(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240116BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020085401
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小野 英則
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-250884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0037942(US,A1)
【文献】特開2016-046927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079813(US,A1)
【文献】特開2004-265374(JP,A)
【文献】特開2018-207045(JP,A)
【文献】特開2007-113965(JP,A)
【文献】特開2019-062651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
H05K 5/00~ 5/06
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(700)と、
前記基板と外部電源(910)とを接続する導電部材(830)と、
空気よりも透磁率の高い第1高透磁材料で形成された、前記基板と前記導電部材を収納空間に収納するケース(600)と、を有し、
前記ケースには、前記ケースの側部(620)における前記収納空間の一部を区画する内面(620a)とその裏の外面(620b)とに開口する開口部(625)が形成されるとともに、前記開口部の前記外面側の周りに環状に延びて、前記開口部の前記内面側の開口と前記外面側の開口の並ぶ並び方向に起立した周縁部(640)が形成され、
前記周縁部は空気よりも透磁率の高い第2高透磁材料で形成されており、
前記開口部の前記並び方向への投影領域に、前記基板の少なくとも一部が位置し、
前記導電部材は前記収納空間に収納された前記基板から前記開口部と前記周縁部それぞれの中空を通って前記収納空間の外へ向かって延びている電力変換装置。
【請求項2】
前記基板に設けられ、前記基板と前記導電部材を接続する第1コネクタ(810)と、
前記周縁部の前記外面から離間した先端に設けられ、前記外部電源と前記導電部材を接続する第2コネクタ(820)と、を有する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記開口部の前記並び方向への投影領域に、前記第1コネクタの少なくとも一部が位置している請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記開口部と前記基板との間の離間距離が、前記周縁部の前記並び方向の長さよりも短くなっている請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記開口部と前記基板との間の離間距離が、前記周縁部の前記並び方向の長さよりも長くなっている請求項1~
3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記周縁部における前記外面側の中空の前記並び方向に直交する断面積が、前記周縁部における前記外面から離間した先端側の中空の前記並び方向に直交する断面積よりも小さくなっている請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記開口部の前記並び方向への投影領域に、前記基板の一部が位置している請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回路基板と、回路基板と外部回路とを接続するコネクタ端子を有する電力変換装置が知られている。これらは端子挿通孔を備えるケースに収容されている。端子挿通孔にコネクタ端子の一部が通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板が端子挿通孔よりもケースの底部側に位置している。そのために基板から端子連通孔を通ってケースの外へ向かって延びるコネクタ端子の長さが延長しやすくなっている。
【0005】
またコネクタ端子に電流が流れると、コネクタ端子から電磁ノイズが発生する。上記したようにコネクタ端子の長さが延長しやすくなっているために、コネクタ端子から電磁ノイズの発生する区間が長くなっている。これにより、コネクタ端子から発生した電磁ノイズが回路基板を透過しやすくなっている。
【0006】
そこで本開示の目的は、導電部材から発生した電磁ノイズが基板を透過することの抑制された電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による電力変換装置は、
基板(700)と、
基板と外部電源(910)とを接続する導電部材(830)と、
