(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】回路基板用樹脂膜剥離剤
(51)【国際特許分類】
C09D 9/00 20060101AFI20240116BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20240116BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240116BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C09D9/00 ZAB
G03F7/42
H01L21/30 572B
H01L21/304 647A
(21)【出願番号】P 2020048823
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】江塚 博紀
(72)【発明者】
【氏名】小宮 博之
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-018982(JP,A)
【文献】特開平11-174690(JP,A)
【文献】特表2006-505629(JP,A)
【文献】特開2014-157339(JP,A)
【文献】特表2008-528762(JP,A)
【文献】特開2014-084464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C09K 3/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラトルエンスルホン酸及びテレフタル酸よりなる群から選ばれる芳香族酸と、
アルカノールアミンとしてジエタノールアミンとの塩
、並びに水を含み、
前記アルカノールアミンであるジエタノールアミンとパラトルエンスルホン酸及びテレフタル酸よりなる群から選ばれる前記芳香族酸の含有比が、アルカノールアミン/芳香族酸で表されるmol比率で表したときに0.5~10.0であり、
水の含有量が60質量%以上である組成を有し、
スチレンと無水マレイン酸の共重合体を含む樹脂を用いて基板上に形成された樹脂膜を剥離するために用いる回路基板用樹脂膜剥離剤。
【請求項2】
アルカノールアミンと芳香族酸の含有比が、アルカノールアミン/芳香族酸で表されるmol比率で表したときに
1.5~5.0である、請求項
1に記載の回路基板用樹脂膜剥離剤。
【請求項3】
pH値が6以上11未満である、請求項1
又は2に記載の回路基板用樹脂膜剥離剤。
【請求項4】
回路形成基板の主面に
スチレンと無水マレイン酸の共重合体を含む樹脂を用いて樹脂膜を形成する工程、及び、前記請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の回路基板用樹脂膜剥離剤を前記樹脂膜に接触させることにより当該樹脂膜を除去する工程を含む、電子回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用樹脂膜剥離剤に関し、詳細には電子回路基板製造時に基板の主面に塗工使用される除去可能な樹脂材料に対して、温和な条件にて除去するために用いられる水系剥離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子情報機器の分野において、電子回路部材の高精度化が年々追及されている。これらの高精度な部材を製造する際には、熱や光等の外的刺激に反応しうる硬化性樹脂材料が不可欠となっている。
例えば、電子回路やカラーフィルターの3原色画素などの機能素子を形成する方法として、基板上に硬化性樹脂を塗布し、硬化させた樹脂膜による被覆の有無により機能素子の形成領域を区分し、機能素子を形成する。
また、電子デバイスの小型、軽量化の流れを受け、より清浄な環境で製造することが不可欠であるのみならず、微細な異物の存在や加工作業で生じる衝撃によっても基板の表面が破損してしまう可能性が高いことから、基板表面に硬化性樹脂を塗布し硬化させることにより、欠損率の低減を志向した一時的な樹脂膜を形成する場面が増えてきている。
これらの硬化性樹脂については使用後の除去工程が存在しており、その除去方法としてはアルカリ性薬液を用いた化学的除去が一般的である。
【0003】
特許文献1には、剥離剤として水酸化第四級アンモニウムを含有する強アルカリ水溶液を用いて除去することが可能なレジスト剥離剤が開示されている。
特許文献1の剥離剤は基板表面に対する影響を低減できる一方で、剥離工程の装置配管を耐溶剤・耐アルカリ性の材質とする必要があることや、水酸化第四級アンモニウムを含有することにより、環境負荷が高いことや廃液処理コストなどの問題が懸念される。
【0004】
また、特許文献2には、剥離剤としてアンモニア水溶液やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などのアミン系水溶液を用いて除去することが可能なダイシング用保護膜組成物が開示されている。
