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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240116BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G03G15/08 322B
G03G21/00 370
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020042325
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021144125
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 尭洋
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-202138(JP,A)
【文献】特開2008-046203(JP,A)
【文献】特開2000-105498(JP,A)
【文献】特開2006-220988(JP,A)
【文献】特開2018-081206(JP,A)
【文献】米国特許第10866553(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に感光層が形成された像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体を露光することにより静電潜像を形成する露光装置と、
前記像担持体に対向配置され、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、前記像担持体に形成された前記静電潜像に前記トナーを付着させてトナー像を形成する現像装置と、
を含む画像形成部と、
前記現像装置内の前記トナーを検知するトナー検知センサーと、
を備えた画像形成装置において、
前記現像装置におけるトナー消費量および前記現像装置の累積駆動時間を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記トナー消費量および前記累積駆動時間と、予め定められたトナー劣化モデルとを用いて前記現像装置内のトナー劣化度の推移を予測する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記トナー検知センサーの出力値の振幅に基づいて前記トナー劣化度を測定可能であり、
前記トナー劣化度の測定値が前記トナー劣化度の予測値から所定以上乖離している場合に前記トナー劣化モデルの補正を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像装置は、前記現像剤として磁性を有する前記トナーのみからなる磁性一成分現像剤を用い、前記トナー検知センサーは、前記現像装置内の前記トナーの嵩を検知するトナーレベルセンサーであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、以下の前記トナー劣化モデルの予測式(1)を用いて前記トナー劣化度の推移を予測し、前記トナー劣化度の測定値が前記トナー劣化度の予測値から所定以上乖離している場合に前記予測式(1)中の劣化係数Aを補正することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
C=A×V/Q{1-exp(-(Q/V)×T)} ・・・(1)
ただし、
A;劣化係数
V;現像装置内のトナー量
Q;トナー消費量
T;現像装置の累積駆動時間
である。
【請求項4】
前記現像装置は、
前記現像剤担持体に担持される前記現像剤を収容する現像容器と、
前記現像容器内の前記現像剤を攪拌、搬送する攪拌搬送部材と、
を有し、
前記制御部は、前記攪拌搬送部材の線速を複数段階に変化させたときの前記トナー検知センサーの出力値の振幅から測定された複数の前記トナー劣化度を平均した値を前記測定値とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記トナー劣化モデルから予測される前記トナー劣化度の推移に基づいて前記トナー劣化度の測定タイミングを決定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記トナー劣化度の予測値が所定値以上であるとき前記トナー劣化度を回復するトナー回復動作を実行することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記トナー回復動作として前記現像剤担持体に担持された前記トナーを前記像担持体上に強制吐出する強制吐出動作を実行することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧を前記現像剤担持体に印加する現像電圧電源を備え、
前記制御部は、前記トナー回復動作として前記現像電圧の直流成分の変更、若しくは前記現像電圧の交流成分のピークツーピーク値、Duty比、周波数の少なくとも一つを変更することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記トナー劣化度に基づいて予測される前記現像装置の寿命の表示、または前記現像装置の交換を促す表示を表示可能である表示装置を備え、
