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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20240116BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240116BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H02M7/06 U
H02J50/10
H02J1/00 306G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020040583
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021145396
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129856(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193661(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0156998(US,A1)
【文献】特開平08-285899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
H02J 50/10
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給する電源装置であって、
一次電線に流れる一次電流により発生する磁束に応じて、二次電線から前記負荷の側に二次電流を出力するカレントトランスと、
前記磁束が通る磁路に設けられる三次電線と、
前記三次電線に制御電流を流して前記二次電流を制御する制御回路とを備え
前記制御回路は、前記二次電流の検知結果に応じて、前記制御電流を変化させる、電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記二次電流の変動が抑制されるように、前記制御電流を前記三次電線に流す、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記二次電流の最大電流値が上限電流値を超えないように、前記制御電流を前記三次電線に流す、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記二次電流の電流値が一定範囲内に収まるように、前記制御電流を前記三次電線に流す、請求項1から3のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記二次電流の最大電流値が下限電流値よりも高いとき、前記制御電流を前記三次電線に流し、前記二次電流の最大電流値が前記下限電流値よりも低いとき、前記制御電流を前記三次電線に流すことを停止する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
負荷に電力を供給する電源装置であって、
一次電線に流れる一次電流により発生する磁束に応じて、二次電線から前記負荷の側に二次電流を出力するカレントトランスと、
前記磁束が通る磁路に設けられる三次電線と、
前記三次電線に制御電流を流して前記二次電流を制御する制御回路と
前記二次電線から供給される電力を直流電力に変換して前記負荷の側に出力する整流器と、を備え、
前記制御回路は、前記整流器の出力電圧の検知結果に応じて、前記制御電流を変化させる、電源装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記整流器の出力電圧の上昇が抑制されるように、前記制御電流を前記三次電線に流す、請求項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記整流器の出力電圧値が上限電圧値を超えないように、前記制御電流を前記三次電線に流す、請求項6又は7に記載の電源装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記整流器の出力電圧値が一定電圧値に収束するように、前記制御電流を前記三次電線に流す、請求項6から8のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項10】
前記制御回路は、前記整流器の出力電圧値が下限電圧値よりも高いとき、前記制御電流を前記三次電線に流し、前整流器の出力電圧値が前記下限電圧値よりも低いとき、前記制御電流を前記三次電線に流すことを停止する、請求項6から9のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項11】
