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特許7419826動的架橋オレフィン系重合体組成物、それよりなる成形体及び自動車用部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】動的架橋オレフィン系重合体組成物、それよりなる成形体及び自動車用部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240116BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240116BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20240116BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240116BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20240116BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L23/10
C08L61/06
C08L91/00
C08L47/00
C08K5/56
C08J3/24 Z CES
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020004484
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109946
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】蔡 光珂
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-281530(JP,A)
【文献】特開2016-113614(JP,A)
【文献】特開平04-180945(JP,A)
【文献】特開2009-052057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/16
C08L 23/10
C08L 61/06
C08L 91/00
C08L 47/00
C08K 5/56
C08J 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(F)を含む動的架橋オレフィン系重合体組成物であって、
成分(A)と成分(B)との合計100質量部における成分(A)の含有量が5~50質量部で、成分(B)の含有量が50~95質量部であり、
成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する、成分(C)の含有量が0.1質量部以上20質量部以下、成分(D)の含有量が10~300質量部、成分(E)の含有量が1~20質量部、成分(F)の含有量が0.1~5質量部である、動的架橋オレフィン系重合体組成物
成分(A):ポリプロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体
成分(C):フェノール樹脂架橋剤
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(E):水酸基を有するジエンポリマーの水素添加物であるポリヒドロキシポリオレフィン
成分(F):有機金属化合物
【請求項2】
前記フェノール樹脂架橋剤がアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂である、請求項1に記載の動的架橋オレフィン系重合体組成物。
【請求項3】
前記水酸基を有するジエンポリマーの水素添加物が末端水酸基を有する、請求項1又は2に記載の動的架橋オレフィン系重合体組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の動的架橋オレフィン系重合体組成物の成形体。
【請求項5】
請求項に記載の成形体を含む自動車用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的架橋オレフィン系重合体組成物、この動的架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体及び自動車用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
動的架橋オレフィン系重合体は、機械的物性、耐熱性、耐溶剤性、耐油性及び耐薬品性等の諸特性が良好であるため、自動車、電気機器等の工業部品及び日用品等の製造原料として広く利用されている。
【0003】
このような用途においては、他部材との密着性(接着性)に優れることが要求される。例えば、ウィンドウモール等の自動車内・外装部材においては、植毛を行う際のウレタン系接着剤との接着強度が要求される。しかしながら、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体は分子内に極性基を有しておらず、化学的に不活性であるために、他の樹脂との接着強度が良好ではない。このため、オレフィン系重合体の接着強度向上のための提案がなされている。
【0004】
例えば特許文献1には、オレフィン系ゴムとポリオレフィン系重合体樹脂と水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加物とを含有し、有機パーオキサイドの存在下に動的熱処理して得られた変性熱可塑性エラストマーと、ウレタン系ゴムとが接合された合成樹脂製成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-187209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車の内外装部品のうち、可動、変形する部品、例えばウィンドウモール等は、形状を撓ませることによりシール機能や保持機能を発揮する。従って、これらの部品に用いられる従来の動的架橋オレフィン系重合体組成物及びその成形体は、可動部の動きに追従して速やかに変形し、また長期使用後でも変形戻りを保つ性質(耐ヘタリ性)を有することも求められる。撓んだ状態に長時間曝されることにより所謂ヘタリ(永久歪)が発生して、その反力値が徐々に低下すると、ウィンドウモールにおいては、ガラスのバタツキが発生し、シールにおいては水切り性の悪化等が発生する結果となる。
【0007】
このような状況において、特許文献1の変性熱可塑性エラストマーには、極性樹脂との密着性(接着強度)と耐ヘタリ性の両立という点において、改良の余地がある。
【0008】
本発明は、上記の従来技術における問題点に着目し、極性樹脂に対する密着性と耐ヘタリ性とを両立させた動的架橋オレフィン系重合体組成物、それよりなる成形体及び自動車用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリプロピレン系重合体とエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体とフェノール樹脂架橋剤と炭化水素系ゴム用軟化剤と水酸基を有するジエンポリマー及び/又はその水素添加物とを含む動的架橋オレフィン系重合体組成物とすることで、極性樹脂に対する密着性と耐ヘタリ性とを両立できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]~[6]に存する。
【0011】
[1] 下記成分(A)~(E)を含む動的架橋オレフィン系重合体組成物。
成分(A):ポリプロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体
成分(C):フェノール樹脂架橋剤
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(E):水酸基を有するジエンポリマー及び/又はその水素添加物
【0012】
[2] 前記フェノール樹脂架橋剤がアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂である、[1]に記載の動的架橋オレフィン系重合体組成物。
【0013】
