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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】潤滑剤劣化状態検出装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 29/00 20060101AFI20240116BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20240116BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
F16N29/00 D
F16C33/66 Z
F16C41/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020030489
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134839
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 武信
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 駿介
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217485(JP,A)
【文献】特開2018-197668(JP,A)
【文献】特開平04-072556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 29/00
F16C 33/66
F16C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な転がり軸受を収容した筐体と、
前記筐体の外部に配置され、対象ガスの濃度を検出する半導体式ガスセンサと、
前記筐体内に連通し、前記筐体内の気体を前記半導体式ガスセンサへと案内する案内流路と、を備え、
前記半導体式ガスセンサの検出結果に応じて、前記転がり軸受の潤滑剤の劣化状態を検出し
記案内流路は、
気体に含まれるオイルミストを除去するフィルタと、
前記半導体式ガスセンサへと案内する気体を、前記筐体内の気体、及び前記筐体外の気体の何れか一方に切り替える第一の流路切替部と、
前記半導体式ガスセンサへと案内する気体を、複数ある前記筐体のうち何れか一つの前記筐体内の気体に切り替える第二の流路切替部と、を備えることを特徴とする潤滑剤劣化状態検出装置。
【請求項2】
前記筐体内の気体を前記半導体式ガスセンサに案内する前に、前記第一の流路切替部で前記筐体内との連通状態から前記筐体外との連通状態へと切り替え、予め定めたクリーニング時間だけポンプを用いて前記筐体外の気体を前記半導体式ガスセンサに案内することで、前記半導体式ガスセンサのクリーニングを実施することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤劣化状態検出装置。
【請求項3】
前記クリーニング時間は、前記案内流路の流路容積を前記ポンプにおける単位時間当たりの流量で除算した値以上に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の潤滑剤劣化状態検出装置。
【請求項4】
前記対象ガスは、アルコール、ケトン、アルデヒド、有機酸の少なくとも一つを含み、これらの濃度を選択的に検出することを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤劣化状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤劣化状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受は、潤滑油やグリース等の潤滑剤によって潤滑されており、潤滑剤が劣化すると、転がり軸受に温度上昇や摩耗が生じ、転がり軸受の焼きつき等、異常発生の原因となる。潤滑剤が劣化してゆく際に、カルボニル化合物が生成されるため、このカルボニル化合物を測定することにより、潤滑剤の劣化状態を検出できることが知られている。例えば特許文献1では、転がり軸受を収めたハウジング内部に発生するガスを吸引し、吸引したガスを定電位電解式のガスセンサで分析することで、潤滑剤の劣化状態を検出することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6421893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定電位電解式のガスセンサでは、検出感度が十分でなかったり、またガスの選択性に起因して一部の潤滑剤では劣化状態を検出できなかったりする可能性があり、改善の余地があった。
