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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/54 20060101AFI20240116BHJP
   B66C 13/40 20060101ALI20240116BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20240116BHJP
   B66C 23/94 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
B66C13/54 Z
B66C13/40 D
B66C23/42 A
B66C23/94 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020006874
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021113114
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌文
(72)【発明者】
【氏名】金澤 陽介
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-120492(JP,U)
【文献】実開昭61-072582(JP,U)
【文献】特開昭62-008994(JP,A)
【文献】特開2003-171085(JP,A)
【文献】特開平01-285594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/54
B66C 13/40
B66C 23/42
B66C 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、旋回台に起伏可能なブームが設けられているクレーン装置と、走行用操作具およびクレーン装置用操作具を有するキャビンと、を備えた移動式クレーンであって、
前記走行体には、前記キャビンを走行体に配置するための走行体側固定装置が設けられ、
前記旋回台には、前記キャビンを前記旋回台に配置するための旋回台側固定装置が設けられ、
前記キャビンは、
前記クレーン装置によって、前記走行体側固定装置と、前記旋回台側固定装置と、前記走行体側固定装置及び前記旋回台側固定装置以外の場所とに搬送可能に構成され、前記移動式クレーンに固定する場合、前記走行体側固定装置または前記旋回台側固定装置のいずれか一方に着脱可能な状態で保持される移動式クレーン。
【請求項2】
前記キャビンは、前記クレーン装置によって前記走行体側固定装置または前記旋回台側固定装置に固定するための所定位置まで自動的に搬送される請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項3】
前記キャビンの接続位置に応じて前記クレーン装置の作業可能範囲を切り替える請求項1または請求項2に記載の移動式クレーン。
【請求項4】
前記キャビンは、前記走行体と前記旋回台とから分離された状態で前記クレーン装置を操作可能な遠隔操作機能を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の移動式クレーン。
【請求項5】
前記走行用操作具と前記クレーン用操作具とは、バイワイヤシステムによって前記制御装置に接続されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋回台にブームが設けられている移動式クレーンにおいて、クレーン操作時に操縦者が搬送する荷物を視認できるようにキャビンが旋回台に設けられている。このような移動式クレーンの走行時におけるキャビンからの視界は、車両に格納されているブームや走行体によって遮られて死角が生じる。例えば、旋回台にキャビンが設けられているラフテレーンクレーン等は、走行操作時とクレーン操作時とにおけるキャビンの最適な位置が異なる。このため、移動式クレーンは、バックミラーやバックモニター等の死角を補う装備を有しているが、クレーン走行時とクレーン作業時におけるそれぞれの死角を補うには十分でない場合があった。そこで、キャビンを操作内容に応じて適切な位置に移動させることができる移動式クレーンが知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の移動式クレーンは、走行操作およびクレーン操作のための共通の運転キャビンが伸縮可能なキャビンアームを介して上部構造物(旋回台)に設けられている。運転キャビンは、キャビンアームによって道路走行時に台車(走行体)の前端部に配置される。また、運転キャビンは、キャビンアームによってクレーン操作時に上方に持ち上げられる。このように構成することで、移動式クレーンは、キャビンアームによって作業状態に合わせた最適な位置に運転キャビンを配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-256102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成される移動式クレーンは、キャビンアームによってキャビンを移動させることができるが、キャビンアームを介して旋回台と接続されている。つまり、キャビンは、旋回台と常に連動している。従って、引用文献1に記載の移動式クレーンは、キャビンの配置が旋回台の動きによって制限されてしまう点で不利であった。
【0006】
本発明の目的は、移動式クレーンの作業姿勢に影響されない位置にキャビンを配置することができる移動式クレーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、走行体と、旋回台に起伏可能なブームが設けられているクレーン装置と、走行用操作具およびクレーン装置用操作具を有するキャビンと、を備えた移動式クレーンであって、前記走行体には、前記キャビンを走行体に配置するための走行体側固定装置設けられ、前記旋回台には、前記キャビンを前記旋回台に配置するための旋回台側固定装置が設けられ、前記キャビンは、前記クレーン装置によって、前記走行体側固定装置と、前記旋回台側固定装置と、前記走行体側固定装置及び前記旋回台側固定装置以外の場所とに搬送可能に構成され、前記移動式クレーンに固定する場合、前記走行体側固定装置または前記旋回台側固定装置のいずれか一方に着脱可能な状態で保持される移動式クレーンである。