前記制御回路は、前記直流電力のうち前記負荷の側に供給される電力を除く余剰電力を用いて、前記制御電流を生成する、請求項6から10のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項12】
前記直流電力を、前記負荷の側に供給する直流電力に変換するDC/DCコンバータを備える、請求項6から11のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項13】
負荷に電力を供給する電源装置であって、
一次電線に流れる一次電流により発生する磁束に応じて、二次電線から前記負荷の側に二次電流を出力するカレントトランスと、
前記磁束が通る磁路に設けられる三次電線と、
前記三次電線に制御電流を流して前記二次電流を制御する制御回路と
前記二次電線から供給される電力を直流電力に変換して前記負荷の側に出力する整流器と、
前記直流電力を、前記負荷の側に供給する直流電力に変換するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの出力経路に、前記負荷に給電可能に接続される蓄電装置と、を備える、電源装置。
【請求項14】
前記制御回路は、前記二次電流とは逆位相の前記制御電流を前記三次電線に流す、請求項1から13のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項15】
負荷に電力を供給する電源装置であって、
一次電線に流れる一次電流により発生する磁束に応じて、二次電線から前記負荷の側に二次電流を出力するカレントトランスと、
前記磁束が通る磁路に設けられる三次電線と、
前記三次電線に制御電流を流して前記二次電流を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、直流の前記制御電流を前記三次電線に流す、電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線等の電力線の近傍で利用される機器に対して、簡易に電力を供給する手段として、電力線にCT(カレントトランス)を設置することによって、電力線に流れる電流によって生じる誘導電流を利用する電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6351884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なCTでは、一次側の電線(一次電線)に一次電流が流れると、ある固定の電流比で、二次側の電線(二次電線)に二次電流が流れる。しかしながら、上述の電力線のような一次電線に流れる一次電流は、電力供給源の出力や電力供給先が必要とする電力量によって決まるため、大きく変動することがある。したがって、一次電流の変動が大きくなると、一次電流によって生じる誘導電流を利用して負荷に電力を供給する場合、負荷に電力を安定的に供給することが難しくなる。
【0005】
本開示は、一次電流が変動しても、負荷に電力を安定的に供給可能な電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
負荷に電力を供給する電源装置であって、
一次電線に流れる一次電流により発生する磁束に応じて、二次電線から前記負荷の側に二次電流を出力するカレントトランスと、
前記磁束が通る磁路に設けられる三次電線と、
前記三次電線に制御電流を流して前記二次電流を制御する制御回路とを備える、電源装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、一次電流が変動しても、負荷に電力を安定的に供給可能な電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における電源装置の構成例を示す図である。
図2】電流の位相と電力の配分のイメージ図である。
図3】第1実施形態における電源装置の制御回路の機能ブロックを例示する図である。
図4】第1実施形態における電源装置の制御回路が実行する制御フローを例示する図である。
図5】第2実施形態における電源装置の構成例を示す図である。
図6】第2実施形態における電源装置の制御回路の制御ブロックを例示する図である。
図7】第2実施形態における電源装置の制御回路が実行する制御フローを例示する図である。
図8】磁気コアの磁気特性(BHカーブ)を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態を説明する。本開示に係る一実施形態における電源装置は、送配電線や接地線(グランドワイヤ)等の一次電線に流れる一次電流により誘起される誘導電流を利用して、負荷に電力を供給するものである。
【0010】
