(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車両用ドアラッチ装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E05B 81/54 20140101AFI20240116BHJP
E05B 81/66 20140101ALI20240116BHJP
E05B 81/68 20140101ALI20240116BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
E05B81/54
E05B81/66
E05B81/68
B60J5/00 N
(21)【出願番号】P 2020017654
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】居石 憲始
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-049990(JP,A)
【文献】特開2016-023460(JP,A)
【文献】特開2005-090100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドア内の所定の空間に配置され、前記車両用ドアが閉じられた状態を保持する車両用ドアラッチ装置であって、
所定の方向に延びる第1軸のまわりに回動可能に支持され、前記車両用ドアが閉じられるとき、前記車両用ドア内に進入したストライカに当接して、前記第1軸のまわりの第1方向に回動し、前記ストライカに係止されるラッチと、
前記第1軸と平行な第2軸のまわりに回動可能に支持され、前記ストライカに係止された前記ラッチの回動であって、前記第1方向とは反対の第2方向への回動を規制するポールと、
前記ラッチの回動角度位置を検出するラッチスイッチと、
前記ポールの回動角度位置を検出するポールスイッチと、
前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチの端子に接続され、前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチのオン・オフ状態を表す電気信号の伝達経路としてのバスバーと、
を備え、
前記第1軸及び前記第2軸は、前記ストライカの進入路の一方側の第1領域及び他方側の第2領域にそれぞれ配置され、
前記ラッチスイッチは、前記第1領域であって、前記ラッチの回転半径方向における外側に配置され、
前記ラッチの回動角度位置に応じて、前記ラッチスイッチのオン・オフ状態が変化するように構成され、
前記ポールスイッチは、前記第2領域であって、前記ポールの回転半径方向における外側に配置され、
前記ポールの回動角度位置に応じて、前記ポールスイッチのオン・オフ状態が変化するように構成され、
前記
バスバーの一端部が、前記第2領域における所定の部位に配列されて、コンタクトピンを構成してい
て、
前記第1軸及び前記第2軸を支持する合成樹脂製の基部を備え、
前記バスバーの端部を除く部分が、前記基部内に埋設されている、車両用ドアラッチ装置。
【請求項2】
車両用ドア内の所定の空間に配置され、前記車両用ドアが閉じられた状態を保持する車両用ドアラッチ装置であって、
所定の方向に延びる第1軸のまわりに回動可能に支持され、前記車両用ドアが閉じられるとき、前記車両用ドア内に進入したストライカに当接して、前記第1軸のまわりの第1方向に回動し、前記ストライカに係止されるラッチと、
前記第1軸と平行な第2軸のまわりに回動可能に支持され、前記ストライカに係止された前記ラッチの回動であって、前記第1方向とは反対の第2方向への回動を規制するポールと、
前記ラッチの回動角度位置を検出するラッチスイッチと、
前記ポールの回動角度位置を検出するポールスイッチと、
前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチの端子に接続され、前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチのオン・オフ状態を表す電気信号の伝達経路としてのバスバーと、
前記ラッチ、前記ポール、前記ラッチスイッチ、前記ポールスイッチ及び前記バスバーを支持する合成樹脂製の支持部材と、
を備えた車両用ドアラッチ装置の製造方法であって、
前記支持部材と前記バスバーとがインサート成型法を用いて一体化されたハウジングを形成する第1工程と、
前記ハウジングに埋め込まれているバスバーの端部に、ラッチスイッチ及びポールスイッチを組み付ける第2工程と、
を含む、車両用ドアラッチ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアラッチ装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両の乗降口の内周部に設けられたストライカに係合して、ドアが閉じられた状態(全閉状態)を保持する車両用ドアラッチ装置が記載されている。一般に、車両のドアパネルは、車室内側に位置するインナーパネルと車室外側に位置するアウターパネルとから構成されている。インナーパネルとアウターパネルの間には、空間が設けられている。車両用ドアラッチ装置は、ドアパネル内に配置される。車両用ドアラッチ装置は、ラッチ及びポールを備える。ラッチは、所定の軸まわりに回動可能に支持されている。ドアパネルの端部に開口部が設けられており、ドアが閉じられる過程において、この開口部から、ストライカがドアパネル内に進入し、ラッチがストライカに押されて所定の方向に回動し、ラッチがストライカに係止される(噛み合う)。ポールは、ストライカに係止されたラッチの回動(前記所定の方向とは反対方向への回動)を規制する。
【0003】