前記制御部は、前記トナー劣化度の予測値が所定値以上であるとき前記表示装置を用いて前記現像装置の寿命を示す表示、前記現像装置の交換を促す表示の少なくとも一方を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置を備えた複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、特に、現像装置内のトナーの劣化を予測する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを用いた画像形成装置における現像方式としては、主として粉末の現像剤が使用され、感光体ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を現像剤によって可視化し、その可視像(トナー像)を記録媒体上に転写した後、定着処理を行うプロセスが一般的である。
【0003】
現像装置は、トナーおよび磁性キャリアから成る二成分現像剤を用いる二成分現像方式と、非磁性或いは磁性を帯びたトナーのみから成る一成分現像剤を用いる一成分現像方式とに大別される。このような現像装置では、印字枚数、環境変動、印字条件や印字率等の影響を受けて現像剤が劣化する。その結果、画像濃度の低下や上昇、画像かぶりやトナー飛散等の不具合が発生するという問題点があった。
【0004】
現像剤のロット差(製造時期の差)、保存期間、保存状態等、現像剤の状態が異なると、現像装置におけるトナー消費量も変化することが知られている。しかし、トナーの劣化状態を判別し、劣化状態に応じた制御を行う機能を持たない画像形成装置では、トナー消費量が大きくばらついてしまう。トナー消費量のばらつきに係わらず補給トナーを収容するトナーコンテナの印字保証枚数を達成するためには、トナーコンテナへのトナー充填量を過剰にしておく必要がある。その結果、トナーコンテナの大型化やランニングコストの増加に繋がるという問題点があった。
【0005】
特許文献1には、静電潜像を担持する感光体ドラムと、トナーとキャリアを混合してなる現像剤を収容し、現像剤のトナーを感光体ドラムの静電潜像に付与して、静電潜像を現像する現像装置と、現像装置にトナーを補給するトナー補給部と、現像装置内の現像剤のトナー濃度を検出するトナー濃度センサーと、を備え、トナー補給部の出力がリップルを示した後、トナー濃度センサーの出力が予め定められた一定範囲内の値に収束するまでに要した時間である緩和時間に基づいて、キャリアの劣化度を判定する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-223483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法は、トナー濃度センサーの振幅から現在の現像剤の劣化度を推定するものであるが、将来的な現像剤の劣化の推移を予測して現在の制御にフィードバックすることはできなかった。そのため、現像装置におけるトナー消費量のばらつきを抑制することはできず、トナーコンテナへのトナー充填量の適正化も困難であった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、将来的な現像剤の劣化の推移を精度よく予測可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、画像形成部と、トナー検知センサーと、記憶部と、制御部と、を備えた画像形成装置である。画像形成部は、表面に感光層が形成された像担持体と、像担持体を帯電させる帯電装置と、帯電装置により帯電された像担持体を露光することにより静電潜像を形成する露光装置と、像担持体に対向配置され、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、像担持体に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置と、を含む。トナー検知センサーは、現像装置内のトナーを検知する。記憶部は、現像装置におけるトナー消費量および現像装置の累積駆動時間を記憶する。制御部は、記憶部に記憶されたトナー消費量および累積駆動時間と、予め定められたトナー劣化モデルと、を用いて現像装置内のトナー劣化度の推移を予測する。制御部は、トナー検知センサーの出力値の振幅に基づいてトナー劣化度を測定可能であり、トナー劣化度の測定値がトナー劣化度の予測値から所定以上乖離している場合にトナー劣化モデルの補正を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の構成によれば、トナー検知センサーの出力値の振幅に基づいて測定されるトナー劣化度と、トナー劣化モデルに基づいて推定されるトナー劣化度の予測値とを比較して、所定以上の乖離がある場合はトナー劣化モデルを補正することにより、トナーの劣化度の実測値に応じた適切なトナー劣化モデルに補正される。その結果、トナー劣化度の推移の予測精度が高くなり、現像装置におけるトナー消費量、および現像装置にトナーを補給するトナーコンテナへのトナー充填量を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の概略断面図