[3] 前記水酸基を有するジエンポリマー及び/又はその水素添加物が末端水酸基を有する、[1]又は[2]に記載の動的架橋オレフィン系重合体組成物。
【0014】
[4] 更に下記成分(F)を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の動的架橋オレフィン系重合体組成物。
成分(F):有機金属化合物
【0015】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の動的架橋オレフィン系重合体組成物の成形体。
【0016】
[6] [5]に記載の成形体を含む自動車用部品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、極性樹脂に対する密着性と耐ヘタリ性とを両立させた動的架橋オレフィン系重合体組成物、それよりなる成形体及び自動車用部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0019】
本発明において、ポリプロピレン系重合体又はエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体における「単位」とは、原料であるオレフィン又は非共役ジエンが重合した結果、得られるポリプロピレン系重合体又はエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体に形成される当該オレフィン又は非共役ジエン由来の構成単位をさす。例えば、「プロピレン単位」とは、プロピレンが重合した結果生じる、プロピレン1個当たりの単位である。
ポリプロピレン系重合体又はエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体中の各単位の含有率は赤外分光法により求めることができる。
【0020】
[動的架橋オレフィン系重合体組成物]
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物は、下記成分(A)~(E)を含むものであり、更に下記成分(F)を含むことが好ましい。
成分(A):ポリプロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体
成分(C):フェノール樹脂架橋剤
成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤
成分(E):水酸基を有するジエンポリマー及び/又はその水素添加物
成分(F):有機金属化合物
【0021】
<成分(A):ポリプロピレン系重合体>
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物は、成分(A):ポリプロピレン系重合体を含有する。
前記ポリプロピレン系重合体は特に限定されず、プロピレン単独重合体、プロピレンと他の共重合成分とのブロック共重合体又はランダム共重合体等であるプロピレン系共重合体のいずれであっても使用することができる。なお、成分(A):ポリプロピレン系重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ここで、前記プロピレン系共重合体とは、プロピレン単位の含有率が50質量%よりも多いものを意味する。耐熱性、剛性、結晶性、耐薬品性等の観点から、プロピレン系共重合体中のプロピレン単位の含有率は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。一方、プロピレン系共重合体のプロピレン単位の含有率の上限については特に限定されないが、通常100質量%未満である。
【0023】
成分(A)のポリプロピレン系重合体がプロピレン系共重合体(プロピレン系ブロック共重合体又はランダム共重合体)である場合、プロピレンと共重合する他の共重合成分としては、エチレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等の炭素数2又は4~12のα-オレフィン;シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]-4-ドデセン等の環状オレフィン;5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等のノルボルネン;1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等のジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のビニル単量体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの他の共重合成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エチレン、1-ブテンが好ましい。
【0024】
成分(A)のポリプロピレン系重合体は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、230℃、荷重21.2N)が0.05~200g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.10~100g/10分、更に好ましくは0.5~60g/10分である。このようなMFRを有する成分(A)のポリプロピレン系重合体を使用することにより、良好な成形性を確保することができる。
【0025】
また、成分(A)のポリプロピレン系重合体は、密度(ISO 1183:1987)が0.85~0.92g/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0026】
成分(A)のポリプロピレン系重合体は、公知の製造方法で得ることができる。その製造方法は、例えば特開昭50-108385号公報、特開昭50-126590号公報、特開昭51-20297号公報、特開昭51-28189号公報、特開昭52-151691号公報に詳細に開示されており、本発明においてもこれらに記載されている技術を利用することができる。
【0027】
また、成分(A)のポリプロピレン系重合体は、市販のものを用いてもよい。成分(A)の市販品としては、例えば、プライムポリマー社製のPRIME Polypro(登録商標)、住友化学社製の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社製のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社製のノバテック(登録商標)PP、ウェイマックス(WAYMAX(登録商標))、LyondellBasell社製のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社製のExxonMobil PP、ダウ・ケミカル社製のバーシファイ(登録商標)、Formosa Plastics社製のFormolene(登録商標)、Borealis社製のBorealis PP、LG Chemical社製のSEETEC PP、A.Schulman社製のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社製のINEOS PP、Braskem社製のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社製のSumsung Total、Sabic社製のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社製のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社製のYUPLENE(登録商標)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
<成分(B):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体>
成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体は、共重合成分としてエチレンとα-オレフィンと非共役ジエン(「非共役ジエン化合物」とも称される。)とを含有する共重合体である。