本開示に係る電源装置は、例えば、パンタグラフによって電車に集電される集電電流(一次電流の一例)により誘起される誘導電流(二次電流の一例)を利用して、電車に搭載される機器(負荷の一例)に電力を供給する。なお、電源装置の使用例は、これに限られない。
【0011】
図1は、第1実施形態における電源装置の構成例を示す図である。図1に示す電源装置101は、一次電線11に流れる一次電流ieにより誘起される二次電流iaを利用して、直流電圧Vcの直流電力Pcを負荷40に供給する。電源装置101は、カレントトランス14及び制御回路50を備える。
【0012】
カレントトランス14は、一次電線11に流れる一次電流ieにより発生する磁束φに応じて、二次電線12から負荷40の側に二次電流iaを出力する。カレントトランス14は、一次電線11に流れる一次電流ieを、電磁誘導により、二次電線12から負荷40の側へ流れる二次電流iaに変換する。カレントトランス14は、例えば、一次電線11を取り囲むように設置される。カレントトランス14には、二次電線12と三次電線13が設置されている。カレントトランス14は、二次電線12と三次電線13が巻かれる磁気コア10を有する。磁気コア10は、磁束φが通る磁路の一例である。なお、図面では簡略して示されているが、二次電線12と三次電線13は、それぞれ、磁気コア10に少なくとも一ターン以上巻き回されている。
【0013】
二次電線12は、例えば、磁気コア10にnターン巻き回された巻線である(nは、2以上の巻き数を表す)。三次電線13に後述の制御電流idが流れていない場合、交流の一次電流ieにより磁気コア10内に発生する磁束φの変化を妨げるように、1:nの電流比で、交流の二次電流iaが二次電線12に流れる。
【0014】
三次電線13は、二次電線12を貫く磁束φが流れる磁路(図1の例では、磁気コア10)に設けられている。この例では、三次電線13は、nよりも少ないターンで磁気コア10に巻き回された巻線である。
【0015】
制御回路50は、三次電線13に制御電流idを流して二次電流iaを制御する。制御電流idを三次電線13に流すことで、二次電線12を貫く磁束φの大きさが変化するので、カレントトランス14の1:nの電流比が変化する。よって、三次電線13に制御電流idを流すことで、一次電流ieの大きさによって二次電流iaの大きさが固定されない。したがって、一次電流ieが大きく変動しても、二次電線12から負荷40の側へ流れる二次電流iaを制御できるので、負荷40に直流電力Pcを安定的に供給できる。
【0016】
例えば、制御回路50は、二次電流iaの変動が抑制されるように、制御電流iaを三次電線13に流す。これにより、一次電線11に流れる一次電流ieの大きさや変動幅が比較的大きくなっても、二次電流iaの過度な変動を抑制できるので、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。
【0017】
例えば、制御回路50は、二次電流iaの検知結果に応じて、制御電流idを変化させる。これにより、二次電流iaの検知結果を制御電流idに反映するフィードバック制御によって生成される制御電流idを三次電線13に流すことができるので、二次電流iaを高精度に制御でき、ひいては、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。
【0018】
例えば、制御回路50は、二次電流iaの最大電流値が上限電流値(本例では、上限電流値Aと称する)を超えないように、制御電流idを三次電線13に流す。これにより、二次電流iaの最大電流値が上限電流値Aを超えないように制御電流idを三次電線13に流すフィードバック制御が可能となる。したがって、最大電流値が上限電流値Aを超えないように二次電流idを高精度に制御でき、ひいては、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。
【0019】
例えば、制御回路50は、二次電流iaの電流値が一定範囲(本例では、一定範囲Bと称する)内に収まるように、制御電流idを三次電線13に流す。これにより、二次電流iaの電流値が一定範囲B内に収まるように制御電流idを三次電線13に流すフィードバック制御が可能となる。したがって、電流値が一定範囲B内に収まるように二次電流idを高精度に制御でき、ひいては、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。なお、一定範囲Bの上限値は、上限電流値Aと同じ値に設定されてもよいし、上限電流値Aよりも低い値に設定されてもよい。後述の下限電流値Cが設定されている場合、一定範囲Bの下限値は、下限電流値Cよりも高い値に設定される。
【0020】