具体的には、ポールは、ラッチと同様に、所定の軸まわりに回動可能に支持されている。そして、ポールは、その一端部がラッチ側へ向かうように、バネを用いて、付勢されている。ラッチは、互いに略平行に延びるハーフラッチ爪及びフルラッチ爪を備える。ドアが軽く閉じられるとき、ラッチが前記所定の方向に回動し、ハーフラッチ爪とポールとが係合する(ハーフラッチ状態(半ドア状態))。一方、ドアがある程度勢いよく閉じられるとき、ハーフラッチ爪がポールを乗り越えて、さらにラッチが回動し、フルラッチ爪とポールとが係合する(フルラッチ状態(全閉状態))。このようにして、ラッチがストライカから離脱することが規制される。すなわち、ドアが閉じられた状態が保持される。
【0004】
特許文献1のドアラッチ装置は、ハーフラッチ状態から、ラッチを前記所定の方向へさらに回動させて、フルラッチ状態に移行させるアクチュエータ(電動モーター)を備えている。この種のドアロック装置において、ラッチ及びポールの動作状態(回動位置)が、センサーを用いて検出され、その検出結果に基づいて、アクチュエータが制御される。前記センサーとして、例えば、複数のスイッチを採用することができる。すなわち、各スイッチは、例えば、ラッチ(ポール)の回転位置に応じて、そのオン・オフ状態が変化するように構成される。
【0005】
制御装置とドアラッチ装置とを電気的に接続するためのコネクタが、ドアラッチ装置の所定の位置に設けられる。このコネクタのコンタクトピンと、前記複数のスイッチの端子とが、ワイヤーを用いて接続される。なお、ワイヤーに代えて、バスバーを用いることもできる。この場合、バスバーの端部(スイッチとは反対側の端部)が、コンタクトピンとして利用される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
(発明が解決しようとする課題)
上記のようなドアラッチ装置において、複数のスイッチ、ワイヤー、バスバーなどを配置するスペースを確保する必要があり、ドアロック装置が大型化する傾向にある。
【0008】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、小型な車両用ドアラッチ装置を提供することにある。
【0009】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用ドアラッチ装置は、車両用ドア内の所定の空間に配置され、前記車両用ドアが閉じられた状態を保持する。この車両用ドアラッチ装置は、所定の方向に延びる第1軸のまわりに回動可能に支持され、前記車両用ドアが閉じられるとき、前記車両用ドア内に進入したストライカに当接して、前記第1軸のまわりの第1方向に回動し、前記ストライカに係止されるラッチと、前記第1軸と平行な第2軸のまわりに回動可能に支持され、前記ストライカに係止された前記ラッチの回動であって、前記第1方向とは反対の第2方向への回動を規制するポールと、前記ラッチの回動角度位置を検出するラッチスイッチと、前記ポールの回動角度位置を検出するポールスイッチと、前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチの端子に接続され、前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチのオン・オフ状態を表す電気信号の伝達経路としてのバスバーと、を備える。
前記第1軸及び前記第2軸は、前記ストライカの進入路の一方側の第1領域及び他方側の第2領域にそれぞれ配置され、前記ラッチスイッチは、前記第1領域であって、前記ラッチの回動軌跡の外周に沿うように配置され、前記ラッチの回動角度位置に応じて、前記ラッチスイッチのオン・オフ状態が変化するように構成され、前記ポールスイッチは、前記第2領域であって、前記ポールの回動軌跡の外周に沿うように配置され、前記ポールの回動角度位置に応じて、前記ポールスイッチのオン・オフ状態が変化するように構成され、前記バスバーの一端部が、前記第2領域における所定の部位に配列されて、コンタクトピンを構成していて、前記第1軸及び前記第2軸を支持する合成樹脂製の基部を備え、前記バスバーの端部を除く部分が、前記基部内に埋設されている。
【0011】
本発明の他の態様に係る車両用ドアラッチ装置において、前記バスバーは、長尺状にそれぞれ形成された複数の金属片から構成され、前記複数の金属片のうちの少なくとも2つの金属片が、それらの中間部にて立体交差している。
【0012】
本発明の他の態様に係る車両用ドアラッチ装置において、前記ラッチスイッチの回動に連動して回動するラッチスイッチレバーを備え、前記ラッチスイッチレバーの回動角度位置に応じて、前記ラッチスイッチのオン・オフ状態が変化するように構成されている。
【0013】
本発明の他の態様に係る車両用ドアラッチ装置において、前記ポールに係合して前記ポールを回動させるリフトレバーを備え、前記リフトレバーの回動角度位置に応じて、前記ポールスイッチのオン・オフ状態が変化するように構成されている。
【0014】
また、車両用ドア内の所定の空間に配置され、前記車両用ドアが閉じられた状態を保持する車両用ドアラッチ装置であって、所定の方向に延びる第1軸のまわりに回動可能に支持され、前記車両用ドアが閉じられるとき、前記車両用ドア内に進入したストライカに当接して、前記第1軸のまわりの第1方向に回動し、前記ストライカに係止されるラッチと、前記第1軸と平行な第2軸のまわりに回動可能に支持され、前記ストライカに係止された前記ラッチの回動であって、前記第1方向とは反対の第2方向への回動を規制するポールと、前記ラッチの回動角度位置を検出するラッチスイッチと、前記ポールの回動角度位置を検出するポールスイッチと、前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチの端子に接続され、前記ラッチスイッチ及び前記ポールスイッチのオン・オフ状態を表す電気信号の伝達経路としてのバスバーと、前記ラッチ、前記ポール、前記ラッチスイッチ、前記ポールスイッチ及び前記バスバーを支持する合成樹脂製の支持部材と、を備えた車両用ドアラッチ装置の製造方法は、前記支持部材と前記バスバーとがインサート成型法を用いて一体化されたハウジングを形成する第1工程と、前記ハウジングに埋め込まれているバスバーの端部に、ラッチスイッチ及びポールスイッチを組み付ける第2工程と、を含む。
【0015】
