(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240116BHJP
G06F 13/38 20060101ALI20240116BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H04L12/28 400
G06F13/38 340E
B60R16/023 Z
(21)【出願番号】P 2020031966
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】230120499
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100201385
【氏名又は名称】中安 桂子
(72)【発明者】
【氏名】種村 嘉高
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191734(JP,A)
【文献】特開2018-180699(JP,A)
【文献】特開2010-273379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
G06F 13/38
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側電子制御装置及び下流側電子制御装置に直列に接続された電子制御装置(10)であって、
前記上流側電子制御装置から、所定の条件と前記条件を満たす場合に所定の動作を要求する要求内容とを含むメッセージを受信する上流側通信部(101)と、
前記条件を満たすか否かを判定する条件判定部(103)と、
前記要求内容を満たすか否かを判定する要求内容判定部(104)と、
前記条件判定部が前記条件を満たすと判定した場合に、前記条件を満たすことを示す条件判定結果及び前記メッセージを前記下流側電子制御装置に送信する下流側通信部(102)と、
を備え、
前記要求内容判定部が前記要求内容を満たすと判定し、且つ
、前記下流側通信部が前記下流側電子制御装置から前記条件を満たすことを示す条件判定結果を受信した場合、前記上流側通信部はさらに、前記要求内容を満たすことを示す内容判定結果を前記上流側電子制御装置に送信する、
電子制御装置。
【請求項2】
前記条件判定部は前記条件を判定可能か否かを判定し、前記条件を判定可能な場合に前記条件を満たすか否かを判定し、
前記条件判定部が前記条件を判定不能な場合、前記下流側通信部は、前記メッセージを前記下流側電子制御装置に送信する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記条件判定部が前記条件を満たさないと判定した場合、前記上流側通信部は、前記条件を満たさないことを示す条件判定結果を前記上流側電子制御装置に送信する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記上流側通信部が、前記条件を満たすことを示す上流側条件判定結果を受信した場合、前記条件判定部は前記条件を満たすか否かを判定せず
、前記上流側条件判定結果を前記下流側電子制御装置に送信する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記要求内容判定部が前記要求内容を満たさないと判定し、且つ、前記下流側通信部が前記下流側電子制御装置から前記要求内容を満たすことを示す下流側内容判定結果を受信した場合、前記上流側通信部は、前記下流側内容判定結果を前記上流側電子制御装置に送信する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記要求内容判定部が前記要求内容を満たすと判定し、且つ、前記下流側通信部が前記下流側電子制御装置から前記要求内容を満たすことを示す下流側内容判定結果を受信した場合、前記上流側通信部は、前記内容判定結果又は前記下流側内容判定結果のいずれか一方を前記上流側電子制御装置に送信する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記下流側電子制御装置は、当該電子制御装置
である対象電子制御装置に直列に接続された末端の電子制御装置であって、
前記下流側電子制御装置は、
前記対象電子制御装置から前記条件判定結果及び前記メッセージを受信し、前記条件判定結果を
前記対象電子制御装置に送信する
上流側通信部(101)と、
前記要求内容を満たすか否かを判定する下流側要求内容判定部(104)と、
を備え、
前記下流側要求内容判定部が前記要求内容を満たすと判定した場合、前記
上流側通信部はさらに、前記要求内容を満たすことを示す内容判定結果を
前記対象電子制御装置に送信する、
請求項1記載の電子制御装置。
【請求項8】
直列に接続された複数の電子制御装置を有
し、前記複数の電子制御装置のうち一の電子制御装置である第1の電子制御装置(20)と、前記複数の電子制御装置のうち他の電子制御装置である第2の電子制御装置(30)とを有するシステムであって、
前記第1の電子制御装置は第1の上流側電子制御装置及び第1の下流側電子制御装置に直列に直接接続され、前記第2の電子制御装置は第2の上流側電子制御装置及び第2の下流側電子制御装置に直列に直接接続されており、
前記第1の上流側電子制御装置、前記第1の下流側電子制御装置、前記第2の上流側電子制御装置、及び前記第2の下流側電子制御装置は前記複数の電子制御装置に含まれており、
前
記第1の電子制御装
置は、
前
記第1の上流側電子制御装置から、所定の条件と前記条件を満たす場合に所定の動作を要求する要求内容とを含むメッセージを受信する第1の上流側通信部(101)と、
前記条件を満たすか否かを判定する条件判定部(103)と、
前記条件判定部が前記条件を満たすと判定した場合に、前記条件を満たすことを示す条件判定結果及び前記メッセージを、前
記第1の下流側電子制御装置に送信する第1の下流側通信部(102)と、
を備え、
前
記第2の電子制御装置(30)は、
前
記第2の上流側電子制御装置から、前記メッセージを受信する第2の上流側通信部(101)と、
前記要求内容を満たすか否かを判定する要求内容判定部(104)と、
前記メッセージを前
記第2の下流側電子制御装置に送信する第2の下流側通信部(102)と、
を備え、
前記要求内容判定部が前記要求内容を満たすと判定し、且つ
、前記第2の下流側通信部が前記条件を満たすことを示す条件判定結果を受信した場合、前記第2の上流側通信部はさらに、前記要求内容を満たすことを示す内容判定結果を前記第2の上流側電子制御装置に送信する、
システム(2)。
【請求項9】
前記第1の電子制御装置と前記第2の電子制御装置が直列に直接接続されている場合であって、
前記第1の電子制御装置が前記第2の電子制御装置の上流側に位置する場合は、前記第1の下流側電子制御装置は前記第2の電子制御装置であり、前記第2の上流側電子制御装置は前記第1の電子制御装置であり、
前記第1の電子制御装置が前記第2の電子制御装置の下流側に位置する場合は、前記第1の上流側電子制御装置は前記第2の電子制御装置であり、前記第2の下流側電子制御装置は前記第1の電子制御装置であり、
前記第1の電子制御装置と前記第2の電子制御装置が直列に間接的に接続されている場合であって、
前記第1の電子制御装置が前記第2の電子制御装置の上流側に位置する場合は、前記第1の下流側電子制御装置は前記第2の上流側電子制御装置であり、