【0009】
第2の発明は、前記キャビンは、前記クレーン装置によって前記走行体側固定装置または前記旋回台側固定装置に固定するための所定位置まで自動的に搬送される移動式クレーンである。
【0010】
第3の発明は、前記キャビンの接続位置に応じて前記クレーン装置の作業可能範囲を切り替える移動式クレーンである。
【0011】
第4の発明は、前記キャビンは、前記走行体と前記旋回台とから分離された状態で前記クレーン装置を操作可能な遠隔操作機能を有する移動式クレーンである。
【0012】
第5の発明は、前記走行用操作具と前記クレーン用操作具とは、バイワイヤシステムによって前記制御装置に接続されている移動式クレーンである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
第1の発明においては、キャビンが走行体と旋回台とから着脱自在に構成されているので、旋回台の動きを考慮した上で、キャビンが作業内容に応じて走行体または旋回台の所定位置に選択的に固定される。これにより、移動式クレーンの作業姿勢に影響されない位置にキャビンを配置することができる。
【0015】
第2の発明においては、移動式クレーンが備えるブームを用いてキャビンが自動的に適切な位置に搬送されるのでキャビンの位置変更が容易になる。これにより、移動式クレーンの作業姿勢に影響されない位置にキャビンを容易に配置することができる。
【0016】
第3の発明においては、キャビンの位置が変更されても旋回台とブームとの干渉が防止される。これにより、移動式クレーンの作業姿勢に影響されない位置にキャビンを配置することができる。
【0017】
第4の発明においては、キャビンが走行体と旋回台から離間されていても、キャビンからの操作信号が制御装置に伝達される。これにより、移動式クレーンの作業姿勢に影響されない位置にキャビンを配置することができる。
【0018】
第5の発明においては、走行体側接続装置または旋回台側接続装置に接続した際に、走行用操作具とクレーン装置用操作具とを機械的に操舵装置、動力装置および各開閉弁に接続する必要がない。これにより、移動式クレーンの作業姿勢に影響されない位置にキャビンを容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】クレーンの全体構成を示す側面図。
図2】クレーンの制御構成を示すブロック図。
図3】遠隔操作端末の概略構成を示す平面図。
図4】遠隔操作端末の制御構成を示すブロック図。
図5】クレーンにおけるキャビンの固定装置の位置を示す平面図。
図6図6は固定装置の第一実施形態における構成を示す。(A)は車両側固定装置を示す平面図と側面図を示し、(B)は旋回体側固定装置を示す平面図と側面図を示す。
図7図7は固定装置によるキャビンの固定態様を示す。(A)はロックピンによるキャビンの固定態様における平面図と部分拡大側面図を示し、(B)はキャビンが固定装置に配置される側面図を示す。
図8】クレーン装置によるキャビンの位置変更の態様を示す側面図。
図9】構造物上に配置されたキャビンを示す模式図。
図10】固定装置の第二実施形態における構成を示す平面図。
図11】n個の車両側固定装置を具備するクレーンの制御構成を示す概略ブロック図。
図12】n個の旋回台側固定装置を具備するクレーンの制御構成を示す概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図1図2および図5とを用いて、本発明における移動式クレーンの第一実施形態であるクレーン1について説明する。なお、本実施形態においては、ラフテレーンクレーンについて説明を行う。
【0021】
図1に示すように、クレーン1は、不特定の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン1は、走行体である車両2、作業装置であるクレーン装置6、キャビン17、および制御装置22を有する。
【0022】
車両2は、クレーン装置6を搬送する移動体である。車両2は、複数の車輪3を有し、エンジン4を動力源として走行する。車両2には、アウトリガ5が設けられている。車両2は、アウトリガ5を車両2の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1の作業可能範囲を広げることができる。車両2には、走行体側固定装置である車両側右固定装置43と車両側左固定装置44および車両側右接続端子45と車両側左接続端子45aとが設けられている。
【0023】
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる装置である。クレーン装置6は、旋回台7、旋回用油圧モータ8、ブーム9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、起伏用油圧シリンダ12、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16およびキャビン17等を具備する。
【0024】
旋回台7は、クレーン装置6を旋回する装置である。旋回台7は、円環状の軸受の中心を回転中心として回転自在に構成されている。旋回台7には、アクチュエータである旋回用油圧モータ8が設けられている。旋回台7は、旋回用油圧モータ8によって一方向と他方向とに旋回可能に構成されている。また、旋回台7には、旋回台側右固定装置48と旋回台側左固定装置49および旋回台側右接続端子50と旋回台側左接続端子50aとが設けられている。
【0025】
旋回用油圧モータ8は、電磁比例切換弁である旋回用バルブ23(図2参照)によって回転操作される。旋回用バルブ23は、旋回用油圧モータ8に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。旋回台7には、旋回台7の基準位置からの旋回した角度である旋回角度を検出する旋回用センサ27(図2参照)が設けられている。
【0026】
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する梁部材である。ブーム9は、ベースブーム部材の基端が旋回台7の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム9は、各ブーム部材をアクチュエータである図示しない伸縮用油圧シリンダで移動させることで軸方向に伸縮自在に構成されている。また、ブーム9には、ジブ9aが設けられている。