特許文献2の保護膜は、pHが11以上の領域においては剥離性能が良好な一方で、剥離剤による溶解性が不充分で剥離処理後の回路基板上に樹脂膜の残渣片が残存し、回路基板から剥離した樹脂膜も溶解しない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-118124号公報
【文献】特開2018-129365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況において現在では、使用者や使用環境への悪影響を避ける観点から制限を受けることがなく、かつ、電子回路基板の製造工程において硬化性樹脂を用いて形成された樹脂膜を基板表面からより簡便に除去できる、剥離剤が求められている。
本発明の目的は、電子回路基板の表面に硬化性樹脂を用いて形成された樹脂膜を除去するための剥離剤であって、加工対象物である電子回路基板から樹脂膜を短時間で簡便に除去することができ、回路基板上の樹脂膜の残渣片も少なく、さらに、使用者や使用環境への悪影響が少ない剥離剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討した結果、下記に示す特定の成分を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出した。
即ち本発明は、炭素数7~9の芳香族カルボン酸及び炭素数6~8の芳香族スルホン酸よりなる群から選ばれる芳香族酸と、炭素数が2~10のアルカノールアミンとの塩を含む回路基板用樹脂膜剥離剤である。
また本発明は、回路形成基板の主面に除去可能硬化性樹脂を用いて樹脂膜を形成する工程、及び、前記回路基板用樹脂膜剥離剤を前記樹脂膜に接触させることにより当該樹脂膜を除去する工程を含む、電子回路基板の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の剥離剤は剥離性能が高いので、加工対象物である電子回路基板上に形成された樹脂膜に、当該剥離剤を浸漬、噴霧などの方法で接触させることにより、樹脂膜を短時間で簡便に除去することができ、かつ、回路基板上の樹脂膜の残渣片も少ない。
また、本発明の剥離剤は、液性が中性から弱アルカリ性領域であることから、使用者および使用環境への影響が少ない。
また本発明の剥離剤を構成する各成分は、合成等の工業的方法により容易に製造することができるので、製造コストの面で有利である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の回路基板用樹脂膜剥離剤(以下「本発明の剥離剤」という場合がある。)は、有効成分として、下記芳香族酸と下記アルカノールアミンとの塩を含む。
【0010】
〔芳香族酸〕
本発明で用いられる芳香族酸は、分子構造中に芳香環を有しており、芳香環上に、溶媒系中にて酸基1つ当たり1つのプロトンを生ずるアレニウス酸、すなわち一塩基酸に属する酸基を有する化合物である。本発明においては、複数の芳香族酸のうち1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0011】
樹脂膜の剥離性及び水溶性の観点から、芳香族酸が有する芳香環の数は2個以下であることが好ましい。
酸基すなわち酸性を示す官能基としては、カルボン酸基もしくはスルホン酸基が好ましい。芳香族酸は官能基の数により多価の酸となりうるが、本発明においては1価もしくは2価の芳香族酸が好ましく、芳香族酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)は、剥離効果の観点から4.0以下のものが好ましい。
樹脂膜の剥離効果の観点から、芳香族カルボン酸の総炭素数は7~11であることが好ましく、芳香族スルホン酸の総炭素数は6~10であることが好ましい。該当する芳香族酸としては、例えば、サリチル酸(pKa:3.0)、フタル酸(pKa:2.9)、テレフタル酸(pKa:3.5)、ベンゼンスルホン酸(pKa:-2.0)、パラトルエンスルホン酸(pKa:-2.8)、1-ナフタレンスルホン酸(pKa:0.2)、2-ナフタレンスルホン酸(pKa:0.3)などが挙げられる。
芳香族カルボン酸及び芳香族スルホン酸のなかでは、剥離性能の観点から芳香族スルホン酸が好ましく、パラトルエンスルホン酸が特に好ましい。
【0012】
〔アルカノールアミン〕
本発明で用いられるアルカノールアミンとしては、第1級アルカノールアミン、第2級アルカノールアミン、及び第3級アルカノールアミンのいずれも使用することができる。
本発明においては、複数のアルカノールアミンのうち1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
アルカノールアミンの総炭素数は、樹脂膜の剥離性能を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
【0013】
第1級アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン等が挙げられる。