前記第1の電子制御装置が前記第2の電子制御装置の下流側に位置する場合は、前記第1の上流側電子制御装置は前記第2の下流側電子制御装置である、
請求項8記載のシステム。
【請求項10】
上流側電子制御装置及び下流側電子制御装置に直列に接続された電子制御装置で実行されるメッセージ処理方法であって、
前記上流側電子制御装置から、所定の条件と前記条件を満たす場合に所定の動作を要求する要求内容とを含むメッセージを受信し、
前記条件を満たすか否かを判定し、
前記要求内容を満たすか否かを判定し、
前記条件を満たすと判定した場合に、前記条件を満たすことを示す条件判定結果及び前記メッセージを前記下流側電子制御装置に送信し、
前記要求内容を満たすと判定し、且つ
、前記下流側電子制御装置から前記条件を満たすことを示す条件判定結果を受信した場合、前記要求内容を満たすことを示す内容判定結果を前記上流側電子制御装置に送信する、
メッセージ処理方法。
【請求項11】
上流側電子制御装置及び下流側電子制御装置に直列に接続された電子制御装置で実行されるメッセージ処理プログラムであって、
前記上流側電子制御装置から、所定の条件と前記条件を満たす場合に所定の動作を要求する要求内容とを含むメッセージを受信し、
前記条件を満たすか否かを判定し、
前記要求内容を満たすか否かを判定し、
前記条件を満たすと判定した場合に、前記条件を満たすことを示す条件判定結果及び前記メッセージを前記下流側電子制御装置に送信し、
前記要求内容を満たすと判定し、且つ
、前記下流側電子制御装置から前記条件を満たすことを示す条件判定結果を受信した場合、前記要求内容を満たすことを示す内容判定結果を前記上流側電子制御装置に送信する、
メッセージ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の電子制御装置から送信されたメッセージの内容を判定して処理を行う電子制御装置であって、主に車両に搭載される電子制御装置、当該電子制御装置で実行されるメッセージ処理プログラム、メッセージ処理方法、及び当該電子制御装置を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車車間通信や路車間通信のようなV2Xをはじめ、運転支援や自動運転制御を行う技術が注目されている。これに伴い、車両が通信機能を備えるようになり、いわゆる車両のコネクティッド化が進んでいる。コネクティッド車両の更なる普及により、車両は今後、他車両、路側機、運転支援等を行う装置だけでなく、様々な装置と通信を行う可能性が高まっている。
【0003】
車両と通信を行う相手側装置は、車両に搭載されたシステムや電子制御装置に適したメッセージを送信する必要がある。システムやシステムを構成する電子制御装置、更には電子制御装置に搭載されるアプリケーションは、車両や車種毎に異なっている可能性がある。しかしながら、相手方装置が車両や車種に応じたメッセージをそれぞれ生成して送信することは現実的ではない。そのため、特定のメッセージを送信することによって、メッセージを受信したいかなる車両からも同様の応答が得られることが望ましい。
【0004】
また、通信機能を有する電子制御装置が相手方装置からメッセージを受信すると、当該メッセージの内容を処理可能な電子制御装置にメッセージを転送する。メッセージの内容を処理可能な電子制御装置が不明な場合、システムを構成する全ての電子制御装置にメッセージをブロードキャストで送信することが考えられる。しかしながら、メッセージを処理できない電子制御装置に対してもメッセージを送信することは効率的ではなく、ネットワークの負荷が増大する。さらに、通信機能を有する電子制御装置は、メッセージに対する全ての電子制御装置からの応答を処理する必要があるため、当該電子制御装置の処理量が増大するおそれがある。
【0005】
例えば、特許文献1には、ネットワークを環状に接続した車載システムが開示されている。特許文献1によれば、テレマティクスECUからメッセージが送出されると、メッセージはネットワークに接続された電子制御装置を順々に巡回する。各電子制御装置がメッセージを受信すると、メッセージに対する処理結果を示すフラグを設定してメッセージを送出する。そして、メッセージがネットワークを一巡すると、テレマティクスECUはメッセージに設定されたフラグに基づいて各電子制御装置での処理結果を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような環状ネットワークを利用することにより、ネットワークの処理を増大させることなく、メッセージを処理可能な電子制御装置にメッセージを転送することができる。しかしながら、特許文献1に記載の手法を用いるためには、車両のネットワークを既存のネットワークから環状ネットワークの構成に変更する必要がある。
【0008】
本発明は、複数の電子制御装置から構成されるシステムにおいて、メッセージを処理可能な電子制御装置へと転送するとともに、メッセージの処理結果を当該メッセージの送信元に送信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様による電子制御装置は、上流側電子制御装置及び下流側電子制御装置に直列に接続された電子制御装置(10)であって、前記上流側電子制御装置から、所定の条件と前記条件を満たす場合に所定の動作を要求する要求内容とを含むメッセージを受信する上流側通信部(101)と、前記条件を満たすか否かを判定する条件判定部(103)と、前記要求内容を満たすか否かを判定する要求内容判定部(104)と、前記条件判定部が前記条件を満たすと判定した場合に、前記条件を満たすことを示す条件判定結果及び前記メッセージを前記下流側電子制御装置に送信する下流側通信部(102)と、を備え、前記要求内容判定部が前記要求内容を満たすと判定し、且つ、前記上流側通信部が前記上流側電子制御装置から又は前記下流側通信部が前記下流側電子制御装置から前記条件を満たすことを示す条件判定結果を受信した場合、前記上流側通信部はさらに、前記要求内容を満たすことを示す内容判定結果を前記上流側電子制御装置に送信する。
【0010】
なお、特許請求の範囲、及び本項に記載した発明の構成要件に付した括弧内の番号は、本発明と後述の実施形態との対応関係を示すものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0011】
上述のような構成により、複数の電子制御装置から構成されるシステムにおいて、メッセージを、当該メッセージを処理可能な電子制御装置へと送信するとともに、メッセージに対する処理結果をメッセージの送信元に送信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1、2の車載システム及び電子制御装置を説明する図
【
図2】実施形態1、2の電子制御装置の構成を示すブロック図
【
図3】実施形態1の電子制御装置の動作を説明するフローチャート
【
図4】実施形態1の電子制御装置の動作を説明するフローチャート
【
図5】実施形態1の電子制御装置の動作を説明するフローチャート
【
図6】実施形態1の電子制御装置の動作を説明するフローチャート
【
図7】実施形態1の車載システム及び電子制御装置の動作を説明する図
【
図8】実施形態1の車載システム及び電子制御装置の動作を説明する図
【
図9】実施形態1の変形例の電子制御装置の動作を説明するフローチャート
【
図10】実施形態1の変形例の電子制御装置の動作を説明するフローチャート