空気よりも透磁率の高い第1高透磁材料で形成された、基板と導電部材を収納空間に収納するケース(600)と、を有し、
ケースには、ケースの側部(620)における収納空間の一部を区画する内面(620a)とその裏の外面(620b)とに開口する開口部(625)が形成されるとともに、開口部の外面側の周りに環状に延びて、開口部の内面側の開口と外面側の開口の並ぶ並び方向に起立した周縁部(640)が形成され、
周縁部は空気よりも透磁率の高い第2高透磁材料で形成されており、
開口部の並び方向への投影領域に、基板の少なくとも一部が位置し、
導電部材は収納空間に収納された基板から開口部と周縁部それぞれの中空を通って収納空間の外へ向かって延びている。
【0008】
このように本開示では開口部(625)の並び方向への投影領域に基板(700)の少なくとも一部が位置している。そのために収納空間に収納された基板(700)から開口部(625)と周縁部(640)の中空を通って収納空間の外へ向かって延びる導電部材(830)の延長が抑制されやすくなっている。
【0009】
導電部材(830)に電流が流れると、導電部材(830)から電磁ノイズが発生する。これに対して本開示では、上記したように導電部材(830)は開口部(625)の周りに環状に延びた周縁部(640)の中空を通る。そのために導電部材(830)から発生した電磁ノイズが周縁部(640)を積極的に通りやすくなっている。
【0010】
また導電部材(830)の延長が抑制されている。そのために導電部材(830)から電磁ノイズの発生される区間が短くなっている。これらにより導電部材(830)から発生した電磁ノイズが基板(700)に透過しにくくなっている。
【0011】
なお、本開示では開口部(625)の並び方向への投影領域に基板(700)の少なくとも一部が位置している。そのために開口部(625)の開口を介して収納空間の外から中に侵入した電磁ノイズが基板(700)を透過する懸念がある。
【0012】
これに対して本開示では、開口部(625)の外面(620b)側の周りに並び方向に起立する周縁部(640)が連結されている。そのために並び方向に交差する方向で周縁部(640)と開口部(625)とが並び、周縁部(640)によって開口部(625)の少なくとも一部が覆われやすくなっている。これにより収納空間の外から開口部(625)に向かう電磁ノイズが基板(700)を透過しにくくなっている。
【0013】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図5】
図4に示す電力変換装置から第2コネクタを除いた電力変換装置の側面図である。
【
図6】変形例を説明するための電力変換装置の断面図である。
【
図7】変形例を説明するための電力変換装置の断面図である。
【
図8】変形例を説明するための電力変換装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0016】
また、各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせも可能である。特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士、実施形態と変形例、および、変形例同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0017】
(第1実施形態)
図1に基づいて電力変換装置500の設けられる車載システム100を説明する。車載システム100は電気自動車用のシステムを構成している。車載システム100はバッテリ200、電力変換装置500、モータ400、および、複数のECU900を有する。
【0018】
複数のECU900はバス配線を介して相互に信号を送受信している。複数のECU900は協調して電気自動車を制御している。複数のECU900の制御により、バッテリ200のSOCに応じたモータ400の回生と力行が制御される。ECU900はelectronic control unitの略である。SOCはstate of chargeの略である。
【0019】
バッテリ200は複数の二次電池を有する。これら複数の二次電池は直列接続された電池スタックを構成している。この電池スタックのSOCがバッテリ200のSOCに相当する。二次電池としてはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および、有機ラジカル電池などを採用することができる。
【0020】
電力変換装置500の備えるインバータ300は、バッテリ200の正極と電気的に接続されたPバスバと、バッテリ200の負極と電気的に接続されたNバスバとの間で並列接続された3相以上のレグを備えている。各相のレグはPバスバとNバスバとの間で直列接続された複数のスイッチ素子を備えている。
【0021】
またこれら複数のスイッチ素子は封止部材で封止され、複数の電子モジュールを構成している。複数のスイッチ素子は複数のECU900のうちのMGECUによってPWM制御される。ECU900には外部電源910から電力が供給されている。