【0027】
伸縮用油圧シリンダは、電磁比例切換弁である伸縮用バルブ24(図2参照)によって伸縮操作される。ブーム9には、ブーム9の長さを検出する伸縮用センサ28や荷物Wの重量を検出する重量センサ等が設けられている。
【0028】
メインフックブロック10とサブフックブロック11とは、荷物Wを吊る部材である。メインフックブロック10には、メインワイヤロープ14が巻き掛けられる複数のフックシーブと、荷物Wを吊るメインフック10aとが設けられている。サブフックブロック11には、荷物Wを吊るサブフック11aが設けられている。
【0029】
起伏用油圧シリンダ12は、ブーム9を起立および倒伏させ、ブーム9の姿勢を保持するアクチュエータである。起伏用油圧シリンダ12は、電磁比例切換弁である起伏用バルブ25(図2参照)によって伸縮操作される。ブーム9には、ブーム9の起伏角度を検出する起伏用センサ29(図2参照)が設けられている。
【0030】
メインウインチ13とサブウインチ15とは、メインワイヤロープ14とサブワイヤロープ16との繰り入れ(巻き上げ)および繰り出し(巻き下げ)を行う。メインウインチ13は、メインワイヤロープ14が巻きつけられるメインドラムがアクチュエータであるメイン用油圧モータ13aによって回転され、サブウインチ15は、サブワイヤロープ16が巻きつけられるサブドラムがアクチュエータであるサブ用油圧モータ15aによって回転されるように構成されている。
【0031】
メイン用油圧モータ13aは、電磁比例切換弁であるメイン用バルブ26m(図2参照)によって回転操作される。メインウインチ13は、メイン用バルブ26mによってメイン用油圧モータ13aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換弁であるサブ用バルブ26s(図2参照)によってサブ用油圧モータ15aを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
【0032】
図2に示すように、キャビン17は、車両2の走行操作とクレーン装置6のクレーン操作とを兼用で行う操縦席が設けられている。キャビン17は、車両2または旋回台7に着脱自在に固定されている。キャビン17には、図1において旋回台7の右側に固定されている。キャビン17の操縦席には、クレーン装置6を操作する旋回操作具、起伏操作具、伸縮操作具、メインドラム操作具、サブドラム操作具等からなるクレーン装置用操作具18、および車両2を走行操作するためのステアリングハンドル、アクセル、ブレーキ等からなる走行用操作具19が設けられている。また、キャビン17には、クレーン1の制御装置22と、遠隔操作端末32と通信するためのキャビン側通信機21とが設けられている。
【0033】
さらに、キャビン17には、制御装置22の信号線を車両2とクレーン装置6とに接続するためのキャビン側接続端子20が設けられている。キャビン側接続端子20には、制御装置22の信号線が接続されている。
【0034】
制御装置22は、クレーン装置用操作具18と走行用操作具19との操作信号から制御信号を生成し、各操作弁を介してクレーン1のアクチュエータを制御する装置である。制御装置22は、キャビン17内に設けられている。制御装置22は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置22は、クレーン装置用操作具18、走行用操作具19、キャビン側通信機21、各アクチュエータ、切換え弁およびセンサ等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。クレーン装置用操作具18は、キャビン17の旋回操作具、起伏操作具、伸縮操作具、メインドラム操作具およびサブドラム操作具を含む。走行用操作具19は、ステアリングハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル等を含む。
【0035】
制御装置22は、クレーン装置用操作具18と走行用操作具19とに接続され、クレーン装置用操作具18と走行用操作具19との操作信号から対応するアクチュエータの制御信号を生成することができる。制御装置22は、生成した制御信号を、キャビン側接続端子20を介して各アクチュエータに送信することができる。
【0036】
制御装置22は、キャビン側通信機21に接続され、車両側通信機30からクレーン装置6からの制御情報や吊り荷カメラ9bからの映像等を受信したりすることができる。また、制御装置22は、クレーン装置用操作具18と走行用操作具19との操作信号を車両側通信機30に送信することができる。つまり、キャビン17のクレーン装置用操作具18および走行用操作具19は、各操作具の操作量を操作信号として通信線またはキャビン側通信機21を介して車両2やクレーン装置6に送信するバイワイヤシステムとして構成されている。
【0037】
車両側通信機30は、制御装置22からの制御情報等を、広域情報通信網等を介して受信し、クレーン装置6からの制御情報等を、広域情報通信網等を介して制御装置22に送信するものである。
【0038】
車両2には、キャビン側接続端子20と着脱可能に接続される車両側右接続端子45および車両側左接続端子45aが設けられている。また、旋回台7には、キャビン側接続端子20と着脱可能に接続される旋回台側右接続端子50および旋回台側左接続端子50aが設けられている。車両側右接続端子45、車両側左接続端子45a、旋回台側右接続端子50および旋回台側左接続端子50aには、吊り荷カメラ9b、各センサおよび各バルブが接続されている中継装置31の信号線が接続されている。なお、車両側右接続端子45、車両側左接続端子45a、旋回台側右接続端子50および旋回台側左接続端子50aには、吊り荷カメラ9b、各センサおよび各バルブが中継器31を介さずに接続されてもよい。
【0039】
吊り荷カメラ9bは、中継装置31に接続され、制御装置22からの制御信号を取得することができるとともに、吊り荷カメラ9bの映像を制御装置22に送信することができる。
【0040】
車両側通信機30は、中継装置31に接続され、制御装置22からの制御信号を取得することができるとともに、クレーン装置6からの制御情報や吊り荷カメラ9bからの映像等を制御装置22に送信することができる。