ここで、例えば、ラッチ又はポールの回転軸に対して同軸配置されるロータリースイッチを用いてラッチ又はポールの回動角度位置を検出する構成とした場合、車両用ドアラッチ装置全体としての寸法(とくに、ラッチ又はポールの回転軸の延設方向に平行な方向の寸法)が大きくなる傾向にある。これに対し、本発明に係る車両用ドアラッチ装置では、ラッチスイッチ及びポールスイッチが、ラッチ及びポールの回動軌跡の外周に沿うように配置される。これにより、車両用ドアラッチ装置の寸法(ラッチ又はポールの回転軸方向に平行な方向の寸法)を比較的小さく設定できる。
【0016】
また、本発明に係る車両用ドアラッチ装置では、ラッチスイッチが第1領域に配置され、ポールスイッチが第2領域に配置されている。これによれば、ラッチスイッチ及びポールスイッチを、ストライカ進入路の一方側(第1領域)又は他方側(第2領域)に偏在させる場合に比べて、第1領域及び第2領域のそれぞれのスペースを有効に利用でき、車両用ドアラッチ装置の寸法(ラッチ又はポールの回転軸の延設方向に垂直な方向の寸法)を小さく設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドアラッチ装置が適用されたドアの概略図(車両の右側から見た図)である。
【
図2】ドアロック装置を車室内側(左前方且つ斜め下方)から見た斜視図である。
【
図3A】ドアラッチ装置を車室内側(左前方且つ斜め上方)から見た斜視図である。
【
図3B】ドアラッチ装置を前側から見た正面図である。
【
図9】スイッチの取り付け工程を示す斜視図である。
【
図10A】ドアが開いた状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図10B】
図10Aからドアが少し閉じた状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図10C】
図10Bからドアが少し閉じて、半ドア状態に至る直前の状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図10D】半ドア状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図10E】
図10Dからドアが少し閉じた状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図10F】
図10Eからドアが少し閉じた状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図10G】
図10Fからドアが少し閉じて、全閉状態に至る直前の状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図10H】
図10Gからドアが少し閉じて、全閉状態に至る直前の状態におけるラッチ、ポール及びリフトレバーの姿勢、並びにラッチスイッチ及びポールスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図11A】ドアハンドルが引かれていない状態におけるオープンレバーの姿勢、及びハンドルスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【
図11B】ドアハンドルが引かれている状態におけるオープンレバーの姿勢、及びハンドルスイッチのオン・オフ状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置1(以下、単にラッチ装置1と呼ぶ)について説明する。まず、ラッチ装置1が適用されるドアDRの概要について説明しておく(
図1参照)。ドアDRは、車両本体の側面部に設けられた乗降口に取り付けられる。なお、本実施形態は、本発明を右側のドアDRのラッチ装置1として実施した例であるが、本発明は他のドアにも適用可能である。
【0019】
ドアDRは、ドアパネルDP及びドアフレームDFを備える。ドアパネルDPは、アウターパネルDPa(車室外側パネル)とインナーパネルDPb(車室内側パネル)とから構成される。アウターパネルDPa及びインナーパネルDPbの外周縁部同士が接合されている。アウターパネルDPa及びインナーパネルDPbの外周縁部同士が接合された状態で、両者の間に空間が形成されるように、アウターパネルDPa及びインナーパネルDPbが予めプレス成形されている。すなわち、ドアパネルDPは、箱状(又は袋状)を呈する。ドアパネルDPの上部に、窓枠としてのドアフレームDFが取り付けられる。
【0020】
ドアパネルDPの前側の端面が、図示しないヒンジを介して、乗降口の内周部に組み付けられる。ドアパネルDPが、前記ヒンジの軸まわりに回動して、ドアパネルDPが開閉される。以下の説明において、ドアDRの厚さ方向をX方向と呼ぶ(
図2、
図5、
図10Aなどを参照)。また、車両高さ方向をZ方向と呼ぶ。また、X方向に垂直であり、且つZ方向に垂直な方向をY方向と呼ぶ。各図における「+X」が車室外方に相当し、「-X」が車室内方に相当する。また、「+Y」が前方に相当し、「-Y」が後方に相当する。「+Z」が上方に相当し、「-Z」が下方に相当する。
【0021】
ドアパネルDPに、ドアハンドル装置DH及びドアロック装置DLが取り付けられている。
【0022】
ドアハンドル装置DHは、ドアパネルDPの後部に取り付けられている。ドアハンドル装置DHは、所定の軸まわりに回動可能に支持されたグリップDHaを備える。グリップDHaは、アウターパネルDPaに設けられた開口部から外側へ突出している。また、ドアハンドル装置DHは、図示しない複数のレバー(クランク)を備え、これらのレバーはインナーパネルDPbとアウターパネルDPaとの間の空間に収容されている。そして、これらのレバーのうちの1つのレバーが、ロッドRDを介して、後述するドアロック装置DL(後述するオープンレバー50)に連係されている。
【0023】
ドアロック装置DLは、ドアパネルDP内の後部に配置されている。ドアロック装置DLは、
図2に示すように、施解錠装置LR、ラッチ装置1及びアクチュエータACを備える。