例えば、制御回路50は、二次電流iaの最大電流値が下限電流値(本例では、下限電流値C)よりも高いとき、制御電流idを三次電線13に流し、二次電流idの最大電流値が下限電流値Cよりも低いとき、制御電流idを三次電線13に流すことを停止する。これにより、二次電流idの最大電流値が下限電流値Cよりも低いとき、制御電流idが三次電線13に流れない(一次電流ieの流れにより誘起される誘導電流が三次電線13に流れることはある)。
【0021】
二次電流idの最大電流値が下限電流値Cよりも低いということは、一次電流ieの変動は、比較的小さいことになる。したがって、このようなときは、制御電流idによる二次電流iaの制御を行わなくても、二次電線12から供給される交流電力paに基づいて、負荷40に直流電力Pcを安定的に供給できる。また、制御電流idを三次電線13に流すことを停止するので、制御電流idを三次電線13に流すために要する電力を削減でき、ひいては、電源装置101の消費電力を低減できる。一次電線11から得られる電力が比較的低いときに、消費電力を低減できることは、特に有利な効果である。
【0022】
電源装置101は、例えば、整流器20を備える。整流器20は、二次電線12から供給される交流電力paを、直流電圧Vbの直流電力Pbに変換して負荷40側に出力するAC/DCコンバータである。整流器20を備えることによって、交流電力paを所望の直流電力Pbに変換できる。整流器20は、例えば、整流回路21と平滑回路22とを有する。整流回路21は、交流を直流に整流する回路であり、例えば、複数のダイオードにより形成された全波整流回路である。平滑回路22は、整流回路21から出力された直流電力Pbを平滑化して出力する回路であり、例えば、コンデンサCと抵抗RによるCR回路である。
【0023】
例えば、制御回路50は、整流器20の出力電圧Vbの上昇が抑制されるように、制御電流idを三次電線13に流す。これにより、一次電線11に流れる一次電流ieの大きさや変動幅が比較的大きくなっても、出力電圧Vbの過度な上昇を抑制できるので、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。
【0024】
例えば、制御回路50は、整流器20の出力電圧Vbの検知結果に応じて、制御電流idを変化させる。これにより、出力電圧Vbの検知結果を制御電流idに反映するフィードバック制御によって生成される制御電流idを三次電線13に流すことができるので、出力電圧Vbを高精度に制御でき、ひいては、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。
【0025】
例えば、制御回路50は、整流器20の出力電圧Vbの値(出力電圧値Vbb)が上限電圧値(本例では、上限電圧値Dと称する)を超えないように、制御電流idを三次電線13に流す。これにより、出力電圧値Vbbが上限電圧値Dを超えないように制御電流idを三次電線13に流すフィードバック制御が可能となる。したがって、出力電圧値Vbbが上限電圧値Dを超えないように出力電圧Vbを高精度に制御でき、ひいては、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。
【0026】
例えば、制御回路50は、整流器20の出力電圧値Vbbが一定電圧値(本例では、一定電圧値Eと称する)に収束するように、制御電流idを三次電線13に流す。これにより、出力電圧値Vbbが一定電圧値Eに収束するように制御電流idを三次電線13に流すフィードバック制御が可能となる。したがって、出力電圧値Vbbが一定電圧値Eに収束するように二次電圧Vbを高精度に制御でき、ひいては、負荷40に直流電力Pcをより安定的に供給できる。なお、一定電圧値Eは、上限電圧値Dと同じ値に設定されてもよいし、上限電圧値Dよりも低い値に設定されてもよい。後述の下限電圧値Fが設定されている場合、一定電圧値Eは、下限電圧値Fよりも高い値に設定される。
【0027】
例えば、制御回路50は、整流器20の出力電圧値Vbbが下限電圧値(本例では、下限電圧値D)よりも高いとき、制御電流idを三次電線13に流す。一方、制御回路50は、整流器20の出力電圧値Vbbが下限電圧値Fよりも低いとき、制御電流idを三次電線13に流すことを停止する。これにより、整流器20の出力電圧値Vbbが下限電圧値Fよりも低いとき、制御電流idが三次電線13に流れない(一次電流ieの流れにより誘起される誘導電流が三次電線13に流れることはある)。
【0028】
整流器20の出力電圧値Vbbが下限電圧値Fよりも低いということは、一次電流ieの変動は、比較的小さいことになる。したがって、このようなときは、制御電流idによる二次電流iaの制御を行わなくても、二次電線12から供給される交流電力paに基づいて、負荷40に直流電力Pcを安定的に供給できる。また、制御電流idを三次電線13に流すことを停止するので、制御電流idを三次電線13に流すために要する電力を削減でき、ひいては、電源装置101の消費電力を低減できる。一次電線11から得られる電力が比較的低いときに、消費電力を低減できることは、特に有利な効果である。
