体Pを搬送面53eで吸着するために、チャンバー531に連なる管532(流路)に接続してチャンバー531に負圧を生じさせる吸引部(用紙吸引ブロアー70等)と、かかる吸引部により記録媒体Pを吸着しない領域に位置するチャンバー531に、搬送ドラム53よりも低い温度の冷却エアーを供給する冷却エアー供給部(ドラム冷却ブロアー75等)と、を備え、冷却エアー供給部は、管532(流路)を通じて冷却エアーを流通させる構成となっている。
【0185】
上述したような構成を備えた本実施の形態によれば、搬送ドラム53の内部または周囲で冷却エアーが停滞する現象が抑制され、冷却効率が向上する。したがって、本実施の形態のインクジェット画像形成装置1によれば、エネルギー線照射などの外的要因により温度上昇した搬送ドラム53を速やかに冷却することができ、ひいては搬送ドラム53に載置される用紙の温度を安定化させて、用紙印刷画像の品質を担保することができる。
【0186】
上述した実施の形態では、本発明をインクジェット画像形成装置に適用した場合について説明した。一方、上述した各実施の形態の特徴的構成は、例えば胴状の搬送部材を用いて記録媒体を搬送するオフセット印刷機や、印刷胴(搬送回転体)を使用する熱転写方式の画像形成装置など、本実施形態と同様の課題が生じ得る種々の装置に適用することができる。
【0187】
上述した実施の形態では、記録媒体Pとして普通紙や塗工紙といった紙を使用した場合を前提として説明した。一方、インク像が形成される記録媒体Pとしては、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0188】
上述した実施の形態における種々の構成例は、必要(例えば余剰スペースとの関係など)に応じて、あるいはコストや目的等に応じて、適宜または任意に組み合わせることができる。
【0189】
その他、上記実施の形態および構成例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0190】
1 インクジェット画像形成装置(画像形成装置)
2 用紙搬送部
3 画像形成部
10 データ入力部
11 給紙部
25 搬送切替部
26 用紙反転部
28 排紙部
30 ヘッド駆動部
31~36 ヘッド(画像形成部)
40 制御部(切替部)
51b,51f スイングアーム部
52 受け渡しローラー
53,53A 搬送ドラム(搬送回転体)
53a,53b,53c 爪部
53d 回転軸
53e 搬送面(載置面)
54 切替プレート(切替部)
55 側板
56,57,58,59 搬送ローラー
60 エネルギー線照射部
70 用紙吸引ブロアー(吸引部)
70a 管
71 管
75 ドラム冷却ブロアー(冷却エアー供給部、送風部、温度調整部)
75A 吸引ブロアー(冷却エアー吸引部)
75a 管
76 冷却部
76A 冷却部
80 温度検知部(温度測定部)
280 ベルト搬送部
300 画像形成装置本体
531(531L、531M、531N),531A チャンバー
531-1,531-2,531-3 分割チャンバー
531a 連通孔
532,532A 管(流路)
532a 接続孔
541 連通開口
542 連通開口
551 ばね
A1 吸引領域(第1の回転位置)
A2 非吸引領域(第2の回転位置)
P 記録媒体