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体には、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体と炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物(以下、「油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体」と称することもある。)である油展タイプのものと、炭化水素系ゴム用軟化剤を含まない非油展タイプのものがあり、本実施形態では油展タイプの共重合体を意図しているが、低油展タイプあるいは非油展タイプのものも好適に用いることができる。
すなわち、本発明において、成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体は、油展タイプと非油展タイプのいずれでも使用可能であり、非油展タイプのもの又は油展タイプのものの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また油展タイプの1種又は2種以上と非油展タイプの1種又は2種以上とを任意の組み合わせ及び比率で用いることもできる。
なお、ここで、成分(B)が油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体である場合、この油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体に含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(D)としての炭化水素系ゴム用軟化剤に含まれるものである。
【0029】
成分(B)中のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数3~20のα-オレフィン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、動的架橋時の架橋剤による架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテンがより好ましく、更に好ましくはプロピレン、1-ブテンである。なお、α-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
成分(B)中の非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロへキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロオクタジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)等のエチリデンノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)等のメチレンノルボルネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性等の観点から、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニリデンノルボルネンが好ましく、より好ましくはジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネンである。なお、非共役ジエンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体等のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)や、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)が好ましい。なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体中のエチレン単位の含有率は、特に限定されないが、50~80質量%が好ましく、より好ましくは55~80質量%であり、更に好ましくは60~80質量%である。エチレン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、機械的強度やゴム弾性に優れる動的架橋オレフィン系重合体組成物が得られ易い傾向にある。
【0033】
また、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体中のα-オレフィン単位の含有率は、特に限定されないが、10~49.5質量%が好ましく、より好ましくは10~44質量%、更に好ましくは10~38質量%である。α-オレフィン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、機械的強度、適度な柔軟性、ゴム弾性に優れる動的架橋オレフィン系重合体組成物が得られ易い傾向にある。
【0034】
更に、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体中の非共役ジエン単位の含有率は、特に限定されないが、0.5~10質量%が好ましく、より好ましくは1~10質量%であり、更に好ましくは2~10質量%である。非共役ジエン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、架橋性や成形性の調整が容易となり、機械的強度やゴム弾性に優れる動的架橋オレフィン系重合体組成物が得られ易い傾向にある。
【0035】
本発明において、成分(B)としては、特に、エチレン単位の含有率が55~75質量%であり、プロピレン単位の含有率が15~40質量%であり、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及びビニリデンノルボルネンよりなる群から選択される少なくとも1種の非共役ジエン単位の含有率が1~10質量%のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体が好ましい。
【0036】
なお、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)等の成分(B)の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法を適用することができる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等でEPDM等の成分(B)を製造することができる。
【0037】
本発明において用いる成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体(非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体、即ち、油展されていないエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体)のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、45以上であることが好ましく、より好ましくは50以上である。非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、特に好ましくは50~400、とりわけ好ましくは50~300である。油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、特に限定されないが、好ましくは30~100、より好ましくは35~80である。
成分(B)のムーニー粘度が上記下限値以上であると圧縮永久歪みが良好となり、得られる成形体の外観を良好にする観点からも好ましく、また、上記上限値以下であると成形性の観点から好ましい。
【0038】
本発明において、成分(B)の油展前エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体と油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)の関係は、特開平1-103639号公報に記載されているように下記式で表される。
計算式:log(ML/ML)=0.0066(ΔPHR)