【
図11】実施形態1の変形例の電子制御装置の動作を説明するフローチャート
【
図12】実施形態2の車載システム及び電子制御装置の動作を説明する図
【
図13】実施形態3の車載システム及び電子制御装置の動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
なお、本発明とは、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された発明を意味するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、少なくともかぎ括弧内の語句は、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された語句を意味し、同じく以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
特許請求の範囲の従属項に記載の構成及び方法は、特許請求の範囲の独立項に記載の発明において任意の構成及び方法である。従属項に記載の構成及び方法に対応する実施形態の構成及び方法、並びに特許請求の範囲に記載がなく実施形態のみに記載の構成及び方法は、本発明において任意の構成及び方法である。特許請求の範囲の記載が実施形態の記載よりも広い場合における実施形態に記載の構成及び方法も、本発明の構成及び方法の例示であるという意味で、本発明において任意の構成及び方法である。いずれの場合も、特許請求の範囲の独立項に記載することで、本発明の必須の構成及び方法となる。
【0016】
実施形態に記載した効果は、本発明の例示としての実施形態の構成を有する場合の効果であり、必ずしも本発明が有する効果ではない。
【0017】
複数の実施形態がある場合、各実施形態に開示の構成は各実施形態のみで閉じるものではなく、実施形態をまたいで組み合わせることが可能である。例えば一の実施形態に開示の構成を、他の実施形態に組み合わせてもよい。また、複数の実施形態それぞれに開示の構成を集めて組み合わせてもよい。
【0018】
発明が解決しようとする課題に記載した課題は公知の課題ではなく、本発明者が独自に知見したものであり、本発明の構成及び方法と共に発明の進歩性を肯定する事実である。
【0019】
(実施形態1)
1.システムの構成
以下に、本実施形態の電子制御装置(以下、ECU:Electronic Control Unit)10から構成されるシステムを説明する。
図1は車両に搭載され、複数のECU10から構成されたシステム1を示している。システム1は、車外に位置するサーバ装置と通信を行う。
【0020】
システム1を構成する複数のECU10は「直列」に接続されている。また、ECU10のうち少なくとも1つは通信機能を有し、サーバ装置と通信を行う。以下の実施形態では、特定のECUから通信機能を有するECUに近い側を特定のECUの上流側と称し、通信機能を有するECUとは反対側を特定のECUの下流側と称する。また、下流側に他のECUを有しないECUは末端ECUと称する。
【0021】
ここで「直列」とは、上流側の電子制御装置から当該電子制御装置、当該電子制御装置から下流側の電子制御装置へと順々にメッセージが送信されるように接続されていればよく、必ずしも物理的に直列に接続されていなくともよい。
【0022】
なお、説明を簡易にするために、
図1は、複数のECUが物理的に直列に接続された状態を示している。しかしながら、
図1に示すECUの接続状態は一例にすぎず、ECUは環状に接続されていてもよい。あるいは、CANバスに複数のECUが接続されていてもよい。この場合、後述するメッセージが一のECUから特定のECUに送信されるように予め設定されることにより、ECUが物理的に直列に接続される場合と等価となり、ECUが直列に接続される構成に含まれることになる。
【0023】
システム1を構成する複数のECU10のうち通信機能を有するECUは、サーバ装置から送信された要求メッセージ(「メッセージ」に相当)を受信する。この要求メッセージは、所定の条件と、所定の条件を満たす場合に所定の動作を要求する要求内容と、を含む。
【0024】
サーバ装置は、例えば、ビッグデータ用に情報を収集する装置や、車両の挙動を制御する装置である。また、要求メッセージに含まれる所定の条件とは、例えば、車両の位置、車両の速度、アクセル開度、車両の室内温度が特定の数値以上又は以下であること、あるいは、ドアロックの有無、車両の乗員の有無といった、車両が特定の状態を満たしていること、である。また、要求内容とは、例えば、車両位置、速度、加速度、アクセル開度といった数値情報、これらの数値情報の平均値や標準偏差といった統計値、これらの数値情報が特定の数値以上又は以下であるかを示す情報、あるいは、車載カメラで撮影された静止画又は動画情報といった車両データの送信である。あるいは、要求内容は、電源入切やアクチュエータ動作といった車両の挙動制御であってもよい。
【0025】
要求内容が車両データの送信を要求するものである場合、要求内容はさらに車両データの有効数字の桁数や数値範囲を指定してもよい。
【0026】
なお、
図1では、システム1が車両に搭載された車載システムである例を示している。しかしながら、本実施形態の電子制御装置を有するシステムは車載システムに限定されるものではなく、任意のシステムに適用される。
【0027】
また、以下の実施形態では、通信機能を有するECUがサーバ装置から送信された要求メッセージを受信する例を説明している。しかしながら、要求メッセージは、車両の外部から送信されるものでなくともよく、車両に搭載された他のシステムから送信されるメッセージであってもよい。さらには、要求メッセージは、システム1を構成するECUの1つによって生成され、後述するように、メッセージを生成したECUよりも下流側のECUへと送信されてもよい。
【0028】
2.ECUの構成
図2を参照して、本実施形態のECU10を説明する。ECU10は、上流側通信部101、下流側通信部102、条件判定部103、要求内容判定部104、及び判定結果メッセージ生成部105を備える。
【0029】
上流側通信部101は、ECU10の上流側に接続された上流側ECU10u(「上流側電子制御装置」に相当)と通信を行う通信部である。上流側通信部101は、上流側ECU10uから条件及び要求内容を含む要求メッセージを受信する。
【0030】
下流側通信部102は、ECU10の下流側に接続された下流側ECU10d(「下流側電子制御装置」に相当)と通信を行う通信部である。下流側通信部102は、下流側ECU10dに要求メッセージを送信する。
【0031】
上流側通信部101及び下流側通信部102はさらに、後述する条件判定部103及び要求内容判定部104の判定結果、及び、他のECUが備える条件判定部及び要求内容判定部の判定結果に応じて、条件を満たすか否かを示す「条件判定結果」、又は要求内容を満たすか否かを示す「内容判定結果」の少なくとも一方を含む判定結果メッセージを、上流側ECU10u、下流側ECU10dとの間でそれぞれ送受信する。条件及び要求内容の判定結果に応じていかなる判定結果メッセージを送受信するかは後述する。
【0032】
ここで、「条件判定結果」は、条件を満たすか否かの他、条件を判定可能か否かの示す情報であってもよい。さらに、条件を満たしているか否かを直接的に示す情報の他、下流側電子制御装置では条件の判定が不要であることを示すことにより、間接的に条件を満たすことを示す情報であってもよい。