図2】本実施形態の画像形成装置100に搭載される現像装置4の平面図および正面図
図3】本実施形態の画像形成装置100に搭載される現像装置4の側面断面図
図4】画像形成装置100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図
図5】現像装置4の累積駆動時間とトナー劣化度との関係を示すグラフ
図6】トナーレベルセンサー35による検出時間とセンサー出力値との関係を示すグラフ
図7】第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24の回転速度(線速)を変化させたときのセンサー出力値の振幅Vとトナー劣化度との関係を示すグラフ
図8】本実施形態の画像形成装置100におけるトナー劣化度の予測制御例を示すフローチャート
図9】実施例において、トナー劣化度の測定結果に基づいてトナー劣化モデルの補正を行った場合(本発明)と、トナー劣化モデルの補正を行わなかった場合(比較例)とで耐久印字を行ったときのトナー消費量の推移を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る現像装置4を備えた画像形成装置100の概略断面図である。画像形成装置(例えばモノクロプリンター)100では、印字動作を行う場合、画像形成装置100内の画像形成部9において、パーソナルコンピューター(以下、パソコンという)等の上位機器(図示せず)から送信された原稿画像データに基づく静電潜像が形成され、現像装置4により静電潜像にトナーが付着されてトナー像が形成される。現像装置4へのトナーの供給はトナーコンテナ5から行われる。画像形成装置100では、感光体ドラム1を図1において時計回り方向に回転させながら、感光体ドラム1に対する画像形成プロセスが実行される。
【0013】
画像形成部9には、感光体ドラム1の回転方向(時計回り方向)に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写ローラー6、クリーニング装置7、および除電装置(図示せず)が配設されている。感光体ドラム1は、例えばアルミドラムに感光層が積層されたものであり、帯電装置2により表面を均一に帯電させる。そして、後述する露光装置3からの光ビームを受けた表面に、帯電を減衰させた静電潜像を形成する。なお、上記の感光層は、特に限定するものではないが、例えば耐久性に優れるアモルファスシリコン(a-Si)等が好ましい。
【0014】
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電させる。帯電装置2は、例えば細いワイヤー等を電極として高電圧を印加することにより放電するコロナ放電装置が用いられる。なお、コロナ放電装置に代えて、帯電ローラーに代表される帯電部材を感光体ドラム1の表面に接触させた状態で電圧を印加する接触式の帯電装置を用いても良い。露光装置3は、画像データに基づいて光ビーム(例えばレーザービーム)を感光体ドラム1に照射し、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成する。
【0015】
現像装置4は、感光体ドラム1の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。なお、本実施形態では磁性トナーから成る磁性一成分現像剤(以下、トナーという)が現像装置4に収容されている。また、現像装置4の詳細については後述する。クリーニング装置7は、感光体ドラム1の長手方向(図1の紙面と垂直な方向)に線接触するクリーニングローラーやクリーニングブレード等を備えており、トナー像が用紙に移行(転写)された後に、感光体ドラム1の表面に残留したトナーを除去する。
【0016】
上記のようにトナー像が形成された感光体ドラム1に向けて、用紙収容部10から用紙が用紙搬送路11およびレジストローラー対13を経由して所定のタイミングで画像形成部9に搬送される。転写ローラー6は、感光体ドラム1表面に形成されたトナー像を乱さずに、用紙搬送路11を搬送されてくる用紙に移行(転写)させる。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、クリーニング装置7により感光体ドラム1表面の残留トナーが除去され、除電装置により残留電荷が除去される。
【0017】
トナー像が転写された用紙は感光体ドラム1から分離され、定着装置8に搬送されて加熱および加圧されることで用紙にトナー像が定着される。定着装置8を通過した用紙は、排出ローラー対14を通過して用紙排出部15に排出される。
【0018】
図2(a)、(b)は、本実施形態の画像形成装置100に搭載される現像装置4の平面図および正面図であり、図3は、現像装置4の側面断面図である。なお、図2(a)では便宜上、上面カバーを取り外して内部が見える状態を表現している。図2および図3に示すように、現像容器20内は現像容器20と一体形成された仕切壁20aによって、第1貯留室21と第2貯留室22とに区画されている。第1貯留室21には第1攪拌スクリュー23が、第2貯留室22には第2攪拌スクリュー24が配設されている。