【0041】
旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26sは、中継装置31に接続され、制御装置22からの制御信号を取得することができる。
【0042】
旋回用センサ27、伸縮用センサ28および起伏用センサ29は、中継装置31に接続され、制御装置22に旋回台7の旋回角度、ブーム長さ、起伏角度等の姿勢情報および荷物Wの重量に関する情報を制御装置22に送信することができる。
【0043】
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、起伏操作具の操作によって起伏用油圧シリンダ12でブーム9を任意の起伏角度に起立させて、伸縮操作具の操作によってブーム9を任意のブーム長さに延伸させたりすることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。また、クレーン1は、サブドラム操作具等によって荷物Wを吊り上げて、旋回操作具の操作によって旋回台7を旋回させることで荷物Wを搬送することができる。
【0044】
次に、図2から図4を用いてクレーン1を遠隔操作する遠隔操作端末32について説明する。
【0045】
図3に示すように、遠隔操作端末32は、クレーン1を遠隔操作する際に使用する装置である。遠隔操作端末32は、筐体33、筐体33の操作面に設けられるクレーン操作部である配置変更操作具34、吊り荷移動操作具35、端末用側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38s、端末側起伏操作具39、表示部である表示装置40、端末側通信機41および端末側制御装置42(図4参照)等を具備する。遠隔操作端末32は、吊り荷移動操作具35または各種操作具の操作により荷物Wを移動させる各アクチュエータの操作バルブの制御信号を広域情報通信網(インターネット等)を介してクレーン装置6に送信する。
【0046】
筐体33は、遠隔操作端末32の主たる構成部材である。筐体33は、操縦者が手で保持可能な大きさに構成されている。
【0047】
配置変更操作具34は、クレーン装置6を用いてキャビン17の配置を変更する際にブーム9の先端を移動させる操作具である。配置変更操作具34は、予め登録されているキャビン17の固定装置(本実施形態では、車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48、旋回台側左固定装置49)の中からブーム9の先端を移動させる固定装置を選択し、選択した固定装置までブーム9の先端を移動させる制御信号を生成する操作具である。配置変更操作具34は、回転操作により固定装置を選択し、押圧操作で決定するように構成されている。
【0048】
吊り荷移動操作具35は、任意の方向に任意の速度で荷物Wを移動させる指示が入力される操作具である。吊り荷移動操作具35は、筐体33の操作面から略垂直に起立した操作スティックおよび操作スティックの傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。吊り荷移動操作具35は、操作スティックが任意の方向に傾倒操作可能に構成されている。吊り荷移動操作具35は、遠隔操作端末32の上方向からセンサで検出した操作スティックの傾倒方向までの間の角度およびその傾倒量についての信号を端末側制御装置42に伝達するように構成されている。
【0049】
端末用側旋回操作具36は、クレーン装置6を任意の移動方向に任意の移動速度で旋回させる指示が入力される操作具である。端末用側旋回操作具36は、筐体33の操作面から略垂直に起立した操作スティックおよび操作スティックの傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。
【0050】
端末側伸縮操作具37は、ブーム9を任意の速度で伸縮させる指示が入力される操作具である。端末側メインドラム操作具38m(端末側サブドラム操作具38s)は、メインウインチ13を任意の速度で任意の方向に回転させる指示が入力される操作具である。端末側起伏操作具39は、ブーム9を任意の速度で起伏させる指示が入力される操作具である。各操作具は、筐体33の操作面から起立した操作スティックおよびその傾倒方向および傾倒量を検出する図示しないセンサから構成されている。
【0051】
表示装置40は、クレーン1の姿勢情報や荷物Wの情報等の様々な情報を表示する表示装置40である。表示装置40は、液晶画面等の表示装置から構成されている。表示装置40は筐体33の操作面に設けられている。表示装置40には、吊り荷カメラ9bからの映像、荷物W等が表示される。また、表示装置40は、クレーン1のキャビン17の内部に設けてもよい。
【0052】
図2図4とに示すように、端末側通信機41は、広域情報通信網等を介してクレーン装置6の制御情報等を受信し、遠隔操作端末32からの制御情報等をクレーン装置6に送信する装置である。端末側通信機41は、筐体33の内部に設けられている。端末側通信機41は、クレーン装置6の吊り荷カメラ9bからの映像や制御信号等を受信すると端末側制御装置42に伝達するように構成されている。また、端末側通信機41は、端末側制御装置42からの制御情報広域情報通信網等からクレーン1の車両側通信機30を介してクレーン装置6に送信するように構成されている。
【0053】
制御部である端末側制御装置42は、遠隔操作端末32を制御する装置である。端末側制御装置42は、遠隔操作端末32の筐体33の内部に設けられている。端末側制御装置42は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。端末側制御装置42は、吊り荷移動操作具35、配置変更操作具34、端末用側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38s、端末側起伏操作具39、表示装置40、端末側通信機41等の動作を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0054】
端末側制御装置42は、配置変更操作具34、吊り荷移動操作具35、端末用側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38sおよび端末側起伏操作具39に接続され、各操作具の操作スティックの傾倒方向および傾倒量からなる操作信号を取得することができる。