「要求内容判定結果」は、要求内容を満たすか否かの他、要求内容を判定可能か否かの示す情報であってもよい。さらに、要求内容を満たしているか否かを直接的に示す情報の他、要求の内容そのものを示すことにより、間接的に要求内容を満たすことを示す情報であってもよい。
【0033】
条件判定部103は、上流側通信部101で受信した要求メッセージに含まれる条件を判定可能か否かを判定する。そして、条件を判定可能な場合はさらに、条件を満たすか否かを判定する。
【0034】
要求内容判定部104は、上流側通信部101で受信した要求メッセージに含まれる要求内容を判定可能か否かを判定する。そして、要求内容を判定可能な場合はさらに、要求内容を満たすか否かを判定する。例えば、要求内容判定部104は、所定の動作を実行できる場合に要求内容を満たすと判定する。
【0035】
条件判定部103及び要求内容判定部104が条件及び要求内容を判定可能か否か、とは、例えば、ECUが条件及び要求内容に関する情報を有するかどうかを示している。例えば、GPSに接続されていないECUが位置情報に関する条件及び要求内容を受信しても、当該ECUはこれらの条件及び要求内容を判定することはできない。したがって、このような場合、条件判定部103及び要求内容判定部104は条件及び要求内容をそれぞれ判定不能である。
【0036】
また、条件及び要求内容を満たすか否か、とは、例えば、ECUが条件及び要求内容に関する情報を有していることを前提に、ECUが有する情報が条件及び要求内容に合致するかどうかを示している。例えば、速度センサに接続されたECUが車両速度に関する条件及び要求内容を受信した場合、条件判定部103及び要求内容判定部104は条件及び要求内容を判定することができる。しかしながら、速度センサで取得した車両速度が条件及び要求内容で指定された速度以下である場合には、条件及び要求内容を満たさないと判定される。
【0037】
なお、以下に示す実施形態では、条件判定部103及び要求内容判定部104が条件及び要求内容を判定可能か否かを判定し、判定可能な場合に限り条件及び要求内容を満たすか否かを判定する構成を説明している。しかしながら、ECU10が条件及び要求内容に関する情報を何ら有しないECUである場合、本開示のECU10は、条件判定部103及び要求内容判定部104にて判定可能か否かの処理を行うことなく、上流側又は下流側のEUCに要求メッセージを送信する構成としてもよい。
【0038】
メッセージ生成部105は、条件判定部103又は要求内容判定部104での判定結果に基づいて判定結果メッセージを生成する。メッセージ生成部105は、上流側通信部101又は下流側通信部102から受信した判定結果メッセージの内容を更新することで、新たな判定結果メッセージを生成してもよい。なお、説明のため、要求メッセージと判定結果メッセージをそれぞれ異なるメッセージとして説明している。しかしながら、メッセージ生成部105は、要求メッセージに含まれる条件及び要求内容を判定結果に書き換えて、判定結果メッセージを生成してもよい。
【0039】
メッセージ生成部105は、条件判定部103が条件を満たすと判定した場合には条件を満たすことを示す条件判定結果(COK)を、条件を満たさないと判定した場合には条件を満たさないことを示す条件判定結果(CNG)を、条件を判定不能な場合には判定不能であることを示す条件判定結果(CBL)を含む判定結果メッセージを生成する。同様に、メッセージ生成部105は、要求内容判定部104が要求内容を満たすと判定した場合には要求内容を満たすことを示す内容判定結果(ROK)を、要求内容を満たさないと判定した場合には要求内容を満たさないことを示す内容判定結果(RNG)を、要求内容を判定不能な場合には判定不能であることを示す内容判定結果(RBL)を含む判定結果メッセージを生成する。
【0040】
条件判定結果及び内容判定結果は、任意の方法で表される。例えば、フラグの有無によって判定結果を表してもよい。あるいは、条件及び要求内容の判定基準となる情報を付与することにより、判定結果を表してもよい。例えば、車両が特定のエリア内であることが条件である場合には、車両の緯度経度を示す情報を付与することによって条件を満たす又は満たさないことを表してもよい。
【0041】
3.ECUの動作
図3を参照して、ECU10が上流側ECU10
uから要求メッセージを受信した場合の動作を説明する。
【0042】
上流側通信部101は、上流側ECU10uから要求メッセージを受信する(S101)。ここで、要求メッセージと共に、ECU10よりも上流側に位置するいずれかのECU10の条件判定部103における条件判定結果(COK)(「上流側条件判定結果」に相当)を含む判定結果メッセージを受信した場合、条件判定部103は、要求メッセージ及び受信した判定結果メッセージを下流側ECU10dに送信する(S109)。
【0043】
S101で条件判定結果(COK)を含む判定結果メッセージを受信していない場合、条件判定部103は、要求メッセージに含まれる条件を判定可能か否かを判定する(S103)。条件を判定不能な場合(S103:No)は、条件を判定不能であることを示す条件判定結果(CBL)を生成する(S104)。そして、下流側通信部102は、条件判定結果(CBL)を含む判定結果メッセージと要求メッセージを下流側ECU10dに送信する(S109)。条件判定部103が条件を判定可能な場合(S103:Yes)はさらに、条件を満たすか否かを判定する(S105)。ここで、条件を満たさないと判定した場合(S105:No)、条件を満たさないことを示す条件判定結果(CNG)を生成する(S106)。そして、上流側通信部101は、条件判定結果(CNG)を含む判定結果メッセージを上流側ECU10uに送信する(S107)。
【0044】
これに対し、条件判定部103が条件を満たすと判定した場合(S105:Yes)、条件を満たすことを示す条件判定結果(COK)を生成する(S108)。そして、下流側通信部102は、条件判定結果(COK)を含む判定結果メッセージ及び要求メッセージを下流側ECU10dに送信する(S109)。
【0045】
ECU10が条件を判定不能な場合であっても、ECU10よりも下流側に位置するいずれかのECUが条件を判定可能な可能性がある。そのため、ECU10が条件を判定不能な場合には、ECU10よりも下流側に位置するECUに条件判定をさせるべく、要求メッセージを下流側ECU10dに送信する。
【0046】
システム1を構成するECU10のいずれか1つが条件を満たさないと判定した場合、サーバ装置の要求に応答することはできない。そこで、ECU10が条件を満たさないと判定した場合、要求メッセージを下流側ECU10dには送信せず、上流側ECUuに条件判定結果(CNG)を送信する。これにより、要求メッセージを最初に送出したECUへと要求メッセージに対する処理結果を戻すことができる。
【0047】
ECU10よりも上流側に位置するECUが既に条件を満たすと判定している場合、下流側に位置するECUが条件を重複して判定する必要はない。そこで、ECU10が条件判定結果(COK)を受信した場合には、条件を満たすか否かを判定せず、受信した条件判定結果(COK)を下流側ECU10dに送信する。これにより、ECU10よりも下流側に位置するECUは条件の判定処理を省略することができるため、ECUの処理負荷を低減することができる。
【0048】
なお、