【0024】
施解錠装置LRは、ドアDRを開閉操作不能なロック状態と、開閉操作可能なアンロック状態とを切り替えるための複数のレバー、カム、リンクなどを備える。なお、
図2において、施解錠装置LRの構成部品は図示されていない。施解錠装置LRは、本発明には直接的には関係が無いので、その具体的構成及び動作の説明を省略する。
【0025】
つぎに、ラッチ装置1の概略について説明する。ラッチ装置1は、車両の乗降口の内周部に設けられたストライカST(
図1参照)に係合して、ドアDRが閉じられた状態(全閉状態)を保持する。ラッチ装置1は、複数のレバー(後述するラッチ20、ポール30、リフトレバー40及びオープンレバー50)を備える(
図3A、
図10Aなどを参照)。これらのレバーは、Y方向に延びる軸まわりに回動可能に支持されている。
【0026】
ドアパネルDPの後端面に設けられた開口部とラッチ装置1の一部(後述するストライカ進入路SR)とが連通している。ドアDRを閉じる過程において、この開口部から、ストライカSTがドアパネルDP内に進入し、ラッチ装置1とストライカSTとが係合する。すなわち、ラッチ装置1を構成するレバーがそれぞれ回動する(
図10A乃至
図10H参照)。ラッチ装置1は、各種レバーの回動位置を検出するための複数のスイッチ60(後述するラッチスイッチ61、ポールスイッチ62、及びハンドルスイッチ63)を備える。これらのスイッチは、各レバーの回動軌跡の外周に沿うように配置されていて、レバーの回動位置に応じて、それらのオン・オフ状態が変化する。
【0027】
つぎに、ラッチ装置1の具体的構成について説明する。ラッチ装置1は、ハウジング10(
図3A及び
図3B参照)、ラッチ20、ポール30、リフトレバー40、オープンレバー50及びスイッチ60を備える(
図3A、
図3B、
図10A、
図11A参照)。
【0028】
ハウジング10は、ラッチ装置1の他の構成部品を支持(収容)するケースとしてのラッチボディ11と、後述する各種スイッチのオン・オフ状態を表す信号の伝達経路としてのバスバー12を含む(
図4参照)。
【0029】
以下、ハウジング10の構成のうち、まず、ラッチボディ11の主要部の構成を説明する。その次に、ラッチ20、ポール30、リフトレバー40、オープンレバー50及びスイッチ60の構成を説明した後、再び、ハウジング10のバスバー12に関する構成を説明する。
【0030】
ラッチボディ11は、合成樹脂製である。ラッチボディ11は、ベース11aを有する。ベース11aの厚さ方向がY方向に一致するように、ハウジング10がドアDRの後部に固定される。すなわち、ベース11aの一方の側面(前面S1)が前方(+Y方向)へ向けられ、他方の側面(後面S2)が後方(-Y方向)へ向けられている(
図3A参照)。ドアDRが閉じられる過程において、ストライカSTが、ドアDRの後部に設けられた開口部を通ってドアパネルDP内へ進入する。そのストライカSTがラッチボディ11内へ進入する。ベース11aには、後方へ開放されるとともにX方向に延びる溝状のストライカ進入路SRが設けられている(
図3A参照)。また、ラッチボディ11の下端部に、図示しないワイヤーハーネスが接続されるコネクタCを構成するコネクタハウジングCHが設けられている。
【0031】
また、ベース11aのうち、ストライカ進入路SRより上方に位置する領域A(
図4参照)に、ラッチ軸LSが設けられている(
図3B参照)。ラッチ軸LSの前半部は、ベース11aの前面S1より前方(
図3Bの表面側に相当)へ突出しており、ラッチ軸LSの後半部は、ベース11aの後面S2より後方(
図3Bの裏面側に相当)へ突出している。
【0032】
また、ベース11aのうち、ストライカ進入路SRより下方に位置する領域Bに、ポール軸PSが設けられている。ポール軸PSの前半部は、ベース11aの前面S1より前方へ突出しており、ポール軸PSの後半部は、ベース11aの後面S2より後方へ突出している。
【0033】
さらに、領域Bのうち、ポール軸PSより下方に位置する部分に、オープンレバー軸OSが設けられている。オープンレバー軸OSは、ベース11aの前面S1より前方へ突出している。
【0034】
ラッチ20は、本体部21及びラッチスイッチレバー22から構成されている(
図5参照)。本体部21は、略板状部材である。本体部21の板厚方向がY方向に対して平行に配置される。本体部21は、基部21aと、基部21aから略同一方向に延びるハーフラッチ爪21b及びフルラッチ爪21cを備える。基部21aには、貫通孔TH
21aが設けられている。ハーフラッチ爪21bとフルラッチ爪21cは、それらの延設方向に対して垂直な方向に離間している。以下の説明において、ハーフラッチ爪21bとフルラッチ爪21cとの間の空間をストライカ溝SGと呼ぶ。ラッチ20は、図示しないトーションスプリングにより、初期位置(復帰位置)に向けて
図10Aにおいて反時計まわり方向に付勢されている。
【0035】
さらに、本体部21は、ベース11aの一方の側面部から突出したピン21dを備える。ピン21dに、次に説明するラッチスイッチレバー22が係合し、本体部21とラッチスイッチレバー22とが一体的にラッチ軸LSのまわりに回動する。
【0036】
ラッチスイッチレバー22は、基部22a及びスイッチ押圧部22bを備える(
図6参照)。基部22aは、ラッチ軸LSの径方向に延びる板状部である。基部22aの板厚方向がY方向に対して平行である。基部22aには、貫通孔TH
22aが形成されている。基部22aの先端部にスイッチ押圧部22bが設けられている。スイッチ押圧部22bは、ラッチ軸LSの周方向に延びる湾曲部(円弧状部)である。スイッチ押圧部22bは、第1押圧部22b1と第2押圧部22b2とからなる。第1押圧部22b1と第2押圧部22b2とは、Y方向にずれている。第1押圧部22b1が第2押圧部22b2の前方に位置している。第1押圧部22b1の外周面S
22b1及び第2押圧部22b2の外周面S
22b2が円弧面であり、外周面S
22b1が、外周面S
22b2よりも、貫通孔TH
22aの中心に近い。ラッチスイッチレバー22は、ピン21dが挿入される孔部H