【0055】
端末側制御装置42は、端末側通信機41に接続され、広域情報通信網を介して接続されるクレーン装置6の車両側通信機30を通じて各種情報を送受信することができる。具体的には、端末側制御装置42は、車両側通信機30を介してクレーン1の姿勢情報、クレーン1の作業可能範囲およびブーム9の先端の現在位置を取得することができる。
【0056】
端末側制御装置42は、配置変更操作具34、端末用側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38sおよび端末側起伏操作具39の各センサから取得した各操作スティックの操作信号を端末側通信機41を介して対応する各バルブに送信することができる。
【0057】
端末側制御装置42は、表示装置40に接続され、表示装置40に現在のクレーン1の姿勢におけるクレーン1の模式画像、吊り荷カメラ9bからの映像およびクレーン1から取得した各種情報等を表示させることができる。
【0058】
次に、図2図5および図6を用いて、キャビン17の固定装置である車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49と、キャビン17について詳細に説明する。なお、キャビン17は、クレーン装置6によって搬送可能に構成されているものとする。
【0059】
図5に示すように、車両2には、走行体側固定装置である車両側右固定装置43と車両側左固定装置44(薄墨部分)、および車両側右接続端子45と車両側左接続端子45aと(図2参照)が設けられている。車両側右固定装置43と車両側左固定装置44とは、キャビン17を着脱可能な状態で保持する装置である。車両側右固定装置43と車両側左固定装置44とは、車両2の上面である搬送面2aに設けられている。車両側右固定装置43は、車両の進行方向を前側として車両の右前端部に配置されている。車両側右固定装置43には、車両側右接続端子45が配置されている。車両側左固定装置44は、車両の進行方向を前方向として車両の左前端部に配置されている。車両側左固定装置44には、車両側左接続端子45aが配置されている。車両側右接続端子45と車両側左接続端子45aとには、旋回操作具、起伏操作具、伸縮操作具、メインドラム操作具、サブドラム操作具、および車両2を走行操作するステアリングハンドル、アクセル、ブレーキ等に関する信号線が接続されている(図2参照)。
【0060】
旋回台7には、旋回台側固定装置である旋回台側右固定装置48と旋回台側左固定装置49、および旋回台側右接続端子50と旋回台側左接続端子50aとが設けられている。旋回台側右固定装置48と旋回台側左固定装置49とは、キャビン17を着脱可能な状態で保持する装置である。旋回台側右固定装置48と旋回台側左固定装置49とは、旋回台7の外周面に設けられている。旋回台側右固定装置48は、倒伏されているブーム9を基準としてブーム9の右側かつ旋回台7の前端に配置されている。旋回台側右固定装置48には、旋回台側右接続端子50が配置されている。旋回台側左固定装置49は、倒伏されているブーム9を基準としてブーム9の左側かつ旋回台7の前端に配置されている。旋回台側左固定装置49には、旋回台側左接続端子50aが配置されている。旋回台側右接続端子50と旋回台側左接続端子50aとには、旋回操作具、起伏操作具、伸縮操作具、メインドラム操作具、サブドラム操作具、および車両2を走行操作するステアリングハンドル、アクセル、ブレーキ等に関する信号線が接続されている。
【0061】
図6(A)に示すように、車両側右固定装置43(車両側左固定装置44)は、複数本(本実施形態では4本)のロックピン46と、連結リンク47とから構成される。4本のロックピン46は、車両2における前側に配置されている2本のロックピン46の間隔L1と車両2における後側に配置されている2本のロックピン46の間隔L2とが異なるように構成されている。ロックピン46は、円柱状の本体部46aの先端に矩形状の係合部46bが形成されている。本体部46aの軸方向長さは、キャビン17の底面の厚さよりも長く形成されている。係合部46bの長手方向の長さAは、本体部46aの直径よりも大きく形成されている。また、ロックピン46は、車両2の搬送面2aに回転自在に支持されている。ロックピン46は、車両2の右前端部と左前端部とにおけるキャビン17の搭載範囲に配置されている。
【0062】
図6(B)に示すように、旋回台側右固定装置48(旋回台側左固定装置49)は、基台51と、複数本(本実施形態では4本)のロックピン46と、連結リンク47とから構成される。基台51は、板状に形成されている。基台51は、倒伏されているブーム9の右側かつ旋回台7の前端と、ブーム9の左側かつ旋回台7の前端とに固定されている。また、基台51は、車両2の搬送面2aに平行になるように配置されている。ロックピン46は、各基台51に回転自在に支持されている。つまり、ロックピン46は、旋回台7の右前端部の基台51と左前端部の基台51とにおけるキャビン17の搭載領域内に配置されている。4本のロックピン46は、旋回台7における径方向外側に配置されている2本のロックピン46の間隔L3と旋回台7における径方向内側に配置されている2本のロックピン46の間隔L4とが異なるように構成されている。
【0063】
図6(A)および図6(B)に示すように、4本のロックピン46には、同一の長さのアーム46cが径方向に延びるように固定されている。さらに、4本のロックピン46は、2本一組として、2組のロックピン46同士のアーム46c同士が連結リンク47で揺動自在に連結されている。また、各連結リンク47には、操作レバー47aがもうけられている。各組のロックピン46は、操作レバー47aの操作により連結リンク47で連結されているロックピン46同士が連動して回転するように構成されている。つまり、各組のロックピン46は、操作レバー47aの操作により係合部46bの向きが変更される。
【0064】