図3では、条件を判定不能な場合(S103:No)には、条件判定結果(C
BL)を生成している(S104)。しかしながら、ECU10が最上流側に位置するECU以外の場合、上流側ECU10
uから条件判定結果(C
BL)を受信することになる。このような場合には、条件判定結果(C
BL)を新たに生成せず、受信した条件判定結果(C
BL)をそのまま下流側ECU
dに送信してもよい。
【0049】
次に、
図4を参照して、ECU10が下流側ECU10
dから判定結果メッセージを受信した場合の動作を説明する。
【0050】
下流側通信部102は、下流側ECU10dから判定結果メッセージを受信する(S201)。この判定結果メッセージには、条件判定結果及び下流側のECUにおける要求内容に対する判定結果(「下流側内容判定結果」に相当)が含まれている。
【0051】
判定結果メッセージが条件判定結果(CNG)を含む場合(S202:Yes)、上流側通信部101は条件判定結果(CNG)を含む判定結果メッセージを上流側ECU10uに送信する(S208)。
【0052】
判定結果メッセージが条件判定結果(C
OK)又は(C
BL)を含む場合(S202:No)、要求内容判定部104は、
図3のS101で受信した要求メッセージに含まれる要求内容を判定可能か判定する(S203)。ここで、要求内容を判定不能な場合(S203:No)、要求内容を判定不能であることを示す内容判定結果(R
BL)を生成する(S204)。これに対し、要求内容を判定可能な場合(S203:Yes)、要求内容を満たすか否かをさらに判定する(S205)。ここで、要求内容を満たすと判定した場合(S205:Yes)、要求内容を満たすことを示す内容判定結果(R
OK)を生成する(S206)。また、要求内容を満たさないと判定した場合(S205:No)、要求内容を満たさないことを示す内容判定結果(R
NG)を生成する(S207)。
【0053】
そして、S201で受信した判定結果メッセージに、他のECUの内容判定結果が含まれている場合には、他の内容判定結果と、S204、S206、S207のいずれかのステップで生成した内容判定結果のいずれか一方を選択し、選択した内容判定結果及び受信した条件判定結果を含む判定結果メッセージを生成する(S208)。そして、生成した判定結果メッセージを上流側ECU10uに送信する(S209)。
【0054】
ここで、S208では、要求内容に対して最も望ましい内容となる内容判定結果が選択され、判定結果メッセージが生成される。例えば、内容判定結果(R
OK)を受信し、ECU10で内容判定結果(R
NG)又は(R
BL)が生成された場合、内容判定結果(R
OK)が選択される。また、内容判定結果(R
OK)を受信し、ECU10で内容判定結果(R
OK)が生成された場合には、これらの内容判定結果のうち、要求内容に対してより望ましい結果となる内容判定結果が選択される。S208における内容判定結果の選択については、
図8を参照して後述する。
【0055】
なお、
図4のS201において最上流側に位置するECUが判定結果メッセージを受信した場合には、上流側ECU10u
uに代えてサーバ装置に判定結果メッセージを送信する。また、ECU10が最上流側のECUの場合は、条件判定結果(C
OK)と内容判定結果(R
OK)の双方が揃っている場合に限り、サーバ装置に判定結果メッセージを送信する。
【0056】
上述したとおり、条件を満たさない場合はサーバ装置の要求に応答することはできないため、要求内容について判定をする必要はない。そこで、下流側ECU10dから条件判定結果(CBL)を受信した場合には、要求内容について判定することなく、上流側ECUuに条件判定結果(CNG)を送信する。これにより、要求メッセージを最初に送出したECUへと要求メッセージに対する処理結果を戻すことができる。
【0057】
図4では、要求内容を判定不能な場合(S203:No)には、内容判定結果(R
BL)を生成している(S204)。しかしながら、ECU10が最下流側に位置するECU以外の場合、下流側ECU10
dから内容定結果(R
BL)を受信することがある。このような場合には、内容判定結果(R
BL)を新たに生成せず、受信した内容判定結果(R
BL)をそのまま上流側ECU10
uに送信してもよい。
【0058】
また、
図3、4では、条件や要求内容を判定不能な場合(S103、S203:No)、条件判定結果(C
BL)や内容判定結果(R
BL)を生成して送信している。しかしながら、条件及び要求内容を判定不能な場合には、条件判定結果、内容判定結果を生成せず、ひいては、これらの判定結果を送信しなくともよい。
【0059】
次に、システム1の直列に接続された複数のECU10のうち末端ECU10の動作を、
図5、6を参照して説明する。
図3、4と同じ処理については説明を省略する。
【0060】
図5は、上流側ECU
uから要求メッセージを受信した場合の動作を示している。
図5に示す通り、S101~S108の処理は
図3と同じである。ただし、ECUが末端ECUの場合、S109の処理は行わずに
図6に示す処理を続けて実行する。
図6は、上流側ECU
uに判定結果メッセージを送信する場合の動作を示している。
図6に示すとおり、S203~S209の処理は
図4と同じである。ただし、ECUが末端ECUの場合、判定結果メッセージの受信をトリガとしてではなく、
図5の条件判定処理が終わると要求内容の判定処理が実行されることになる。また、末端ECU10の場合、他のECUから内容判定結果を受信することはないため、S208で生成される判定結果メッセージには、末端ECU10で生成された内容判定結果が格納されることになる。
【0061】
次に、
図7、8を参照してシステム1全体の動作を説明する。
図7に示すECU10aは車両位置に関する情報を有するECUであって、車両の位置に関する条件及び要求内容を判定可能であり、ECU10bは車両速度に関する情報を有するECUであって、速度に関する条件及び要求内容を判定可能であるとする。また、ECU10cは、位置及び速度に関する条件及び要求内容を判定不能なECUであるとする。また、要求メッセージに含まれる条件は、特定のエリア内であること、であり、要求メッセージに含まれる要求内容は、速度データの送信、であるとする。
【0062】
図7aは6つのECUが直列に接続されたシステムを示している。6つのECUのうち、ECU10a、ECU10bが1つずつ含まれている。まず、条件を判定できないECU10c
1がサーバ装置から要求メッセージを受信すると、条件判定結果(C
BL)を含む判定結果メッセージと要求メッセージをECU10c
2に送信する(S301)。また、ECU10c
2も同様に条件を判定できないため、条件判定結果(C
BL)を含む判定結果メッセージと要求メッセージを次のECU10aに送信する(S302)。ここで、ECU10aは、位置に関する条件を判定することができる。そのため、ECU10aは車両が特定のエリア内であるかという条件を満たすか否かを判定する(S303)。
【0063】
図7bは、
図7aのS303でECU10aが条件を満たさないと判定した場合を示している。この場合、ECU10aは条件判定結果(C
NG)を生成し、条件判定結果(C
NG)を含む判定結果メッセージをECU10c
2に送信する(S304)。また、ECU10aから条件判定結果(C
NG)を受信したECU10c
2は、条件判定結果(C
NG)を含む判定結果メッセージをECU10c