22を有する。
【0037】
ベース11aの後面S2側から、本体部21がベース11aに近づけられ、貫通孔TH
21aにラッチ軸LSの後半部が挿し通される(
図5参照)。なお、ベース11aには、略円弧状の開口部OP
11aが設けられており、ピン21dが、開口部OP
11aを通って、前面S1側へ突出している。また、ベース11aの前面S1側から、ラッチスイッチレバー22がベース11aに近づけられ、貫通孔TH
22aにラッチ軸LSの前半部が挿し通されるとともに、ピン21dが孔部H
22に挿入される。このようにして、本体部21が、ベース11aの後面S2側にて、ラッチ軸LSに対して回動可能に支持されるとともに、ラッチスイッチレバー22が、ベース11aの前面S1側にて、ラッチ軸LSに対して回動可能支持される。また、本体部21とラッチスイッチレバー22とが、ピン21dを介して連結されており、両者が一体的に、ラッチ軸LSのまわりに回動する。なお、ラッチ20は、図示しないトーションスプリングを用いて、
図10Aにおいて反時計まわり方向へ回動するように付勢され、本体部21の所定の部位がストッパーに当接して、ラッチ20が静止する。
【0038】
ポール30の構成は、周知のドアラッチ装置の構成と同一である。すなわち、ポール30は、ポール軸PSの後半部に支持される。つまり、ポール30は、ベース11aの後面S2側(ラッチ20の本体部21の下方)に配置される。また、ポール30は、図示しないトーションスプリングにより、初期位置(復帰位置)に向けて
図10Aにおいて時計まわり方向に付勢されている。ポール30は、ラッチ20の本体部21に係合して、本体部21の回動を規制する。
【0039】
リフトレバー40の構成も、周知のラッチ装置の構成と同一である。リフトレバー40は、ポール軸PSの前半部に支持される。つまり、リフトレバー40は、ベース11aの前面S1側に配置される。ポール30及びリフトレバー40は、ポール軸PSに対して回動不能に支持され、ポール軸PSは、ベース11aに対して回動可能に支持されている。したがって、ポール30とリフトレバー40とが一体的に回動する。
【0040】
オープンレバー50は、オープンレバー軸OSに支持される(
図3B及び
図11A参照)。すなわち、オープンレバー50は、ベース11aの前面S1側に配置される。オープンレバー50は、リフトレバー40の下方に位置している。オープンレバー50は、図示しないトーションスプリングにより、初期位置(復帰位置)に向けて
図11Aにおいて時計まわり方向に付勢されている。周知のように、オープンレバー50は、ドアハンドルDHのグリップDHaに、リンク機構(ロッドRD)を介して連係されている。オープンレバー-50は、グリップDHaが引かれること(ドア開操作)により、トーションスプリングの付勢力に抗して回動し、リフトレバー40を介してポール30を回動させ、ラッチ20の本体部21とポール30との係合を解除する。
【0041】
スイッチ60は、ラッチスイッチ61(一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61b)、ポールスイッチ62及びハンドルスイッチ63から構成される(
図3B参照)。これらのスイッチは、ベース11aの前面S1側に配置されている。これらのスイッチは、押しボタン式スイッチである。ラッチスイッチ61は、ボタンが押されているとき、内部の2つの接点が導通〔短絡した状態であり、ボタンが放されているとき、前記2つの接点が開放された状態である。一方、ポールスイッチ62及びハンドルスイッチ63は、ボタンが押されているとき、内部の2つの接点が開放された状態であり、ボタンが放されているとき、前記2つの接点が導通〔短絡した状態である。各スイッチは、前記2つの接点にそれぞれ電気的に接続されている端子TSを備える。
【0042】
ラッチスイッチ61は、一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61bから構成される。一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61bは、ラッチスイッチレバー22の回動軌跡の外周に沿うように配置されている。両スイッチのボタンが、ラッチ軸LSの中心側へ向けられている。ハーフ・フルスイッチ61bと一旦停止スイッチ61aとが、ラッチスイッチレバー22の回動方向にずれている。具体的には、一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61bは、
図3Bにおいて、ラッチ軸LSから見て左斜め上方に配置されている。ハーフ・フルスイッチ61bは、一旦停止スイッチ61aから見て、時計まわり方向へ少し進んだ位置に配置されている。また、一旦停止スイッチ61aとハーフ・フルスイッチ61bとが、ラッチスイッチレバー22の第1押圧部22b1及び第2押圧部22b2にそれぞれ対応するように、Y方向にずれている。具体的には、ハーフ・フルスイッチ61bは、一旦停止スイッチ61aよりも少し後方に配置されている。
【0043】
ポールスイッチ62は、リフトレバー40の回動軌跡の外周に沿うように配置されている。ポールスイッチ62は、
図3Bにおいて、ポール軸PSから見て左方(アウターパネルDPa側)に配置されている。ポールスイッチ62のボタンが、ポール軸PSの中心よりも下方(
図3Bにおいて右斜め下方)へ向けられている。リフトレバー40とポールスイッチ62のボタンとの間に薄い板バネBSが設けられており、ボールスイッチ62のボタンは、板バネBSを介して、リフトレバー40に押圧される(
図10A乃至
図10H参照)。
【0044】
ハンドルスイッチ63は、オープンレバー50の回動軌跡の外周に沿うように配置されている。ハンドルスイッチ63は、
図3Bにおいて、オープンレバー軸OSから見て左斜め下方に配置されている。ハンドルスイッチ63のボタンが、
図3Bにおいて、右方(インナーパネルDPb側)へ向けられている。
【0045】