【0022】
電力変換装置500がPWM制御されることで、バッテリ200から供給された直流電力が交流電力に変換される。この交流電力がモータ400に供給される。また、モータ400での発電によって生じた交流電力が電力変換装置500で直流電力に変換される。この直流電力がバッテリ200や他の図示しない車載機器に供給される。なお、電力変換装置500はインバータ300の他に、入力される直流電力の電圧レベルを昇降圧するコンバータを備えていてもよい。
【0023】
<電力変換装置の機械的構成>
次に、電力変換装置500の機械的構成を説明する。それに当たって、以下においては互いに直交の関係にある3方向をx方向、y方向、および、z方向とする。x方向は並び方向に相当する。y方向は平面方向に相当する。なお図面においては「方向」の記載を省略し、単にx、y、zと記載している。
【0024】
電力変換装置500はこれまでに説明した電力変換回路の構成要素の他に、
図2に示すケース600、基板700、第1コネクタ810、第2コネクタ820、配線830、および、固定ボルト840を有する。配線830は導電部材に相当する。
【0025】
ケース600は金属から成る筐体である。
図3に示すようにケース600は底部610、側部620、および、蓋部630を有する。底部610はz方向に厚さの薄い扁平形状を成している。底部610はz方向に並ぶ内底面610aとその裏側の外底面610bを有している。
【0026】
側部620は内底面610aに連結されている。側部620はz方向に環状に起立している。
【0027】
側部620はx方向に離間して対向する第1壁部621と第3壁部623、および、y方向に離間して対向する第2壁部622と第4壁部624を有している。
【0028】
これら第1壁部621、第2壁部622、第3壁部623、第4壁部624はz方向のまわりの周方向に環状に連結されている。4つの壁部の底部610から離間した先端で開口が区画されている。
【0029】
蓋部630はz方向に厚さの薄い扁平形状を成している。蓋部630は側部620の底部610から離間した先端に連結されている。これにより4つの壁部の先端側で区画された開口が蓋部630によって閉塞されている。
【0030】
以上に示した形態により、底部610、側部620、および、蓋部630によってケース600に収納空間が区画されている。具体的に言えば、底部610の内底面610a、側部620の内側の内面620a、蓋部630の底部610側の蓋底面630aによってケース600に収納空間が区画されている。なお、ケース600は金属製でなくてもよい。ケース600は空気よりも透磁率の高い高透磁材料によって形成されていればよい。ケース600を形成する高透磁材料が第1高透磁材料に相当する。
【0031】
基板700はz方向に厚さの薄い扁平形状を成している。基板700には上記したECU900が搭載されている。基板700にはECU900の他にノイズ処理のためのコンデンサやICチップなどが搭載されている。基板700にECU900、コンデンサ、および、ICチップを備える電気回路が形成されている。
【0032】
第1コネクタ810は第1樹脂部材と第1樹脂部材にインサートされた第1導電部材を有する。第1樹脂部材から第1導電部材の一端と他端それぞれが露出されている。第1樹脂部材から露出された第1導電部材の一端が、基板700に形成された電気回路と電気的および機械的に連結されている。第1樹脂部材から露出された第1導電部材の他端が、配線830の一端に接続されている。なお、第1樹脂部材は金属よりも透磁率の低い部材である。
【0033】
第2コネクタ820は第2樹脂部材と第2樹脂部材にインサートされた第2導電部材を有する。第2樹脂部材は基部821と結合部822を有する。
図2に示すように基部821はx方向に並ぶ第1結合面821aと第2結合面821bを有する。結合部822は基部821の第1結合面821a側に連結されている。結合部822は第1結合面821aから遠ざかる態様でx方向に起立している。なお、第2樹脂部材は金属よりも透磁率の低い部材である。
【0034】
結合部822はx方向に直交する方向で基部821の中央側に連結されている。この基部821と結合部822とが連結された連結部位に第2導電部材がインサートされている。第2導電部材の一端と他端それぞれが連結部位から露出されている。第2導電部材の一端が配線830の他端と電気的および機械的に連結されている。第2導電部材の他端が図示しない外部電源910に電気的に接続されている。
【0035】
なお、基部821におけるx方向に直交する方向で端側に位置する結合部822の連結されない非連結部位には、
図2に示すようにx方向に貫通する第1固定孔823が形成されている。この第1固定孔823に固定ボルト840の軸部が通されている。この固定ボルト840の軸部によって第2コネクタ820がケース600に固定されている。
【0036】