1に送信する。そして、ECU10c
1は、条件を満たさないため、サーバ装置に対して要求メッセージに対する応答を送信しない。
【0064】
一方、
図7cは、
図7aのS303でECU10aが条件を満たすと判定した場合を示している。この場合、ECU10aは条件判定結果(C
OK)を生成し、条件判定結果(C
OK)を含む判定結果メッセージと要求メッセージをECU10c
3に送信する(S306)。ECU10c
3は条件を判定することなく、判定結果メッセージ及び要求メッセージをECU10bに送信する(S307)。ECU10bも同様に、判定結果メッセージ及び要求メッセージをECU10c
4に送信する(S308)。
【0065】
図7dは、末端ECUであるECU10c
4まで要求メッセージが到達した後の動作を示している。ECU10c
4が判定結果メッセージ及び要求メッセージを受信すると、ECU10c
4は要求メッセージに含まれる要求内容を判定できるか否かを判定する。ここで、ECU10c
4は要求内容を判定することができないため、内容判定結果(R
BL)を生成し、内容判定結果(R
BL)と条件判定結果(C
OK)を含む判定結果メッセージと要求メッセージをECU10bに送信する(S309)。
【0066】
ここで、ECU10bは要求内容を判定することができるECUである。そこで、ECU10bは、要求内容を満たすか否かを判定する(S310)。そして、要求内容を満たすと判定すると、ECU10bは内容定結果(ROK)を生成し、内容判定結果(ROK)と条件判定結果(COK)を含む判定結果メッセージと要求メッセージをECU10c3に送信する(S311)。この判定結果メッセージは、ECU10a、10c2を介して、ECU10c1へと送信される(S312、S313、S314)。
【0067】
そして、通信機能を有するECU10が判定結果メッセージを受信すると、このECUECU10は判断結果メッセージをサーバ装置に送信する。
【0068】
図8は、システム1が要求内容を判定可能な複数のECU(ECU10b
1、ECU10b
2)を有する例を示している。末端ECU10b
1まで要求メッセージが到達するまでの処理は、
図7a乃至
図7cと同じであるため説明は省略する。
【0069】
図8では、ECU10b
1が要求メッセージを受信すると、要求内容を満たすか否かを判定する。ここで、ECU10b
1が要求内容を満たすと判定した場合(S401)、要求内容を満たすことを示す内容判定結果(R
OK1)を含む判定結果メッセージをECU10b
2に送信する(S402)。
【0070】
ECU10b1から判定結果メッセージを受信したECU10b2は、要求内容を判定可能なECUである。そこで、ECU10b2は要求内容を満たすか否かを判定する(S403)。ここで、ECU10b2が要求内容を満たすと判定すると、ECU10b1における内容判定結果(ROK1)と、ECU10b2における内容判定結果(ROK2)の2つの判定結果が存在することになる。そこで、ECU10b2は、2つの内容判定結果(ROK1、ROK2)のいずれか一方を選択し、選択した内容判定結果を含む判定結果メッセージをECU10C3に送信する(S404)。
【0071】
例えば、要求内容が車両の速度情報の送信である場合、内容判定結果(ROK)は車両の速度情報である。このような場合、ECU10b1は、2つの内容判定結果(ROK1、ROK2)のうちデータの精度が高い内容判定結果を選択してもよい。データの精度は、例えば、データの有効数字の桁数によって判定することができる。あるいは、ECU毎に予め優先度を設定しておき、優先度が最も高いECUにおける内容判定結果を選択してもよい。また、優先度は複数のパラメータに応じて適宜変化してもよく、条件を満たすと判定したECUに近接しているECUほど優先度が高くなるように設定をしてもよい。
【0072】
なお、上述した例はいずれも、要求メッセージに含まれる条件及び要求内容が1つの場合を示したが、条件及び要求内容は複数であってもよい。例えば、所定の条件は、条件A又は条件Bのいずれか一方を満たすこと、あるいは、条件A及び条件Bの双方を満たすこと、であってもよい。例えば、要求メッセージに含まれる条件が、車両がエリアA(条件A)又はエリアB(条件B)のいずれかの範囲内を走行していること、である場合、各ECUの条件判定部103は条件A、Bの双方について判定を行う。この場合、条件A、Bの双方を満たさないことを示す結果が揃うと、
図7bのS304、S305に示すように、条件判定結果(C
NG)を含む判定結果メッセージを上流側ECUに送信する。また、条件が、車両がエリアAの範囲内(条件A)を、時速10km以上で走行している(条件B)こと、である場合、各ECUの条件判定部は条件1、2の双方について判定を行う。そして、条件A、Bのいずれか一方でも条件を満たさないと判定した場合には、条件判定結果(C
NG)を含む判定結果メッセージを上流側ECUに送信する。
【0073】
また、ECUが環状に接続されている場合、システム1は末端ECUに相当するECUを有しない。そのため、ECUが環状に接続される場合には、同一の要求メッセージを受信するのが2回目か否かを判定し、同一の要求メッセージを2回目に受信した場合には、その直前に位置するECUが末端ECUとして処理を行ってもよい。あるいは、以下の変形例で詳述するとおり、要求メッセージを受信した際に条件に加えて要求内容を判定し、要求メッセージと共に、条件判定結果及び内容判定結果を含む判定結果メッセージを送信する構成としてもよい。
【0074】
要求メッセージは所定の条件を満たす場合に所定の動作を要求するメッセージであるが、複数のECUからなるシステムでは、1つのECUが条件及び要求内容の双方に応答することができるとは限らない。そこで、本実施形態では、システム1を構成する複数のECUの上流側から下流側へと要求メッセージを順次送信し、下流側から上流側へと要求メッセージに対する判定結果を順次送信する。これにより、システム1を構成するECUのうち、条件を判定可能なECUが条件に対する応答を生成し、要求内容を判定可能なECUが要求内容に対する応答を生成することができるため、システムを構成するネットワークの負荷を増大させることなく、要求メッセージに対して応答することが可能となる。
【0075】
さらに、システム1を構成する1のECUが条件を満たさないと判定した場合、要求メッセージを下流側のECUには送信せず、条件を満たさないことを示す判定結果を上流側のECUに送信することにより、条件を判定したECUよりも下流側のECUにおける処理を低減することが可能となる。
【0076】
(変形例)
上述した実施形態1では、上流側のECUから下流側のECUへと要求メッセージが送信される場合に条件のみを判定し、下流側のECUから上流側のECUへと判定結果メッセージが送信される場合に要求内容を判定する構成を説明した。本変形例では、上流側のECUから下流側のECUへと要求メッセージが送信される際に、条件に加えて要求内容を判定するとともに、条件判定結果に加えて内容判定結果を含む判定結果メッセージを下流側のECUへと送信する構成を説明する。
【0077】