ベース11aの前面S1には、上記のスイッチをそれぞれ収容するスイッチ収容部SH61a,SH61b,SH62,SH63が設けられている。
【0046】
バスバー12は、複数(本実施形態では5本)の細長い薄板状の金属片(グランドラインGL、ハーフ・フルスイッチラインHFL、一旦停止スイッチラインTL、ポールスイッチラインPL及びハンドルスイッチラインHL)から構成されている(
図7A及び
図7B参照)。各ラインの一端部がコンタクトピンCPとして機能し、他端部が、各種スイッチに接続されるタブ端子TBとして機能する。各ラインの一端部が、コネクタハウジングCH内にて、X方向に等間隔に並べられている。具体的には、コネクタハウジングCH内では、グランドラインGLから見て、X方向における一方側(アウターパネルDPa側)から他端部(インナーパネルDPb側)へ向かって、グランドラインGL、ハンドルスイッチラインHL、一旦停止スイッチラインTL、ハーフ・フルスイッチラインHFL、ポールスイッチラインPLが、この順に配置されている。各ラインが、コネクタハウジングCHから上方へ延設され、それらの他端部は、各スイッチ収容部内に位置している(
図4参照)。ただし、各ラインは、他の部品を避けるために、それらの中間部にて湾曲している。また、グランドラインGLは、各スイッチに関して共通に用いられる。すなわち、グランドラインGLは、その中間部から枝分かれした短いサブラインを有し、そのサブラインの端部が、各スイッチ収容部内に位置していて、当該部位がタブ端子TBとして機能する。また、グランドラインGLの一端部近傍の部分が、前方(+Y方向)へ突出するように屈曲形成されていて、当該部位の後方をハンドルスイッチラインHL、ハーフ・フルスイッチラインHFL及び一旦停止スイッチラインTLが通過している。すなわち、当該部位にて、各種ラインが立体交差している(
図7A、
図7B及び
図8参照)。
【0047】
上記のラッチボディ11とバスバー12とが、インサート成形法を用いて、一体的に形成される。すなわち、バスバー12を構成する各ラインのコンタクトピンCP及びタブ端子TBを除く部分が、ラッチボディ11内に埋め込まれている。言い換えれば、コネクタハウジングCH内にてコンタクトピンCPが露出し、スイッチ収容部SH
61a,SH
61b,SH
62,SH
63内にて、タブ端子TBが露出している。このようにしてハウジング10が形成され、そのスイッチ収容部SH
61a,SH
61b,SH
62,SH
63に、一旦停止スイッチ61a、ハーフ・フルスイッチ61b、ポールスイッチ62及びハンドルスイッチ63がそれぞれ挿入され、各スイッチの端子TSに、タブ端子TBが電気的に接続される(
図9参照)。例えば、スイッチの端子TSが板バネ状部材であり、その弾性力を用いて、端子TSとタブ端子TBとが圧接される。その後、スイッチの端子TSとタブ端子TBの接続部に合成樹脂材が流し込まれて固化される。これにより、端子TSとタブ端子TBとの接合部が覆われて、当該部位が電気的に絶縁される。これにより、当該部位に異物(水滴、埃など)が付着して端子TS同士が短絡してしまうことが防止される。
【0048】
コネクタCに図示しないワイヤーハーネスの一端が接続され、その他端が車両の制御装置に接続される。制御装置は、各スイッチのオン・オフ状態を検出する。
【0049】
アクチュエータAC(
図2参照)は、電動モーター、減速装置などを含む。電動モーターの回転駆動力が、減速装置を介してラッチ20に伝達されて、ラッチ20が回転駆動される。電動モーターが、図示しないワイヤーハーネスを用いて、車両の制御装置(電力供給装置)に接続されている。後述するように、制御装置は、前記検出したスイッチのオン・オフ状態に基づいて、電動モーターの回転速度、回転方向などを制御する。
【0050】
つぎに、ドアDRが開いている状態から閉じられる過程におけるラッチ20、ポール30及びリフトレバー40の動作及びラッチスイッチ61(一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61b)及びポールスイッチ62の動作(オン・オフ状態)について説明する。ドアDRが開いている状態では、ラッチ20の本体部21のハーフラッチ爪21bとフルラッチ爪21cとの間のストライカ溝SGの先端部が、ストライカ進入路SR内に位置している。また、この状態では、ラッチスイッチレバー22のスイッチ押圧部22bが、
図10Aにおいて略左方へ向けられていて、第1押圧部22b1により、一旦停止スイッチ61aのボタンが押されて、一旦停止スイッチ61aがオン状態になっている(
図10A参照)。一方、第2押圧部22b2は、ハーフ・フルスイッチ61bのボタンから離間していて、ハーフ・フルスイッチ61bがオフ状態になっている。また、ポール30の先端(
図10Aにおける左端)が、ハーフラッチ爪21bの外周面部に当接している。また、ポールスイッチ62のボタンがリフトレバー40によって押されており、ポールスイッチ62はオフ状態になっている。
【0051】
ドアDRが閉じられる過程において、ドアパネルDP内に進入したストライカSTが、ラッチ20のストライカ溝SG内に進入する(
図10A参照)。ストライカSTによって、本体部21が押されて、
図10Aにおいて、時計まわり方向へ回動し始める。
図10Aに示した状態(ドアDRが開いた状態)からストライカSTが少しラッチ装置1内へ少し進入すると、ラッチ20が、
図10Aにおいて時計まわり方向へ少し回動して、
図10Bに示した状態に至る。この状態では、依然として、一旦停止スイッチ61aのボタンが、第1押圧部22b1によって押されて、一旦停止スイッチ61aがオン状態になっている。また、依然として、第2押圧部22b2は、ハーフ・フルスイッチ61bのボタンから離間していて、ハーフ・フルスイッチ61bがオフ状態になっている。また、ポール30の先端が、本体部21のハーフラッチ爪21bに押されて、
図10Aに示した状態から、反時計回りに少し回動した状態になっている。リフトレバー40もポール30と同様に回動して、ポールスイッチ62のボタンが開放され、ポールスイッチ62がオン状態になっている。すなわち、