ML:油展前エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度
ML:油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度
ΔPHR:エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体100質量部当たりの油展量
【0039】
また、成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体の密度は、特に限定されないが、0.850g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.860g/cm以上であり、一方、0.900g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm以下である。成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体の密度が上記好ましい数範囲内であると、加工性、成形性、柔軟性等に優れる動的架橋オレフィン系重合体組成物が得られ易い傾向にある。なお、ここで、成分(B)の密度は、ISO 1183:1987に基づいて測定することができる。
【0040】
前述の通り、成分(B)として油展タイプのエチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体を用いることもできる。油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体において、炭化水素系ゴム用軟化剤は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を軟化させ、柔軟性と弾性を増加させるとともに、得られる動的架橋オレフィン系重合体組成物の加工性や流動性を向上させる等の目的のために使用される。
【0041】
油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体に用いる炭化水素系ゴム用軟化剤としては、例えば鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤が挙げられ、これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。鉱物油系ゴム用軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50質量%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30~45質量%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35質量%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、成分(B)の油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系ゴム用軟化剤(パラフィン系オイル)が好ましい。なお、炭化水素系ゴム用軟化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
成分(B)の油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体に用いるパラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常20cSt(センチストークス)以上、好ましくは50cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。更に、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
【0043】
成分(B)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を用いる際の、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体と炭化水素系ゴム用軟化剤との含有比率は、特に限定されないが、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体100質量部に対し、炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量が、通常10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上であり、一方、通常200質量部以下であり、好ましくは160質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。
【0044】
油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を調製する方法(油展方法)は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。油展方法としては、例えば、ミキシングロールやバンバリーミキサーを用い、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体と炭化水素系ゴム用軟化剤を機械的に混練して油展する方法、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体の溶液に所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加し、その後スチームストリッピング等の方法により脱溶媒する方法、クラム状のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体と炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物をヘンシェルミキサー等で撹拌して含浸させる方法が挙げられる。高分子量の油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を調製する観点からは、成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体の重合反応溶液又は懸濁液中に、所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加した後、溶媒を除去する方法が好ましい。
【0045】
なお、成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体としては、各種グレードのものが国内外のメーカから数多く市販されており、その市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、JSR社製のJSR EP、三井化学社製の三井EPT(登録商標)、住友化学社製のエスプレン(登録商標)、ARLANXEO社製のKeltan(登録商標)が挙げられる。
【0046】
<成分(C):フェノール樹脂架橋剤>
成分(C)のフェノール樹脂架橋剤としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド、臭化アルキルフェノールホルムアルデヒド等が挙げられる。これらのフェノール樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
成分(C)のフェノール樹脂架橋剤としては、特に非ハロゲン系のアルキルフェノールホルムアルデヒドが好ましく、具体的には、下記式(I)で表されるものが好ましい。
【0048】
【化1】
【0049】
(式中、Qは、-二価の連結基-CH-、又は-CH-O-CH-から選択され、nは0~20の整数であり、Rは炭素数20未満、好ましくは炭素数1~12のアルキル基。)
【0050】