本発明の課題は、転がり軸受における潤滑剤の劣化状態を検出するものにおいて、検出感度やガスの選択性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る潤滑剤劣化状態検出装置は、半導体式ガスセンサを備える。
本発明の他の態様に係る潤滑剤劣化状態検出装置は、回転可能な転がり軸受を収容した筐体と、筐体の外部に配置され、対象ガスの濃度を検出する半導体式ガスセンサと、筐体内に連通し、筐体内の気体を半導体式ガスセンサへと案内する案内流路と、を備え、半導体式ガスセンサの検出結果に応じて、転がり軸受の潤滑剤の劣化状態を検出する。
本発明の他の態様に係る潤滑剤劣化状態検出方法は、転がり軸受を潤滑している潤滑剤の劣化によって生じる対象ガスを、半導体式ガスセンサで検出することで、潤滑剤の劣化状態を検出する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、転がり軸受の潤滑剤から発生する対象ガスを半導体式ガスセンサによって検出することで、潤滑剤の劣化状態を検出する際の検出感度やガスの選択性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】潤滑剤劣化状態検出装置を示す図である。
図2】半導体式ガスセンサの駆動回路である。
図3】流路の切り替えを示す図である。
図4】実施例の試験結果を示すグラフである。
図5】比較例の試験結果を示すグラフである。
図6】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに限定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
図1は、潤滑剤劣化状態検出装置を示す図である。
潤滑剤劣化状態検出装置11は、筐体12と、半導体式ガスセンサ13と、案内流路14と、を備える。
筐体12は、回転可能な転がり軸受15を収容している。転がり軸受15は、玉軸受、ころ軸受、針軸受、円すいころ軸受、球面ころ軸受、スラスト軸受など、如何なる種類のものでもよい。転がり軸受15は潤滑剤によって潤滑されており、潤滑剤には例えば汎用グリースが使用されている。
半導体式ガスセンサ13は、筐体12の外部に配置されており、対象ガスの濃度を検出する。対象ガスは、潤滑剤の劣化に伴って生じるアルコール、ケトン、アルデヒド、有機酸の少なくとも一つを含む。
【0010】
案内流路14は、筐体12内に連通し、筐体12内の気体を半導体式ガスセンサ13へと案内する。具体的には、一方側が筐体12に接続され、他方側がポンプ16の吸入口に接続されており、筐体12とポンプ16との間に半導体式ガスセンサ13が設けられている。案内流路14のうち、筐体12と半導体式ガスセンサ13との間には、フィルタ17が設けられている。フィルタ17は、気体に含まれるオイルミスト等を除去する例えばセラミックスフィルタである。フィルタ17としては、目の粗さが200メッシュ程度で、粒子径が0.3μm以上のオイルミスト粒子を捕集できるものを用いることが好ましい。
【0011】
案内流路14のうち、フィルタ17と半導体式ガスセンサ13との間には、分岐点が設けられており、分岐点から分岐した分岐流路21は、筐体12の外部に開放されている。分岐点には、バルブ22(第一の流路切替部、流路切替部)が設けられている。バルブ22は、半導体式ガスセンサ13へと案内する気体を、筐体12内の気体、及び筐体12外の気体の何れか一方に切り替える三方弁である。分岐流路21には、フィルタ23が設けられている。フィルタ23は、塵や埃等のコンタミネーションを除去する例えば活性炭フィルタである。
【0012】
図2は、半導体式ガスセンサの駆動回路である。