図10Aから
図10Bに至る過程において、ポールスイッチ62がオフ状態からオン状態へ変化する。
【0052】
図10Bに示した状態からストライカSTが、ラッチ装置1内へさらに進入すると、ラッチ20が、
図10Bにおいて時計まわり方向へ少し回動して、
図10Cに示した状態に至る。この状態では、ラッチスイッチレバー22の第2押圧部22b2によって、ハーフ・フルスイッチ61bのボタンが押されて、ハーフ・フルスイッチ61bがオン状態になっている。また、依然として、一旦停止スイッチ61aのボタンが、第1押圧部22b1によって押されて、一旦停止スイッチ61aがオン状態になっている。また、ポール30の先端が、本体部21のハーフラッチ爪21bに押されて、
図10Bに示した状態から、反時計回りにさらに回動した状態になっている。リフトレバー40もポール30と同様に回動している。依然とし、ポールスイッチ62のボタンが開放されており、ポールスイッチ62がオン状態になっている。すなわち、
図10Bから
図10Cに至る過程において、ハーフ・フルスイッチ61bがオフ状態からオン状態へ変化する。
【0053】
図10Cに示した状態からストライカSTが、ラッチ装置1内へさらに進入すると、ラッチ20が、
図10Cにおいて時計まわり方向へ少し回動して、
図10Dに示した状態に至る。この状態では、一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61bのオン・オフ状態は、
図10Cに示した状態と同一である。また、ハーフラッチ爪21bが、ポール30の先端を乗り越え、ポール30が、
図10Cに示した状態から、時計回りに回動して、初期状態に戻って、ハーフラッチ爪21bに当接している。これにより、
図10Cにおいて、本体部21の反時計まわりへの回動が規制されている。リフトレバー40もポール30と同様に初期状態に戻り、ポールスイッチ62のボタンがリフトレバー40によって押されて、ポールスイッチ62がオフ状態になっている。すなわち、
図10Cから
図10Dに至る過程において、ポールスイッチ62がオン状態からオフ状態へ変化する。
【0054】
図10Dに示した状態からストライカSTが、ラッチ装置1内へさらに進入すると、ラッチ20が、
図10Dにおいて時計まわり方向へ少し回動して、
図10Eに示した状態に至る。この状態では、第1押圧部22b1が、一旦停止スイッチ61aのボタンから離間して、一旦停止スイッチ61aがオフ状態になっている。一方、依然として、第2押圧部22b2によって、ハーフ・フルスイッチ61bのボタンが押されて、ハーフ・フルスイッチ61bがオン状態になっている。また、ポール30の先端が、本体部21から離間しており、ポール30及びリフトレバー40の姿勢は、初期状態のままであり、ポールスイッチ62は、オン状態のままである。すなわち、
図10Dから
図10Eに至る過程において、一旦停止スイッチ61aがオン状態からオフ状態へ変化する。
【0055】
図10Eに示した状態からストライカSTが、ラッチ装置1内へさらに進入すると、ラッチ20が、
図10Eにおいて時計まわり方向へ少し回動して、
図10Fに示した状態に至る。この状態では、一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61bのオン・オフ状態は、
図10Eの状態と同一である。また、ポール30の先端が、本体部21のフルラッチ爪21cに押されて、
図10Eに示した状態から、反時計回りに少し回動した状態になっている。リフトレバー40もポール30と同様に回動して、ポールスイッチ62のボタンが開放され、ポールスイッチ62がオン状態になっている。すなわち、
図10Eから
図10Fに至る過程において、ポールスイッチ62がオフ状態からオン状態へ変化する。
【0056】
図10Fに示した状態からストライカSTが、ラッチ装置1内へさらに進入すると、ラッチ20が、
図10Fにおいて時計まわり方向へ少し回動して、
図10Gに示した状態に至る。この状態では、第2押圧部22b2が、ハーフ・フルスイッチ61bのボタンから離間して、ハーフ・フルスイッチ61bがオフ状態になっている。また、ポール30の先端が、本体部21のフルラッチ爪21cに押されて、
図10Fに示した状態から、反時計回りにさらに回動した状態になっている。リフトレバー40もポール30と同様に回動して、ポールスイッチ62のボタンが開放されたままであり、ポールスイッチ62は、オン状態のままである。すなわち、
図10Fから
図10Gに至る過程において、ハーフ・フルスイッチ61bがオン状態からオフ状態へ変化する。
【0057】
図10Gに示した状態からストライカSTが、ラッチ装置1内へさらに進入すると、ラッチ20が、
図10FGおいて時計まわり方向へ少し回動して、
図10Hに示した状態に至る。この状態では、一旦停止スイッチ61a及びハーフ・フルスイッチ61bのオン・オフ状態は、
図10Gと同一である。また、フルラッチ爪21cが、ポール30の先端を乗り越え、
図10Gに示した状態から、ポール40が、時計回りに回動して、初期状態に戻って、フルラッチ爪21cに当接し、
図10Hにおいて、本体部21の反時計まわりへの回動が規制されている。リフトレバー40もポール30と同様に初期状態に戻り、ポールスイッチ62のボタンがリフトレバー40によって押されて、ポールスイッチ62がオフ状態になっている。すなわち、
図10Gから
図10Hに至る過程において、ポールスイッチ62がオン状態からオフ状態へ変化する。
【0058】
つぎに、オープンレバー50の動作及びハンドルスイッチ63の動作について説明する。グリップDHaが引かれていない状態において、ハンドルスイッチ63のボタンが、オープンレバー50に押されて、オフ状態になっている。グリップDHaが外側へ引かれると、グリップDHaに連動してドアハンドル装置DHのレバーが所定の方向へ回動して、ロッドRDが押し下げられる。このロッドRDに連係しているオープンレバー50が、
図11Aにおいて、反時計まわり方向に回動して、
