(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電磁誘導型発電装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240116BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240116BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2019232726
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】高柳 善信
(72)【発明者】
【氏名】海野 晶裕
(72)【発明者】
【氏名】茂森 才耀
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6351884(JP,B1)
【文献】特開2001-314084(JP,A)
【文献】特開平11-032480(JP,A)
【文献】特開2002-131344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R15/00-17/22
G16Y10/00-40/60
H02J50/00-50/90
H02M3/00-3/44
H02M7/00-7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送配電線に取り付け可能な磁性コアと、
前記磁性コアに巻回された発電コイルと、
前記発電コイルの両端に現れる交流を直流に変換するスイッチング電源回路と、を備え、
前記スイッチング電源回路は、前記交流を脈流に整流する整流回路を含み、前記直流の電圧レベルが第1の所定値を超えたことに応答して、前記脈流の電圧レベルが第2の所定値を超える期間に前記スイッチング動作を停止させることにより無効電力を増加させることを特徴とする電磁誘導型発電装置。
【請求項2】
前記スイッチング電源回路は、前記直流の電圧レベルを変換し、電圧変換された直流をIoTデバイスに供給する電圧変換回路を含み、
前記スイッチング電源回路は、前記電圧変換回路の電力損失及び前記IoTデバイスが消費する負荷電力と有効電力が等しくなるよう、無効電力を調整することを特徴とする請求項
1に記載の電磁誘導型発電装置。
【請求項3】
前記磁性コアは、第1の送配電線に取り付け可能な第1の磁性コアと、第2の送配電線に取り付け可能な第2の磁性コアを含み、
前記発電コイルは、前記第1の磁性コアに巻回された第1の発電コイルと、前記第2の磁性コアに巻回された第2の発電コイルを含み、
前記スイッチング電源回路は、前記第1及び第2の発電コイルの両端に現れる交流を合成して直流に変換することを特徴とする請求項
1又は2に記載の電磁誘導型発電装置。
【請求項4】
前記第1の発電コイルの両端に現れる交流と前記第2の発電コイルの両端に現れる交流の位相が互いに異なることを特徴とする請求項
3に記載の電磁誘導型発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電線監視システムに使用される電磁誘導型発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送配電線に取り付けられてその状態をモニタリングする監視装置が知られている。この監視装置を用いた送配電線監視システムは、送配電線の状態を監視しそのデータを送信する子機と、鉄塔に設置され気象状況などを送信する子機と、それらのデータを蓄積して送配電線電流容量を制御する監視センターにすべてのデータを送信する親機とからなる。この送配電線監視システムは、送配電線の電流、電圧、張力、電線傾斜角、高さ、温度、コロナ放電、電線周囲の気象や環境状態を監視し、送配電線の保守、送配電線電流や外部環境要因による電線温度変化を随時演算し、送配電容量を動的に算出・管理するダイナミックレーティング(Dynamic Line Rating)に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、送電線の異常振動を検出するための振動検出装置が記載されている。振動検出装置の電源には、送電線の周囲に発生する磁界の変化による電磁誘導を利用した発電装置、あるいは太陽光発電装置が用いられている。
【0004】
また特許文献2には、電磁誘導方式の電源装置を用いた監視カメラシステムが記載されている。この監視カメラシステムは、送・配電線路に着脱可能に設けられ、電磁誘導方式で電力を生成する発電用CTコアと、発電用CTコアから発生した交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、動画を撮影するカメラモジュールと、カメラモジュールの出力データを外部に伝送する無線通信モジュールとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-93342号公報
【文献】特表2016-517261号公報
【文献】特許第6351884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示すように、送配電線に流れる電流は電力需要により大きく変動する。送配電線に流れる電流が変動しても監視装置が安定的に動作するためには、送配電線に流れる電流が最小値I
1のときでも監視装置が動作可能な最低限の電圧Vminが常に発電されるように電磁誘導型発電装置を設計する必要がある。
【0007】