上記非ハロゲン系のアルキルフェノールホルムアルデヒドの製品例としては、田岡化学工業(株)製のTACKIROL 201、202(商品名)、群栄化学工業(株)製のPR-4507(商品名)、Hoechst社製のVulkaresat 510E、532E、Vulkaresen E、105E、130E、Vulkaresol 315E(商品名)、Rohm&Haas社製のAmberol ST 137X(商品名)、住友デュレズ(株)製のスミライトレジン PR-22193(商品名)、Anchor Chem.社製のSymphorm-C-100、C-1001(商品名)、荒川化学工業(株)製のタマノル 531(商品名)、Schenectady Chem.社製のSchenectady SP1045、SP1055、SP1056、SP1059(商品名)、U.C.C社製のCRR-0803(商品名)、昭和ユニオン合成(株)製のCRM-0803(商品名)、Bayer社製のVulkadur A(商品名)が挙げられる。
【0051】
成分(C)の非ハロゲン系のアルキルフェノールホルムアルデヒドとしては、下記式(II)で表されるp-オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂が特に好ましく用いられ、その中でも質量平均分子量が2,500~4,000のものが最も好ましく用いられる。かかる非ハロゲン系フェノール樹脂としては、上記のTACKIROL 201、202(商品名)として市販されているものを利用することができる。
【0052】
【化2】
【0053】
また、フェノール樹脂架橋剤は、通常、活性化剤と共に使用される。ここで用いることができる活性化剤としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレンのようなハロゲン供与体、及び酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛のような受酸剤が用いられる。フェノール系樹脂がハロゲン化されている場合にはハロゲン供与体は用いなくてもよい。
【0054】
なお、フェノール樹脂架橋剤として市販されているものには、後述の成分(D)に該当する炭化水素系ゴム用軟化剤や、充填剤を含むものがあるが、使用するフェノール樹脂架橋剤に炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれる場合、当該炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(D)としての炭化水素系ゴム用軟化剤に含まれるものとする。また、充填剤についても同様である。
【0055】
<成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤>
本発明の動的架橋熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性や弾性を増加させるとともに、加工性や流動性を向上させる観点から、成分(D)として炭化水素系ゴム用軟化剤を含有する。なお、この成分(D)には、上述した成分(B)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を使用する際、その中に含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれるが、成分(B)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を用いる場合も、この油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体とは別に成分(D)として炭化水素系ゴム用軟化剤を別添加することが好ましい。この場合、別添加する炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(B)の油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体中の炭化水素系ゴム用軟化剤と同一、同種、異種の炭化水素系ゴム用軟化剤のいずれでも用いることができる。成分(C)のフェノール樹脂架橋剤に炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれる場合についても同様である。
【0056】
成分(B)とは別添加する炭化水素系ゴム用軟化剤としては、例えば鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤等が挙げられ、これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。前述の通り、鉱物油系ゴム用軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50質量%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30~45質量%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35質量%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、炭化水素系ゴム用軟化剤としては、常温(23±2℃)で液体である液状炭化水素系ゴム用軟化剤が好ましく、常温で液体である液状パラフィン系オイルがより好ましい。炭化水素系ゴム用軟化剤として液状炭化水素系ゴム用軟化剤を用いることで、本発明の動的架橋熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性や弾性を増加させることができ、また加工性や流動性が飛躍的に向上する傾向にある。炭化水素系ゴム用軟化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
パラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常20cSt以上、好ましくは50cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。更に、引火点は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
【0058】
なお、成分(B)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を使用する際にも、成分(D)として炭化水素系ゴム用軟化剤を別添することにより、成分(D)の炭化水素系ゴム用軟化剤の含有割合を油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体中の炭化水素系ゴム用軟化剤の含有割合に依存せずに、任意に調整することが可能である。
【0059】
上記炭化水素系ゴム用軟化剤の製品例としては、例えば、日本油脂(株)製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油、商品名)、出光興産(株)のPW-90(n-パラフィン系プロセスオイル、商品名)、出光石油化学(株)製のIP-ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8質量%以上のイソパラフィン、商品名)、三光化学工業(株)製のネオチオゾール(n-パラフィン系プロセスオイル、商品名)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0060】
<成分(E):水酸基を有するジエンポリマーの水素添加物>
本発明で使用する水酸基を有するジエンポリマーの水素添加物としては、例えばポリヒドロキシポリオレフィンがある。具体的には、少なくとも一個の水酸基(好ましくは末端水酸基)を有し、数平均分子量が通常200~100,000、好ましくは500~50,000、より好ましくは800~10,000の、常温で液体、半固体、又は固体のポリマーが挙げられる。1分子当りの平均水酸基数は、通常1~10、好ましくは1.5~5である。また、水酸基価は、通常15~250、好ましくは25~125KOHmg/gである。
【0061】
ジエンポリマーの水素添加物は、例えば特開昭51-71391号公報に記載の方法で水素添加することによって得られる。水素添加は、ポリマー中に含まれる二重結合の全部又は一部について行なわれる。水素添加物のヨウ素価は、通常0~20g/100g、好ましくは0~5g/100gである。
【0062】
上記水酸基を有するジエンポリマーの水素添加物の製品例としては、例えばポリヒドロキシポリオレフィン(三菱ケミカル(株)製:ポリテールH)が挙げられる。