半導体式ガスセンサ13は、ヒータ抵抗31と、例えば酸化第二錫SnO2等の金属酸化物半導体であるセンサ抵抗32と、を備える。ヒータ抵抗31は、ヒータ電圧Ehが印加されることで、金属酸化物半導体を200~500℃程度の動作温度に加熱する。センサ抵抗32には、負荷抵抗33が直列に接続されており、負荷抵抗33の両端電圧Eoutを測定するために、センサ抵抗32及び負荷抵抗33に回路電圧Ecが印加される。対象ガスの濃度に応じてセンサ抵抗32の導電率が変化するため、センサ抵抗32の抵抗を求めることで、対象ガスの濃度が検出される。具体的には、下記の式に示すように、回路電圧Ec、負荷抵抗33の両端電圧Eout、及び負荷抵抗33の抵抗値RLに応じて、センサ抵抗32の抵抗値RSを算出する。
RS={(Ec×RL)/Eout}-RL
【0013】
次に、潤滑剤の劣化状態を検出する方法について説明する。
図3は、流路の切り替えを示す図である。
図中の(a)は、センサクリーニング時の状態を示す。潤滑剤の劣化状態を検出する前には、半導体式ガスセンサ13のクリーニングを実施する。先ず、バルブ22によって筐体12外との連通状態へと切り替え、ポンプ16を駆動する。これにより、分岐流路21を介して筐体12外の気体が半導体式ガスセンサ13に案内され、半導体式ガスセンサ13周囲の案内流路14、及び半導体式ガスセンサ13におけるセンサ抵抗32の表面が清浄化される。クリーニング時間Tcは、案内流路14内の気体を全て筐体12外の気体で入れ替える必要あるため、案内流路14の流路容積Vtをポンプ16における単位時間当たりの流量Qpで除算した値(=Vt/Qp)以上に設定されている。例えば、流路容積Vtが200mlであり、流量Qpが100ml/分であれば、時間Tcは2分以上であり、より十分なクリーニングを行なうために、例えば9.5倍となる19分程度に設定する。
【0014】
図中の(b)は、ガス測定時の状態を示す。センサクリーニングが終了したら、ガス測定を実施する。先ず、バルブ22によって筐体12内との連通状態へと切り替え、ポンプ16を駆動する。これにより、案内流路14によって筐体12内の気体が半導体式ガスセンサ13に案内され、センサ抵抗32の表面に付着し、対象ガスの濃度が検出される。ガス測定時間Tsは、案内流路14内の気体を筐体12内の気体に入れ替える必要がある。そのため、案内流路14の流路容積Vt、及び筐体12内で気体が入り得る容積Vhのうち小さい方を、ポンプ16における単位時間当たりの流量Qpで除算した値(=min[Vt,Vh]/Qp)以上に設定されている。例えば、流路容積Vtが200mlであり、筐体12内の容積Vhが100mlであり、流量Qpが100ml/分であれば、ガス測定時間Tsは1分以上である。
上記のクリーニング及びガス測定を一セットとし、これを予め定めた時間Ti毎に実施する。時間Tiは、例えば数十分~1日程度であるが、潤滑剤が劣化すると、比較的早い時間で異常が生じるため、24時間以内であることが望ましい。
【0015】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
定電位電解式のガスセンサは、対象ガスを特定の電位で電解し、その際生じる電解電流を検知することで対象ガスの濃度を測定するものである。この定電位電解式のガスセンサでは、検出感度が十分でなかったり、またガスの選択性に起因して一部の潤滑剤では劣化状態を検出できなかったりする可能性があり、改善の余地があった。そこで、本実施形態の潤滑剤劣化状態検出装置11では、転がり軸受15を潤滑している潤滑剤の劣化によって生じる対象ガスを、半導体式ガスセンサ13で検出する。半導体式ガスセンサ13は、定電位電解式に比べて、以下のような利点がある。
【0016】
先ず、半導体式ガスセンサ13は、ヒータ抵抗31によって200~500℃程度に加熱されることから、水分が存在してもすぐに気化するため、水分による影響を受けることがない。同様に、オイルが存在してもすぐに気化し、案内流路14から排出されるため、センサ抵抗32に対するオイルの付着や堆積を防ぎ、長寿命化を図れる。一方、定電位電解式ガスセンサは、ヒータがないため、水分による影響を受けたり、オイルの付着や堆積によって検出精度が低下したり、またオイルを対象ガスとして誤検出したりする可能性があった。
【0017】