配線830は導電性の電線と電線の表面を被覆する絶縁性の樹脂部材を有する。上記したように配線830は一端側で第1コネクタ810に電気的および機械的に接続されている。配線830は他端側で第2コネクタ820に電気的および機械的に接続されている。なお、配線830は電線とその表面を被覆する樹脂部材を有していなくてもよい。配線830は金属製の平板をプレス加工することで製造されるバスバなどであってもよい。
【0037】
<ケースの収納空間>
図3に示すようにケース600の収納空間に基板700、第1コネクタ810、および、配線830が収納されている。また図示しないが、ケース600には他にもインバータ300などが収納されている。
【0038】
基板700はz方向に並ぶ第1基板面700aと第2基板面700bを有している。基板700は、第2基板面700bが底部610の内底面610aと並ぶ態様でケース600に収納されている。
【0039】
基板700はケース600に図示しないボルトを介して接続されている。上記したように基板700には第1コネクタ810が電気的および機械的に接続されている。
【0040】
基板700の第1基板面700aに第1コネクタ810が接続されている。第1コネクタ810に配線830の一端が接続されている。一端が第1コネクタ810に接続された配線830はケース600の第1壁部621側に向かって延びている。
【0041】
ケース600の第1壁部621には、内面620aとその裏側の外面620bに開口する開口部625が形成されている。開口部625の外面620b側の開口の周りに、環状に延びる周縁部640が連結されている。周縁部640はケース600と同じ金属製である。なお、周縁部640は空気よりも透磁率の高い高透磁材料で形成されていればよい。周縁部640を形成する高透磁材料が第2高透磁材料に相当する。周縁部640はケース600と別部材であってもよい。
【0042】
周縁部640は第1壁部621の外面620bから遠ざかる態様で延びている。周縁部640の中空と開口部625とがx方向に並んで連通している。この周縁部640の外面620bから離間した先端の先端面640aに、上記した第2コネクタ820が設けられている。この第2コネクタ820に、第1壁部621側に延びた配線830の他端が接続されている。
【0043】
そのために配線830が開口部625と周縁部640の中空を通って第1コネクタ810と第2コネクタ820との間に接続されている。外部電源910から第2コネクタ820、配線830、および、第1コネクタ810を介して基板700に電力が供給されている。
【0044】
<第2コネクタの周縁部への連結形態>
図3および
図4に示すように第2コネクタ820の基部821の第2結合面821bが、周縁部640の先端面640aにx方向で並んでいる。上記したように基部821にはx方向に貫通する第1固定孔823が形成されている。
【0045】
周縁部640には先端面640aからx方向に凹む第2固定孔645が形成されている。第2固定孔645を区画する内壁には固定ボルト840の軸部を締結するためのねじ溝が形成されている。
【0046】
これら第1固定孔823と第2固定孔645がx方向で連通して並んでいる。この連通孔に固定ボルト840の軸部が挿入されている。軸部が第2固定孔645をねじ溝に締結されることで第2コネクタ820が周縁部640に固定されている。
【0047】
なお、先端面640aと第2結合面821bの間には図示しないシール材が設けられている。そのために先端面640aと第2結合面821bとの間の空隙を介して外部から収納空間に水や異物が侵入しにくくなっている。
【0048】
また上記したように周縁部640は第1壁部621の外面620bから遠ざかる態様で延びている。そのために外部から収納空間に水や異物が侵入したとしても、それらが基板700に付着することが抑制されやすくなっている。
【0049】
<開口部と基板>
これまでに説明したようにケース600の第1壁部621には、内面620aとその裏側の外面620bに開口する開口部625が形成されている。開口部625は
図5に示すように、第1壁部621における底部610側の第1開口面625aと、第2壁部622側の第2開口面625bと、蓋部630側の第3開口面625cと、第4壁部624側の第4開口面625dによって区画されている。
【0050】
第2開口面625bと第4開口面625dとのy方向の差し渡しの長さは、第1開口面625aと第3開口面625cとのz方向の差し渡しの長さよりも長くなっている。
【0051】
これまでに説明したように第2基板面700bが内底面610aと並ぶ態様で基板700がケース600に収納されている。
図3および
図5に示すように内底面610aと第2基板面700bとのz方向の離間距離が、内底面610aと第1開口面625aとのz方向の離間距離よりも長くなっている。内底面610aと第1基板面700aとのz方向の離間距離が、内底面610aと第3開口面625cとのz方向の離間距離よりも短くなっている。
【0052】
基板700はz方向に離間して並ぶ第1基板面700aと第2基板面700bの他に、y方向に離間して並ぶ第3基板面700cと第4基板面700dを有する。
図2および