【0019】
第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24は、それぞれ支軸(回転軸)の周囲に螺旋羽根を設けた構成になっており、互いに平行な状態で現像容器20に回転可能に軸支されている。なお、図2(a)に示すように、第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24の軸方向である現像容器20の長手方向の両端部においては仕切壁20aが存在せず、第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24間でのトナーの受け渡しが可能となっている。これにより、第1攪拌スクリュー23は、第1貯留室21内のトナーを攪拌しながら矢印P方向へと搬送して第2貯留室22に搬送し、第2攪拌スクリュー24は、第2貯留室22に搬送されてきたトナーを攪拌しながら矢印Q方向へと搬送して現像ローラー25に供給する。
【0020】
現像ローラー25は、感光体ドラム1(図1参照)の回転に応じて回転することで、感光体ドラム1の感光層にトナーを供給する。現像ローラー25の内部には複数の磁極を有する永久磁石から成る固定マグネット体27が固定されている。固定マグネット体27の磁力により現像ローラー25の表面にトナーを付着(担持)させて磁気ブラシを形成する。現像ローラー25は、第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24と平行な状態で、現像容器20に回転可能に軸支されている。現像ローラー25には現像電圧電源53(図4参照)により直流電圧Vdcに交流電圧Vacを重畳した現像電圧が印加される。
【0021】
規制ブレード29は、その長手方向(図2の左右方向)が最大現像幅よりも大きく形成されており、現像ローラー25と所定の間隔を隔てて配置されることにより、感光体ドラム1に供給するトナー量(トナー層厚)を規制する規制部30を形成する。規制ブレード29の材質としては、磁性体のSUS(ステンレス)等が用いられる。
【0022】
現像ローラー25の回転軸にはDSコロ31a、31bが回転可能に外挿されている。DSコロ31a、31bは、感光体ドラム1の外周面の軸方向両端部に当接することにより現像ローラー25と感光体ドラム1との距離を厳密に規制している。DSコロ31a、31bにはベアリングが内蔵されており、感光体ドラム1に従動して回転することでドラム表面の摩耗を防止できる。また、現像ローラー25の軸方向両端部には現像容器20と現像ローラー25との隙間からのトナーの漏出を防止するための磁気シール部材33a、33bが配設されている。
【0023】
第1貯留室21の内壁面には、攪拌搬送スクリュー23と対面してトナーレベルセンサー35が配置されている。トナーレベルセンサー35は、現像容器20内のトナーレベル(トナーの嵩)を検知するものであり、例えば、現像容器20内における現像剤の透磁率を検出する透磁率センサーが用いられる。トナーレベルセンサー35により現像剤の透磁率を検出すると、その検出結果に相当する電圧値を後述する制御部90(図4参照)に出力し、制御部90によってトナーレベルセンサー35の出力値からトナーレベルが決定される。制御部90は、決定されたトナーレベルに応じてトナー補給モーター37(図4参照)に制御信号を送信し、トナーコンテナ5(図1参照)から現像剤補給口20bを介して攪拌搬送室21に所定量のトナーが補給される。なお、トナーレベルセンサー35として、透磁率センサーに代えて圧電センサーを用いることもできる。
【0024】
図4は、本実施形態の画像形成装置100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0025】
電圧制御回路51は、帯電電圧電源52、現像電圧電源53、転写電圧電源54と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させる。これらの各電源は電圧制御回路51からの制御信号によって、帯電電圧電源52は帯電装置2内のワイヤーに、現像電圧電源53は現像装置4内の現像ローラー25に、転写電圧電源54は転写ローラー6に、それぞれ所定の電圧を印加する。
【0026】
画像入力部60は、画像形成装置100にパソコン等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部60より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0027】
操作部70には、液晶表示部71、各種の状態を示すLED72が設けられており、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0028】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、タイマー97、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部70からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。