また、半導体式ガスセンサ13は、対象ガスの種類が、アルコール、ケトン、アルデヒド、及び有機酸を含め、カルボニル化合物全般に及ぶため、潤滑剤の劣化を検出するのに適しており、検出感度にも優れている。一方、定電位電解式ガスセンサは、アルコール、ケトン、有機酸等は、高精度に検出することができなかった。
さらに、半導体式ガスセンサ13は、耐熱性が高いため、高温環境での使用が可能となる。一方、定電位電解式ガスセンサは、耐熱性が高くないため、使用できる温度環境が限られていた。
したがって、転がり軸受15の潤滑剤から発生する対象ガスを半導体式ガスセンサ13によって検出することで、潤滑剤の劣化状態を検出する際の検出感度やガスの選択性を向上させることができる。
【0018】
潤滑剤劣化状態検出装置11では、オイルミストを除去するフィルタ17を案内流路14に設けている。これにより、フィルタ17によってオイルミストを除去してから、筐体12内の気体を半導体式ガスセンサ13へと案内することができる。したがって、センサ抵抗32に対するオイルの付着や堆積を防ぎ、長寿命化を図れる。
潤滑剤劣化状態検出装置11では、半導体式ガスセンサ13へと案内する気体を、筐体12内の気体、及び筐体12外の気体の何れか一方に切り替えるバルブ22を案内流路14に設けている。これにより、筐体12外の気体を案内するセンサクリーニングを実施するのか、又は筐体12内の気体を案内するガス測定を実施するのかを、容易に切り替えることができる。
【0019】
潤滑剤劣化状態検出方法では、転がり軸受15を潤滑している潤滑剤の劣化によって生じる対象ガスを、半導体式ガスセンサ13で検出することで、潤滑剤の劣化状態を検出している。これにより、潤滑剤の劣化状態を検出する際の検出感度やガスの選択性を向上させることができる。
潤滑剤劣化状態検出方法では、転がり軸受15を収容した筐体12内の気体を、案内流路14によって半導体式ガスセンサ13に案内し、対象ガスの濃度を検出することで、潤滑剤の劣化状態を検出している。これにより、潤滑剤の劣化状態を検出する際の検出感度を向上させることができる。
【0020】
潤滑剤劣化状態検出方法では、筐体12内の気体を半導体式ガスセンサ13に案内する前に、クリーニング時間Tcだけ半導体式ガスセンサ13のクリーニングを実施する。すなわち、案内流路14に設けられたバルブ22で筐体12内との連通状態から筐体12外との連通状態へと切り替え、ポンプ16を用いて筐体12外の気体を半導体式ガスセンサ13に案内する。これにより、長期間にわたって運用されても、半導体式ガスセンサ13が汚染されて検出感度が低下することを抑制でき、長寿命化を図ることができる。
【0021】
潤滑剤劣化状態検出方法では、クリーニング時間Tcが、案内流路14の流路容積Vtをポンプ16における単位時間当たりの流量Qpで除算した値(=Vt/Qp)以上に設定されている。これにより、案内流路14内の気体を入れ替え、十分なクリーニングを行なうことができる。
潤滑剤劣化状態検出方法では、対象ガスとして、アルコール、ケトン、アルデヒド、有機酸の少なくとも一つが含まれており、これらの濃度を選択的に検出している。このように、カルボニル化合物全般にわたって検出することができるため、潤滑剤の劣化を検出するのに適している。
【0022】
《実施例》
次に、潤滑剤劣化状態検出装置11の実施例について説明する。
実施例では、転がり軸受として、内径寸法が25mm、外径寸法が62mm、幅寸法が17mmであり、内輪回転であり、グリースによって潤滑されたものを使用する。回転速度が10,000r/minであり、外輪温度が140℃、ラジアル荷重が98N、アキシャル荷重が1470Nの条件で連続回転させた。
【0023】
グリースとしては、増ちょう剤がリチウム石けんであり、ちょう度No.2で、基油がポリαオレフィンとジエステルの混合物で、動粘度が15.9mm/s(40℃)である市販の汎用グリースを用いた。筐体12のアキシャル方向に直径6.5mmの採取孔を開け、外径6mm、内径4mmのチューブを挿入し、筐体12内の気体を吸引する。採取孔とセンサの間には、オイルミストを除去するセラミックスフィルタを設けた。センサには半導体式ガスセンサを用い、還元性ガスが金属酸化物表面の酸素を取り去り、ガスの濃度に応じて発生する抵抗値の減少を検出する。その他には、外輪温度を測定した。
【0024】