図5に示すように、第3基板面700cと第4基板面700dとのy方向の離間距離が、第2開口面625bと第4開口面625dとのy方向の離間距離よりも長くなっている。
【0053】
そのために基板700の一部が開口部625のx方向への投影領域に位置している。具体的に言えば、y方向における基板700の中央部位が開口部625のx方向への投影領域に位置している。y方向における第2壁部622側の端部位と第4壁部624側の端部位それぞれがx方向で第1壁部621と対向して並んでいる。
【0054】
また
図3および
図5に示すように第1コネクタ810が基板700の中央部位の第1基板面700aに設けられている。そのために第1コネクタ810が開口部625のx方向への投影領域に位置している。
【0055】
なお、第1コネクタ810の全部が開口部625のx方向への投影領域に位置していなくてもよい。第1コネクタ810の一部が開口部625のx方向への投影領域に位置していてもよい。
【0056】
<周縁部と開口部>
図5に示すように周縁部640はz方向に離間して並ぶ第1縁部641と第3縁部643とy方向に離間して並ぶ第2縁部642と第4縁部644を有する。
【0057】
第1縁部641~第4縁部644それぞれは開口部625の外面620b側の開口の周りに環状に連結されている。第1縁部641はこの開口の周りの第1開口面625a側に連結されている。第2縁部642はこの開口の周りの第2開口面625b側に連結されている。第3縁部643はこの開口の周りの第3開口面625c側に連結されている。第4縁部644はこの開口の周りの第4開口面625d側に連結されている。
【0058】
これら第1縁部641~第4縁部644における周縁部640の中空側の内縁面それぞれが第1開口面625a~第4開口面625dそれぞれに面一になっている。
【0059】
なお、
図5に示すように、第2縁部642と第4縁部644のy方向の離間距離は、第1縁部641と第3縁部643のz方向の離間距離よりも長くなっている。
【0060】
第1縁部641と第3縁部643のz方向の離間距離は、周縁部640の延びるどの位置においても一定になっている。第2縁部642と第4縁部644のy方向の離間距離は周縁部640の延びるどの位置においても一定になっている。
【0061】
周縁部640における第1壁部621側のx方向に直交する断面積と、周縁部640における側部620から離間した側のx方向に直交する断面積とが同一になっている。
【0062】
<電磁ノイズ>
これまでに説明した電力変換装置500は例えば車両のエンジンルームに搭載されている。エンジンルームには電力変換装置500の他にエンジン、トランスアクスル、および、様々な電気部品が搭載されている。トランスアクスルはモータ400と動力分配機構とデファレンシャルギアをまとめたデバイスである。以下、エンジンルームに収納されるこれらの電気部品を総称して電気機器と示す。これら電気機器から意図せず電磁ノイズが放射されている。
【0063】
また上記したように第2コネクタ820が図示しない外部電源910に電気的に接続されている。この外部電源910から第2コネクタ820、配線830、および、第1コネクタ810を介して基板700に電力が供給されている。そのために配線830には意図せず外部電源910から電磁ノイズが入力されている。
【0064】
<作用効果>
これまでに説明したように配線830が開口部625と周縁部640の中空を通って第1コネクタ810と第2コネクタ820の間に接続されている。基板700に第1コネクタ810が接続されている。周縁部640に第2コネクタ820が接続されている。
【0065】
基板700の一部が開口部625のx方向への投影領域に位置している。そのために開口部625と周縁部640の中空を通る配線830の長さの延長が抑制されている。
【0066】
配線830に電流が流れると、配線830から電磁ノイズが発生する。上記したように配線830は開口部625と周縁部640の中空を通る。そのために配線830から発生した電磁ノイズが周縁部640を積極的に通りやすくなっている。
【0067】
上記したように配線830の長さの延長が抑制されている。そのために配線830から電磁ノイズの発生される区間が短くなっている。これらにより配線830から発生した電磁ノイズが基板700を透過しにくくなっている。
【0068】
基板700にはノイズを処理するためのコンデンサが搭載されている。そのために基板700を透過する電磁ノイズがコンデンサに通されやすくなっている。基板700に搭載されるECU900やICチップに電磁ノイズが通されにくくなっている。
【0069】
これまでに説明したように開口部625の外面620b側の開口の周りに、周縁部640が環状に連結されている。周縁部640と開口部625がx方向に交差する方向で並んでいる。これによって周縁部640によって開口部625の少なくとも一部が覆われやすくなっている。収納空間の外の電気機器などから開口部625に向かう電磁ノイズが基板700を透過しにくくなっている。
【0070】