図6(A)に示すように、キャビン17の底面には、複数(本実施形態において4個)の係合孔52が形成されている。4個の係合孔52は、ロックピン46の係合部46bが挿入可能、かつ係合可能に形成されている孔である。4個の係合孔52は、キャビン17が各固定位置に配置された際に、ロックピン46と重複するように構成されている。4個の係合孔52は、矩形状に形成されている。また、係合孔52の短手方向の長さBは、ロックピン46の係合部46bの長手方向の長さAよりも短い。このように構成されるキャビン17は、各固定位置に配置された際に、4個のロックピン46が係合孔52にそれぞれ挿入される。キャビン17は、係合孔52に挿入されたロックピン46が操作レバー47aにより90度回転されることで底面が係合部46bに係合される。
【0065】
図6(B)に示すように、キャビン17は、車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49から離間した地表面等に自立可能に構成されている。キャビン17は、底部底面に接地用脚53が設けられている。接地用脚53は、ロックピン46の本体部46aの軸方向長さよりも短い。これにより、キャビン17は、接地用脚53によって地表面や構造物上に自立可能に構成されている。
接地用脚53とキャビン17との間には、図示しない干渉装置が設けられている。緩衝装置は、防振ゴム、ダンパー等から構成されている。これにより、車両2や旋回台7からの走行時または作業時の振動や衝撃を吸収することができる。
【0066】
図6(A)および図6(B)に示すように、キャビン17の底面には、位置検出センサである第1位置センサ54a、第2位置センサ54bおよび第3位置センサ54cが設けられている。各位置センサは、キャビン17の配置位置を検出するセンサである。各位置センサは、車両2の車両側右固定装置43と車両側左固定装置44、および旋回台7の旋回台側右固定装置48と旋回台側左固定装置49とに設けられた検出体55を検出する。各位置センサは、近接センサから構成されている。なお、位置センサは、検出体55を検出することができるセンサであれば、フォトマイクロセンサ、光電センサ、静電容量センサ等のセンサであってもよい。
【0067】
キャビン17が車両側右固定装置43に固定された場合、検出体55は、第2位置センサ54bに検出されるように配置されている。キャビン17が車両側左固定装置44に固定された場合、検出体55は、第3位置センサ54cに検出されるように配置されている。キャビン17が旋回台側右固定装置48に固定された場合、検出体55は、第1位置センサ54aと第2位置センサ54bとに検出されるように配置されている。キャビン17が旋回台側左固定装置49に固定された場合、検出体55は、第1位置センサ54aと第3位置センサ54cとに検出されるように配置されている。つまり、検出体55は、固定位置毎に検出体55を検出する位置センサの組み合わせが異なるように配置されている。
【0068】
以下に、図7から図9を用いて、クレーン装置6によるキャビン17の配置変更方法について説明する。キャビン17の配置変更方法は、ロック解除工程と、吊り上げ工程と、移動工程、吊り下げ工程と、ロック工程と、作業可能範囲設定工程とを経て配置変更が完了する。なお、本実施形態において、クレーン1は、車両側右固定装置43に固定されているキャビン17を旋回台側右固定装置48に固定するものとする。また、キャビン17には、玉かけワイヤロープが仕込まれているものとする。
【0069】
制御装置22には、キャビン17を車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48または旋回台側左固定装置49に固定する際のクレーン装置6の姿勢状態が記憶されている。つまり、制御装置22は、旋回台7の旋回中心を基準とする各固定装置の位置座標と、ブーム9の先端を位置座標に配置した際の旋回台7の旋回角度、ブーム9の起伏角度、ブーム9の長さを記憶している。従って、制御装置22は、操縦者が所望する固定位置の上方までブーム9の先端を自動的に移動させることができる。
【0070】
図7(A)に示すように、ロック解除工程は、車両側右固定装置43に固定されているキャビン17のロックピン46による固定の解除を行う工程である。ロック解除工程において、操縦者は、車両側右接続端子45とキャビン側接続端子20とを切り離す。そして、操縦者は、キャビン17の係合孔52に挿入されているロックピン46による係合を解除するために、車両側右固定装置43の操作レバー47aを操作する。ロックピン46は、係合部46bの長手方向の向きがキャビン17における係合孔52の長手方向の向きに一致するように回転される。これにより、キャビン17は、ロックピン46による車両側右固定装置43でのロックが解除される。
【0071】
図8に示すように、吊り上げ工程は、キャビン17を固定装置から吊り上げる工程である。吊り上げ工程において、操縦者は、遠隔操作端末32の配置変更操作具34の操作によって、車両側右固定装置43を選択する。制御装置22は、車両側通信機30を介して配置変更操作具34の操作信号を取得すると、車両側右固定装置43の真上にブーム9の先端が移動するようにクレーン装置6を制御する。操縦者は、車両側右固定装置43の上方に配置されたブーム9からサブフックブロック11を下ろしてキャビン17のたまかけワイヤロープをサブフック11aに掛ける。操縦者は、キャビン17を所定の位置まで吊り上げる。
【0072】
移動工程は、キャビン17を搬送させる工程である。移動工程において、操縦者は、遠隔操作端末32の配置変更操作具34の操作によって、旋回台側右固定装置48を選択する。制御装置22は、車両側通信機30を介して配置変更操作具34の操作信号を取得すると、キャビン17がサブフック11aに吊られた状態で車両側右固定装置43の上方から旋回台側右固定装置48の上方までにブーム9の先端が自動的に移動するようにクレーン装置6を制御する。
【0073】
図9に示すように、移動工程において、操縦者は、遠隔操作端末32の配置変更操作具34を用いずに、地表面や、構造物の上にキャビン17を配置してもよい。操縦者は、遠隔操作端末32の吊り荷移動操作具35、端末用側旋回操作具36、端末側伸縮操作具37、端末側メインドラム操作具38m、端末側サブドラム操作具38s、端末側起伏操作具39および表示装置40を用いてキャビン17を車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49以外の場所に搬送する。この場合、キャビン17の各操作具の操作信号は、キャビン側通信機21を介して制御装置22に伝達される。つまり、キャビン17は、キャビン側通信機21と制御装置22に接続されている車両2側の車両側通信機30との間で通信することによって、クレーン装置6を遠隔操作することができる。