【0063】
成分(E)の水酸基を有するジエンポリマー及び/又はその水素添加物は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0064】
<成分(F):有機金属化合物>
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物は、更に有機金属化合物を含んでいてもよい。
有機金属化合物を含むことで、有機金属化合物が成分(E)のジエンポリマー及び/又はその水素添加物の水酸基と接着剤との反応に触媒として働き、常温でも優れた接着効果を発現させることができる。
【0065】
使用する有機金属化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ニッケル化合物、有機ジルコニウム化合物、有機コバルト化合物、有機銅化合物、有機鉄化合物、有機マンガン化合物が挙げられる。これらの有機金属化合物は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0066】
これらのうち、触媒作用が高い観点から有機スズ化合物が好ましく、有機スズ化合物としては、具体的にはジブチル二塩化スズ、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸2-エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチル)、ジオクチルスズジラウラートが挙げられる。
【0067】
<配合割合>
本発明の動的架橋熱可塑性エラストマー組成物において、成分(A)及び成分(B)の含有量は、成分(A)が5~50質量部、成分(B)が50~95質量部であることが好ましい(ただし、成分(A)と成分(B)との合計で100質量部とする。)。成分(A)と成分(B)の含有量を上記範囲内とすることで、所望の硬度とゴム弾性を維持でき、成形外観を良好にすると共に、耐油性を維持することができる。この観点から、成分(A)と成分(B)の合計100質量部中の成分(A)の含有量は10~50質量部で、成分(B)の含有量は50~90質量部であることが好ましく、成分(A)の含有量は10~45質量部で成分(B)の含有量は55~90質量部であることがより好ましい。
なお、ここで、成分(B)の含有量とは、成分(B)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を用いる場合は、炭化水素系ゴム用軟化剤を含まないエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体としての含有量である。
【0068】
また、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(C)の含有量は、架橋反応を十分に進行させる観点から、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.4質量部以上である。一方、成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、架橋反応を制御する観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下であり、とりわけ好ましくは6質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。
なお、前述の通り、成分(C)に炭化水素系ゴム用軟化剤や充填剤が含まれている場合、これらは成分(C)としての含有量には含まれない。
【0069】
また、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(D)の炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量は10~300質量部であることが好ましい。成分(D)の炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量を上記範囲とすることで、成分(D)による弾性、耐油性、加工性の向上効果を得るとともに、表面からのブリードアウトを抑制できる。この観点から、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(D)の含有量は、20~200質量部であることが好ましく、25~150質量部であることがより好ましい。
なお、ここで、成分(D)の含有量とは、成分(B)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体を用いた場合、成分(B)中の炭化水素系ゴム用軟化剤と、成分(B)とは別添される成分(D)としての炭化水素系ゴム用軟化剤との合計の含有量であり、成分(C)中に炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれる場合は、当該炭化水素系ゴム用軟化剤をも含む合計の含有量である。
【0070】
また、成分(E)は、その含有量を、成分(A)及び(B)の合計100質量部当たり1~20質量部とすることで、所望の接着強度を得やすい傾向にあり、成分(E)の含有量を上記範囲とすることで、極性樹脂との優れた接着性を得るとともにそれ自体の表面からのブリードアウトを抑制し、ブリードアウトによる接着強度低下を防ぐことができる。成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(E)の含有量は、より好ましくは2~10質量部である。
【0071】
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物が成分(F)を含む場合、成分(F)の含有量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部当たり、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、更に好ましくは0.1~3質量部である。成分(F)の含有量を上記範囲とすることで、接着剤、例えば、成形体への植毛用接着剤の密着性に優れ、植毛強度が十分高いものになるとともに、それ自体のブルームを抑制し、ブリードアウトによる植毛強度の低下を防ぐことができる。
【0072】
<その他の成分>
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分(A)~(F)以外の他の成分(本明細書において、単に「その他の成分」と称することがある。)を含有していてもよい。その他の成分としては、成分(A),(B)以外の樹脂やエラストマー(本明細書においてはこれらをまとめて単に「その他の樹脂」と称することがある。)や各種添加剤が挙げられる。
【0073】
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物が含有し得るその他の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ただし、前記成分(A)に該当するものを除く。)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂や、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ゴム等のオレフィン系エラストマー(ただし、前記成分(B)に該当するものを除く。);ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリブタジエン系エラストマー、これらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの、更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたもの等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。
【0074】