一方、送配電線に流れる電流で発電する電磁誘導型発電装置では、送配電線の電流の増加と共に二次電流も増加する。そのため、
図6に示すように、送配電線に流れる電流が非常に大きい場合には、発電される電力も非常に大きくなる。このように発電量が増加しているにもかかわらず、監視装置が一定の消費電力で動作している場合には、余分な電力が大量に発生することなるため、熱に変換するなど、何らかの方法で余剰電力を消費する必要がある。
【0008】
しかしながら、余剰電力を熱に変換する場合、監視装置の不要な温度上昇を招くことになり、監視装置内の部品や素子の劣化が加速するおそれがある。また例えば、高圧送電線には数千アンペア以上の大電流が流れる場合があるが、大電流によって発生した余剰電力をすべて熱に変換することは極めて困難である。さらに監視装置が架空送電線や地中送電線に設置される場合、その設置やメンテナンスは非常に困難である。そのため、そのような場所に設置される監視装置には、一度設置したら例えば10年以上の長期間にわたって安定的に動作することが求められていることから、高温化等による監視装置の特性劣化を極力防止することが望ましい。
【0009】
一方、特許文献3には、発電コイルと整流回路の間にインピーダンス不整合手段を設け、インピーダンス不整合手段によって無効電力を制御することによって、送電線に流れる電流量にかかわらず安定した発電動作を行う方法が提案されている。しかしながら、特許文献3に記載された方法では、スイッチング電源回路の他に、複数のキャパシタ及び複数のスイッチからなるインピーダンス不整合手段が必要であり、回路規模が大きくなるという問題があった。また、インピーダンス不整合手段によって制御可能なインピーダンスは離散的であり、無効電力をリニアに制御することはできなかった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、進相コンデンサ及びコンデンサ容量切替手段などによる、回路規模の増大を抑えつつ、無効電力をより細かく制御することによって、送配電線に流れる電流量にかかわらず安定した発電動作、すなわち有効電力の供給を行うことが可能な電磁誘導型発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による電磁誘導型発電装置は、送配電線に取り付け可能な磁性コアと、磁性コアに巻回された発電コイルと、発電コイルの両端に現れる交流を直流に変換するスイッチング電源回路とを備え、スイッチング電源回路は、直流電力の電圧レベルに基づいてスイッチング動作を停止させることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、スイッチング動作を停止させることによって無効電力を増加させることができるため、送配電線に流れる電流量にかかわらず安定した発電動作すなわち有効電力の供給を行うことが可能となる。しかも、スイッチング動作を停止させる期間の長さによって、無効電力の量を微調整できることから、無効電力をより細かく制御することが可能となる。
【0013】
本発明において、スイッチング電源回路は、直流の電圧レベルが第1の所定値を超えたことに応答して、スイッチング動作を間欠的に行うことにより無効電力を増加させても構わない。これによれば、直流の電圧レベルが第1の所定値を超えると有効電力が減少することから、送配電線に流れる電流量が大きい場合であっても、発電量を抑えることが可能となる。
【0014】
本発明において、スイッチング電源回路は、交流を脈流に整流する整流回路を含み、直流の電圧レベルが第1の所定値を超えたことに応答して、脈流の電圧レベルが第2の所定値を超える期間にスイッチング動作を停止させても構わない。これによれば、負荷に流れる電流量が大きくなる期間にスイッチング動作が停止することから、発電量を効果的に抑えることが可能となる。
【0015】
本発明において、スイッチング電源回路は、直流の電圧レベルを変換し、電圧変換された直流をIoTデバイスに供給する電圧変換回路を含み、スイッチング電源回路は、電圧変換回路の電力損失及びIoTデバイスが消費する負荷電力と有効電力が等しくなるよう、無効電力を調整しても構わない。これによれば、余剰電力が発生しないことから、発熱を最小限に抑えることが可能となる。
【0016】
本発明において、磁性コアは、第1の送配電線に取り付け可能な第1の磁性コアと、第2の送配電線に取り付け可能な第2の磁性コアを含み、発電コイルは、第1の磁性コアに巻回された第1の発電コイルと、第2の磁性コアに巻回された第2の発電コイルを含み、スイッチング電源回路は、第1及び第2の発電コイルの両端に現れる交流を合成して直流に変換しても構わない。これによれば、一方の送配電線から電力供給されない場合であっても、安定した発電動作すなわち有効電力の供給を継続することが可能となる。
【0017】
この場合、第1の発電コイルの両端に現れる交流と第2の発電コイルの両端に現れる交流の位相が互いに異なっていても構わない。これによれば、位相の異なる交流が合成されることから、より安定した直流を得ることが可能となる。
【0018】