【0074】
図7(B)に示すように、吊り下げ工程は、キャビン17を所望する所定位置に吊り下げる工程である。吊り下げ工程において、操縦者は、遠隔操作端末32の端末側サブドラム操作具38s等の操作によって、サブフックブロック11を下ろして、キャビン17を所定の位置まで吊り下げる。さらに、操縦者は、キャビン17を少しずつ降ろしながら旋回台側右固定装置48のロックピン46をキャビン17の係合孔52に挿入する。
【0075】
ロック工程は、キャビン17を固定する工程である。ロック工程において、操縦者は、キャビン17の係合孔52に挿入されたロックピン46によってキャビン17の底面を係合するために、旋回台側右固定装置48の操作レバー47aを操作する。ロックピン46は、係合部46bの長手方向の向きがキャビン17における係合孔52の長手方向の向きに直交するように回転される。これにより、キャビン17は、ロックピン46の係合部46bがキャビン17の底面に引っかかり、旋回台側右固定装置48で固定される。また、操縦者は、旋回台側右接続端子50とキャビン側接続端子20とを連結してバイワイヤシステムを構成し、制御装置22がキャビン17からの操作信号を取得できるようにする。
【0076】
作業可能範囲設定工程は、新たな位置に固定されたキャビン17にブーム9が干渉することなく作業できる作業可能範囲を設定する工程である。制御装置22は、旋回台側右固定装置48にキャビン17が配置されたことで第1位置センサ54aと第2位置センサ54bとからの検出信号を取得する。制御装置22は、予め登録されている旋回台側右固定装置48の位置と基台51の大きさとから旋回台7の旋回可能範囲とブーム9の起伏可能範囲等からなる作業可能範囲を設定する。また、キャビン17が車両側右固定装置43に固定されている場合、制御装置22は、ブーム9の起伏角度が所定角度以下において、ブーム9とキャビン17との干渉を防止するために旋回角度を制限する。
【0077】
なお、クレーン1において、車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49のいずれか一つの固定装置に固定されているキャビン17を他の固定装置に移動させる態様は上述した態様と同一であるため省略する。また、地表面または構造物上に配置されたキャビン17を任意の固定装置に移動させる場合、遠隔操作端末32によってブーム9をキャビン17まで移動さて吊り上げた後に、遠隔操作端末の配置変更操作具34によって任意の固定装置を選択するものとする。
【0078】
このように構成することで、クレーン1は、キャビン17が車両2と旋回台7とから着脱自在に構成されているので、旋回台7の影響を考慮した上で、キャビン17が車両2または旋回体7の所定位置に選択的に配置される。この際、クレーン1は、遠隔操作機能を有し、遠隔操作端末32の配置変更操作具34によって操縦者が指定した位置に旋回台7とブーム9とを用いた制御装置22による自動制御によってキャビン17を搬送するのでキャビン17の位置変更が容易になる。これにより、移動式クレーン1の作業姿勢に影響されない位置にキャビン17を配置することができる。
【0079】
キャビン17は、ロックピン46によって車両2または旋回台7に固定されるとともに、旋回用バルブ23、伸縮用バルブ24、起伏用バルブ25、メイン用バルブ26mおよびサブ用バルブ26s等のクレーン装置用操作具18やハンドル、アクセル、ブレーキ等の走行用操作具19がバイワイヤシステムにより制御装置22に接続されるので、走行用操作具19とクレーン装置用操作具18とを機械的に対応する各バルブに接続する必要がない。これにより、移動式クレーン1の作業姿勢に影響されない位置にキャビン17を配置することができる。
【0080】
本実施形態において、クレーン1は、配置変更操作具34によって指定された固定位置に、制御装置22によってキャビン17を自動的に配置するように構成されているが、操縦者によって手動でキャビン17を配置する構成でもよい。この際、例えば車両側右固定装置43と車両側左固定装置44とは、車両2における前側の一対のロックピン46の間隔L1と後側の一対のロックピン46の間隔L2とが異なる(図6参照)。つまり、クレーン1は、車両2に対するキャビン17の固定可能な方向が決まっている。これにより、クレーン1は、手動によるキャビン17の配置変更でもキャビン17の固定方向を間違えることがない。
【0081】
さらに、クレーン1は、車両2と旋回台7とから離間した位置に配置されたキャビン17からの制御信号を、車両側通信機30を介して取得可能に構成されている。これにより、クレーン1は、移動式クレーン1の作業姿勢に影響されない位置にキャビン17を配置することができる。
【0082】
図9に示すように、GNSSを備えたクレーン1は、GNSSを備えたキャビン17を障害物に隠れた位置や構造物の上部等の旋回台7から視認できない範囲を視認できる位置にキャビン17を配置することで操縦者の死角の範囲を減少させることができる。この際、クレーン1の制御装置22は、GNSSの情報からクレーン装置6とキャビン17との位置関係を考慮した制御信号を生成するように構成されている。このように、クレーン1は、キャビン17を走行操作時における視認性が向上する位置と作業時に視認性が向上する位置とに選択的に配置することができる。
【0083】
また、クレーン1の制御装置22は、キャビン17の配置位置に基づいて旋回台7およびブーム9とキャビン17とが干渉しない作業可能範囲を設定するので、キャビン17の位置が変更されても旋回台7とブーム9との干渉が防止される。
【0084】
次に、図10を用いて、本発明に係る移動式クレーン1の第二実施形態であるクレーン1について説明する。なお、以下の各実施形態に係るクレーン1は、図1図2に示すクレーン1において、クレーン11に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0085】
図10(A)に示すように、車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49(図5参照)は、それぞれ、回転体56と、複数本(本実施形態では4本)の中間リンク57と、複数本(本実施形態では4本)のロックピン58と、ロックピン58の案内部材59とから構成されている。
【0086】