本変形例では、下流側ECU10dに送信する内容判定結果は、例えば、位置情報や速度情報といった数値情報ではなく、要求内容を満たすことのみを示す情報であることが望ましい。これにより、上流側から下流側及び下流側から上流側と数値情報が往復するのを防ぎ、ネットワークの負荷が増大するのを防ぐことができる。この場合、下流側ECU10dから判定結果メッセージを受信した際に、要求内容を満たすことのみを示す内容判定結果を数値情報に更新し、上流側ECUuには数値情報としての内容判定結果を送信する。以下の例では、区別するために、要求内容を満たすことのみを示す内容判定結果を(ROK)、数値情報等の内容判定結果を(R)とする。
【0078】
図9は本変形例による、ECU10が上流側ECU10
uから要求メッセージを受信した場合の動作を説明する。本変形例では、条件判定結果が(C
BL)又は(C
OK)の場合、要求内容を判定可能か否かを判定し、判定可能な場合には要求内容を満たすか否かを判定する(S111)。そして、要求内容を満たすと判定した場合には、内容判定結果(R
OK)を生成する(S112)。そして、条件判定結果(C
BL)又は(C
OK)と、内容判定結果(R
OK)とを含む判定結果メッセージを下流側ECU10
dに送信する。
【0079】
図10は、本変形例による末端ECUの動作を示している。末端ECUが上流側ECU
uから要求メッセージを受信して
図5の動作をした後、
図10の処理を行う。ここで、S205において、要求内容を満たすと判定すると内容判定結果(R)を作成する(S211)。一方、末端ECUの要求内容判定部104が、要求内容を判定不能又は満たさないと判定した場合、判定結果メッセージに内容判定結果(R
OK)が含まれているか否かを判定する(S212)。ここで、内容判定結果(R
OK)を受信していない場合は(S212:No)、内容判定結果(R
NG)を生成する(S213)。そして、S208において、S211で生成した内容判定結果(R)、受信した判定結果メッセージに含まれる内容判定結果(R
OK)、又はS213で生成した内容判定結果(R
NG)のいずれかを含む判定結果メッセージを生成する。
【0080】
図11は、本変形例のECU10が下流側ECU10
dから判定結果メッセージを受信した場合の動作を示している。判定結果メッセージが、条件判定結果(C
NG)以外の条件判定結果を含む場合(S202:No)、判定結果メッセージが要求内容を判定不能であることを示す内容判定結果(R
NG)を含むか否かを判定する(S221)。ここで内容判定結果が(R
NG)の場合、システム1を構成するECUはいずれも内容を判定不能であることを示している。そのため、内容判定結果(R
NG)を含む判定結果メッセージを送信する(S209)。一方、内容判定結果が(R
OK)の場合、システム1を構成するECUのいずれかは内容を判定可能であることを示している。そこで、ECU10が要求内容を判定可能であり、要求内容を満たすか否かを判定する(S222)。ここで、要求内容を判定可能であり、且つ、要求内容を満たすと判定すると(S222:Yes)、内容判定結果(R)を作成する(S223)。そして、内容判定結果(R)を含む判定結果メッセージを生成し(S208)、上流側ECU10
uに送信する(S209)。一方、要求内容判定部104が、要求内容を判定不能又は満たさないと判定した場合は、受信した要求判定結果を含む判定結果メッセージを上流側ECU10
uに送信する。
【0081】
本変形例では、上流側のECUから下流側のECUへと要求メッセージが送信される際に、全てのECUが要求内容を判定不能である、又は要求内容を満たさないと判定した場合、下流側のECUから上流側へのECUへと判定結果メッセージを送信する際に、要求内容の判定処理を省略することができる。
【0082】
(実施形態2)
実施形態1では、1つのECUに対して上流側ECUと下流側ECUが1つずつ接続される例を説明した。本実施形態では、ECUの下流側に2以上のECUが接続される場合を実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0083】
図12は本実施形態によるシステムの動作を簡略的に示している。
図7、8とは異なり、システム1は、下流側に複数のECUが接続されたECU10c
2を有している。ここで、
図7と同様、
図12に示すECU10aは位置に関する条件及び要求内容を判定可能なECUであり、ECU10bは速度に関する条件及び要求内容を判定可能なECU10であり、ECU10cは位置及び速度に関する条件及び要求内容を判定できないECUであるとする。また、
図7と同様、要求メッセージに含まれる条件は、特定のエリア内であること、であり、要求メッセージに含まれる要求内容は、速度データの送信、である場合を例に説明する。
【0084】
ECU10c1は条件を判定できないため、要求メッセージ及び条件判定結果(CBL)を含む判定結果メッセージを電子制御装置10c2に送信する(S501)。また、ECU10c2も条件を判定できないため、要求メッセージを下流側のECUに送信する。ここで、ECU10c2の下流側には2つのECU10c3、10c5が接続されている。そのため、ECU10c2は、ECU10c3、ECU10c5それぞれに要求メッセージ及び判定結果メッセージを送信する(S511、S521)。
【0085】
要求メッセージを受信したECU10c3は条件を判定できないため、要求メッセージ及び判定結果メッセージをECU10aに送信する(S512)。ここで、ECU10aは条件を判定できるECUである。そこで、条件を満たすと判定した場合(S513)、要求メッセージ及び条件判定結果(COK)含む判定結果メッセージをECU10c4に送信する(S514)。
【0086】
一方、ECU10c2から要求メッセージ及び判定結果メッセージを受信したECU10c5は条件を判定できないため、これらのメッセージをECU10bに送信する(S522)。
【0087】
図12bは、末端ECUであるECU10c
4及びECU10bに要求メッセージが到達した後の動作を示している。ECU10c
4は要求内容を判定することができない。そのため、条件判定結果(C
OK)を含む判定結果メッセージを上流側ECU10aに送信する(S515)。要求内容を判定できないECU10a、EUC10c
3もまた、上流側のECUに判定結果メッセージを送信する(S516、S517)。
【0088】
一方、末端ECUであるECU10bは要求内容を判定可能なECUである。ここで、ECU10bが要求内容を満たすと判定すると(S523)、要求内容を満たすことを示す内容判定結果(ROK)を含む判定結果メッセージをECU10c5に送信する(S524)。また、判定結果メッセージを受信したECU10c5は要求内容を判定できないため、判定結果メッセージをECU10c2に送信する(S525)。
【0089】
図12cは、ECU10c
2が、ECU10c
3から条件判定結果(C
OK)を受信し、ECU10c
5から内容判定結果(R
OK)を受信した後の動作を示している。ECU10c
2は、これらの条件判定結果(C
OK)と内容判定結果(R
OK)を含む判定結果メッセージを生成し(S531)、生成したメッセージをECU10c
1に送信する(S532)。
【0090】
本実施形態では、複数のECUに要求メッセージを送信するECU10c2は、要求メッセージを送信した下流側の全てのECUから判定結果メッセージを受信するまで待機し、全ての判定結果メッセージを受信した時点で判定結果メッセージを生成してもよい。複数のECUから、要求内容を満たすことを示す複数の内容判定結果(ROK)を受信した場合には、要求内容に対して望ましい応答を選択して送信することができる。