これまでに説明したように基板700の中央部位に第1コネクタ810が設けられている。第1コネクタ810がx方向で開口部625のx方向への投影領域に位置している。そのために配線830の長さの延長が抑制されやすくなっている。配線830から電磁ノイズの発生される区間が短くなっている。配線830から発生した電磁ノイズが基板700を透過しにくくなっている。
【0071】
これまでに説明したように第3基板面700cと第4基板面700dとのy方向の離間距離が、第2開口面625bと第4開口面625dとのy方向の離間距離よりも長くなっている。そのためにy方向における第2壁部622側の端部位と第4壁部624側の端部位それぞれがx方向で第1壁部621と対向して並んでいる。これによって電気機器から基板700の端部位への電磁ノイズの透過が抑制されやすくなっている。電磁ノイズが基板700を透過しにくくなっている。
【0072】
(第1変形例)
図6に示すように基板700は第1基板面700a~第4基板面700dの他に第3基板面700cと第4基板面700dを連結する第5基板面700eと第6基板面700fを有する。第5基板面700eは第1壁部621側に位置している。第6基板面700fは第3壁部623側に位置している。
【0073】
図6に示すように基板700の第5基板面700eと第1壁部621の内面620aとの間の離間距離が、周縁部640のx方向の長さよりも短くなっていてもよい。
【0074】
その場合、第1コネクタ810と第2コネクタ820とのx方向の離間距離が短くなる。それに伴って配線830の長さの延長が抑制されやすくなっている。これにより配線830から発生した電磁ノイズが基板700を透過しにくくなっている。
【0075】
(第2変形例)
図7に示すように基板700の第5基板面700eと第1壁部621の内面620aとの間の離間距離が、周縁部640のx方向の長さよりも長くなっていてもよい。
【0076】
その場合、第2コネクタ820と基板700との間のx方向の離間距離が長くなりやすくなっている。基板700上の電気回路で発生した電磁ノイズが周縁部640の先端側の開口から収納空間の外に出るまでに、ケース600と周縁部640を通りやすくなる。これにより基板700で発生した電磁ノイズが収納空間の外に漏れにくくなっている。
【0077】
(第3変形例)
図8に示すように周縁部640の先端側の構成を第2コネクタ820の規格に合わせた状態で、第1縁部641と第3縁部643のz方向の離間距離がx方向において先端面640a側から開口部625側に向かって短くなっていてもよい。同様に図示しないが、周縁部640の先端側の構成を第2コネクタ820の規格に合わせた状態で、第2縁部642と第4縁部644のy方向の離間距離がx方向において先端面640aから開口部625側に向かって短くなっていてもよい。
【0078】
周縁部640の先端側の構成を第2コネクタ820の規格に合わせた状態で、周縁部640における第1壁部621側のx方向に直交する断面積が、周縁部640における側部620から離間した側のx方向に直交する断面積よりも小さくなっている。
【0079】
その場合、外部の電子機器から発生する電磁ノイズが第2コネクタ820を透過し、開口部625を通るまでに、周縁部640を通りやすくなっている。これにより外部の電子機器から発生する電磁ノイズが基板700に透過しにくくなっている。
【0080】
また第2コネクタ820の規格を変更せずに電磁ノイズの基板700への透過を抑制しやすくなっている。部品点数の増加を抑制することができる。
【0081】
(第4変形例)
本実施形態では第1コネクタ810、配線830、および、第2コネクタ820を介して基板700が外部電源910と接続される形態を示したが、基板700は外部電源910の他に上記した電気機器などに接続されていてもよい。その場合、基板700に第1コネクタ810が複数設けられていてもよい。それに伴って配線830が複数設けられていてもよい。開口部625と周縁部640の中空それぞれを複数の配線830が通っていてもよい。
【0082】
(その他の変形例)
本実施形態では電力変換装置500にインバータ300の含まれる例を示した。しかしながら電力変換装置500にはインバータ300のほかにコンバータが含まれてもよい。
【0083】
本実施形態では電力変換装置500が電気自動車用の車載システム100に含まれる例を示した。しかしながら電力変換装置500の適用としては特に上記例に限定されない。例えばモータ400と内燃機関を備えるハイブリッドシステムに電力変換装置500が含まれる構成を採用することもできる。
【0084】
本実施形態では電力変換装置500に1つのモータ400の接続される例を示した。しかしながら電力変換装置500に複数のモータ400の接続される構成を採用することもできる。この場合、電力変換装置500はインバータ300を構成するための3相のスイッチモジュールを複数有する。
【符号の説明】
【0085】
600…ケース、610…底部、620…側部、620a…内面、620b…外面、625…開口部、640…周縁部、700…基板、810…第1コネクタ、820…第2コネクタ、830…配線、910…外部電源