回転開始と同時にセンサユニットを稼働させて、検出したガス濃度を間欠的に測定することにより、転がり軸受の潤滑剤の劣化状態を検出した。バルブによってガスの吸引経路を切り替え、19分間のセンサクリーニングと1分間のガス測定を繰り返した。
図4は、実施例の試験結果を示すグラフである。
図中の(a)は外輪温度を示し、図中の(b)はセンサ出力を示す。試験結果は、350時間が経過した後に、センサ出力が増加し、380時間が経過したときに、外輪温度の異常上昇を検出して試験機が停止した。試験後の転がり軸受は、潤滑剤が劣化しており、円滑な回転が困難となっていた。したがって、センサ出力に対する閾値Ethを例えば0.2~0.3V程度に設定しておき、センサ出力が閾値Eth以上となったときに、試験機を停止すれば、外輪温度が異常上昇する前に、つまり潤滑剤が劣化する前に、試験機を停止させることができる。なお、センサ出力は回転初期にピークが生じるため、この期間については不感帯とする。
【0025】
次に、比較例について説明する。比較例では、実施例と同一条件のもと、定電位電解式センサを用いてガス測定を実施した。
図5は、比較例の試験結果を示すグラフである。
図中の(a)は外輪温度を示し、図中の(b)はセンサ出力を示す。試験結果は、外輪温度が異常上昇する前に、センサ出力が増加することはなかった。すなわち、センサ出力が増加するよりも先に、潤滑剤の劣化が進み、外輪温度が異常上昇してしまった。
したがって、潤滑剤の劣化状態を検出する際の検出感度という点で、実施例は比較例に対して優れていることが確認できた。
【0026】
《変形例》
実施形態では、一つの筐体12を備えた構成について説明したが、これに限定されるものではなく、複数の筐体12を備えた構成としてもよい。
図6は、変形例を示す図である。
ここでは、二つの筐体12a、12bを備えた構成を示す。この場合、半導体式ガスセンサ13へと案内する気体を、複数ある筐体12a、12bのうち何れか一つの筐体12内の気体に切り替えるバルブ42(第二の流路切替部)を備える。なお、夫々経路において、案内流路14、転がり軸受15、フィルタ17については、共通の構成であるため、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。バルブ42は、半導体式ガスセンサ13へと案内する気体を、筐体12内の気体、及び筐体12外の気体の何れか一方に切り替える機能も兼ねている(第一の流路切替部、流路切替部)。すなわち、バルブ42は、半導体式ガスセンサ13へと案内する気体を、筐体12a内の気体、筐体12b内の気体、及び筐体12外の気体の何れか一つに切り替えるバルブである。
【0027】
筐体12aについてガス測定を実施する場合、センサクリーニングを実施してから筐体12a内の気体を半導体式ガスセンサ13に案内する。また、筐体12bについてガス測定を実施する場合、センサクリーニングを実施してから筐体12b内の気体を半導体式ガスセンサ13に案内する。このように、複数の筐体12を備えたとしても、バルブ42によって流路を切り替えることで、一つの半導体式ガスセンサ13で筐体12a、12bのガス測定を実施することができる。すなわち、複数の筐体12に対して半導体式ガスセンサ13を共通化し、部品点数の増加やコストの増加を抑制することができる。
【0028】
なお、一つのバルブ42で、筐体12内の気体、及び筐体12外の気体の何れか一方に切り替える機能と、筐体12a、12bのうち何れか一つの筐体12内の気体に切り替える機能の両方を兼ねているが、これに限定されるものではない。前述したバルブ22で、筐体12内の気体か筐体外12外の気体かを切り替え、もう一つのバルブ42で、筐体12a、12bの何れか一つに切り替える構成としてもよい。さらに、二つの筐体12a、12bを備えているが、これに限定されるものではなく、三つ以上の筐体12を備える構成にも適用可能である。
【0029】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0030】
11…潤滑剤劣化状態検出装置、12…筐体、12a…筐体、12b…筐体、13…半導体式ガスセンサ、14…案内流路、15…軸受、16…ポンプ、17…フィルタ、21…分岐流路、22…バルブ、23…フィルタ、31…ヒータ抵抗、32…センサ抵抗、33…負荷抵抗、42…バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6