【0029】
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。また、RAM93(或いはROM92)には、タイマー97により計測された現像装置4の累積駆動時間とトナー劣化度との関係(図5参照)や、トナーレベルセンサー35のセンサー出力値の振幅とトナー劣化度との関係(図7参照)が規定されたテーブルも記憶される。
【0030】
一時記憶部94は、パソコン等から送信される画像データを受信する画像入力部60より入力され、デジタル信号に変換された画像信号を一時的に記憶する。カウンター95は、印字枚数を累積してカウントする。タイマー97は、現像装置4の使用開始からの累積駆動時間を計測する。
【0031】
また、制御部90は、画像形成装置100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、定着装置8、画像形成部9、電圧制御回路51、画像入力部60、操作部70等が挙げられる。
【0032】
以下、本発明の特徴部分であるトナー劣化度の推定方法について詳細に説明する。本発明の画像形成装置100は、トナーレベルセンサー35のセンサー出力値の振幅に基づいて現像装置4内のトナー劣化度を測定するとともに、予めRAM93(またはROM92)に記憶されたトナー劣化モデルに基づいて今後のトナー劣化度の推移を予測する。制御部90は、トナーレベルセンサー35の出力値の振幅に基づくトナー劣化度の推定結果を用いてトナー劣化モデルを修正する。
【0033】
(トナー劣化モデルによるトナー劣化度の推定)
図5は、現像装置4の累積駆動時間[min]とトナー劣化度[%]との関係を示すグラフである。図5に示すように、トナーの劣化は現像装置4の駆動開始初期(0~1000min)において急激に進行し、以降は緩やかに進行する。図5のトナー劣化度Cは、以下の予測式(1)により示される。
C=A×V/Q{1-exp(-(Q/V)×T)} ・・・(1)
ただし、
A;劣化係数
V;現像装置内のトナー量
Q;トナー消費量
T;現像装置の累積駆動時間
である。
【0034】
図5および予測式(1)より、現像装置4のトナー消費量Qと累積駆動時間Tを追跡することで、トナー劣化度の推移を予測することができる。なお、本明細書におけるトナー劣化度は、トナー粒子からのトナー外添剤の遊離度(%)で示しており、トナー外添剤が全く遊離していない状態を0%、トナー外添剤が完全に遊離した状態を100%とする。
【0035】
(トナーレベルセンサーによるトナー劣化度の測定)
図6は、トナーレベルセンサー35による検出時間[min]とセンサー出力値[V]との関係を示すグラフである。現像装置4に充填された直後のトナー(初期トナー)は流動性が良く、トナーレベルセンサー35の上流側にトナーの滞留が発生しないため、センサー出力値は安定している。しかし、現像装置4が長時間駆動してトナーが劣化してくると、トナーの流動性が悪くなり、トナーレベルセンサー35の上流側にトナーの滞留が発生しやすくなり、センサー出力値の振幅W[V]が大きくなっていく。この現象を利用し、センサー出力値の振幅からトナー劣化度を測定することができる。
【0036】
図7は、第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24の回転速度(線速)を変化させたときのセンサー出力値の振幅[V]とトナー劣化度[%]との関係を示すグラフである。図7に示すように、センサー出力値の振幅とトナー劣化度は一定の相関関係があり、センサー出力値の振幅からトナー劣化度を測定できることがわかる。また、図7のように第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24の線速を192rpm(図7の▲のデータ系列)と384rpm(図7の●のデータ系列)の2段階に変化させたときのセンサー出力値の振幅からトナー劣化度を求め、求めたトナー劣化度の平均値を用いることで、トナー劣化度をより高精度に測定可能となる。
【0037】
(トナー劣化モデルの修正)
図6および図7に基づいて測定されたトナー劣化度の測定値と、図5および予測式(1)に基づいて推定されたトナー劣化度の予測値とが大きく乖離している場合に、トナー劣化モデルを修正する。具体的には、予測式(1)の劣化係数Aを修正する。これにより、画像形成装置100の使用環境やトナーの状態に合わせたトナー劣化モデルに補正することができ、トナー劣化度の推移のより高精度な予測が可能になる。
【0038】
また、図5および予測式(1)に基づいて予測されるトナー劣化度の今後の推移から、次回以降どのタイミングでトナー劣化度の測定を行えばよいかを判定することができる。例えば、現像装置4の使用初期はトナー劣化度の測定データが蓄積されていないため、或る一定の駆動時間に到達する毎にトナーレベルセンサー35によるトナー劣化度の測定を行う。また、トナー劣化度の測定データを複数回取得した後は、トナー劣化度をある程度の精度で推定できるようになるため、トナー劣化度の測定間隔を広くすることができる。