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~4のα-オレフィンの単独あるいはこれらを主成分とする共重合体が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、ポリ-1-ブテン等の単独重合体に限らず、炭素数2~4のα-オレフィンを主成分とする限り、他の炭素数5~20のα-オレフィンあるいは酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン等のビニル化合物との共重合体をも含むものである。更には、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその誘導体でグラフト変性されたグラフト共重合体でもよい。更にこれらのポリオレフィン樹脂は混合物であってもよい。
【0075】
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物がその他の樹脂を含む場合、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物中のその他の樹脂の含有量は、その合計で、成分(A)と成分(B)の合計100質量部あたり、40質量部以下とすることが好ましく、30質量部以下とすることがより好ましい。
【0076】
また、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物が含有し得る添加剤としては、フェノール樹脂架橋剤と共に用いられる活性化剤の他、酸化防止剤、結晶核剤、滑剤等の成形加工助剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤、耐加水分解改良剤、顔料、染料等の着色剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、補強剤、充填剤、可塑剤、離型剤、発泡剤等が挙げられる。
【0077】
例えば、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物には、酸化防止剤として、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を配合することができる。
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部あたり、好ましくは0.01~5質量部である。酸化防止剤の含有量が0.01質量部以上であると、耐熱劣化性の改良効果の観点で好ましく、一方、5質量部以下であると、ブリード等の問題を起こしにくい点、組成物の機械的強度の観点等から好ましい。
【0079】
また、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物は、意匠性、耐候性の向上のために、カーボンブラック等の着色剤を含有することが好ましく、この場合、着色剤は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.1~5質量部、特に0.3~3質量部配合することが好ましい。なお、カーボンブラック等の着色剤のような微量配合成分は、ポリオレフィン樹脂等の樹脂のマスターバッチとして配合することが、動的架橋オレフィン系重合体組成物中への均一分散性の面で好ましい。
【0080】
また、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物は、製造安定性、寸法安定性、難燃性向上のために、充填剤を含有してもよく、この場合、充填剤としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる(カーボンブラックは着色剤としても充填剤としても使用可能である。)。充填剤を配合する場合、充填剤は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して通常0.1~200質量部で用いられる。
【0081】
[動的架橋オレフィン系重合体組成物の製造方法]
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物は、上記成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び成分(E)、更に必要に応じて配合される成分(F)、その他の樹脂成分や各種添加剤等を、通常の押出機やバンバリーミキサー、ミキシングロール、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブラベンダー等を用いて常法で混合又は混練或いは溶融混練することで製造することができる。これらの中でも、押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。このとき、成分(A)、(B)、(C)、(D)を混練した後に成分(E)を添加してもいい。
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物を押出機等で混練して製造する際には、通常80~300℃、好ましくは100~230℃に加熱した状態で溶融混練することが好ましい。なお、動的熱処理を行う際の処理時間は、特に限定されないが、生産性等を考慮すると、通常0.1~30分である。
【0082】
ここで、「動的熱処理」とは、上記成分(C)の存在下、溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うことが好ましく、二軸押出機を用いる場合には、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うことがより好ましい。このように上記成分(C)の存在下で溶融混練する動的熱処理を行うことにより、動的架橋オレフィン系重合体組成物を得ることができる。
【0083】
[動的架橋オレフィン系重合体組成物の成形方法]
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物の成形方法には特に制限はなく、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形等の各種成形方法により、成形体とすることができる。これらの中でも押出成形が好適である。また、これらの成形を行った後に積層成形、熱成形等の二次加工を行った成形体とすることもできる。
【0084】
[成形体及び複合成形体]
本発明の成形体は、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物を押出成形等で成形して得られるものである。
【0085】
特に本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物は、極性樹脂との密着性に優れることから、極性樹脂との複合成形体とする用途に好適に用いることができる。例えば、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体上に極性樹脂を成形することにより、動的架橋オレフィン系重合体組成物と極性樹脂とが強固に接着した架橋オレフィン系重合体組成物/極性樹脂複合成形体を容易に得ることができる。この場合、動的架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体に対してコロナ放電等の電気的処理、機械的粗面化、火炎処理、酸素処理又はオゾン処理等の表面処理を行って極性樹脂に対する親和性を向上させる予備処理やプライマー処理等の前処理を行うことなく、直接極性樹脂と接合することで、極性樹脂との密着性に優れた複合成形体を得ることができる。このような複合成形体の製造方法としては、例えば、動的架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体を部品製造用の型枠内に配置した後、極性樹脂原液を流し入れて型閉めし、極性樹脂の成形と接着を同時に行う方法等が挙げられる。
【0086】
このような複合成形体に適用される極性樹脂としては、ウレタン樹脂、ウレタンフォーム、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。これらの中では、ウレタン樹脂、ウレタンフォーム、メラミン樹脂、アルキド樹脂が好ましい。
【0087】
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体は、極性樹脂系の塗料や接着剤、例えばウレタン樹脂系塗料、アミノ樹脂系塗料等の塗料や、ウレタン樹脂系接着剤、アミノ樹脂系接着剤等に対する密着性にも優れているため、このような塗料を用いて塗装を施したり、上記の接着剤を用いて部品同士を接着する用途にも好適である。