第2級アルカノールアミンとしては、例えばジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、N-エチルイソプロパノールアミン、N-プロピルイソプロパノールアミン等が挙げられる。
第3級アルカノールアミンとしては、例えばトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0014】
これらの中では、炭素数2以上6以下の水溶性アルカノールアミン等が好ましく、第1級アルカノールアミン及び第2級アルカノールアミンから選ばれる1種以上がより好ましく、特に好ましくは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンから選ばれる1種以上であり、剥離性能の観点からジエタノールアミンがさらに好ましい。
【0015】
上記の芳香族酸とアルカノールアミンを混合することにより、これら2成分の塩からなる本発明の剥離剤が製造される。
アルカノールアミンと芳香族酸を混合する際の、アルカノールアミン/芳香族酸で表されるmol比率は、好ましくは0.5~10.0であり、さらに好ましくは1.5~5.0である。mol比が0.5未満の場合、良好な樹脂膜除去性能が得られ難くなるおそれがある。またmol比が10.0より大きい場合、薬液のpHが強アルカリ性となり、使用環境に制限が生じる可能性がある。
【0016】
本発明の剥離剤は、液性が中性から弱アルカリ性領域であり、pHの範囲は6.0以上11.0未満であることが好ましく、pH=7.0以上11.0未満であることがさらに好ましく、pH=8.0以上10.0以下であることが特に好ましい。
本発明の剥離剤の液性を調整する方法としては、アルカノールアミンと芳香族酸の混合mol比率を上記範囲内にて調製することにより、液性を中性またはアルカリ性とすることができる。
【0017】
通常、本発明の剥離剤は、芳香族酸とアルカノールアミンとの塩を水で適切な濃度に希釈して水溶液とし、得られた水系剥離剤を樹脂膜の剥離工程に用いるのが一般的である。また、本発明の水系剥離剤は、アルカノールアミン、芳香族酸、及び、水を混合して調製してもよい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、RO水、水道水、工業用水などが挙げられる。
剥離剤中の炭素数が7~9の芳香族カルボン酸及び炭素数5~8の芳香族スルホン酸よりなる群から選ばれる芳香族酸と、炭素数2~10のアルカノールアミンとの塩の含有量は、50質量%未満としてもよい。
水系剥離剤中の水の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。
また、本発明の水系剥離剤には、従来の回路基板用樹脂膜剥離剤に一般的に配合される成分が配合されていてもよい。例えば、界面活性剤、pH調整剤、水溶性溶剤、防腐剤、防食材、増粘剤、着色剤などが配合されていてもよい。
【0018】
本発明の剥離剤は、電子回路基板製造時に、回路形成基板の表面に一時的に樹脂膜を形成し、必要な加工工程を行った後に、表面から樹脂膜を除去するために用いられる。回路形成基板の表面に除去可能樹脂膜材料を用いて樹脂膜を形成し、回路形成基板に加工を行った後、剥離剤を樹脂膜に接触させることにより当該樹脂膜を除去することができる。
電子回路基板製造時においては、回路形成基板の表面のうち、先に電子回路等の機能素子を形成した面、すなわち主面を下流工程での加工時の負荷から保護することが重要である。したがって本発明においても、回路形成基板の主面上に硬化性樹脂を用いて樹脂膜を形成し、必要な加工工程を行った後に、主面から樹脂膜を除去することにより、基板表面を効果的に保護することができる。
なお、本発明において「回路形成基板の主面」とは、電子回路基板の製造過程において先に電子回路を形成する側の面のことを意味する。また本発明において「回路形成基板の裏面」とは、主面と反対側の面のことを意味する。
【0019】
本発明の剥離剤は、アルカリ可溶性の水系樹脂膜を除去するのに好適に用いられる。樹脂膜材料としては、スチレンと無水マレイン酸の共重合体(分子量:9500、製品名:Poly(styrene/maleic anhydride)[共重合モル比=75:25]、富士フィルム和光純薬(株)製)の5質量部を、5質量%のアンモニア水溶液90質量部に溶解させ、孔径0.4μmのフィルターにより濾過することによって調製された組成物を例として挙げることができる。
また、他の樹脂膜材料としては、特開2019-131704号公報の段落0011から段落0044に記載されているポリイミド樹脂組成物を例として挙げることができる。
【0020】
上記のような樹脂膜材料を基板の主面に塗布し、硬化させることにより樹脂膜が形成されるので、基板の裏面を加工する工程や基板を搬送する工程において主面が保護される。そして、基板の主面を保護する必要がある工程が終了した後、剥離剤を樹脂膜に浸漬、噴霧などの方法により接触させることにより当該樹脂膜を除去することができる。