【0039】
さらに、予めトナー劣化度に閾値を設けておき、トナー劣化度が閾値を超えたときトナー劣化度の回復動作を行うようにしてもよい。回復動作としては、トナーの強制吐出制御、現像装置4内のトナー量の目標値の変更、現像装置4の現像条件の変更等が挙げられる。現像条件の変更は基本的には現像電圧の直流成分Vcdの変更により行うが、現像電圧の交流成分Vacのピークツーピーク値やDuty比、周波数を変更してもよい。
【0040】
図8は、本実施形態の画像形成装置100におけるトナー劣化度の予測制御例を示すフローチャートである。必要に応じて図1図7を参照しながら、図8のステップに沿ってトナー劣化度の予測手順について説明する。
【0041】
先ず、制御部90は印字命令を受信したか否かを判定する(ステップS1)。印字命令を受信した場合は(ステップS1でYes)通常の画像形成動作によって印字を実行する(ステップS2)。そして、画像形成動作と並行して画像入力部60に入力された画像データに基づいてトナー消費量を算出し、タイマー97により現像装置4の駆動時間(現像駆動時間T)を測定する(ステップS3)。測定されたトナー消費量および現像駆動時間
TはRAM93に記憶される。
【0042】
次に、制御部90は印字が終了したか否かを判定する(ステップS4)。印字が終了していない場合は(ステップS4でNo)、ステップS2に戻り印字の実行およびトナー消費量の算出、現像駆動時間Tの計測を継続する。印字が終了している場合は(ステップS4でYes)、制御部90は現像駆動時間Tの累積駆動時間ΣTが所定時間に到達しているか否かを判定する(ステップS5)。
【0043】
累積駆動時間ΣTが所定時間に到達している場合は(ステップS5でYes)、トナー劣化度を測定する(ステップS6)。具体的には、トナーレベルセンサー35の出力値の振幅Wに基づいて、図7の関係を用いてトナー劣化度を測定する。
【0044】
次に、制御部90はステップS6で測定されたトナー劣化度を、トナー劣化モデルに基づいて推定された予測値と比較する(ステップS7)。トナー劣化度の予測値は、過去のトナー劣化度の測定により取得されたトナー劣化度の時間推移データ(図5参照)を用いて決定される。また、トナー劣化度の測定値が複数回取得される前は、予めROM92(またはRAM93)に記憶されたトナー劣化度の予測式(1)を用いてトナー劣化度の予測値を算出する。
【0045】
制御部90は、トナー劣化度と予測値との乖離が所定以上であるか否かを判定する(ステップS8)。トナー劣化度と予測値との乖離が所定以上である場合は(ステップS8でYes)、トナー劣化度の予測式(1)の劣化係数Aを補正する(ステップS9)。トナー劣化度と予測値との乖離が所定未満である場合は(ステップS8でNo)、劣化係数Aを補正せずに次のステップに進む。また、ステップS5において現像装置4の累積駆動時間ΣTが所定時間に到達していない場合は(ステップS5でNo)トナー劣化度の測定および予測値との比較を行わずに次のステップへ進む。
【0046】
次に、制御部90はトナー劣化度の予測値が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS10)。閾値以上である場合は(ステップS10でYes)、トナーの劣化が進行していると判定し、トナー回復動作を実行する(ステップS11)。例えば、感光体ドラム1上に静電潜像パターン(ベタパターン)を形成し、現像ローラー25に現像電圧を印加して現像ローラー25上の劣化トナーを感光体ドラム1a~1d上に移動(強制吐出)させる強制吐出動作を行う。また、予測式(1)から、現像装置4内のトナー量Vが少なくなるほどトナー劣化度Cも低下するため、現像容器20内のトナー量の目標値を減少させてトナー劣化度を低下させる。
【0047】
また、強制吐出動作やトナー量の目標値の減少に代えて、或いは強制吐出動作やトナー量の目標値の減少と併せて、現像電圧の変更を行う。例えば、現像電圧の直流成分Vdcを大きくして感光体ドラムの表面電位V0との現像電位差V0-Vdcを小さくすることにより現像性を高め、画像濃度の低下を抑制する。或いは、現像電圧の交流成分Vacのピークツーピーク値を大きくしたり、Duty比を高くしたり、周波数を増加または減少させたりすることで現像性を高めることもできる。その後、ステップS1に戻り、印字命令の待機状態を継続する。
【0048】
トナー劣化度の予測値が閾値未満である場合は(ステップS10でNo)、トナー回復動作を実行せずにステップS1に戻り、印字命令の待機状態を継続する。
【0049】
図8の制御例によれば、トナーレベルセンサー35の出力値の振幅に基づいて測定されるトナー劣化度と、トナー劣化モデルに基づいて推定されるトナー劣化度の予測値とを比較して、所定以上の乖離がある場合は予測式(1)の劣化係数Aを補正する。即ち、トナーの劣化度の実測値に応じた適切な予測式に補正される。その結果、トナー劣化度の推移の予測精度が高くなり、トナー消費量を適正化することができるため、トナーコンテナ8へのトナー充填量も適正化することができる。
【0050】