【0088】
いずれの場合においても、極性樹脂系の塗料や接着剤との密着性を向上させるためのプライマー処理や表面処理を不要とすることができ、処理装置及び製造工程の削減、製造コストの低減を図ることができる。
【0089】
[用途]
本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物よりなる本発明の成形体或いはこの成形体を極性樹脂と直接接合させてなる複合成形体は、各種工業部品、例えば、自動車用部品、オートバイ部品、電気機器部品、日用品、建材、事務機器、包装資材、スポーツ用品、医療用品等に広く使用することができる。
これらのうち、特に自動車用部品として好適であり、具体的には、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバッグカバー等の自動車内装部品;モール、バンパー等の自動車外装部品;ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションブーツ、等速ジョイントブーツ等の自動車機能部品;が挙げられる。
【0090】
本発明の成形体は耐ヘタリ性に優れるので、上記の中でも自動車の昇降自在ドアガラスを固定するウィンドウモール構造に好適に用いることができる。本発明の成形体をウィンドウモールに適用することで、ドアガラスの昇降に追従して速やかに変形し、また長期使用後でも変形戻りを保つことができ、モールとしての防塵、水拭き役割を有効に発揮させることができる。
【実施例
【0091】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0092】
[原材料]
以下の実施例及び比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
【0093】
<成分(A):ポリプロピレン系重合体>
(A-1):日本ポリプロ株式会社製 ノバテック(登録商標)PP
プロピレン単位含有率:100モル%
MFR(230℃、21.2N):2.5g/10分
密度(ISO 1183:1987):0.90g/cm
【0094】
<成分(B):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体>
(B-1)+(D-1)混合物:エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体(成分(B-1))100質量部あたり以下の成分(D-1)100質量部を含有する油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体
油展前ムーニー粘度(ML1+4、125℃):292
油展後ムーニー粘度(ML1+4、125℃):64
成分(B-1)のエチレン単位含有率:67モル%
成分(B-1)のプロピレン単位含有率:28.5モル%
成分(B-1)の5-エチリデン-2-ノルボルネン単位含有率:4.5モル%
密度(ISO 1183:1987):0.86g/cm
【0095】
<成分(C):フェノール樹脂架橋剤>
(C-1)+(D-1)混合物:以下の成分(C-1)30質量部と以下の成分(D-1)70質量部との混合物
(C-1):両末端がメチロール基であるアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂
田岡化学工業株式会社製 TACKIROL 201
【0096】
<成分(C)以外の架橋剤>
(C-2):有機パーオキサイド
化薬アクゾ株式会社 カヤヘキサAD40C
(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%
と炭酸カルシウム60質量%の混合物)
【0097】
<成分(D):炭化水素系ゴム用軟化剤>
(D-1):パラフィン系オイル
出光興産株式会社製 ダイアナプロセスオイル PW-90
40℃の動粘度:95.54cSt
流動点:-15℃
引火点:272℃
【0098】
<成分(E):水酸基を有するジエンポリマー及び/又はその水素添加物>
(E-1):ポリヒドロキシポリオレフィン
三菱ケミカル株式会社製 ポリテールH
数平均分子量:2800
1分子当りの平均水酸基数:2
水酸基価:50mgKOH/g
【0099】
<成分(F):有機金属化合物>
(F-1):ジオクチルスズジラウラート(DOTDL)
日東化成株式会社製 TVS8501
【0100】
<その他の成分>
<X-1>:充填剤/竹原化学工業株式会社製 タルク PHSH
<X-2>:酸化防止剤/BASFジャパン株式会社製 イルガノックス 1010
<X-3>:受酸剤/和光純薬工業株式会社製 酸化亜鉛
<X-4>:ハロゲン供与体/和光純薬工業株式会社製 塩化第一スズ
<X-5>:架橋助剤/三菱ケミカル株式会社製 TMPMA(純度98.4%)
トリメタクリル酸トリメチロールプロパン
【0101】
[評価方法]
以下の実施例及び比較例における動的架橋オレフィン系重合体組成物の評価方法は以下の通りである。
なお、下記の測定においては、各動的架橋オレフィン系重合体組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)にて、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件下にて、各動的架橋オレフィン系重合体組成物を射出成形して厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシートを得た。
【0102】
<剥離強度>
射出成形シートの表面に、溶剤系1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤(溶媒:トルエン+メチルエチルケトン+酢酸ブチル、不揮発分:47%、構成成分:ジフェニルメタンジイソシアネート/液状ポリブタジエンポリオール/ポリプロピレングリコール/2-エチル-1,3-ヘキサンジオール=33/39/19/8(質量比))をバーコーターで約7μmの厚みとなるように塗り、接着剤が湿潤状態のうちにウレタンテープ(奥田産業株式会社製 ポリコテープ、幅1.5cm)を重ねた。その後、80℃のオーブン中で2分間乾燥し、更に室温で48時間自然乾燥した。
得られた試験片について、ISO 8510-2:1990の規格を参考にして、テープとシートの剥離強度を測定した。
この剥離強度から動的架橋オレフィン系重合体組成物とウレタン系樹脂との密着性を評価した。この値が大きいほど密着性に優れることを示す。
【0103】
<圧縮永久歪み>
射出成形シートについて、ISO 815-1:2008の規格を参考にして、70℃、22時間、25%圧縮条件で圧縮永久歪み測定した。この値が小さいほど、変形した状態に長時間曝されることにより所謂ヘタリ(永久歪)が小さく、耐ヘタリ性に優れることを示す。
【0104】
[実施例1~2、比較例1~3]
各成分を表-1に示す割合で配合し(成分(A)と(B)の合計は100質量部)、混合物を同方向二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30」、L/D=52.5、シリンダブロック数:14)に投入した。上流部から下流部を120~210℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ペレット化して動的架橋オレフィン系重合体組成物を製造した。
この動的架橋オレフィン系重合体組成物について、剥離強度と圧縮永久歪みの評価を実施した。評価結果を表-1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表-1に示す通り、本発明の動的架橋オレフィン系重合体組成物に該当する実施例1、2は、いずれも良好な密着性、耐ヘタリ性を有していることがわかる。
一方、比較例1は成分(E)の水酸基を有するジエンポリマー及び/又はその水素添加物を含まず、密着性が不十分であった。比較例2と比較例3は成分(C)のフェノール樹脂架橋剤の代わりにパーオキサイド架橋剤を使用したものであるが、いずれも密着性が不十分な上、耐ヘタリ性も悪化した。