【0029】
例えば、制御回路50は、整流器20から出力される直流電力Pbのうち、負荷40の側に供給される直流電力Psを除く余剰電力Prを用いて、制御電流idを生成する。これにより、余剰電力Prを制御電流idの生成に要する電力に使うことができるので、直流電力Pbが過剰に生じても、直流電力Pbの無駄を抑え、直流電力Pbを効率的に利用できる。
【0030】
電源装置101は、例えば、DC/DCコンバータ31を備える。DC/DCコンバータ31は、直流電力Pb又は直流電力Psを、負荷40の側に供給する直流電力Pcに変換する第1DC/DCコンバータの一例である。DC/DCコンバータ31を備えることによって、直流電圧Vbを所望の直流電圧Vcに変換できる。DC/DCコンバータ31は、例えば、制御回路50の後述の演算装置53により制御される。演算装置53は、直流電圧Vcが所定の一定電圧になるようにDC/DCコンバータ31を制御する。
【0031】
電源装置101は、DC/DCコンバータ31の出力経路35に、負荷40に給電可能に接続される蓄電装置34を備えてもよい。蓄電装置34を備えることで、DC/DCコンバータ31から直流電力Pcが供給されない期間(例えば、一次電流ieの流れがない期間など)でも、蓄電装置34から負荷40に継続的に電力を供給できる。蓄電装置34への充電は、1次電流ieが流れている期間に、DC/DCコンバータ31から出力される直流電圧Vcで行うことができる。なお、出力経路35に直列に挿入されるダイオード33は、逆流防止用である。また、蓄電装置34と出力経路35との間に、制御回路50の演算装置53による制御によって双方向に電圧変換可能なDC/DCコンバータが挿入されてもよい。
【0032】
次に、制御回路50の構成例について、説明する。
【0033】
制御回路50は、DC/DCコンバータ32、電圧検知回路51、トランス62、電流検知回路52、演算装置53、DA54、LPF55及びドライバ61を有する。
【0034】
DC/DCコンバータ32は、制御回路50の内部制御用の電源電圧Vdを生成する第2DC/DCコンバータの一例であり、直流の出力電圧Vbを直流の電源電圧Vdに変換する。DC/DCコンバータ32により生成される電源電圧Vbは、DC/DCコンバータ31の出力電圧Vcよりも小さいことが望ましい。
【0035】
電圧検知回路51は、出力電圧Vb(具体的には、出力電圧値Vbb)を検知する。電圧検知回路51は、例えば、アナログの出力電圧値VbbをコンバータAD1によりデジタルの電圧検知値v1に変換する。つまり、電圧検知値v1は、出力電圧値Vbbの検出値を表す。
【0036】
電流検知回路52は、二次電流iaの値(二次電流値iaa)を検知する。電流検知回路52は、例えば、トランス62とコンバータAD2を用いて、二次電流値iaaを検知する。トランス62は、二次電流iaが流れる配線に取り付けられる一次側巻線と、コンバータAD2のアナログ入力側に接続される二次側巻線とを有する。二次電流値iaaに応じた二次電圧値veが、トランス62の二次側巻線に発生する。電流検知回路52は、アナログの二次電圧値veをコンバータAD2によりデジタルの電流検知値v2に変換する。つまり、電流検知値v2は、二次電流値iaaの検出値を表す。
【0037】
演算装置53は、制御回路50の各機能を実現するためのプロセッサであり、例えば、マイクロプロセッサユニットである。制御回路50の各機能は、メモリに記憶されたプログラムによって、演算装置53が動作することにより実現される。演算装置53は、電圧検知値v1と電流検知値v2とに応じて、三次電線13に流す制御電流idを生成するための指令正弦波Ssを出力する。演算装置53は、電源電圧Vdにより動作する。
【0038】
DA54は、デジタルの指令正弦波Ssをアナログの指令電圧に変換するDA(Digital to Analog)コンバータである。LPF55は、アナログの指令電圧を平滑化してドライバ61に出力する。
【0039】
ドライバ61は、指令正弦波Ssに対応するアナログの指令電圧に応じて、制御電流idを出力する電流ドライバ回路である。ドライバ61は、例えば、三次電線13の両端が電流出力部に接続されるフルブリッジ回路である。ドライバ61は、余剰電力Prを用いて、制御電流idを生成する。
【0040】