回転体56は、ロックピン58を移動させる部材である。回転体56は、略正方形状の板部材から形成されている。回転体56は、板面が車両2の搬送面2aと平行になるようにして、その中心位置で車両2に回転自在に支持されている。
【0087】
中間リンク57は、回転体56とロックピン58とを連結するものである。4本の中間リンク57の一側端部は、回転体56の各頂点部分にそれぞれ揺動自在に連結されている。4本の中間リンク57の他側端部には、ロックピン58が揺動自在に連結されている。
【0088】
案内部材59は、ロックピン58が所定の方向に移動するように案内する部材である。案内部材59は、ブロック状に形成され、ロックピン58が摺動可能な案内孔59aが形成されている。案内孔59aは、ロックピン58の軸方向長さよりも短い長さに形成されている。案内部材59は、車両2に固定されている。案内部材59は、回転体56の回転中心を中心とする円上に90度毎に4個ずつ配置されている。この際、案内部材59は、案内孔59aが径方向に向くように配置されている。
【0089】
キャビン17の底面には、複数(本実施形態では4か所)のロック部材60が設けられている。ロック部材60は、ブロック状に形成され、ロックピン58が挿入可能な係合孔60aが形成されている。4個のロック部材60は、キャビン17を車両側右固定装置43または車両側左固定装置44の固定位置に配置した場合、それぞれのロック部材60が案内部材59の径方向外側に隣接するように固定されている。この際、ロック部材60は、係合孔60aの軸心と案内部材59の案内孔59aの軸心とが略一致するように配置されている。
【0090】
図10(A)に示すように、キャビン17が、例えば車両側右固定装置43の固定位置に配置され、回転体56の対角線状に中間リンク57とロックピン58とが直線上に一列にならんでいる場合、4本のロックピン58は、回転体56の回転中心から最も離れた位置に配置されている。この際、4本のロックピン58は、案内部材59の径方向外側に突出している。つまり、4本のロックピン58は、案内部材59の径方向外側に配置されているキャビン17における4個のロック部材60の係合孔60aにそれぞれ挿入されている。これにより、車両側右固定装置43は、4本のロックピン58によってキャビン17を固定している。
【0091】
図10(B)に示すように、車両側右固定装置43がキャビン17を固定している図10(A)の状態から回転体56が90度回転された場合(円弧矢印参照)、中間リンク57を介して4本のロックピン58が径方向内側に移動される(矢印参照)。この際、4本のロックピン58は、案内部材59の径方向外側に突出していない。つまり、4本のロックピン58は、案内部材59の径方向外側に配置されているキャビン17における4個のロック部材60の係合孔60aに挿入されていない。これにより、車両側右固定装置43は、キャビン17の固定を解除する。なお、車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49は、油圧シリンダ等のアクチュエータで回転体56を駆動させる構成でもよい。
【0092】
上述した各実施形態において、車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49は、ロックピン46、58を用いてキャビン17を固定しているが、アクチュエータによるキャビン17のクランプやボルト止め等でもよい。また、また、クレーン1は、クレーン装置6を用いてキャビン17を移動させていたが、フォークリフト等によってキャビン17を所望する位置に移動させてもよい。
【0093】
上述の実施形態において、キャビン17は、車両側右固定装置43、車両側左固定装置44、旋回台側右固定装置48および旋回台側左固定装置49に固定されるように構成されているが、固定装置の位置や箇所を任意に設定してもよい。
【0094】
図11に示すように、例えば、クレーン1における車両側固定装置が第1車両側固定装置、第2車両側固定装置、第3車両側固定装置、・・・第n車両側固定装置から構成される場合、クレーン1には、第1車両側接続端子45(1)、第2車両側接続端子45(2)、第3車両側接続端子45(3)、・・・第n車両側接続端子45(n)が設けられている。各車両側接続端子は、対応する車両側固定装置に配置されている。キャビン17は、ブーム9を用いて指定された任意の固定位置に自動で搬送される。また、キャビン17は、操縦者の手動操作で任意の固定位置に搬送してもよい。本実施形態において、キャビン17は、第3車両側固定装置45(3)に固定されており、キャビン側接続端子20と第3車両側接続端子45(3)とが接続されている。このように、クレーン1は、任意の位置に任意の数の固定装置を設けることで、車両2に対するキャビン17の配置位置の自由度が高まり、クレーン1の作業姿勢に応じた位置にキャビン17を配置することができる。
【0095】
更に、図12に示すように、クレーン1における旋回台側固定装置も第1旋回台側固定装置、第2旋回台側固定装置、第3旋回台側固定装置、・・・第n旋回台側固定装置から構成される場合、クレーン1には、第1旋回台側接続端子50(1)、第2旋回台側接続端子50(2)、第3旋回台側接続端子50(3)、・・・第n旋回台側接続端子50(n)が設けられている。各旋回台側接続端子は、対応する旋回台側固定装置に配置されている。本実施形態において、キャビン17は、第3旋回台側固定装置50(3)に固定されており、キャビン側接続端子20と第3車両側接続端子50(3)とが接続されている。このように構成することで、クレーン1は、旋回台7のできるだけ高い位置にキャビン17を配置して塀越しの作業時等の視界を確保することができる。また、クレーン1は、旋回台7の幅方向外側にキャビン17を配置してジブを張り出した高揚程作業時の視界を確保することができる。
【0096】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0097】
1 クレーン
2 車両
6 クレーン装置
7 旋回台
9 ブーム
17 キャビン
18 クレーン装置用操作具
19 走行用操作具
31 制御装置
32 遠隔操作端末
43 車両側右固定装置
44 車両側左固定装置
48 旋回台側右固定装置
49 旋回台側左固定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12