図11Bに示した状態に至る。この状態では、ハンドルスイッチ63のボタンが開放されており、ハンドルスイッチ63がオン状態になっている。
【0059】
車両の制御装置は、一旦停止スイッチ61a、ハーフ・フルスイッチ61b、ポールスイッチ62及びハンドルスイッチ63のオン・オフ状態の組み合わせの遷移に基づいて、アクチュエータAC(電動モーター)を制御する。具体的には、制御装置は、ハンドルスイッチ63がオフ状態であり、且つ一旦停止スイッチ61a、ハーフ・フルスイッチ61b、ポールスイッチ62が、
図10Cから
図10Dの状態に遷移したことを検出すると、タイマーを用いて時間計測を開始する。
図10Dの状態が所定時間(例えば3秒)だけ経過したとき、制御装置は、アクチュエータACを動作(電動モーターを正転)させて、ラッチ20を、
図10Dにおいて時計回り方向へ回転させる。一旦停止スイッチ61a、ハーフ・フルスイッチ61b、ポールスイッチ62が、
図10Dから
図10Eの状態に遷移したことを検出すると、制御装置は、アクチュエータACを一旦停止させ、タイマーを用いて時間計測を開始する。アクチュエータACを一旦停止させてから、所定時間(例えば、1秒)だけ経過したとき、制御装置は、再びアクチュエータACを動作させて、ラッチ20を、
図10Eにおいて時計回り方向へ回転させる。そして、制御装置は、一旦停止スイッチ61a、ハーフ・フルスイッチ61b、ポールスイッチ62が、
図10Eから
図10F、
図10Gに示した状態を経て、
図10Hの状態に遷移したことを検出すると、アクチュエータACを停止させる。このようにして、制御装置は、半ドア状態のままであるドアDRを、全閉状態へ遷移させる。ただし、ハンドルスイッチ63がオン状態であるとき、制御装置は、アクチュエータACを動作させない。制御装置は、アクチュエータACの動作中に、オフ状態からオン状態へ遷移したことを検出すると、半ドア状態から全閉状態への遷移途中であっても、アクチュエータACを停止させる。
【0060】
ここで、例えば、ラッチ20又はポール30の回転軸に対して同軸配置されるロータリースイッチを用いてラッチ20又はポール30の回動角度位置を検出する構成とした場合、車両用ドアラッチ装置全体としての寸法(とくに、ラッチ20又はポール30の回転軸の延設方向に平行な方向の寸法)が大きくなる傾向にある。これに対し、本実施形態に係るラッチ装置1では、押しボタン式のラッチスイッチ61及びポールスイッチ62が、ラッチ20及びポール30の回動軌跡の外周に沿うように配置される。これにより、ラッチ装置1の寸法(とくに、Y方向の寸法)を比較的小さく設定できる。
【0061】
また、本実施形態に係るラッチ装置1では、ラッチスイッチ61が第1領域Aに配置され、ポールスイッチ62が第2領域Bに配置されている。これによれば、ラッチスイッチ61及びポールスイッチ62を、ストライカ進入路SRの一方側(第1領域A)又は他方側(第2領域B)に偏在させる場合に比べて、第1領域A及び第2領域Bのそれぞれのスペースを有効に利用でき、ラッチ装置1の寸法(とくに、X方向及びZ方向の寸法)を小さく設定できる。
【0062】
また、例えば、ラッチスイッチ61を第2領域Bに配置した場合、ストライカ進入路SRを避けつつ、ラッチスイッチレバー22を、ストライカ進入路SRの下方へ延設する必要がある。この場合、上記実施形態に比べて、ラッチ装置1のY方向の寸法が大きくなる。これに対し、本実施形態では、ラッチスイッチ61が、ラッチ20(ラッチスイッチレバー22)と同一の第1領域Aに配置されていて、ラッチスイッチレバー22が比較的小さく、ラッチ装置1の寸法(とくに、X方向、Y方向及びZ方向の寸法)を小さく設定できる。
【0063】
また、上記実施形態では、スイッチごとにグランドラインGLを設けるのではなく、1つのグランドラインGLと、その他の一部の信号ラインとを立体交差させ、グランドラインGLをすべてのスイッチに関して共通に用いている。これによれば、スイッチごとにグランドラインGLを設けた場合に比べて、コネクタCのピン数を最小限にとどめるともに、バスバー12を配置するためのスペースを最小限にとどめることができる。これにより、ラッチ装置1の寸法(とくに、X方向、Y方向及びZ方向の寸法)を小さく設定できる。
【0064】
ここで、例えば、上記実施形態のバスバー12及びスイッチ60に代えて、ワイヤーハーネスにスイッチが予め組み付けられたスイッチ部材を用いた場合には、そのワイヤーハーネスを配策する工数が大きい。これに対し、本実施形態では、バスバー12がラッチボディ11に埋め込まれていて、そのタブ端子TBに各スイッチを取り付ければよい。このように、本実施形態によれば、ラッチボディ11に、簡単に、スイッチ60を取り付けることができる。
【0065】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、バスバー12の構成において、1つのグランドラインGLを全てのスイッチに関して共通に用いているが、1つのグランドラインGLを、少なくとも2つのスイッチに関して共通に用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0067】
1・・・ラッチ装置(車両用ドアラッチ装置)、10・・・ハウジング、11・・・ラッチボディ、12・・・バスバー、20・・・ラッチ、21・・・本体部、21b・・・ハーフラッチ爪、21c・・・フルラッチ爪、22・・・ラッチスイッチレバー、30・・・ポール、40・・・リフトレバー、50・・・オープンレバー、60・・・スイッチ、61・・・ラッチスイッチ、61a・・・一旦停止スイッチ、61b・・・ハーフ・フルスイッチ、62・・・ポールスイッチ、63・・・ハンドルスイッチ、AC・・・アクチュエータ、CH・・・コネクタハウジング、CP・・・コンタクトピン、DF・・・ドアフレーム、DL・・・ドアロック装置、DP・・・ドアパネル、DR・・・ドア、GL・・・グランドライン、HFL・・・ハーフ・フルスイッチライン、HL・・・ハンドルスイッチライン、LS・・・ラッチ軸、PS・・・ポール軸、SG・・・ストライカ溝、SR・・・ストライカ進入路、ST・・・ストライカ