さらに本発明による送配電線監視システムは、上述した本発明の特徴を有する電磁誘導型発電装置と、直流によって送配電線の監視動作を行うIoTデバイスとを備えることを特徴とする。本発明によれば、送配電線に流れる一次電流が非常に小さいときでも所望の電力を発電でき、センサ、制御回路、通信手段などを含むIoTデバイスに対して安定的に電力を供給することができる。また一次電流が非常に大きいときには、二次巻線からの出力電圧の増加は一次電流に比例せず、出力電圧の増加が抑制されるので、余剰電力の発生を抑えることができ、余剰電力を熱に変換することによる不要な温度上昇を防止することができる。これにより、電力供給を受けるIoTデバイスの性能の低下等を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、進相コンデンサおよびコンデンサ容量切替手段などによる、回路規模の増大を抑えつつ、無効電力をより細かく制御することによって、送配電線に流れる電流量にかかわらず安定した発電動作すなわち有効電力の供給を行うことが可能な電磁誘導型発電装置及びこれを用いた送配電線監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による送配電線監視システム1Aの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、スイッチング動作を継続した場合におけるインダクタ電流I
Lの変化を示す波形図である。
【
図3】
図3は、入力電圧Vin及び入力電流Iinの変化を示す波形図である。
【
図4】
図4は、スイッチング動作を間欠的に行った場合におけるインダクタ電流I
Lの変化を示す波形図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態による送配電線監視システム2Aの構成を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、従来の電磁誘導型発電装置の動作を示す説明図であって、送配電線に流れる電流と電磁誘導型発電装置の出力電圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による送配電線監視システム1Aの構成を概略的に示す図である。
【0023】
図1に示すように、第1の実施形態による送配電線監視システム1Aは、送配電線3に流れる電流によって発電する電磁誘導型発電装置1と、電磁誘導型発電装置1から電力の供給を受けて送配電線3の監視動作を行うIoTデバイス4とを備えている。電磁誘導型発電装置1はIoTデバイス4の電源となるものであり、IoTデバイス4は電磁誘導型発電装置1の出力端子に接続されている。IoTデバイス4の種類は特に限定されず、送配電線3の物理的又は電気的な状態を計測する各種センサモジュールであってもよく、遠隔監視カメラなどであってもよい。IoTデバイス4は通信機能を有し、センサやカメラで収集したデータをサーバに向けて送信することができる。
【0024】
送配電線3は架空送電線であることが好ましく、送電電圧が66kV以上の高圧送電線であることがさらに好ましい。架空送電線は地上から数十メートル以上の高所に架設されているため、また地中送電線は、洞道、トンネル及びマンホール内に架設されているため、電磁誘導型発電装置1とIoTデバイス4からなる送配電線監視システム1Aの設置やメンテナンスが極めて困難であり、さらに送配電線3に流れる電流の変動範囲(ダイナミックレンジ)が例えば50A~3000Aと非常に広く、本発明の効果が顕著だからである。送配電線3には商用周波数(50Hz又は60Hz)の交流電流が流れており、送配電線3の周囲には交番磁界が発生している。交番磁界の大きさは、送配電線3に流れる電流の大きさによって変化する。
【0025】
電磁誘導型発電装置1は、送配電線3に取り付けられるカレントトランス20と、カレントトランス20に接続されたスイッチング電源回路10とを備えている。カレントトランス20は、一次巻線としての送配電線3に取り付けられた磁性コア21と、磁性コア21を介して送配電線3に磁気結合された発電コイル22からなる。磁性コア21は例えば分割型トロイダルコアであり、送配電線3がトロイダルコアの中空部を貫通するように当該送配電線3に取り付けられている。発電コイル22は磁性コア21に所定のターン数で巻回された二次巻線であり、発電コイル22の両端は、スイッチング電源回路10の一対の入力端子に接続されている。
【0026】
スイッチング電源回路10は、発電コイル22の両端に現れる交流すなわち皮相電力を直流に変換する回路であり、整流回路11、チョークコイル12、ダイオード13、トランジスタ14、コンデンサ15、分圧回路16、制御回路17及び電圧変換回路18を有している。
図1に示すように、チョークコイル12とダイオード13は直列に接続され、トランジスタ14及びコンデンサ15は並列に接続されている。整流回路11は、発電コイル22の両端に現れる交流電圧Vinを脈流Vpに変換する。整流回路11から出力される脈流Vpは、チョークコイル12及びトランジスタ14により商用周波数より高い周波数により高周波スイッチングされ、ダイオード13及びコンデンサ15によって直流電圧Voutに変換され、さらに直流電圧Voutは電圧変換回路18により所望の直流電圧に変換され、IoTデバイス4に出力される。
【0027】
分圧回路16は、出力電圧Voutを分圧することによって検出電圧Vdを生成する。制御回路17は、分圧回路16から出力される検出電圧Vdに基づいてスイッチング信号Sを生成する。スイッチング信号Sはトランジスタ14に供給され、これによってトランジスタ14のオンオフが制御される。
【0028】
図2はインダクタ電流I
Lの変化を示す波形図であり、
図3は入力電圧Vin及び入力電流Iinの変化を示す波形図である。
【0029】
制御回路17は、
図2に示すように、インダクタ電流I
Lの波形の包絡線が脈流となるようスイッチング制御を行う。制御回路17によるトランジスタ14のオンオフ制御は、電流臨界モード制御であっても構わないし、電流連続モード制御であっても構わない。その結果、