【0091】
さらに他の例では、下流側ECUから判定結果メッセージが送信されるのを一定時間だけ待機し、ECU10c2は一定時間内に受信した判定結果メッセージに基づいて判定結果メッセージを生成してもよい。あるいは、最も早く受信した判定結果メッセージの内容と、ECU10c2における判定結果に基づいて、判定結果メッセージを生成してもよい。この場合、要求メッセージに対して短時間で応答することが可能がとなる。
【0092】
(実施形態3)
上述した実施形態1、2では、システム1に搭載された全てのECUが条件判定部103及び要求内容判定部104の双方を備える構成を説明した。本実施形態では、システムを構成する複数のECUのうち一部のECUが条件判定部103のみを有し、他の一部のECUが要求内容判定部104のみを有する構成を説明する。
【0093】
図13を参照して、本実施形態のシステムの動作を説明する。
図13は、6つのECUから構成されるシステム2を示している。
図13に示すECUのうち、ECU20は、上流側通信部101、下流側通信部102、条件判定部103、及びメッセージ生成部105を備える。また、ECU30は、上流側通信部101、下流側通信部102、要求内容判定部104、及びメッセージ生成部105を備える。また、ECU40は、条件判定部103、要求内容判定部104のいずれも有しないECUである。
【0094】
図13aは、末端ECUに要求メッセージが到達するまでの動作を示している。
図7と同様、条件判定部104を有しないECU40
1がサーバ装置から要求メッセージを受信すると、要求メッセージをECU40
2に送信する(S601)。ここで、
図7とは異なり、ECU40
1は条件判定部103を有しないECUである。そのため、ECU40
1は、条件判定結果を生成することはなく、また、条件判定結果をECU40
2に送信しない。ECU40
2もECU40
1と同様、要求メッセージをECU20に送信する(S602)。ここで、ECU20は条件判定部103を有するECUである。そのため、条件を判定可能な場合には条件を満たすか否かを判定する(S603)。そして、条件を満たすと判定すると、ECU20はECU30に要求メッセージと条件判定結果(C
OK)を含む判定結果メッセージを送信する(S604)。条件判定部103を有しないECU30は、要求メッセージ及び判定結果メッセージをECU40
3に送信する(S605)。
【0095】
図13bは、末端ECUであるECU40c
3まで要求メッセージが到達した後の動作を示している。要求メッセージ及び判定結果メッセージを受信したECU40c
3は要求内容判定部104を有しないため、要求内容を判定することなく判定結果メッセージをECU30に送信する(S606)。ここで、ECU30は要求内容判定部104を有するため、要求内容を満たすか否かを判定する(S607)。そして、要求内容の判定結果を含む判定結果メッセージをECU20に送信する(S608)。ECU30の上流側に位置するECU20、ECU40
2はいずれも要求内容判定部104を有していないため、これらのECUは要求内容を判定することなく上流側ECU40c
2、40c
1に判定結果メッセージを送信する(S609、S610)。
【0096】
図13に示すとおり、システムを構成する全てのECUが条件判定部及び内容判定部の双方を有していなくとも、システムを構成するECUのうち少なくとも1つのECUが条件を満たすか否かを判定する条件判定部を有し、1つのECUが要求内容を満たすか否かを判定する要求内容判定部を備える構成であってもよい。
【0097】
(総括)
以上、各実施形態における電子制御装置及び当該電子制御装置が構成するシステムの特徴について説明した。
【0098】
各実施形態で使用した用語は例示であるので、同義の用語、あるいは同義の機能を含む用語に置き換えてもよい。
【0099】
実施形態の説明に用いたブロック図は、装置の構成を機能毎に分類及び整理したものである。それぞれの機能を示すブロックは、ハードウェア又はソフトウェアの任意の組み合わせで実現される。また、機能を示したものであることから、かかるブロック図は方法の発明、及び当該方法を実現するプログラムの発明の開示としても把握できるものである。
【0100】
各実施形態に記載した処理、フロー、及び方法として把握できる機能ブロック、については、一のステップでその前段の他のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0101】
各実施形態、及び特許請求の範囲で使用する、第1、第2、乃至、第N(Nは整数)、の用語は、同種の2以上の構成や方法を区別するために使用しており、順序や優劣を限定するものではない。
【0102】
各実施形態は、車両に搭載されるシステムを構成する電子制御装置を前提としているが、本発明は、特許請求の範囲で特に限定する場合を除き、他のシステムを構成する電子制御装置も含むものである。
【0103】
各実施形態では、各実施形態に開示の電子制御装置を車両に搭載する前提で説明したが、歩行者が所持する前提としてもよい。
【0104】
また、本発明の電子制御装置及び当該電子制御装置が構成するシステムの形態の例として、以下のものが挙げられる。
電子制御装置の部品の形態として、半導体素子、電子回路、モジュール、マイクロコンピュータが挙げられる。
電子制御装置、並びにシステム半完成品の形態として、電子制御装置(ECU(Electric Control Unit))、システムボードが挙げられる。
システムの完成品の形態として、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバが挙げられる。
【0105】
また電子制御装置に、アンテナや通信用インターフェースなど、必要な機能を追加してもよい。
【0106】
本発明の電子制御装置及び電子制御装置が構成するシステムは、各種サービスの提供を目的とするために用いられることが想定される。かかるサービスの提供に伴い、本発明の電子制御装置及びシステムが使用され、本発明の方法が使用され、又は/及び本発明のプログラムが実行されることになる。
【0107】
加えて、本発明は、各実施形態で説明した構成及び機能を有する専用のハードウェアで実現できるだけでなく、メモリやハードディスク等の記録媒体に記録した本発明を実現するためのプログラム、及びこれを実行可能な専用又は汎用CPU及びメモリ等を有する汎用のハードウェアとの組み合わせとしても実現できる。
【0108】
専用や汎用のハードウェアの非遷移的実体的記録媒体(例えば、外部記憶装置(ハードディスク、USBメモリ、CD/BD等)、又は内部記憶装置(RAM、ROM等))に格納されるプログラムは、記録媒体を介して、あるいは記録媒体を介さずにサーバから通信回線を経由して、専用又は汎用のハードウェアに提供することもできる。これにより、プログラムのアップグレードを通じて常に最新の機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の電子制御装置は、主として自動車に搭載される車載システムを構成する電子制御装置を前提として説明したが、車載システム以外のシステムを構成する電子制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1、2 システム、10 電子制御装置、101 上流側通信部、102 下流側通信部、103 条件判定部、104 要求内容判定部