また、トナー劣化度が閾値以上であるときにトナー回復動作を実行することにより、トナー回復動作を適切なタイミングで実行することができる。従って、不必要なトナー回復動作の実行による印字以外のトナー消費量の増加を抑えつつ、トナーの劣化に起因する画像不具合を抑制することができる。
【0051】
なお、図8の制御例では、トナー劣化度の予測値が閾値以上であるときはトナー回復動作を行うこととしたが、トナー劣化度の予測値に基づいて液晶表示部71に現像装置4の寿命を表示してもよい。さらに、トナー回復動作を実行してもトナー劣化度が回復しない場合は、現像装置4の交換を促す表示(アラート)を行ってもよい。これにより、トナーが劣化した状態で現像装置4が長期間使用されることがなくなり、画像不具合や規制部30へのトナーの穂詰まりの発生を効果的に抑制することができる。
【0052】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、磁性一成分現像剤を用いる現像装置4を備えた画像形成装置100について説明したが、非磁性トナーのみを用いる非磁性一成分現像方式や、磁性キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を用いる二成分現像方式においても、トナーの劣化が進行するにつれて現像剤の流動性が低下し、トナー検知センサーの出力値の振幅が大きくなる。従って、非磁性一成分現像方式や二成分現像方式の現像装置を備えた画像形成装置にも全く同様に適用可能である。
【0053】
なお、非磁性一成分現像剤を用いる場合、トナーレベルセンサー35として透磁率センサーに代えて圧電センサーを用いる必要がある。また、二成分現像剤を用いる場合、二成分現像剤中のトナー濃度(キャリアに対するトナーの割合)を検知するトナー濃度検知センサーとして透磁率センサーを用いることができる。いずれの場合でも、センサー出力値の振幅に基づいてトナー劣化度を測定することができる。
【0054】
また、画像形成装置100として図1に示したようなモノクロプリンターを例に挙げて説明したが、モノクロプリンターに限らず、モノクロおよびカラー複写機、カラープリンター、デジタル複合機、ファクシミリ等の他の画像形成装置であってもよい。以下、実施例により本発明の効果について更に詳細に説明する。
【実施例
【0055】
図8に示したトナー劣化度の予測制御を実行し、トナー劣化度の予測結果に基づいて画像形成条件を変更した場合のトナー消費量の抑制効果についての検証試験を行った。試験機の条件としては、図1に示したような画像形成装置100において、アモルファスシリコン(a-Si)感光層を有する直径30mmの感光体ドラム1を用い、非露光部電位V0=220~255Vとした。また、感光体ドラム1の線速を240.28mm/sec(印字速度40枚/min)とした。
【0056】
現像装置4は、表面がブラスト加工された直径20mmの現像ローラー25を用い、現像ローラー25の線速を384mm/sec、現像ローラー25と感光体ドラム1との間の距離を0.30mmとした。現像ローラー25には、現像電圧として135~170Vの直流電圧Vdcに、ピークツーピーク値(Vpp)=1325V、Duty=64%、周波数3.1kHzの交流電圧Vacを重畳した電圧を印加した。
【0057】
また、平均粒子径6.8μmの正帯電性トナーからなる磁性一成分現像剤を用い、トナーレベルセンサー35として透磁率センサーを用いた。
【0058】
試験方法としては、図8に示したステップに沿ってトナー劣化度を測定し、測定結果に基づいてトナー劣化モデルの補正を行った場合(本発明)と、トナー劣化度を測定せず、トナー劣化モデルの補正を行わなかった場合(比較例)とで、500k枚の耐久印字を行ったときの印字1枚当たりのトナー消費量[g/page]の推移を比較した。結果を図9に示す。
【0059】
図9から明らかなように、トナー劣化度の測定結果に基づいてトナー劣化モデルの補正を行った本発明(図の△のデータ系列)では、トナー劣化度の推定精度が高くなるため、比較例(図の●のデータ系列)に比べてトナー消費量のばらつきが小さくなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、現像装置を備えた画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、将来的な現像剤の劣化の推移を精度よく予測可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 感光体ドラム(像担持体)
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
9 画像形成部
20 現像容器
23 第1攪拌スクリュー(攪拌搬送部材)
24 第2攪拌スクリュー(攪拌搬送部材)
25 現像ローラー(現像剤担持体)
35 トナーレベルセンサー(トナー検知センサー)
53 現像電圧電源
71 液晶表示部(表示装置)
90 制御部
92 ROM(記憶部)
93 RAM(記憶部)
97 タイマー
100 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9