図2は、電流の位相と電力の配分のイメージ図である。波形ia0は、制御電流idを三次電線13に流していないときに、一次電線11に流れる交流の一次電流ieによって二次電線12に発生する二次電流iaを表す。波形ia1は、二次電流iaとは逆位相の制御電流idを三次電線13に流しているときに、一次電線11に流れる交流の一次電流ieによって二次電線12に発生する二次電流iaを表す。このように、制御回路50は、二次電流iaとは逆位相の制御電流idをドライバ61により三次電線13に流すことによって、二次電線12に流れる二次電流iaの変動を抑制できる。
【0041】
したがって、過大な一次電流ieによって二次電線12に発生する交流電力paが過大になっても、二次電流iaとは逆位相の制御電流idを三次電線13に流すことによって、過大な交流電力paを抑制できる。つまり、一次電流ieの変動が大きくなっても、交流電力paに基づき生成される直流電力Pcを負荷40に安定的に供給できる。また、このように制御電流idを流すことで、一次電流ieによって二次電線12に発生する交流電力paは、負荷40側に供給される電力と制御回路50側に供給される電力とにバランスして分配されるので、無駄な電力による発熱を抑制できる。例えば、制御電流idを流していないときに発生する交流電力paが10W、ドライバ61を除く制御回路50の消費電力が5W、ドライバ61の消費電力が4Wとすると、負荷40の側に供給される直流電力Ps又は直流電力Pcは、1Wとなる。
【0042】
演算装置53は、例えば、一次電流ieの一周期あたりに16点以上の電流検知値v2を電流検知回路52から取得する。商用周波数60Hzの場合、演算装置53は、960Hzのサンプリング周波数で二次電流値iaaを取得する。サンプリング周波数が高いほど、周波数の高い一次電流ieにまで対応できる点で有利である。サンプリング周波数の下限値は、例えば、ナイキスト周波数である120Hz以上である(2点以上のサンプル)。演算装置53は、このような所定のサンプリング周期で二次電流値iaaをサンプリングすることで、二次電流iaの位相情報を取得できる。演算装置53は、この位相情報を用いて、二次電流iaとは逆位相の制御電流idをドライバ61に出力させるための指令正弦波Ssを生成する。一方、演算装置53は、電圧検知値v1を電圧検知回路51から取得することによって、二次電流iaの振幅情報を取得できる。
【0043】
演算装置53は、例えば、これらの位相情報及び振幅情報を用いて、電圧検知値v1が一定の目標値REFとなるように、二次電流iaとは逆位相の制御電流idをドライバ61に出力させるための指令正弦波Ssを生成する。演算装置53は、指令正弦波SsをDA54に対して出力する。DA54の出力タイミング(周波数)は、高い方が望ましい。しかしながら、DA54の出力周波数をコンバータAD1,AD2のサンプリング周波数と同期させることは、簡便な制御を実現する点で、好ましい。目標値REFは、上述の一定電圧値Eに対応する。
【0044】
図3は、第1実施形態における電源装置の制御回路の機能ブロックを例示する図である。制御回路50の演算装置53は、図3に示すような古典制御に基づき、コンバータAD1から取得した振幅情報及びコンバータAD2から取得した位相情報を用いて、指令正弦波Ssを生成する。演算装置53は、目標値REFと電圧検知値v1との偏差ERRORを減算器71により算出する。演算装置53は、偏差ERRORが零になるようにPI制御(比例制御72及び積分制御73)を行い、比例制御72の制御データと積分制御73の制御データとを加算器74により加算することによって、指令正弦波Ssの振幅情報を生成する。演算装置53は、指令正弦波Ssの振幅情報を二次電流iaの位相情報と乗算器75により乗算することで、二次電流iaとは逆位相の制御電流idを生成するための指令正弦波Ssを生成する。指令正弦波Ssの振幅が大きくなると、制御電流idの振幅も大きくなる。
【0045】
この機能ブロックにより、演算装置53は、二次電流iaの位相情報及び振幅情報を用いて、電圧検知値v1が一定の目標値REFとなるように、二次電流iaとは逆位相の制御電流idをドライバ61に出力させるための指令正弦波Ssを生成できる。
【0046】
図4は、第1実施形態における電源装置の制御回路が実行する制御フローを例示する図である。制御回路50の演算装置53は、図3に示すような古典制御に基づいて指令正弦波Ssを生成してもよいが、図4に示すうようなシーケンス制御によって、指令正弦波Ssを生成してもよい。
【0047】
ステップS110にて、演算装置53は、コンバータAD1から電圧検知値v1を読み込む。ステップS120にて、演算装置53は、目標値REFを読み込んで、電圧検知値v1と目標値REFとを比較する。演算装置53は、電圧検知値v1が目標値REFよりも高いと判定したとき、指令正弦波Ssの振幅を増加させ(ステップS130)、電圧検知値v1が目標値REFよりも低いと判定したとき、指令正弦波Ssの振幅を減少させる(ステップS150)。演算装置53は、電圧検知値v1が目標値REFと同じと判定したとき、指令正弦波Ssの振幅をそのまま変えずに維持する(ステップS140)。指令正弦波Ssの振幅が大きくなると、制御電流idの振幅も大きくなる。