剥離剤は、基板と樹脂膜の界面において樹脂膜を溶解又は膨潤させて界面での密着性を低下させることにより樹脂膜を剥離させると考えられる。したがって、剥離剤が基板と樹脂膜の界面に到達するよう、剥離剤を保護層の内部に充分浸透させることが好ましい。
また、剥離剤を樹脂膜に接触させるときに、剥離剤の温度を20~60℃程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
1.剥離剤の調製
所定量のアルカノールアミン及び芳香族酸を水に溶解し、水を用いて全量を100質量%に調整することにより水系の回路基板用樹脂膜剥離剤を調製した。各実施例及び比較例で調製された剥離剤の組成を表1に示す。
【0022】
2.剥離剤の評価
実施例及び比較例の剥離剤を用いて下記のとおり評価を行った。
(1)樹脂膜剥離試験
a)塗工液の調製
スチレンと無水マレイン酸の共重合体(分子量:9500、製品名:Poly(styrene/maleic anhydride)[共重合モル比=75:25]、富士フィルム和光純薬(株)製)の5質量部を、5質量%のアンモニア水溶液90質量部に溶解させ、孔径0.4μmのフィルターにより濾過することにより、樹脂膜形成用塗工液を調製した。
【0023】
b)アルカリ可溶性樹脂膜の形成
電子回路基板として、円形シリコーンウエハー(「研究用高純度シリコーンウエハー」:アズワン(株)製、直径約20cm)及び、円形ガラス基板(「ダミーガラス基板」:アズワン(株)製、直径約20cm)を用い、それぞれの基板上に上記の樹脂膜形成用塗工液を塗工した。基板上に上記塗工液を約0.5g載せた後、スピンコーター(製品名「Opticoat MS-A150」:ミカサ(株)製)を用いて3000rpmにて80秒間回転させて均一塗布した後、100℃に加温したホットプレート上にて10分間熱硬化させて、厚さ10μmのアルカリ可溶性樹脂膜を形成した。なお、塗工前後の基板重量を秤量することにより、塗工された樹脂膜の重量を記録しておく。
【0024】
c)剥離試験
樹脂膜を塗工した回路基板をガラスシャーレ内(直径約25cm)に置き、100gの剥離剤に浸漬し、1分間静置した。静置後の回路基板をイオン交換水に浸漬してすすいだ後、80℃にて1時間乾燥させた。剥離試験時の液温は、40℃となるよう調整して試験を実施した。この一連の剥離工程を3回繰り返し実施した。
剥離試験開始前の回路基板の質量と、各回の剥離工程が終了した時点での回路基板の質量変化から、樹脂膜質量の減少量を特定し、下記計算式により樹脂膜の除去率(%)を算出した。
【0025】
【0026】
樹脂膜の除去率が100%以上となるまでに要した剥離工程の回数を記録することにより、剥離性能を評価した。
また、剥離工程が3回終了した時点で、剥離後の樹脂膜の外観を観察し、評価した。
なお、剥離性能の判定方法、及び、剥離膜外観の判定方法は、以下のとおりである。
【0027】
<剥離性能の判定方法>
◎:剥離工程が1回で除去率100%に到達した。
○:剥離工程が2回もしくは3回で除去率100%に到達した。
×:剥離工程が3回経過しても除去率100%に到達しなかった。
<剥離した樹脂膜の外観の判定方法>
AA:基板から剥離、脱落した樹脂膜が完全に溶解し、肉眼で確認できなかった。
A:基板から剥離、脱落した樹脂膜の大半が溶解していた。
B:基板から剥離、脱落した樹脂膜が溶解されずに、シート状ないしは細分化されて残存していた。
【0028】
(2)pHの測定
各剥離剤のpHをpHメーター(製品名LAQUA F-72:(株)堀場製作所製)を用いて測定した。なお、測定温度は25℃とし、25℃の恒温槽中にて各剥離剤を攪拌しながら測定した。
【0029】
3.評価結果
評価結果を表1に示す。
【0030】
【0031】
(評価結果)
実施例1~3、参考例4、実施例5の剥離剤については、pHが中性ないし弱アルカリ性でありながら、塗工した樹脂膜に対する除去能力が高いことが確認された。
【0032】
これに対して、比較例1~2の剥離剤は、実施例1~3、参考例4、実施例5の剥離剤に比して十分な性能が得られていない。
比較例1の剥離剤は、塩基性物質がアルカノールアミンでないため、樹脂膜の剥離性能が良好でなく、かつ、剥離したの樹脂膜は剥離剤中で固形物のまま残存していた。
比較例2の剥離剤は、酸性物質のpKaは4.0以下であるものの、芳香族酸でないため、樹脂膜の剥離性能が良好でなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の回路基板用樹脂膜剥離剤は、電子回路基板の製造過程で主面上に塗工したアルカリ可溶性の水系樹脂膜を浸漬除去する場合に優れた剥離性能を発揮するので、例えば同時に大量のチップ表面に塗工されている樹脂膜を短時間で除去することが可能になる。
本発明の剥離剤は、液性が中性から弱アルカリ性領域と比較的温和な液性であるにもかかわらず、樹脂膜を短時間で除去することができ、かつ、回路基板上の樹脂膜の残渣片も少ない。
また、本発明の剥離剤は、液性が中性から弱アルカリ性領域であることから、使用者および使用環境への影響が少ない。
また本発明の剥離剤を構成する各成分は、合成等の工業的方法により容易に製造することができるので、製造コストの面で有利である。