図3に示すように、時間的に変化する入力電圧Vinに対して、入力電流Iinは同位相の電流が流れ、力率が改善された状態が得られる。したがって、送配電線3に流れる電流が小さい場合には、スイッチング動作によって略力率1、すなわち力率を高めることにより、効率よく発電を行うことができる。
【0030】
これに対し、送配電線3に流れる電流が大きい場合、力率が高められた状態を維持すると、出力電圧Voutが高くなりすぎ、電圧変換回路18及びIoTデバイス4の過電圧による破壊や、消費されない余剰電力によって発熱が生じてしまう。これを防止すべく、送配電線3に流れる電流が大きい場合には、スイッチング動作を停止させることによって無効電力を増やし、有効電力を減らすことで、出力電圧Voutの上昇を防止する。制御回路17がトランジスタ14のスイッチング動作を停止させるか否かは、分圧回路16から出力される検出電圧Vdに基づいて決定される。例えば、検出電圧Vdが所定値以下であればスイッチング動作を実行し、検出電圧Vdが所定値を超えた場合にはスイッチング動作を停止しても構わない。
【0031】
無効電力の調整は、電圧変換回路18の電力損失及びIoTデバイス4が消費する負荷電力と有効電力が等しくなるよう、制御回路17によって制御することが好ましい。これによれば、余剰電力が発生しないことから、発熱を最小限に抑えることが可能となる。
【0032】
スイッチング動作の停止及び再開は、単純に、検出電圧Vdが所定値を超えているか否かに基づいて行っても構わないし、検出電圧Vdが所定値を超えたことに応答してスイッチング動作を間欠的に行うことによって無効電力を増加させても構わない。この場合、
図4に示すように、脈流Vpのピーク近傍においてスイッチング動作を停止させても構わない。これによれば、インダクタ電流I
Lが大きくなる期間にスイッチング動作が停止することから、無効電力がより増加し、有効電力を効果的に抑えることができる。スイッチング動作を停止させる期間は、脈流Vpが所定値を超える期間に設定すれば良く、検出電圧Vdのレベルに応じてこの所定値を変化させることにより、スイッチング動作が停止する期間を微調整することが可能である。
【0033】
以上説明したように、本実施形態による送配電線監視システム1Aは、IoTデバイス4に電力を供給する電磁誘導型発電装置1を備え、電磁誘導型発電装置1は、送配電線3に流れる電流が小さい場合には、スイッチング動作により力率を高めることによって効率よく発電を行い、送配電線3に流れる電流が大きい場合には、スイッチング動作を停止させることによって無効電力を増加させている。これにより、送配電線3に流れる電流量にかかわらず安定した有効電力を得ることが可能となる。しかも、無効電力の調整をスイッチング動作の制御によって行っていることから、進相コンデンサ及びコンデンサ容量切替手段などによる回路規模の増大を抑えつつ、無効電力をより細かく制御することが可能となる。
【0034】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態による送配電線監視システム2Aの構成を概略的に示す図である。
【0035】
図5に示すように、第2の実施形態による送配電線監視システム2Aは、2本の送配電線3A,3Bに流れる電流によって発電する電磁誘導型発電装置2と、電磁誘導型発電装置2から電力の供給を受けて送配電線3の監視動作を行うIoTデバイス4とを備えている。送配電線3A,3Bにはそれぞれカレントトランス20A,20Bが割り当てられている。カレントトランス20A,20Bは、それぞれ磁性コア21A,21Bと、磁性コア21A,21Bに巻回された発電コイル22A,22Bを有し、発電コイル22Aの両端はスイッチング電源回路30に含まれる整流回路11Aに接続され、発電コイル22Bの両端はスイッチング電源回路30に含まれる整流回路11Bに接続される。
【0036】
整流回路11A,11Bの出力は並列接続されており、これによりスイッチング電源回路30は、発電コイル22A,22Bの両端に現れる交流を合成して直流に変換する。その他の基本的な構成は第1の実施形態による送配電線監視システム1Aと同じであることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0037】
本実施形態によれば、スイッチング電源回路30が2つの入力電源を有していることから、仮に、送配電線3A,3Bの一方に流れる電流が停止し、或いは、カレントトランス20A,20Bの一方が故障したとしても、発電動作すなわち有効電力の供給を継続することができる。これにより、より信頼性の高い送配電線監視システムを提供することが可能となる。
【0038】
ここで、送配電線3A,3Bの一方に流れる電流の位相は、互いに異なっていても構わない。この場合、発電コイル22Aの両端に現れる交流と発電コイル22Bの両端に現れる交流の位相がずれることから、脈流Vpがより平滑となる。これにより、より安定した直流を得ることが可能となる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1,2 電磁誘導型発電装置
1A,2A 送配電線監視システム
3,3A,3B 送配電線
4 IoTデバイス
10,30 スイッチング電源回路
11,11A,11B 整流回路
12 チョークコイル
13 ダイオード
14 トランジスタ
15 コンデンサ
16 分圧回路
17 制御回路
18 電圧変換回路
20,20A,20B カレントトランス
21,21A,21B 磁性コア
22,22A,22B 発電コイル