【0048】
このシーケンス制御により、演算装置53は、二次電流iaの位相情報及び振幅情報を用いて、電圧検知値v1が一定の目標値REFとなるように、二次電流iaとは逆位相の制御電流idをドライバ61に出力させるための指令正弦波Ssを生成できる。
【0049】
図5は、第2実施形態における電源装置の構成例を示す図である。上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。第2実施形態における電源装置102は、制御回路50が直流の制御電流idを三次電線13に流す点で、第1実施形態における電源装置101と異なる。制御回路50は、直流の制御電流idを三次電線13に流すことで、磁気コア10のBHカーブ(磁気ヒステリシス曲線)がオフセットするので、二次電線12から出力される二次電流iaを制御できる。
【0050】
三次電線13に制御電流idを流さない場合(図8の無制御時)、BHカーブの中央を使うため、二次電流iaは大きくなり、二次電線12に発生する交流電力paも大きくなる。一方、三次電線13に流す制御電流idを大きくすると(図8のDC制御時)、BHカーブの飽和している領域を使うため、二次電流iaは小さくなり、二次電線12に発生する交流電力paも小さくなる。Bは磁束密度、Hは磁界、Brは残留磁束密度、Hcは保磁力を表す。
【0051】
図6は、第2実施形態における電源装置の制御回路の制御ブロックを例示する図である制御回路50の演算装置56は、図6に示すような古典制御に基づき、コンバータAD1から取得した振幅情報を用いて、指令直流電圧Sbを生成する。演算装置56は、目標値REFと電圧検知値v1との偏差ERRORを減算器71により算出する。演算装置56は、偏差ERRORが零になるようにPI制御(比例制御72及び積分制御73)を行い、比例制御72の制御データと積分制御73の制御データとを加算器74により加算することによって、指令直流電圧Sbを生成する。指令直流電圧Sbが大きくなると、制御電流idの振幅は大きくなる。
【0052】
図6の場合、コンバータAD1から取得した振幅情報は、二次電流iaの振幅を平滑化した情報であるので、演算装置56は、一次電流ieの交流周波数よりも低い周波数で、電圧検知値v1を取得する。DA54の出力周波数も、同様に、一次電流ieの交流周波数よりも低い周波数となる。
【0053】
この機能ブロックにより、演算装置56は、二次電流iaの振幅情報を用いて、電圧検知値v1が一定の目標値REFとなるように、直流の制御電流idをドライバ61に出力させるための指令直流電圧Sbを生成できる。
【0054】
図7は、第2実施形態における電源装置の制御回路が実行する制御フローを例示する図である。制御回路50の演算装置53は、図6に示すような古典制御に基づいて指令直流電圧Sbを生成してもよいが、図7に示すうようなシーケンス制御によって、指令直流電圧Sbを生成してもよい。
【0055】
ステップS210にて、演算装置56は、コンバータAD1から電圧検知値v1を読み込む。ステップS220にて、演算装置56は、目標値REFを読み込んで、電圧検知値v1と目標値REFとを比較する。演算装置56は、電圧検知値v1が目標値REFよりも高いと判定したとき、指令直流電圧Sbを増加させ(ステップS230)、電圧検知値v1が目標値REFよりも低いと判定したとき、指令直流電圧Sbを減少させる(ステップS250)。演算装置56は、電圧検知値v1が目標値REFと同じと判定したとき、指令直流電圧Sbをそのまま変えずに維持する(ステップS240)。指令直流電圧Sbが大きくなると、制御電流idの振幅は大きくなる。
【0056】
このシーケンス制御により、演算装置56は、二次電流iaの振幅情報を用いて、電圧検知値v1が一定の目標値REFとなるように、直流の制御電流idをドライバ61に出力させるための指令直流電圧Sbを生成できる。
【0057】
以上、電源装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 磁気コア
11 一次電線
12 二次電線
13 三次電線
14 カレントトランス
20 整流器
21 整流回路
22 平滑回路
31,32 DC/DCコンバータ
33 ダイオード
34 蓄電装置
35 出力経路
40 負荷
50 制御回路
51 電圧検知回路
52 電流検知回路
53 演算装置
54 DA
55 LPF
61 ドライバ
62 トランス
101,102 電源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8